特許第6238544号(P6238544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238544
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】有機汚泥の脱水方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/14 20060101AFI20171120BHJP
   C02F 11/12 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C02F11/14 Z
   C02F11/12 CZAB
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-70775(P2013-70775)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-193440(P2014-193440A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】立道 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 充彦
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−238078(JP,A)
【文献】 特開昭55−162400(JP,A)
【文献】 特開2008−043903(JP,A)
【文献】 特開2010−137223(JP,A)
【文献】 特開2011−200811(JP,A)
【文献】 特開昭50−125971(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/101579(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/14
C02F 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞膜を有する有機物を含む有機汚泥の脱水方法であって、
有機汚泥と常温常圧下において液体である有機溶媒とを混合して、細胞膜を構成する粗脂肪を溶解する混合工程と、
有機溶媒を混合した有機汚泥を、脱水機に供給して脱水し、細胞膜を構成する粗脂肪が溶解したろ液を排出する脱水工程とを有し、
細胞膜の溶解により発生する粗脂肪が有機汚泥からろ液に移行する移行率を指標にして、有機溶媒の混合割合を設定することを特徴とする有機汚泥の脱水方法。
【請求項2】
粗脂肪の移行率が4重量%以上から60重量%以下の所定範囲になるように、有機溶媒の混合割合を設定することを特徴とする請求項1に記載の有機汚泥の脱水方法。
【請求項3】
有機溶媒の混合割合を、有機汚泥の含水量と有機溶媒の量との和に対して、30重量%以上から75重量%以下の所定範囲に設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機汚泥の脱水方法。
【請求項4】
有機溶媒はエタノールであり、
エタノールの混合割合を、有機汚泥の含水量とエタノールの量との和に対して、30重量%以上から70重量%以下の所定範囲に設定することを特徴とする請求項3に記載の有機汚泥の脱水方法。
【請求項5】
有機溶媒はメタノールであり、
メタノールの混合割合を、有機汚泥の含水量とメタノールの量との和に対して、30重量%以上から75重量%以下の所定範囲に設定することを特徴とする請求項3に記載の有機汚泥の脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、下水、食品工業などから発生する有機物を含んだ有機汚泥の脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機汚泥を機械的に圧搾等して脱水する場合、有機汚泥中の有機物の細胞膜内の水(内包水と言う)を脱水することは困難であり、このため、有機汚泥の含水率を60〜80%以下にすることは一般的に難しかった。
【0003】
これに対して、有機汚泥の脱水方法として、例えば、図11(a)に示すように、常温常圧において気体であるジメチルエーテルを有機汚泥に混合して、この有機汚泥を加圧容器101内に供給し、加圧容器101内を0.78MPaに加圧してジメチルエーテルを液化し、液化したジメチルエーテルと有機汚泥中の有機物の内包水とを置換して、細胞膜内の水を外部に取り出すとともに、液化したジメチルエーテルを細胞膜内に取り入れる。
【0004】
その後、図11(b)に示すように、加圧容器101内の圧力を開放して常温常圧に戻すことにより、ジメチルエーテルを気化させ、気化したジメチルエーテルを回収し、図11(c)に示すように、加圧容器101内から有機汚泥と水とを取り出して固液分離装置102で固液分離する方法がある。このような方法によって、細胞膜内の水(内包水)を脱水することができ、有機汚泥の含水率を低下させることができる。
【0005】
尚、上記のような脱水方法は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4291772号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記の従来形式では、加圧してジメチルエーテルを液化し、液体のジメチルエーテルと内包水とを置換しているため、加圧容器101は第一種圧力容器となり、製造や取り扱いに安全上の注意を要し、第一種圧力容器に係る安全管理が煩わしいといった問題がある。
【0008】
本発明は、圧力容器を用いずに有機汚泥の含水率を容易に低下させることができる有機汚泥の脱水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本第1発明は、細胞膜を有する有機物を含む有機汚泥の脱水方法であって、
有機汚泥と常温常圧下において液体である有機溶媒とを混合して、細胞膜を構成する粗脂肪を溶解する混合工程と、
有機溶媒を混合した有機汚泥を、脱水機に供給して脱水し、細胞膜を構成する粗脂肪が溶解したろ液を排出する脱水工程とを有し、
細胞膜の溶解により発生する粗脂肪が有機汚泥からろ液に移行する移行率を指標にして、有機溶媒の混合割合を設定するものである。
【0010】
これによると、有機汚泥中の有機物の細胞膜が有機溶媒によって溶解されて傷付くため、脱水機を用いて内包水を脱水することが可能になり、有機汚泥の含水率を容易に低下させることができる。この際、有機溶媒を混合した有機汚泥を加圧容器内で加圧する必要は無いため、第一種圧力容器に係る煩わしい安全管理が不要になる。
【0012】
また、粗脂肪の移行率を指標にして、有機溶媒の混合割合を設定することにより、適切な量の有機溶媒を用いて有機汚泥を脱水することが可能であり、有機溶媒を過剰に混合して無駄にするのを防止することができる。さらに、ろ液のBODを過度に上げることなく脱水効率を向上させることができるため、ろ液を処理する際の負荷が軽減される。
【0013】
本第発明における有機汚泥の脱水方法は、粗脂肪の移行率が4重量%以上から60重量%以下の所定範囲になるように、有機溶媒の混合割合を設定するものである。
これによると、上記所定範囲において、粗脂肪の移行率が増えるほど、脱水工程後の有機汚泥の含水率が低下する関係が保たれる。従って、上記所定範囲においては、有機溶媒の混合割合を増やすことにより、ろ液への粗脂肪の移行率が増加し、脱水工程後の有機汚泥の含水率が低下する。従って、移行率を所定範囲にすることにより、適切な量の有機溶媒を用いて有機汚泥を脱水することが可能であり、有機溶媒を過剰に混合して無駄にするのを防止することができる。
【0014】
これに対して、移行率が60重量%より大きい範囲においては、有機溶媒の混合割合を増やしても、脱水工程後の有機汚泥の含水率が低下せず、有機溶媒を過剰に混合して無駄にすることになる。
【0015】
また、移行率が4重量%未満の範囲においては、有機溶媒の混合割合を増やしても、脱水工程後の有機汚泥の含水率に変化が無く、有機溶媒を混合しても無駄になる。
本第発明における有機汚泥の脱水方法は、有機溶媒の混合割合を、有機汚泥の含水量と有機溶媒の量との和に対して、30重量%以上から75重量%以下の所定範囲に設定するものである。
【0016】
これによると、有機溶媒の混合割合を30重量%以上から75重量%以下の所定範囲に設定することにより、移行率が4重量%以上から60重量%以下の所定範囲になり、適切な量の有機溶媒を用いて有機汚泥を脱水することが可能となり、有機溶媒を過剰に混合して無駄にするのを防止することができる。さらに、ろ液のBODを一定範囲に抑えることができるため、ろ液を処理する際の負荷の増加を抑えることができる。
【0017】
本第発明における有機汚泥の脱水方法は、有機溶媒はエタノールであり、
エタノールの混合割合を、有機汚泥の含水量とエタノールの量との和に対して、30重量%以上から70重量%以下の所定範囲に設定するものである。
【0018】
これによると、エタノールの混合割合を30重量%以上から70重量%以下の所定範囲に設定することにより、移行率が4重量%以上から60重量%以下の所定範囲になり、適切な量のエタノールを用いて有機汚泥を脱水することが可能となる。
【0019】
本第発明における有機汚泥の脱水方法は、有機溶媒はメタノールであり、
メタノールの混合割合を、有機汚泥の含水量とメタノールの量との和に対して、30重量%以上から75重量%以下の所定範囲に設定するものである。
【0020】
これによると、メタノールの混合割合を30重量%以上から75重量%以下の所定範囲に設定することにより、移行率が4重量%以上から60重量%以下の所定範囲になり、適切な量のメタノールを用いて有機汚泥を脱水することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように本発明によると、圧力容器を用いずに有機汚泥の含水率を容易に低下させることができるため、第一種圧力容器に係る煩わしい安全管理が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態における有機汚泥の脱水システムを模式的に示す図である。
図2】同、脱水システムで使用されるフィルタープレスの側面図である。
図3】同、フィルタープレスの構成を示す分解斜視図である。
図4】同、有機汚泥の脱水システムを用いた脱水方法で使用されるエタノール等の比誘電率を示すグラフである。
図5】同、脱水方法におけるエタノール濃度と粗脂肪の移行率との関係を示す図である。
図6】同、脱水方法における粗脂肪の移行率と汚泥の含水率との関係を示す図である。
図7】グラフのデータ採取に用いた試験用脱水機の概略構成図である。
図8】本発明の第2の実施の形態における有機汚泥の脱水システムを模式的に示す図である。
図9】同、脱水方法におけるメタノール濃度と粗脂肪の移行率との関係を示す図である。
図10】同、脱水方法における粗脂肪の移行率と汚泥の含水率との関係を示す図である。
図11】従来の有機汚泥の脱水方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態において、図1は、下水処理における有機汚泥の脱水システム1を模式的に示す図である。脱水システム1は、有機汚泥を濃縮する濃縮機3と、濃縮された有機汚泥にアルコール系溶媒を混合する混合槽4と、アルコール系溶媒が混合された有機汚泥を脱水する無端ろ布走行式のフィルタープレス5(脱水機の一例)とを有している。
【0024】
有機汚泥には、細胞膜を有する有機物が含まれている。アルコール系溶媒は、常温常圧(25℃,1気圧)下において液体であり揮発性を有する有機溶媒の一例であり、具体例として、エタノールが用いられる。濃縮機3には例えばベルト濃縮機等が用いられる。混合槽4には、有機汚泥とエタノールとを攪拌して混合する攪拌機等が備えられている。
【0025】
図2図3に示すように、フィルタープレス5は、固定フレーム15と、固定フレーム15に対して接近離間自在な可動フレーム16と、これら両フレーム15,16間に互いに接近離間自在に配列された複数のろ板17と、無端状のろ布18と、ろ板17を互いに接近離間させてろ板17間を開閉する開閉装置19と、ろ布18を一方向へ走行させるろ布駆動装置20とを有している。ろ布18は、ローラ21に掛け渡されて、ろ板17間において逆U字状に配置されている。各ろ板17間において、相対向する一対のろ布18間にろ室22が形成されている。また、各ろ板17には、ろ室22に供給された有機汚泥を圧搾する膨縮自在なダイヤフラム(図示省略)が設けられている。
【0026】
尚、微生物等をはじめとする有機物の細胞膜は一般に脂質二重層で構成されている。本発明者らは、脂質を溶解する作用を持つ有機溶媒を使用して、脂質である脂質二重層の一部を溶解し、有機汚泥を脱水して得られるろ液中の粗脂肪に着目した。この粗脂肪は脂質二重層を起源としており、細胞膜が溶解した指標として、ろ液中の粗脂肪と脱水後の有機汚泥の含水率との関係性を見い出した。このような関係性を利用した有機汚泥の脱水方法を以下に説明する。
【0027】
濃縮機3で有機汚泥を濃縮した後、混合槽4において、濃縮された有機汚泥に液体のエタノールを混合する混合工程を行う。エタノールは、図4のグラフに示すように比誘電率が低く、細胞膜を構成する脂質を溶解する作用を有する。これにより、有機汚泥中の有機物の細胞膜の一部がエタノールによって溶解されて傷付く。
【0028】
混合工程後、エタノールを混合した有機汚泥をフィルタープレス5に供給して脱水する脱水工程を行なう。脱水工程において、各ろ板17間を閉じた状態で、有機汚泥を混合槽4からフィルタープレス5のろ室22に供給し、ダイヤフラムを膨張させて、ろ室22の有機汚泥を圧搾する。これにより、有機汚泥が脱水され、ろ液がフィルタープレス5から排出される。尚、ろ液は、細胞膜の一部が溶解した粗脂肪を含んでいる。
【0029】
その後、各ろ板17間を開き、ろ布駆動装置20でろ布18を一方向へ走行させて、図2に示すように脱水ケーキ24をろ布18間のろ室22から下方へ排出する。
上記のように、混合工程において、有機汚泥中の有機物の細胞膜がエタノールによって溶解されて傷付くため、その後の脱水工程において、細胞膜が破損して内包水が細胞膜の外部に排出され、これにより、フィルタープレス5を用いて有機汚泥中の有機物の内包水を脱水することが可能になり、有機汚泥の含水率を容易に低下させることができる。この際、エタノールを混合した有機汚泥を加圧容器内で加圧する必要は無いため、第一種圧力容器に係る煩わしい安全管理が不要になる。
【0030】
上記のような脱水方法において、細胞膜の溶解により発生する粗脂肪が有機汚泥からろ液に移行する移行率を指標にして、有機汚泥へのエタノールの混合割合を設定している。具体的には、図6のグラフに基づいて、脱水工程後の有機汚泥の含水率から必要な粗脂肪の移行率を求め、この移行率から図5のグラフに基づいてエタノール濃度を求める。図5のグラフは、系内のエタノール濃度と原汚泥中の粗脂肪のろ液への移行率との関係を示すものである。ここで、系内のエタノール濃度とは、有機汚泥の含水量とエタノールの量との和に対するエタノールの混合割合であって、混合槽4に供給される有機汚泥(原汚泥)の含水量をW1[g]とし、混合槽4に供給されるエタノールの量をW2[g]とすると、下記の関係式(1)で示される。
系内のエタノール濃度=100×W2/(W1+W2) 式(1)
また、上記移行率とは、混合槽4に供給される有機汚泥(原汚泥)の量をA[g]とし、この原汚泥中に含まれている粗脂肪の濃度をa[mg/g]とし、上記A[g]の有機汚泥をフィルタープレス5で脱水して得られるろ液の量をB[g]とし、ろ液中に含まれている粗脂肪の濃度をb[mg/g]とすると、下記の関係式(2)で示される。
移行率=(100×B×b)/(A×a) 式(2)
尚、上記粗脂肪の濃度a,bは測定により求められる。
【0031】
図5のグラフにおいて、移行率が4重量%の場合、エタノールの混合割合である系内のエタノール濃度が30重量%となり、移行率が60重量%の場合、系内のエタノール濃度が70重量%となる。つまり、図5のグラフに示すように、移行率が4%から60%の範囲は、系内のエタノール濃度が30重量%以上から70重量%以下の所定範囲Sに対応している。
【0032】
また、図6に示すグラフは、原汚泥中の粗脂肪のろ液への移行率と脱水工程後の汚泥の含水率との関係を示すものである。このグラフによると、上記移行率が4重量%以上から60重量%以下の所定範囲Tにおいて、移行率が増えるほど、脱水工程後の有機汚泥の含水率が低下する関係が保たれる。従って、図5図6から、上記所定範囲Tにおいては、エタノールの混合割合すなわち系内のエタノール濃度を増やすことにより、エタノール濃度の増加に応じて、移行率が増加し、脱水工程後の有機汚泥の含水率が低下することは明らかである。従って、移行率を上記所定範囲Tにすることにより、適切な量のエタノールを用いて有機汚泥を脱水することが可能であり、エタノールを過剰に混合して無駄にするのを防止することができる。
【0033】
また、BODの一因である粗脂肪のろ液への移行率を上記所定範囲Tとすることで、ろ液のBODを一定範囲に抑えることができるため、粗脂肪をはじめとするろ液のBODを過度に上げることなく、ろ液を処理する際の処理負荷の増加を抑えることもできる。
【0034】
これに対して、仮に、図5のグラフに示すように、エタノール濃度が70重量%より高いと、移行率が60重量%より大きくなる。図6のグラフに示すように、移行率が60重量%より大きい範囲においては、エタノールの混合割合を増やしても、脱水工程後の有機汚泥の含水率は低下しない。つまり、エタノールを70重量%より過剰に混合しても、エタノールは、脱水に寄与せず、無駄になる。
【0035】
また、図5のグラフに示すように、エタノール濃度が30重量%より低いと、移行率は4重量%より小さくなる。図6のグラフに示すように、移行率が4重量%未満の範囲においては、脱水しても有機汚泥の含水率がほとんど変化せずに一定に保たれる。従って、移行率が4重量%以上となるように、エタノールの混合割合を30重量%以上とすることで、エタノールを混合しないときと比べて、脱水工程後の有機汚泥の含水率を約5重量%以上低下させることになる。
【0036】
つまり、粗脂肪の移行率を指標にして、エタノール(有機溶媒)の混合割合を設定することにより、適切な量のエタノールを用いて有機汚泥を脱水することが可能であり、エタノールを過剰に混合して無駄にするのを防止することができる。また、ろ液のBODを過度に上げることなく脱水効率を向上させることができるため、ろ液を処理する際の負荷が軽減される。
【0037】
さらに、過剰なエタノールを有機汚泥に混合すると、過剰なエタノールを回収するのに要するエネルギーが余分にかかり、エネルギーが無駄になるとともに、エタノールが気化して損失される量も増加するため、無駄が大きくなる。
【0038】
尚、上記図5および図6のグラフのデータは、含水率が80重量%の原汚泥20gを試料とし、この原汚泥とエタノールとを30分間混合した後、試験用脱水機で次第に圧力を上げ、最終的に汚泥を2MPaの圧力で15分間脱水して得られたものである。図7に示すように、試験用脱水機31は、エタノールを混合した汚泥32をフィルター33上に載せ、上方からピストン34で汚泥32を押圧し、フィルター33を透過したろ液35を採取するものである。
【0039】
上記第1の実施の形態では、図5のグラフに示すように、系内のエタノール濃度を30重量%以上から70重量%以下の所定範囲Sに設定しているが、グラフの傾きが急増する45重量%以上から70重量%以下の範囲に設定すると、より好適である。
【0040】
(第2の実施の形態)
先述した第1の実施の形態では、アルコール系溶媒の一例としてエタノールを用いたが、以下に説明する第2の実施の形態では、図8に示すように、アルコール系溶媒の別の例としてメタノールを用いている。
【0041】
メタノールを用いた場合、系内のメタノール濃度と原汚泥中の粗脂肪のろ液への移行率との関係は図9のグラフで示され、原汚泥中の粗脂肪のろ液への移行率と脱水工程後の汚泥の含水率との関係は図10のグラフで示される。
【0042】
図10のグラフに示すように、移行率が4重量%以上から60重量%以下の所定範囲Tにおいて、移行率が増えるほど、脱水工程後の有機汚泥の含水率が低下する関係が保たれる。また、図9のグラフに示すように、移行率が4%から60%の範囲は、系内のメタノール濃度が30重量%以上から75重量%以下の所定範囲Sに対応している。
【0043】
従って、系内のメタノール濃度が30重量%以上から75重量%以下の所定範囲Sになるようにメタノールを有機汚泥に混合することにより、移行率が4重量%以上から60重量%以下の所定範囲Tになり、適切な量のメタノールを用いて有機汚泥を脱水することが可能であり、メタノールを過剰に混合して無駄にするのを防止することができる。
【0044】
また、メタノールを75重量%より過剰に混合しても、メタノールは、脱水に寄与せず、無駄になる。さらに、移行率が4重量%未満の範囲においては、脱水しても有機汚泥の含水率がほとんど変化せずに一定に保たれるので、移行率が4重量%以上となるように、メタノールの混合割合を30重量%以上とすることで、メタノールを混合しないときと比べて、脱水工程後の有機汚泥の含水率を約5重量%以上低下させることになる。
【0045】
尚、図4のグラフは、エタノール、メタノールおよび他の溶媒の比誘電率を示しており、溶媒は、比誘電率が低いほど、脂質を溶かす能力が高い。従って、エタノールは、メタノールと比べて、細胞膜を溶解する能力が優れている。但し、メタノールは、エタノールよりも分子量が低いので、細胞膜の表面を溶解するだけではなく、細胞膜を透過しながら細胞膜の内部を溶解する能力が高いと考えられる。このため、エタノールよりもメタノールを使用した方が、細胞膜が弱くなり、脱水工程において細胞膜が破損し、エタノールを使用したときの移行率よりも低い移行率で、エタノールを使用したときと同じ含水率まで脱水することができる。
【0046】
上記各実施の形態では、脱水機の一例としてフィルタープレス5を用いたが、スクリュープレスやベルトプレス等を用いてもよい。
上記各実施の形態では、有機汚泥は、し尿処理場や下水処理場等から発生する生の汚泥でも良いし、脱水汚泥でも良い。また、有機汚泥に含まれる有機物は植物性および動物性のどちらでも良い。
【符号の説明】
【0047】
5 フィルタープレス(脱水機)
S,T 所定範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11