特許第6238546号(P6238546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238546
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】光電変換装置および撮像システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20171120BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01L27/146 A
   H04N5/369
【請求項の数】19
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-80805(P2013-80805)
(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公開番号】特開2014-204043(P2014-204043A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】岩田 旬史
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌弘
【審査官】 田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−206210(JP,A)
【文献】 特開2004−165589(JP,A)
【文献】 特開2013−041890(JP,A)
【文献】 特開2001−250931(JP,A)
【文献】 特開2008−193527(JP,A)
【文献】 特開2006−310650(JP,A)
【文献】 特開2011−155152(JP,A)
【文献】 特開昭61−018172(JP,A)
【文献】 特開平05−335548(JP,A)
【文献】 特開2010−183040(JP,A)
【文献】 特開2013−084742(JP,A)
【文献】 特開2013−149743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 5/369
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのマイクロレンズ及び複数の光電変換素子を含む光電変換ユニットを複数有する光電変換装置において、
前記複数の光電変換ユニットは、各光電変換ユニットに含まれる前記複数の光電変換素子の信号を加算して得られた信号により撮像が行われ、前記複数の光電変換素子の信号の少なくとも一つの信号を用いることで焦点検出が行われるように構成され、
前記複数の光電変換素子信号電荷を収集する第1導電型の第1半導体領域を含み、
前記複数の光電変換ユニット含まれ互いに隣接して配置された2つの光電変換素子の第1半導体領域の間には、第2導電型の第2半導体領域が配され、
前記第1半導体領域は各々が異なる深さに配された複数の不純物濃度ピークを有し、
前記第2半導体領域は各々が異なる深さに配された複数の不純物濃度ピークを有し、
前記第1半導体領域の複数の不純物濃度ピークは、
第1不純物濃度ピークと、
前記第1不純物濃度ピークよりも不純物濃度が低い第2不純物濃度ピークと、を含み、
前記第2半導体領域の複数の不純物濃度ピークは、
第3不純物濃度ピークと、
前記第3不純物濃度ピークよりも不純物濃度が高く、且つ前記第3不純物濃度ピークよりも表面側に配された第4不純物濃度ピークと、
前記第3不純物濃度ピークよりも不純物濃度が高く、且つ前記第3不純物濃度ピークよりも深い位置に配された第5不純物濃度ピークと、を含み、
前記第3不純物濃度ピークが配される深さは、前記第1不純物濃度ピークが配される深さに比べて、前記第2不純物濃度ピークが配される深さに近いことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記複数の光電変換ユニットのうち隣接して配置された異なる2つの光電変換ユニットにそれぞれ含まれ、互いに隣接して配された2つの光電変換素子の第1半導体領域の間には第2導電型の第3半導体領域が配され、
前記第2半導体領域の少なくとも一部の領域の第2導電型の不純物濃度は、前記第3半導体領域の第2導電型の不純物濃度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記複数の光電変換ユニット各々において前記1つのマイクロレンズにより集光される光が前記複数の光電変換素子に入射することを含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記第3半導体領域の不純物濃度は、前記第不純物濃度ピークの不純物濃度の3倍以上であることを特徴とする請求項2に記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記第3半導体領域の不純物濃度は、前記第3不純物濃度ピークの不純物濃度の10倍以上であることを特徴とする請求項に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記第3不純物濃度ピークに対応する領域を平面視した場合の幅が前記第4不純物濃度ピークに対応する領域を平面視した場合の幅よりも狭いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第2半導体領域を平面視した場合に、前記第3不純物濃度ピークに対応する領域は前記第4不純物濃度ピークに対応する領域と平面的に異なる位置に配されることを特徴とする請求項6に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記第3不純物濃度ピークの深さは前記第1半導体領域が有する不純物濃度ピークの深さと異なることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記第1半導体領域を平面視した場合に、前記第1不純物濃度ピークに対応する領域、前記第2不純物濃度ピークに対応する領域、平面視した際の面積が異なることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記複数の光電変換ユニットの各々において前記1つのマイクロレンズにより集光される光は前記複数の光電変換ユニットの各々が含む複数の光電変換素子に入射し
前記第3不純物濃度ピークに対応する領域は、
前記マイクロレンズの中心位置の受光面への投影位置に対して、少なくとも一方向においてオフセットして配されていることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記オフセット量は0.1μm以上であることを特徴とする請求項10に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記複数の光電変換ユニットの各々において、前記複数の光電変換素子は平面視した場合に互いに異なる位置に配されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
1つのマイクロレンズ及び複数の光電変換素子を含む光電変換ユニットを複数有し、前記複数の光電変換ユニットのそれぞれ1つに含まれる複数の光電変換素子の信号を加算する光電変換装置において、
前記複数の光電変換ユニットのそれぞれ1つは、前記1つの光電変換ユニットに含まれる前記複数の光電変換素子の信号を加算して得られた信号により撮像が行われ、また、前記1つの光電変換ユニットに含まれる前記複数の光電変換素子の信号の少なくとも一つの信号を用いることで前記撮像時の焦点検出が行われるように構成され、
前記1つの光電変換素子は信号電荷を収集する第1導電型の第1半導体領域を含み、
前記1つの光電変換ユニット含まれ互いに隣接して配置された2つの光電変換素子の第1半導体領域の間には、第2導電型の第2半導体領域が配され、
前記第1半導体領域は、
各々が異なる深さに位置する、信号電荷に対するポテンシャル障壁の高さが第1の値となる第1領域と、信号電荷に対するポテンシャル障壁の高さが第1の値よりも低い第2の値となる第2領域と、を有し、
前記第2半導体領域は、
各々が異なる深さに位置する、信号電荷に対するポテンシャル障壁の高さが第3の値となる第3領域と、信号電荷に対するポテンシャル障壁の高さが第3の値よりも高い第4の値となる第4領域と、信号電荷に対するポテンシャル障壁の高さが第3の値よりも高い第5の値となる第5領域と、を有し、
前記第3領域は、前記第4領域及び前記第5領域との間の深さに配され、
前記第3領域が配される深さは、前記第1領域が配される深さに比べて、前記第2領域が配される深さに近いことを特徴とする光電変換装置。
【請求項14】
前記複数の光電変換ユニットのうち隣接して配置された異なる2つの光電変換ユニットにそれぞれ含まれ、互いに隣接して配された光電変換素子の第1半導体領域の間には第2導電型の第3半導体領域が配され、
前記第3領域の信号電荷に対するポテンシャル障壁の高さは、前記第3半導体領域の信号電荷に対するポテンシャル障壁の高さよりも低いことを特徴とする請求項13に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記複数の光電変換素子のうちの1つの光電変換ユニットに含まれ、互いに隣接して配置された光電変換素子の第1半導体領域の間の領域には絶縁体による分離構造が配されておらず、
前記隣接して配置された異なる光電変換ユニットに含まれる複数の光電変換素子のうち、互いに隣接して配された光電変換素子の第1半導体領域の間の領域には絶縁体が配されることを特徴とする請求項13または14のいずれかに記載の光電変換装置。
【請求項16】
前記絶縁体の下部に第2導電型の第3半導体領域が配されることを特徴とする請求項15に記載の光電変換装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の光電変換装置を有し、
前記複数の光電変換ユニット各々に含まれる複数の光電変換素子の信号の少なくとも前記一つの信号を用いることで測距演算を行い、前記測距演算の結果に基づいて被写体までの距離の演算を行う制御回路を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項18】
請求項17に記載の撮像システムにおいて、前記光電変換ユニット内の一つ以上の光電変換素子が蓄積可能な電荷量を超えたときに、焦点検出を停止させることを特徴とする撮像システム。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の光電変換装置を有し、
前記光電変換ユニットに含まれる複数の光電変換素子の信号を加算して得られた信号により撮像を行ない、
前記光電変換ユニットに含まれる複数の光電変換素子の信号の少なくとも一つの信号を用いることで測距演算を行なうことを特徴とする撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電変換装置に関しさらに詳細には光電変換素子間の分離構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光電変換装置において、複数の光電変換素子で生じた信号を一つの画素の信号として処理する場合があった。例えば一例として、1つのマイクロレンズで複数の光電変換素子に集光することで位相差方式の焦点検出を行う技術がある。例えば特許文献1に記載されているように、1つのマイクロレンズに対応した光電変換素子の信号を独立に読み出すことで焦点検出を行なう。そして、1つのマイクロレンズに対応した光電変換素子の信号を加算することで1つの画素の信号として取り扱うことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−250931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の光電変換素子の信号を1つの画素の信号として取り扱う場合に、複数の光電変換素子に感度や入射光量の差がある場合に適切な信号が得られないことがある。特に光電変換素子は様々な素子と隣接しており、隣接する素子間の分離構造によっては適切な信号が得られない場合があった。
本発明は上記課題に鑑み、光電変換素子間の分離構造を適切なものとすることにより、複数の光電変換素子の信号を用いて1つの信号とする場合に所望の信号を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光電変換装置は、1つのマイクロレンズ及び複数の光電変換素子を含む光電変換ユニットを複数有する光電変換装置において、前記複数の光電変換ユニットは、各光電変換ユニットに含まれる前記複数の光電変換素子の信号を加算して得られた信号により撮像が行われ、前記複数の光電変換素子の信号の少なくとも一つの信号を用いることで焦点検出が行われるように構成され、前記複数の光電変換素子は信号電荷を収集する第1導電型の第1半導体領域を含み、前記複数の光電変換ユニットに含まれ互いに隣接して配置された2つの光電変換素子の第1半導体領域の間には、第2導電型の第2半導体領域が配され、前記第1半導体領域は各々が異なる深さに配された複数の不純物濃度ピークを有し、前記第2半導体領域は各々が異なる深さに配された複数の不純物濃度ピークを有し、前記第1半導体領域の複数の不純物濃度ピークは、第1不純物濃度ピークと、前記第1不純物濃度ピークよりも不純物濃度が低い第2不純物濃度ピークと、を含み、前記第2半導体領域の複数の不純物濃度ピークは、第3不純物濃度ピークと、前記第3不純物濃度ピークよりも不純物濃度が高く、且つ前記第3不純物濃度ピークよりも表面側に配された第4不純物濃度ピークと、前記第3不純物濃度ピークよりも不純物濃度が高く、且つ前記第3不純物濃度ピークよりも深い位置に配された第5不純物濃度ピークと、を含み、前記第3不純物濃度ピークに対応する領域が配される深さは、前記第1不純物濃度ピークに対応する領域が配される深さに比べて、前記第2不純物濃度ピークに対応する領域が配される深さに近いことを特徴とする光電変換装置。ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、例えば、複数の光電変換素子の信号を用いて1つの信号とする場合に所望の信号を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に適用可能な光電変換装置の断面図を概略的に示す図である。
図2】本発明に適用可能な光電変換装置全体構成を概略的に示す図である。
図3】第1の実施例の光電変換装置の上面の概略を示す図である。
図4】第1の実施例の光電変換装置の断面構造とポテンシャルを概略的に示す図である。
図5】第1の実施例の光電変換装置の断面構造とポテンシャルを概略的に示す図である。
図6】第1の実施例の光電変換装置の出力を模式的に示す図である。
図7】第1の実施例の光電変換装置に電荷が蓄積される様子を概略的に示す図である。
図8】第2の実施例の光電変換装置の上面と断面構造及びそのポテンシャルを概略的に示す図である。
図9】第2の実施例の光電変換装置のポテンシャルの概略を示す図である。
図10】第3の実施例の光電変換装置の断面構造とポテンシャルを概略的に示す図である。
図11】第4の実施例の光電変換装置の断面構造とポテンシャルを概略的に示す図である。
図12】物体の結像関係を模式的に示す図である。
図13】位相差方式の焦点検出を模式的に説明する図である。
図14】本発明の撮像システムの概略を示す図である。
図15】比較例の光電変換装置の出力を模式的に示す説明図面である。
図16】本発明に適用可能な光電変換ユニットの等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態を図1を用いて説明する。図1(a)は本発明の一実施形態の光電変換装置の1光電変換ユニットの断面図、図1(b)はB−B’における不純物濃度ピークの深さの位置関係、及びポテンシャル状態を示したものである。図1(c)は、C−C’における不純物濃度ピークが配される深さの位置関係を示すものである。ここでは信号電荷として電子を用いる場合を例に説明する。
【0009】
本実施形態の光電変換ユニットは、2つの光電変換素子を有している。両光電変換素子は類似の構成を有しているため、1つの光電変換素子を例に説明し、他の光電変換素子を構成する部材はカッコ内で符号のみ示す。
【0010】
各光電変換素子はN型半導体領域1A(1C)、N型半導体領域1B(1D)を有する第1半導体領域を有している。第1半導体領域は信号電荷を収集する領域として機能し得る。第1半導体領域は各々が異なる深さに配された複数の不純物濃度ピーク1a(1c)、1b(1d)を有している。複数の不純物濃度ピークは第1不純物濃度ピーク1a(1c)とこれよりも不純物濃度が低い第2不純物濃度ピーク1b(1d)を有している。
【0011】
ここではN型半導体領域1A、1Bを第1不純物濃度ピークに対応する領域、及び第2不純物濃度ピークに対応する領域といえる。ここでは別領域として図示したが一体的に形成されていてもよい。半導体領域が単数か複数かは、例えば異なる製造プロセスで形成された場合に各製造条件で形成されたものを1つの半導体領域とすることができる。以下の説明においても同様である。
【0012】
2つの光電変換素子の間にはP型半導体領域1E_1、1E_2、1F、1Gを有する第2半導体領域が配されている。第2半導体領域は各々が異なる深さに配された複数の不純物濃度ピーク1e_1、1e_2、1f、1gを有している。ここでは4つのピークを示しているが、少なくとも3つ存在すればよい。
【0013】
3つの不純物濃度ピークは、第3不純物濃度ピーク1fと、これよりも不純物濃度が高く、且つ表面側に配された第4不純物ピーク1e_1と、第3不純物濃度ピーク1fよりも不純物濃度が高く、且つこれよりも深い位置に配された第5不純物濃度ピーク(1g)と、を有すればよい。
【0014】
そして本発明の特徴は、第2半導体領域の第3不純物濃度ピーク1fが配される深さが、第1半導体領域の第1不純物濃度ピーク1aが配される深さに比べて、第1半導体領域の第2不純物濃度ピーク1bが配される深さに近いことである。
【0015】
このような特徴によれば、第1の光電変換素子における飽和電荷数を向上させることが可能となる。更に、第2の光電変換素子を構成するN型半導体領域1C、1Dにおいてもこのような関係を満たすと第2の光電変換素子における飽和電荷数も向上させることができるため更に好ましい。
【0016】
図1(b)では第1半導体領域の表面側に不純物濃度が高い不純物濃度ピークを配し、これよりも深い側に濃度ピーク値が低い不純物濃度ピークを配した。このような構成にすることで、転送ゲートを用いて浮遊拡散領域に電荷を空乏転送する際に電荷転送効率を向上させることができ好ましい。しかしながら、これに限らず深い側に不純物濃度が高い不純物濃度ピークを配してもよい。
【0017】
また不純物濃度ピークの数に関しても、本例では2つの場合を例に説明したが、これに限らない。少なくとも2つの不純物濃度が異なる、不純物濃度ピークを有していればよいのであって更に多数の不純物濃度ピークを有する場合もあり得る。この際には、第2半導体領域の第3不純物濃度ピーク1fが配される深さが、第1半導体領域の複数の不純物濃度ピークのうち、最も不純物濃度が高い不純物濃度ピークの深さに比べて、他の不純物濃度ピークの深さに近くすればよい。
【0018】
次に本発明の光電変換装置に適用可能なブロック図を説明する。ここでは光電変換装置の一例として撮像装置の例を示す。本発明は撮像装置以外にも光電変換を利用する装置であれば適用可能である。
【0019】
図2は本発明を適用可能な撮像装置の概略を示す図である。図2において撮像装置100は、画素アレイ101と、画素アレイ101における行を選択する垂直選択回路102を含む。画素アレイには複数の光電変換ユニットが配される。複数の光電変換ユニットは好ましくは2次元状に配される。
【0020】
垂直選択回路102により所定の行が選択され、所定行に含まれる光電変換ユニットから信号が垂直出力線に出力される。垂直出力線は列ごともしくは複数の列ごと、もしくは各画素列に複数設けることができる。
【0021】
列回路103は複数の垂直出力線に並列に読み出された信号が入力される。列回路103では信号の増幅、アナログデジタル変換、ノイズ除去等の処理を行うことができる。
【0022】
水平選択回路104は列回路103に保持された信号を順次選択し、不図示の水平出力線へ出力する。シリアルインターフェイス105は例えば動作モードを外部から決定するために外部との通信を行なう。なお、撮像装置100は、図示された構成要素以外にも、例えば、垂直選択回路102、水平選択回路104、列回路103にタイミングを提供するタイミングジェネレータ或いは制御回路等を備えてもよい。
【0023】
図2のブロック図は以下の実施例全てに適用可能である。また垂直、水平は便宜的につけた名称であり入れ替えることも可能である。
【0024】
次に図16(a)、(b)に光電変換ユニットの等価回路の一例を示す。図16(a)は各光電変換素子に対応してそれぞれが異なる機能を有するトランジスタを個別に設けた例である。図16(b)は複数の光電変換素子に対しそれぞれが異なる機能を有するトランジスタを共通に設けた例である。
【0025】
光電変換素子1401a、1401bで生じた電荷が転送トランジスタ1402a、1402bにより増幅トランジスタ1403a、1403bの入力ノードに転送される。増幅トランジスタの入力ノードは増幅トランジスタのゲート及びこれに電気的に接続された浮遊拡散領域により構成することができる。選択トランジスタ1404a、1404bのゲートに選択トランジスタがオンとなるパルスが供給されることで、増幅トランジスタの入力ノードに応じた信号が垂直出力線1406に出力される。そしてリセットトランジスタ1405a、1405bにより増幅トランジスタ1403a、1403bの入力ノードの電圧が所定の電圧に設定される。このような回路構成では、選択トランジスタ1404a、1404bを排他的にオンさせることで光電変換素子1401a、1401bの信号を列回路に読出し、加算等を行なうことで撮像と焦点検出とを行なうことが可能である。
【0026】
次に図16(b)について説明する。基本的な動作は図16(a)と同様である。光電変換素子1501a、1501bで生じた電荷が転送トランジスタ1502a、1502bにより増幅トランジスタ1503の入力ノードに転送される。増幅トランジスタ1503の入力ノードは増幅トランジスタのゲート及びこれに電気的に接続された浮遊拡散領域により構成することができる。選択トランジスタ1504のゲートに選択トランジスタがオンとなるパルスが供給されることで、増幅トランジスタ1503の入力ノードに応じた信号が垂直出力線1506に出力される。そしてリセットトランジスタ1505により増幅トランジスタ1503の入力ノードの電圧が所定の電圧に設定される。図16(b)は増幅トランジスタ1504が複数の光電変換素子1501a、1501bで共有されているため、増幅トランジスタの入力ノードで加算することができる。したがって光電変換ユニットから垂直出力線1406に出力される段階で加算後の信号を出力することできる。
【0027】
以下具体的な実施例を挙げて本発明の光電変換装置の構成を説明する。以下の各実施例においても光電変換装置として撮像装置を例に挙げて説明する。以下、本明細書、請求の範囲及び図面において単に「不純物濃度」という用語が使われた場合、逆導電型の不純物によって補償された正味の不純物濃度を意味している。いわゆるNET濃度である。P型の添加不純物濃度がN型の添加不純物濃度より高い領域はP型半導体領域である。反対に、N型の添加不純物濃度がP型の添加不純物濃度より高い領域はN型半導体領域である。
【0028】
(第1の実施例)
図3は本実施例の撮像装置100の光電変換ユニットの上面を示す概略図である。201は1つの光電変換ユニットを表す。図3では2行、2列に配された4つの光電変換ユニットが図示されている。
【0029】
1つの光電変換ユニットごとに1つのマイクロレンズ202が対応して設けられている。また、1つの光電変換ユニット201は光電変換素子を複数有する。図3においては、2つの光電変換素子、例えば、PD1,PD2を有している。もしくは1つの光電変換ユニット内に4つの光電変換素子、9つの光電変換素子を有していてもよい。
【0030】
転送トランジスタのゲートである転送ゲート205、206は各々光電変換素子PD1、PD2で発生した電荷を浮遊拡散領域207に転送する。浮遊拡散領域207は複数の光電変換素子PD1、PD2で共有され得る。
【0031】
図3では説明のため4つの光電変換ユニットを図示したが、このような光電変換ユニット201を更に多数行列状に配置することで画素アレイ101を構成する。
【0032】
図4(a)は本実施例の光電変換ユニットの断面構造を示す。301はカラーフィルターである。302は配線層である。ここでは異なる高さに配された3つの配線層を図示している。
【0033】
P型半導体領域304と複数のN型半導体領域203、204とがPN接合を構成する。P型半導体領域304は半導体領域303上に配される。半導体領域303は例えばP型半導体基板、もしくはN型半導体基板を用いることができる。
【0034】
各光電変換素子はN型半導体領域203、204及びP型半導体領域304を含んで構成される。具体的には、P型半導体領域304とN型半導体領域203a、203bとで光電変換素子PD1、PD2(以下PD1,PD2)が構成される。P型半導体領域304とN型半導体領域204a、204bとで光電変換素子PD3、PD4(以下、PD3,PD4)が構成される。N型半導体領域203a、b、204a、bは電子に対してポテンシャルが低くなっており、信号電荷を収集する領域である。更にN型半導体領域203a、203b、204a、204bの入射面側にP型半導体領域を配していわゆる埋め込み型のフォトダイオードとしてもよい。PD1、PD2にはマイクロレンズ202aにより集光された光が入射し、PD3、PD4にはマイクロレンズ202bにより集光された光が入射する。これらの半導体領域は半導体基板300に配されている。また本図では、N型半導体領域203a、203b、204a,204bは異なる深さに配された二つの半導体領域で構成されているように図示されている。これは後述するように、各半導体領域が異なる深さに不純物濃度ピークを有することを図面上で示したものである。したがって各半導体領域は一つの半導体領域として一体的に形成されていてもよい。もしくは複数の製造プロセス条件で深さ方向に積層されるように形成してもよい。
【0035】
PD1,PD2は同一のマイクロレンズ202aにより集光された光が入射する。PD1、PD2は同一の光電変換ユニットに含まれる。PD1、PD2は一方向、図では左右方向において互いに隣接している。PD1、PD2が含まれる光電変換ユニットを第1光電変換ユニットと呼ぶ。また第1光電変換ユニットの図面右方向に隣接する光電変換ユニットを第2光電変換ユニットと呼ぶ。
【0036】
PD1,PD2にそれぞれ含まれるN型半導体領域203a、203bの間にはP型半導体領域311、312が配される。P型半導体領域311、312は、N型半導体領域203a、203b間において電子に対するポテンシャル障壁として機能し得る。
【0037】
PD2、PD3には異なるマイクロレンズ202a、202bにより集光された光がそれぞれ入射する。PD2、PD3はそれぞれが異なる光電変換ユニットに含まれ、互いに隣接して配置される。PD2、PD3は一方向、図では左右方向において互いに隣接して配置される。PD2,PD3にそれぞれ含まれるN型半導体領域203b、204aの間にはP型半導体領域305が配される。P型半導体領域305を配することでN型半導体領域203b、N型半導体領域204a間において電子に対するポテンシャル障壁として機能し得る。
【0038】
図4(a)では、同一光電変換ユニット内の2つのPD間に配されるP型半導体領域が異なる深さに配された複数の不純物濃度ピークを有している。ここでは第1部分311に対応する不純物濃度ピークが、第2部分312に対応する不純物濃度ピークで挟まれた構成を示している。ここで第1部分311の不純物濃度ピーク値は、第2部分312の不純物濃度ピーク値よりも低い。
【0039】
第1部分311は半導体基板300の表面から所定の深さに配される。第1部分311の上部、下部には第2部分312が配されている。また、第1部分311のP型不純物濃度は、P型半導体領域305のP型不純物濃度よりも低い。また、第2領域312のP型不純物濃度は、P型半導体領域305のP型不純物濃度と同等か、それよりも低い。N型半導体領域203a、b、204a、bの不純物濃度ピークの好適な不純物濃度の値、及び配される深さに関して以下に述べる。いずれの光電変換素子においても同様の条件を適用することができる。具体的には、表面側に配される不純物濃度ピークの不純物濃度の値は、3E16cm-3以上、1E18cm-3以下とするのがよい。表面側に配される不純物濃度ピークの深さは、0.18μm以上、0.4μm以下とするのがよい。また深い側に配される不純物濃度ピークの不純物濃度の値は、6E15cm-3以上、1E17cm-3以下とするのがよい。深い側に配される不純物濃度ピークの深さは、0.6μm以上、2μm以下とするのがよい。好ましくは、表面側に配される不純物濃度ピークの値が高い方がよい。更に、複数の不純物濃度ピークを有していてもよい。
【0040】
具体的な不純物濃度の好適な例としては、P型半導体領域305の不純物濃度を第1部分311のP型不純物濃度の3倍以上に設定する。さらに望ましくは、10倍以上に設定する。なお、本実施例では不純物濃度ピーク値が低い第1部分311を深さ方向に1箇所のみ配しているが、複数あっても良い。この場合においては、より望ましくは全ての第1部分311の深さ位置を、N型半導体領域203aの不純物濃度ピーク値が最大となる不純物濃度ピークの位置よりもその他の不純物濃度ピーク位置の近くに配するのがよい。このように第1部分311を配することで光電変換素子PD1における飽和電荷量を向上させることが可能となる。更に、光電変換素子PD2のN型半導体領域203bにおいても同様の条件を満たすことで、光電変換素子PD2においても飽和電荷量を向上させることが可能となる。具体的には1E16cm-3以上、6E17cm-3以下とするのがよい。表面側に配される第2部分312に対応する不純物濃度ピークの深さは、0.1μm以上、0.4μm以下とするのがよい。深い側に配される第2部分312に対応する不純物濃度ピークの深さは、0.7μm以上、3μm以下とするのがよい。
【0041】
ここで、第1部分311の濃度を低くすることにより、PD1、PD2間を電荷が不要に移動しやすくなり、PD1、PD2の信号を区別して読みだすことが困難となる場合がある。すなわち、1つの光電変換ユニットに含まれる複数の光電変換素子の信号を用いて焦点検出を行なうような場合には、位相差を検出するのが困難となり、焦点検出の精度が低下する場合がある。精度の低下を抑制するためには、第1部分311が配される深さをN型半導体領域203、204の不純物濃度ピークよりも深い位置に配置するとよい。
【0042】
具体的には、N型半導体領域203、204により形成する信号電荷にとってのポテンシャル最深部より深い位置に、前記第1部分311を配置するとよい。
【0043】
また第1部分311のP型不純物濃度の例として、2×1015cm−3以下にすると良い。より好ましくは1E15cm-3以上、4E15cm-3以上とするのがよい。また第1部分311に対応する不純物濃度ピークの深さは0.6μm以上、2μm以下とするのがよい。
【0044】
また、N型半導体領域203、204は、第2部分312により空乏化するため、PD1、PD2それぞれの飽和電荷量は、第1部分311が第2部分312で置き換えられた場合と同等レベルを維持することができる。
【0045】
図4(b)は図4(a)の破線E−Fの断面ポテンシャル構造を、図4(c)は図4(a)の破線G−Hの断面ポテンシャル構造をそれぞれ示す。
【0046】
図4(b)、(c)に示すように、第1光電変換ユニットに含まれるPD1、PD2間のポテンシャル障壁のうち、第1部分311により生じるポテンシャル障壁の高さはh1であり、第2部分312により生じるポテンシャル障壁の高さはh2である。また、異なる光電変換ユニットに含まれ互いに隣接するPD2、PD3間のポテンシャル障壁305の高さはh3である。第1部分311によって形成されるPD1、PD2間のポテンシャル障壁の高さh1が、第2部分312によって形成されるPD1、PD2間のポテンシャル障壁の高さh2よりも低く、PD2,PD3間のポテンシャル障壁の高さh3よりも低くするのがよい。また、第2部分312によって生じるPD1、PD2間のポテンシャル障壁の高さh2と、PD2,PD3間のポテンシャル障壁の高さh3は同程度の高さか、あるいはh2の高さがh3の高さよりも低くするのがよい。
【0047】
このような構造にすることで第1光電変換ユニットに含まれる光電変換素子の信号を加算した後の信号を入射光量に応じた線形性を有するものとすることができる。
【0048】
本実施例は様々な光電変換素子に適用可能なものであるが、特に、互いの出力の加算を行なう複数の光電変換素子において感度差や飽和量の差もしくは入射光量の差がある場合に好適である。ここでいう入射光量の差とは、例えば、光電変換装置全体に一様光が入射した場合においても実際に光電変換素子に入射する光量に差がある場合である。特に1つのマイクロレンズで集光された光が平面的に異なる位置に配された複数の光電変換素子に入射する場合などに起こりやすい。
【0049】
次に、P型半導体領域の不純物濃度の好適な例を説明する。ポテンシャル障壁305を構成するP型半導体領域305のP型の不純物濃度を、ポテンシャル障壁311を構成するP型半導体領域311のP型の不純物濃度の3倍以上に設定するのがよい。3倍以上とすることにより、電荷の持つポテンシャル(室温27℃で約26mV)と同程度のポテンシャル障壁の差を形成することができるためである。さらに望ましくは、光電変換装置の動作温度範囲を考慮して10倍以上に設定するのがよい。
【0050】
次に図5に関して説明する。図5図3のC−D断面図である。第1光電変換ユニットと、第1光電変換ユニットの図面下方向に隣接する第3光電変換ユニットの光電変換素子が図示される。第1光電変換ユニットの浮遊拡散領域207と第2光電変換ユニットに含まれる光電変換素子PD5との間には絶縁体を含んで構成される絶縁分離309が配される。絶縁分離309としてはLOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)や、STI(Shallow Tranch Isolation)など公知の手法、構造を用いることができる。ポテンシャル障壁の高さは図示しないが、P型半導体領域312により生じるポテンシャル障壁の高さより絶縁分離309により生じるポテンシャル障壁の高さを高くする。また絶縁分離309により生じるポテンシャル障壁の高さとP型半導体領域305により生じるポテンシャル障壁の高さは任意であり、素子レイアウト等に基づいて適宜設定することができる。ここでは浮遊拡散領域と光電変換素子間に絶縁分離を配する例を挙げている。もしくは画素部のトランジスタと光電変換素子の間を絶縁分離としてもよい。
【0051】
図6図7を用いて、各PDの出力と加算後の合成出力について説明する。図6は2つのPD1、PD2の入出力特性とPD1、PD2の出力を合成した場合の合成入出力特性を示す。横軸が入射光量であり縦軸は光電変換素子からの出力である。ここで比較例として図15に本実施例とは異なる不純物濃度プロファイルを有する光電変換装置によって得られる合成出力を示す。
【0052】
図7図4(c)のポテンシャル構造と発生した電子を模式的に示す図である。図6、7では説明のためにPD1の方が、PD2より感度が高い、もしくは、入射光量が大きい場合と仮定する。光電変換素子への入射光量が401の範囲の時は、PD1の方がPD2より発生する電子の量が多い。この様子を図7(a)に示している。そして、PD1とPD2の合成出力は適切な値を示している。次にPD1が飽和して、PD2が飽和していないときの範囲を402に示している。このとき、図7(b)で示すように、PD1で発生した電子はポテンシャル障壁311を乗り越え、PD2に移動し得る。したがって、範囲402においては、PD2の出力は、PD2で発生した電子とPD1で発生した電子の一部を合成した電荷量に基づくものとなる。このように、ポテンシャル障壁311の高さh1をポテンシャル障壁305の高さh3より低くしておく。このような構造により、PD1で発生した電子の一部を、PD2に移動させることができ、入射光量が402の範囲においても、PD1とPD2の合成出力が線形性を有する出力となる。
【0053】
範囲403においては、図7(c)で示すように、PD1、2ともポテンシャル障壁311で規定される飽和レベルを超え、ポテンシャル障壁305で規定される飽和レベルとなる。
【0054】
範囲404においては、図7(d)で示すように、PD203、204ともポテンシャル障壁305で規定される飽和レベルまで達しているので合成出力も飽和する。
【0055】
これに対し図15は同一の光電変換ユニットに含まれる光電変換素子間のポテンシャル障壁の高さと、互いに異なる光電変換ユニットに含まれ、隣接して配される光電変換素子間のポテンシャル障壁の高さが等しい場合の例である。第1の光電変換ユニットに含まれる2つの光電変換素子であるPD1、2の入出力特性とPD1、PD2の出力を合成した場合の合成入出力特性を示す。合成出力は、少なくとも光電変換素子の信号を加算することで得られる。合成出力を得るために、平均化、さらに増幅等をしてもよい。
【0056】
図15では説明のため、仮にPD2の方が、PD1より感度が高い、もしくは、光が多く入力している様子を示す。光電変換素子への入射光が範囲1301内の時は、PD2の方がPD1より発生電荷が多い。PD2は飽和していないため、PD1とPD2を合成した出力は適切な出力が得られる。ところが、PD2が飽和して、PD1が飽和していないときには、PD1のみが、入射光に応じて線形性を有した信号が出力される。そのため、合成出力は、PD2が飽和したところからPD1の出力で決定され、結果として、合成出力はPD2が飽和したところから、ニー特性をもってしまう。この現象は、PD2が飽和した後に発生した電荷がPD1以外に漏れこむときに顕著となる。このような現象のため、所望の合成信号が得られない場合がある。
【0057】
したがって本実施例においては同一の光電変換ユニットに含まれる光電変換素子間のポテンシャル障壁の高さを、互いに異なる光電変換ユニットに含まれ、隣接して配される光電変換素子間のポテンシャル障壁の高さよりも低くしている。この構成により、線形性を高めることが可能となる。
【0058】
(第2の実施例)
本発明の第2の実施例について図面を用いて説明する。図8は本実施形態の光電変換ユニットの上面図及び断面図である。
【0059】
図8(a)では、第1の光電変換ユニットに含まれるPD1、PD2間に配されるP型半導体領域が、第1部分701と第1部分701よりもP型不純物濃度の高い第2部分702、703を含んで構成されている。
【0060】
本実施例の第1の実施例と異なる点は、平面視した際に第1部分701、第2部分702とが互いに異なる位置に配されている点である。
【0061】
また、第1部分701のP型不純物濃度はP型半導体領域305のP型不純物濃度よりも低い。図8(b)に図8(a)の破線I−Jの断面構造を、図8(c)に図8(a)の破線K−Lの断面構造をそれぞれ示す。また、図9(a)に図8(a)の破線M−Nのポテンシャル構造を、図9(b)に図8(a)の破線O−Pのポテンシャル構造をそれぞれ示す。
【0062】
第2部分702に対応して形成される不純物濃度ピークの高さは第1部分701に対応して形成される不純物濃度ピークの高さよりも低い。また、第2部分702に対応して形成されるポテンシャル障壁の高さは第1部分701に対応して形成されるポテンシャル障壁の高さよりも低い。
【0063】
この構造により形成されるポテンシャル形状が図9(a)、(b)である。第1部分701により構成されるポテンシャル障壁が第2部分702により構成されるポテンシャル障壁よりも低い。
【0064】
不純物濃度の好適な例としては、第1部分701のP型不純物濃度に対して、P型半導体領域305のP型不純物濃度を3倍以上に設定するのがよい。さらに望ましくは、10倍以上に設定する。
【0065】
ここで、第1部分701は、N型半導体領域203a、203bに存在する電子の量によってポテンシャルの状態が変化しやすい。よって、PD1、PD2での蓄積開始直後と、一方のPDたとえばPD1にPD2に比べて多くの電荷が存在する状態とでは、第1部分701で発生した電荷がどちらのPDに移動するかという確率が変動する。例えば蓄積開始直後にPD1に多くの電荷が存在する場合、PD1内に存在する電荷のクーロン相互作用にて第1部分701のポテンシャルが変化する。その後、第1部分701で発生した電荷はPD2に移動する確率が高くなる。すなわち、PD1とPD2のそれぞれに電荷が移動する確率が変化する。このような構成では、例えば、位相差を検出するためのPD間の信号差を打ち消すようなフィードバックがかかり、焦点検出の精度が低下する場合がある。
【0066】
このような精度の低下に対しては、第1部分701の配置を以下のようにすることにより抑制することが可能となる。
【0067】
具体的には、第1部分701を平面視した場合に、マイクロレンズの中心位置の光電変換素子の受光面への投影位置からずらして配置することが望ましい。図8で言えば、M−N線がマイクロレンズの略中心を横切る線分であるが、この線分に対して第1部分701は平面視において図面上方向にオフセットされて配置されている。この本質は、マイクロレンズで集光された光の強度がピークとなる位置付近から第1部分701を離すことである。例として図8では第1部分701を上方向にオフセットさせているがこれに限ることなく、下方向、場合によっては左右方向でもよい。好適なオフセット量としては、第1部分701をマイクロレンズの中心より0.1マイクロメートル以上ずらしておくことが望ましい。さらに望ましくは、0.2マイクロメートル以上ずらしておくことが望ましい。これは、PDで取り扱う波長の範囲がいわゆる可視光域である場合である。可視光の波長が約0.4〜0.8マイクロメートルであり、光電変換素子にマイクロレンズの焦点が存在する場合の例である。また、光電変換素子での集光状態は、対物レンズのF値にも依存するため、F値の小さい光学系に本実施例による光電変換装置を適用する場合のオフセット量としては、より大きな値が好適となる。一例として対物レンズのF値を2.0に設定可能なシステムの場合マイクロレンズには垂線より最大14°の傾きをもった光が入射する。マイクロレンズとPDの距離が2μmである場合、14°の傾きで入射した光の焦点位置はマイクロレンズの中心位置を受光面に投影した位置から少なくとも一方向において0.5μmオフセットさせる。この場合には、第1部分701を0.5μm以上マイクロレンズの中心位置からオフセットして配置することが特に効果的である。またオフセット量の上限としては隣接する光電変換素子間ピッチの半分である。
【0068】
(第3の実施例)
本発明の第3の実施形態について図面を用いて説明する。図10は本実施例の光電変換ユニットの断面図である。第1〜第2の実施例と同様の機能を有する部分には同様の符号を付し詳細な説明は省略する。
【0069】
本実施形態の第1〜第2の実施例と異なる点は、N型半導体領域203a、203b間に配されるP型半導体領域が第1部分801と第2部分802とを有しており、第1部分801の幅が第2部分802の幅よりも狭い点である。
【0070】
図10(a)の破線Q−Rの断面ポテンシャルを図10(b)に、破線S−Tの断面ポテンシャルを図7(c)にそれぞれ示す。このような構成によっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0071】
図10においては第1部分801と第2部分802とが異なる深さに配されているが、第2の実施例に示したように同一の深さで平面視において異なる位置に配してもよい。また、第1部分801は互いに離間した複数の部分から構成されていてもよい。
【0072】
(第4の実施例)
第4の実施例について図面を用いて説明する。図11は本実施例の光電変換ユニットの断面図である。第1〜第3の実施例と同様の機能を有する部分には同様の符号を付し詳細な説明は省略する。本実施例の第1〜第3の実施例と異なる点は、N型半導体領域203a、203bが深さ方向で面積が異なる点である。
【0073】
図11(a)の破線U−Wの断面ポテンシャルを図11(b)に、破線X−Yの断面ポテンシャルを図11(c)にそれぞれ示す。このような構成によっても、上述の実施例と同様の効果を得ることが可能となる。
【0074】
(焦点検出装置への応用)
上述の実施例で説明した光電変換装置は、撮像装置及び撮像面における焦点検出を行なう装置として利用することが可能である。具体的に撮像面において位相差検出による撮像時の焦点検出を行なう一例を説明する。
【0075】
図12図13を用いて説明する。図12は撮影レンズ900の射出瞳から出た光束が撮像装置901に入射する概念図である。202はマイクロレンズであり、301はカラーフィルターであり、光電変換素子PD1、PD2は1つのマイクロレンズにより集光される光が入射する複数の光電変換素子である。902は撮影レンズの射出瞳を示す。ここでは、マイクロレンズ202を有する光電変換ユニットに対して、射出瞳902から出た光束の中心を光軸903とする。射出瞳から出た光は、光軸903を中心として撮像装置901に入射する。射出瞳の一部領域904を通過する光の最外周の光線を906、907で示し、射出瞳902の一部領域905を通過する光の最外周の光線を908、909で示す。この図からわかるように、射出瞳902から出る光束のうち、光軸903を境にして、上側の光束はPD1に入射し、下側の光束はPD2に入射する。つまり、PD1とPD2は各々、撮影レンズの射出瞳の別の領域の光を受光している。
【0076】
この特性を生かして、位相差の検知を行う。画素内の領域において、撮像領域を上面から見た際に、1つのマイクロレンズで集光される光が入射する複数の光電変換素子に対し、一方のPDから得られるデータを第1ラインとし、他方のPDから得られるデータを第2ラインとする。そしてライン間の相関データを求めれば位相を検知できる。
【0077】
例えば、図12において、1つのマイクロレンズにより集光される光が入射する光電変換素子のうち下側に配されたPDのデータを第1ラインとし、上側に配されたPDのデータを第2ラインとする。この場合、PD1は第1ラインのデータのうちの1画素分の出力となり、PD2は第2ラインのデータのうちの1画素分の出力となる。図13は点光源を結像したときのラインデータを示す。図13(a)はピントがあった状態における第1ラインと第2ラインのデータである。横軸は、画素位置を表し、縦軸は出力を表す。ピントがあっている場合は第1ラインと第2ラインは重なる。図13(b)はピントがあっていない場合のラインデータである。このときは、第1ラインと第2ラインは位相差をもち、画素位置がずれている。このずれ量1001を算出すると、ピントがあっている状態とどれだけずれているかがわかる。このような方法で位相を検知し、レンズを駆動することによってピントをあわすことができる。
【0078】
次に、これらの画素配置における画像データ生成について述べる。前述のように、PD1とPD2の信号を別々に撮像装置901から読み出し、位相差を検出する計算を行うことで、ピントの検出が出来る。そして、1つのマイクロレンズにより集光された光が入射するPDの信号を加算することで撮影画像を生成することができる。
【0079】
ただし、一方のPDが飽和した状態、つまり図6の401,402,403で示す状態のときには、PDの信号は各々のPDで単独で得られた出力とは異なる。したがって、PDの信号は信頼性が低いと判断される場合がある。このような場合には位相検知は行わない、もしくは位相検知を停止させるというシーケンスを採用することもできる。つまりPDの信号、もしくは蓄積可能な電荷に応じて撮像装置の像面で位相差検出を行なうか否かを判定して動作させることができるのである。
【0080】
ところで、図12では撮像素子の中心付近の画素について説明したが、実際にPD間の入射光量に大きな差がつくのは、撮像素子の周辺部の画素の方が顕著であるため撮像領域の中心よりも端部に焦点検出用の画素を配した方が精度が上がってよい。
【0081】
(撮像システムへの応用)
図14に、上述の各実施形態の撮像装置を適用可能な撮像システムの一例を示す。
【0082】
図14において、1101は被写体の光学像を撮像装置1105に結像させるレンズ部で、レンズ駆動装置1102によってズーム制御、フォーカス制御、絞り制御などがおこなわれる。1103はメカニカルシャッターでシャッター制御手段1104によって制御される。1105はレンズ部1101で結像された被写体を画像信号として取り込むための撮像装置、1106は撮像装置1105から出力される画像信号に各種の補正を行ったり、データを圧縮したりする撮像信号処理回路である。1107は撮像装置1105、撮像信号処理回路1106に、各種タイミング信号を出力する駆動手段であるタイミング発生回路である。1109は各種演算と撮像装置全体を制御する制御回路、1108は画像データを一時的に記憶する為のメモリ、1110は記録媒体に記録または読み出しを行うためのインターフェースである。1111は画像データの記録または読み出しを行う為の半導体メモリ等の着脱可能な記録媒体、1112は各種情報や撮影画像を表示する表示部である。
【0083】
次に、前述の構成における撮影時のデジタルカメラの動作について説明する。
【0084】
メイン電源がオンされると、コントロール系の電源がオンし、更に撮像信号処理回路1106などの撮像系回路の電源がオンされる。
【0085】
それから、レリーズボタン(図示せず)が押されると、撮像装置1105からのデータを元に測距演算を行い、測距結果に基づいて被写体までの距離の演算を制御回路1109で行う。その後、レンズ駆動装置1102によりレンズ部を駆動して合焦か否かを判断し、合焦していないと判断した時は、再びレンズ部を駆動し測距を行う。測距演算は、撮像素子からのデータで求める以外にも、測距専用装置(図示せず)で行っても良い。
【0086】
そして、合焦が確認された後に撮影動作が開始する。撮影動作が終了すると、固体撮像素子1105から出力された画像信号は撮影信号処理回路1106で画像処理をされ、制御回路1109によりメモリに書き込まれる。撮影信号処理回路では、並べ替え処理、加算処理やその選択処理が行われる。メモリ1108に蓄積されたデータは、制御回路1109の制御により記録媒体制御I/F部1110を通り半導体メモリ等の着脱可能な記録媒体1111に記録される。
【0087】
また、外部I/F部(図示せず)を通り直接コンピュータ等に入力して画像の加工を行っても良い。
【0088】
以上具体的な実施形態、及びその応用を示す本発明の説明を行なった。本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。本発明は様々な光電変換素子に適用可能なものであるが、光電変換素子の感度差や入射する光量差があるような構成に対しては特に有効である。例えば、上記実施形態においては、本発明による画素を対物レンズの焦点検知に用いる例について説明した。しかしながら、本発明の撮像装置の特徴は、複数の光電変換素子の信号を足し合わせる読み出しを行った際の出力の線形性の確保であり、焦点検知以外の応用も可能である。例えば、複数の光電変換素子は、パンドパスの異なる2種のカラーフィルターを搭載したものとすることも可能である。具体的には、RGBの各色に対してパンドパスの異なるR‘,G’,B‘のカラーフィルターを搭載する。これらを個別に読み出した際には、6色の信号を得ることができ、色再現性が向上する。一方、PDの加算を行い、R+R’,G+G’,B+B‘の3色の信号を得る動作を行った場合には、感度を高めることができ、S/N比を向上することができる。これらの2つの撮影モードを同一の撮像装置にて切り替えることが可能な構成にも適用できる。
【符号の説明】
【0089】
202、1201 マイクロレンズ
203、204 光電変換素子
305、311、312、701、702、703、801、802、1208、1209 P型(第2導電型)の半導体領域
図1
図2
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