特許第6238515号(P6238515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238515
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】レンズ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20171120BHJP
   G02B 7/04 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G02B7/02 E
   G02B7/04 D
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-239749(P2012-239749)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-89362(P2014-89362A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年10月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】奥田 敏宏
【審査官】 登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−293238(JP,A)
【文献】 特開2007−322709(JP,A)
【文献】 特開2005−164620(JP,A)
【文献】 特開2009−085997(JP,A)
【文献】 特開平06−130264(JP,A)
【文献】 特開平07−043582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持する第1の鏡筒と、
光軸方向において前記第1の鏡筒の物体側の端部よりも像側に配置され、前記第1の鏡筒の前記光軸方向への移動を許容するように該第1の鏡筒に組み合わされる第2の鏡筒と、
前記第1および第2の鏡筒のうち一方の鏡筒に取り付けられた位置決め部材と、
前記第1の鏡筒と前記第2の鏡筒との間に配置され、前記第1の鏡筒を前記第2の鏡筒に対して前記物体側に付勢する弾性部材と、
カム部が設けられ、光軸回りで回転可能なカム筒とを有し、
前記第2の鏡筒には、前記カム部に係合するカムフォロワが設けられ、
前記カム部は、前記カム筒が回転することにより前記カムフォロワを介して前記第1および第2の鏡筒を前記光軸方向に移動させる領域と、前記カム筒が回転しても前記カムフォロワを介して前記第1および第2の鏡筒を前記光軸方向に移動させない領域とを有しており、
前記第1の鏡筒は、前記第1および第2の鏡筒のうち他方の鏡筒が前記弾性部材の付勢力によって前記位置決め部材に当接することで、前記第2の鏡筒に対して、外力による前記像側への移動が許容された状態で、前記物体側の所定位置に位置決めされることを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記位置決め部材は、
前記一方の鏡筒に締結される締結部と、
前記他方の鏡筒が前記弾性部材の付勢力によって当接する当接部と、
前記締結部と前記当接部との間に設けられ、前記第1の鏡筒の前記光軸方向への移動を許容する中間部とを有することを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記位置決め部材は、
前記締結部および前記当接部を有する第1の位置決め部材と、
該第1の位置決め部材における前記締結部と前記当接部との間の部分の外周に配置されて前記中間部を形成するとともに、前記当接部と前記一方の鏡筒とに当接することで前記第1の位置決め部材の前記一方の鏡筒に対する前記光軸方向での位置決めを行う第2の位置決め部材とにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記位置決め部材が前記一方の鏡筒における周方向の複数箇所に取り付けられ、
前記他方の鏡筒は、その周方向の複数箇所に、該複数の位置決め部材のそれぞれの前記中間部が挿入される穴部を有しており、
該複数の穴部のうち1つの穴部は前記中間部の外周面全体に係合し、他の1つの穴部は前記中間部の外周面のうち一部と係合し、残りの穴部は前記中間部の外周面全体に対して隙間を形成することを特徴とする請求項2または3に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記中間部の外周を囲むように配置されていることを特徴とする請求項から4のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載のレンズ装置により形成された被写体像を撮像することを特徴する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外力吸収構造を有するレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ装置等の光学機器には、光学性能だけでなく、衝撃等の外力に対する耐久性も求められている。特許文献1,2には、外力吸収機構を備えたレンズ装置が開示されている。
【0003】
特許文献1にて開示されたレンズ装置は、第1レンズ群を保持する保持部材と該保持部材の外周の前部に配置され、フィルタ等の光学部材が取り付けられる環状部材との間に、調整部材および付勢部材を挟んだ構成を有する。この構成では、外力が環状部材に作用すると、環状部材が付勢部材を圧縮しながら調整部材に当接する位置まで後退することで外力を吸収する。また、特許文献2にて開示されたレンズ装置は、レンズを保持した前側鏡筒と該前側鏡筒が移動可能に挿入された後側鏡筒とにテーパー面を形成し、第1の鏡筒を付勢部材により光軸方向に付勢して両鏡筒のテーパー面同士を当接させた構成を有する。この構成では、光軸方向だけでなく光軸に直交する方向に作用する外力をも吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−293238号公報
【特許文献2】特開2006−64930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて開示されたレンズ装置では、保持部材により保持された第1レンズ群に対して環状部材が後退する構成であるために、特に広角レンズのような画角の広いレンズでは、レンズ装置が径方向にて大型化するおそれがある。すなわち、後退した環状部材が第1レンズ群に干渉しないようにするためには、環状部材を第1レンズ群から径方向に離して配置する必要がある。画角の広いレンズでは、その周辺部に光軸に対して大きな角度を有する光線が入射するため、環状部材による該光線のケラレを防止するためには環状部材の径を大きくする必要がある。この結果、レンズ装置の径方向での大型化につながる。
【0006】
また、特許文献2にて開示されたレンズ装置では、レンズ群を保持する前側鏡筒の光軸方向や光軸に直交する方向での後側鏡筒に対する位置決めが、両鏡筒のテーパー面の当接によって行われるため、位置決め精度が低くなるおそれがある。
【0007】
本発明は、簡単な構成でありながらも、必要な位置決め精度を確保しつつ外力を吸収できる構造を有する小型のレンズ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、レンズを保持する第1の鏡筒と、光軸方向において前記第1の鏡筒の物体側の端部よりも像側に配置され、前記第1の鏡筒の前記光軸方向への移動を許容するように該第1の鏡筒に組み合わされる第2の鏡筒と、前記第1および第2の鏡筒のうち一方の鏡筒に取り付けられた位置決め部材と、前記第1の鏡筒と前記第2の鏡筒との間に配置され、前記第1の鏡筒を前記第2の鏡筒に対して前記物体側に付勢する弾性部材と、カム部が設けられ、光軸回りで回転可能なカム筒とを有する。前記第2の鏡筒には、前記カム部に係合するカムフォロワが設けられている。前記カム部は、前記カム筒が回転することにより前記カムフォロワを介して前記第1および第2の鏡筒を前記光軸方向に移動させる領域と、前記カム筒が回転しても前記カムフォロワを介して前記第1および第2の鏡筒を前記光軸方向に移動させない領域とを有する。前記第1の鏡筒は、前記第1および第2の鏡筒のうち他方の鏡筒が前記弾性部材の付勢力によって前記位置決め部材に当接することで、前記第2の鏡筒に対して、外力による前記像側への移動が許容された状態で、前記物体側の所定位置に位置決めされることを特徴とする。
【0009】
なお、上記レンズ装置を備えた撮像装置も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単な構成でありながらも、第1の鏡筒の第2の鏡筒に対する位置決め精度を確保しつつ、衝撃等の外力を効果的に吸収できる構造を有した小型のレンズ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1である交換レンズの構成を示す断面図。
図2】実施例1の交換レンズを装着した撮像装置の断面図。
図3】実施例1の交換レンズの正面図。
図4】本発明の実施例2である交換レンズ断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0013】
図2には、本発明の実施例1であるレンズ装置としての交換レンズ2と、該交換レンズが取り外し可能に装着された撮像装置としてのデジタル一眼レフカメラ(以下、単にカメラという)1とを示している。図2では、交換レンズ2内の撮影光学系の光軸AXLが延びる方向(以下、光軸方向という)をZ方向とし、光軸AXLに対して直交する方向のうち後述する撮像素子6の長辺方向をX方向、短辺方向をY方向としている。また、図2において、光軸方向(Z方向)のうち左側が物体側(被写体側)に相当し、右側が像側に相当する。以下の説明では、物体側を前側ともいい、像側を後側ともいう。
【0014】
まず、カメラ1の構成について説明する。メインミラー3は、図2に示すように交換レンズ2(撮影光学系)からの光路上に配置された状態で、交換レンズ2からの光束の一部を反射してファインダ光学系7,8に導き、残りの光束を透過させる。
【0015】
メインミラー3の背後にはサブミラー4が配置されている。サブミラー4は、メインミラー3を透過した光束を反射して焦点検出ユニット5に導く。メインミラー3およびサブミラー4は、不図示の駆動機構によって上記光路に対して進退される。焦点検出ユニット5は、位相差検出方式により焦点検出(交換レンズ2の焦点状態の検出)を行う。
【0016】
撮像素子6は、CCDセンサ又はCMOSセンサにより構成される。撮像素子6の受光面(撮像面)上には、交換レンズ2からの光束により物体像(被写体像)が形成される。撮像素子6は、物体像を光電変換し、撮像信号を出力する。
【0017】
9はディスプレイパネルであり、撮像素子6からの信号を不図示の信号処理部にて処理して得られた画像や、様々な撮像情報を表示する。
【0018】
次に、交換レンズ2の構成について説明する。交換レンズ2内の撮影光学系は、物体側から像側に順に配置された、第1レンズ群101、第2レンズ群102、第3レンズ群103、第4レンズ群104、第5レンズ群105、第6レンズ群106および第7レンズ群107を含む。また、撮影光学系は、第4レンズ群104と第5レンズ群105との間に配置された絞り108を含む。
【0019】
第1、第3、第4および第5レンズ群101,103,104,105は、ズーム操作環41が回転操作されてカム筒24が光軸回りで回転することで、光軸方向に移動して変倍を行う変倍レンズ群である。第2レンズ群102は、フォーカスユニット109からの駆動力を受けて又はフォーカス操作環42が回転操作されることで光軸方向に移動して焦点調節を行うフォーカスレンズ群である。第6レンズ群106は、不図示の防振ユニットからの駆動力を受けて光軸AXLに直交する方向にシフトして像振れを低減する防振レンズ群である。絞り108は、カメラ1に入射する光量を調節するために、その開口径が可変である。
【0020】
21は外装環であり、その後端には、カメラ1のマウントに対して着脱が可能なレンズマウント43が固定されている。22は外装環21の内側に配置された固定筒であり、外装環21に固定されている。23は固定筒22の内側に配置された案内筒であり、この案内筒23には、光軸方向に延びる不図示の直進溝部が形成されている。
【0021】
カム筒24は、固定筒22と案内筒23との間に、案内筒23の外周に接しながら光軸回りで回転可能に配置されている。カム筒24には、不図示のカム溝部(カム部)が形成されている。
【0022】
203は第1の鏡筒としての前側鏡筒であり、その前部は外装環21よりも前側に突出し、後部は固定筒22の内側に配置されている。202は第1レンズ群101を保持する第1レンズ保持枠であり、前側鏡筒203の前部の内側に取り付けられている。204は第2の鏡筒としての後側鏡筒であり、前側鏡筒203の後部の内側に配置され(すなわち、少なくとも前側鏡筒203の物体側の端部である前端部よりも像側に配置され)ている。後側鏡筒204は、後述する外力吸収構造を介して、前側鏡筒203の光軸方向への移動を許容するように該前側鏡筒203に組み合わされる。
【0023】
前側鏡筒203、後側鏡筒204および第1レンズ保持枠202により、第1レンズ群101を保持しつつ交換レンズ2内において光軸方向に移動可能な1群保持移動筒が構成される。
【0024】
25は後側鏡筒204に取り付けられたカムフォロワであり、カム筒24のカム溝部と案内筒23の直進溝部とに係合している。ズーム操作環41の回転操作によってカム筒24が回転されると、カムフォロワ25はカム溝部からそのリフトに応じた光軸方向への駆動力を受け、直進溝部にガイドされながら光軸方向に移動する。これにより、1群保持移動筒が第1レンズ群101とともに光軸方向に移動する。
【0025】
ただし、カム筒24のカム溝部には、上記のようにリフトによって1群保持移動筒を移動させる領域だけでなく、リフトが0(つまり光軸方向に対してカム溝部が延びる方向がなす角度が90°)の領域が存在する。この零リフト領域では、カム筒24が回転してもカムフォロワ25に駆動力を与えず、1群保持移動筒も光軸方向に移動させない。
【0026】
カムフォロワ25がこの零リフト領域にある状態で前側鏡筒203に後方に向かう外力が作用すると、カムフォロワ25がカム溝部に沿って移動して(カム筒24を回転させて)外力を逃がすことができないために、カムフォロワ25が破損するおそれがある。また、カム溝部のカム面にカムフォロワ25が強く押し付けられて、カム面に傷(凹み等)がつく可能性もある。このため、本実施例では、1群移動筒における前側鏡筒203と後側鏡筒204との間に外力吸収構造を設けている。
【0027】
図1には、図2に示した交換レンズ2のうち前側鏡筒203、後側鏡筒204および第1レンズ群101を保持した第1レンズ保持枠202を示すとともに、上述した外力吸収構造の詳細な構成を示している。なお、図1には、交換レンズ2の前端に外力や衝撃が作用する前(通常状態)を実線で示している。
【0028】
第1レンズ保持枠202は、第1レンズ群201を保持するレンズ保持部202aと、後述する前側鏡筒203に取り付けられる鏡筒取付け部202bとを有する。
【0029】
前側鏡筒203は、第1レンズ保持枠202の鏡筒取付け部202bが取り付けられることで第1レンズ保持枠202を保持する鏡筒保持部203aを有する。前側鏡筒203は、後述する位置決め部材としての位置決めピン205に設けられたストッパ部205aに当接するストッパ受け部203bと、位置決めピン205の中間軸部205bが挿入されるピン挿入穴部203cとを有する。さらに、前側鏡筒203は、後述する弾性部材としてのコイルばね206の前端部の当接を受けるばね受け部203dを有する。
【0030】
また、前側鏡筒203の前端部には、プロテクトフィルタ、NDフィルタ、PLフィルタ等の光学フィルタが着脱可能に取り付けられるフィルタ取付け部203eが設けられている。
【0031】
後側鏡筒204は、位置決めピン205に設けられた雄ねじ部205cが取り付けられる(締め込まれる)位置決めピン取付け部としての雌ねじ部204aと、コイルばね206の後端部の当接を受けるばね受け部204bとを有する。本実施例では、後部鏡筒204が「一方の鏡筒」に相当し、前側鏡筒203が「他方の鏡筒」に相当する。
【0032】
また、後側鏡筒204は、その後部に、上述したカムフォロワ25が取り付けられるフォロワ取付け部204cを有する。本実施例では、前側および後側鏡筒203,204は、変倍のために光軸方向に移動する部材であるが、焦点調節のために光軸方向に移動する部材であってもよいし、光軸方向において不動の(固定された)部材であってもよい。
【0033】
位置決めピン205は、その前端部にて該ピン205の径方向に突出するように形成された当接部としてのストッパ部205aと、その後部に形成された締結部としての雄ねじ部205cとを有する。さらに、位置決めピン205は、ストッパ部205aと雄ねじ部205cとの間に光軸方向に延びるように形成された中間部としての軸部205bを有する。上述したように雄ねじ部205cが後側鏡筒204の雌ねじ部204aに締め込まれる(締結される)ことで、位置決めピン205は、後側鏡筒204(一方の鏡筒)と一体化される。
【0034】
コイルばね206は、前側鏡筒203のばね受け部203dと後側鏡筒204のばね受け部204bとの間に光軸方向において圧縮された状態で配置され、前側鏡筒203を後側鏡筒204に対して前側に付勢する。通常状態では、コイルばね206の付勢力により、前側鏡筒203のストッパ受け部203bが位置決めピン205のストッパ部205aに後方から当接(圧接)し、前側鏡筒203の後側鏡筒204に対するそれ以上の前側への移動(抜け)が阻止される。
【0035】
このように構成された交換レンズにおいて、前側鏡筒203のピン挿入穴部203cが、後側鏡筒204に一体化された位置決めピン205の軸部205bに嵌合(係合)することで、後側鏡筒204に対して光軸に直交する方向(面内)にて位置決めされる。
【0036】
さらに、前述したようにコイルばね206の付勢力によって前側鏡筒203のストッパ受け部203bが位置決めピン205のストッパ部205aに当接する。これにより、前側鏡筒203は、後側鏡筒204に対して、その前端部が後部鏡筒204よりも前側に位置する光軸方向における所定位置に位置決めされる。
【0037】
そして、前側鏡筒203は、後側鏡筒204に対する後側への移動が許容されている。このため、前側鏡筒203の前側から外力(静的な外力や衝撃等)Fを受けた外力作用状態では、図中に2点鎖線で示すように、前側鏡筒203は、位置決めピン205および後側鏡筒204に対して、コイルばね206を圧縮しながら後側に移動する。これにより外力Fを吸収することができる。このようにして、外力吸収構造(または衝撃吸収構造)が構成される。
【0038】
前側鏡筒203の内周部には後退ストッパ部203fが形成されている。この後退ストッパ部203fは、前側鏡筒203が外力Fによって後側鏡筒204に対して所定量だけ後方に移動した際に、後側鏡筒204の内周部に形成されたストッパ受け部204dに当接し、前側鏡筒203のそれ以上の後方への移動を阻止する。これにより、第1レンズ群101がその像側に配置された第2レンズ群102と干渉したり、コイルばね206が過度に圧縮されたりすることが防止される。
【0039】
図3には、前側鏡筒203を物体側から見て示している。図2に示したピン挿入穴部203cは、前側鏡筒203における周方向の複数箇所(本実施例では5箇所)203c−1〜203c−5に設けられている。これらピン挿入穴部203c−1〜203c−5のそれぞれには、図2に示した位置決めピン205の軸部205bが挿入される。ピン挿入穴部203c−1〜203c−5のうち1つのピン挿入穴部203c−1は丸穴形状を有する。このピン挿入穴部203c−1が、図2に示したピン挿入穴部203cに相当し、ここに挿入された位置決めピン205の軸部205bの外周面全体に対して嵌合(係合)する。
【0040】
また、他の1つのピン挿入穴部203c−2は、特定の径方向(図2の上下方向)を長手方向とする長穴形状を有する。このピン挿入穴部203c−2は、ここに挿入された位置決めピン205における軸部205bの外周面のうち上記長手方向に直交する幅方向の両側部分(つまりは外周面の一部)に係合し、前側鏡筒203の該長手方向への変位を許容する。これにより、前側鏡筒203の後側鏡筒204に対する光軸に直交する面内での位置決めがなされる。他のピン挿入穴部203c−3〜203c−5は、これらに挿入された位置決めピン205の軸部205bの外周面全体に対して所定の隙間を形成する、つまりピン挿入穴部203c−3〜203c−5は、軸部205bの外周面とは係合しない内径を有する。
【0041】
前述したコイルばね206は、ピン挿入穴部203c−1〜203c−5のそれぞれに挿入された位置決めピン205の軸部205bの外周に、該軸部205bを囲むように配置されている。このように複数の位置決めピン205のそれぞれの外周にコイルばね206を配置することにより、前側鏡筒203の内径部の全周に当接する大きな径を有する1つのコイルばねを配置する場合に比べて、前側および後側鏡筒203,204を小型化することができる。1つの大きな径のコイルばねを用いる場合は、位置決めピン205との径方向でのオーバーラップを回避するために、これらを光軸方向または径方向にて離して配置する必要があり、この結果、前側および後側鏡筒203,204が光軸方向や径方向にて大型化する。
【0042】
前側鏡筒203と後側鏡筒204とを組み付ける際には、例えば、まず前側鏡筒203のピン挿入穴部203c−1〜203c−5の後側にコイルばね206を配置し、コイルばね206の前端部を前側鏡筒203のばね受け部203dに当接させる。そして、前側鏡筒203の内側に後側から後側鏡筒204を挿入し、後側鏡筒204のばね受け部204bをコイルばね206の後端部に当接させる。次に、ピン挿入穴部203c−1〜203c−5に位置決めピン205を挿入し、該位置決めピン205の雄ねじ部205cを後側鏡筒204の雌ねじ部204aに締め込む。続いて、前側鏡筒203に、第1レンズ群101を保持した第1レンズ保持枠202を取り付ける。
【0043】
なお、本実施例では、弾性部材としてコイルばね206を用いているが、板ばね等、他の弾性部材を用いてもよい。
【0044】
また、本実施例では、位置決めピン205が後側鏡筒204に取り付けられている場合について説明したが、前側鏡筒203に取り付けられてもよい。すなわち、位置決めピン205は、前側鏡筒203および後側鏡筒204のうち一方に取り付けられていればよい。この場合、前側鏡筒203に対して一体化された位置決めピン205の軸部205cが後側鏡筒204のピン挿入穴部に嵌合することで、前側鏡筒203が後側鏡筒204に対して光軸方向に直交する面内で位置決めされる。また、コイルばね206の付勢力によって、位置決めピン205のストッパ部に後側鏡筒204が当接することで、前側鏡筒203は後側鏡筒204に対して光軸方向にて位置決めされる。
【実施例2】
【0045】
図4には、本発明の実施例2である交換レンズのうち外力吸収構造を含む前側鏡筒203および後側鏡筒204を示している。本実施例では、実施例1と共通する構成要素には実施例1と同符号を付してそれらの説明は省略し、実施例1との相違を中心に説明する。
【0046】
前側鏡筒203のピン挿入穴部203cには、円筒形状に形成された第2の位置決め部材としてのスリーブ部材207の前部207aが挿入され、さらにスリーブ部材207の内側には第1の位置決め部材としての位置決めピン205が挿入されている。
【0047】
スリーブ部材207のうち前部207aよりも後方に延びる部分の外周にはコイルばね206が配置されている。スリーブ部材207の後部207bは、後側鏡筒204における雌ねじ部204aの前側に形成された穴部204eに挿入(圧入)され、後部207bの後端面は穴部204eの底面に当接している。一方、スリーブ部材207の前端面207cは、位置決めピン205のストッパ部205aに当接している。スリーブ部材207は、前側補鏡筒203の光軸方向への移動を許容する中間部を形成する。
【0048】
本実施例では、前側鏡筒203のピン挿入穴部203cと、後側鏡筒204の穴部204eに圧入されたスリーブ部材207の前部207aとが嵌合(係合)することで、前側鏡筒203の後側鏡筒204に対する光軸に直交する面内での位置決めがなされる。また、スリーブ部材207の後端面が後側鏡筒204の穴部204eの底面に当接し、スリーブ部材207の前端面207cが位置決めピン205のストッパ部205aに当接する。これにより、位置決めピン205(ストッパ部205a)の後側鏡筒204に対する光軸方向での位置が決まる。このため、位置決めピン205のストッパ部205aに、コイルばね206により前方に向かって付勢された前側鏡筒203のストッパ受け部203bが後方から当接することで、前側鏡筒203の後側鏡筒204に対する光軸方向での位置決めがなされる。
【0049】
本実施例でも、前側鏡筒203の前側から外力Fを受けた外力作用状態では、図中に2点鎖線で示すように、前側鏡筒203は、スリーブ部材207、位置決めピン205および後側鏡筒204に対してコイルばね206を圧縮しながら後側に移動する。これにより外力Fを吸収することができる。
【0050】
本実施例では、組み立て時において、まずスリーブ部材207の後部207bを後側鏡筒204の穴部204eに圧入し、該スリーブ部材207の後端面を穴部204eの底面に当接させるとともにスリーブ部材207を後側鏡筒204に保持させる。そして、コイルばね206をスリーブ部材207の外周に配置した後、後側鏡筒204を前側鏡筒203の内側に後側から組み付ける。このとき、スリーブ部材207の前部207aを前側鏡筒203のピン挿入穴部203cに嵌合させる。次に、位置決めピン205を、スリーブ部材207の内側に前側から挿入し、そのストッパ部205aがスリーブ部材207の前端面207cに当接するまで、雄ねじ部205cを後側鏡筒204の雌ねじ部204aに締め込む。スリーブ部材207を設け、その外周にコイルばね206を配置することで、組立て時にコイルばね206が脱落することを防止することができ、実施例1と比較して組立て性が向上する。
【0051】
また、実施例1では、前側鏡筒203の光軸方向での位置決め機能を持つ位置決めピン205(雄ねじ部205c)を後側鏡筒204(雌ねじ部204a)に対して締め込む量を正確に管理する必要があり、この結果、組み立て性を低下させる可能性がある。しかし、本実施例では、位置決めピン205の後側鏡筒204に対する締め込み量がスリーブ部材207により制限されるので、実施例1で必要とされるような締め込み量の管理は不要となり、組立て性をより向上させることができる。
【0052】
さらに、本実施例では、前側鏡筒203は、その内周面が後側鏡筒204の外周面との間に適度なクリアランスAを持つように配置されている。これにより、前側鏡筒203が、光軸に対する傾きを持って後側鏡筒204に対して後方に移動することが許容される。この結果、前側鏡筒203にこれを光軸に対して傾かせるような外力が作用した場合でも、これを吸収することができる。
【0053】
なお、上記各実施例では、撮像装置に対して着脱可能な交換レンズとしてのレンズ装置について説明したが、上記各実施例にて説明した構成は、レンズ一体型撮像装置に搭載されるレンズ装置(レンズ鏡筒)にも適用することができる。
【0054】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
外力に対する耐久性が高く、小型のレンズ装置を提供できる。
【符号の説明】
【0056】
2 交換レンズ
203 前側鏡筒
204 後側鏡筒
205 位置決めピン
206 コイルばね
図1
図2
図3
図4