特許第6238503号(P6238503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238503
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】扉枠構造体、及び扉枠構造体の取付方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20171120BHJP
   E06B 1/56 20060101ALI20171120BHJP
   E06B 1/14 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   E06B5/00 E
   E06B1/56 Z
   E06B1/14
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-503324(P2017-503324)
(86)(22)【出願日】2015年12月9日
(86)【国際出願番号】JP2015084569
(87)【国際公開番号】WO2016139864
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2017年7月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-56897(P2015-56897)
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597087099
【氏名又は名称】日章工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】230110397
【弁護士】
【氏名又は名称】田中 雅敏
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】藤新 成信
(72)【発明者】
【氏名】井無田 龍
(72)【発明者】
【氏名】井上 翔太
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−316446(JP,A)
【文献】 特開2010−255331(JP,A)
【文献】 特許第5475249(JP,B2)
【文献】 特許第4079217(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E06B 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形枠の少なくとも3辺の外周に沿って第1の溝部が凹設されるとともに、該第1の溝部の近傍に第1の結合部を有する第1の枠体と、
前記第1の溝部の所定の位置に設置され、凸条部が形成された第1の補強部材と、
方形枠の少なくとも3辺の外周に沿って第2の溝部が凹設されるとともに、該第2の溝部の近傍に、前記第1の枠体と互いに対向した状態で結合可能な第2の結合部を有する第2の枠体と、
前記第2の溝部の所定の位置に設置され、凸条部が形成された第2の補強部材と、を備える
扉枠構造体。
【請求項2】
3方枠の外周に沿って第1の溝部が凹設されるとともに、該第1の溝部の近傍に第1の結合部を有する第1の枠体と、
前記第1の溝部の所定の位置に設置され、凸条部が形成された第1の補強部材と、
3方枠の外周に沿って第2の溝部が凹設されるとともに、該第2の溝部の近傍に、前記第1の枠体と互いに対向した状態で結合可能な第2の結合部を有する第2の枠体と、
前記第2の溝部の所定の位置に設置され、凸条部が形成された第2の補強部材と、を備える
扉枠構造体。
【請求項3】
前記第1の結合部、及び第2の結合部は、前記第1の溝部、及び第2の溝部から延設され、一方が凹片部、他方が該凹片部に嵌合可能な凸片部である
請求項1又は請求項2に記載の扉枠構造体。
【請求項4】
第1の枠体、及び第2の枠体が嵌め込まれる壁面開口部が形成された壁面と、
少なくとも2面を含み、一方の面が前記第1の補強部材に固定され、他方の面が前記壁面の内周に固定される取付アングルと、を有し
前記第1の補強部材が前記第1の溝部に対して摺動可能に設置され、
前記第2の補強部材が前記第2の溝部に対して固定される
請求項1又は請求項2に記載の扉枠構造体。
【請求項5】
前記第1の補強部材は、前記第1の溝部の少なくとも一方の側壁に当接する第1の当接面と、
前記取付アングルが固定される第2の当接面と、
前記第1の当接面と前記第2の当接面を連結し、前記第1の溝部を横断する第1の連結板を有し、該第1の連結板に前記凸条部が形成されている
請求項4に記載の扉枠構造体。
【請求項6】
前記第1の連結板に形成される凸条部は、前記第1の連結板の30〜70%の面積に形成されている
請求項5に記載の扉枠構造体。
【請求項7】
前記第2の補強部材は、前記第2の溝部の少なくとも一方の側壁に当接する第3の当接面と、
前記第2の溝部の他方の側壁に当接する第4の当接面と、
前記第3の当接面と、前記第4の当接面を連結し、前記第2の溝部を横断する第2の連結板と、を有し、
該第2の連結板に前記凸条部が形成されている
請求項1又は請求項2に記載の扉枠構造体。
【請求項8】
前記第2の連結板に形成される凸条部は、前記第2の連結板の30〜70%の面積に形成されている
請求項7に記載の扉枠構造体。
【請求項9】
前記第1の補強部材、又は第2の補強部材は、
前記凸片部を前記凹片部に嵌合した際に、前記凹片部の外側面に当接する切欠き部を有する
請求項3に記載の扉枠構造体。
【請求項10】
前記第1の枠体は、一対の第1の枠材と、該第1の枠材の一端同士を連結する第2の枠材とから構成され、
前記第2の枠体は、一対の第3の枠材と、該第3の枠材の一端同士を連結する第4の枠材とから構成される
請求項1又は請求項2に記載の扉枠構造体。
【請求項11】
前記第1の補強部材は、前記第1の枠材、及び前記第2の枠材にそれぞれ均等の数だけ配置され、
前記第2の補強部材は、前記第3の枠材、及び前記第4の枠材にそれぞれ均等の数だけ配置される
請求項10に記載の扉枠構造体。
【請求項12】
方形枠の第1の枠体の、少なくとも3辺の外周に沿って形成された第1の溝部に、第1の補強部材を設置する工程と、
少なくとも2面を有する取付アングルの、一方の面を前記第1の補強部材に固定し、他方の面を壁面開口部が形成された壁面の内周に固定する工程と、
方形枠の第2の枠体の、少なくとも3辺の外周に沿って形成された第2の溝部に、第2の補強部材を設置する工程と、
前記第1の枠体と、前記第2の枠体を互いに対向する状態となるように結合する工程と、を備える
扉枠構造体の取付方法。
【請求項13】
3方枠の第1の枠体の外周に沿って形成された第1の溝部に、第1の補強部材を設置する工程と、
少なくとも2面を有する取付アングルの、一方の面を前記第1の補強部材に固定し、他方の面を壁面開口部が形成された壁面の内周に固定する工程と、
3方枠の第2の枠体の外周に沿って形成された第2の溝部に、第2の補強部材を設置する工程と、
前記第1の枠体と、前記第2の枠体を互いに対向する状態となるように結合する工程と、を備える
扉枠構造体の取付方法。
【請求項14】
前記第1の補強部材を設置する工程は、前記第1の補強部材を前記第1の溝部に摺動可能に設置する工程を含み、
前記第2の補強部材を設置する工程は、前記第2の補強部材を前記第2の溝部に固定する工程を含む
請求項12又は請求項13に記載の扉枠構造体の取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉枠構造体、及び扉枠構造体の取付方法に関する。詳しくは、剛性を高め、地震発生時の建物の層間変位に起因する変形を防止するとともに、取り付けが簡単な扉枠構造体、及び扉枠構造体の取付方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
オフィスビル、テナントビル、及びマンション等の出入り口の扉は、耐震性を確保するため、一定の剛性を有する鋼製の扉枠構造体が壁面開口部に形成された壁面に取り付けられ、この扉枠構造体に一方の縦辺を中心に回転自在に、扉が支持されるのが一般的である。
【0003】
このような扉枠構造体は、左右一対の縦枠材と、この縦枠材の上部を連結する横枠材を有し、全体としてコの字状に構成され、各枠材は溶接、溶着、及びコーキング等の周知の固定手段により、壁面開口部を形成する下地養生材(柱)に強固に取り付けられている。
【0004】
しかしながら、壁面開口部を形成する壁面等に扉枠構造体が強固に取り付けられる場合、例えば、地震等による横振動が発生すると、壁等の躯体に層間変位が生じ、この層間変位に追従して扉枠構造体が菱形状に塑性変形し、扉の開閉ができず、緊急時に住人等が建物内に閉じ込められ、脱出することができない事態となる虞があった。
【0005】
このような課題に対して、例えば特許文献1には、地震により躯体の層間変位に追従して扉枠構造体が変形し、扉と扉枠構造体が接触状態となっても、扉が解放できるようにする扉枠構造体が開示されている。
【0006】
具体的には、図9に示すように、扉枠構造体101が、折り曲げ形成された二つの枠材102、及び103により構成されている。この枠材102、及び103は扉枠構造体101の内側方向に互いに可動可能に組み合わされた可動枠部材となっている。
また、枠材102、及び103の間には、上下方向に弾性変形可能なコイルバネ104が介在されており、枠材102、及び103を弾性的に支持している。
【0007】
このような状態で、例えば地震が発生し、図示しない躯体が強く揺動すると、躯体の層間変位に応じて、扉枠構造体101も塑性変形し、扉枠構造体101と扉105の外縁とが接触する。そして、震動が収まった後に生じる扉枠構造体101の永久変形により、扉枠構造体101と扉105とは接触状態となる。
【0008】
しかしながら、扉枠構造体101と扉105の接触圧力が所定の強度を超えると、枠材102、及び103の間に介在されたコイルバネ104が作動し、扉枠構造体101と扉105の接触圧力を吸収する。さらに、枠材102、及び103も扉枠構造体101の内側方向に互いに可動可能であるため、この扉枠構造体101自身が接触圧力を吸収する。
従って、地震により扉枠構造体101と扉105が接触状態となっても、扉105を開放することが可能となり、緊急避難が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−18723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記した特許文献1に開示されている通り、枠材を可動可能なように構成するとともに、枠材内にコイルバネを介在することで、地震等により躯体が層間変位し、扉と扉枠構造体が接触したとしても、一定の接触圧力を吸収することができるため、扉の開閉が可能となる。
【0011】
一方、特許文献1の扉枠構造体は、扉枠構造体を構成する各枠材は可動可能な状態で接合されているため、扉枠構造体の剛性は非常に低いものとなっている。また、扉枠構造体は、壁面開口部を形成する壁面に溶接、溶着等により強固に取り付けられているため躯体に追従するように変位してしまう。従って、地震発生時の揺動により、扉枠構造体が必要以上に変形すると、扉枠構造体と扉の接触圧力が所定以上となってしまい、コイルバネ、及び扉枠構造体では、その接触圧力を吸収できず、扉が開かないという不具合が生じる可能性がある。
【0012】
また、扉枠構造体の剛性が低いことにより、地震発生時の揺動により各枠材が破断する虞があることは勿論のこと、扉の開閉を繰り返すことによる経年劣化により、通常使用時においても各枠材の破断が懸念される。
【0013】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、剛性を高め、地震発生時の建物の層間変位に起因する変形を防止するとともに、取り付けが簡単な扉枠構造体、及び扉枠構造体の取り付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明の扉枠構造体は、方形枠の少なくとも3辺の外周に沿って第1の溝部が凹設されるとともに、該第1の溝部の近傍に第1の結合部を有する第1の枠体と、前記第1の溝部の所定の位置に設置され、凸条部が形成された第1の補強部材と、方形枠の少なくとも3辺の外周に沿って第2の溝部が凹設されるとともに、該第2の溝部の近傍に、前記第1の枠体と互いに対向した状態で結合可能な第2の結合部を有する第2の枠体と、前記第2の溝部の所定の位置に設置され、凸条部が形成された第2の補強部材とを備える。
【0015】
ここで、方形枠の第1の枠体の少なくとも3辺の外周に沿って第1の溝部が凹設されることにより、後述する第1の補強部材を設置することができる。従って、第1の枠体の剛性を高め、第1の枠体の内周に設置される扉の開閉動作、又は地震発生時の横揺れ等に起因する第1の枠体の変位を最小限に抑えることができる。
【0016】
また、第1の溝部の近傍に第1の結合部を有することにより、後述する第2の枠体を第1の枠体と対向した状態で結合させることができる。従って、第1の枠体と第2の枠体を一体化して、扉枠全体としての剛性を高めることができる。
【0017】
また、第1の補強部材に凸条部が形成されることにより、第1の補強部材自体の剛性を高めることができる。従って、地震発生時の激しい横揺れが生じた場合でも、第1の補強部材の破断を防止することができる。
【0018】
また、方形枠の第2の枠体の少なくとも3辺の外周に沿って第2の溝部が凹設されることにより、後述する第2の補強部材を設置することができる。従って、第2の枠体の剛性を高め、第2の枠体の内周に設置される扉の開閉動作、又は地震発生時の横揺れ等に起因する第2の枠体の変位を最小限に抑えることができる。
【0019】
また、該第2の溝部の近傍であって、前記第1の枠体と互いに対向した状態で結合可能な第2の結合部を有することにより、第1の枠体と第2の枠体を対向した状態で一体化し、扉枠全体としての剛性を高めることができる。
【0020】
また、第2の補強部材に凸条部が形成されることにより、第2の補強部材自体の剛性を高めることができる。従って、地震発生時の激しい横揺れが生じた場合でも、第2の補強部材の破断を防止することができる。
【0021】
上記の目的を達成するために、本発明の扉枠構造体は、3方枠の外周に沿って第1の溝部が凹設されるとともに、該第1の溝部の近傍に第1の結合部を有する第1の枠体と、前記第1の溝部の所定の位置に設置され、凸条部が形成された第1の補強部材と、3方枠の外周に沿って第2の溝部が凹設されるとともに、該第2の溝部の近傍に、前記第1の枠体と互いに対向した状態で結合可能な第2の結合部を有する第2の枠体と、前記第2の溝部の所定の位置に設置され、凸条部が形成された第2の補強部材とを備えている。
【0022】
ここで、第1の枠体の3方枠の外周に沿って第1の溝部が凹設されることにより、後述する第1の補強部材を設置することができる。従って、第1の枠体の剛性を高め、第1の枠体の内周に設置される扉の開閉動作、又は地震発生時の横揺れ等に起因する第1の枠体の変位を最小限に抑えることができる。
【0023】
また、第1の溝部の近傍に第1の結合部を有することにより、後述する第2の枠体を第1の枠体と対向した状態で結合させることができる。従って、第1の枠体と第2の枠体を一体化して、扉枠全体としての剛性を高めることができる。
【0024】
また、第1の補強部材に凸条部が形成されることにより、第1の補強部材自体の剛性を高めることができる。従って、地震発生時の激しい横揺れが生じた場合でも、第1の補強部材の破断を防止することができる。
【0025】
また、第2の枠体の3方枠の外周に沿って第2の溝部が凹設されることにより、後述する第2の補強部材を設置することができる。従って、第2の枠体の剛性を高め、第2の枠体の内周に設置される扉の開閉動作、又は地震発生時の横揺れ等に起因する第2の枠体の変位を最小限に抑えることができる。
【0026】
また、該第2の溝部の近傍であって、前記第1の枠体と互いに対向した状態で結合可能な第2の結合部を有することにより、第1の枠体と第2の枠体を対向した状態で一体化し、扉枠全体としての剛性を高めることができる。
【0027】
また、第2の補強部材に凸条部が形成されることにより、第2の補強部材自体の剛性を高めることができる。従って、地震発生時の激しい横揺れが生じた場合でも、第2の補強部材の破断を防止することができる。
【0028】
また、第1の結合部が第1の溝部から延設される場合には、第1の結合部と第1の溝部を一体形成できるため、扉の開閉動作、又は地震発生時の横揺れ等により第1の枠体に応力が加わっても、第1の結合部が第1の枠体から外れたりする虞がない。更に、第1の溝部と第1の結合部を、一連の工程において製造できるため、製造コスト、及び製造工数も低減することができる。
【0029】
また、第2の結合部が第2の溝部から延設さる場合には、第2の結合部と第2の溝部を一体形成できるため、扉の開閉動作、又は地震発生時の横揺れ等により第2の枠体に応力が加わっても、第2の結合部が第2の枠体から外れたりする虞がない。また、第2の溝部と第2の結合部を、一連の工程において製造できるため、製造コスト、及び製造工数も低減することができる。
【0030】
また、第1の結合部、及び第2の結合部が、第1の溝部、及び第2の溝部から延設され、一方が凹片部、他方が凹片部に嵌合可能な凸片部である場合には、凹片部、又は凸片部を目印として嵌合させればよいため、第1の枠体と第2の枠体を対向させた状態で確実に結合させることができる。更に、凹片部と凸片部を嵌合させるだけで、第1の枠体と第2の枠体を結合することができるため、結合に際して特別な工具等が必要なく、建て付けが容易なものとなる。
【0031】
また、第1の枠体、及び第2の枠体が嵌め込まれる壁面開口部が形成された壁面と、少なくとも2面を含み、一方の面が第1の補強部材に固定され、他方の面が前記壁面の内周に固定される取付アングルと、を有する場合には、第1の補強部材を含む第1の枠体、及び第1の枠体に結合された第2の枠体が、取付アングルを介して壁面に取り付けることができる。
【0032】
また、第1の補強部材が第1の溝部に対して摺動可能に設置される場合には、例えば、地震発生時の大きな横揺れにより、壁面が大きく層間変位した場合でも、取付アングルに結合された第1の補強部材が第1の溝部を摺動するため、第1の枠体、及び第1の枠体と結合された第2の枠体は、壁面の層間変位に追従することがない。また、第2の補強部材は第2の溝部内に固定されているため、第2の枠体の剛性は保たれた状態となる。従って、地震発生時の横揺れによる第1の枠体、及び第2の枠体の変形を最小限に抑えることができるため、緊急時においても扉の開閉が可能となる。
【0033】
また、第1の補強部材が、第1の溝部の少なくとも一方の側壁に当接する第1の当接面を有する場合には、地震発生時の横揺れにより、第1の補強部材に所定以上の力が加わっても、第1の補強部材に加わる力を第1の当接面から分散させることができるため、第1の補強部材の破断を防止することができる。
【0034】
また、第1の補強部材が、取付アングルに当接する第2の当接面を有する場合には、第1の補強部材が設置される第1の枠体を、取付アングルを介して、壁面開口部に取り付けることができる。
【0035】
更に、第1の枠体が壁面に直接的に取り付けられていないため、例えば、地震発生時の大きな横揺れにより、壁面が大きく層間変位した場合でも、取付アングルに固定された第1の補強部材が第1の溝部を摺動し、第1の枠体、及び第2の枠体は壁面の層間変位に追従することがない。従って、地震発生時の横揺れによる第1の枠体、及び第2の枠体の変形を最小限に抑えることができるため、緊急時においても扉の開閉が可能となる。
【0036】
また、第1の当接面と第2の当接面を連結し、第1の溝部を横断する第1の連結板を有する場合には、この第1の連結板が縦リブとして機能するため、第1の枠体の剛性を高めることができる。
【0037】
また、第1の連結板に凸条部が形成されている場合には、第1の連結板の剛性を高めることができるため、例えば、地震発生時の激しい横揺れが生じた場合でも、第1の補強部材の破断を防止することができる。
【0038】
また、第1の連結板に形成される凸条部が、連結板の30〜70%の面積に形成されている場合には、凸条部を加工する際の加工性と、第1の連結板の剛性の両立を最もバランスよくすることができる。即ち、凸条部の面積が、第1の連結板の30%よりも小さいと、第1の連結板の剛性を所定以上に保つことができず、70%よりも大きいと、凸条部を形成するための加工が困難となる。
【0039】
また、第2の補強部材が、第2の溝部の一方の側壁に当接する第3の当接面と、他方の側壁に当接する第4の当接面を有する場合には、第2の補強部材が、第2の溝部内に当接した状態で設置されるため、第2の枠体の剛性を高めることができる。
更に、地震発生時の横揺れにより、第2の補強部材に所定以上の力が加わっても、第2の補強部材に加わる力を第2の当接面から分散させることができるため、第2の補強部材の破断を防止することができる。
【0040】
また、第3の当接面と第4の当接面を連結し、第2の溝部を横断する第2の連結板を有する場合には、この第2の連結板が縦リブとして機能するため、第2の枠体の剛性を高めることができる。
【0041】
また、第2の連結板に凸条部が形成されている場合には、第2の連結板の剛性を高めることができるため、例えば、地震発生時の激しい横揺れが生じた場合でも、第2の補強部材の破断を防止することができる。
【0042】
また、第2の連結板に形成される凸条部が、連結板の30〜70%の面積に形成されている場合には、凸条部を加工する際の加工性と、第2の連結板の剛性の両立を最もバランスよくすることができる。即ち、凸条部の面積が、第2の連結板の30%よりも小さいと、第2の連結板の剛性を所定以上に保つことができず、70%よりも大きいと、凸条部を形成するための加工が困難となる。
【0043】
また、第1の補強部材、又は第2の補強部材が、凸片部を凹片部に嵌合した際に、凹片部の外側面に当接する切欠き部を有する場合には、第1の枠体と第2の枠体の結合を、より強固なものとすることができる。更に、地震発生時の横揺れにより、第1の補強部材、又は第2の補強部材に所定以上の力が加わっても、第1の補強部材、又は第2の補強部材に加わる力を、当接する凹片部の外周面から分散させることができるため、第1の補強部材、又は第2の補強部材の破断を防止することができる。
【0044】
また、第1の枠体が、一対の第1の枠材と、第1の枠材の一端同士を連結する第2の枠材とから構成されている場合には、第1の枠体の運搬、組み立て、及び分解が容易になるとともに、第1の枠体の再利用も可能となる。
【0045】
また、第2の枠体が、一対の第3の枠材と、該第3の枠材の一端同士を連結する第4の枠材とから構成されている場合には、第2の枠体の運搬、組み立て、及び分解が容易になるとともに、第2の枠体の再利用も可能となる。
【0046】
また、第1の補強部材が、第1の枠材、及び第2の枠材にそれぞれ均等の数だけ配置されている場合には、第1の枠体全体としての剛性のバランスを均一にすることができる。
【0047】
また、第2の補強部材が、第3の枠材、及び第4の枠材にそれぞれ均等の数だけ配置されている場合には、第2の枠体全体としての剛性のバランスを均一にすることができる。
【0048】
上記の目的を達成するために、本発明の扉枠構造体の取付方法は、方形枠の第1の枠体の、少なくとも3辺の外周に沿って形成された第1の溝部に、第1の補強部材を設置する工程と、少なくとも2面を有する取付アングルの、一方の面を前記第1の補強部材に固定し、他方の面を壁面開口部が形成された壁面の内周に固定する工程と、方形枠の第2の枠体の、少なくとも3辺の外周に沿って形成された第2の溝部に、第2の補強部材を設置する工程と、前記第1の枠体と、前記第2の枠体を互いに対向する状態となるように結合する工程とを備える。
【0049】
ここで、方形枠の少なくとも3辺の外周に沿って形成された第1の溝部に、第1の補強部材を設置する工程を有することにより、第1の枠体の剛性を高め、第1の枠体の内周に設置される扉の開閉動作、又は地震発生時の横揺れ等に起因する第1の枠体の変位を最小限に抑えることができる。
【0050】
また、第1の補強部材に凸条部が形成されることにより、第1の補強部材自体の剛性を高めることができる。従って、地震発生時の激しい横揺れが生じた場合でも、第1の補強部材の破断を防止することができる。
【0051】
また、少なくとも2面を有する取付アングルの、一方の面を第1の補強部材に固定し、他方の面を壁面開口部が形成された壁面の内周に固定する工程を有することにより、取付アングルを介して、第1の補強部材を含む第1の枠体を壁面に結合することができる。
【0052】
また、方形枠の第2の枠体の、少なくとも3辺の外周に沿って形成された第2の溝部に、第2の補強部材を設置する工程を有することにより、第2の枠体の剛性を高め、第2の枠体の内周に設置される扉の開閉動作、又は地震発生時の横揺れ等に起因する第2の枠体の変位を最小限に抑えることができる。
【0053】
また、第2の補強部材に凸条部が形成されることにより、第2の補強部材自体の剛性を高めることができる。従って、地震発生時の激しい横揺れが生じた場合でも、第2の補強部材の破断を防止することができる。
【0054】
また、第1の枠体と第2の枠体を互いに対向する状態で結合する工程を有することにより、第1の枠体と第2の枠体を一体化して、扉枠全体としての剛性を高めることができる。
【0055】
上記の目的を達成するために、本発明の扉枠構造体の取付方法は、3方枠の第1の枠体の外周に沿って形成された第1の溝部に、第1の補強部材を設置する工程と、少なくとも2面を有する取付アングルの、一方の面を前記第1の補強部材に固定し、他方の面を壁面開口部が形成された壁面の内周に固定する工程と、3方枠の第2の枠体の外周に沿って形成された第2の溝部に、第2の補強部材を設置する工程と、前記第1の枠体と、前記第2の枠体を互いに対向する状態となるように結合する工程とを備える。
【0056】
ここで、3方枠の第1の枠体の外周に沿って形成された第1の溝部に、第1の補強部材を設置する工程を有することにより、第1の枠体の剛性を高め、第1の枠体の内周に設置される扉の開閉動作、又は地震発生時の横揺れ等に起因する第1の枠体の変位を最小限に抑えることができる。
【0057】
また、第1の補強部材に凸条部が形成されることにより、第1の補強部材自体の剛性を高めることができる。従って、地震発生時の激しい横揺れが生じた場合でも、第1の補強部材の破断を防止することができる。
【0058】
また、少なくとも2面を有する取付アングルの、一方の面を第1の補強部材に固定し、他方の面を壁面に形成された壁面開口部の内周に固定する工程を有することにより、取付アングルを介して、第1の補強部材を含む第1の枠体を壁面に結合することができる。
【0059】
また、3方枠の第2の枠体の外周に沿って形成された第2の溝部に、第2の補強部材を設置する工程を有することにより、第2の枠体の剛性を高め、第2の枠体の内周に設置される扉の開閉動作、又は地震発生時の横揺れ等に起因する第2の枠体の変位を最小限に抑えることができる。
【0060】
また、第2の補強部材に凸条部が形成されることにより、第2の補強部材自体の剛性を高めることができる。従って、地震発生時の激しい横揺れが生じた場合でも、第2の補強部材の破断を防止することができる。
【0061】
また、第1の枠体と第2の枠体を互いに対向する状態で結合する工程を有することにより、第1の枠体と第2の枠体を一体化して、扉枠全体としての剛性を高めることができる。
【0062】
また、第1の補強部材を設置する工程は、第1の補強部材を第1の溝部に対して摺動可能に設置する工程を含み、第2の補強部材を設置する工程は、第2の補強部材を第2の溝部に対して固定する工程を含む場合には、例えば、地震発生時の大きな横揺れにより、壁面が大きく層間変位した場合でも、取付アングルに固定された第1の補強部材が第1の溝部を摺動するため、第1の枠体、及び第1の枠体と結合された第2の枠体は、壁面の層間変位に追従することがない。また、第2の補強部材は第2の溝部内に固定されているため、第2の枠体の剛性は保たれた状態となる。従って、地震発生時の横揺れによる第1の枠体、及び第2の枠体の変形を最小限に抑えることができるため、緊急時においても扉の開閉が可能となる。
【発明の効果】
【0063】
本発明に係る扉枠構造体、及び扉枠構造体の取付方法は、剛性を高め、地震発生時の建物の層間変位に起因する変形を防止するとともに、取り付けが簡単なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明の実施形態に係る扉枠構造体の分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る扉枠構造体の正面図である。
図3】内側枠体の斜視図である。
図4】第1の補強部材の拡大図において(a)正面図、(b)側面図、(c)底面図、(d)斜視図、(e)第1の溝部への設置状態を示す図である。
図5】外側枠体の斜視図である。
図6】第2の補強部材の拡大図において(a)正面図、(b)側面図、(c)底面図、(d)斜視図、(e)第2の溝部への設置状態を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る扉枠構造体において(a)第2の枠材部分の縦断面図、(b)(c)第1の枠材部分の横断面図である
図8】取付アングルの拡大図において(a)正面図、(b)側面図、(c)底面図、(d)斜視図、(e)第1の補強部材との固定状態を示す図である。
図9】従来技術を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、扉枠構造体、及び扉枠構造体の取付方法に関する本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、各図においては、説明の便宜上、扉枠構造体を床面に設置した状態において、扉枠構造体の床面から上方に向かう方向を縦方向と定義し、上方向と垂直な方向で、扉枠構造体の長手方向を横方向と定義する。
【0066】
まず、本発明を適用した実施形態に係る扉枠構造体1の全体構成について、図1を用いて説明する。図1に示すように、扉枠構造体1は、内側枠体2(特許請求の範囲に記載の「第1の枠体」)、及び外側枠体3(特許請求の範囲に記載の「第2の枠体」)から構成されている。内側枠体2は、一対の縦方向に延びる第1の枠材2a、2b、及び該第1の枠材2a、2bの一端同士を連結し、横方向に延びる第2の枠材2cから構成され、第1の枠材2a、2b、及び第2の枠材2cはそれぞれ溶接、溶着、嵌合、その他周知の固定手段により固定されている。
【0067】
ここで、必ずしも、内側枠体2は第1の枠材2a、2b、及び第2の枠材2cにそれぞれ分割構成されている必要はなく、これら枠材が一体的に構成されていてもよい。但し、分割構成されていることにより、運搬、組み付け、及び分解が容易になるとともに、再利用も可能となるため、分割構成されている方が好ましい。
【0068】
また、第1の枠材2a、2b、及び第2の枠材2cは、その外周に第1の溝部7が凹設されており、断面略半割状に形成されている。
更に、第1の溝部7には、後述する第1の補強部材9(図1には図示しない)が第1の溝部7を摺動可能なように設置されている。
【0069】
また、外側枠体3は、同じく一対の縦方向に延びる第3の枠材3a、3b、及び第3の枠材3a、3bの一端同士を連結し、横方向に延びる第4の枠材3cから構成され、第3の枠材3a、3b、及び第4の枠材3cはそれぞれ溶接、溶着、嵌合、その他周知の固定手段により固定されている。
【0070】
ここで、必ずしも、外側枠体3は第3の枠材3a、3b、及び第4の枠材3cにそれぞれ分割構成されている必要はなく、これら枠材が一体的に構成されていてもよい。但し、分割構成されていることにより、運搬、組み付け、及び分解が容易になるとともに、再利用も可能となるため、分割構成されている方が好ましい。
【0071】
また、第3の枠材3a、3b、及び第4の枠材3cは、その外周に第2の溝部8が凹設されており、断面略半割状に形成されている。
更に、第2の溝部8には、後述する第2の補強部材10(図1には図示しない)が第2の溝部8に設置されている。
【0072】
壁面4には、壁面開口部5が形成され、また、壁面4の内周に沿って縦方向に延びる一対の柱部材6a、6b、及び横方向に延びる梁部材6cが壁面4に埋め込まれている。このような状態で、壁面開口部5の一方側から内側枠体2が、他方側から外側枠体3が、それぞれ壁面開口部5に嵌め込まれ施工される。この時、柱部材6a、6b、及び梁部材6cと、扉枠構造体1は当接するのみで、後述するように、一部で取付アングル11を介して間接的に固定されている。
【0073】
ここで、必ずしも、柱部材6a、6b、及び梁部材6cと、扉枠構造体1は間接的に固定されている必要はなく、柱部材6a、6b、及び梁部材6cと、扉枠構造体1が溶接等により直接的に固定されていてもよい。但し、柱部材6a、6b、及び梁部材6cと、扉枠構造体1が間接的に固定されることで、地震による揺動により、壁面4が層間変位した場合でも、壁面4の変位に追従することなく、扉枠構造体1の変位量を最小限に抑えることができる。従って、柱部材6a、6b、及び梁部材6cと、扉枠構造体1は間接的に固定されている方が好ましい。
【0074】
壁面開口部5に嵌め込まれ、壁面4に取り付けられた扉枠構造体1の周囲には、図2に示すように、第1の補強部材9、及び第2の補強部材10が設けられるとともに、2ヶ所に取り付けられた丁番32により開閉自在な扉31が保持されている。
【0075】
ここで、必ずしも、丁番32は2ヶ所である必要はなく、扉31の大きさに応じて適宜変更することができる。
【0076】
内側枠体2は、図3に示すように、左右一対の第1の枠材2a、2b、の上端に第2の枠材2cが架設されて、全体としてコの字状の3方枠の枠体を構成し、第1の枠材2a、2bの縦方向に沿うように、及び第2の枠材2cの横方向に沿うように第1の溝部7が連接されている。
【0077】
ここで、必ずしも、内側枠体2は、コの字状の3方枠に構成されている必要はない。例えば、第2の枠材2cを、第1の枠材2a、2bの上端よりもやや下側に架設させ、略H型に構成されていてもよい。更には、床面F側(第1の枠材2a、bの下端側)に、もう一本の枠材を架設させて、全体として四角状の方形枠としてもよい。
【0078】
第1の溝部7には、第1の溝部7の断面形状と略一致する第1の補強部材9が、第1の枠材2a、2bの縦方向、及び第2の枠材2cの横方向に摺動可能なように、第1の溝部7を横断する縦リブ状に設置されている。第1の補強部材9は、第1の枠材2a、2b、及び第2の枠材2cに、それぞれ2〜15個、均等の数だけ設置されており、内側枠体2には全部で6個〜45個が設置されている。また、第1の補強部材9は、後述する取付アングル11を介して、図3には図示しない壁面開口部5に取り付けられている。
【0079】
ここで、必ずしも、第1の補強部材9は第1の枠材2a、2b、及び第2の枠材2cのそれぞれに均等の数だけ設置する必要はない。例えば、第1の枠材2a、2bに設置する第1の補強部材9の数を、第2の枠材2cよりも少なく、またはその逆に設定してもよい。但し、地震発生時の横方向への変位を最小限にするという観点では、内側枠体2の全体の剛性のバランスが確保されている必要があるため、第1の枠材2a、2b、及び第2の枠材2cの長さ等を考慮して、設置する第1の補強部材9の配置バランスを適宜変更することが好ましい。
【0080】
また、必ずしも、第1の補強部材9の数は、各枠材に2〜15個である必要はない。内側枠体2の全体の大きさ、及び必要となる剛性等を考慮して適宜変更することができる。
【0081】
次に、第1の補強部材9の、詳細な形状について、図4を用いて説明する。第1の補強部材9は、第1の当接面12と第2の当接面13が折り曲げ加工により形成されており、これら第1の当接面12、及び第2の当接面13を連結する第1の連結板14から構成されている。第1の連結板14は、板厚が略1〜2mmの平板で、その全体形状が図4(e)に示す通り、内側枠体2に形成された第1の溝部7に嵌合可能な形状をしており、第1の溝部7の形状に応じて、適宜変更することができる。
【0082】
また、第1の連結板14の所定の範囲には、絞り加工により、凸条部15が形成されている。絞り加工は、第1の連結板14の30〜70%の面積に施されている。
【0083】
ここで、必ずしも、凸条部15が形成される範囲は、第1の連結板14の30〜70%の面積に設定する必要はない。但し、発明者が実験を繰り返した結果、30%よりも小さな面積であると、剛性がそれ程高まらず、70%よりも大きい面積であると、加工性が悪くなる。従って、30〜70%、好ましくは50〜70%に設定すると、加工性と剛性のバランスが最もよく釣り合う結果となることが判明した。
【0084】
第1の当接面12は、第1の溝部7の一方の側壁16aに当接され、第2の当接面13は、後述する壁面4への取付アングル11の一端に当接される。
【0085】
ここで、必ずしも、第1の補強部材9には、第1の当接面12を有している必要はない。但し、第1の当接面12を有することにより、地震の発生等により第1の補強部材9に所定以上の力が加わった場合でも、第1の補強部材9に加わる力を、第1の当接面12を通じて分散させることができ、第1の補強部材9が破断することを未然に防止することができる。
【0086】
また、必ずしも、第1の当接面12は、第1の溝部7の側壁16aに当接されている必要はない。例えば、第1の当接面12と第1の溝部7の側壁16aの間に所定の空間が設けれ、第1の補強部材9に力が加わり、第1の溝部7の中を第1の補強部材9が変位する場合にのみ、当接するように構成してもよい。
【0087】
第1の当接面12、及び第2の当接面13が形成されるL字の折り曲り部分には、強度を確保するための三角リブ17が取り付けられている。
【0088】
ここで、必ずしも、三角リブ17は取り付けられている必要はない。ただし、三角リブ17により、脆弱となるL字の付根部分を補強することが可能となる。
【0089】
次に、外側枠体3は、図5に示すように、左右一対の第3の枠材3a、3bの上端に第3の枠材3cが架設されて全体としてコの字状の3方枠を構成し、第3の枠材3a、3bの縦方向に沿うように、及び第4の枠材3cの横方向に沿うように第2の溝部8が連接されている。
【0090】
ここで、必ずしも、外側枠体3は、コの字状の3方枠に構成されている必要はない。例えば、第4の枠材3cを、第3の枠材3a、3bの上端よりもやや下側に架設させ、略H型に構成されていてもよい。更には、床面F側(第3の枠材3a、3bの下端側)に、もう一本の枠材を架設させて、全体として方形状の枠体としてもよい。
【0091】
第2の溝部8には、第2の溝部8の断面形状と略一致する第2の補強部材10が、第2の溝部8を横断する縦リブ状に設置されている。第2の補強部材10は第3の枠材3a、3b、及び第4の枠材3cにそれぞれ2〜15個、均等の数だけ設置されており、外側枠体3には全部で6個〜45個が設置されている。
【0092】
ここで、必ずしも、第2の補強部材10は第3の枠材3a、3b、及び第4の枠材3cのそれぞれに均等の数だけ設置する必要はない。例えば、第3の枠材3a、3bに設置する第2の補強部材10の数を第4の枠材3cよりも少なく、またはその逆に設定してもよい。但し、地震発生時の横方向への変位を最小限にするという観点では、外側枠体3の全体の剛性のバランスが確保されている必要があるため、第3の枠材3a、3b、及び第4の枠材3cの長さ等を考慮して、設置する第2の補強部材10の配置バランスを適宜変更することが好ましい。
【0093】
また、必ずしも、第2の補強部材10の数は、各枠材に2〜15個である必要はない。外側枠体3の全体の大きさ、及び必要となる剛性等を考慮して適宜変更することができる。
【0094】
次に、第2の補強部材10の詳細な形状について、図6を用いて説明する。第2の補強部材10は、第3の当接面18と第4の当接面19が折り曲げ加工により形成されており、これら第3の当接面18、及び第4の当接面19を連結する第2の連結板20から構成されている。第2の連結板20は、板厚が略1〜2mmの平板で、その全体形状が図6(e)に示す通り、外側枠体3に形成された第2の溝部8に嵌合可能な形状をしており、第2の溝部8の形状に応じて、適宜変更することができる。
【0095】
また、第2の連結板20の所定の範囲には、絞り加工により、凸条部21が形成されている。絞り加工は、第2の連結板20の30〜70%の面積に施されている。
【0096】
ここで、必ずしも、凸条部21が形成される範囲は、第2の連結板20の30〜70%の面積に設定する必要はない。但し、発明者が実験を繰り返した結果、30%よりも小さな面積であると、剛性がそれ程高まらず、70%よりも大きい面積であると、加工性が悪くなる。従って、30〜70%、好ましくは50〜70%に設定すると、加工性と剛性のバランスが最もよく釣り合う結果となることが判明した。
【0097】
また、第3の当接面18、及び第4の当接面19は、第2の溝部8の側壁22a、及び22bに当接され、第3の当接面18の近傍には、後述する通り、内側枠体2と外側枠体3を対向させて結合した際に、第2の連結板20の一部が内側枠体2の一部と当接する切欠き部30が形成されている。更に、第4の当接面19は、第2の溝部8の側壁22bに螺子止め固定されている。
【0098】
ここで、必ずしも、第2の補強部材10には、第3の当接面18、及び第4の当接面19を有している必要はない。但し、第3の当接面18、及び第4の当接面19を有していることにより、第2の補強部材10が第2の溝部8において強固に固定される。更に、地震の発生等により第2の補強部材10に所定以上の力が加わった場合でも、第2の補強部材10に加わる力を、第3の当接面18、及び第4の当接面19を通じて分散させることができ、第2の補強部材10が破断することを未然に防止することができる。
【0099】
また、必ずしも、第2の補強部材10は切欠き部30を有している必要はない。但し、切欠き部30を有することにより、切欠き部30と内側枠体2の摩擦抵抗力が高まるため、内側枠体2と外側枠体3の接合がより強固なものとなる。
【0100】
また、必ずしも、第2の補強部材10は、第2の溝部8に固定されている必要はない。
例えば、第3の当接面18、及び第4の当接面19が、第2の溝部8の側壁22a、22bにそれぞれ当接されているだけでもよい。但し、第2の補強部材10が、第2の溝部8に固定されていることにより、例えば、地震発生時の大きな横揺れにより、第1の枠体と一体となって変位する第2の枠体の剛性を保ち、地震発生時の横揺れによる第1の枠体、及び第2の枠体の変形を最小限に抑えることができるため、緊急時においても扉の開閉が可能となる。
【0101】
第4の当接面19が形成されるL字の折り曲り部分には、強度を確保するための三角リブ23が取り付けられている。
【0102】
ここで、必ずしも、三角リブ23は取り付けられている必要はない。ただし、三角リブ23により、脆弱となるL字の付根部分を補強することが可能となる。
【0103】
次に、内側枠体2、及び外側枠体3の壁面開口部5が形成された壁面4への取付状態について、図7を用いて説明する。内側枠体2と外側枠体3の結合は、内側枠体2の第1の溝部7の側壁16bから延設された凹片部24に、外側枠体3の第2の溝部8の側壁22aから延設された凸片部25が嵌合することで強固に固定されている。
【0104】
ここで、必ずしも、内側枠体2と外側枠体3は、凹片部24と凸片部25が嵌合する方法により結合されている必要はない。例えば、内側枠体2と外側枠体3を溶接、溶着、螺子止め等の周知の固定方法により結合してもよい。但し、凹片部24と凸片部25を嵌合して結合することにより、内側枠体2に外側枠体3を結合する際の目印となるとともに、組み付け後の溶接、溶着、及び螺子止め等の工程が不要となるため、組み付け工程が容易なものとなる。
【0105】
また、必ずしも、内側枠体2に凹片部24、外側枠体3に凸片部25が形成されている必要はない。例えば、内側枠体2に凸片部25、外側枠体3に凹片部24が形成されていてもよい。
【0106】
第1の補強材9の第2の当接面13には、L字状の取付アングル11の一面が当接し螺子止め固定されるとともに、取付アングル11の他面は、壁面4に当接し、柱部材6a、6b、及び梁部材6cに螺子止め固定されている。即ち、扉枠構造体1は、直接的には、壁面4に固定されておらず、内側枠体2に摺動可能に設置されている第1の補強部材9が、取付アングル11を介して壁面4に取り付けられている。
【0107】
ここで、必ずしも、取付アングル11の一面と、第1の補強材9の第2の当接面13、取付アングル11の他面と壁面4は螺子止め固定されている必要はない。例えば、溶接、溶着等の周知の固定方法により固定することができる。
【0108】
次に、取付アングル11の詳細形状について、図8を用いて説明する。取付アングル11は、略L字状をしており、壁面4への当接面である第5の当接面26、第1の補強部材9の第2の当接面13に当接する第6の当接面27を有している。第5の当接面26は第6の当接面27よりも、その当接面積が広く、また第5の当接面26には、絞り加工により凸条部28が形成されている。
【0109】
ここで、必ずしも、第5の当接面26の当接面積は、第6の当接面27の当接面積よりも広く設定する必要はない。但し、壁面4への当接面である第5の当接面26の当接面積を、第6の当接面27よりも広く設定することで、地震の発生により壁面4が大きく変位しても、取付アングル11が壁面4から外れることを防止することができる。
【0110】
また、必ずしも、第5の当接面26には絞り加工が施されている必要はない。但し、第5の当接面26は壁面4からの応力を直接受けるため、絞り加工により剛性を高めることで、壁面4から受ける応力により、取付アングル11が破断することを防止することができる。
【0111】
取付アングル11のL字の折り曲り部分には、強度を確保するための三角リブ29が取り付けられている。
【0112】
ここで、必ずしも、三角リブ29は取り付けられている必要はない。ただし、三角リブ29により、脆弱となるL字の付根部分を補強することが可能となる。
【0113】
以上のように、内側枠体2と外側枠体3から構成される扉枠構造体1は、内側枠体2に摺動可能に設置された第1の補強部材9、及び取付アングル11を介して間接的に壁面4に取り付けられている。
【0114】
従って、通常使用時においては、第1の補強部材9、及び第2の補強部材10により、扉枠構造体1の剛性を高めることができる。一方、地震発生時の横揺れ等に起因して壁面4が大きく層間変位しても、扉枠構造体1は、壁面4の層間変位に追従して変形することはない。よって、壁面4の層間変位に対する扉枠構造体1の変形を最小限に抑えることができるため、緊急時においても扉の開閉が可能となる。
【0115】
次に、扉枠構造体1の壁面開口部5への取付方法について説明する。
【0116】
<STEP1:第1の補強部材9を内側枠体2に設置する工程>
第1の枠材2a、2b、及び第2の枠材2cのそれぞれに、第1の補強部材9を第1の溝部7に摺動可能に設置する。
【0117】
<STEP2:第1の補強部材9に取付アングル11を当接固定する工程>
<STEP1>で第1の枠材2a、2b、及び第2の枠材2cのそれぞれに設置した第1の補強部材9の第2の当接面13に、取付アングル11の第6の当接面27を当接し、螺子止め固定する。
【0118】
ここで、必ずしも、第2の当接面13と、第6の当接面27は螺子止め固定する必要はない。例えば、溶着、溶接、及びコーキング等の周知の固定手段により固定することができる。
【0119】
<STEP3:第1の枠材2a、2b、及び第2の枠材2cを組み付ける工程>
第1の枠材2a、2bの一端に、第2の枠材2cを組み付けて3方枠の内側枠体2とする。
【0120】
ここで、第1の枠材2a、2b、及び第2の枠材2cが一体的に構成されている場合には、<STEP3>の工程は不要である。
また、4片の方形枠を構成する場合には、第1の枠材2a、2bの他端に、さらに枠材を追加して連結すればよい。
【0121】
<STEP4:第2の補強部材10を外側枠体3に設置する工程>
第3の枠材3a、3b、及び第4の枠材3cのそれぞれに、第2の補強部材10を第2の溝部8に設置する。
【0122】
<STEP5:第3の枠材3a、3b、及び第4の枠材3cを組み付ける工程>
第3の枠材3a、3bの一端に、第4の枠材3cを組み付けて3方枠の外側枠体3とする。
【0123】
ここで、第3の枠材3a、3b、及び第4の枠材3cが一体的に構成されている場合には、<STEP5>の工程は不要である。
また、4片の方形枠を構成する場合には、第3の枠材3a、3bの他端に、さらに枠材を追加して連結すればよい。
【0124】
<STEP6:内側枠体2を壁面4に組み付ける工程>
第1の補強部材9が固定された内側枠体2を、一方側から壁面開口部5に向けて嵌め込む。
【0125】
<STEP7:取付アングル11の壁面4へ取り付ける工程>
第1の補強部材9の第2の当接面13に固定された取付アングル11の第5の当接面26を壁面4に螺子止め固定する。
【0126】
ここで、必ずしも、第5の当接面26と、壁面4は螺子止め固定する必要はない。例えば、溶着、溶接、及びコーキング等の周知の固定手段により固定することができる。
【0127】
<STEP8:外側枠体3を内側枠体2に結合する工程>
外側枠体3を壁面開口部5の他端側から内側枠体2に対向するようにして嵌め込む。この時、内側枠体2に形成された凹片部24に、外側枠体3に形成された凸片部25を嵌合させることで、内側枠体2と外側枠体3を結合する。
【0128】
以上のように、本発明を適用した扉枠構造体、及び扉枠構造体の取付方法は、剛性を高め、地震発生時の建物の層間変位に起因する変形を防止するとともに、取り付けが簡単なものとなる。
【符号の説明】
【0129】
1、101 扉枠構造体
2 内側枠体
2a、2b 第1の枠材
2c 第2の枠材
3 外側枠体
3a、3c 第3の枠材
3c 第4の枠材
4 壁面
5 壁面開口部
6a、6b 柱部材
6c 梁部材
7 第1の溝部
8 第2の溝部
9 第1の補強部材
10 第2の補強部材
11 取付アングル
12 第1の当接面
13 第2の当接面
14 第1の連結板
15、21、28 凸条部
16a、16b、22a、22b 側壁
17、23、29 三角リブ
18 第3の当接面
19 第4の当接面
20 第2の連結板
24 凹片部
25 凸片部
26 第5の当接面
27 第6の当接面
30 切欠き部
31、106 扉
32 丁番
102,103 枠材
104 コイルバネ
F 床面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9