(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。ただし、以下の説明において特に断らない限り、方向や向きに関する記述は、当該説明の便宜上、図面に対応するものであり、例えば実施品、製品または権利範囲等を限定するものではない。
【0022】
<1. 実施の形態>
図1は、迷子捜索システム1を示す図である。迷子捜索システム1は、親機2および子機3から構成されている。なお、親機2および子機3は、いずれも携帯が可能な端末装置(携帯端末装置)として構成されている。また、親機2および子機3の数は
図1に示す数に限定されるものではない。例えば、1台の親機2に対して2台の子機3が存在していてもよい。また、
図1に破線の円で囲まれた領域(ハッチングを施した領域)は、主に親機2の位置に応じて決定される未捜索エリア9を概念的に示す(詳細は後述する。)。
【0023】
以下の説明では、親機2を所持する者を「捜索者」、子機3を所持する者を「捜索対象」と称する。すなわち、捜索対象が迷子になった場合に備えて、当該捜索対象を監督、監視する者が捜索者として親機2を所持し、当該捜索対象に子機3を所持させておくものとする。ただし、「捜索者」および「捜索対象」は、説明の都合上定義する名称であって、これらの者の行動を限定するものではない。例えば、捜索者が一時的に子機3を所持して操作してもよい。また、捜索対象は、人に限定されるものではなく、例えば、ペットなどの移動体であってもよい。
【0024】
図2は、親機2のブロック図である。親機2は、CPU20、記憶装置21、操作部22、表示部23およびスピーカ24を備えており、捜索者によって携帯される一般的なコンピュータとして構成されている。すなわち、親機2は、迷子捜索システム1における2以上の携帯端末装置のうちの1の携帯端末装置を構成している。
【0025】
CPU20は、記憶装置21に格納されているプログラム210を読み取りつつ実行し、各種データの演算や制御信号の生成等を行う。これにより、CPU20は、親機2が備える各構成を制御するとともに、各種データを演算し作成する機能を有している。
【0026】
記憶装置21は、親機2において各種データを記憶する機能を提供する。言い換えれば、記憶装置21が、親機2において電子的に固定された情報を保存する。特に、本実施の形態における記憶装置21は、プログラム210を記憶するために使用される。
【0027】
記憶装置21としては、CPU20の一時的なワーキングエリアとして使用されるRAMやバッファ、読み取り専用のROM、不揮発性のメモリ(例えばNANDメモリなど)、比較的大容量のデータを記憶するハードディスク、専用の読み取り装置に装着された可搬性の記憶媒体(PCカード、SDカード、USBメモリなど)等が該当する。
図2では、記憶装置21を、あたかも1つの構造物であるかのように図示している。しかし、通常、記憶装置21は、上記例示した各種装置(あるいは媒体)のうち、必要に応じて採用される複数種類の装置から構成されるものである。すなわち、記憶装置21は、データを記憶する機能を有する装置群の総称である。
【0028】
また、現実のCPU20は高速にアクセス可能なRAMを内部に備えた電子回路である。しかし、このようなCPU20が備える記憶装置も、説明の都合上、記憶装置21に含めて説明する。すなわち、本実施の形態においては、一時的にCPU20自体が記憶するデータも、記憶装置21が記憶するとして説明する。
【0029】
操作部22は、捜索者が親機2に様々な情報を入力するために操作されるハードウェアである。操作部22としては、各種ボタン類、キー、回転式セレクタ、あるいは、タッチパネルなどが該当する。特に、本実施の形態における操作部22は、迷子捜索システム1による運用を開始するとき、および、捜索者が捜索対象を見失い強制的に捜索の開始を指示するときなどに操作される。以下の説明では、前者の場合に入力される信号を「運用開始信号」と称し、後者の場合に入力される信号を「捜索開始指示信号」と称する。
【0030】
表示部23は、各種情報を表示することにより出力する出力部としての機能を有している。すなわち、表示部23は、捜索者が視覚によって知覚する状態で情報を出力するハードウェアである。表示部23としては、例えば、液晶パネル、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、ランプ、あるいは、LEDなどが該当する。
【0031】
スピーカ24は、各種情報を音声再生することにより出力する出力部としての機能を有している。すなわち、スピーカ24は、捜索者が聴覚によって知覚する状態で情報を出力するハードウェアである。
【0032】
さらに、
図2に示すように、親機2は、ジャイロセンサ25、加速度センサ26および通信部27を備えている。
【0033】
ジャイロセンサ25は、親機2の移動における角速度を測定して角速度情報250を取得する。本実施の形態におけるジャイロセンサ25は、いわゆる3軸のジャイロセンサとして構成されており、互いに垂直な3つの軸方向回りの角速度を測定する。
【0034】
加速度センサ26は、親機2の移動における加速度を測定して加速度情報260を取得する。本実施の形態における加速度センサ26は、いわゆる3軸の加速度センサとして構成されており、互いに垂直な3つの軸方向に関して、親機2の加速度を測定することが可能とされている。
【0035】
通信部27は、子機3との間で電波を用いた近接無線通信によるデータ通信を行う機能を有している。なお、本実施の形態における親機2は、いわゆるスマートフォンとして構成されており、通信部27は、携帯電話網(広域無線通信網)に接続する機能も有している。
【0036】
図3は、親機2が備える機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。
図3に示す通信制御部200、測位制御部201、相対位置演算部202、補正部203および情報作成部204は、CPU20がプログラム210に従って動作することにより実現される機能ブロックである。
【0037】
通信制御部200は、通信部27を制御することにより、子機3との間で近接無線通信を利用したデータの送受信を実現する。すなわち、通信部27が子機3から受信した情報に応じて、当該情報を記憶装置21に格納したり、他の機能ブロックに伝達したりする機能を有する。また、他の構成から伝達された信号や情報に応じて、通信部27を制御して、様々な情報を通信部27に子機3に向けて送信させる。
【0038】
具体的には、通信制御部200は、捜索対象に対する捜索を行っていない期間においても、任意のタイミングで、子機3に向けて信号(以下、「試験信号」と称する。)を送信するように、通信部27を制御する。すなわち、通信制御部300は、操作部22から運用開始信号が伝達されると、通信部27に試験信号を送信させ、以後も任意のタイミングで試験信号を送信させる。なお、本実施の形態における親機2は、所定の周期ごとに定期的に試験信号を送信するものとし、以下、当該周期を「Tt」と称する。ただし、上記任意のタイミングは、定期的である必要はなく、不定期であってもよい。
【0039】
また、通信制御部200は、通信部27が捜索の開始を要求する情報(子機3から送信される情報。以下、「開始要求情報」と称する。)を受信したときは、当該開始要求情報を測位制御部201および情報作成部204に伝達する。なお、詳細は後述するが、本実施の形態においては、子機3から送信される開始要求情報は、子機情報313として受信された情報に含まれる情報である。すなわち、通信制御部200は、通信部27が受信した子機情報313を解析して、開始要求情報が含まれている場合には、これを測位制御部201および情報作成部204に伝達する。
【0040】
また、通信部27が開始要求情報を受信した後において、通信制御部200は、任意のタイミング(例えば、定期的)で、リクエスト情報(子機情報313を送信するように要求する情報)を子機3に向けて送信するように通信部27を制御する。なお、詳細は後述するが、本実施の形態における迷子捜索システム1では、捜索が開始された後に親機2から送信される試験信号をリクエスト情報とみなして、子機3は子機情報313を親機2に向けて送信する。ただし、親機2は、試験信号とは別に、リクエスト情報を作成して子機3に向けて送信してもよい。
【0041】
また、操作部22から捜索開始指示信号が伝達されると、通信制御部200は、子機3に向けて開始要求情報を送信するように通信部27を制御する。
【0042】
さらに、通信部27が子機情報313を受信したとき、通信制御部200は、当該子機情報313を記憶装置21に格納する。
【0043】
測位制御部201は、操作部22から伝達される運用開始信号に応じて、ジャイロセンサ25を起動する。測位制御部201は、ジャイロセンサ25が起動したときの親機2の姿勢(以下、「親機初期姿勢」と称する。)を記憶装置21に記憶させる。なお、詳細は後述するが、本実施の形態では、親機2における測位は相対的な測位で足りるため、親機初期姿勢に関しては、絶対方位に対する姿勢までもが既知となる必要はない。
【0044】
また、測位制御部201は、操作部22から伝達される捜索開始指示信号、または、通信制御部200から伝達される開始要求情報に応じて、加速度センサ26を起動する。言い換えれば、加速度センサ26は、運用開始信号によって起動されることはない。したがって、捜索開始指示信号または開始要求情報が生成されるまでは、加速度センサ26が起動されることがないので、常に、加速度センサ26を起動させておく必要のある従来技術に比べて消費電力を抑制することができる。
【0045】
また、測位制御部201は、ジャイロセンサ25により取得された角速度情報250に基づいて親機2の姿勢を特定する。すなわち、ジャイロセンサ25および測位制御部201が協働することにより、親機2において姿勢が特定される。したがって、ジャイロセンサ25および測位制御部201が、本実施の形態における親機2において、姿勢特定手段に相当する。
【0046】
さらに、測位制御部201は、特定した親機2の姿勢と、加速度センサ26により測定された加速度情報260とに基づいて、自機の相対的測位を行い、測位情報211を作成する。ただし、すでに説明したように、加速度センサ26は、運用開始信号によって起動されることはない。したがって、測位制御部201は、加速度センサ26を起動するまで(捜索が必要と判定されるまで)は、自機の相対的測位を行うことはなく、測位情報211を作成することもない。すなわち、本実施の形態における親機2は、常にこれらの演算を行う場合に比べて、消費電力を抑制することができる。なお、角速度情報250および加速度情報260に基づいて、相対的な位置情報(測位情報211)を求める方法は、従来の技術を適宜用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0047】
相対位置演算部202は、測位制御部201による測位結果(測位情報211)と、子機情報313に含まれる子機3における測位結果とに基づいて、親機2と子機3との相対的な位置関係を求め、相対位置情報212を作成する。
【0048】
補正部203は、子機情報313を参照しつつ、相対位置情報212に対する補正値を演算して、補正情報213を作成する。より詳細には、補正部203は、子機情報313に示されている電波強度(後述)に応じて、相対位置演算部202により求められた位置関係(相対位置情報212)に対する補正値を演算する。
【0049】
情報作成部204は、相対位置情報212および補正情報213が作成されると、当該相対位置情報212および補正情報213に基づいて、捜索情報214を作成する。捜索情報214は、表示部23やスピーカ24に出力される情報である。
【0050】
また、情報作成部204は、通信部27が開始要求情報を受信した旨を通信制御部200から伝達されたとき、その旨を示す捜索情報214を作成する。このとき作成される捜索情報214は、捜索を開始する必要があると子機3において判定されたことを示す情報であり、主にスピーカ24によって出力される。これにより、親機2は捜索が開始されたことを捜索者に報知することができ、当該捜索者は表示部23を注視していない状態であっても、捜索が開始されたことを知得することができる。なお、スピーカ24の音声の代わりに、バイブレータのバイブレーションによって報知してもよい。
【0051】
図4は、子機3のブロック図である。子機3は、CPU30、記憶装置31、操作部32、表示部33およびスピーカ34を備えており、捜索対象によって携帯される一般的なコンピュータとして構成されている。すなわち、子機3は、迷子捜索システム1における2以上の携帯端末装置のうちの1の携帯端末装置(親機2)以外の他の携帯端末装置を構成している。
【0052】
CPU30は、記憶装置31に格納されているプログラム310を読み取りつつ実行し、各種データの演算や制御信号の生成等を行う。これにより、CPU30は、子機3が備える各構成を制御するとともに、各種データを演算し作成する機能を有している。
【0053】
記憶装置31は、子機3において各種データを記憶する機能を提供する。言い換えれば、記憶装置31が、子機3において電子的に固定された情報を保存する。特に、本実施の形態における記憶装置31は、プログラム310を記憶するために使用される。
【0054】
記憶装置31としては、CPU30の一時的なワーキングエリアとして使用されるRAMやバッファ、読み取り専用のROM、不揮発性のメモリ(例えばNANDメモリなど)、比較的大容量のデータを記憶するハードディスク、専用の読み取り装置に装着された可搬性の記憶媒体(PCカード、SDカード、USBメモリなど)等が該当する。
図4では、記憶装置31を、あたかも1つの構造物であるかのように図示している。しかし、通常、記憶装置31は、上記例示した各種装置(あるいは媒体)のうち、必要に応じて採用される複数種類の装置から構成されるものである。すなわち、記憶装置31は、データを記憶する機能を有する装置群の総称である。
【0055】
また、現実のCPU30は高速にアクセス可能なRAMを内部に備えた電子回路である。しかし、このようなCPU30が備える記憶装置も、説明の都合上、記憶装置31に含めて説明する。すなわち、本実施の形態においては、一時的にCPU30自体が記憶するデータも、記憶装置31が記憶するとして説明する。
【0056】
操作部32は、捜索対象が子機3に様々な情報を入力するために操作されるハードウェアである。操作部32としては、各種ボタン類、キー、回転式セレクタ、あるいは、タッチパネルなどが該当する。ただし、捜索対象は、比較的、装置の操作に不慣れな者(子供や高齢者)である蓋然性が高いので、操作部32としては、操作が簡易なものが望ましい。
【0057】
本実施の形態における操作部32は、迷子捜索システム1による運用を開始するときに、運用開始信号を入力するために操作される。なお、運用開始信号を入力する操作は、未だ捜索対象が迷子(捜索状態)になっていないときに要求される操作である。したがって、運用開始信号の入力を要求されるときには、未だ捜索対象は捜索者と一緒に行動していると考えられるため、比較的機器の操作に不慣れな捜索対象に代わって捜索者が運用開始信号の入力操作を行ってもよい。
【0058】
表示部33は、各種情報を表示することにより出力する出力部としての機能を有している。すなわち、表示部33は、捜索対象が視覚によって知覚する状態で情報を出力するハードウェアである。表示部33としては、例えば、液晶パネル、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、ランプ、あるいは、LEDなどが該当する。本実施の形態における表示部33は、捜索情報315(
図5参照。)を表示することが可能である。
【0059】
スピーカ34は、各種情報を音声再生することにより出力する出力部としての機能を有している。すなわち、スピーカ34は、捜索対象が聴覚によって知覚する状態で情報を出力するハードウェアである。特に、スピーカ34は、子機3が親機2から離れる(あるいは近づかない)方向に閾値以上の動きが検出されたことに応じて、警報(捜索情報315)を出力する(詳細は後述する。)。
【0060】
さらに、
図4に示すように、子機3は、ジャイロセンサ35、加速度センサ36および通信部37を備えている。
【0061】
ジャイロセンサ35は、子機3の移動における角速度を測定して角速度情報350を取得する。本実施の形態におけるジャイロセンサ35は、ジャイロセンサ25と同様に、いわゆる3軸のジャイロセンサとして構成されている。
【0062】
加速度センサ36は、子機3の移動における加速度を測定して加速度情報360を取得する。本実施の形態における加速度センサ36は、加速度センサ26と同様に、いわゆる3軸の加速度センサとして構成されている。
【0063】
通信部37は、親機2との間で電波を用いた近接無線通信によるデータ通信を行う機能を有している。なお、本実施の形態における子機3は、いわゆる携帯電話として構成されており、通信部37は、携帯電話網(広域無線通信網)に接続する機能も有している。ただし、子機3は、子供などが所持することが想定されるので、紛失の危険性も考慮して、広域無線通信網に接続する機能をあえて設けないようにしてもよい。
【0064】
図5は、子機3が備える機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。
図5に示す通信制御部300、強度検出部301、強度判定部302、情報作成部303、測位制御部304および動き検出部305は、CPU30がプログラム310に従って動作することにより実現される機能ブロックである。
【0065】
通信制御部300は、通信部37を制御することにより、親機2との間で近接無線通信を利用したデータの送受信を実現する。
【0066】
すなわち、通信制御部300は、通信部37が親機2から受信した情報に応じて、当該情報を記憶装置31に格納したり、他の機能ブロックに伝達したりする機能を有する。例えば、通信部37が開始要求情報やリクエスト情報を受信したときには、その旨を情報作成部303に伝達する。
【0067】
また、通信制御部300は、他の構成から伝達された信号や作成された情報に応じて、通信部37を制御して、様々な情報を親機2に向けて送信させる。例えば、子機情報313が作成されると、通信制御部300は、作成された子機情報313を親機2に向けて送信するように、通信部37を制御する。
【0068】
強度検出部301は、通信部37による親機2と子機3との間の近接無線通信における電波強度を検出する。より詳細には、強度検出部301は、通信部37が試験信号(リクエスト情報を含む。)を受信したときの電波強度を検出して、当該電波強度を示す強度情報311を作成する。なお、強度検出部301により検出される電波強度を、以下では、「電波強度Fs」と称する。また、強度検出部301により最初に検出される電波強度Fs(初期状態の電波強度Fs)を、特に、「電波強度Fs0」と称する。
【0069】
強度判定部302は、強度情報311を参照して、電波強度Fsの減衰値を予め設定されている閾値(以下、「閾値F」と称する。)と比較し、当該減衰値が閾値Fより大きいか否かを判定して、判定結果を示す判定情報312を作成する。本実施の形態における判定情報312の初期値は「1」であり、F<Fs0−Fsとなったときに、強度判定部302によって「0」に書き換えられるものとする。
【0070】
図1に示す未捜索エリア9は、F≧Fs0−Fsとなる領域を概念的に示したものである。一般に、近接無線通信における電波強度は、電波を送信した装置(本実施の形態では親機2)からの距離に応じて減衰する。したがって、受信側の装置(本実施の形態では子機3)において、電波強度を測定し、閾値と比較することにより、受信側の装置が送信側の装置からどの程度離れた位置に存在するかを判定することができる。すなわち、電波強度Fsの減衰値が閾値Fより大きくなる位置が未捜索エリア9外であると判定することができる。
【0071】
ただし、現実の未捜索エリア9は、
図1に示すように円形となるわけではない。それどころか、未捜索エリア9の位置および形状は、時々刻々と変化するものである。例えば、遮蔽物などにより、親機2からの電波が遮蔽される部分領域では、比較的近距離であっても電波強度Fsが下がることもある。しかしながら、そのような遮蔽物の陰に子機3が存在するのであれば、近距離であったとしても捜索者から捜索対象が視認できない状態となっている可能性が高い。したがって、そのような場合には、例え子機3が距離的には近くに存在しているとしても、積極的に捜索を開始した方が好ましい状況といえる。すなわち、迷子捜索システム1は、電波強度Fsを指標として、捜索が必要か否かを判定することにより、例えばGPSなどの技術を用いて単に距離に応じて捜索の要否を判定するよりも、適切に捜索の要否を判定することができる。
【0072】
本実施の形態では、F<Fs0−Fsとなったときに、子機3が未捜索エリア9から出た(捜索対象が捜索者から離れて単独で行動している)と判定し、強度判定部302は、当該子機3(捜索対象)に対する捜索が必要と判定する。すなわち、強度判定部302は、強度検出部301により検出された電波強度(強度情報311)に応じて、当該電波強度による近接無線通信を行った他の携帯端末装置(本実施の形態では自機である子機3)に対する捜索が必要か否かを判定する機能を有している。
【0073】
情報作成部303は、状況に応じて、必要な情報を作成する機能を有する。例えば、判定情報312を参照することにより、判定情報312が強度判定部302によって「0」に書き換えられると、情報作成部303は、開始要求情報を含む子機情報313を作成する。また、通信制御部300からリクエスト情報を受信した旨が伝達されるごとに、強度情報311および測位情報314を含む子機情報313を作成する。さらに、情報作成部303は、動き検出部305の判定結果(後述)に応じて、捜索情報315を作成する機能も有している。
【0074】
測位制御部304は、操作部32から伝達される運用開始信号に応じて、ジャイロセンサ35を起動する。測位制御部304は、ジャイロセンサ35が起動したときの子機3の姿勢(以下、「子機初期姿勢」と称する。)を記憶装置31に記憶させる。なお、詳細は後述するが、本実施の形態では、子機3における測位は相対的な測位で足りるため、子機初期姿勢に関しては、絶対方位に対する姿勢までもが既知となる必要はない。しかし、本実施の形態における迷子捜索システム1においては、子機3における相対的な測位情報314を、親機2において、親機2における相対的な位置情報に変換する必要がある。
【0075】
したがって、子機初期姿勢と親機初期姿勢との位置関係は既知でなければならず、本実施の形態においては、子機初期姿勢は、親機初期姿勢と同じ姿勢とする。ここで、「同じ姿勢」とは、ジャイロセンサ25の3軸方向と、ジャイロセンサ35の3軸方向とが同じ方向に向くようにそれぞれの姿勢を決定するという意味である。親機2と子機3とが同一の装置である場合は、基板上においてジャイロセンサ25と、ジャイロセンサ35とは、同一の配置となっているため、外見上、親機2と子機3とを同じ姿勢にすれば、ジャイロセンサ25の3軸方向と、ジャイロセンサ35の3軸方向とが同じ方向に向くことになる(互いに一致することになる。)。しかしながら、
図1に示すように、親機2と子機3とが、異なる装置として構成されている場合には、「同じ姿勢」とするときに、ジャイロセンサ25の3軸方向と、ジャイロセンサ35の3軸方向について注意が必要である。
【0076】
また、測位制御部304は、判定情報312に応じて、加速度センサ36を起動する。より詳細には、判定情報312が「0」に書き換えられたタイミングで加速度センサ36を起動する。言い換えれば、加速度センサ36は、運用開始信号によって起動されることはない。したがって、運用が開始された後は、常に、加速度センサを起動させておく必要のある従来技術に比べて消費電力を抑制することができる。
【0077】
また、測位制御部304は、ジャイロセンサ35により取得された角速度情報350に基づいて子機初期姿勢に対する子機3の姿勢を特定する。すなわち、ジャイロセンサ35および測位制御部304が協働することにより、子機3において姿勢が特定される。したがって、本実施の形態における子機3において、ジャイロセンサ35および測位制御部304が、姿勢特定手段に相当する。
【0078】
さらに、測位制御部304は、特定した子機3の姿勢と、加速度センサ36により測定された加速度情報360とに基づいて、自機の相対的測位を行い、測位情報314を作成する。ただし、すでに説明したように、加速度センサ36は、運用開始信号によって起動されることはない。したがって、測位制御部304は、加速度センサ36を起動するまで(捜索が必要と判定されるまで)は、自機の相対的測位を行うことはなく、測位情報314を作成することもない。すなわち、本実施の形態における子機3は、常にこれらの演算を行う場合に比べて、消費電力を抑制することができる。なお、角速度情報350および加速度情報360に基づいて、相対的な位置情報(測位情報314)を求める方法は、従来の技術を適宜用いることができるため、詳細な説明は省略する。
【0079】
動き検出部305は、強度判定部302により自機の捜索が必要と判定された後において、自機の加速度センサ36により測定された加速度情報360に基づいて、閾値(以下、「閾値a」と称する。)以上の動きを検出する。なお、本実施の形態では、動き検出部305は、加速度情報360を直接参照することにより、即座に、閾値a以上の動きを検出する。しかし、動き検出部305が測位情報314を参照することにより、いわば間接的に加速度情報360を参照すれば、検出速度は遅れるものの、正確に目的の動きを検出することができる。
【0080】
また、動き検出部305は、強度情報311を参照することにより、電波強度Fsが増加するか否かを評価し、検出した閾値a以上の動きが、親機2に向かう動きか否かを判定する。なお、検出された閾値a以上の動きの方向を特定する手法としては、親機2にその間の相対的な位置の変化(相対位置情報212)を問い合わせることも可能であるが、そのように構成した場合、判定速度が遅れる可能性がある。なお、動き検出部305は、判定結果を情報作成部303に伝達する。
【0081】
以上が、本実施の形態における迷子捜索システム1の構成および機能の説明である。次に、迷子捜索システム1を用いて、迷子を捜索する方法(迷子捜索方法)について説明する。
【0082】
図6は、迷子捜索方法において実行される初期化処理を示す流れ図である。迷子捜索システム1は、運用を開始するときに、まず、初期化処理を実行する必要がある。
【0083】
初期化処理が開始されると、捜索者および捜索対象は、親機2の姿勢と子機3の姿勢とを同じ姿勢にする(ステップS1)。すでに説明したように、ステップS1における「同じ姿勢」とは、ジャイロセンサ25の3軸方向と、ジャイロセンサ36の3軸方向とが一致するように、親機2の姿勢と子機3の姿勢とを調整するという意味である。
【0084】
次に、捜索者は、ステップS1の姿勢を維持したままで、親機2の操作部22を操作して、親機2に運用開始信号を入力する。また、捜索対象は、ステップS1の姿勢を維持したままで、子機3の操作部32を操作して、子機3に運用開始信号を入力する。これにより、親機2および子機3に対する運用開始信号の入力操作が実行される(ステップS2)。
【0085】
運用開始信号の入力操作が完了すると、操作部22から運用開始信号を伝達された測位制御部201がジャイロセンサ25を起動する。また、同様に、操作部32から運用開始信号を伝達された測位制御部304がジャイロセンサ35を起動する(ステップS3)。これにより、親機2および子機3において、それぞれ角速度情報250,350の取得が開始される。
【0086】
角速度情報250,350の取得が開始されると、迷子捜索システム1は、親機初期姿勢および子機初期姿勢をそれぞれ記憶する(ステップS4)。ステップS4において、測位制御部201は、角速度情報250に基づいて、親機初期姿勢を特定し記憶する。同様に、ステップS4において、測位制御部304は、角速度情報350に基づいて、子機初期姿勢を特定し記憶する。
【0087】
ステップS4が完了すると、以後、測位制御部201,304は、それぞれ親機2および子機3の姿勢推定を開始する(ステップS5)。これによって、迷子捜索システム1では、運用中において、ジャイロセンサ25,35による測定が継続され、測定により取得された角速度情報250,350に基づいて姿勢推定が実行され続けることとなる。
【0088】
ステップS2において入力された運用開始信号が伝達された通信制御部200は、ステップS3ないしS5の処理と並行して、試験信号の送信を開始するように通信部27を制御する。これにより、通信部27が子機3に向けて試験信号の送信を開始する(ステップS6)。本実施の形態における迷子捜索システム1では、以後、特に断らない限り、通信部27が周期Ttの間隔で試験信号を送信し続ける。
【0089】
ステップS6において送信された試験信号を通信部37が受信すると、子機3の強度検出部301は、通信部37が受信した試験信号の電波強度Fsを検出する。そして、強度検出部301は、検出した電波強度Fsを初期電波強度Fs0として強度情報311を作成し、記憶装置21に記憶させる(ステップS7)。
【0090】
以上により、迷子捜索システム1において、捜索対象(子機3)に対する監視が開始され(ステップS8)、初期化処理が終了する。このようにして初期化処理が終了すると、迷子捜索システム1は、運用状態に移行する。
【0091】
図7は、監視処理のうち子機3によって実行される処理を示す流れ図である。なお、監視処理とは、初期化処理においてステップS8が実行されることにより開始される処理であって、迷子捜索システム1によって、捜索対象を監視し、迷子になったとき(迷子になったと判定したとき)には、捜索者に捜索対象の存在位置を知らせる処理である。
【0092】
監視処理が開始されると、子機3は、測定タイミングの到来(ステップS10)と、試験信号の受信(ステップS13)と、開始要求情報の受信(ステップS17)とを監視する状態となる。この状態を、以下、子機における「監視状態」と称する。なお、監視状態において、子機3が監視する状態は、ステップS10,S13,S17に限定されるものではない。
【0093】
監視状態において、測定周期Tsが経過し、測定タイミングが到来すると、CPU30はステップS10においてYesと判定して、測定タイミングを計測するための測定タイマに「Ts」をセットし(ステップS11)、測定処理を開始する(ステップS12)。
【0094】
図8は、子機3が実行する測定処理を示す流れ図である。
【0095】
測定処理が開始されると、CPU30は、ジャイロセンサ35の測定値を読み取る。これにより、子機3において角速度が測定され角速度情報350が取得される(ステップS21)。
【0096】
ステップS21により新たな角速度情報350が取得されると、当該角速度情報350に基づいて、測位制御部304が、子機3の姿勢を推定し(ステップS22)、測位情報314を作成する。
【0097】
次に、測位制御部304が判定情報312を参照して、加速度センサ36がすでに稼働しているか否かを判定する(ステップS23)。なお、ステップS23において、測位制御部304は、判定情報312が「0」のとき、加速度センサ36が稼働していると判定する。また、加速度センサ36が稼働していない場合(ステップS23においてNo。)、子機3は測定処理を終了して、
図7に示す処理に戻る。
【0098】
一方、すでに加速度センサ36が稼働している場合には、CPU30はステップS23においてYesと判定して、加速度センサ36の測定値を読み取る。これにより、子機3において加速度が測定され加速度情報360が取得される(ステップS24)。
【0099】
新たな加速度情報360が取得されると、ステップS22において推定された姿勢と、当該加速度情報360に基づいて、測位制御部304が、子機3の相対測位を実行し(ステップS25)、相対位置を求めて、測位情報314を作成する。
【0100】
このように、監視処理が実行されているときにおいて、子機3では、測定周期Tsごとに姿勢が推定される。このとき、加速度センサ36が稼働している状態ならば、相対測位も行われる。すなわち、前回測位した位置に対する相対的な子機3の位置が求められる。これらの結果は測位情報314として記録される。
【0101】
ステップS25が実行されると、動き検出部305がステップS24において取得された加速度情報360に基づいて、子機3の加速度の絶対値(加速度の大きさを示す。)を演算する(ステップS26)。さらに、動き検出部305は、演算により求めた加速度の絶対値に基づいて、捜索対象の行動が正常行動であったか否かを判定する(ステップS27)。
【0102】
ステップS27において、動き検出部305は、ステップS26において求めた加速度が閾値aよりも大きいか否かを判定する。当該加速度が閾値aよりも大きい場合には、移動が急激であるとみなし、さらに、その期間の捜索対象の移動方向が、捜索者(親機2)に近づく方向か否かを判定する。この判定には、その期間において、電波強度Fsが増加しているか否かによって判定する。
【0103】
すなわち、動き検出部305は、強度情報311を参照して、移動の前後における電波強度Fsを比較し、電波強度が増加している場合には、捜索対象が捜索者に近づく方向に移動しているみなし、その移動を正常行動とはみなす(ステップS27においてYesと判定する。)。捜索対象の行動(移動)を正常行動と判定した場合、子機3は測定処理を終了して、
図7に示す処理に戻る。
【0104】
一方で、動き検出部305は、移動の前後における電波強度が増加していない場合には、捜索対象が捜索者に近づく方向に移動しているのではないとみなして、その移動を正常行動とはみなさない(ステップS27においてNoと判定する。)。この場合、動き検出部305は、捜索対象の異常行動を検出したとして、その旨を情報作成部303に伝達する。
【0105】
次に、情報作成部303は、捜索対象が急激に移動している場合に出力すべき捜索情報315を作成する(ステップS28)。ステップS27においてNoと判定される場合とは、捜索対象に対する捜索が開始されており、さらに、その状況で、捜索対象が急激に移動したという場合である。このような移動を放置すると、捜索対象が事故(飛び出し)に遭う、あるいは、捜索対象が近接無線通信の通信可能範囲から外れてしまい、以後、捜索を行うことが不可能になる危険性もある。したがって、このような場合には、捜索対象の移動を抑制するための警報を出力することが好ましい。そこで、情報作成部303は、ステップS28において、警報を出力するための捜索情報315を作成する。
【0106】
ステップS28において作成される捜索情報315は、例えば、捜索対象に対してその場に留まるように促すための音声情報(捜索者(母親)の声やアニメキャラクタの声)や、アニメーションを表示して落ち着かせたりするための画像情報といったものが想定される。ただし、捜索情報315は、このようなものに限定されるものではなく、捜索対象に応じて適切に選択されることが好ましい。
【0107】
ステップS28が実行されると、表示部33およびスピーカ34は、ステップS28において作成された捜索情報315を出力する。すなわち、本実施の形態における表示部33およびスピーカ34は、本発明における警報出力手段に相当する。なお、ステップS29を実行すると、子機3は測定処理を終了して監視状態に戻る。
【0108】
図7に戻って、監視状態において、親機2から送信された試験信号を受信すると、CPU30は、ステップS13においてYesと判定し、強度検出部301が受信した試験信号の電波強度Fsを検出する(ステップS14)。さらに、強度検出部301は、検出した電波強度を現在の電波強度Fsとして強度情報311を作成し格納する(ステップS15)。
【0109】
また、ステップS13においてYesと判定されたとき、通信制御部300は、通信部37が試験信号を受信したことを情報作成部303に伝達する。これにより、子機3は、子機情報送信処理を実行する(ステップS16)。
【0110】
図9は、子機3において実行される子機情報送信処理を示す流れ図である。
【0111】
子機情報送信処理が開始されると、情報作成部303は、判定情報312が「0」か否かを判定する(ステップS31)。すでに説明したように、本実施の形態においては、捜索が開始された以後に親機2が送信する試験信号をリクエスト情報(親機2が子機3に対して子機情報313を要求する情報。)とみなす。したがって、試験信号を受信したとき、子機3は当該試験信号がリクエスト情報か否かを判定する必要がある。一方で、本実施の形態では、判定情報312の初期値は「1」であり、捜索が必要と判定されたときに、「0」に書き換えられる。以上のことから、判定情報312が「0」のときに受信する試験信号はリクエスト情報である。したがって、ステップS31は、受信した試験信号がリクエスト情報か否かを判定する処理に相当する。
【0112】
受信した試験信号がリクエスト情報でない場合(ステップS31においてNo。)、強度判定部302は、強度情報311を参照して、初期電波強度Fs0および現在の電波強度Fsを取得し、電波強度の減衰値が閾値F以下か否かを判定する(ステップS32)。すでに説明したように、ステップS32の処理は、現在の電波強度Fsを指標として、子機3が未捜索エリア9内に存在するか否かを判定する処理である。
【0113】
電波強度の減衰値が閾値F以下であり、子機3が未捜索エリア9内に存在すると判定された場合(ステップS32においてYes。)、強度判定部302は、捜索対象に対する捜索の必要はないと判断する。この場合、強度判定部302は、判定情報312を「1」のまま維持し、子機情報送信処理を終了し、
図7に示す処理に戻る。この場合、子機情報313が親機2に向けて送信されることはない。
【0114】
一方で、電波強度の減衰値が閾値Fより大きく、子機3が未捜索エリア9外に存在すると判定された場合(ステップS32においてNo。)、強度判定部302は、捜索対象に対する捜索が必要と判定し、判定情報312を「0」に書き換える(ステップS33)。
【0115】
次に、測位制御部304は、判定情報312が「0」に書き換えられたことにより、加速度センサ36を起動する(ステップS34)。このように、本実施の形態における迷子捜索システム1では、運用が開始されてから、ステップS34が実行されるまでの間は、加速度センサ36が起動されない。したがって、従来の技術に比べて消費電力を抑制することができる。
【0116】
ステップS33において判定情報312が「0」に書き換えられると、情報作成部303は、子機情報313を作成する(ステップS35)。ステップS35において作成される子機情報313は、後述の処理において作成される子機情報313と異なり、強度情報311や測位情報314を含んでおらず、開始要求情報(強度判定部302により捜索開始が必要と判定されたことを示す情報。)を含む子機情報313である。
【0117】
ステップS35が実行されることにより、新たな子機情報313が作成されると、通信制御部300が、作成された子機情報313を取得して、親機2に向けて送信するように、通信部37を制御する。これにより、通信部37は、作成された子機情報313を親機2に向けて送信する(ステップS36)。なお、ステップS36の処理を実行すると、子機3は子機情報送信処理を終了して、
図7に示す処理に戻る。
【0118】
次に、ステップS31においてYesと判定された場合の処理について説明する。ステップS31においてYesと判定される場合とは、受信した試験信号がリクエスト情報であった場合である。この場合、情報作成部303は、強度情報311および測位情報314を含む子機情報313を作成する(ステップS37)。
【0119】
ステップS37が実行されることにより、新たな子機情報313が作成されると、通信制御部300が、作成された子機情報313を取得して、親機2に向けて送信するように、通信部37を制御する。これにより、通信部37は、作成された子機情報313を親機2に向けて送信する(ステップS36)。これにより、捜索が開始されてから後において、子機3における電波強度Fsと、相対位置(測位結果)とが親機2に伝達されることになる。
【0120】
なお、ステップS31においてYesと判定される場合とは、すでに捜索が開始されている場合である。したがって、通常は、強度情報311のみならず、相対測位の結果(相対位置)を含む測位情報314も存在する。ただし、測定タイミング等の関係により、これらの情報が未だ作成されていない場合や、前回ステップS37が実行されてから強度情報311や測位情報314が更新されていない場合には、ステップS37,S36をスキップしてもよい。ステップS36の処理を実行すると、子機3は子機情報送信処理を終了して、
図7に示す処理に戻る。
【0121】
図7に戻って、監視状態において、通信部37が親機2から送信された開始要求情報を受信すると、CPU30は、ステップS17においてYesと判定する。親機2から送信される開始要求情報とは、親機2において、捜索者により捜索開始指示信号が入力されたときに子機3に向けて送信される情報である。すなわち、子機3において、開始要求情報が受信された場合、子機3は、捜索を開始する準備を行い、かつ、その後は捜索に必要な処理を実行しなければならない。
【0122】
したがって、CPU30がステップS17においてYesと判定すると、通信制御部300は、情報作成部303に開始要求情報を受信した旨を伝達する。これ従って、情報作成部303は、判定情報312を「0」に書き換える(ステップS18)。そして、判定情報312が「0」に書き換えられると、測位制御部304は、加速度センサ36を起動する(ステップS19)。これにより、子機3において捜索を開始する準備が整い、以後、子機3は、ステップS25を実行することにより測位情報314を更新しつつ、試験信号(リクエスト情報)を受信するたびにステップS36を実行することにより親機2に向けて子機情報313を送信する。ステップS19の処理を実行すると、子機3は再び監視状態に戻る。
【0123】
以上が、本実施の形態における子機3において実行される監視処理の説明である。次に、本実施の形態における親機2において実行される監視処理について説明する。
【0124】
図10は、親機2において実行される監視処理を示す流れ図である。
【0125】
監視処理が開始されると、親機2は、測定タイミングの到来(ステップS41)と、送信タイミングの到来(ステップS44)と、捜索開始指示信号の入力の有無(ステップS47)と、子機情報313の受信(ステップS50)とを監視する状態となる。この状態を、以下、親機2における「監視状態」と称する。なお、監視状態において、親機2が監視する状態は、ステップS41,S44,S47,S50に限定されるものではない。
【0126】
監視状態において、測定周期Tsが経過し、測定タイミングが到来すると、CPU20はステップS41においてYesと判定して、測定タイミングを計測するための測定タイマに「Ts」をセットし(ステップS42)、測定処理を開始する(ステップS43)。
【0127】
図11は、親機2が実行する測定処理を示す流れ図である。
【0128】
測定処理が開始されると、CPU20は、ジャイロセンサ25の測定値を読み取る。これにより、親機2において角速度が測定され角速度情報250が取得される(ステップS61)。
【0129】
ステップS61により新たな角速度情報250が取得されると、当該角速度情報250に基づいて、測位制御部201が、親機2の姿勢を推定し(ステップS62)、測位情報211を作成する。
【0130】
次に、測位制御部201が、加速度センサ26がすでに稼働しているか否かを判定する(ステップS63)。そして、加速度センサ26が稼働していない場合(ステップS63においてNo。)、親機2は測定処理を終了して、
図10に示す処理に戻る。
【0131】
一方、すでに加速度センサ26が稼働している場合には、CPU20はステップS63においてYesと判定して、加速度センサ26の測定値を読み取る。これにより、親機2において加速度が測定され加速度情報260が取得される(ステップS64)。
【0132】
新たな加速度情報260が取得されると、ステップS62において推定された姿勢と、当該加速度情報260とに基づいて、測位制御部201が、親機2の相対測位を実行し(ステップS65)、相対位置を求めて、測位情報211を作成する。
【0133】
このように、監視処理が実行されているときにおいて、親機2では、測定周期Tsごとに姿勢が推定される。このとき、加速度センサ26が稼働している状態ならば、相対測位も行われる。すなわち、前回測位した位置に対する相対的な親機2の位置が求められる。これらの結果は測位情報211として記録される。なお、ステップS65を実行すると、親機2は測定処理を終了して、
図10に示す処理に戻る。
【0134】
図10に戻って、監視状態において、送信周期Ttが経過し、送信タイミングが到来すると、CPU20はステップS44においてYesと判定して、送信タイミングを計測するための送信タイマに「Tt」をセットする(ステップS45)。次に、通信制御部200は、試験信号を送信するように通信部27を制御する。これにより、通信部27が試験信号を子機3に向けて送信する(ステップS46)。
【0135】
このように、親機2では、捜索が開始されているか否かに関わらず、送信周期Ttが経過するごとに、試験信号が送信される。ただし、捜索が開始された後の試験信号は、すでに説明したように、子機3において、リクエスト情報として解釈される。なお、ステップS46を実行すると、親機2は、再び監視状態に戻る。
【0136】
監視状態において、操作部22が操作され、捜索開始指示信号が入力されると、CPU20は、ステップS47においてYesと判定する。そして、通信制御部200は、開始要求情報を子機3に向けて送信するように、通信部27を制御する。これにより、通信部27が開始要求情報を子機3に向けて送信する(ステップS48)。すでに説明したように、開始要求情報を受信した子機3では、電波強度Fsに関わらず、判定情報312が「0」に書き換えられ(ステップS18)、捜索が開始される。
【0137】
ステップS48が実行されると、測位制御部201は、加速度センサ26を稼働させる(ステップS49)。
【0138】
このように、迷子捜索システム1では、親機2において捜索者が任意のタイミングで操作部22を操作して、捜索開始指示信号を入力することにより、電波強度Fsに依らずに、捜索を開始することができる。したがって、電波強度Fsの減衰値は閾値Fに比べて小さく、捜索対象が比較的近くに存在すると思われる状況であっても、操作者が捜索対象を見失い、捜索したいと望むときには、捜索を開始させることができる。なお、ステップS49を実行すると、親機2は、再び監視状態に戻る。
【0139】
監視状態において、通信部27が子機情報313を受信すると、CPU20は、ステップS50においてYesと判定する。そして、通信制御部200が、当該子機情報313を記憶装置21に記憶させる。
【0140】
受信した子機情報313を記憶装置21に格納すると、親機2は、捜索処理を実行する(ステップS51)。
【0141】
図12は、親機2が実行する捜索処理を示す流れ図である。
【0142】
捜索処理が開始されると、通信制御部200は、受信した子機情報313に開始要求情報が含まれているか否かを判定する(ステップS71)。なお、すでに説明したように、開始要求情報が含まれる子機情報313は、強度情報311や測位情報314を含まない子機情報313である。したがって、例えば、強度情報311や測位情報314の有無に応じて、ステップS71の判定を行うこともできる。
【0143】
通信部27により受信された子機情報313が開始要求情報を含んでいる場合(ステップS71においてYes)、通信制御部200は、その旨を測位制御部201および情報作成部204に伝達する。
【0144】
開始要求情報を受信した旨を通信制御部200から伝達された測位制御部201は、捜索を開始させるために、加速度センサ26を稼働させる(ステップS72)。また、開始要求情報を受信した旨を通信制御部200から伝達された情報作成部204は、捜索が開始されたことを示す捜索情報214を作成する(ステップS73)。そして、表示部23およびスピーカ24は、ステップS73において作成された捜索情報214を出力する(ステップS74)。
【0145】
迷子捜索システム1では、捜索者が捜索開始指示信号を入力した場合以外は、親機2から送信された試験信号の電波強度を指標として自動的に捜索が開始される。そして、親機2が開始要求情報を子機3から受信した場合とは、迷子捜索システム1において、自動的に捜索が開始された場合である。
【0146】
ここで、迷子捜索システム1における捜索は、捜索対象に関する情報(位置情報)を捜索者に提供することにより、捜索者による現実の捜索を支援するものである。したがって、捜索が開始されていることに捜索者自身が気づかなければ、提供される情報が有効に活用されないばかりか、実際の捜索(捜索者による捜索)が行われないおそれもある。また、迷子は、捜索者が何らかの事象に気を取られて、捜索対象に対する捜索者の意識が散漫になったときに発生しやすい。
【0147】
したがって、特に、自動的に捜索が開始されたときには、捜索が開始されたこと自体を捜索者に通報することにより、気を取られている事象から捜索対象へと捜索者の意識を戻させる(気づかせる)ことが重要である。
【0148】
そこで、本実施の形態における親機2は、ステップS72が実行されたときには、情報作成部204により、捜索が開始されたことを報知する情報(捜索情報214)を作成し、表示部23およびスピーカ24がこれを出力して報知する。このとき、出力される捜索情報214としては、例えば、迷子の発生を知らせる警告音や音声メッセージを再生するための音声情報、あるいは、閲覧中の他のアプリ画面を切り替えて(または部分的な上書き表示により)迷子の発生を知らせる画像情報やメッセージを表示するためのテキスト情報などが想定される。ステップS74において出力される捜索情報214は、捜索者が親機2を意識していない状態でも、即座に感知することができる形態のものが好ましい。
【0149】
これによって、迷子捜索システム1は、捜索対象が捜索者から離れて行動していると判定したときに、その旨をいち早く捜索者に報知することができ、捜索者の意識を捜索対象に向けさせることができる。したがって、捜索者が気づかないことにより、事態がさらに悪化する(捜索対象がさらに離れてしまう。)ことを有効に防止できる。
【0150】
次に、ステップS71においてNoと判定された場合について説明する。ステップS71においてNoと判定される場合とは、通信部27が受信した子機情報313が開始要求情報でない場合である。このとき、相対位置演算部202は、親機2の測位制御部201による測位結果(測位情報211)と、子機3の測位制御部304による測位結果(測位情報314)とに基づいて、親機2と子機3との相対的な位置関係を求め(ステップS75)、相対位置情報212を作成する。
【0151】
ステップS71においてNoと判定された場合の子機情報313には、子機3において受信された試験信号の電波強度Fs(強度情報311)と、子機3の相対位置(測位情報314)とが含まれている。そこで、通信制御部200により子機情報313が記憶装置21に格納されるたびに、相対位置演算部202は、新たに格納された子機情報313を参照する。そして、当該子機情報313に強度情報311および測位情報314が含まれている場合(すなわち、ステップS71においてNoと判定される場合)、相対位置演算部202は、さらに測位情報211を参照する。このようにして、ステップS75において、相対位置演算部202は、測位情報211と測位情報314とを取得する。
【0152】
図13は、捜索者および捜索対象の行動の想定例を示す図である。
図13を用いて、相対位置演算部202が相対位置情報212を演算する原理を説明する。
【0153】
図13に示す位置P0,P1,P2,P3は、それぞれの時間における親機2(捜索者)の現実の位置である。また、位置p0,p1,p2,p3は、それぞれの時間における子機3(捜索対象)の現実の位置である。未捜索エリア90,91,92,93は、それぞれ親機2が位置P0,P1,P2,P3に存在しているときの未捜索エリア9を示す。
【0154】
親機2が位置P0,P1にそれぞれ存在しているとき、子機3はそれぞれ位置p0,p1に存在しており、これらはいずれも未捜索エリア90,91内に位置している。したがって、この時点で、迷子捜索システム1は、子機3の捜索を開始してはいない。
【0155】
親機2が位置P2に移動したとき、子機3は、未捜索エリア92の外縁部(位置p2)に存在しており、電波強度の減衰値が閾値Fより大きくなり、迷子捜索システム1において捜索が開始される。このときの親機2と子機3との相対的な位置関係をベクトルλとする。迷子捜索システム1において捜索が開始された瞬間は、子機3は未捜索エリア9の外端部(円周上)に存在していると推定されるが、外端部のいずれに存在するかは特定できない。したがって、この時点でベクトルλは未知数である。
【0156】
次の時点で、親機2が位置P3に移動し、子機3が位置p3に移動している。この時点で、相対位置演算部202は、ステップS75を実行し、相対位置情報212を演算する。
【0157】
まず、親機2が位置P2から位置P3に移動したときの移動ベクトルをベクトルαとすると、ベクトルαは測位情報211により既知である。また、その間に子機3が位置p2から位置p3に移動しており、このときの移動ベクトルをベクトルβとすると、ベクトルβは測位情報314により既知である。
【0158】
ステップS75において、相対位置演算部202は、測位情報211に示されるベクトルαの逆ベクトルと、測位情報314に示されるベクトルβとをベクトル加算することにより、ベクトルγを求め、これを相対位置情報212とする。すなわち、親機2からの子機3に対する相対位置として求まるのは、位置P4である。言い換えれば、相対位置演算部202は、子機3の現在位置を位置P4と推定する。
【0159】
図12に戻って、ステップS75が実行されて、相対位置演算部202により相対位置情報212が求まると、補正部203が相対位置情報212に対する補正値を演算する(ステップS76)。
【0160】
図13に示されるように、相対位置情報212は、それなりに子機3の存在する方向を正しく推定している。したがって、相対位置情報212を捜索情報214として出力してもそれなりの効果は期待できる。しかし、子機3の現実の位置は位置p3であり、位置P4からは多少のずれを生じている。このずれは、
図13に示すベクトルλが未知数であることにより生じるものである。そこで、本実施の形態における補正部203は、ステップS76において、位置p3と位置P4との間のずれを補正するための補正値(補正情報213)を演算する。言い換えれば、補正部203は、ベクトルλを推定する。
【0161】
まず、補正部203は、破線の円で示される円94を求める。円94は、親機2が位置P4に存在していたとすれば未捜索エリア9となる範囲の外周円である。したがって、補正部203は、閾値Fに基づいて、円94を推定することができる。
【0162】
親機2が位置P2に存在していたとき、子機3は未捜索エリア92の外縁部に存在していたはずである。したがって、現在の子機3の位置は、位置P4を中心とした円周上(円94の線上)に存在すると予測できる。
【0163】
次に、補正部203は、強度情報311を参照して、親機2が位置P3に存在するときに、電波強度が「Fs(強度情報311)」となる位置を求める。このような位置は、位置P3を中心とした円として求められる。
図13では、このようにして求められる円の一部を破線の円8として図示している。子機3において現在の電波強度が「Fs」として観測されているのであるから、現在の子機3は、この円周上に存在すると予測できる。
【0164】
以上のことから、補正部203は、子機3の位置を、円94と円8との交点として求める。
図13に示す例では、補正部203は、子機3の位置として位置p3および位置p4を求めることができる。すなわち、位置P4からのベクトルλ1,λ2とが求まる。ここで、真のベクトルλは、ベクトルλ1であるが、1度の演算によってこれを決定することはできない。
【0165】
したがって、迷子捜索システム1では、親機2が周期Ttごとに試験信号を送信し、子機情報313を取得して相対位置情報212および補正情報213を繰り返し演算することにより、ベクトルλ1,λ2のうちのいずれが真のベクトルλであるかを絞り込み、補正値としてのベクトルλを決定する。
【0166】
ステップS76が実行されて補正情報213が求まると、情報作成部204は、相対位置情報212(ベクトルγ)と、補正情報213(ベクトルλ)とに基づいて、子機3の位置を求め、捜索情報214を作成する(ステップS77)。より詳細には、ベクトルγにベクトルλをベクトル加算して、補正後の親機2と子機3との相対的な位置関係であるベクトルδを求め、これを捜索情報214とする。
【0167】
捜索情報214が求まると、表示部23は、捜索情報214を表示することにより出力する。これにより、捜索者は表示部23に表示されたベクトルδを視認して、捜索対象(子機3)の存在位置を確認することができる。
【0168】
以上のように、本実施の形態における迷子捜索システム1は、2以上の携帯端末装置である親機2および子機3を備え、親機2および子機3のそれぞれは、自機の姿勢を特定するための角速度を測定するジャイロセンサ25,35と、自機の加速度を測定する加速度センサ26,36と、特定された姿勢および測定された加速度に基づいて、自機の相対的測位を行う測位制御部201,304とを備えている。また、迷子捜索システム1は、親機2と子機3との間で電波を用いた近接無線通信によるデータ通信を行う通信部27,37と、親機2と子機3との間の近接無線通信における電波強度Fsを検出する強度検出部301と、検出された電波強度Fsに応じて、子機3に対する捜索が必要か否かを判定する強度判定部302と、測位情報211と測位情報314とに基づいて、親機2と子機3との相対的な位置関係である相対位置情報212を求める相対位置演算部202と、相対位置情報212に基づいて、捜索情報214を作成する情報作成部204と、情報作成部204により作成された捜索情報214を出力する表示部23およびスピーカ24とを備え、親機2および子機3のそれぞれは、強度判定部302による判定結果(判定情報312)に応じて、自機の加速度センサ26,36に加速度の測定を開始させる測位制御部201,304をさらに備える。これにより、GPSを使用することなく、捜索対象に対する捜索を行うことができる。また、すでに市場に多く流通している携帯端末装置(スマートフォンや携帯電話、PDAなど)を捜索者と捜索対象とにそれぞれ所持させるだけで捜索を行うことができ、従来の技術に比べてコストの増大を抑制することができる。また、捜索が必要と判定されるまでは加速度センサ26,36を起動させることはなく、かつ、測位情報211,314を演算することもない。したがって、常に加速度センサを起動しつつ測位処理を行う従来の技術に比べて、消費電力を抑制することにより、電池寿命という携帯端末装置の欠点も補うことができる。
【0169】
また、強度検出部301により検出された電波強度Fsに応じて、相対位置演算部202により求められた相対位置情報212に対する補正値(補正情報213)を演算する補正部203をさらに備え、情報作成部204は、補正部203により求められた補正情報213に基づいて、捜索情報214を作成することにより、さらに精度の高い捜索情報214を提供することができる。
【0170】
また、強度判定部302は、初期状態における電波強度Fs0と測定時の電波強度Fsとの差を閾値Fと比較することにより、捜索が必要か否かを判定する。これにより、電波強度によって直接判定するよりも精度が向上する。
【0171】
また、表示部23およびスピーカ24が、強度判定部302の判定結果が反映された捜索情報214を出力することにより、捜索が開始されたことを報知することができる。
【0172】
また、子機3は、強度判定部302により自機の捜索が必要と判定された後において、自機の加速度センサ36により測定された加速度に基づいて、閾値a以上の動きを検出する動き検出部305と、当該動き検出部305により、閾値a以上の動きが検出されたことに応じて、警報を出力する表示部33およびスピーカ34とをさらに備える。これにより、捜索対象の急激な移動を抑制することができ、捜索対象の事故を抑制するとともに、捜索対象が電波の到達範囲から外れてしまうことを防止することができる。なお、通信部27による近接無線通信の電波の到達範囲から子機3が外れた場合には、広域無線通信網を使用して、捜索することが好ましい。
【0173】
また、動き検出部305は、検出した閾値a以上の動きが、親機2に向かう動きか否かを判定し、表示部33およびスピーカ34が、当該動き検出部305の判定結果に応じて警報を出力することにより、捜索対象が捜索者に向かう移動を誤って抑制してしまうことを防止することができる。
【0174】
<2. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0175】
例えば、上記実施の形態に示した各工程は、あくまでも例示であって、上記に示した順序や内容に限定されるものではない。すなわち、同様の効果が得られるならば、適宜、順序や内容が変更されてもよい。
【0176】
また、上記実施の形態に示した機能ブロック(例えば、通信制御部200,300、測位制御部201,304など)は、CPU20,30がプログラム210,310に従って動作することにより、ソフトウェア的に実現されると説明した。しかし、これらの機能ブロックの一部または全部を専用の論理回路で構成し、ハードウェア的に実現してもよい。
【0177】
また、逐次に処理されるかのように示している工程において、これらのうちの一部を互いに並列的(同時)に処理するように構成してもよい。
【0178】
また、親機2の情報作成部204が、受信された子機情報313を参照して、当該子機情報313に含まれる電波強度Fsに応じた捜索情報214を作成し、当該捜索情報214を表示部23およびスピーカ24が出力してもよい。電波強度Fsは捜索側からの視認の程度を表しているとみなせる。したがって、電波強度Fsの状況を捜索情報214として作成し出力することにより、視認しやすい位置に捜索者を誘導でき、捜索対象の発見を容易にすることができる。
【0179】
また、上記実施の形態では、親機初期姿勢と子機初期姿勢とを同じ姿勢とした状態で、運用開始信号を入力する必要があった。しかし、本発明は、このような実施例に限定されるものではない。例えば、運用開始信号が入力されてからしばらくの期間、捜索者(親機2)は捜索対象(子機3)と一緒に行動するとみなせる。したがって、運用開始信号が入力されたときに加速度センサ26,36を起動し、じはらくの間、親機2および子機3において、それぞれ相対的測位を実行する。そして、この期間に得られた相対的測位の結果が、親機2と子機3との間で一致する(随行しているので一致する。)ように、親機初期姿勢と子機初期姿勢との関係を求めてやればよい。このように構成することにより、親機初期姿勢と子機初期姿勢との関係が特定されるまでの間、加速度センサ26,36を起動させるので、上記実施の形態に比べて消費電力が多少増加するものの、運用開始信号を入力するときに、親機2の姿勢と子機3の姿勢とを同じ姿勢に調整しておく必要はなくなるので、ユーザの負担は軽減される。
【0180】
また、上記実施の形態において、親機初期姿勢および子機初期姿勢はいずれも絶対方位との関係が決定されてはいない。しかし、親機初期姿勢および子機初期姿勢と絶対方位との関係を決定してもよい。例えば、捜索者は、親機2の姿勢を、所定の姿勢(予め定義されており絶対方位との関係が既知の姿勢。以下、「親機定義姿勢」と称する。)にした状態で、操作部22を操作して、運用開始信号を入力してもよい。例えば、ショッピングモールなどの入り口に、親機2の姿勢を親機定義姿勢に規制する載置台などを設けておき、捜索者が親機2を当該載置台に乗せた状態で、初期化ボタン(操作部22)を操作することにより、運用開始信号を入力する。これにより、親機2の親機初期姿勢が、絶対方位との関係が既知の親機定義姿勢として記憶される。この操作は、子機3についても同様に実行することができる。
【0181】
また、姿勢特定手段として、ジャイロセンサ25,35の代わりに、地磁気を検出する磁気センサを設け、測位制御部201,304は、強度判定部302による判定結果に応じて、自機の磁気センサを稼働させて、角速度の測定を開始させてもよい。このように、磁気センサによって絶対方位を取得するように構成すれば、常時、姿勢を観測しつづける必要がなく、消費電力を抑制することができる。
【0182】
また、上記実施の形態では、子機3においても操作部32が操作され運用開始信号が入力される例について説明した。しかし、親機2は、運用開始信号が入力されると、子機3に試験信号を送信する。したがって、子機3が最初に受信する試験信号を「運用開始信号」と見なして、子機3におけるジャイロセンサ35の起動と、子機初期姿勢の記憶とを実行してもよい。これにより、比較的機器の操作に不慣れな捜索対象に子機3を操作させることなく、運用を開始することができる。
【0183】
また、親機2および子機3はいずれも携帯端末装置として構成されているため、いずれも消費電力を抑制すべきである。しかし、電池切れが発生しても容易に対処可能な捜索者が所持する親機2に比べて、そのような対処が困難な捜索対象が所持する子機3は、より一層、消費電力を抑制すべきである。上記実施の形態では、親機2が試験信号を送信し、子機3がこれを受信することにより、特に電池寿命について条件が厳しい子機3側の消費電力を抑制することができる。ただし、子機3が試験信号を送信し、親機2が受信するように構成することも可能である。