特許第6238531号(P6238531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238531構造部材の形状データの取得方法および取得装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238531
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】構造部材の形状データの取得方法および取得装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20171120BHJP
   G06F 17/50 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   G01B11/24 A
   G06F17/50 626C
   G06F17/50 624A
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-41363(P2013-41363)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-169904(P2014-169904A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 裕明
(72)【発明者】
【氏名】桑原 浩二
(72)【発明者】
【氏名】霍 佳
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−326347(JP,A)
【文献】 特開2011−134234(JP,A)
【文献】 特開2009−136987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ距離計により得られる板状の構造部材の表面の三次元位置を示すデータ群に基づき所定の平面領域を探索することにより当該構造部材の形状データを取得する取得方法であって、
レーザ距離計により構造部材の表面の三次元位置を示すデータ群を取得する工程と、
上記データ群から探索を行うための探索平面を検出する工程と、
上記検出された探索平面にデータ群をレーザ距離計からのレーザ光の照射角度を考慮して投影し構造部材の表面を表すデータ群を取得する工程と
を具備し、
探索平面を検出するに際し、所定の平面領域に係る三次元のデータ群を、構造部材の表面であると見做せる許容厚さ域と、この許容厚さ域の上側および下側で構造部材の表面と見做せない非許容厚さ域との3つの層に分けるとともに、上記許容厚さ域内のデータ群の平均値を用いる三層平面域検出法を適用し、
探索平面を第1探索軸と当該第1探索軸に直交する第2探索軸とで決定するとともにこれら第1探索軸および第2探索軸により探索平面を検出する工程として、
第1探索軸および第2探索軸を求めるのに三層平面域検出法を用いるとともに上記各探索軸を求めるための探索開始点を含む探索開始平面の領域および当該探索開始平面に含まれる初期探索軸を求める工程と、
上記探索開始平面の領域内で且つ初期探索軸に沿うデータ群に三層平面域検出法を適用して許容厚さ域内のデータ群を求めるとともにこのデータ群に最小二乗法を適用して新たな更新探索軸を求める工程と、
上記求められた更新探索軸上に上記探索開始点を投影するとともに、この更新探索軸上で探索開始平面の領域を延長し、この延長された平面領域内で且つ更新探索軸に沿うデータ群に三層平面域検出法を適用して許容厚さ域内のデータ群を求めるとともにこれらデータ群に最小二乗法を適用して更なる更新探索軸を求める工程を探索終了条件を満たすまで繰り返し行う工程と、
上記工程により求められた第1探索軸および第2探索軸により探索平面を検出する工程と
を具備させたことを特徴とする構造部材の形状データの取得方法。
【請求項2】
構造部材の表面を表すデータ群に凸包処理を施し仮外形としての多角形を求める工程と、
上記求められた多角形の各辺を延長して交点を求める工程と、
上記交点を有し且つ多角形の外側に形成される仮想三角形の面積を求める工程と、
上記求められた仮想三角形のうち、面積が一番小さい仮想三角形を多角形に含ませて当該多角形の角数を1つ減らす工程と、
上記角数を減らす工程を繰り返すことにより当該角数が最終形状としての角数となるようにする工程と
を具備したことを特徴とする請求項1に記載の構造部材の形状データの取得方法。
【請求項3】
レーザ距離計により得られる板状の構造部材の表面の三次元位置を示すデータ群に基づき所定の平面領域を探索することにより当該構造部材の形状データを取得する取得装置であって、
レーザ距離計により構造部材の表面の三次元位置を示すデータ群を取得するデータ群取得部と、
上記データ群から探索を行うための探索平面を検出する探索平面検出部と、
上記検出された探索用平面にデータ群をレーザ距離計からのレーザ光の照射角度を考慮して投影し構造部材の表面を表すデータ群を取得する表面データ取得部と
を具備し、
探索平面検出部において、所定の平面領域に係る三次元のデータ群を、構造部材の表面であると見做せる許容厚さ域と、この許容厚さ域の上側および下側で構造部材の表面と見做せない非許容厚さ域との3つの層に分けるとともに、上記許容厚さ域内のデータ群の平均値を用いる三層平面域検出法を適用し、
探索平面検出部において、探索平面を第1探索軸と当該第1探索軸に直交する第2探索軸とで決定するようになし且つこれら各探索軸を求めるのに三層平面域検出法を用いるとともに、
当該探索平面検出部を、
上記各探索軸を求めるための探索開始点を含む探索開始平面の領域および当該探索開始平面に含まれる初期探索軸を求める初期探索軸検出部と、
上記探索開始平面の領域内で且つ上記初期探索軸に沿うデータ群に三層平面域検出法を適用して許容厚さ域内のデータ群を求めるとともにこのデータ群に最小二乗法を適用して新たな更新探索軸を求める第1更新探索軸検出部と、
上記第1更新探索軸検出部で求められた更新探索軸上に上記探索開始点を投影するとともに、この更新探索軸上で探索開始平面の領域を延長し、この延長された平面領域内で且つ更新探索軸に沿うデータ群に三層平面域検出法を適用して許容厚さ域内のデータ群を求めるとともにこれらデータ群に最小二乗法を適用して更なる更新探索軸を求める工程を探索終了条件を満たすまで繰り返し行う第2更新探索軸検出部と、
上記第2更新探索軸検出部で求められた第1探索軸および第2探索軸により探索平面を決定する探索平面決定部と
を具備させたことを特徴とする構造部材の形状データの取得装置。
【請求項4】
構造部材の表面を表すデータ群に凸包処理を施し仮外形としての多角形を求める凸包処理部と、
この凸包処理部で求められた多角形の各辺を延長して交点を求める交点検出部と、
この交点検出部で求められた交点を有し且つ多角形の外側に形成される仮想三角形の面積を求める面積算出部と、
この面積算出部で求められた仮想三角形のうち、面積が一番小さい仮想三角形を多角形に含ませて当該多角形の角数を1つ減らす手順を繰り返すことにより当該角数が最終形状としての角数となるようにする角数減少部と
を具備したことを特徴とする請求項3に記載の構造部材の形状データの取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材の形状データの取得方法および取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、既存の構造物をリバースエンジニアリングする場合、例えば橋梁などを補修する場合、使われている構造部材を新しく製作する必要がある。
従来、橋梁などにおける構造部材の形状・寸法などをできるだけ正確に計測する計測装置としてレーザ光を用いたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、このようなレーザ計測装置は構造物全体の形状の計測には適しているが、精度が要求される狭く且つボルトなどが多数設けられている接合部の計測には適しておらず、このような接合部の計測には、カメラなどが用いられていた。つまり、レーザ光による計測とカメラ画像による位置検出が併用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−58508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、橋梁などの構造物は屋外に設けられているため、外形が朽ちていたり、その構造部材同士を接合するガセットプレートなどの接合部材の連結に使われるボルトなども同時に計測してしまうため、上述したようなレーザ光による計測とカメラ画像を併用したとしても、正確な形状を得るのが難しいという問題があった。
【0006】
また、レーザ光の計測による三次元の点群データと写真などの2次元の平面データを用いて、三次元の形状を計測する場合には、両者の重ね合わせ作業、すなわち人による作業が必要となり手間を要するとともに、その重ね合わせ部分については、位置データの精度が低下するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、データの取得の手間を軽減し得るとともに、精度の良い構造部材の形状データの取得方法および取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の構造部材の形状データの取得方法は、レーザ距離計により得られる板状の構造部材の表面の三次元位置を示すデータ群に基づき所定の平面領域を探索することにより当該構造部材の形状データを取得する取得方法であって、
レーザ距離計により構造部材の表面の三次元位置を示すデータ群を取得する工程と、
上記データ群から探索を行うための探索平面を検出する工程と、
上記検出された探索平面にデータ群をレーザ距離計からのレーザ光の照射角度を考慮して投影し構造部材の表面を表すデータ群を取得する工程と
を具備し、
探索平面を検出するに際し、所定の平面領域に係る三次元のデータ群を、構造部材の表面であると見做せる許容厚さ域と、この許容厚さ域の上側および下側で構造部材の表面と見做せない非許容厚さ域との3つの層に分けるとともに、上記許容厚さ域内のデータ群の平均値を用いる三層平面域検出法を適用し、
探索平面を第1探索軸と当該第1探索軸に直交する第2探索軸とで決定するとともにこれら第1探索軸および第2探索軸により探索平面を検出する工程として、
第1探索軸および第2探索軸を求めるのに三層平面域検出法を用いるとともに上記各探索軸を求めるための探索開始点を含む探索開始平面の領域および当該探索開始平面に含まれる初期探索軸を求める工程と、
上記探索開始平面の領域内で且つ初期探索軸に沿うデータ群に三層平面域検出法を適用して許容厚さ域内のデータ群を求めるとともにこのデータ群に最小二乗法を適用して新たな更新探索軸を求める工程と、
上記求められた更新探索軸上に上記探索開始点を投影するとともに、この更新探索軸上で探索開始平面の領域を延長し、この延長された平面領域内で且つ更新探索軸に沿うデータ群に三層平面域検出法を適用して許容厚さ域内のデータ群を求めるとともにこれらデータ群に最小二乗法を適用して更なる更新探索軸を求める工程を探索終了条件を満たすまで繰り返し行う工程と、
上記工程により求められた第1探索軸および第2探索軸により探索平面を検出する工程とを具備した方法である。
【0011】
さらに、上記各形状データの取得方法に、
構造部材の表面を表すデータ群に凸包処理を施し仮外形としての多角形を求める工程と、
上記求められた多角形の各辺を延長して交点を求める工程と、
上記交点を有し且つ多角形の外側に形成される仮想三角形の面積を求める工程と、
上記求められた仮想三角形のうち、面積が一番小さい仮想三角形を多角形に含ませて当該多角形の角数を1つ減らす工程と、
上記角数を減らす工程を繰り返すことにより当該角数が最終形状としての角数となるようにする工程とを具備した方法である。
【0014】
また、本発明の構造部材の形状データの取得装置は、レーザ距離計により得られる板状の構造部材の表面の三次元位置を示すデータ群に基づき所定の平面領域を探索することにより当該構造部材の形状データを取得する取得装置であって、
レーザ距離計により構造部材の表面の三次元位置を示すデータ群を取得するデータ群取得部と、
上記データ群から探索を行うための探索平面を検出する探索平面検出部と、
上記検出された探索用平面にデータ群をレーザ距離計からのレーザ光の照射角度を考慮して投影し構造部材の表面を表すデータ群を取得する表面データ取得部と
を具備し、
探索平面検出部において、所定の平面領域に係る三次元のデータ群を、構造部材の表面であると見做せる許容厚さ域と、この許容厚さ域の上側および下側で構造部材の表面と見做せない非許容厚さ域との3つの層に分けるとともに、上記許容厚さ域内のデータ群の平均値を用いる三層平面域検出法を適用し、
探索平面検出部において、探索平面を第1探索軸と当該第1探索軸に直交する第2探索軸とで決定するようになし且つこれら各探索軸を求めるのに三層平面域検出法を用いるとともに、
当該探索平面検出部を、
上記各探索軸を求めるための探索開始点を含む探索開始平面の領域および当該探索開始平面に含まれる初期探索軸を求める初期探索軸検出部と、
上記探索開始平面の領域内で且つ上記初期探索軸に沿うデータ群に三層平面域検出法を適用して許容厚さ域内のデータ群を求めるとともにこのデータ群に最小二乗法を適用して新たな更新探索軸を求める第1更新探索軸検出部と、
上記第1更新探索軸検出部で求められた更新探索軸上に上記探索開始点を投影するとともに、この更新探索軸上で探索開始平面の領域を延長し、この延長された平面領域内で且つ更新探索軸に沿うデータ群に三層平面域検出法を適用して許容厚さ域内のデータ群を求めるとともにこれらデータ群に最小二乗法を適用して更なる更新探索軸を求める工程を探索終了条件を満たすまで繰り返し行う第2更新探索軸検出部と、
上記第2更新探索軸検出部で求められた第1探索軸および第2探索軸により探索平面を決定する探索平面決定部と
を具備させたものである。
【0015】
さらに、上記各形状データの取得装置に、構造部材の表面を表すデータ群に凸包処理を施し仮外形としての多角形を求める凸包処理部と、
この凸包処理部で求められた多角形の各辺を延長して交点を求める交点検出部と、
この交点検出部で求められた交点を有し且つ多角形の外側に形成される仮想三角形の面積を求める面積算出部と、
この面積算出部で求められた仮想三角形のうち、面積が一番小さい仮想三角形を多角形に含ませて当該多角形の角数を1つ減らす手順を繰り返すことにより当該角数が最終形状としての角数となるようにする角数減少部とを具備させたものである。
【発明の効果】
【0016】
上記形状データの取得方法および取得装置によると、レーザ距離計により得られた構造部材の表面の三次元データ群から探索平面を検出するとともに、この検出された探索平面にデータ群をレーザ光の照射角度にて投影することにより、構造部材の表面を表すデータ群を取得するようにしたので、従来のレーザ光による計測とカメラ画像を併用してその表面を検出するものに比べて、容易に且つ精度が低下することなく、離れた場所に在る構造部材の形状を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係るデータの取得方法の対象となる接合部材を有する橋梁の全体を示す概略側面図である。
図2】同接合部材の要部を示す正面図である。
図3】本実施例のデータの取得方法に用いられる三層平面域検出方法を説明する模式図である。
図4】同取得方法における探索軸の求め方を説明する斜視図である。
図5】同取得方法における二次元グリッドを示す平面図である。
図6】同取得方法における探索平面を示す側面図である。
図7】同取得方法により取得された接合部材の形状を示す平面図である。
図8】同取得方法における接合部材の外形を得る手順を説明する模式正面図である。
図9】同取得方法における接合部材の孔を示すデータ群を示す概略正面図である。
図10】同取得方法における接合部材の孔を求める際の分割領域を示す概略正面図である。
図11】同取得方法における接合部材の孔を得る手順を説明する概略正面図である。
図12】同取得方法における接合部材の孔の位置を得る手順を説明する要部拡大正面図である。
図13】本発明の実施例に係るデータの取得装置の概略構成を示すブロック図である。
図14】同取得装置における平面データ取得手段の概略構成を示すブロック図である。
図15】同取得装置における外形データ取得手段の概略構成を示すブロック図である。
図16】同取得装置における孔データ取得手段の概略構成を示すブロック図である。
図17】同孔データ取得手段における孔抽出部の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例に係る構造部材の形状データの取得方法および取得装置を、図1図17に基づき説明する。
本実施例では、橋梁などの構造物の部材同士を連結する接合部材(構造部材の一例)の形状データを、レーザ距離計を用いて取得する場合について説明する。
【0019】
通常、図1に示すように、橋梁1は、下側の桁材2と、上側の梁材3と、これらを連結する連結材4とから構成されており、これらの部材同士は接合部材5により接合されており、本実施例では、例えばこの接合部材5の形状データをレーザ距離計9を用いて取得するものである。
【0020】
すなわち、桁材2側にレーザ距離計9を設置し、このレーザ距離計9からレーザ光Lを、例えば上側の接合部材5に対して照射し、出射から入射までの時間を計測して接合部材5までの距離を計測するようにしたもので、多数の点を計測して表面の三次元位置データを、すなわちデータ群を求めることにより、その形状データを求めるようにしたものである。なお、ここでは、接合部材5としては、図2に示すように、梁材3と連結材4とを板状の接合部材(所謂、ガセットプレートであり、以下、板材とも称する)5により接合するものについて説明する。
【0021】
具体的には、接合部材5の表面形状すなわち板材の平面形状、および連結具としてボルト7の挿入用孔の位置を取得する場合について説明する。
なお、本発明には、形状データの取得方法と取得装置とがあるが、理解を容易にするために、まず形状データの取得方法を説明し、その後、形状データの取得装置について説明する。
【0022】
上述したように、レーザ距離計9により、レーザ光Lを接合部の接合部材(計測対象である構造部材であり、所定の平面領域の一例でもある)5に照射し接合部材5表面までの距離を計測するのであるが、レーザ光Lが照射される計測点は多数であり、例えば縦横2mm間隔(この数値に限定されるものでもなく、計測精度に応じて、例えば2〜5mm程度の間隔にされる)で設けられる。したがって、接合部材5の表面の位置を示す三次元のデータ群(点群データともいう)が得られ、これらのデータ群から接合部材5、特にその表面、すなわち平面およびボルト7の挿通用孔などの位置、具体的にはその中心位置が取得(検出)される。
【0023】
ところで、同一の板材の表面であれば、本来、同一平面上のデータとして得られるが、実際には、レーザ距離計9の計測誤差により板材の厚さ方向でばらつきが生じる。したがって、本実施例では、このばらつきのあるデータ群から板材表面を示す平面データを検出する方法として、三層平面域検出法というものを用いる。
【0024】
この三層平面域検出法とは、図3に示すように、計測の対象となる領域(なお、以下において、探索領域と称して説明する)の平面内に含まれる任意の軸方向に沿って所定間隔毎に分割する(区切る)ことにより連続する多数のグリッド(分割域)Gを設ける(考える)とともに、これら各グリッドGに対して板状の接合部材(以下、板材と表現した方が分かり易い場合には板材と称する)5の厚さ方向で、当該板材の表面であると見做し得る(正確に言うと、板材の厚さ範囲内と見做し得る)許容厚さ域(ターゲット域ともいう)Aと、この板材の表面から突出する例えばボルト7または当該板材とは異なる部材(他の板材)であると想定し得る非許容厚さ域(遷移域ともいう)Bとを考え、許容厚さ域Aに入っているデータ群を平面を示すデータと見做す方法である。なお、各グリッド毎に複数のデータが存在するが、その平均値が代表値と見做して処理が行われる。
【0025】
具体的に説明すると、接合部材5の表面を計測したデータ群を平面内の或る軸方向に沿って配置すると、図3に示すように、許容厚さ域Aおよびその両外側の非許容厚さ域Bのいずれかにプロットされることになる。
【0026】
図3においては、中央の7つのグリッド群G(G1)は許容厚さ域Aに入っていることを示すとともに、このグリッド群Gの両外側の4つのグリッド群G(G2)は非許容厚さ域Bに入っており、さらにその外側にも、それぞれ1つの許容厚さ域Aを示すグリッドG(G3)があることを示している。つまり、中央の7つのグリッド群G(G1)のデータは接合部材5の表面を示しているとともに、両外側の4つのグリッド群G(G2)はボルト7の頭部の表面であることを示している。以下の説明において、許容厚さ域Aに入っているグリッドを平面グリッド(ターゲットグリッドともいう)と称するとともに、非許容厚さ域Bに入っているグリッドを遷移グリッドと称して説明する。
【0027】
ところで、非許容厚さ域Bに少しでも点が存在するグリッドは、たとえ、許容厚さ域Aに点が存在していたとしても、許容厚さ域Aに存在しないものとして取り扱う。これは、グリッド毎の平均値を用いて平面を検出する際に、探索軸(後述する)が平面に収束しなくなるのを防止するためである。
【0028】
まず、平面データの取得方法について説明する。
(1)任意の計測点を指定して探索開始点を決める。
(2)探索開始点を含む探索用仮領域(例えば、半径20mm程度の小領域であり、一般的に言えば、レーザの奥行き方向精度の数倍程度(3〜7倍程度)、例えば4倍程度の半径とする領域である)を決めるとともに、この探索用仮領域内のデータ群から3点を適宜(または任意)に且つ複数組を抽出し、これら各組の3点のデータ群によりそれぞれ平面を求める[3点を平面の方程式(aX+bY+cZ+d=0)に代入することにより1つの平面を決めることができる]。そして、これら複数の平面の平均値を求めることにより、探索開始平面を求める。
(3)上記求められた探索開始平面の法線を求め、この法線に直交する平面、つまり探索開始平面上に任意方向の軸(初期探索軸であり、以下、x軸と称するとともに、法線方向をz軸と称す)を決める。なお、得られた探索開始平面上に任意方向の軸を決めるとともに、この探索開始平面に直交する軸を決めるようにしてもよい。
(4)次に、探索開始点からの探索範囲を決定する。
【0029】
すなわち、x軸方向で探索開始点から探索する所定の長さ範囲つまり初期探索領域を決定する。例えば、10個のグリッド群[1グリッドの幅は、同じ平面上に生じると思われる空白部(ここでは、ボルトの挿通用孔)の1/2〜1/3程度にされ、例えば1グリッドの幅を12.5mmとすると、初期探索領域は125mm(10個×12.5mm=125mm)となる]について探索する。この探索範囲としては、探索用仮領域の長さの数倍程度、例えば2〜5倍程度にされる。
(5)x軸に対して三層平面域検出法を適用する。
【0030】
すなわち、図3に示すように、x軸に沿うデータ群を板材の厚さ方向と見做せるz軸方向に投影した場合の探索開始平面(H)からのずれ量を検出した後、このずれ量が許容厚さ域A内に属するデータ群を抽出する。
(6)この抽出されたデータ群に対し、グリッドG毎の平均値を求める。
(7)これらグリッドG毎に求められた平均値に最小二乗法を適用して、x軸を新たに求める。
(8)上記探索開始点を(7)で新たに求められた更新x軸(更新探索軸)上に投影する。
(9)この更新x軸上に投影された探索開始点を更新探索開始点として、さらに当該更新x軸に沿って探索領域を数倍に延ばす。例えば、探索領域を2倍に延ばす。
(10)上述した(1)〜(9)の手順を、非許容厚さ域Bのデータ群が探索終了条件[接合部材としてのデータが存在しないことが確実に言える範囲を超えるまで、具体的には、孔許容値(孔であると思われる空白部の最大距離)内に平面グリッドが存在しないという条件、簡単に言えば、データが存在しないという条件]を超えるまで、探索領域を広げながら(例えば、探索領域を、2倍から4倍、そして8倍へと等比拡大させて延ばしていく)繰り返し行う。すなわち、順次、更新x軸を求め、最終的に探索用としての探索x軸(第1探索軸)を求める。
(11)上記探索x軸を求めたと同様の手順を、探索開始平面にて当該x軸と直交するy軸についても行い、探索y軸(第2探索軸)を求める(図4参照)。
(12)次に、上記探索x軸と探索y軸との最接近点同士の中間点(z軸方向での中間位置)pを通り、探索x軸方向をx軸とするとともに探索y軸方向をy軸とする仮の探索平面(以下、仮探索平面という)を求める。そして、探索x軸と探索y軸とを仮探索平面上に投影する(図4の破線で示すx軸,y軸参照)。
(13)上記仮探索平面上で、上述したグリッドサイズを用いて、二次元グリッドを作成するとともにこの二次元グリッドのデータ群に対して、三層平面域検出法を適用して、平面グリッドを抽出する。なお、図5中、丸印が平面グリッドを示し、三角印が遷移グリッドを示す。
【0031】
(14)これら抽出された平面グリッド毎においてそれぞれ点群の平均値を求め、そしてこれらの点に対し、最小二乗法を適用し接合部材の表面を表す探索平面を求める。図6に、この求められた探索平面を示す。なお、図6中、丸印は平面グリッドでの平均値を示している。
(15)上記探索平面に対して且つレーザ光Lの照射角度も考慮し、許容厚さ域A内に入るデータ群をそれぞれ投影し、探索平面上でのデータ群を取得する。勿論、探索平面上でのデータ群すなわち投影点は、計測点を通り且つその計測点の計測に係るレーザ光Lの照射角度から得られる方向余弦を持つ直線と、探索平面との交点として求められる。言い換えれば、計測誤差に起因する探索平面から外れているデータ群を探索平面上にレーザ光Lの照射方向に沿って置き直していることになる。これにより、計測対象である板材の表面を示すデータ群が容易に且つ精度よく取得される。
【0032】
すなわち、平面グリッドGを抽出することにより、探索平面に位置する板材のデータ、およびその突出部分を除いた、つまり、ボルト7の挿通用孔(図7に示す、但し、図7は分かりやすいように、図2のものを上下逆に図示している)8を抽出し得るデータ群(二次元データ群)を取得することができる。
【0033】
そして、これらのデータ群に基づき、板材である接合部材5の外形およびボルト7の挿通孔8の位置、より正確には、その中心位置を抽出することができる。
次に、上記接合部材5の表面を示す平面データからその外形を求める手順について説明する。ここでは、図7に示すような接合部材5の場合について説明する。
(1)許容厚さ域A内にあるデータ群に凸法処理を施して外形を求める。
【0034】
すなわち、最外周の平面グリッドのデータ群に対して凸包処理を施すことにより、当該データ群の外形を抽出する。
凸包処理とは、データ群のうち、例えば端の点を第一点aに指定し、この第一点aに対する他の点への角度を求めるとともに、角度で他の点を整列させる。そして、第一点aから、整列された次の第二点bおよびさらにその次の第三点cとを直線で連結し、三角形を作る。次に、次の第四点dを連結した場合、2点(b,d)を結ぶ直線よりも中間の第三点cが内側に入る場合には、凸包ではなくなるため、第三点cを除外し、新たな3つの点(a,b,d)にて三角形を作る。このように、順次、連結する点を増やして行く際に、或る点がその前後の点に対して凹んだ状態になっている場合には、その或る点を外していくことにより、全体として、凸状の多角形を得る処理である。なお、凸包処理を簡単に言えば、二次元の点群を全て囲むように輪ゴムをかけると、輪ゴムは連続線分を形成することになり、この閉じた連続線分を求める処理をいう。
(2)次に、本来の形状である最終形状の角数を入力する。例えば、板材が長方形である場合には「4」を入力する(この数値は、予め、設定しておいてもよい)。
(3)例えば、図8(a)で示すように、角が8つ形成されている場合には、各辺を当該8角形の外側で交差するようにそれぞれ延長して、図8(b)に示すように、交点[(イ)〜(チ)]を求める。
(4)次に、図8(c)に示すように、これらの交点を有し且つ板材の外側に形成される三角形の面積を求め、一番小さい三角形の部分(斜線にて示す)を板材に含ませて、その角数を1つ減らす。
(5)上記手順を繰り返し、図8(d)に示すように、角数が最終形状の5つ(5角)になるようにする。
【0035】
この最終形状が求める板材の形状データとなる。すなわち、接合部材5の最終形状のデータが取得される。
さらに、上記抽出された平面データに基づき接合部材5に設けられている連結具であるボルト7の挿通用孔の位置、すなわち孔の中心位置を求める手順について説明する。
【0036】
以下の説明では、例えば矩形状の検索対象領域を複数個、例えば4個に分割し、そしてデータが存在している分割領域をさらに4個に分割し、この手順を繰り返し最後の分割領域が所定の大きさ(最終領域であり、当然ながら、孔の大きさより小さく、面積で比較すると、1/2〜1/3程度の大きさにされている)になるまで繰り返すことにより、孔の有無を検出する場合について説明する。
【0037】
なお、検索対象領域を4分割したものを1次グリッドと称し、次にこの4分割されたものを2次グリッドと称し、そしてさらに順次分割していき、n回目に4分割したものをn次グリッドと称して説明する。また、分割されるグリッドを親グリッドと称するとともに、4分割して得られるグリッドを子グリッドと称する場合もある。
【0038】
例えば、図9は、接合部材5の表面として得られたデータ郡を6回分割した場合(検索対象領域は0次グリッドであり、これを含めると、7層の検索となる)のグリッドの分割状態を示している。なお、図9についても、図2のものを上下逆に図示している。また、参考として、図10に、接合部材5の表面の分割の仕方(分割領域)を示しておく。
【0039】
以下、連結具であるボルト7の挿通用孔8の位置を求める手順を、図9および図10に基づき具体的に説明する。
(1)得られた板材のデータ群(二次元データ群)を全て囲み得る検索対象領域を示す検索枠21を設定する。
(2)検索枠21を4分割して4個の1次グリッド(群)22を得る(図10の(a)部参照)。
(3)データが存在する1次グリッド22を4分割して2次グリッド(群)23を得る(図10の(b)部参照)。
(4)データが存在する2次グリッド23を4分割して3次グリッド(群)24を得る(図10の(b)部参照)。
(5)上記分割作業と同様に、データが存在する(n−1)次グリッドをさらに4分割してn次グリッド(群)を得る。例えば、4次グリッド(群)25、5次グリッド(群)26を得る(図10の(c)部参照)。
(6)n次グリッドが最小単位(検索対象の大きさより小さい領域、上述したように、例えば1/2〜1/3程度の大きさ)になった場合には分割作業を停止する。ここでは、6次グリッド(群)27が得られると、分割作業が停止される(図10の(d)部参照)。
(7)次に、同一の親グリッドに含まれる複数の子グリッドについて、それぞれのデータの有無状態が同一である場合には子グリッド同士を結合(マージ)して、子グリッドを無くす。このマージ処理を、その対象が無くなるまで繰り返す。
(8)次に、隣接するグリッド同士のデータの有無状態が同一であるものについては、同一のラベルとなるようにラベリング処理を行う。すなわち、データの有無に応じて、2種類のラベリングが施されたことになる。
(9)データが無い同一ラベルグループのうち、面積が許容範囲(孔の最小値から最大値の範囲)内にあるものを抽出し、その重心位置を挿通用孔8の仮中心位置と決定する。例えば、図11に示すようなデータが得られ、その中心にデータが存在しない空白部が得られ、これがボルト7の挿通用孔8であることを示し、またその重心を仮中心位置とする。
【0040】
次に、上記手順にて求められた孔の中心位置の精度を上げる手順について説明する。
(10)図12に示すように、上記(9)の手順で求められた仮中心位置31を中心とし、その孔を放射状に複数個、例えば16個に分割する。
(11)次に、放射状に分割された各扇形状部32内のデータ群のうち、一番、仮中心位置31に近いデータを1個だけ抽出する。
(12)次に、上記抽出された各扇形状部32内のデータを、任意に3個取り出してこれら3点を通る円を求める。
(13)上記(12)で求められた円内に含まれるデータ個数がノイズとして許容し得る個数(例えば、2〜3個で、ノイズ許容個数ともいえる)内である円のうち、最も半径が大きい円33を求め、この円33の中心位置をボルト7の挿通用孔8の中心と見做す。
【0041】
すなわち、上記手順により、ボルト7の挿通用孔8の中心位置が取得されたことになる。
次に、上記データの取得方法を実行するためのデータの取得装置について説明する。
【0042】
なお、この取得装置は、レーザ距離計により得られた三次元のデータ群に基づき、接合部材の平面を示すデータ、および接合部材の外形、並びに連結具であるボルトの中心つまり挿通用孔の中心位置を求めるものであり、実際には、コンピュータ装置に具備されたプログラムにより実行されるものである。
【0043】
そのため、この取得装置の説明においては、プログラムの主要部分、つまり演算機能を特徴的に表した構成要件(後述するが、取得部、検出部、決定部、処理部、算出部、減少部、抽出部、分割部、設定部など)を具備するものとして説明する。
【0044】
図13に示すように、この形状データの取得装置40は、大きく分けて、接合部材5の表面と見做し得る所定の平面領域における三次元のデータ群を取得する平面データ取得手段41と、この平面データ取得手段41で得られたデータ群からその外形データを取得(抽出)する外形データ取得手段42と、上記平面データ取得手段41にて得られたデータ群から連結具であるボルト7の挿入用孔8の中心位置を取得(抽出)する孔データ取得手段43とから構成されている。
【0045】
まず、平面データ取得手段41について説明する。
この平面データ取得手段41には、図14に示すように、レーザ距離計9により接合部材5の表面の三次元位置を示すデータ群を取得するデータ群取得部51と、このデータ群取得部51で取得されたデータ群から探索を行うための探索平面を検出する探索平面検出部52と、この探索平面検出部52で検出された探索平面にデータ群をレーザ距離計9からのレーザ光Lの照射角度を考慮して投影し構造部材の表面を表すデータ群を取得する表面データ取得部53とが具備されている。
【0046】
また、上記探索平面検出部52は、探索平面を探索x軸(第1探索軸)と当該探索x軸に直交する探索y軸(第2探索軸)とで決定するようにするとともにこれら各探索軸を求めるのに三層平面域検出法が用いられるものであり、
当該探索平面検出部52には、上記各探索軸を求めるための探索開始点を含む探索開始平面の領域および当該探索開始平面に含まれる初期探索軸を求める初期探索軸検出部56と、
上記探索開始平面の領域内で且つ上記初期探索軸に沿うデータ群に三層平面域検出法を適用して許容厚さ域内のデータ群を求めるとともにこのデータ群に最小二乗法を適用して新たな更新探索軸を求める第1更新探索軸検出部57と、
上記第1更新探索軸検出部57で求められた更新探索軸上に上記探索開始点を投影するとともに、この更新探索軸上で探索開始平面の領域を延長し、この延長された平面領域内で且つ更新探索軸に沿うデータ群に三層平面域検出法を適用して許容厚さ域内のデータ群を求めるとともにこれらデータ群に最小二乗法を適用して更なる更新探索軸を求める工程を探索終了条件を満たすまで繰り返し行う第2更新探索軸検出部58と、
上記第2更新探索軸検出部58で求められた探索x軸および探索y軸により探索平面を決める探索平面決定部59とが具備されている。
【0047】
なお、上記各更新探索軸検出部57,58には、図示しないが、探索開始平面上で求められた初期探索軸に三層平面域検出法および最小二乗法を適用して新たなx軸を求めるとともに順次更新して探索x軸を求める探索x軸決定部と、上記探索x軸を求めたと同様の手順を、探索開始平面にて当該x軸と直交するy軸についても行い探索y軸を求める探索y軸決定部とが具備されている。
【0048】
また、図15に示すように、上記外形データ取得手段42には、接合部材5の表面を表すデータ群に凸包処理を施し仮外形としての多角形を求める凸包処理部(多角形処理部ともいえる)61と、この凸包処理部61で求められた多角形の各辺を延長して交点を求める交点検出部62と、この交点検出部62で得られた交点を有し且つ多角形の外側に形成される仮想三角形の面積を求める面積算出部63と、この面積算出部63で求められた一番小さい仮想三角形の部分を多角形に含ませて当該多角形の角数を1つ減らすとともに、当該角数が最終形状としての所定角数になるまで繰り返す角数減少部64とが具備されている。
【0049】
さらに、図16に示すように、孔データ取得手段43には、前処理としてデータ群(上述した平面データ取得手段にて得られたデータ群で、つまり、三層平面域検出法が用いられて得られたデータ群である)から孔部を抽出するための孔抽出部71と、この孔抽出部71で抽出された孔の中心を仮中心位置として当該孔を放射状の直線により複数の扇形状領域に分割する領域分割部72と、この領域分割部72で分割された各扇形状領域内のデータ群のうち、仮中心位置に最も近いデータを抽出する仮中心位置抽出部73と、この仮中心位置抽出部73で抽出された各扇形状領域内のデータを任意に3個取り出すとともにこれら3点を通る円を複数個求める円算出部74と、この円算出部74で求められた円内に含まれるデータ個数がノイズ許容個数内である円のうち、最も半径が大きい円を抽出するとともに、この円の中心位置を連結具であるボルト7の挿通用孔8の中心とする孔位置算出部75とが具備されている。
【0050】
上記孔抽出部71には、図17に示すように、得られたデータ群を全て囲み得る検索対象領域を示す検索枠を設定する検索枠設定部81と、この検索枠設定部81で設定された検索枠を4分割して4個の1次分割域(1次グリッド)を得た後、データが存在する1次グリッドを4分割して4個の2次分割域(2次グリッド)を得る工程を、順次、繰り返すことにより、データが存在する(n−1)次グリッドをさらに4分割するとともに、当該分割された4個のn次分割域(n次グリッド)が孔より小さい面積である最小単位になるまで繰り返す分割処理部82と、この分割処理部82で得られたデータに対して、同一の親グリッドに含まれる複数の子グリッドについて、それぞれのデータの有無状態が同一である場合には子グリッド同士を結合して子グリッドを無くすマージ処理を、その対象が無くなるまで繰り返す結合処理部83と、この結合処理部83で得られた隣接するグリッド同士のデータの有無状態が同一であるものについては、同一のラベルとなるようにラベリング処理を行うラベリング処理部84と、このラベリング処理部84で得られたものに対して、データが無い同一ラベルグループのうち、面積が許容範囲(孔の最小値から最大値までの範囲)内にあるものを抽出し、その重心位置を挿通用孔の仮中心位置と決定する仮中心位置決定部85とが具備されている。
【0051】
なお、上記実施例においては、互いに直交する探索x軸と探索y軸との2つの探索軸にて求められる探索平面に対して適用したが、これとは別に複数の探索軸を求めて探索するようにすれば、複雑な形状を有する表面に対しても、十分な形状データを取得することができる。
【0052】
ところで、上記実施例においては、平面探索時およびデータ投影時に三層平面域検出法をそれぞれ用いたが、そのときの許容厚さ域(ターゲット域)の大きさ(寸法)については、同じ大きさであってもよいが、それぞれに応じた大きさにすることができる。また、同じデータ群に対しても、平面によって、例えば計測角度や誤差範囲などを考慮して許容厚さ域の大きさを変更してもよい。これにより、さらに精度の高い平面形状を取得することができる。すなわち、許容厚さ域の大きさは計測対象物の表面状態に応じて適宜変更することができる。
【0053】
また、上記実施例においては、平面データの取得について説明したが、取得したデータ群から平行な複数の平面データを取得することにより、奥行き寸法および立体形状のデータも取得することができる。
【0054】
さらに、上記実施例においては、既設の橋梁を対象としたので、ボルト等の突出部の点群から孔の中心位置を求める場合について説明したが、孔部を直接計測できる場合には、当然ながら、孔そのものの大きさ(寸法)を取得することができる。
【0055】
特に、三層平面域検出法を用いることにより、構造部材である接合部材の挿通用孔にボルトが取り付けられているような場合、すなわちボルト孔がボルトにより見えない場合でも、ボルトの頭部を除去した孔データ(点群データ)を得ることができるので、ボルトを取り外すことなく、ボルトの挿通用孔の中心位置を得ることができる。また、除去する対象物がボルトの頭部の他に、例えばリベット、座金などのように、平面から突出している部材であってもよい。すなわち、これらが挿通されまたは配置されている孔の中心位置を精度良く取得することができる。
【0056】
上述した形状データの取得方法および取得装置の構成によると、レーザ距離計により接合部材の表面の三次元位置のデータ群を得るとともに、これら得られたデータ群に対して探索平面領域を求め、この探索平面領域における厚さ方向のデータ群に対して、三層平面域検出法を適用して、接合部材と見做し得る平面データを抽出するようにしたので、従来のように、レーザ光による計測とカメラ画像を併用してその表面を検出するものに比べて、容易に且つ精度が低下することなく、離れた場所に在る接合部材の形状を検出することができる。
【0057】
ここで、孔データの取得方法および取得装置の概略構成について記載しておく。
孔データの取得方法には、物体表面の有無を示すデータ群から抽出された孔の中心を仮中心位置として当該孔を放射状の直線により複数の扇形状領域に分割する工程と、
上記分割された各扇形状領域内のデータ群のうち、仮中心位置に最も近いデータを抽出する工程と、
上記抽出された各扇形状領域内のデータを任意に3個取り出すとともにこれら3点を通る円を複数求める工程と、
上記求められた円内に含まれるデータ個数がノイズ許容個数内である円のうち、半径が最も大きい円を抽出するとともに、この円の重心を孔の中心位置として取得する工程とが具備されている。
【0058】
また、上記取得方法には前処理工程が具備されており、この前処理工程は、
得られたデータ群を全て囲み得る検索対象領域を示す検索枠を設定する工程と、
検索枠を4分割して4個の1次分割域を得た後、データが存在する1次分割域を4分割して4個の2次分割域を得る工程と、
上記分割域の分割を繰り返すことにより、データが存在する(n−1)次分割域(以下、親分割域と称す)をさらに4分割するとともに、当該分割された4個のn次分割域(以下、子分割域と称す)が孔より小さい面積である最小単位になるまで繰り返す工程と、
同一の親分割域に含まれる複数の子分割域について、それぞれのデータの有無状態が同一である場合には子分割域同士を結合して子分割域を無くすマージ処理を、その対象が無くなるまで繰り返す工程と、
隣接する分割域同士のデータの有無状態が同一であるものについては、同一のラベルとなるようにラベリング処理を行う工程と、
データが無い同一ラベルグループのうち、面積が許容値(孔の最小値から最大値までの範囲)内にあるものを孔として抽出するとともに、その重心を孔の仮中心位置と決定する工程とから構成されている。
【0059】
さらに、孔データの取得装置には、物体表面の有無を示すデータ群から抽出された孔の中心を仮中心位置として当該孔を放射状の直線により複数の扇形状領域に分割する形状分割部と、
この形状分割部で分割された各扇形状領域内のデータ群のうち、仮中心位置に最も近い内寄りデータを抽出する内寄りデータ抽出部と、
この内寄りデータ抽出部で抽出された扇形状領域内におけるデータを任意に3個取り出すとともにこれら3点を通る円を複数求める円算出部と、
この円算出部で求められた円内に含まれるデータ個数がノイズ許容個数内である円のうち、最も半径が大きい円を抽出するとともに、この円の中心を孔の中心位置とする中心位置算出部とが具備されている。
【0060】
また、孔データの取得装置には、前処理手段が具備されており、
この前処理手段は、得られたデータ群を全て囲み得る検索対象領域を示す検索枠を設定する検索枠設定部と、
この検索枠設定部で設定された検索枠を4分割して4個の1次分割域を得た後、データが存在する1次分割域を4分割して4個の2次分割域を得る工程を、順次、繰り返すことにより、データが存在する(n−1)次分割域(以下、親分割域と称す)をさらに4分割するとともに、当該分割された4個のn次分割域(以下、子分割域と称す)が孔より小さい面積である最小単位になるまで繰り返す分割処理部と、
この分割処理部で得られたデータに対して、同一の親分割域に含まれる複数の子分割域について、それぞれのデータの有無状態が同一である場合には子分割域同士を結合して子分割域を無くすマージ処理を、その対象が無くなるまで繰り返す結合処理部と、
この結合処理部で得られた隣接する分割域同士のデータの有無状態が同一であるものについては、同一のラベルとなるようにラベリング処理を行うラベリング処理部と、
このラベリング処理部で得られたものに対して、データが無い同一ラベルグループのうち、面積が許容範囲内にあるものを抽出し、その重心を孔の仮中心位置と決定する仮中心位置決定部とから構成されている。
【符号の説明】
【0061】
1 橋梁
2 桁材
3 梁材
4 連結材
5 接合板材
7 ボルト
8 挿通用孔
9 レーザ距離計
40 形状データ取得装置
41 平面データ取得手段
42 外形データ取得手段
43 孔データ取得手段
51 データ群取得部
52 探索平面検出部
53 表面データ取得部
56 初期探索軸検出部
57 第1更新探索軸検出部
58 第2更新探索軸検出部
59 探索平面決定部
61 多角形検出部
62 交点検出部
63 面積算出部
64 角数減少部
71 孔抽出部
72 領域分割部
73 仮中心位置算出部
74 円算出部
75 孔位置算出部
81 検索枠設定部
82 分割処理部
83 結合処理部
84 ラベリング処理部
85 仮中心位置決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17