【実施例1】
【0013】
まず
図1乃至
図10を用いカラー画像形成装置(以下画像形成装置と略して称する)の構成を説明し、その次に
図11〜
図13を用い微少露光に係る制御動作について説明する。
【0014】
(画像形成装置断面の概略図)
図1は画像形成装置断面の概略を示す図である。
図1を用いて本実施例の画像形成装置の構成及び動作を説明する。まず、画像形成装置は、第1〜第4(a〜d)の画像形成ステーションより構成される。ここで、第1はイエロー(以下、Yと称する)、第2はマゼンタ(以下、Mと称する)、第3はシアン(以下、Cと称する)、第4はブラック(以下、Bkと称する)である。各画像形成ステーションa〜dは感光ドラムの寿命に係る情報として感光ドラム1a〜1dの積算回転数を記憶する不図示の記憶部材(メモリタグ)を夫々備えている。尚、色ごとに説明する必要がある場合を除き適宜a〜dの符号は省略する。また、各画像形成ステーションは画像形成装置本体に対して交換可能になっている。また各画像形成ステーションには少なくとも感光ドラム1が含まれていれば良く、どの部材までを画像形成ステーションに含め交換可能とするかについては特に限定されるものでない。
【0015】
以下においては各画像形成ステーションの代表として第1の画像形成ステーション(Y)aの動作を例に説明を行う。また、画像形成ステーションaは、感光体として感光ドラム1aを備え、この感光ドラム1aは矢印の方向に所定の周速度(以下、プロセススピードとする)で回転駆動される。この感光ドラム1aの周速度(感光ドラム1の表面速度)は、略中間転写ベルト10の移動速度と等しく、転写速度等とも換言できる。また、2次転写ローラ20の周速度や、記録材Pの移動速度とも換言することができる。感光ドラム1aはこの回転過程で、帯電ローラ2aにより所定の極性の帯電電位Vdに一様に帯電される。次いで外部から供給される画像データ(画像信号)に基づく露光手段としての露光装置31aのレーザ光6aの走査によって、感光ドラム1a表面の画像部を露光量E(μJ/cm
2)で露光して電荷を除電し、感光ドラム1a表面に露光電位Vl(VL)を形成する。また、露光装置31aは、レーザ光6aの走査により、感光ドラム1a表面の非画像部を露光量Ebg(μJ/cm
2)(Ebg<E)で微少露光して、微小露光後の帯電電位Vd_bgを形成する。次いで、画像部である露光電位Vl(VL)部には、第1の現像手段である現像器(イエロー現像器)4aに印加される現像電位Vdcと露光電位Vl(VL)との電位差によりトナーが付着し(現像)、可視化される。非画像部である電位Vd_bgの部分は、現像電位Vdcとの関係でトナーが付着しにくい電位(正かぶり、反転かぶりの発生しにくい電位)となっているため、トナーは付着しない。具体的に帯電電位Vdは大凡−700V〜−600V、微小露光後の帯電電位Vd_bgは大凡−550V〜−400V、現像電位Vdcは大凡−350V、露光電位Vlは大凡−150Vに設定される。尚、本実施例の画像形成装置は、露光装置31aによりイメージ露光を行い、露光部にトナーを現像する反転現像方式の画像形成装置である。
【0016】
中間転写ベルト10は、張架部材11、12、13により張架され、感光ドラム1aと当接している。この中間転写ベルト10は、当接位置において、感光ドラム1aと同方向且つ略同一の周速度で回転駆動する。感光ドラム1a上に形成されたイエロートナー像は、次のようにして転写される。即ち、イエロートナー像が感光ドラム1aと中間転写ベルト10との当接部(以下、1次転写ニップ部と称す)を通過する過程で、1次転写電源15aより1次転写ローラ14aに印加した1次転写電圧によって、中間転写ベルト10の上に転写される(1次転写)。感光ドラム1a表面に残留した1次転写残トナーは、クリーニング手段であるドラムクリーナ5aにより清掃、除去される。そしてそれ以後、上に説明した帯電以下の画像形成プロセスが繰り返し行われる。同様にして第2色のマゼンタトナー像(M)、第3色のシアントナー像(C)、第4色のブラックトナー像(Bk)が形成され、中間転写ベルト10上に順次重ねて転写されて、合成カラー画像が得られる。
【0017】
中間転写ベルト10上の4色のトナー像が中間転写ベルト10と2次転写ローラ20との当接部(以下、2次転写ニップ部と称す)を通過する過程で、2次転写電源21は2次転写ローラ20に2次転写電圧を印加する。これにより、中間転写ベルト10上の4色のトナー像は、給紙ローラ50から給紙された記録材Pの表面に一括転写される。その後、4色のトナー像を担持した記録材Pは定着器30に導入され、そこで加熱及び加圧されることで4色のトナーが溶融混色して記録材Pに固定される。以上の動作により、フルカラーのトナー画像が記録媒体上に形成される。また、中間転写ベルト10の表面に残留した2次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置16により清掃・除去される。
【0018】
(感光ドラムの感度特性)
図2は感光ドラム1の感光特性を示すEVカーブの一例であり、横軸を露光量E(μJ/cm
2)、縦軸を感光ドラム1の電位(感光ドラム電位)(V)としたグラフである。尚、Vcdcは帯電電圧であり、このグラフは帯電電圧Vcdcとして−1100Vを印加した場合のものである。
図2は、表面をVに帯電させた帯電後の感光ドラム1に対して、感光ドラム表面上で露光量がE(μJ/cm
2)となる様に、レーザ光で露光した場合の電位減衰を示している。このEVカーブは、露光量Eを増やすことで、より大きな電位減衰が得られることを示している。また、高電位部では強電界の環境であり、露光により発生した電荷キャリア(電子―正孔対)の再結合が発生しにくいため小さな露光量でも大きな電位減衰を示す。他方、低電位部では発生キャリアが再結合しやすいため大きな露光量の露光に対しても電位減衰が小さいという現象が見られる。また、同図においては、感光ドラムを使用し始めた初期の段階のEVカーブと、感光ドラムを使用し続けたときのEVカーブと、が夫々示されている。
図2中、破線のカーブが、例えば感光ドラムの回転数rが75000≦r<112500のEVカーブである。尚、
図2に示される感光ドラムの感度特性は一例であり、様々なEVカーブをもった感光ドラムの適用が本実施例において想定される。
【0019】
(帯電・現像高圧電源52について)
次に、
図3を用いて帯電・現像高圧電源について説明する。
図3(a)、(b)は帯電・現像高圧電源の一例である。
図3(a)の例では、複数色の夫々に対応した帯電ローラ2a〜2d及び複数色の夫々に対応した現像ローラ43a〜43dが帯電・現像高圧電源52に接続されている。帯電・現像高圧電源52は、一のトランス53から出力された帯電電圧Vcdc(電源電圧)を帯電ローラ2a〜2dに供給し、また2本の抵抗素子R3、R4で分圧した現像電圧Vdcを現像ローラ43a〜43dに供給している。
図3の電源回路においては、電源システムを簡略化しているため、各ローラへ入力(印加)する電圧を所定の関係を維持させたまま一括して調整することができる。一方で、色間で独立した個別調整(個別制御)を行うことができない。また、現像ローラ43についても同様である。
【0020】
ここで抵抗素子R3、4は、固定抵抗、半固定抵抗、可変抵抗のいずれによって構成してもよい。また、図中では、トランス53からの電源電圧自体を帯電ローラ2a〜2dに直接入力し、トランス53から出力される電圧を固定の分圧抵抗により分圧した分圧電圧を現像ローラ43a〜43dに直接入力している。しかしながら、これは一例であり、この電圧入力形態に限定されない。個々のローラ(帯電手段や現像手段)への様々な電圧入力形態が想定される。
【0021】
例えば、トランス53からの出力自体にかわり、次のようにしてもよい。即ち、トランス53からの出力をコンバータによりDC−DC変換した変換電圧(変換後電圧)や、電源電圧や変換電圧を固定の電圧降下特性を持った電子素子により分圧及び又は降圧した電圧を帯電ローラ2a〜2dに入力してもよい。また、トランス53からの出力をコンバータによりDC−DC変換した変換電圧や、電源電圧や変換電圧を固定の電圧降下特性を持った電子素子により分圧及び又は降圧した電圧を現像ローラ43a〜43dに入力してもよい。ここで、固定の電圧降下特性を持った電子素子としては、例えば抵抗素子、ツェナーダイオードなどを例にあげることができる。また、コンバータには可変レギュレータなども含まれる。また、電子素子により分圧及び又は降圧するとは、例えば分圧した電圧を更に降圧したり、またその逆の場合なども含むものとする。
【0022】
一方、帯電電圧Vcdcを略一定に制御するため、帯電電圧VcdcをR2/(R1+R2)で降圧させた負電圧を、基準電圧Vrgvにより正極性の電圧にオフセットさせモニター電圧Vrefとし、それが一定値になるようフィードバック制御を行っている。具体的には、エンジンコントローラ122(CPU)(
図5参照)で予め設定されたコントロール電圧Vcをオペアンプ54の正端子に入力し、他方、モニター電圧Vrefを負端子に入力する。エンジンコントローラ122は、その都度の状況により、適宜コントロール電圧Vcを変更する。そして、モニター電圧Vrefがコントロール電圧Vcと等しくなるようオペアンプ54の出力値がトランス53の制御・駆動系をフィードバック制御する。これによりトランス53から出力される帯電電圧Vcdcが目標値になるように制御される。尚、トランス53の出力制御について、オペアンプ54の出力をCPUへ入力し、CPUによる演算結果をトランス53の制御・駆動系に反映するようにしてもよい。本実施例では、帯電電圧Vcdcが−1100V、現像電圧Vdcが−350Vになるように制御が行われる。そしてこの制御のもと、帯電ローラ2a〜2dが、感光ドラム1a〜1d表面を、帯電電位Vdで一様に帯電する。
【0023】
また、
図3(b)に別の帯電・現像高圧電源例を示す。
図3(a)と同一部材には同一符号を付し説明を省略する。
図3(b)ではYMC色の画像形成ステーション用の帯電・現像高圧電源90とBk色の画像形成ステーション用の帯電・現像高圧電源91のように電源を少なくとも2つに分けている。そして、フルカラーモードで画像形成を行っている場合は、帯電・現像高圧電源90及び91をオンとする。一方、モノカラーモードでの画像形成を行っている場合は、YMC色の画像形成ステーション用の帯電・現像高圧電源90は動作せず(オフ)、一方、Bk色の画像形成ステーション用の帯電・現像高圧電源91はオンとなる。
図3(b)の場合、YMC色の画像形成ステーション用の帯電・現像高圧電源90について
図3(a)と同様のことがいえる。
【0024】
このように、
図3(a)、(b)の帯電・現像高圧電源によれば、複数の帯電ローラや現像ローラに関して、高圧電源が共通化されており、より一層の装置の小型化を実現できる。また、各色毎に出力電圧が可変のトランスを設け、各帯電ローラや各現像ローラへの入力電圧を個別に制御する場合に比べてコストを抑えることができる。また、各帯電ローラや各現像ローラに対してDC−DCコンバータ(可変レギュレータ)を設け、それにより一のトランスからの出力を各帯電ローラや現像ローラ向けに個別に制御する場合と比べてもコストを抑えることができる。
【0025】
<光走査装置外観図>
図4に光走査装置の代表的な外観図を示す。発光素子(光源)であるレーザダイオード107(以下LD107と称する)には、レーザ駆動システム回路130の作動により駆動電流が流れる。LD107は、駆動電流に応じた強度レベルでレーザ光を発光する。レーザ駆動システム回路130(以下LDドライバ130と称する)は、後述のエンジンコントローラ122、ビデオコントローラ123に対して、電気的に接続されているLD107を駆動するための回路である。そして、LD107により発光されたレーザ光は、コリメータレンズ134によりビーム形状が整形され、かつ平行ビームとされたうえでポリゴンミラー133により感光ドラム1の水平方向に走査される。そして走査されたレーザ光は、fθレンズ132により、回転軸を中心に矢印方向に回転する感光ドラム1表面上に結像されてドット状に露光される。
【0026】
一方、感光ドラム1の一端側の走査位置に対応して反射ミラー131が設けられ、走査開始位置に投射されるレーザ光をBD同期検出センサ121(以下、BD検出センサという)に向けて反射させている。そして、このBD検出センサ121の出力により、レーザ光の走査開始タイミングを決定する。ここで、このレーザ光の検出における強制発光の際に、レーザ光量を所望の光量にする自動光量制御であるところの、APC(Auto Power Control)が行われ、レーザの発光レベルが調整される。
【0027】
<レーザ駆動システム回路図>
図5は、感光ドラム1の非画像部において、感光ドラム1上にトナー付着をさせないようにし、且つ正かぶりや反転かぶりを発生させないように微少発光するうえで、LD107の光量レベルを自動的に調整するレーザ駆動システム回路である。
図5において、
図4で示したLDドライバ130が、点線130a枠内で囲まれた部分に相当する。また、図中の130b乃至dの点線枠内の構成も点線130a枠内と同様とし、130a乃至dの点線枠内の構成は、カラー画像形成装置における各色のLDドライバに対応する。以下においては特定色のLDドライバ130の構成について説明を行っていくが、他の色のLDドライバ130も同様の構成とし重複する説明を省略する。以下、
図5の説明を行っていく。
【0028】
LDドライバ130は、PWM平滑化回路140、150(一点鎖線)、コンパレータ回路101、111、サンプル/ホールド回路102、112、ホールドコンデンサ103、113を有する。また、LDドライバ130は、電流増幅回路104、114、基準電流源(定電流回路)105、115、スイッチング回路106、116、電流電圧変換回路109を有する。尚、以下においては、フォトダイオード108をPD108と称する。また、後述にて詳しく説明するが101乃至106の部分が第1電流調整部としての第1光強度調整部に相当し、111乃至116の部分が第2電流調整部としての第2光強度調整部に相当する。そして、後述する通常のプリント用の発光レベル(第1発光量)及び微少発光用の発光レベル(第2発光量)の夫々は、各発光量を調整する調整手段としての第1光強度調整部及び第2光強度調整部により独立して制御可能である。
【0029】
エンジンコントローラ122は、ASIC、CPU、RAM及びEEPROMを内蔵している。またエンジンコントローラ122は、プリンタエンジンの制御のみならず、ビデオコントローラ123との通信制御なども行う。
【0030】
また、エンジンコントローラ122は、PWM信号PWM1をPWM平滑化回路140に出力する。PWM平滑化回路140は、インバータ回路141、抵抗142、144、コンデンサ143から構成されており、インバータ回路141はPWM信号PWM1を反転する。インバータ回路141の出力は、抵抗142を介してコンデンサ143を充電し、コンデンサ143によって平滑化され、電圧信号となる。そして、平滑化された電圧信号は、コンパレータ回路101の端子に、基準電圧Vref11として入力される。このように、基準電圧Vref11は、PWM信号PWM1の信号のパルス幅によって決定され、エンジンコントローラ122によって制御される。
【0031】
エンジンコントローラ122は、PWM信号PWM2をPWM平滑化回路150に出力する。PWM平滑化回路150は、インバータ回路151、抵抗152、154、コンデンサ153から構成されており、インバータ回路151はPWM信号PWM2を反転する。インバータ回路151の出力は、抵抗152を介してコンデンサ153を充電し、コンデンサ153によって平滑化され、電圧信号となる。そして、平滑化された電圧信号は、コンパレータ回路111の端子に、基準電圧Vref21として入力される。このように、基準電圧Vref21は、PWM信号PWM2の信号のパルス幅によって決定され、エンジンコントローラ122によって制御される。尚、基準電圧Vref11、Vref21の両方において、エンジンコントローラ122からPWM信号を指示せずに、直接出力してもよい。
【0032】
OR回路124は、エンジンコントローラ122のLdrv信号とビデオコントローラ123からのVIDEO信号が入力端子に入力されており、Data信号は後述のスイッチング回路106へ出力されている。尚、VIDEO信号は、外部に接続されたリーダースキャナや、ホストコンピュータ等の外部機器から送られてくるプリントデータに基づく信号である。ここでVIDEO信号について詳しく説明すると、VIDEO信号は、例えば8ビット(=256階調)の多値信号(0〜255)の画像データで駆動され、レーザ発光時間を決めるための信号である。画像データが0(背景部)のときのパルス幅はPW
MIN(例えば1画素分の0.0%)、255の時はフル露光でパルス幅は1画素分(PW
255)となる。また1〜254の値の画像データに対しては、例えばPW
MINとPW
255との間で、階調値に比例したパルス幅(PW
n)が生成され式(1)で表される。尚、下記の式(1)は0〜255の任意の階調値に対応したものとなっている。
PW
n=n×(PW
255―PW
MIN)/255+PW
MIN・・・式(1)
【0033】
尚、レーザダイオード107を制御するための画像データが8ビット(=256階調)である場合は一例であり、画像データを例えば中間調処理後の4ビット(=16階調)や2ビット(4階調)の多値信号としてもよい。また中間調処理後の画像データは二値化された信号であってもよい。
【0034】
ビデオコントローラ123から出力されるVIDEO信号は、イネーブル端子(ENB)付きバッファ125に入力され、バッファ125の出力はOR回路124に入力されている。このときイネーブル端子は、エンジンコントローラ122からのVenb信号が出力される信号線に接続されている。
【0035】
また、エンジンコントローラ122は、後述のSH1信号、SH2信号、Base信号Ldrv信号、及びVenb信号を出力する。Venb信号は、VIDEO信号に基づくData信号にマスク処理を施すためのものであり、このVenb信号をディスエーブル状態(オフ状態)にすることで画像マスク領域のタイミング(画像マスク期間)を作成できる。
【0036】
コンパレータ回路101、111の正極端子には、夫々第1の基準電圧Vref11、第2の基準電圧Vref21が入力されており、コンパレータ回路101、111の出力は夫々サンプル/ホールド回路102、112に入力されている。基準電圧Vref11は、通常のプリント用の発光レベル(第1発光レベル或いは第1光量)でLD107を発光させるための目標電圧として設定されている。また、基準電圧Vref21は、微少発光用の発光レベル(第2発光レベル或いは第2光量)の目標電圧として設定されている。サンプル/ホールド回路102、112には夫々ホールドコンデンサ103、113が接続されている。サンプル/ホールド回路102、112の出力は、夫々電流増幅回路104、114の正極端子に入力されている。
【0037】
電流増幅回路104、114には夫々基準電流源105、115が接続されており、その出力はスイッチング回路106、116に入力されている。他方、電流増幅回路104、114の負極端子には、夫々第3の基準電圧Vref12、第4の基準電圧Vref22が入力されている。ここで先に説明したサンプル/ホールド回路102の出力電圧と基準電圧Vref12との差分に応じて電流Io1(第1駆動電流)が決定される。またサンプル/ホールド回路112の出力電圧と基準電圧Vref22との差分に応じてIo2(第2駆動電流)が決定される。即ち、Vref12、Vref22は、電流を決定するための電圧設定である。
【0038】
スイッチング回路106は、パルス変調データ信号であるData信号によりオン・オフ動作する。スイッチング回路116は、入力信号Baseによりオン・オフ動作する。スイッチング回路106、116の出力端子は、LD107のカソードに接続されており、駆動電流Idrv、Ibを供給している。LD107のアノードは、電源Vccに接続されている。LD107の光量をモニターするフォトダイオード108(以下、PD108とする)のカソードは、電源Vccに接続されており、PD108のアノードは電流電圧変換回路109に接続されてモニター電流Imを電流電圧変換回路109に流す。これにより、電流電圧変換回路109は、モニター電流Imをモニター電圧Vmに変換する。このモニター電圧Vmはコンパレータ回路101、111の負極端子に不帰還入力されている。
【0039】
尚、
図5では、エンジンコントローラ122とビデオコントローラ123とを別々に示しているが、その形態に限定されるわけではない。例えば、エンジンコントローラ122とビデオコントローラ123との一部或いは全部を同じコントローラで構築してもよい。また、図中点線枠で囲まれたLDドライバ130についても、例えば、エンジンコントローラ122に一部或いは全てを内蔵させてもよい。
【0040】
●P(Idrv)のAPCの説明
エンジンコントローラ122は、SH2信号の指示により、サンプル/ホールド回路112をホールド状態(非サンプリング期間中)に設定するとともに、スイッチング回路116を入力信号Baseによりオフ動作状態にする。また、エンジンコントローラ122は、SH1信号の指示により、サンプル/ホールド回路102をサンプリング状態に設定し、スイッチング回路106をData信号によりオンとする。より詳細には、このとき、エンジンコントローラ122は、Ldrv信号を制御(指示)し、Data信号をLD107の発光状態になるように設定している。尚、このサンプル/ホールド回路102が、サンプリング状態にある期間がAPC動作中に相当する。
【0041】
この状態で、LD107が全面発光状態になると、PD108は、LD107の発光強度(発光量)をモニターし、その発光強度に比例したモニター電流Im1が流れる。そして、モニター電流Im1を電流電圧変換回路109に流すことにより、電流電圧変換回路109はモニター電流Im1をモニター電圧Vm1に変換する。また、このモニター電圧Vm1が、目標値である第1の基準電圧Vref11と一致するように、電流増幅回路104が基準電流源105に流れるIo1をもとに駆動電流Idrvを制御する。
【0042】
尚、非APC動作中、即ち通常の画像形成時には、サンプル/ホールド回路102がホールド期間中(非サンプリング期間中)になり、Data信号に応じてスイッチング回路106がオン・オフ動作し、駆動電流Idrvにパルス幅変調を与える。
【0043】
●P(Ib)のAPCの説明
一方、エンジンコントローラ122はSH1信号の指示により、サンプル/ホールド回路102をホールド状態(非サンプリング期間中)に設定するとともに、スイッチング回路106をData信号によりオフ動作状態にする。このData信号に関し、エンジンコントローラ122は、イネーブル端子付きバッファ125のイネーブル端子に接続されているVenb信号をディスエーブル状態にし、且つLdrv信号を制御し、Data信号をオフ状態とする。また、エンジンコントローラ122は、SH2信号の指示により、サンプル/ホールド回路112をサンプリング状態、即ちAPC動作中に設定し、スイッチング回路116を入力信号Baseによりオンとし、LD107が微少発光状態となるように設定する。
【0044】
この状態で、LD107が光量の弱い状態での全面微少発光状態(点灯維持状態)になると、PD108は、LD107の発光強度をモニターし、その発光強度に比例したモニター電流Im2(Im1>Im2)が流れる。そして、モニター電流Im2を電流電圧変換回路109に流すことにより、電流電圧変換回路109はモニター電流Im1をモニター電圧Vm2に変換する。また、このモニター電圧Vm2が、目標値である第2の基準電圧Vref21と一致するように、電流増幅回路114が基準電流源115に流れるIo2をもとに駆動電流Ibを制御する。
【0045】
そして、非APC動作中、即ち通常の画像形成時(画像信号が送られている時間)には、サンプル/ホールド回路112がホールド期間中(非サンプリング期間中)になり、光量が弱い状態での全面微少発光状態が維持される。
【0046】
尚、トナーの正かぶり/反転かぶり等を無視すれば、微少発光におけるレーザ発光量を、帯電電位が現像電位よりも下回らない程度に適当な強度のレーザ発光量(強度)に設定すればよいが、そのようにする訳にはいかない。即ち、トナーの正かぶり/反転かぶり等を考慮した場合に、画像形成中において、常にP(Ib)の光量を安定させる必要がある。
【0047】
●微少発光レベルの説明
上述の説明において、全面微少発光状態時の駆動電流Ibは、
図6(a)に示すLD107の閾値電流Ithを超え、微少発光レベルP(Ib)となるように設定される。
図6(a)は、各レーザ発光強度と各電流値との関係を示すグラフである。尚、微少発光レベルP(Ib)とは、微小発光用の発光レベル(第2発光量)のことで、そのレベルでレーザ照射されても感光ドラムにトナー等の現像材が実質的に帯電付着しない(顕像化されない)発光強度のレベルで、且つトナーかぶり状態を良好にするための発光強度のレベルを意味する。つまり、微小発光用の発光レベルP(Ib)とは、感光ドラム1の表面の非画像部を露光量Ebg(μJ/cm
2)で露光することにより、微小露光後の帯電電位Vd_bgを形成するためのLD107の発光量(W)(単位時間当たりに発する光量)である。また、発光レベルP(Ib)の発光強度は、LD107がレーザ発光する発光強度であるとする。仮に、このときの発光レベルP(Ib)の発光強度がレーザ発光に満たないLED発光の発光強度だった場合、スペクトルの波長分布が大きく拡がり、レーザの定格の波長に対して広い波長分布になる。このため、感光ドラムの感度が乱れ、表面電位が不安定になってしまう。従って、発光レベルP(Ib)の発光強度は、LD107がレーザ発光する発光強度である必要がある。
【0048】
一方、通常の画像形成時は、駆動電流Idrv+Ibを、プリントレベルP(Idrv+Ib)の強度となる発光レベルになるように設定する。尚、プリントレベルP(Idrv+Ib)とは、プリント用の発光レベル(第1発光量)のことで感光ドラムへの現像材の帯電付着が飽和状態となる発光強度のレベルを意味する。つまり、プリントレベルP(Idrv+Ib)とは、感光ドラム1の表面の画像部を露光量E(μJ/cm
2)で露光することにより、露光電位Vlを形成するためのLD107の発光量(W)である。
【0049】
ここで、
図3で説明したVcdc(帯電電圧)は、環境や感光ドラムの劣化(使用状況)等によって可変に設定される。そして、画質維持の観点から、目標とする微少発光用の発光レベルP(Ib)の光量(第2発光レベルの強度)もそれに応じて可変に設定する必要がある。例えばVdcdの値が大きくなったら、微少発光レベルEbgの光量も大きくなり、他方、Vdcdの値が小さくなったら微少発光レベルEbgの光量も小さくなる。詳細については後述する。
【0050】
●P(Ib+Idrv)発光の説明
そして通常のプリント用の発光レベルでLD107を発光させるときには、以下のように
図5の回路を動作させる。即ち、サンプル/ホールド回路112をホールド期間に設定し、スイッチング回路116をオン動作させるとともに、サンプル/ホールド回路102をホールド期間に設定し、スイッチング回路106をオン動作させる。これにより駆動電流Idrv+Ibが供給される。また、スイッチング回路106のオフ状態で駆動電流Ibの微少発光レベルP(Ib)とすることができる。
【0051】
後述にて詳しく説明するが、プリントレベルP(Idrv+Ib)は、微少発光レベルP(Ib)に対して、パルス幅変調によるPWM発光レベルP(Idrv)を重畳した発光強度(発光強度)となる。より具体的には、SH2、SH1がホールド期間設定で且つBase信号がオンの設定状態で、且つエンジンコントローラ122がVenb信号をイネーブル状態に設定した場合おいて、Data信号(VIDEO信号)によるスイッチング回路106のオン・オフ動作がなされる。これにより駆動電流でIb〜Idrv+Ib間、即ち発光強度でP(Ib)〜P(Idrv+Ib)間の2水準の発光が可能となる(
図6(a)矢印参照)。更にP(Idrv+Ib)の光量においては、パルスデューティーに従う時間でのレーザ発光がP(Ib)をベースに行われている。
【0052】
このように
図5の回路を動作させることで、エンジンコントローラ122は、LD107の微少発光レベルのAPCを行い、また、微少発光レベルP(Ib)で発光させることが可能となる。また、ビデオコントローラ123より送出されるVIDEO信号によるData信号により、レーザ発光領域における第1のレベルであるプリントレベルP(Idrv+Ib)の発光を行うことが可能となり、2水準の発光レベルを有することが可能となる。
【0053】
<別のレーザ駆動システム回路図>
図7の回路は、
図5の回路に対して、バイアス電流Ibiasを流す抵抗Rbを追加した点が異なる。このバイアス電流Ibiasは、LD107の閾値電流Ithより小さく設定され、レーザ発光領域でない(通常LED発光領域と呼ばれる)範囲で設定する。各レーザ発光強度と各電流値との関係を
図6(b)に示す。バイアス電流の効果に関しては、様々な文献により紹介されているようにLD107の立ち上がり特性の改善などである。
【0054】
図7の回路において、SH2信号によりサンプル/ホールド回路112をホールド状態にし、スイッチング回路116をオン動作することで、LD107に駆動電流(Ib+Ibias)を供給する。
図7の回路では、このときに、LD107が、微少発光レベル発光強度P(Ib+Ibias)で発光する。このとき発光レベルP(Ib+Ibias)はレーザ発光領域とする。また、更にSH1信号によりサンプル/ホールド回路102がホールド期間に設定し、Data信号により、スイッチング回路106をオン動作させ駆動電流Idrvを更に供給させる。これにより、合わせて駆動電流(Idrv+Ib+Ibias)が供給され、通常のプリント用の発光レベルP(Idrv+Ib+Ibias)の発光が行われる。
【0055】
このように、LD107は、スイッチング回路106のオン・オフ動作で、プリントレベルP(Idrv+Ib+Ibias)の発光強度で発光及び駆動電流(Ib+Ibias)の微少発光レベルP(Ib+Ibias)を切り替えて発光する。より具体的には、SH2、SH1がホールド期間設定で且つBase信号がオンの設定状態で、且つエンジンコントローラ122は、Venb信号をイネーブル状態にし、VIDEO信号によるData信号によりスイッチング回路106のオン・オフを動作させる。これにより駆動電流で(Ib+Ibias)〜(Idrv+Ib+Ibias)間、即ち発光強度でP(Ib+Ibias)〜P(Idrv+Ib+Ibias)間の2水準の発光状態でPWMレーザ発光が可能となる(
図6(b)矢印参照)。
【0056】
<2水準APCシーケンス>
次に、レーザの発光レベルを維持するAPCに係る各種処理の実行タイミングについて説明する。
図8はレーザ走査に係るタイミングチャートの一例である。まず、タイミングtsにおいて、エンジンコントローラ122は、SH1信号及びLdrv信号をオンとし、スイッチング回路106をオンにする。尚、「タイミングts」のような記載について、以下では単に「ts」と記す。そして、BD検出センサ121の出力は、水平同期信号/BDとしてtb0で出力される。tb0において、エンジンコントローラ122により、水平同期信号/BDが検出されると、tb1において、エンジンコントローラ122は、SH1信号及びLdrv信号をともにオフとし、スイッチング回路106をオフする。これにより通常プリント用レベルのAPCを終了させる。そして、プリントレベルのAPCが終了すると、LD107により、VIDEO信号に応じて、通常のプリント用レベルのレーザ発光が行われる。そして、tb1からtb2の間において、VIDEO信号に応じたレーザ発光が行われることになるが、これについての詳しい説明は省略する。
【0057】
次に、エンジンコントローラ122は、前の走査ラインに対応した水平同期信号/BDの出力タイミング(検出タイミング)を基準に、Io1(第1駆動電流)の調整を行う。より具体的には、水平同期信号/BDの出力タイミング(tb0或いはtb1)を基準に、所定時間経過後のtb2(次の水平同期信号/BDの検出前)において、SH1信号及びLdrv信号をオンにし、スイッチング回路106をオンする。これにより、再度のプリントレベルのAPCを開始する。また、エンジンコントローラ122は、このAPCの開始にあたり、Venb信号をオフとし、バッファ125のイネーブル端子に、ディスエーブルの指示を入力する。また、ディスエーブルの指示については、1つ前のAPCにおいても同様に入力されているものとする。そして、これにより、ビデオコントローラ123から、仮に誤出力(ノイズ等を含む)があったとしても、APCに係るエンジンコントローラ122からの制御指示を制御に反映できる。
【0058】
そして、BD検出センサ121の出力は、水平同期信号/BDとしてt0で出力される。t0において、エンジンコントローラ122により水平同期信号/BDが検出されると、t1において、SH1信号及びLdrv信号をオフとし、スイッチング回路106をオフにし、再度プリントレベルのAPCを終了させる。
【0059】
引き続きエンジンコントローラ122は、水平同期信号/BDの検出後のt1で、SH2信号及びBase信号をオンとし、スイッチング回路116をオンする。これによりエンジンコントローラ122は、微少発光レベルのAPCを開始する。尚、この微少発光レベルのAPC開始タイミングは、t1よりも後で且つt2よりも前のタイミングでも良く、t1より後で且つt2よりも前の画像マスク期間における少なくとも一部で微少発光レベルのAPCを行うようにすればよい。特にt2〜t3の余白部期間に微少発光レベルのAPCを実行する点に有用性がある。そして、エンジンコントローラ122は、t3迄、SH2信号をオンとする。言い換えればt3まで微少発光レベルのAPCを継続する。これにより微少発光レベルのAPC時間をより長く確保することができる。このとき、紙端部タイミングはt2であり、t1<t2<t3の関係となる。
【0060】
ここで、このときのLD107の発光強度の遷移を
図9(a)に示す。また
図9(b)に、PWM方式の微少発光におけるLD107の発光強度の遷移を示す。
図9(b)のPWM方式の微少発光では、固定周波数である画像用クロックに同期して、非画像部において1画素(1dot)毎に所定の比率(微少発光強度に相当する微少パルス幅)でプリントレベルP(Idrv+Ib)の発光を行っている。
図9(b)では、このようにして微少発光レベルの光量(斜線部)を実現している。これに対して、本実施例では、常時微少発光レベルP(Ib)で発光し続けることによって、微少発光レベルの発光強度としている。
【0061】
このように、レーザの自動光強度調整は走査ライン間などの非画像域(感光ドラムの有効領域外)で行われているが、画像形成装置や光走査装置の小型化が進むと、光走査装置における1走査の画像域の割合が多くなり、非画像域の時間割合は減少してしまう。そのような場合にも、
図8のタイミングチャートによれば、SH2信号が有効なときに実行される自動光強度調整を水平同期信号/BDが出力された後に実行するので、用紙の余白部分にレーザ走査が差し掛かったタイミングでも自動光強度調整を継続できる。
【0062】
図8の説明に戻ると、エンジンコントローラ122は、水平同期信号/BDの出力タイミング(t0或いはt1)を基準に、所定時間経過後のt3からVenb信号によりバッファ125のイネーブル端子にイネーブルの信号指示を入力する。これにより画像マスクが解除される。また、イネーブル端子へのイネーブル信号指示に応じて、ビデオコントローラ123から、水平同期信号/BDの出力タイミング(t0或いはt1)を基準に、所定時間経過後のt3からVIDEO信号が出力される。そしてLD107は、プリント用発光レベルP(Ib+Idrv)でレーザ発光を行い、
図4で説明した光学走査装置によりレーザ走査が行われる。ここで留意する点として、微少発光レベルの発光強度で発光する微少発光領域(t1〜t6)は、このVIDEO信号により走査される最大画像域t3〜t4より大きい領域を持つ点であり、且つ、紙端部タイミング間より大きい領域内において微少発光を行う。また、VIDEO信号の領域内の非画像部においても微少発光を行う。
【0063】
また、
図9(c)は、ビデオコントローラ123からVIDEO信号が出力された場合のLD107の発光の様子を示す図である。PWM方式の微少発光は、
図9(b)で説明した1画素内の微少発光レベルの発光強度(発光時間)に対して、同じプリントレベルP(Idrv+Ib)の発光を追加する形となる。一方、本実施例では、
図9(c)に示すように、常時発光している微少発光レベルP(Ib)(
図9(a))の上にパルス幅変調によるPWM発光を重畳する形となる。
図9(c)によれば、微少発光を
図9(b)のようにPWM方式で行う場合と比べ、微少発光動作に起因して発生する輻射ノイズを低く抑えることができる。
【0064】
図8のタイミングチャートの説明に戻ると、ビデオコントローラ123は、水平同期信号/BDの出力タイミング(t0或いはt1)を基準に、所定時間経過後のt4まで感光ドラムの画像領域に対してレーザ光のドットを、VIDEO信号に応じて走査する。t3〜t4までの区間が、トナー像形成領域(静電潜像形成領域)に対応してLD107によりレーザ発光が行われる発光区間に対応する。同じタイミングで、エンジンコントローラ122は、水平同期信号/BDの出力タイミング(t0或いはt1)を基準に所定時間経過後のt4からVenb信号によりバッファ125のイネーブル端子にディスエーブルの信号指示を入力する。これにより画像マスクの解除期間が終了する。言い換えれば、それ以外が画像マスク期間に対応する。
【0065】
また、エンジンコントローラ122は、水平同期信号/BDの出力タイミング(t0或いはt1)を基準に、所定時間経過後のt6において、Base信号によりスイッチング回路116をオフし、微少発光を終了する。
【0066】
このとき、紙端部タイミングはt5であり、t4<t5<t6の関係となる。尚、紙端部タイミングとは、記録紙の搬送方向に平行な辺のエッジと位置が一致するベルト(中間転写ベルト)の位置にLD107からのレーザ照射が行われるタイミングを指す。ここで、微少発光の終了t6は、
図8ではポリゴン端部タイミングtp(ポリゴンミラー133の面から面に移るタイミング)より早く終了しているが、t7まで長く設定してもよい(図中、破線で示す)。
【0067】
以上により、画像域(t3からt4間)より広く、且つ紙端部間(t2からt5間)より広い領域である(t1からt6)の間で微少発光レベルの自動光強度調整を行うことができる。
【0068】
また、エンジンコントローラ122は、水平同期信号/BDの出力タイミング(t0或いはt1)を基準に所定時間経過後のt7から、先に説明したtb2以降として説明した処理を繰り返し実行する。これにより、外部からの印刷要求に応じて、プリントジョブを実行するときに、複数回の各種APCを効率よく行うことができる。尚、APCの実行頻度としては、レーザ走査毎であってもよいし、ページ毎(ページの最初の一走査のみ)であってもよいし、或いは所定数(2以上)のレーザ走査毎であってもよい。そして、1ジョブの中で複数回実行するので、微少発光の光量を1ジョブの中で複数回調整でき、1ジョブの中を通して、帯電電位Vdを適切に維持でき、結果、反転かぶりや正かぶりを抑制することができる。尚、
図8のタイミングチャートにおいては、P(Ib)及びP(Idrv+Ib)について説明を行ってきたが、夫々をP(Ib+Ibias)、P(Idrv+Ib+Ibias)に置き換えることで、同様のことを
図7の回路でも達成できる。
【0069】
上述の
図8の説明では、APCについて、P(Idrv)のAPCと、P(Ib)のAPCで説明したが、P(Ib)のAPCを先に行うことにより、P(Ib+Idrv)のAPCを行うようにすることもできる。具体的には、P(Ib)のAPCをまず実行する。そしてその後にエンジンコントローラ122は、SH2信号により、サンプル/ホールド回路112をホールド期間中とし、更にスイッチング回路116を入力信号Baseによりオン状態とする。つまり、LD107をバイアス発光(レーザ発光領域)させた状態とする。そしてそれと同時にエンジンコントローラ122には、サンプル/ホールド回路102をサンプリング状態に設定し、スイッチング回路106を、上述の実施例と同様にData信号によりオン状態とし、LD107を全面発光させる。このLD107が全面発光状態になった状態で、LD107の発光強度をPD108でモニターする。また実際のその発光強度に比例したモニター電流Im1´を生じさせ、それを電流電圧変換回路109に流しモニター電圧Vm1´に変換する。このモニター電圧Vm1´が、目標値である第1の基準電圧Vref11´と一致するように、電流増幅回路104が基準電流源105に流れるIo1´をもとに駆動電流Idrv´を制御する。このとき基準電圧Vref11´は、P(Ib+Idrv)に対応した電圧値である。またIdrv´は、P(Ib+Idrv)である光量を発光させるための電流と、P(Ib)である光量を発光させるための電流と、の差分となる。
【0070】
また、実行タイミングについて、
図8で説明した例えばP(Idrv)のAPCのタイミングで、P(Ib+Idrv)のAPCを実行すればよい。また、P(Ib)のAPCのタイミングは、P(Ib+Idrv)のAPCより先行する必要があるが、水平同期信号/BDの検出の強制発光前などで行う方法がある。また、上の説明では、P(Ib)及びP(Idrv+Ib)について説明を行ってきたが、夫々をP(Ib+Ibias)、P(Idrv+Ib+Ibias)に置き換えることで、同様のことを
図7の回路でも達成できる。
【0071】
また
図8の説明では、APCについて、P(Idrv)のAPCと、P(Ib)のAPCとを夫々実行するよう説明したが、この形態に限定されない。例えば、P(Ib)のAPCの代わりにP(Ib+Idrv)のAPCを行うようにしてもよい。具体的には、P(Idrv)のAPCを実行した後、エンジンコントローラ122の指示によるSH1信号により、サンプル/ホールド回路102をホールド期間中(非サンプリング期間中)にし、またスイッチング回路106をオン状態とする。また、同時にSH2信号によりサンプル/ホールド回路112をAPC動作中にし、スイッチング回路116を入力信号Baseによりオン状態とする。このLD107が全面発光状態になった状態で、LD107の発光強度をPD108でモニターする。そして実際の発光強度に比例したモニター電流Im2´(Im1<Im2´)を生じさせ、電流電圧変換回路109に流しモニター電圧Vm2´に変換する。このモニター電圧Vm2´が、目標値である第1の基準電圧と第2の基準電圧の和となる電位としたVref21´と一致するように、電流増幅回路114が基準電流源115に流れるIo2´をもとに駆動電流Ibを制御する。そして、SH2信号をオフとし、サンプル/ホールド回路112をホールド状態とすると駆動電流Ibに相当する電圧がコンデンサ113にチャージされる。そして、非APC動作中、即ち、サンプル/ホールド回路112がホールド期間中(非サンプリング期間中)になり、Base信号がオン時には、駆動電流Ibに対応した光量での全面発光状態となる。
【0072】
尚、上の説明では、レーザダイオード107により露光(発光)を行う系を例に説明したが、それに限定される訳ではない。例えば、露光手段としてLEDアレイを備えた系においても実施することができる。具体的には、各LED発光素子を駆動するドライバにVIDEO信号を入力するとともに、先に説明したフローチャートの処理を実行すればよい。
【0073】
以上が画像形成装置の構成に関する説明である。以下では
図1乃至
図9の構成を基に、
図11乃至13を用い各露光装置(光照射手段)に、トナー像を可視化させない箇所に微少発光を行うことについて説明する。またトナー像を可視化させる箇所には微少発光の光量に加え画像形成用画像データに基づく光量を更に加えた通常発光を各露光装置に行わせることについても説明する。また、微少発光及び通常露光の夫々の発光強度P(Ib)、P(Idrv+Ib)の目標レベルを、感光ドラムの寿命に関連させて変更する実施例について説明する。尚、以下の説明では、代表的に第1の画像形成ステーションaにおける露光装置31aの構成、動作を中心に説明をしているものの、第2〜第4の画像形成ステーションにおける露光装置31b〜31dについても同様の構成及び動作が行われているとする。
【0074】
(微少発光強度の補正の必要性について)
まず
図10(a)を用いてプロセススピードの差異に係る問題点について説明する。レーザダイオード107の発光量を固定したとしても、プロセススピードが異なれば、感光ドラム1の単位面積あたりに照射される露光量が異なる。この状態で、
図3に例示したような共通化高圧電源により、複数の感光ドラムに一定の帯電電圧Vcdcを印加し、レーザダイオード107に固定量発光させると、感光ドラム1の単位面積あたりに照射される露光量が異なる。具体的には、プロセススピードが遅ければ、露光量は大きくなり、プロセススピードが早ければ、露光量は小さくなる。
【0075】
そして、例えばプロセススピードが遅いモードにおいて、現像電位Vdcと補正後の帯電電位Vd_bgのコントラストであるバックコントラストVback(=Vd_bg−Vdc)が所望状態となるよう、微少露光の露光量Ebg1及び通常露光の露光量E1になるようなレーザダイオード107の発光強度を設定すると、
図10(a)の如く、以下の問題がある。即ち、プロセススピードが速いモードでは、微少露光の露光量Ebg2が小さくなるため、補正後の帯電電位Vd_bgの絶対値が大きくなり(Vd_bg Up)、バックコントラストVbackが大きくなってしまう。バックコントラストVbackが大きくなると正規の極性に帯電できなかったトナー(本実施例のように反転現像の場合は、負極性にならず0〜正極性に帯電したトナー)が現像ローラから非画像部に転移してかぶりが発生する。
【0076】
また、補正後の帯電電位Vd_bgが上昇し、通常露光の露光量E2が小さくなるため、露光電位Vl(VL)も上昇する(Vl Up)。そのため、現像電位Vdcと露光電位Vl(VL)の差分値である現像コントラストVcont(=Vdc−Vl)が小さくなり、現像ローラから感光ドラムに静電的にトナーを十分に転移させることができずベタ黒画像の濃度薄が発生し易くなる。
【0077】
一方、
図10(b)に示すように現像電位Vdc、帯電電圧Vcdcを固定し、露光強度をE2からE1(>E2)に変化させると、通常露光の露光量制御により現像電位Vdcと露光電位Vl(VL)の差分値である現像コントラストVcontを略一定に制御できる。従って濃度を一定に保つことができる。しかしながら、現像電位Vdcと帯電電位VdのコントラストであるバックコントラストVbackが広がってしまい、上述したようにかぶり発生の問題が残ってしまう。
【0078】
また、一般的に、感光ドラム1の使用が進むと感光ドラム表面の膜厚が薄くなる。使用状況(例えば累積回転数)の異なる感光ドラムが混在すると、各感光ドラムの膜厚はばらつく。この状態で、
図3に例示したような共通化高圧電源により、複数の感光ドラムに一定の帯電電圧Vcdcを印加すると、一般的には、帯電ローラ2と感光ドラム1間のエアギャップに生じる電位差が異なり、感光ドラム表面の帯電電位Vdがばらつく。具体的には、画像形成回数の少ない感光ドラムは膜厚が厚く、感光ドラム表面の帯電電位Vdの絶対値が小さくなる。他方、累積回転数の多い感光ドラムは膜厚が薄く、感光ドラム表面の帯電電位Vdの絶対値が大きくなる。
【0079】
そして、
図3の共通化高圧電源を用い、例えば膜厚の厚い感光ドラムにおいて、現像電位Vdcと補正後の帯電電位Vd_bgのコントラストであるバックコントラストVback(=Vd_bg−Vdc)が所望状態となるよう現像電位Vdcと帯電電位Vdを設定すると、以下の問題がある。即ち、膜厚の薄い感光ドラムを有する画像形成ステーションでは、帯電電位Vdの絶対値が大きくなり、バックコントラストVbackが大きくなってしまう。
【0080】
また、感光ドラムの膜厚が薄い画像形成ステーションは、帯電電位Vdが上昇するため露光強度一定の構成では、露光電位Vl(VL)も上昇する(Vl Up)。そのため、現像コントラストVcont(=Vdc−Vl)が小さくなってしまう問題が発生する。
【0081】
一方、現像電位Vdc、帯電電圧Vcdcを固定し、各画像形成ステーションの露光電位Vl(VL)を一定にするよう露光強度を変化させると、各画像形成ステーションの現像コントラストVcontを略一定に制御できる。しかしながら、この場合にも、バックコントラストVbackが広がってしまう問題が残ってしまう。
【0082】
(微少発光の発光強度の補正について)
これに対して、本実施例においては、例えば、
図3で例示した電源構成としたような場合においても、簡易な構成で帯電電位を制御できかぶりや濃度薄の発生を抑制できる。以下、
図11に示すフローチャートを用いて次のような補正を行う処理を説明する。トナー付着がなされない背景部(非画像部)における、レーザダイオード107a〜107dの各々の微少露光量E
0を、プロセススピードと感光ドラム1a〜1dの残り寿命に関連させて変更することで補正する処理について説明する。即ち、微少発光用の発光レベルの目標電圧Vref21を、プロセススピードと感光ドラム1a〜1dの残り寿命とに関連させて変更する。
【0083】
まず、ステップ(以下、Sとする)101にて、エンジンコントローラ122は、プロセススピードの情報をエンジンコントローラ内のRAMから読み込む。プロセススピードの情報とは、今回のプロセススピードを決定する為の情報であり、直接的な情報でも間接的な情報でもよい。例えば、通常のプロセススピードに対してどれだけの割合のスピードかを示す情報を相当させることができる。或いは、ビデオコントローラ123から指示された印字モードであったり、或いは、不図示の記録材の種別(表面粗さや厚み等)を検知するセンサの検知結果の情報でなど間接的な情報であってもよい。
【0084】
S102にて、各画像形成ステーションの記憶部材から、感光ドラム1の残り寿命に係る情報として感光ドラム1の積算回転数の情報を読み込む。尚、各画像形成ステーションの記憶部材とは、各画像形成ステーションa〜dに設けられた不図示のメモリタグである。また、必要な情報を記憶されていれば、例えばエンジンコントローラ122内の1つのRAMでもよい。
【0085】
ここで、感光ドラム1の残り寿命に係る情報は、感光ドラム1がどれ程回転したか又は使用されたかの使用状況に係る情報と言いかえることもできる。また
図2で説明したように、感光ドラム1の感光特性(EVカーブ特性)に係る情報とも言いかえることもできる。いずれも同じことを意味する。また感光ドラムの残り寿命に係る情報の変形例として感光ドラムの積算回転数の情報とは別に、感光ドラムの膜厚に相関する他の情報を挙げることもできる。例えば、中間転写ベルト回転数、帯電ローラの回転数、用紙サイズを加味したプリント枚数の情報を挙げることができる。また直接感光ドラム1の膜厚を検知する手段を各感光ドラム1に対応させて設け、その検出結果を各感光ドラム1の残り寿命に係る情報としてもよい。また帯電ローラ2に流れる帯電電流値や、感光ドラム1を駆動するモータのモータ駆動時間、帯電ローラ2を駆動するモータの駆動時間などを感光ドラム1の残り寿命に係る情報としてもよい。
【0086】
S103にて、エンジンコントローラ122は、感光ドラム1の積算回転数(感光ドラム使用状況)と通常露光に係るパラメータとの対応関係が定められた
図12に示されるテーブルを参照する。また、同じステップで、感光ドラム1のプロセススピード比と通常露光(通常動作時の露光)に係わるパラメータとの対応関係が定められた
図13に示されるテーブルを参照する。
【0087】
尚、
図13中の「間引き」とはポリゴンミラー133の面飛ばし制御のことを指している。例えば「間引きm」の場合、n面(nは3以上の整数)の反射面を有するポリゴンミラー133のある面にレーザ光が入射され、静電潜像が形成された後、エンジンコントローラ122により以下の制御が行われる。即ち、ポリゴンミラー133のある面にレーザ光が入射された後、次の連続するm面(n>m、且つはmは1以上の整数)にはレーザ光が入射されず、ある面からm+1面目の面に、再び、レーザが入射される。換言すれば、「間引きm」の場合、(m+1)面毎に等間隔のタイミングで、レーザ光がポリゴンミラー133の面に入射される。
【0088】
また、感光ドラム毎にS102で取得された情報は異なり得る。従って、エンジンコントローラ122は、各感光ドラム毎に設定された
図12のテーブルを参照する。一方、S101で取得された情報は各感光ドラムで共通となっている。
【0089】
そして、エンジンコントローラ122は、S101で取得したプロセススピードの情報と、S102で取得した積算回転数の情報を基にレーザダイオード107a〜107dの通常露光量の露光パラメータを設定する。ここでの露光パラメータが
図5、
図7でのVref11に相当する。尚、パラメータの設定方法の詳細については後述する。
【0090】
S103の処理により、エンジンコントローラ122は、各感光ドラム1の露光電位Vl(VL)を各感光ドラム1の感度特性(EVカーブ特性)に係らず、目標電位、或いは許容される範囲の電位にするためのレーザ発光設定を取得する。そして、この取得した設定で、レーザダイオード107a〜107dを通常発光させることで、複数の感光ドラム1の夫々における通常露光後の露光後電位Vl(VL)のばらつきを少なくとも小さくすることができ、所望の電位を実現できる。
【0091】
尚、各感光ドラム1の目標露光電位は基本的に同一/略同一であるが、場合によっては各感光ドラム1の特性に応じて個別に設定してもよい。また、パラメータに関して「露光」なる用語を用いる場合は、感光ドラムにて露光が行われるという観点でその用語を使用している。一方、感光ドラムにて露光が行われるときにはそれに対応する発光側が存在する。従って、パラメータに関して露光なる用語が用いられている場合に、そのパラメータは「発光」に係るパラメータであるともいえる。
【0092】
S103でのエンジンコントローラ122による動作を更に詳しく説明する。エンジンコントローラ122は、まず、プロセススピードの情報及び取得された各感光ドラム1の積算情報に対応する発光輝度(mW)値を、PWM信号指示によりVref11a〜Vref11dに設定する。
【0093】
尚、
図12では説明のために発光輝度値(mW)を示しているが、実際にはエンジンコントローラ122は、PWM信号指示によりこの発光輝度値に相当する電圧値/信号を、Vref11a〜Vref11dとして設定する。また、エンジンコントローラ122は、
図12中の通常露光(濃度0%)の%(PWM)値をPW
MINに設定し、通常露光(100%)のPWM値をPW
255に設定する。そして、エンジンコントローラ122は、以下の式(1)により、任意の階調値n(=0〜255)の画像データに対するパルス幅を設定する。
【0094】
PW
n=n×(PW
255―PW
MIN)/255+PW
MIN・・・式(1)
式(1)によれば、n=0でPW
0=PW
MINとなり、n=255でPW
255となる。そして、エンジンコントローラ122は、以後において、任意の階調値nの画像データによる発光を外部から指示されたときに、ここで設定した対応するパルス幅(PW
n)に相当する電圧値/信号を、VIDEO信号aとして指示する。またVIDEO信号b〜dについても同様である。また、式(1)は、8ビットの多値信号を想定しているが、上で説明したように4ビットや2ビット或いは1ビット(二値)などの任意のmビットの場合には以下のようにすればよい。即ち、PW
MINの時のパルス幅を画像データが0のときに割り当て、PW
255の時のパルス幅を階調値(2
m−1)に割り当てればよい。
【0095】
次のステップの説明を行うと、S104にて、エンジンコントローラ122は、プロセススピードの情報及び積算回転数を基に微少露光のレーザ発光強度E
0に係るパラメータ(
図12中における発光輝度(mW))としてVref21を設定する。このS104でも、エンジンコントローラ122は感光ドラム毎に
図12と
図13のテーブルを参照する。より具体的には、エンジンコントローラ122は、S101で取得されたプロセススピードの情報と感光ドラム毎に、S102で取得された積算情報に対応するVref21値(PWM値)を読み出し、Vref21a〜Vref21dに設定する。尚、微少露光に係る尚、パラメータの設定方法の詳細については後述する。
【0096】
S104の処理により、エンジンコントローラ122は、各感光ドラム1の帯電電位Vdを感光ドラムの感度特性(EVカーブ特性)に係らず、目標電位(補正後帯電電位Vd_bgの値)、或いは許容される範囲の電位にするための設定を取得できる。そして、LDドライバ130が、この取得した設定でAPCを行い、その制御のもと、レーザダイオード107a〜107dを微少発光させることで、複数の感光ドラム1の夫々における背景部(非画像部)の補正後帯電電位のばらつきを少なくとも小さくできる。尚、各感光ドラムの目標露光電位(Vref11値に対応)は基本的に同一/略同一であるが、場合によっては各感光ドラム1の特性に応じて個別に設定してもよい。このように、S103及びS104の処理により、プロセススピードや感光ドラム毎にその残り寿命に関連して、適切に微少露光(微少発光)及び通常露光(通常発光)の用の発光量を設定することで、感光ドラム1の非画像部及び画像部の露光量を適切に設定することが可能となる。
【0097】
尚、S103、104においては、エンジンコントローラ122が
図12、13のテーブルを参照するよう説明したが、必ずしもその形態に限定されない。例えばエンジンコントローラ122におけるCPUが計算式を演算する構成としてもよい。このようにCPUが演算を行い、プロセススピードの情報及び感光ドラム1の残り寿命に係るパラメータ(例えば感光ドラムの積算回転数)から所望の設定値(Vref11a〜Vref11dやVref21a〜Vref21d)を得るようにしてもよい。また、式(1)で演算した値の全てを予めテーブルに記憶保持しておくようにし、そのテーブルをエンジンコントローラ122がその都度参照するようにしてもよい。また、不図示のメモリタグに、
図2に示した様な、感光ドラム1の各使用状況に対応させたEVカーブを複数通り記憶保持しておいてもよい。この場合、エンジンコントローラ122が、取得された感光ドラム1の使用状況に係る情報に応じてEVカーブを特定し、更に特定されたEVカーブと所望とする感光ドラム電位とから必要な露光量(μJ/cm
2)を演算する。そして、エンジンコントローラ122が、その都度求められた露光量(μJ/cm
2)から、更に発光輝度や、微少露光時のパルス幅や、通常露光時のパルス幅を演算し、その結果を、S103、S104に対応するパラメータとして設定する。
【0098】
図11の説明に戻ると、S105において、エンジンコントローラ122の制御指示のもと、
図1で説明した一連の画像形成動作及び制御を各部材が実行する。また、S106にて、エンジンコントローラ122は、一連の画像形成で回転させた感光ドラムa〜dの回転数を夫々計測する。尚、この計測の処理は感光ドラム1の使用状況を更新するために行われる。また、このS106は実際にはS105の処理に並行して行われている。
【0099】
エンジンコントローラ122は、画像形成が終了したか否かをS107で判断し、S107で画像形成が終了したと判断するとS108へ処理を移行させる。S108にて、エンジンコントローラ122は、S106で計測された各感光ドラム1の計測結果を、対応する積算回転数に加算し、S109にて、それら更新後の積算回転数を各画像形成ステーションの不揮発性のメモリタグ(不図示)に保存する。このS109の処理で、感光ドラム1の残り寿命に係る情報が更新される。尚、ここでの保存先としては、S102で説明したようにメモリタグ(不図示)とは別の記憶部でもよい。
【0100】
(
図12の補正テーブルの説明)
図12は、エンジンコントローラ122が、
図11のS103及びS104にて参照するテーブルの詳細の一例を示した図である。
図12のテーブルは、感光ドラム1の残り寿命に係る情報(図中では積算回転数であるドラム回転数)と、微少発光時や通常発光時の発光制御設定と、が対応付けられたテーブルである。
【0101】
図中において、微少露光の露光量(μJ/cm
2)、通常露光の露光量(μJ/cm
2)は、
図2に例示したような、対象とする感光ドラム1の感光特性(EVカーブ)を基に予め設定されている。
図12中では、微少露光の発光輝度(発光量)(mW)に対応した設定が、Vref21及びそれに対応するPWM値で示されている。また、通常露光の発光輝度(発光量)(mW)でレーザダイオード107を発光させるための加算発光輝度(mW)に対応した設定が、Vref11及びそれに対応するPWM値で示されている。このVref11の設定は、
図5、
図7で加算発光輝度(mW)を実現するためのものであり、
図12中の加算発光輝度に対応する。そして、この
図12に示されるテーブルをエンジンコントローラ122が参照することで、帯電後の複数の感光ドラムの夫々における背景部の表面電位のばらつきを無くす又は少なくとも小さくできる。また、通常露光後の複数の感光ドラム1の夫々における露光後電位Vl(VL)のばらつきも無くす又は少なくとも小さくできる。
【0102】
図12に例示するテーブルにおいては、微少露光における発光輝度(mW)と通常露光時の発光輝度(mW)との双方が変化している。エンジンコントローラ122が、
図12のテーブルを参照することで、感光ドラム1の累積回転数に連動し、微少露光のみならず通常露光をも適切に設定できる。更に
図12のテーブルにおいては、感光ドラム1の積算回転数に応じて、微少露光量及び通常露光量の双方とも線形に増加させる場合を説明した。しかしこれに限定されない。感光ドラム1の特性を鑑み、感光ドラム1の積算回転数に応じて、非線形に増加させるようなテーブルを設けるようにしてもよい。
【0103】
(
図13の補正テーブルの説明)
図13は、エンジンコントローラ122が、
図11のS103及びS104にて参照するテーブルの詳細の一例を示した図である。
図13のテーブルは、感光ドラム1のプロセススピード及び間引き設定と、微少発光時や通常発光時の発光輝度比と、が対応付けられたテーブルである。発光輝度比とは、プロセススピード比が(1/1)のときの発光輝度(即ち
図12のテーブルから決定される発光輝度)に対して、どれだけの比の発光輝度に設定するかを示す値である。このテーブルは、エンジンコントローラ122が参照可能な記憶部に記憶されており、例えばエンジンコントローラ122上のEEPROMに保存されている。
【0104】
図13中の発光輝度比において、間引き設定がゼロの場合(例えばプロセススピード比4/5の場合)には、プロセススピード比自体が発光輝度比になる。これは、例えばポリゴンミラー133の面数が4面のときに、面飛ばし制御により、(4/5)倍のプロセススピードに対応できない。即ち、面飛ばし制御を行うことなく、ポリゴンミラー133の回転速度自体を(4/5)倍にしているからである。
【0105】
一方、間引き設定がゼロでない場合には、プロセススピード比に加え、間引きの数が加味され、感光ドラム1のある面積当たりにおける総露光量が同一となるよう発光輝度が設定される。より具体的には、以下の式で表される。
発光輝度比=プロセススピード比×(間引き数+1)・・・式(2)
例えば、プロセススピード比が(1/2)で、間引き設定1の場合には、発光輝度比=(1/2)×(1+1)=1となる。即ち、レーザダイオードの発光輝度自体は変更する必要がない。また、プロセススピード比が(3/5)の場合には、発光輝度比=(3/5)×(1+1)=(6/5)=1.2となる。即ち、プロセススピードが(3/5)の場合には、面飛ばし制御を加味したうえで、1/1速の場合に比べてより強いレーザダイオード107の発光輝度が設定される。例えば、面飛ばし制御を行わず発光輝度比を(3/5)に設定する手法もある。しかし、発光輝度を低くすると、
図6におけるPth以下において微少発光時の光量を調整することになり、以下のデメリットが考えられる。通常発光時の発光強度の精度が悪化する。その理由として、以下のことが考えられる。
図6から分かるようにPthを変化点として、レーザダイオード107に流れる電流に対する発光強度の傾きが変わり、Pth以下では発光強度の傾きが小さく、Pth以上では発光強度の傾きが大きい。Pth以下では微少発光時のAPC時の発光強度バラツキに対する電流IbのバラツキがPth以上の時よりも大きい。そのため、画像領域にレーザダイオード107を電流(Idrv+Ib)の定電流制御を実施した際に、レーザダイオード107に流れる電流(Idrv+Ib)のバラツキが大きいため、通常発光時の発光強度P(Idrv+Ib)の精度が悪化してしまう。従って、プロセススピード比を大幅に小さくしたときに、微少露光に関して、Pth未満の目標発光輝度を設定することは好ましくない。プロセススピード比を通常動作時よりも小さい値(1未満)に設定するとき、発光輝度比を1よりも大きく設定しつつ、回転多面鏡の回転速度を通常動作時よりも速く設定し、且つ面飛ばし制御を組み合わせた動作が有効である。尚、通常動作時とは、普通紙の画像形成時に対応し、通常プロセススピードを減速させず、最も速いプロセススピードで動作させるときのことを指す。
【0106】
(S103・S104の詳細説明)
図12と
図13の関係性について説明する。例えば、感光ドラム1の積算回数が80000回で、プロセススピード比が(1/2)の場合、通常露光の発光輝度L11は、以下のように計算される。尚、下記式における4.09(mW)、1.0の数値は、夫々エンジンコントローラ122が、
図12及び
図13のテーブルを参照することで決定する。また、後述にて説明するL12についても同様である。
L11=4.09(mW)×1.0=4.09(mW)
【0107】
そして、計算された発光輝度4.09(mW)に対応したVref11値(1.07V)が、PWMデューティ(28.4%)によりエンジンコントローラ122により設定される。尚、ここでのVref11の設定は、
図5、
図7で加算発光輝度(mW)を実現するためのものである。
【0108】
また、例えば、感光ドラム1の積算回数が80000回で、プロセススピード比が(1/2)の微少露光の場合、発光輝度L12は以下のように計算される。
L12=0.95(mW)×1.0=0.95(mW)
そして、計算された発光輝度0.95(mW)に対応したVref21(0.71V)が、PWMデューティ(52.8%)によりエンジンコントローラ122により設定される。
【0109】
このように、
図12、13に示されるテーブルをエンジンコントローラ122が参照することで、帯電後の複数の感光ドラムの夫々における背景部の表面電位のばらつきを無くす又は少なくとも小さくできる。また、通常露光後の複数の感光ドラム1の夫々における露光後電位Vl(VL)のばらつきも無くす又は少なくとも小さくできる。
尚、
図12のテーブルにおいては、感光ドラム1の積算回転数に応じて、微少露光量及び通常露光量の双方とも線形に増加させる場合を説明した。しかしこれに限定されない。感光ドラム1の特性を鑑み、感光ドラム1の積算回転数に応じて、非線形に増加させるようなテーブルを設けるようにしてもよい。
【0110】
(作用・効果の説明)
本実施例によれば、プロセススピードを変更した場合においても、
図10(c)のように微少露光用の露光量Ebg1を一定に保つために微少露光の発光輝度を変更することで、帯電電位(背景部電位)を一定に保って反転かぶりの悪化を抑えることができる。そしてこのような効果と共に、帯電ローラ汚れ等による帯電電位の均一性低下を招くことなく、背景部電位を形成できる。従って、プロセススピード変更にともなう背景部電位の上昇及び均一性低下に対して、効果的な対策を施すことが可能であるといえる。また、背景部電位が各画像形成ステーションで一定に保たれているため、各現像ローラに同一の電源から電圧を供給する場合であっても、かぶりの悪化を抑えられる利点もある。