(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記の従来形式では、加圧してジメチルエーテルを液化し、液体のジメチルエーテルと内包水とを置換しているため、加圧容器101は第一種圧力容器となり、製造や取り扱いに安全上の注意を要し、第一種圧力容器に係る安全管理が煩わしいといった問題がある。
【0008】
本発明は、圧力容器を用いずに有機汚泥の含水率を容易に低下させることができる有機汚泥の脱水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本第1発明における有機汚泥の処理方法は、常温常圧下において液体であり揮発性を有する
とともに、水の沸点よりも低い沸点を有する有機溶媒を有機汚泥と混合し、
有機溶媒を混合した有機汚泥を、加温手段が備えられた脱水機の脱水部に供給して脱水する脱水工程を行い、
上記脱水工程において、脱水部の有機汚泥を有機溶媒の沸点以上
で且つ水の沸点未満の第1所定温度に加温して、有機汚泥に混合されている有機溶媒を気化させ、
気化した有機溶媒を脱水部から排出して回収するものである。
【0010】
これによると、有機汚泥中の有機物の細胞膜が有機溶媒によって溶解されて傷付くため、脱水機を用いて内包水を脱水することが可能になり、有機汚泥の含水率を容易に低下させることができる。また、加温により水の粘性が低下するため、有機汚泥の脱水速度および脱溶媒速度が高くなる。さらに、有機溶媒を混合した有機汚泥を加圧容器内で加圧する必要は無いため、第一種圧力容器に係る煩わしい安全管理が不要になる。
【0012】
また、脱水工程において、脱水部の有機汚泥を第1所定温度に加温することにより、有機汚泥に混合されている有機溶媒は気化するが、有機汚泥中の水は気化せずに液体のままの状態に保たれる。このため、水を蒸発させることなく、水のままで有機汚泥から分離することができ、分離に要するエネルギーを低減することができる。
【0013】
本第
2発明は、常温常圧下において液体であり揮発性を有する有機溶媒を有機汚泥と混合し、
有機溶媒を混合した有機汚泥を、加温手段が備えられた脱水機の脱水部に供給して脱水する脱水工程を行い、
上記脱水工程において、脱水部の有機汚泥を有機溶媒の沸点以上の第1所定温度に加温して、有機汚泥に混合されている有機溶媒を気化させ、
気化した有機溶媒を脱水部から排出して回収する有機汚泥の脱水方法であって、
脱水機の脱水部を有機溶媒の沸点未満の第2所定温度にした状態で、脱水部へ有機汚泥の供給を開始し、
供給開始後、脱水部を第2所定温度から第1所定温度に加温するものである。
【0014】
これによると、脱水機の脱水部へ有機汚泥の供給が開始されたときは、脱水部は第2所定温度であるため、有機汚泥の供給開始の際に、有機汚泥に混合されている有機溶媒が突沸するのを防止することができる。これにより、有機溶媒が急激に気化するのを抑制して、気化した有機溶媒が一時的に大量発生するのを防止することができる。従って、気化した有機溶媒を確実且つ十分に回収することが可能であり、気化した有機溶媒が回収し切れずに放散して脱水部から脱水機の外部に漏出するのを防止することができる。
【0015】
本第3発明における有機汚泥の脱水方法は、有機溶媒は水の沸点よりも低い沸点を有し、
第1所定温度は有機溶媒の沸点以上で且つ水の沸点未満であるものである。
本第4発明における有機汚泥の脱水方法は、気化した有機溶媒を、脱水部から吸引して排出し、気体から液体に戻して回収するものである。
これによると、有機溶媒を気体から液体に戻して回収するため、回収された液体の有機溶媒をそのまま繰り返し再利用することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によると、圧力容器を用いずに有機汚泥の含水率を容易に低下させることができるため、第一種圧力容器に係る煩わしい安全管理が不要になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態において、
図1は、下水処理における有機汚泥の脱水システム1を模式的に示す図である。これによると、脱窒槽2において脱窒された有機汚泥を濃縮する濃縮機3と、濃縮された有機汚泥にアルコール系溶媒Aを混合する混合槽4と、アルコール系溶媒Aが混合された有機汚泥Bを脱水する無端ろ布走行式のフィルタープレス5(脱水機の一例)と、気化されたアルコール系溶媒Aを液体に戻す凝縮器6と、フィルタープレス5から取り出されたろ液から液体のアルコール系溶媒Aを分離して回収する加熱蒸留器7とを有している。
【0019】
アルコール系溶媒Aは、常温常圧(25℃,1気圧)下において液体であり揮発性を有する有機溶媒の一例であり、具体例として、メタノールやエタノールが用いられる。尚、アルコール系溶媒Aは、水の沸点(100℃)よりも低い沸点を有しており、例えばメタノールでは65℃、エタノールでは78℃である。尚、ここで、沸点とは、1気圧における標準沸点を意味する。
【0020】
濃縮機3には例えばベルト濃縮機等が用いられる。混合槽4には、有機汚泥とアルコール系溶媒Aとを攪拌して混合する攪拌機等が備えられている。
図2に示すように、フィルタープレス5は、固定フレーム15と、固定フレーム15に対して接近離間自在な可動フレーム16と、これら両フレーム15,16間に互いに接近離間自在に配列された複数のろ板17と、無端状のろ布18と、ろ板17を互いに接近離間させてろ板17間を開閉する開閉装置19と、ろ布18を一方向Dへ走行させるろ布駆動装置29と、加温手段20とを有している。
図3に示すように、ろ布18は、ローラ21に掛け渡されて、ろ板17間において逆U字状に配置されている。各ろ板17間において、相対向する一対のろ布18間にろ室22(脱水部の一例)が形成されている。また、開閉装置19は、可動フレーム16を移動させるシリンダ23を有している。
【0021】
図4に示すように、固定フレーム15と一端部のろ板17とがリンク24で連結され、同様に、可動フレーム16と他端部のろ板17とがリンク25で連結され、各ろ板17同士がリンク機構26で連結されている。
【0022】
図5〜
図7に示すように、各ろ板17には、表裏片面に開口する凹部27が形成され、凹部27内にはダイヤフラム28が設けられている。また、各ろ板17には、温水10を供給してダイヤフラム28を膨張させる第1の温水供給経路30と、温水10を排出してダイヤフラム28を収縮させる第1の温水排出経路31とが接続されている。
【0023】
さらに、各ろ板17には、温水11が流れる加温通路32が形成されており、温水11を加温通路32に供給する第2の温水供給経路33と、温水11を加温通路32から排出する第2の温水排出経路34とが接続されている。尚、加温手段20は第1および第2の温水供給経路30,33と第1および第2の温水排出経路31,34と加温通路32とによって構成されている。
【0024】
尚、第1,第2の温水供給経路30,33および第1,第2の温水排出経路31,34は個別の経路として説明したが、第1,第2の温水供給経路30,33を一つの経路に統一し、第1,第2の温水排出経路31,34を一つの経路に統一してもよい。
【0025】
図3,
図4,
図8,
図9に示すように、各ろ板17には、有機汚泥Bをろ室22に注入する汚泥注入通路36が形成されている。また、各ろ板17間には、口金部材37(フィードピース)がリンク機構26に支持されて配設されている。各口金部材37には、汚泥注入通路36から分岐してろ室22に通じる分岐通路38が形成されている。
【0026】
また、各ろ板17には、ろ室22において圧搾された有機汚泥Bから発生するろ液Cを排出するろ液排出通路40(
図3参照)が形成されている。
図8,
図9に示すように、固定フレーム15には、隣接するろ板17の汚泥注入通路36に連通する汚泥注入口41と、ろ液排出通路40に連通するろ液排出口(図示省略)とが形成されている。また、可動フレーム16には、隣接するろ板17の汚泥注入通路36に連通する回収用流体注入口43が形成されている。
【0027】
図1,
図2,
図4,
図9に示すように、混合槽4とフィルタープレス5の汚泥注入口41との間には、混合槽4内の有機汚泥Bをフィルタープレス5へ供給する汚泥供給経路45が接続されている。汚泥供給経路45は、配管等からなり、途中に汚泥供給用ポンプ46と汚泥供給用弁47とが設けられている。また、汚泥供給経路45には、汚泥供給経路45から分岐して混合槽4へ連通する第1返送経路48と、汚泥供給経路45から分岐して脱窒槽2へ連通する第2返送経路49とが接続されている。尚、第1および第2返送経路48,49には第1および第2返送用弁50,51が設けられている。
【0028】
フィルタープレス5の回収用流体注入口43には、圧縮空気12(回収用流体の一例)を供給する回収用流体供給経路44が接続されている。回収用流体供給経路44には、回収用流体供給用弁52と、コンプレッサー等からなる回収用流体供給源53とが設けられている。
【0029】
図1に示すように、フィルタープレス5のろ液排出口と加熱蒸留器7との間には、フィルタープレス5から排出されたろ液Cを加熱蒸留器7へ送るろ液回収経路54が接続されている。ろ液回収経路54にはろ液回収用弁55が設けられている。また、ろ液回収経路54には、ろ液回収経路54から分岐して凝縮器6の入口に連通する第1溶媒回収経路56aと、凝縮器6の出口からろ液回収経路54に合流する第2溶媒回収経路56bとが接続されている。尚、第1溶媒回収経路56aには溶媒回収用弁57が設けられている。
【0030】
混合槽4と加熱蒸留器7との間には、加熱蒸留器7においてろ液Cから分離回収された液体のアルコール系溶媒Aを混合槽4へ返送する第1溶媒返送経路58が設けられている。また、脱窒槽2と加熱蒸留器7との間には、上記液体のアルコール系溶媒Aを脱窒槽2へ返送する第2溶媒返送経路59が設けられている。第2溶媒返送経路59は第1溶媒返送経路58から分岐して設けられ、第1および第2溶媒返送経路58,59には第1および第2返送用弁60,61が設けられている。
【0031】
以下、上記構成における作用を説明する。
脱水システム1を用いて有機汚泥を脱水する方法を以下に説明する。
前以て、フィルタープレス5の開閉装置19のシリンダ23を作動し、可動フレーム16を固定フレーム15に向って接近させ、
図5,
図9に示すように、各ろ板17間を閉じておく。また、温水11を、第2の温水供給経路33から各ろ板17の加温通路32に供給し、加温通路32から第2の温水排出経路34へ排出して、加温通路32に通水した状態に保ち、加温通路32の温水11によってろ室22内を第1所定温度に加温しておく。
【0032】
尚、第1所定温度とはアルコール系溶媒Aの沸点以上で且つ水の沸点未満の温度であり、例えば、アルコール系溶媒Aがメタノールの場合、第1所定温度は65℃以上で且つ100℃未満の温度であり、エタノールの場合、第1所定温度は78℃以上で且つ100℃未満の温度である。
【0033】
そして、
図1に示すように、汚泥供給用弁47とろ液回収用弁55と第1返送用弁60とを開き、第1および第2返送用弁50,51と回収用流体供給用弁52と溶媒回収用弁57と第2返送用弁61とを閉じ、脱窒槽2で脱窒された有機汚泥を濃縮機3により濃縮し、混合槽4において、濃縮された有機汚泥に液体のアルコール系溶媒Aを混合する。この時、回収したアルコール系溶媒Aでは不足する場合には、新たなアルコール系溶媒Aを使用する。その後、汚泥供給用ポンプ46を駆動することにより、アルコール系溶媒Aを混合した有機汚泥Bは、混合槽4から汚泥供給経路45を通ってフィルタープレス5に供給され、以下のようなろ過工程と圧搾工程と乾燥工程とからなる脱水工程により脱水される。
【0034】
すなわち、ろ過工程では、
図9に示すように、有機汚泥Bは、汚泥供給経路45を経て、フィルタープレス5の汚泥注入口41から各ろ板17の汚泥注入通路36を通り、汚泥注入通路36から各口金部材37の分岐通路38を経て、各ろ室22に注入される。これにより、
図5に示すように、有機汚泥Bが各ろ室22においてろ過される。この際、ろ室22は、加温通路32を通る温水11により、第1所定温度に加温されるため、ろ室22内に注入された有機汚泥Bも第1所定温度に加温される。
【0035】
ろ過工程を行った後、
図6に示すように、温水10を、第1の温水供給経路30から各ろ板17に供給し、ダイヤフラム28の内側空間13に通水し続ける。これにより、ダイヤフラム28が膨張して、ろ室22内の有機汚泥Bが圧搾されて脱水される。このような圧搾工程を行っている際にも、引き続き温水11を加温通路32に通水することにより、ろ室22内の有機汚泥Bが第1所定温度に加温されている。つまり、有機汚泥Bは、ろ室22内に留まっている間、第1所定温度に加温され続けている。
【0036】
上記ろ過工程と圧搾工程とにおいて発生したろ液Cは、各ろ板17のろ液排出通路40を通り、ろ液排出口から排出され、
図1に示すように、ろ液回収経路54を経て加熱蒸留器7へ送られる。尚、ろ液Cには水と液体のアルコール系溶媒Aとが含まれている。
【0037】
さらに、上記圧搾工程を行った後、
図7に示すように、引き続き温水11を加温通路32に通水した状態で、第1の温水供給経路30からダイヤフラム28の内側空間13への温水10の供給を停止し、ダイヤフラム28の内側空間13の温水10を第1の温水排出経路31へ排出して、内側空間13を空にする。これにより、ダイヤフラム28が収縮してろ布18から離間し、ダイヤフラム28とろ布18との間に乾燥用空間14が形成される。この際、ろ室22内の有機汚泥Bが加温通路32の温水11により第1所定温度に加温されているため、有機汚泥Bに混合されているアルコール系溶媒Aが気化して乾燥用空間14に取り出される。
【0038】
尚、気化したアルコール系溶媒Aは主に上記のような乾燥工程で回収されるが、ろ過工程や圧搾工程においても、吸引することによって回収することが可能であり、回収効率がさらに向上する。
【0039】
このような乾燥工程を行う際、
図1に示すように、ろ液回収用弁55を閉じるとともに溶媒回収用弁57を開いておき、気化したアルコール系溶媒Aを排気用ポンプ(図示省略)等で吸引してろ室22内から排出する。これにより、気化したアルコール系溶媒Aは、各ろ板17の乾燥用空間14からろ液排出通路40を通り、フィルタープレス5のろ液排出口から排出され、ろ液回収経路54から分岐して第1溶媒回収経路56aを通り、凝縮器6に供給される。このようにして凝縮器6に供給されたアルコール系溶媒Aは、気体から液体に凝縮された後、第2溶媒回収経路56bを通ってろ液回収経路54に合流し、加熱蒸留器7へ送られる。
【0040】
上記ろ過工程と圧搾工程とにおいてフィルタープレス5から排出されたろ液Cと、乾燥工程においてフィルタープレス5から排出された後に凝縮器6で凝縮されて得られた液体のアルコール系溶媒Aとは、加熱蒸留器7に集められ、纏めて蒸留される。これにより、ろ液Cが水と液体のアルコール系溶媒Aとに分離され、液体のアルコール系溶媒Aが、回収されて、加熱蒸留器7から第1溶媒返送経路58を通って混合槽4に返送される。
【0041】
また、
図6で示したようにフィルタープレス5で乾燥工程を行った後、引き続き各ろ板17間を閉じた状態で、
図1に示すように、汚泥供給用弁47と第2返送用弁51とろ液回収用弁55と溶媒回収用弁57とを閉じ、第1返送用弁50と回収用流体供給用弁52とを開き、圧縮空気12を回収用流体供給源53からフィルタープレス5に供給する。この際、
図1,
図9に示すように、圧縮空気12は、回収用流体供給源53から回収用流体供給経路44を通り、回収用流体注入口43から各ろ板17の汚泥注入通路36を経て汚泥注入口41に達し、汚泥注入口41から汚泥供給経路45を逆流し、汚泥供給経路45から第1返送経路48に分岐して流れ、混合槽4へ排出される。
【0042】
その後、フィルタープレス5の開閉装置19のシリンダ23を作動し、可動フレーム16を固定フレーム15から離間させ、
図2,
図4,
図8に示すように、各ろ板17間を開く。そして、ろ布駆動装置29でろ布18を一方向Dへ走行させて、脱水ケーキ63をろ布18間のろ室22から下方へ排出する。
【0043】
上記のような有機汚泥の脱水方法では、
図1に示すように、混合槽4において、有機汚泥に液体のアルコール系溶媒Aを混合することにより、有機汚泥中の有機物の細胞膜がアルコール系溶媒Aによって溶解されて傷付くため、フィルタープレス5における圧搾脱水により内包水の脱水が可能になり、有機汚泥の含水率を容易に低下させることができる。
【0044】
また、
図5〜
図7に示すように、フィルタープレス5のろ室22内の有機汚泥Bを第1所定温度に加温することにより、水の粘性が低下するため、有機汚泥Bの脱水速度および脱溶媒速度が高くなる。さらに、アルコール系溶媒Aは常温で液体のため、アルコール系溶媒Aを混合した有機汚泥Bを加圧容器内で加圧する必要は無く、これにより、加圧のための第一種圧力容器に係る煩わしい安全管理が不要になる。
【0045】
また、
図7に示すように、フィルタープレス5の乾燥工程において、ろ室22内の有機汚泥Bが第1所定温度に加温されているため、ろ室22内の有機汚泥Bに混合されているアルコール系溶媒Aは気化するが、有機汚泥B中の水は気化せずに液体のままの状態に保たれる。このため、水を蒸発させることなく、水を液体のままで有機汚泥Bから分離することができ、分離に要するエネルギーを低減することができる。
【0046】
また、気化したアルコール系溶媒Aは、フィルタープレス5から取り出されて液体に戻された後、混合槽4に返送される。つまり、アルコール系溶媒Aはそのまま繰り返し再利用することができる。
【0047】
さらに、
図1に示すように、圧縮空気12を、フィルタープレス5から汚泥供給経路45と第1返送経路48とを通して、混合槽4へ流すことにより、汚泥供給経路45に残留している有機汚泥Bが、圧縮空気12の流れに伴って、第1返送経路48を通り混合槽4へ返送される。これにより、返送された有機汚泥B中に混合されているアルコール系溶媒Aも混合槽4へ戻されるため、汚泥供給経路45に残留していたアルコール系溶媒Aを回収して再利用することができる。このことから、混合槽4へ新たに追加して使用するアルコール系溶媒Aの量を減らすことができる。
【0048】
第1の実施の形態では、第1所定温度を、アルコール系溶媒Aの沸点より僅かに高い値に設定することにより、アルコール系溶媒Aの突沸や水の蒸発を抑制することができるので、好適である。
【0049】
第1の実施の形態では、
図1に示すように、第1,第2返送経路48,49と第1,第2溶媒返送経路58,59とを設けているが、これら全経路48,49,58,59を設ける必要はなく、これら各経路48,49,58,59のうちの少なくともいずれか1つの経路があればよい。
【0050】
(第2の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、フィルタープレス5のろ室22を予め第1所定温度(すなわち、アルコール系溶媒Aの沸点以上で且つ水の沸点未満の温度)に加温した状態で、有機汚泥Bをろ室22に注入しているが、以下に説明する第2の実施の形態では、ろ室22をアルコール系溶媒Aの沸点未満の第2所定温度に加温した状態で、有機汚泥Bをろ室22に注入し始め、注入開始後、ろ室22を第2所定温度から第1所定温度に加温する。
【0051】
すなわち、前以て、第2所定温度の温水11を、フィルタープレス5の加温通路32(
図5参照)に通水した状態に保ち、加温通路32の温水11によってろ室22内を第2所定温度に加温しておく。この状態で、有機汚泥Bをろ室22に注入し始め、注入開始後、温水11を第2所定温度から第1所定温度に加温しながら引き続き加温通路32に通水して、ろ室22を第2所定温度から第1所定温度に加温する。
【0052】
尚、上記のようにろ室22を第2所定温度から第1所定温度に加温するタイミングは、
図5で示したフィルタープレス5のろ過工程の途中で行うが、
図6で示した圧搾工程中又は
図7で示した乾燥工程中に行ってもよい。また、第2所定温度としては、例えば、アルコール系溶媒Aがメタノールの場合では60℃、エタノールの場合では73℃に設定されているが、沸点未満であればこれらの温度に限定されるものではない。
【0053】
以下、上記構成における作用を説明する。
ろ室22へ有機汚泥Bの注入が開始されたときは、ろ室22は第2所定温度であるため、有機汚泥Bの注入開始の際に、有機汚泥Bに混合されているアルコール系溶媒Aが突沸するのを防止することができる。これにより、アルコール系溶媒Aが急激に気化するのを抑制して、気化したアルコール系溶媒Aが一時的且つ過剰に大量発生するのを防止することができる。従って、気化したアルコール系溶媒Aを確実且つ十分に凝縮器6で凝縮し液体に戻して回収することが可能であり、気化したアルコール系溶媒Aが回収し切れずに放散してろ室22からフィルタープレス5の外部に漏出するのを防止することができる。
【0054】
(第3の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、フィルタープレス5で脱水工程を行った後、圧縮空気12を回収用流体供給源53からフィルタープレス5に供給して混合槽4へ排出しているが、以下に説明する第3の実施の形態では、フィルタープレス5で脱水工程を行った後、圧縮空気12を回収用流体供給源53からフィルタープレス5に供給して脱窒槽2へ排出する。
【0055】
すなわち、
図1に示すように、フィルタープレス5の各ろ板17間を閉じた状態で、汚泥供給用弁47と第1返送用弁50とろ液回収用弁55と溶媒回収用弁57とを閉じ、第2返送用弁51と回収用流体供給用弁52とを開き、圧縮空気12を回収用流体供給源53からフィルタープレス5に供給する。この際、圧縮空気12は、回収用流体供給源53から回収用流体供給経路44を通り、回収用流体注入口43から各ろ板17の汚泥注入通路36を経て汚泥注入口41に達し(
図9参照)、汚泥注入口41から汚泥供給経路45を逆流し、汚泥供給経路45から第2返送経路49に分岐して流れ、脱窒槽2へ排出される。
【0056】
これにより、汚泥供給経路45に残留している有機汚泥Bが、圧縮空気12の流れに伴って、第2返送経路49を通り脱窒槽2へ返送される。従って、返送された有機汚泥B中に混合されているアルコール系溶媒Aも脱窒槽2へ供給され、アルコール系溶媒Aが脱窒槽2内の脱窒菌の栄養源になるため、アルコール系溶媒Aを、無駄にすることなく、有効利用することができる。
【0057】
(第4の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、液体のアルコール系溶媒Aを、加熱蒸留器7から第1溶媒返送経路58を通じて混合槽4に返送しているが、以下に説明する第4の実施の形態では、液体のアルコール系溶媒Aを、加熱蒸留器7から第2溶媒返送経路59を通じて脱窒槽2に供給する。
【0058】
すなわち、
図1に示すように、第1返送用弁60を閉じ、第2返送用弁61を開くことにより、液体のアルコール系溶媒Aが、加熱蒸留器7から第2溶媒返送経路59を通って脱窒槽2に供給される。これにより、アルコール系溶媒Aが脱窒槽2内の脱窒菌の栄養源になり、アルコール系溶媒Aを、無駄にすることなく、有効利用することができる。
【0059】
上記各実施の形態では、脱水機の一例としてフィルタープレス5を用いたが、別の例として、スクリュープレスやベルトプレス等を用いてもよい。
上記各実施の形態では、有機溶媒の一例として、アルコール系溶媒Aを用いたが、アセトンやヘキサンを用いてもよい。
【0060】
上記各実施の形態では、
図6に示すように、温水10,11を用いて加温する加温手段20を挙げたが、温水10,11の代わりに、加温した油や空気等の他の流体を用いてもよい。また、流体を使用しない他形式の加温手段、例えば電気ヒーター等を用いてもよい。
【0061】
上記各実施の形態では、
図1に示すように、圧縮空気12は、フィルタープレス5を経由して汚泥供給経路45に供給したが、フィルタープレス5を経由せず、フィルタープレス5の汚泥注入口41側から汚泥供給経路45に直接供給し、汚泥供給経路45のみを洗浄し、汚泥供給経路45に残留した有機汚泥Bを回収してもよい。
【0062】
上記各実施の形態では、回収用流体の一例として、圧縮空気12を用いたが、水や有機溶媒等を用いてもよい。
上記各実施の形態では、汚泥供給経路45等に残留する溶媒含有有機汚泥Bを逆流させる作業は、フィルタープレス5による乾燥工程の後に行っているが、別工程として、フィルタープレス5の各ろ板17間を閉じて行ってもよい。
【0063】
上記各実施の形態では、気化したアルコール系溶媒Aを凝縮器6で液体に戻しているが、アルコール系溶媒Aを気体のままで混合槽4や脱窒槽2に戻してもよい。但し、液体の状態で戻す方がアルコール系溶媒Aの量を制御し易く、より好都合である。
【0064】
上記各実施の形態では、加熱蒸留器7を用いて、ろ液から液体のアルコール系溶媒Aを分離しているが、減圧蒸留器など、水とアルコールとを分離できる他の形式の機器を用いてもよい。