(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献では、筒状のキースイッチに対応した専用の取付孔をダッシュボードに穿設し、この取付孔にキースイッチを挿通させて取付けるため、ダッシュボードに異なる径を有する複数種類のキースイッチを取付けることができず、ダッシュボードの汎用性が低く、製造コストを低く抑えることも困難な場合がある。
【0005】
本発明は、ダッシュボードに穿設された取付孔に筒状のキースイッチを挿通させて取付けるにあたって、ダッシュボードの汎用性が高く、コストも低く抑えることが可能なキースイッチの
取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、第1に、回動操作される筒状のキースイッチ18を、ダッシュボード12に穿設された取付孔19に挿通させて取付けるキースイッチの取付構造であって、取付孔19の周縁と、キースイッチ18の外周との間に介在させるリング状のスペーサ21を、該取付孔19に嵌合状態で着脱可能に装着できる
構造とし、キースイッチ18の外周に装着されるスペーサ21の内周側に、該キースイッチ18と係合する複数の係合部40,42を、位置を異ならせて設け、前記取付孔19は、キースイッチ18の一種である第1キースイッチ18Aを、前記スペーサ21を介さずに直接的に係合挿通させて取付けることが可能に構成され、一の係合部40は、第1キースイッチ18Aとは異なるキースイッチ18である第2キースイッチ18Bを、スペーサ21の内周側に嵌合挿入した際に、該第2キースイッチ18Bの係合突起44と凹凸係合する構造を有し、前記一の係合部40とは異なる他の一の係合部42は、第1キースイッチ18A及び第2キースイッチ18Bとは異なるキースイッチ18である第3キースイッチ18Cを、スペーサ21の内周側に嵌合挿入した際に、該第3キースイッチ18Cの係合突起46と凹凸係合する構造を有することを特徴としている。
【0007】
第2に、前記ダッシュボード12には凹状面29aが形成され、該凹状面29aの底面に前記取付孔19が穿設され、前記
スペーサ21は、上記取付孔19に挿入される挿入部38と、該挿入部38が上記取付孔19に挿入された状態で前記凹状面29aに収容されて係止される係止部39とを有することを特徴としている。
【0008】
第3に、キースイッチ18
B,18Cの外周に装着されるスペーサ21をCリング状に形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
取付孔の周縁と、キースイッチの外周との間に介在させるリング状のスペーサを、該取付孔に嵌合状態で着脱可能に装着できるため、スペーサを装着しない状態で挿通されるキースイッチの径と、スペーサを装着した状態で挿通されるキースイッチの径とを異ならせることが可能であり、1つのダッシュボードに複数種類のキースイッチを取付けることが可能になり、ダッシュボードの汎用性が向上する他、この汎用性向上によって、種々の車両に適用可能になるため、製造コストも低く抑えることが可能になる。
【0010】
また、キースイッチの外周に装着されるスペーサをCリング状に形成したものによれば、スペーサの径を拡大・縮小させることが可能になるため、スペーサの取付孔への装着が容易になる。
【0011】
さらに、キースイッチの外周に装着されるスペーサの内周側に、該キースイッチと係合する係合部を複数設けたものによれば、キースイッチをスペーサの複数の係合部の1つに係合させればよいため、係合位置の異なる複数種類のキースイッチに1つのスペーサで対応可能となり、汎用性がさらに向上する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明を適用した農業用のトラクタの側面図である。図示するトラクタは、作業車両の一種であり、このトラクタは、走行機体1と、走行機体1の後部に昇降リンク2を介して昇降可能に連結されたロータリ耕耘装置(作業機)3とを備えている。
【0014】
走行機体1は、左右一対の前輪4,4及び後輪6,6によって支持された車台7上における前部にボンネット8でカバーされた図示しないエンジンを搭載し、車台7上におけるボンネット8の後方に操縦部9を設置している。操縦部9は、オペレータが着座するシート11と、シート11の前方に配置された前側操作部であるダッシュボード12と、ダッシュボード12の上部背面側に支持されたステアリングハンドル13と、ダッシュボート12とシート11の間における低い位置に形成された床面14とを備えている。
【0015】
シート11に着座したオペレータは、ステアリングハンドル13を把持して操向操作を行い、下降状態のロータリ耕耘装置2を耕耘駆動させて走行機体1を前進走行させることにより、圃場での耕耘作業を行う。
【0016】
図2は、ダッシュボートの要部背面図である。ダッシュボード12は本体カバー16を備え、該本体カバー16の背面側には、前方に向かって上方に傾いた傾斜面17が形成され、この傾斜面17の上半部にメータパネルを嵌込み固定して設置するパネル孔16aが穿設される一方で、下半部には、ステアリングハンドル13の上方に後方傾斜した回転軸(図示しない)を挿通させるように後方側が開放された切欠き状のステアリング設置部16bと、筒状のキースイッチ18を取付けるための取付孔19とが形成され、この取付孔19は、ステアリングハンドル13の左右一方側に位置している。
【0017】
次に、
図2乃至
図6に基づきキースイッチ18を取付孔19に取付ける方法及びその構造について説明する。
【0018】
図3(A)乃至(F)は、スペーサの平面図、左側面図、背面図、右側面図、正面図及び底面図であり、
図4(A)乃至(C)は第1キースイッチの取付構造を示す斜視図、要部斜視図及び側面図である。上記取付孔19には、径や係合位置の異なる複数種類のキースイッチ(キーシリンダ)18を取付けることができる。この取付孔19へのキースイッチ18の取付方法について説明すると、取付孔19の周縁と、キースイッチ18の外周との間にリング状のスペーサ21を介在させるか否かを切換えることにより、取付孔19に径の異なる複数のキースイッチ18を挿通して固定することが可能になる。
【0019】
ちなみに、このリング状のスペーサ21はCリング状に成形され、キースイッチ18を取付孔19に前方側(内面側)から挿通して固定する前に予め取付孔19に嵌め込み固定される。このスペーサ21の詳細な構成は後述する。
【0020】
取付可能なキースイッチ18は、3タイプで、1つは、径が大きくスペーサ21が不要な第1キースイッチ(タイプA)18Aであり、残りの2つは、径が小さくスペーサ21が必要な第2キースイッチ(タイプB)18B及び第3キースイッチ(タイプC)18Cである。ちなみに、各キースイッチ18は、キー22(
図4乃至
図6参照)を差込んで一方側に回転(回転量が一回未満の回動も含むものであり、以下同じ)させることにより、始動スイッチ(図示しない)がON作動してエンジンが始動される一方で、このエンジン始動位置から他方側に回転させることにより、始動スイッチがOFF作動してエンジン駆動が停止される。
【0021】
まず、
図2及び
図4に基づいて、第1キースイッチ18Aの取付けについて説明する。キースイッチ18Aは、キー22が差込まれるキーロータ23が軸回りに回転可能に収容された円筒状のロータケース24を備え、このロータケース24の一端寄り部分は外周にネジを有するネジ部26となる一方で、他端寄り部分はネジ部26よりも大径であって本体カバー16の内面側である前面側に位置して収容される収容部27になる。ちなみに、キー22の回動操作に際しては、上記キーロータ23がキー22とともに一体的に回転する。
【0022】
ネジ部26の外周面の一部には、Dカット状に切欠かれて軸方向に延びるフラットな係合面26a,26aが形成され、この係合面26a,26aは、ネジ部26の周面の軸心を境にした対称位置に対称形状となるように一対設けられている。
【0023】
収容部27の外周面は、ネジ部26側に向かって段階的に小径となるように形成されているが、この収容部27の最小径となるネジ部26側端部でも、ネジ部26よりは大径に形成され、本体カバー16の内面側に接当する部分になる。ちなみに、この収容部27のネジ部寄り部分には、径方向外側に延出された環状の鍔部28が形成されている。
【0024】
一方、取付孔19は、後方に複数段(図示する例では2段)で階段状に突出した円形の段部29に穿設されている。さらに、この段部29の最後方に突出した突出端側には、前方に窪んだ凹状面29aが形成され、この凹状面29aのフラットな底面に円形状の取付孔19が穿設されている。
【0025】
この取付孔19は、第1キースイッチ18Aのネジ部26と同一径となり、この内周縁は、ネジ部26の外周面に沿う円弧部31と、ネジ部26の係合面26aの軸方向視の形状と同一であって前記円弧部31の両端部を接続する直線部32とから構成され、この取付孔19は、全体としてD形状となる。また、取付孔19の円弧部31の最下端及び最上端には、径方向外側に窪んだ係合溝33,34がそれぞれ凹設されるとともに、この円弧部31には、嵌合用凹部36が周方向に所定間隔毎に複数形成されている。
【0026】
そして、キースイッチ18Aのネジ部26を、本体カバー16の内面側から取付孔19に挿通させると、キースイッチ18A外周における一対の係合面26a,26aの何れかを一方が、取付孔19の上記直線部32に接当し、キースイッチ18Aが、自身の軸回り回転が規制(具体的には禁止)された状態で、取付孔19に係合挿通され、キースイッチ18Aのネジ部26が本体カバー16の外面側に突出した状態になる。この本体カバー16の外面側に突出したネジ部26の外周に、内周にネジが形成された筒状の取付具である取付ナット37をネジ係合させて締付けることにより、キースイッチ18Aをダッシュボード12(具体的には本体カバー16)に固定する。
【0027】
ちなみに、この取付ナット37の本体カバー16側の端部には、上記凹状面29aに嵌合収容されるフランジ部37aが一体的に形成され、第1キースイッチ18Aの取付時、このフランジ部37aが凹状面29aに嵌め込み固定される。
【0028】
図5(A)及び(B)は第2キースイッチの取付構造を示す斜視図及び側面図である。
図2、
図3及び
図5に示す通り、第2キースイッチ18Bは、スペーサ21が嵌合装着された取付孔19に挿通固定される。
【0029】
上記スペーサ21は、外周の径(外径)が前記取付孔19の径と同一に設定された挿入部38と、挿入部38の一端側に一体形成されたフランジ状の係止部39とを有している。係止部39は、挿入部38よりも大径である。このスペーサ21の周面の上端部には、第2キースイッチ18Bと係合させる係合スリット(係合部)40が形成され、この係合スリット40は、スペーサ21の挿入方向全体(挿入部38及び係止部39)に亘り形成され、この係合スリット40によって、スペーサ21は、全体として、上述したCリング形状となる。
【0030】
挿入部38の外周面には、取付孔19の直線部32に対応したフラットな切欠き状の係合面41が形成され、この係合面41によって挿入部38の断面視(挿入方向視)形状は、取付孔19と同一のD形状に成形されている。
【0031】
また、挿入部38の挿入端面の下端部(係合スリット40のスペーサ21軸心を挟んだ対称位置)には、係合凹部(係合部)42が切欠き状に形成されている。係合凹部42は、スペーサ21の後方に窪み、スペーサ21の挿入方向側が開放された状態になる。
【0032】
さらに、挿入部38の前記嵌合用凹部36が位置する部分には、それぞれ該嵌合用凹部36と凹凸嵌合する嵌合用凸部43が径方向外側に突出するようにして一体形成されている。ちなみに、係合用凸部43の径方向外側端面は、フランジ状の係止部39の外周面と同一面となる位置まで突出している。
【0033】
このスペーサ21の挿入部38を、係合面41と直線部32とが接当するようにして、本体カバー16の外面側から、取付孔19に嵌合して挿入することにより、各嵌合凸部43が対応する各嵌合凹部36に凹凸嵌合し、係合スリット40と係合溝33とが挿入方向視で完全に重なり、且つ係止部39が、本体カバー16側の前記凹状面29aの底面に接当した状態で、該スペーサ21が取付孔19に嵌入固定される。
【0034】
一方、第2キースイッチ18Bは、ネジ部26の径が取付孔19よりも小径であって且つスペーサ21の内径と同一の断面視円形に形成され、このネジ部26の収容部27側端部の上端部には、上述した係合スリット40及び係合溝33と凹凸係合する係合突起(係合部)44が一体的に形成されている。また、第1キースイッチ18Aとは異なり、鍔部28は設けられていない。さらに、取付具37としては、フランジ部37aが省略されて内周にネジが形成された円筒状部材を用いる。
【0035】
この第2キースイッチ18Bの本体カバー16への設置に際しては、まず、上述した通りにしてスペーサ21を取付孔19に嵌合させ、その後、第2キースイッチ18Bのネジ部26を、本体カバー16の内面側から、スペーサ21の内周側に嵌合挿入し、係合突起44を、係合スリット40及び係合溝33に係合させると、第2キースイッチ18Bの軸回り回転が規制(具体的には禁止)された状態で、第2キースイッチ18Bのネジ部26が、本体カバー16の外面側から突出し、この突出したネジ部26に取付具37をネジ係合して締付けることにより、この第2キースイッチ18Aが本体カバー16に取付固定される。
【0036】
図6(A)は第3キースイッチの取付構造を示す斜視図であり、(B)は(A)とは別の角度から見た第3キースイッチの取付構造を示す斜視図であり、(C)は第3キースイッチの取付構造を示す側面図である。
図2、
図3及び
図6に示す通り、第3キースイッチ18Cは、ネジ部26の径が取付孔19よりも小径で且つスペーサ21の内径と同一に設定されている。
【0037】
このネジ部26の収容部27側端部の下端部には、上述した係合凹部42及び係合溝34と凹凸係合する係合突起(係合部)46が一体的に形成されている。また、第2キースイッチ18Bと同様に鍔部28は設けられていない。
【0038】
この第3キースイッチ18Cの本体カバー16への設置に際しては、まず、上述した通りにしてスペーサ21を取付孔19に嵌合させ、その後、第3キースイッチ18Cのネジ部26を、本体カバー16の内面側から、スペーサ21の内周側に嵌合挿入し、係合突起46を、係合凹部42及び係合溝34に係合させると、第3キースイッチ18Cの軸回り回転が規制(具体的には禁止)された状態で、第3キースイッチ18Cのネジ部26が、本体カバー16の外面側から突出し、この突出したネジ部26に取付具37をネジ係合して締付けることにより、この第3キースイッチ18Cが本体カバー16に取付固定される。
【0039】
ちなみに、第3キースイッチ18Cを本体カバー16に取付けた際、取付具37の内周側にスペーサ21が収容されるように、該取付具37の本体カバー16側端部の内周径(内径)は他の部分の内径に比べて拡大されて図示しない収容部を形成している。
【0040】
以上のように構成されるキースイッチ18の取付方法及びその構造によれば、スペーサ21の有無を切換えることにより、径(具体的にはネジ部の径)が異なる複数周囲のキースイッチ18A,18B,18Cを、同一種類のダッシュボード12に取付けることができるため、汎用性が向上し、製造コストを低く抑えることができる。
【0041】
また、スペーサ21の内周側にキースイッチ18B,18Cと係合する係合部40,42を複数形成しているため、係合位置の異なる複数種類のキースイッチ18B,18Cを、該スペーサ21を介して、取付孔19に設置できるため、スペーサ21の汎用性も向上する。
【0042】
ちなみに、このようなダッシュボード12に径の異なる複数種類のキースイッチ18A,18C,18Bを取付ける場合、従来のものでは、ダッシュボード12の成形後に後工程で、キースイッチ18C,18Bに対応した取付孔19を穿設する必要があり、加工費用分だけ製造コストが高くなるが、上述したキースイッチ18A,18C,18Bの取付方法及びその構造によれば、このような後工程も不要になる。