特許第6238522号(P6238522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238522汚水枡内に設置する真空自動開閉装置における逆流防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238522
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】汚水枡内に設置する真空自動開閉装置における逆流防止方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20171120BHJP
   E03F 5/22 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   E03F7/00
   E03F5/22
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-11227(P2013-11227)
(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公開番号】特開2014-141831(P2014-141831A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2016年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】512113984
【氏名又は名称】越智 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】越智 俊之
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−025790(JP,A)
【文献】 特開2009−281042(JP,A)
【文献】 特開平07−303876(JP,A)
【文献】 特開2001−355261(JP,A)
【文献】 米国特許第4171853(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚水枡(X)内に設置し、該汚水枡内の汚水を真空排出する真空自動開閉装置であって、汚水枡(X)内に位置し、汚水を吸引するメインの真空吸引管(1)に、該吸引管から分岐した吸引ホース(15)の一端を連通して設けると共に、該吸引ホース(15)の他端は、汚水枡(X)内に位置する密封容器(7)内に連通して設け、前記吸引ホースの中途には、2個の小型の真空貯留タンク(A),(B)をそれぞれ連通して設け、前記両真空貯留タンク間に位置する吸引ホース(15)の中途には、チェック弁(C)を設け、汚水の逆流を防止する真空自動開閉装置における汚水逆流防止方法において、
汚水枡(X)内の密閉容器(7)内に位置する小型ボールバルブ(8)が、浮力により開くことにより、地上に位置し、メインボールバルブ(2)と隣接する真空シリンダ(6)は容積が大きく、該シリンダ内の大気圧が真空圧と置換され、
真空吸引管(1)から汚水が吸引される際、汚水は、径管の小さな分岐された吸引ホース(15)より径管の大きな小型の真空貯留タンク(A)に吸引されるが、容積変化が大きく真空流速及び吸引される汚水流速も急激に低下し汚水は下部に留まるよう構成し、
さらに、前記2個の真空貯留タンク(A),(B)の配管を、それぞれ下部に入口(A1),(B1),上部に出口(A2),(B2)を設ける構造とし、
供給された真空圧は前記小型ボールバルブ(8)を経由して真空シリンダ(6)に供給され、真空圧により汚水も吸引されるが、小型タンクでの容積変化で真空流速及び吸引される汚水流速が急速に低下し、汚水は各真空貯留タンクの下部に溜り、密封容器(7)に汚水が浸入する確率を大幅に低減可能にする
ことを特徴とする汚水枡内に設置する真空自動開閉装置における汚水逆流防止方法。
【請求項2】
メインの真空吸引管(1)から分岐した吸引ホース(15)を該ホースの径より大きな真空貯留タンク(A),(B)とすることにより真空流速及び吸引される汚水の流速を急激に低下させるよう構成したことを特徴とする請求項1記載の汚水枡内に設置する真空自動開閉装置における汚水逆流防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、汚水枡内に設置する真空自動開閉装置における逆流防止方法に関するものであり、特に、流体の貯留槽(汚水枡)から流体(汚水)を真空排出する真空自動開閉装置における逆流防止方法である。
【背景技術】
【0002】
従来、市街地等の老朽化した下水道本管を、新管に置き換える間、各家庭の汚水枡の汚水を真空吸引して、汚水を下流側に排出するため、各家庭の汚水枡に1セットづつ自動開閉弁を設置する必要があり、それぞれ設けられている。(図2参照)
【0003】
従来の汚水桝内設置装置(特願2012−105269号)(以下、ドライブ装置という)は、本願出願人の発明であるが、メインバルブの開閉に必要な機能を達成するためのものである。
【0004】
即ち,浮力を利用して密閉容器内の小型ボールバルブを開閉し、該バルブの開閉によりメインバルブを開閉し、汚水を真空排出する装置であり、この発明は該装置に基づいて発明された逆流防止方法である。
【0005】
即ち、従来の逆流防止装置では、密封容器内に汚水が侵入するケースが発生し、小型バルブの開閉に支障を来たし、その結果、メインのバルブ開閉が不可能となるトラブルが発生していた。
【0006】
また、汚水が確実に排出されないと、汚水が地上に流出して地域住民に異臭・悪臭とで多大な迷惑を生じると共に、その結果、事後処理にも煩雑な作業や多大な費用が発生するという欠点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこでこの発明は、従来の欠点を除去し、貯留槽(汚水桝)に自動開閉装置を組み込んだ密閉容器を設置し、フロートに作用する浮力を利用して自動開閉弁を開閉し供給されている真空圧をON.OFFし地上の真空シリンダに伝達してメインのバルブを開閉し、流体(汚水)を真空排出する装置の自動開閉装置内に排出すべき汚水が逆流するのを防止するための逆流防止方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この発明は、汚水枡内に設置する真空自動開閉装置において、メインの真空吸引管に、該吸引管から分岐した吸引ホースの一端を連通して設けるとともに、該吸引ホースの他端は、密封容器内に配置して設け、該吸引ホースの中途には、複数の小型の真空貯留タンクをそれぞれ連通して設け、これら真空貯留タンク間の吸引ホースには、チェック弁を設けたことを特徴とする汚水枡内に設置する真空自動開閉装置における逆流防止方法である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によると、従来装置に新規なバイタル部位を装着した逆流防止装置を設けることにより、密封容器に、小型バルブの切り替え時に、吸引ホースで排出すべき汚水が逆流するのを防止することが可能となった。
【0010】
即ち,メインの真空吸引管から分岐した吸引ホースを、小型の真空貯留タンク2個を配置し、タンク間のホースにチェック弁を挿入し、密封容器の小型のバルブに連接し、小型タンクの配管は、下部に入口を、上部に出口を設ける構造とし、供給された真空圧は、小型バルブを経由して真空シリンダに供給される結果、真空圧により汚水も吸引されるが、小型タンクでの容積変化で真空流速及び吸引される汚水流速が急速に低下し、汚水は下部に溜まるが、密封容器に汚水が浸入する確立を大幅に低減可能にするとの効果を有する。
【0011】
タンク下部に溜まった汚水は、吸引管内の真空流速により、ベルヌーイの原理から負圧が大となり、吸引管側に吸引され、タンク間ホースにチェック弁を装着することにより汚水の浸入防止に一層確実なものとしたものである。
【0012】
従って、配置された小型の真空貯留タンクが、アキュムレータの役割を果たし、真空シリンダに真空圧を供給するに当たり、真空圧を迅速に供給することが出来、メインバルブの開閉時間の数秒(0.5秒位)のタイムラグを防止することができ、開閉を非常にスムースに行うことが出来る等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明に使用する装置の一実施例を示す一部欠截斜視図である。
図2】この発明に使用する装置の設置状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の好適な実施の形態として詳細に説明する。尚、この発明においては、以下の記述に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲においては適宜変更可能である。
【実施例】
【0015】
先ず、この発明を実施する装置は、流体の貯留槽(汚水桝)から流体(汚水)を真空排出する真空自動開閉装置の逆流防止装置であり、この発明の説明のためにボールバルブ式自動真空開閉弁の構成を、図面に基づいて説明すると共に、動作順序の一実施例を説明する。
【0016】
〔1〕 ボールバルブ式自動真空開閉弁の構成要素
ボールバルブ式自動真空開閉弁は、図1に示すように地上装置部と貯留槽(汚水枡)(X)内に設置されるフロート部と密閉容器部及び地上装置と貯留槽内装置とを結び付ける装置部に分かれている。
【0017】
1) 地上装置部は、真空駆動源に連結した真空吸引管(1)とメインボールバルブ(2)及び該バルブを開閉するためのラック(3)は、バルブ側に設け、ピニオン(4)は単動型真空シリンダ(6)のシリンダのロッド(6a)に結合されている。
【0018】
前記単動型真空シリンダのためにシリンダロッド先端側には、ロッドを初期位置に戻すためのスプリング(5)がシリンダロッドの引っ張り用としてセットされている。
【0019】
2) 前記貯留槽(X)にセットされる装置は、密閉容器(7)及び大気開放型小型ボールバルブ(8)及びバルブを開閉するチェーン駆動型回転円盤(9)が取付けられている。
【0020】
フロート(13)とチェーン駆動型回転円盤(9)とは、チェーン(または紐)とで結合されている。チェーンの上部は引っ張り調整用のネジが取り付けられている。この部位からからの流体の浸入を防ぐために密封キャップ(14)が取り付けられている。フロート(13)と密閉容器(7)とは、チェーン部からの流体の浸入を防ぐために密封保持用ゴム製蛇腹(12)で結合されている。
【0021】
3) また、地上装置と貯留槽(汚水枡)(X)内との連結部品としては、吸引管(1)から分岐した吸引ホース(16)が、小型の大気圧開放型ボールバルブ(8)に結合されている。又、吸引ホース(16)にはシリンダロッドの速度を調整するための真空空気調整バルブ(19)が装着されている。
【0022】
密閉容器(7)内を大気圧で充満するために大気連通ホース(17)が密閉容器(7)と地上装置に取付けされている。特に、吸引ホース(15)には、吸引管(1)からの汚水が密閉容器(7)に逆浸入しないように逆流防止装置(20)が組み込まれている。
【0023】
又、メインボールバルブ(2)の他端かち流体(汚水)を貯留槽(汚水桝)(X)から吸引するための吸引管(18)が、該貯留槽の下部の位置まで挿入されている。
以上が、ボールバルブ式自動真空装置の主な構成要素である。
【0024】
〔2〕 作動順序
1) メインボールバルブ(2)及び小型の大気開放型ボールバルブ(8)が閉じられた状態で、貯留槽(汚水桝)(X)流体(汚水)が流入されてくる。この時、真空吸引管(1)及び吸引ホース(15)には真空圧が充満している。又、単動型真空シリンダ(6)のロッドはスプリング(5)には初期位置に引っ張られ、メインボールバルブ(2)は閉じた状態である。
【0025】
一方、チェーン駆動型回転円盤(9)に取り付けられた小型の大気開放型ボールバルブ(8)もスプリング(10)により閉じた状態である。流体(汚水)が貯留槽(汚水桝)(X)に溜まりフロート(13)に浮力が作用しだすと、チェーン(11)に張力が働きスプリング(10)に打ち勝ち、チェーン駆動型回転円盤(9)が回転し、小型の大気開放型ボールバルブ(8)が開きだす。
【0026】
その結果、真空圧が単動型真空シリンダ(6)に入りピニオン(4)がスプリング(5)に打ち勝ってラック(3)を回転させ、メインボールバルブ(2)を開く。
【0027】
吸引管(1)の真空圧は、吸引管(18)を経由して、流体(汚水)の排出を行う。両バルブが完全に開き流体(汚水)を完全に排出するとフロート(13)に作用している浮力がなくなり、小型の大気開放型メカニカルバルブ(8)はスプリング(10)に負けて閉じる。
【0028】
このとき、小型の大気開放型ボールバルブ(8)は、大気連通ホース(17)により大気が充満している密封容器(7)内の大気と置換される。それに従い、吸引ホース(16)に溜まった真空圧は大気圧となり、単動型真空シリンダ(6)の内部も大気圧となりロッド側と圧力がバランスする。
【0029】
このためスプリング(5)の力よりロッドのピニオン(4)は、ラック(3)を回転させメインボールバルブ(2)を「開」から「閉」の状態に移行させる。
この一連の動作のとき大気圧と真空圧のバランスの差異により、吸引ホース(15)のラインに逆流防止装置(20)を組み込んでいる。
【0030】
この発明の逆流防止装置に構成要素を、図2に示すと、逆流防止装置(20)の小型の真空貯留タンク(A)(B)とし、これらタンク(A)(B)の吸引ホース(15)の間にチェック弁(C)を挿入した構成からなり、真空吸引管(1)から分岐した吸引ホース(15)は、小型の真空貯留タンク(A)の下部で連接されており、上部から吸引ホース(15)が出ている。
【0031】
該吸引ホース(15)と小型の真空貯留タンク(B)との間に、チェック弁(C)が配置されている。吸引ホース(15)は該タンク(B)の下部で連接されており、上部より分岐した吸引ホース(15)は、密封容器(7)の中に設置された小型の大気開放型ボールバルブ(8)に結合されている。
【0032】
〔3〕 逆流防止弁の作動原理の説明
浮力により小型の大気開放型ボールバルブ(8)が開くと、単動型真空シリンダ(6)内の大気圧が、真空圧と置換される。該シリンダ(6)の容積が大きいため、真空圧に置換する時に真空吸引管(1)から流体(汚水)を吸引することになる。流体(汚水)は、径管の小さな分岐された吸引ホース(15)より径管の大きな小型の真空貯留タンク(A)に吸引されるが、容積変化が大きいため真空流速及び吸引される汚水流速も急激に低下するため、流体(汚水)は下部に溜まるだけになる。
【0033】
小型の真空貯留タンク(A)の上部から吸引ホース(15)が出ているため、流体(汚水)は吸引され難くなっている。それでも通過した流体(汚水)は、更にチェック弁(C)で阻止される。
【0034】
次に、同様な機能を有した小型の真空貯留タンク(B)が装着されていることにより、流体(汚水)は完全に阻止され、密封容器(7)に浸入することはない。小型の真空貯留タンク(A)に溜まった流体(汚水)は、真空吸引管(1)内の真空流速により、ベルヌーイの原理から負圧が大きくなり、該真空吸引管側に吸引される。
【0035】
又、小型の真空貯留タンク(A)(B)は、真空圧のアキュムレータの役割も果たし、この発明の構造上、狭隘なスペースでの対応が必要となり、分岐した吸引ホース(15)及びホース(15)の口径が細くならざるを得ない。
【0036】
一方、単動型真空シリンダ(6)の口径は太いため真空圧の供給を、迅速かつ大量に行う必要がある。この時小型の真空貯留タンク(A)(B)がアキュムレータの役割を果たし、真空圧を、迅速かつ大量に供給し、数秒のタイムラグの防止を可能とした。この数秒のタイムラグの防止が、流体(汚水)を確実に、又、安全に排出するためのキーポイントになる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明によると、汚水枡内に設置する真空自動開閉装置における逆流防止方法の技術を確立し、これに基づいて大量に製造・販売することにより産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0038】
1 真空吸引管
2 メインボールバルブ
3 ラック
4 ピニオン
5 スプリング
6 単動型真空シリンダ
6a シリンダロッド
7 密閉容器
8 小型の大気開放型ボールバルブ
9 チェーン駆動型回転円盤
10 スプリング
11 チェーン(あるいは紐)
12 密封保持用ゴム製ジャバラ
13 フロート
14 密封キャップ
15 分岐した吸引ホース
16 シリンダロッド吸引ホース
17 大気連通ホース
18 吸引管
19 真空空気調整バルブ
20 逆流防止装置
A 小型の真空貯留タンク
A1 小型の真空貯留タンクAの配管の入口
A2 小型の真空貯留タンクAの配管の出口
B 小型の真空貯留タンク
B1 小型の真空貯留タンクBの配管の入口
B2 小型の真空貯留タンクBの配管の出口
C チェック弁
X 貯留槽(汚水桝)
Y ケーシング
図1
図2