特許第6238551号(P6238551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238551眼科装置、眼科装置の制御方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238551
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】眼科装置、眼科装置の制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20171120BHJP
   A61B 3/15 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61B3/10 W
   A61B3/14 F
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-86878(P2013-86878)
(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公開番号】特開2014-209993(P2014-209993A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】梅川 一昭
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−206710(JP,A)
【文献】 特開2005−349095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光束を投影することにより被検眼を測定する測定手段と、
前記被検眼に投影される前記測定光と同じ第1の光路で前記被検眼に光束を投影する第1の投影手段と、
前記第1の光路の光軸とは異なる光軸の第2の光路で前記被検眼に光束を投影する第2の投影手段と、
前記第1の投影手段が投影した光束に対応する複数の輝点像から成る第1の輝点像と、前記第2の投影手段が投影した光束に対応する第2の輝点像との位置関係に基づいて、前記第1の輝点像から成る複数の輝点像から前記被検眼の角膜において反射した反射光束に対応する輝点像を選択する選択手段と、
前記第1の輝点像のうち前記選択された輝点像を用いて、前記被検眼と前記測定手段とのアライメント状態を演算する演算手段と、
を有することを特徴とする眼科装置。
【請求項2】
前記第2の投影手段は、前記第1の投影手段が投影する光束の第1の光路に関して対称な2カ所に光束を投影し、
前記選択手段は、2つの前記第2の輝点像の中点に近い位置にある前記第1の輝点像を、前記被検眼の前記角膜において反射した反射光束として選択することを特徴とする請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記第1の投影手段が投影した光束の反射光束を互いに異なる方向に偏向する複数の反射光束に分割し、分割された複数の反射光束による複数の前記第の輝点像の位置を、前記被検眼と前記測定手段との距離に応じて相対的に変化させる偏向手段を有し、
前記測定手段は、分割された複数の反射光束による複数の前記第の輝点像の相対的な位置が所定の位置にある場合に、前記被検眼との距離が前記被検眼の測定に適した距離となり、
前記演算手段は、前記偏向手段により偏向された複数の反射光束による複数の前記第の輝点像の相対的な位置に基づいて、前記アライメント状態として前記測定手段と前記被検眼との距離を演算することを特徴とする請求項1または2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記偏向手段は、前記反射光束を互いに異なる方向に偏向させる複数のアライメントプリズムを有するアライメントプリズム絞りであることを特徴とする請求項3に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記第1の投影手段が投影した光束の反射光束による第1の輝点像と、前記第2の投影手段が投影した光束の反射光束による第2の輝点像を検出する検出手段を更に有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記測定手段を駆動する駆動手段と、
前記演算手段により演算されたアライメント状態の演算結果から駆動手段を制御して前記被検眼とのアライメントを行うオートアライメント手段と、
を更に有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項7】
前記測定手段は、人工水晶体が挿入されたIOL挿入眼を被検眼として測定できることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項8】
前記演算手段により演算されたアライメント状態から、前記測定手段が適正なアライメント状態となる移動方向を表示する表示手段を更に有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の眼科装置。
【請求項9】
測定光束を投影することにより被検眼を測定する測定手段を有する眼科装置の制御方法であって、
第1の投影手段により、前記被検眼に投影される前記測定光と同じ第1の光路で前記被検眼に光束を投影する第1の投影ステップと、
第2の投影手段により前記第1の光路の光軸とは異なる光軸の第2の光路で前記被検眼に光束を投影する第2の投影ステップと、
前記第1の投影手段が投影した光束に対応する複数の輝点像から成る第1の輝点像と、前記第2の投影手段が投影した光束に対応する第2の輝点像との位置関係に基づいて、前記第1の輝点像から成る複数の輝点像から前記被検眼の角膜において反射した反射光束に対応する輝点像を選択する選択ステップと、
前記第1の輝点像のうち前記選択された輝点像を用いて、前記被検眼と前記測定手段とのアライメント状態を演算する演算ステップと、
を有することを特徴とする眼科装置の制御方法。
【請求項10】
前記第2の投影ステップにおいては、前記第1の投影手段が投影する第1の光束の光路に関して対称な2カ所に光束を投影し、
前記選択ステップにおいては、2つの前記第2の輝点像の中点に近い位置にある前記第1の輝点像を、前記被検眼の前記角膜において反射した反射光束として選択することを特徴とする請求項9に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項11】
前記第1の投影手段が投影した光束の反射光束による第1の輝点像と、前記第2の投影手段が投影した光束の反射光束による第2の輝点像を検出する検出ステップを更に有することを特徴とする請求項9または10に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項12】
前記演算ステップにおいて演算されたアライメント状態の演算結果から、前記測定手段を駆動する駆動手段を制御して前記被検眼とのアライメントを行うオートアライメントステップと、
を更に有することを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項13】
前記測定手段は、人工水晶体が挿入されたIOL挿入眼を被検眼として測定できることを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項14】
前記演算ステップにおいて演算したアライメント状態から、前記測定手段が適正なアライメント状態となる移動方向を表示する表示ステップを更に有することを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載の眼科装置の制御方法。
【請求項15】
請求項9から14のいずれか1項に記載の眼科装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科装置、眼科装置の制御方法、プログラムに関する。特に好適には、被検眼の眼特性の測定または被検眼の撮影の眼科装置と、この眼科装置の制御方法と、この眼科装置を制御するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の被検眼の眼特性を測定する眼科装置において、被検眼の角膜に光束を投影しその反射像を受光素子で検出することで、被検眼と装置の光学系とのアライメント状態を求め、オートアライメントを行うことが知られている。
たとえば、特許文献1には、眼科装置のアライメント方法として、一対の光偏向部材により分離され受光した反射像の位置関係から、被検眼と装置の光学系との3次元方向の位置情報を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3576656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、白内障患者には、水晶体の代りにIOL(Intraocular Lens)(「人工水晶体」や「眼内レンズ」と称することもある)を挿入する手術を行う。
しかしながら、IOLは水晶体に比べ屈折率が高く、角膜に投影した光束がIOL反射光として反射する。そのため、従来の方法では、IOL反射ゴーストを、本来のアライメント反射像と誤検知するという問題があった。このような問題のため、たとえばオートアライメント機能を有する眼科装置において、オートアライメントが正常に完了しなくなる。そして、オートアライメントが行えなかった場合は、検者が手動で装置のアライメントを行い、測定を行っていたため、測定時間を要していた。
本発明の目的は、このような問題点を解消し、IOLが挿入された被検眼であっても、IOL反射ゴーストではない本来のアライメント反射像を正しく選択できる眼科装置及び眼科装置におけるアライメント方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、測定光束を投影することにより被検眼を測定する測定手段と、前記被検眼に投影される前記測定光と同じ第1の光路で前記被検眼に光束を投影する第1の投影手段と、前記第1の光路の光軸とは異なる光軸の第2の光路で前記被検眼に光束を投影する第2の投影手段と、前記第1の投影手段が投影した光束に対応する複数の輝点像から成る第1の輝点像と、前記第2の投影手段が投影した光束に対応する第2の輝点像との位置関係に基づいて、前記第1の輝点像から成る複数の輝点像から前記被検眼の角膜において反射した反射光束に対応する輝点像を選択する選択手段と、前記第1の輝点像のうち前記選択された輝点像を用いて、前記被検眼と前記測定手段とのアライメント状態を演算する演算手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、IOLが挿入された被検眼に対して、IOL反射ゴーストではない本来のアライメント反射像を正しく選択できる。このため、アライメントに要する手間の削減と時間の短縮を図ることができる。したがって、測定において検者及び被検者の負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例に係る眼屈折力計の外観図である。
図2図1に示す実施例における測定部の光学系の配置図である。
図3】アライメントプリズム絞りの斜視図である。
図4】本発明の一実施例に係る眼屈折力計のシステムブロック図である。
図5】角膜輝点オートアライメント時の前眼部像の説明図である。
図6】IOL挿入眼での角膜輝点を示した図である。
図7】IOL挿入眼での角膜輝点の前眼部像を示した図である。
図8】本発明の一実施例に係るアライメント方法を説明したフローチャートである。
図9】IOL挿入眼で角膜輝点選択方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態においては、眼科装置として、眼屈折力情報を測定する眼屈折力計1を例に示す。
【0009】
(装置の全体構成)
まず、本発明の実施形態にかかる眼屈折力計1の全体的な構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る眼科装置として眼屈折力情報を測定する眼屈折力計1の概略構成図を示す模式図である。
本発明の実施形態にかかる眼屈折力計1は、ベース100と、X軸駆動フレーム102と、Y軸駆動フレーム106と、Z軸駆動フレーム107と、測定手段の一例である測定ユニット110とを含む。
【0010】
X軸駆動フレーム102は、ベース100に対して左右方向(紙面に垂直な方向、以下、X軸方向)に移動可能である。X軸駆動フレーム102の駆動手段の一例であるX軸方向の駆動機構は、X軸駆動モータ103と、X軸送りねじ(不図示)と、X軸送りナット(不図示)とで構成されている。X軸駆動モータ103は、ベース100に固定される。X軸送りねじは、X軸駆動モータ103の出力軸に連結される。X軸送りナットは、X軸駆動フレーム102に固定され、X軸送りねじ上をX軸方向に移動可能である。そして、X軸駆動モータ103の出力軸の回転によりX軸送りねじが回転し、X軸駆動フレーム102がX軸送りナットとともにX軸方向に移動する。
【0011】
Y軸駆動フレーム106は、X軸駆動フレーム102に対して上下方向(紙面上下方向、以下、Y軸方向)に移動可能である。Y軸駆動フレーム106の駆動手段の一例であるY軸方向の駆動機構は、Y軸駆動モータ104と、Y軸送りねじ105と、Y軸送りナット114で構成されている。Y軸駆動モータ104は、X軸駆動フレーム102に固定される。Y軸送りねじ105は、Y軸駆動モータ104の出力軸に連結される。Y軸送りナット114は、Y軸駆動フレーム106に固定され、Y軸送りねじ105上をY軸方向に移動可能である。そして、Y軸駆動モータ104の出力軸の回転によりY軸送りねじ105が回転し、Y軸駆動フレーム106がY軸送りナット114とともにY軸方向に移動する。
【0012】
Z軸駆動フレーム107は、Y軸駆動フレーム106に対して前後方向(紙面左右方向。以下、Z軸方向)に移動可能である。Z軸駆動フレーム107の駆動手段の一例であるZ軸方向の駆動機構は、Z軸駆動モータ108と、Z軸送りねじ109と、Z軸送りナット115で構成されている。Z軸駆動モータ108は、Z軸駆動フレーム107に固定される。Z軸送りねじ109は、Z軸駆動モータ108の出力軸に連結される。Z軸送りナット115は、Y軸駆動フレーム106に固定され、Z軸送りねじ109に対して相対的にZ軸方向に移動可能である。そして、Z軸駆動モータ108の出力軸の回転によりZ軸送りねじ109が回転し、Z軸駆動フレーム107は、Z軸駆動モータ108やZ軸送りねじ109とともにZ軸方向に移動する。
【0013】
測定ユニット110は、Z軸駆動フレーム107上に固定されている。測定ユニット110は、被検眼Eの固有情報のひとつである眼屈折力を取得する取得手段として機能する。
測定ユニット110の被検者側の端部には、アライメントを行うための光源(不図示)や角膜曲率を測定するための光源ユニット111が設けられている。
測定ユニット110の検者側の端部には、LCDモニタ116が設けられている。LCDモニタ116は、被検眼Eを観察するための表示部材である。LCDモニタ116は、被検眼Eの画像や測定結果等を表示することができる。
【0014】
ベース100の検者側の端部には、ジョイスティック101が設けられている。ジョイスティック101は、被検眼Eに対して測定ユニット110を位置合わせ(アライメント)するための操作部材である。測定時において、検者は、ジョイスティック101を傾倒させることで、測定ユニット110の位置の調整等を行うことができる。
【0015】
眼屈折力の測定を行う際には、被検者は顎受け112上に顎を乗せ、かつベース100に固定されている顔受けフレーム(不図示)の額受け部分に額を押し当てることで被検眼Eの位置を固定させることができる。顎受け112は、顎受駆動機構113により、Y軸方向の位置を調整可能である。
【0016】
(測定ユニット)
次に、測定ユニット110の構成について、図2を参照して説明する。図2は、測定ユニット110の構成を示し模式図であり、主に、内部の光学系を示す配置図である。
測定ユニット110には、眼屈折力測定用の光学系と、固視標投影光学系と、アライメント受光光学系とが配置されている。なお、アライメント受光光学系は、被検眼Eの前眼部観察とアライメント検出とに共用される。
【0017】
眼屈折力測定用の光学系の構成は、次のとおりである。第1の投影手段の一例である眼屈折力測定用光源201は、波長880nmの光束(第1の光束)を被検眼Eの所定部位に投影するための光源である。眼屈折力測定用光源201から被検眼Eに至る光路01上には、投影レンズ202、絞り203、孔あきミラー204、レンズ205、ダイクロイックミラー206が、順に配置される。絞り203は、被検眼Eの瞳孔Epとほぼ共役に配設される。レンズ205は、投影手段として機能する。ダイクロイックミラー206は、被検眼E側から波長880nm未満の赤外線及び可視光を全部反射し、波長880nm以上の光束を一部反射する。
孔あきミラー204の反射方向の光路02上には、絞り207、光束分光プリズム208、レンズ209、及び撮像素子210が順次に配列されている。絞り207は、円環状のスリットを備え、瞳孔Epとほぼ共役に配設される。
【0018】
眼屈折力測定用光源201が発した光束は、絞り203で絞られつつ、投影レンズ202によりレンズ205の手前で1次結像する。そして、この光束は、レンズ205、ダイクロイックミラー206を透過し、被検眼Eの瞳中心に投光される。
投光された光束は眼底Erで反射し、その反射光束(眼底反射光束)は瞳中心を通って再びレンズ205に入射する。入射した光束は、レンズ205を透過後に、孔あきミラー204の周辺で反射する。
孔あきミラー204の周辺で反射した光束は、被検眼Eの瞳孔Epと略共役な絞り207及び光束分光プリズム208で瞳分離され、撮像素子210の受光面にリング像として投影される。
撮像素子210は、投影されたリング像を撮像する。
被検眼Eが正視眼であれば、投影されるリング像は所定の円になる。また、近視眼では正視眼に対してリング像の円が小さく、遠視眼では正視眼に対してリング像の円が大きくなる。
被検眼Eに乱視がある場合はリング像が楕円になり、水平軸と楕円のなす角度が乱視軸角度となる。システム制御部401(後述)は、この楕円の係数を基に眼屈折力を求める。
【0019】
一方、ダイクロイックミラー206の反射方向には、固視標投影光学系と、アライメント受光光学系とが配置されている。
固視標投影光学系の光路03上には、レンズ211、ダイクロイックミラー212、レンズ213、折り返しミラー214、レンズ215、固視標216、及び固視標照明用光源217が、順次に配列されている。
固視誘導時には、固視標照明用光源217が点灯する。固視標照明用光源217が発する投影光束は、固視標216を裏側から照明する。固視標216を透過した光束は、レンズ215、折り返しミラー214、レンズ213、ダイクロイックミラー212、レンズ211を介して、被検眼Eの眼底Erに投影される。
なお、レンズ215は、固視標誘導用モータ224により光軸方向に移動できるようになっている。これにより、レンズ215は、被検眼Eの視度誘導を行い、雲霧状態を実現することができる。
【0020】
ダイクロイックミラー212の反射方向の光路04上には、偏向手段の一例であるアライメントプリズム絞り223、結像レンズ218、及び撮像素子220が順次に配列されている。アライメントプリズム絞り223は、アライメントプリズム絞り挿抜ソレノイド(不図示)により、光路04に挿抜される。そして、アライメントプリズム絞り223が光路04上にある場合にはアライメントを行うことができ、光路から退避している場合には前眼部観察または徹照観察を行うことができる。
【0021】
ここで、アライメントプリズム絞り223の構成について、図3を参照して説明する。図3は、アライメントプリズム絞り223の形状を模式的に示す図である。円盤状の絞り板223dには、3つの開口部223a、223b、223cが略直列に並ぶように形成される。両側の開口部223b、223cのダイクロイックミラー212側には、波長880nm付近のみの光束を透過するアライメントプリズム301a、301bが貼付されている。
【0022】
図2に戻り、被検眼Eの前眼部の斜め前方には、第2の投影手段の一例である780nm程度の波長を有する前眼部照明用光源221a、221bが配置されている。前眼部照明用光源221a、221bは、被検眼Eの前眼部に前記波長の光束(第2の光束)を投影する。なお、『光束』とは、完全な拡散光ではない光をすべて含むものとする。また、前眼部照明用光源221a、221bは、被検眼Eに対し、眼屈折力測定用光源201から被検眼Eに至る光路01(眼屈折力測定用光源201の光束の光軸)とは異なる方向から光束を投影できる。2つの前眼部照明用光源221a、221bは、眼屈折力測定用光源201から被検眼Eに至る光路01に関して対称の位置に設けられる。そして、2つの前眼部照明用光源221a、221bは、被検眼Eの角膜であって、眼屈折力測定用光源201から投影される光束に関して対称な2カ所の位置に、光束を投影できる。被検眼Eからの反射光束は、ダイクロイックミラー206、レンズ211、ダイクロイックミラー212、及びアライメントプリズム絞り223の中央の開口部223aを介して撮像素子220の受光センサ面に到達する。撮像素子220は、到達した反射光束を検出することによって、被検眼Eの前眼部を撮像する。
【0023】
アライメント検出のための光源は、眼屈折力測定用光源201と兼用されている。アライメント時には、拡散板挿抜ソレノイド(不図示)により半透明の拡散板222が光路01に挿入される。
拡散板222が挿入される位置は、眼屈折力測定用光源201の投影レンズ202による略一次結像位置であり、かつレンズ205の焦点位置である。これにより、眼屈折力測定用光源201の光束が拡散板222上に一旦結像し、それが二次光源となる。そして、二次光源の光は、レンズ205から被検眼Eに向かって太い平行光束となり、被検眼Eに投影される。
この平行光束は、被検眼Eの角膜Efで反射する。この反射光束は輝点像を形成する。この反射光束は、ダイクロイックミラー206でその一部が反射し、レンズ211を介してダイクロイックミラー212で反射する。さらに、この反射光束は、アライメントプリズム絞り223の開口部223b、223c及びアライメントプリズム301a、301bを透過する。アライメントプリズム301aを透過した光束は下方向に屈折(偏向)し、アライメントプリズム301bを透過した光束は上方向に屈折(偏向)する。そして、これらの屈折した光束は、結像レンズ218により収斂されて撮像素子220に結像される。
アライメントプリズム絞り223の中央の開口部223aは、前眼部照明用光源221a、221bの波長780nm以上の光束が通るようになっている。よって、前眼部照明用光源221a、221bにより照明されて前眼部で反射した反射光束は、角膜Efの反射光束の経路と同様の経路を辿り、アライメントプリズム絞り223の開口部223aを介して、結像レンズ218により撮像素子220に結像される。
撮像素子220は、結像したこれらの光束(輝点像)が含まれる画像を撮像する。システム制御部401(後述)は、撮像された画像に含まれる光束(輝点像)の位置を検出する。そして、オートアライメント手段の一例であるシステム制御部401(後述)は、これら絞りを介した光束の位置関係により、被検眼Eのオートアライメントを行うことができる。
【0024】
(システム構成)
次に、眼屈折力計1のシステム構成について、図4を参照して説明する。図4は、眼屈折力計1のシステムブロック図である。
システム制御部401は、システム全体を制御する。システム制御部401は、プログラム格納部491と、データ格納部492と、入出力制御部493と、演算処理部494とを有している。プログラム格納部491には、眼屈折力計1を制御するためのコンピュータ読取り可能なコンピュータプログラムが格納されている。データ格納部492には、眼屈折力値を補正するためのデータなどが格納されている。入出力制御部493は、各種デバイスとの入出力を制御する。演算処理部494は、プログラム格納部491に格納されているコンピュータプログラムを読み出して実行する。これにより、各部の制御や、各部から得られたデータ(例えば、撮像素子210、220が撮像した画像)に対して所定の処理を行う。
【0025】
傾倒角度入力部402は、ジョイスティック101が操作された場合の前後左右の傾倒角度を検出してシステム制御部401に送信する。Y軸エンコーダ入力部403は、ジョイスティック101が操作された場合の回転角度を検出してシステム制御部401に送信する。測定開始スイッチ404は、測定開始のために操作する操作部材である。測定開始スイッチ404は、操作されると操作に応じ信号をシステム制御部401に送信する。検者は、ジョイスティック101を用いて、測定ユニット110のオートアライメント及び測定開始の操作を行うことができる。
また、ベース100に配設される操作パネル405には、印字スイッチや顎受上下スイッチなどが配置されている。そして、スイッチが操作されると、操作されたスイッチに応じて、システム制御部401に信号を送信する。
撮像素子220は撮像した被検眼Eの前眼部像を、システム制御部401に送信する。
撮像素子210は、撮像した眼屈折力算出用のリング像を、システム制御部401に送信する。
メモリ408は、撮像素子220が撮像した被検眼Eの前眼部画像や、撮像素子210が撮像した眼屈折力算出用のリング像や、その他各種データを格納する。
システム制御部401は、メモリ408に格納された画像から被検眼Eの瞳孔像と角膜反射像を抽出し、アライメント検出を行う。また、システム制御部401は、撮像素子220が撮像した被検眼Eの前眼部像に、文字や図形データを合成する。
LCDモニタ116は、システム制御部401の制御にしたがって、前眼部像や測定値などを表示する。
ソレノイド駆動回路409は、システム制御部401の制御にしたがって、拡散板挿抜ソレノイド410、及びアライメントプリズム絞り挿抜ソレノイド411を駆動する。
モータ駆動回路413は、システム制御部401の制御にしたがって、X軸駆動モータ103、Y軸駆動モータ104、Z軸駆動モータ108、顎受駆動機構113のモータ、固視標誘導用モータ224を駆動する。
光源駆動回路412は、システム制御部401の制御にしたがって、眼屈折力測定用光源201、前眼部照明用光源221a,221b、及び固視標照明用光源217の点灯、消灯、光量変更を行う。
【0026】
(眼屈折力計の動作)
以上のような構成を備える眼屈折力計1の動作を説明する。
まず、オートアライメントの動作について、図5を参照して説明する。図5は、オートアライメント時における前眼部像を模式的に示す図である。
図5に示すようにオートアライメント時には、システム制御部401は、光源駆動回路412を介して、眼屈折力測定用光源201と、前眼部照明用光源221a、221bを点灯する。
眼屈折力測定用光源201から投影された光束は、角膜Efにおいて反射する。この光束に対応する反射光束による角膜輝点像は、指標像Ta、Tb、Tc(第1の輝点像)として撮像素子220に撮像される。すなわち、アライメントプリズム絞り223の開口部223a、223b、223c及びアライメントプリズム301a、301bにより分割された光束(角膜輝点像)が、指標像Ta、Tb、Tcとして撮像素子220に結像する。
また、前眼部照明用光源221a、221bから投影された光束は、被検眼E角膜Efにおいて反射する。この光束に対応する反射光束による輝点像221a’、221b’(第2の輝点像)は、前眼部照明用光源221a、221bによって照明された被検眼Eの前眼部とともに、撮像素子220に結像する。
したがって、撮像素子210によって撮像される前眼部像には、図5に示すように、角膜輝点像による指標像Ta、Tb、Tcと、前眼部照明用光源221a、221bによる輝点像221a’、221b’が映り込んでいる。
【0027】
システム制御部401は、撮像素子210が撮像した前眼部像からアライメント状態を演算する。そして、システム制御部401は、演算したアライメント状態に基づいて、適正なアライメント状態となるように、測定ユニット110のオートアライメントを行う。アライメント状態は、測定ユニット110の光学系と被検眼Eの位置関係の状態をいう。アライメント状態が適正な状態とは、X軸とY軸方向に関しては、光路01の光軸が、被検眼Eの角膜Efの中心と一致している状態をいう。また、Z軸方向に関しては、測定ユニット110から被検眼Eまでの距離が、被検眼Eの撮像に適した距離にある状態をいう。この距離は、測定ユニット110の光学系の構成(たとえば、絞り203などの構成)に応じて決まる。図5(a)〜(c)は、アライメント状態と3つの指標像Ta、Tb、Tcとの関係を模式的に示す図である。図5(a)〜(c)に示すように、X軸方向とY軸方向に関する位置が適正であると(XY軸方向に関してアライメント状態が適正であると)、中心の指標像Tbが被検眼Eの角膜Efの中心に位置する。さらに、図5(b)に示すように、測定ユニット110と被検眼Eとの距離が適正であると(Z軸方向に関してアライメント状態が適正であると)、3つの指標像Ta、Tb、Tcが垂直方向に一列に並ぶ。
すなわち、アライメントプリズム絞り223は、被検眼Eからの反射光束を互いに異なる方向に偏向する3つの光束に分割する。そして、アライメントプリズム絞り223は、測定ユニット110と被検眼Eとの距離が、被検眼Eの観察に適正な距離となった場合に、3つの指標像Ta、Tb、Tcが垂直方向に並ぶように構成される。
【0028】
オートアライメントにおいて、システム制御部401は、前眼部像に映り込んでいる3つの指標像Ta、Tb、Tcを検出する。システム制御部401は、3つの指標像Ta、Tb、Tcを検出すると、中心の指標像Taと被検眼Eの角膜Efの中心とのずれ方向およびずれ量を演算する。次いで、システム制御部401は、中心の指標像Taが角膜Efの中心に位置する方向に(ずれ量がゼロになる方向に)、モータ駆動回路413を制御して、測定ユニット110を上下左右方向(X、Y軸方向)に移動させる。そして、システム制御部401は、中心の指標像Taが角膜Efの中心に位置すると、測定ユニット110の上下左右方向の移動を停止する。
【0029】
また、システム制御部401は、上側と下側の2つの指標像Tb、TcのX軸座標から、測定ユニット110のZ軸方向に関するアライメント状態を演算する。すなわち、システム制御部401は、2つの指標像Tb、TcのX軸座標の差を算出し、この差の正負と大きさから、測定ユニット110の適正な位置からのずれ量を演算する。図5(a)は、測定ユニット110が被検眼Eに遠すぎるためにアライメント状態が不良である場合の前眼部像を示す。図5(c)は、測定ユニット110が被検眼Eに近すぎるためにアライメント状態が不良である場合の前眼部像を示す。図5(a)(c)に示すように、測定ユニット110が被検眼Eに近すぎる場合と遠すぎる場合とには、2つの指標像Tb、Tcは、X軸方向に相対的にずれる。そして、測定ユニット110が被検眼Eに適正な状態から近すぎるか遠すぎるかによって、ずれの正負が異なる。また、適正な状態からの距離に応じて、相対的なずれ量が変化する。そこで、システム制御部401は、2つの指標像Tb、Tcの相対的なずれ量がゼロになるように(3つの指標像Ta、Tb、Tcが垂直方向に並ぶように)、さらにモータ駆動回路413を制御して測定ユニット110を前後方向(Z軸方向)に駆動する。
【0030】
図5(b)に示すように、中心の指標像Taが被検眼Eの角膜Efの中心に位置し、3つの指標像Ta、Tb、Tcが垂直方向に1列に並んだ状態で、システム制御部401はオートアライメントの動作を完了する。
このように、システム制御部401は、指標像Ta、Tb、Tcの位置の検出結果を用いて、アライメント状態を演算し、演算結果に基づいてオートアライメントを行う。
【0031】
なお、上述の説明では、演算したアライメント状態を用いてオートアライメントを実行する構成を示したが、この構成でなくてもよい。たとえば、システム制御部401は、LCDモニタ116に、演算したアライメント状態を表示してもよい。たとえば、アライメント状態として、測定ユニット110の現在の位置から適正な状態となる位置までの距離を表示してもよい。また、測定ユニット110の現在の位置から適正なアライメント状態となる移動方向を示す矢印を表示してもよい。さらに、システム制御部401は、オートアライメントを行うとともに、アライメント状態をLCDモニタ116に表示してもよい。
【0032】
眼屈折力の測定の動作は、次のとおりである。
眼屈折力を測定するにあたり、システム制御部401は、オートアライメントのために光路01に挿入していた拡散板222を光路01から退避させる。そして、システム制御部401は、光源駆動回路412を制御して眼屈折力測定用光源201の光量を調整し、被検眼Eの眼底Erに測定光束を投影する。
眼底Erからの反射光束(眼底像)は光路02を辿り、撮像素子210に至る。眼底像は、被検眼Eの眼屈折力とリング絞り207により、撮像素子210にリング状に投影される。撮像素子210は、投影されたリング状の眼底像(リング像)を撮像する。撮像されたリング像はメモリ408に格納される。
システム制御部401は、メモリ408に格納された眼底像のリング像の重心座標を算出し、楕円の方程式を求める。さらに、システム制御部401は、求めた楕円の長径、短径、及び長径軸の傾きを算出して、被検眼Eのいわゆる予備測定における眼屈折力値を算出する。この予備測定により、被検眼Eが近視か遠視かが判別される。
システム制御部401は、求めた眼屈折力値を参照し、レンズ215をその眼屈折力値に相当する位置まで移動する。これにより、システム制御部401は、被検眼Eの屈折度に相当する屈折度で、固視標216を被検眼Eに呈示する。
その後、システム制御部401は、レンズ215を所定量だけ遠方に移動させて固視標216を雲霧させ、再び眼屈折力測定用光源201を点灯して眼屈折力を測定する。
なお、システム制御部401は、モータ駆動回路413を制御して固視標誘導用モータ224を駆動することによって、レンズ215を移動させる。
このように、システム制御部401は、眼屈折力の測定、固視標216の雲霧、眼屈折力の測定を繰り返す。これにより、眼屈折力が安定する最終の測定値を得ることができる。
【0033】
(指標像選択)
次に、被検眼Eが、人工水晶体が挿入されたIOL挿入眼である場合に、角膜輝点像(指標像)がゴーストではない輝点像を選択する方法について説明する。
図6は、IOL挿入眼での角膜輝点像を示したものである。角膜Efによって反射され、角膜反射による虚像Pができる。角膜Efによって反射されなかった投影光束により、IOL601で反射した実像P’ができる。実像P’は虚像Pより、角膜Efに近い位置にできる。
図7は、IOL挿入眼を撮像素子220で撮像した前眼部像を示す。角膜輝点像は、前述のように指標像Ta、Tb、Tcとして撮像素子220に結像し、IOL601で反射した角膜輝点ゴーストは、指標像Ta’、Tb’、Tc’として撮像素子220に結像する。
角膜頂点とIOL601の頂点は同一軸上にはなく、角膜EfとIOL601との傾きも異なるため、IOL601で反射したIOL反射ゴーストは、角膜輝点像である指標像Taに比べ、IOL601の状態によって、左右上下方向にずれた指標像Ta’となる。また、図6で示したように、IOL601で反射したIOL反射ゴーストは、角膜Efの近い位置に像を結ぶため、角膜輝点像である指標像Ta、Tb、Tcに比べ左側に傾いた指標像Ta’、Tb’、Tc’となる。
IOL反射ゴーストの指標像Ta’、Tb’、Tc’をもとにオートアライメントを行うと、被検眼EとのX,Y,Z位置ともにずれた位置でオートアライメントが完了してしまう。
角膜輝点像の指標像を選択することで、IOL反射ゴーストの指標像をオートアライメントに用いる指標像として誤検知しなくなる。したがって、正確にオートアライメントを行うことができる。
【0034】
図8は、角膜輝点像の指標像選択を行うオートアライメントのフローチャートである。この処理を実行するためのコンピュータプログラムは、あらかじめシステム制御部401のプログラム格納部491に格納されている。そして、システム制御部401の演算処理部494は、このコンピュータプログラムをプログラム格納部491から読み出して実行する。これにより、以下に示す処理が実現する。
【0035】
ステップS01では、このオートアライメントの処理を開始する。このオートアライメントの処理の開始に先立ち、検者は被検者に顎受け112に顎を乗せさせ、被検眼EのY軸方向の位置が所定の高さになるように、顎受駆動機構113により調整する。具体的には、検者は、被検眼Eの角膜像がLCDモニタ116に表示されるように、ジョイスティック101を操作して測定ユニット110の位置を移動させる。その後、検者は、測定開始スイッチ404を押下する。測定開始スイッチ404が押下されると、システム制御部401は、オートアライメントを開始する。
【0036】
ステップS02では、システム制御部401は、光源駆動回路412を制御して、第1の投影手段の一例である眼屈折力測定用光源201を点灯させ、被検眼Eに対して光束を投影する。そして、撮像素子220は、投影した光束の被検眼Eからの反射光束を検出することによって、被検眼Eの前眼部を撮像する。撮像した前眼部像は、メモリ408に格納される。以上の眼屈折力測定用光源201、撮像素子220、及びこれらに付随する構成により、オートアライメント用の光学系が構築される。
【0037】
ステップS03では、システム制御部401は、メモリ408に格納された被検眼Eの前眼部像から、第2の投影手段である前眼部照明用光源221a、221bによる角膜反射輝点像221a’、221b’を検出する。図9は、メモリ408に格納された被検眼Eの前眼部像の一例を模式的に示す図である。そして、システム制御部401は、検出した角膜反射輝点像221a’、221b’の中点の位置(CX,CY)を算出する。算出には、次の式(1)が用いられる。

(CX,CY)=((Xm+Xn)/2,(Ym+Yn)/2) 式(1)
【0038】
ステップS04では、システム制御部401は、メモリ408に格納された被検眼Eの前眼部像から、アライメントプリズム223で分割された光束により形成される3点の指標像を検出する。角膜輝点像の指標像の候補として、角膜輝点像の指標像Ta、Tb、Tcと、IOL反射ゴーストの指標像Ta’、Tb’、Tc’の2つが検出される。被検眼Eからの反射光束に基づいた以上の複数の輝点像の検出は、システム制御部401中の検出手段の一例であるモジュール領域により実行される。
指標像Taに対して、アライメントプリズム223で分割された指標像Tb、Tcは所定の高さ、左右位置にあるため、検出範囲を限定して検出することができる。
【0039】
角膜輝点像検出方法の一例を示す。
第1の段階として、角膜輝点像の中心輝点像(指標像Ta)を検出する。
第2の段階として、上側輝点像(指標像Tb)を検出する。上側輝点像(指標像Tb)は、中心輝点像(指標像Ta)に対して所定の高さ位置で所定の範囲の左右方向に位置するため、検出範囲を限定することで検出できる。
第3の段階として、下側輝点像(指標像Tc)を検出する。下側輝点像(指標像Tc)は、上側輝点像(指標像Tb)と中心輝点像(指標像Ta)を通過する直線上に位置し、上側輝点像(指標像Tb)に対して所定の高さに位置する。このため、検出範囲を限定することで検出できる。
【0040】
なお、第1の段階では、角膜輝点像の中心輝点像候補として、指標像Tb、Tcも検出される。しかしながら、中心輝点像候補として指標像Tbまたは指標像Tcが検出された場合には、第2の段階または第3段階で上側輝点像または下側輝点像が検出されない。このため、第2の段階で上側輝点像が検出されない場合、または第3の段階で下側輝点像が検出されない場合には、システム制御部401は、第1の段階で検出された輝点像は中心輝点像(指標像Ta)ではないと判定する。したがって、指標像Taが中心輝点像として検出され、指標像Tb、Tcは中心輝点像として検出されない。
このような検出方法を用いることにより、角膜輝点像(指標像)を3点とも精度よく検出することができる。
【0041】
ステップS05では、システム制御部401は、これら複数の角膜輝点像である指標像において何れの像をオートアライメントに用いるかの判定を行う。
前述したように、IOL反射ゴーストの指標像Ta’(Xa’,Ya’)は、角膜輝点像の指標像Ta(Xa,Ya)と、IOL601の状態に応じてX座標、Y座標とも異なる位置に現れる。指標像Taと、前眼部照明用光源221a、221bによる角膜反射輝点像221a’、221b’の中点Cとは、ともに角膜反射する像である。さらに、これらが同一位置となるように、前眼部照明用光源221a、221bが配置されている。このため、中点Cと角膜輝点像の指標像Taとの距離Dと、中点CIOL反射ゴーストの指標像Ta’の距離D’は、D<D’となる。そこで、システム制御部401は、検出された複数の指標像のそれぞれについて、中点Cからの距離を算出し、算出した距離を比較する。そして、システム制御部401は、中点Cとの距離の近い方の指標像を、オートアライメントに使用すると判定する。選択手段の一例であるシステム制御部401は、このようにして、複数の指標像から、オートアライメントに使用する指標像を選択する。なお、中点Cと角膜輝点像の指標像Taとの距離Dと、中点CIOL反射ゴーストの指標像Ta’の距離D’は、次式(2)(3)により算出される。

D =((CX−Xa)2+(CY−Ya)21/2 式(2)
D’=((CX−Xa’)2+(CY−Ya’)21/2 式(3)
【0042】
ステップS06では、システム制御部401は、選択した角膜輝点像の指標像Ta(Xa、Xb)のXY軸方向位置を算出する。また、システム制御部401は、角膜輝点像の指標像Tb、TcのX座標の差(Xb−Xc)から、Z軸方向位置を算出する。そして、システム制御部401は、算出したXYZ軸方向位置と、XY軸方向についての光軸(画像の中心)とのずれを算出し、Z軸方向について適正な距離からのずれ量を算出する。以上の処理は、システム制御部401において、検出した複数の輝点像から被検眼と光学系とのアライメント状態を演算する演算手段の一例であるモジュール領域により実行される。
【0043】
ステップS07では、システム制御部401は、ステップS06で算出したXYZ位置が、アライメント完了許容範囲内(アライメント状態が適正な状態であるとみなせる許容範囲内)に含まれているか否かを判定する。そして、含まれていれば、システム制御部401は、オートアライメント完了と判断する。XYZ位置がアライメント完了許容範囲内に含まれない場合は、ステップS08に進む。
【0044】
ステップS08では、システム制御部401は、モータ駆動回路413を制御し、ステップS06で算出したXYZ方向のずれ量分について、XYZ方向にX軸駆動モータ103、Y軸駆動モータ104、Z軸駆動モータ108を駆動する。モータ駆動後、ステップS02に戻り、ステップS02以下の処理を行う。そして、ステップS07においてアライメント完了と判定されるまで、この処理を繰り返す。
【0045】
なお、演算したアライメント状態を表示する場合には、システム制御部401は、ステップS06で算出したずれ量(現在の位置から適正な状態となる位置までの距離)を、アライメント状態としてLCDモニタ116に表示する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、被検眼EがIOL挿入眼である場合であっても、IOL反射ゴーストではない本来の角膜輝点像の指標像を正しく選択できる。このため、アライメントに要する手間の削減と時間の短縮を図ることができる。したがって、測定において検者及び被検者の負担を軽減できる。また、正しく選択された角膜輝点像の指標像をオートアライメントに用いることにより、IOLが挿入された被検眼に対して、正確に自動でアライメント(オートアライメント)を行うことができる。すなわち、IOL反射ゴースト指標像の誤検出をなくし、オートアライメントが正常に完了することができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、中点CとのX、Y座標の距離で選択を行ったが、X座標またはY座標のみの距離で選択してもよい。また、中点Cから所定の範囲を設定し、角膜輝点像の中心の指標像Taが範囲内にあるかどうかで選択を行ってもよい。
また、上記説明では、IOL反射ゴーストが1つ発生した場合を想定したが、複数のIOL反射ゴーストが発生した場合も同様の効果を得ることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、前記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
たとえば、前記実施形態においては、眼科装置として眼屈折力計を示したが、眼科装置は眼屈折力計に限定されない。本発明は、徹照観察可能な装置であれば、眼科撮影装置や眼軸長測定装置、OCTなど眼屈折力測定装置以外の眼科測定装置においても本発明のIOL眼選択を適用可能である。
【0049】
(その他の実施形態)
上述した実施形態の目的は、次のような方法によっても達成される。すなわち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体(または記録媒体)を、システムあるいは装置に供給する。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、本発明には次のような場合も含まれる。すなわち、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される。
【0050】
さらに、次のような場合も本発明に含まれる。すなわち、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、被検眼の眼特性の測定または被検眼の撮影の眼科装置と、この眼科装置のアライメント方法に好適な技術である。
【符号の説明】
【0052】
E:被検眼、201:光源、210:撮像素子、220:撮像素子、221a,221b:外眼照明光源、223:アライメントプリズム絞り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9