特許第6238564号(P6238564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボッシュ株式会社の特許一覧

特許6238564診断装置、排気浄化装置、および診断方法
<>
  • 特許6238564-診断装置、排気浄化装置、および診断方法 図000002
  • 特許6238564-診断装置、排気浄化装置、および診断方法 図000003
  • 特許6238564-診断装置、排気浄化装置、および診断方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238564
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】診断装置、排気浄化装置、および診断方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20171120BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20171120BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F01N3/08 HZAB
   F01N3/00 F
   F01N3/18 C
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-104259(P2013-104259)
(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公開番号】特開2014-224504(P2014-224504A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 謙一
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0022658(US,A1)
【文献】 特開2010−071195(JP,A)
【文献】 特開2012−193729(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/161032(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/134539(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00− 3/38
F01N 9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出される排気ガスが流入され、アンモニアを用いて前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する還元触媒と、前記排気ガスが前記還元触媒へと流入する排気通路に、前記アンモニアを生成させることが可能な還元剤を供給する還元剤供給部と、前記還元触媒から流出する窒素酸化物を検出する窒素酸化物センサと、前記還元触媒から流出するアンモニアを検出するアンモニアセンサとを含む排気浄化装置における、前記アンモニアセンサの検出値の妥当性を診断する診断装置であって、
前記窒素酸化物センサの検出値と前記アンモニアセンサの検出値とに基づいて、前記アンモニアセンサの検出値の妥当性を判定する判定部を備え、
前記判定部は、前記エンジンが燃料無噴射状態である場合における、前記窒素酸化物センサの検出値と前記アンモニアセンサの検出値との差分の絶対値が、所定の規定値以下の場合に、前記アンモニアセンサの検出値が妥当であると判定し、前記絶対値が前記規定値より大きい場合に、前記アンモニアセンサの検出値が妥当ではないと判定する、
または、
前記絶対値が前記規定値未満の場合に、前記アンモニアセンサの検出値が妥当であると判定し、前記絶対値が前記規定値以上の場合に、前記アンモニアセンサの検出値が妥当ではないと判定することを特徴とする、診断装置。
【請求項2】
前記アンモニアセンサの検出値が妥当ではないと判定された場合に、前記アンモニアセンサの検出値を補正する補正部をさらに備えることを特徴とする、請求項に記載の診断装置。
【請求項3】
前記補正部は、
窒素酸化物センサの検出値とアンモニアセンサの検出値との差分の値と、前記窒素酸化物センサの検出値を前記アンモニアセンサの検出値で除算した値とを算出し、
前記差分の値がアンモニア濃度によって変わるか否かに基づいて、前記差分の値、または、前記除算した値を用いて、前記アンモニアセンサの検出値を補正することを特徴とする、請求項に記載の診断装置。
【請求項4】
前記補正部は、
前記差分の値がアンモニア濃度によって変わる場合には、前記アンモニアセンサの検出値に、前記除算した値を乗じることによって、前記アンモニアセンサの検出値を補正し、
前記差分の値がアンモニア濃度によって変わらない場合には、前記アンモニアセンサの検出値に、前記差分の値を加算することによって、前記アンモニアセンサの検出値を補正することを特徴とする、請求項に記載の診断装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記エンジンが燃料無噴射状態となってから、所定の時間が経過した後に、前記アンモニアセンサの検出値の妥当性の判定を開始することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の診断装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記エンジンが燃料無噴射状態であり、かつ、前記還元触媒への前記還元剤の供給がされていない場合における、前記窒素酸化物センサの検出値と、前記アンモニアセンサの検出値とを比較することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の診断装置。
【請求項7】
エンジンから排出される排気ガスが流入され、アンモニアを用いて前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する還元触媒と、
前記排気ガスが前記還元触媒へと流入する排気通路に、前記アンモニアを生成させることが可能な還元剤を供給する還元剤供給部と、
前記還元触媒から流出する窒素酸化物を検出する窒素酸化物センサと、
前記還元触媒から流出するアンモニアを検出するアンモニアセンサと、
前記窒素酸化物センサの検出値と前記アンモニアセンサの検出値とに基づいて、前記アンモニアセンサの検出値の妥当性を判定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記エンジンが燃料無噴射状態である場合における、前記窒素酸化物センサの検出値と前記アンモニアセンサの検出値との差分の絶対値が、所定の規定値以下の場合に、前記アンモニアセンサの検出値が妥当であると判定し、前記絶対値が前記規定値より大きい場合に、前記アンモニアセンサの検出値が妥当ではないと判定する、
または、
前記絶対値が前記規定値未満の場合に、前記アンモニアセンサの検出値が妥当であると判定し、前記絶対値が前記規定値以上の場合に、前記アンモニアセンサの検出値が妥当ではないと判定することを特徴とする、排気浄化装置。
【請求項8】
エンジンから排出される排気ガスが流入され、アンモニアを用いて前記排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する還元触媒と、前記排気ガスが前記還元触媒へと流入する排気通路に、前記アンモニアを生成させることが可能な還元剤を供給する還元剤供給部と、前記還元触媒から流出する窒素酸化物を検出する窒素酸化物センサと、前記還元触媒から流出するアンモニアを検出するアンモニアセンサとを含む排気浄化装置における、前記アンモニアセンサの検出値の妥当性を診断する診断方法であって、
前記窒素酸化物センサの検出値と前記アンモニアセンサの検出値とに基づいて、前記アンモニアセンサの検出値の妥当性を判定するステップを有し、
前記判定するステップでは、前記エンジンが燃料無噴射状態である場合における、前記窒素酸化物センサの検出値と前記アンモニアセンサの検出値との差分の絶対値が、所定の規定値以下の場合に、前記アンモニアセンサの検出値が妥当であると判定され、前記絶対値が前記規定値より大きい場合に、前記アンモニアセンサの検出値が妥当ではないと判定される、
または、
前記絶対値が前記規定値未満の場合に、前記アンモニアセンサの検出値が妥当であると判定され、前記絶対値が前記規定値以上の場合に、前記アンモニアセンサの検出値が妥当ではないと判定されることを特徴とする、診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断装置、排気浄化装置、および診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両や船舶などに搭載されたエンジンから排出される排気ガスには、窒素酸化物(以下、「NO」(xは、正の整数)と示す場合がある。)含まれる場合がある。排気ガスに含まれるNOを浄化する排気浄化装置としては、例えば、尿素水溶液やアンモニア水を還元剤として用いるSCR(Selective Catalyst Reduction)装置(または、SCRシステム)が挙げられる。
【0003】
このような中、エンジンから排出される排気ガスを処理する排気ガス処理システムを診断する技術が開発されている。排気ガス処理システムを診断する技術としては、例えば、下記の特許文献1に記載の技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−190529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気浄化装置では、例えば、エンジンから排出される排気ガス(以下、単に「排気ガス」と示す。)が、アンモニア(以下、「NH」と示す場合がある。)を用いてNOを浄化する還元触媒によって浄化される。排気浄化装置では、NHとNOとの還元反応を還元触媒によって促進させ、NOを窒素や水、二酸化炭素などに分解することによって、排気ガスに含まれるNOが浄化される。例えば、尿素水溶液やアンモニア水が還元剤として用いられ、NHを吸着し、NHとNOとの還元反応を促進する機能を有する触媒が還元触媒として用いられる場合、排気浄化装置では、還元剤が分解することによって生成されるNHが還元触媒に吸着され、還元触媒に流入される排気ガスに含まれるNOが、生成されたNHと反応することによって、排気ガスに含まれるNOが浄化される。
【0006】
また、排気浄化装置では、例えば、排気ガスの浄化を制御するために、還元触媒によって浄化された後の排気ガスに含まれるNOを検出する窒素酸化物センサ(以下、「NOセンサ」と示す。)が、還元触媒から流出される排気ガスが通る排気通路に設けられる。
【0007】
ここで、NHを用いて排気ガスに含まれるNOを浄化する排気浄化装置において、還元触媒において吸着させることが可能なNHの量は、還元触媒の温度に依存する。そのため、NHを用いて排気ガスに含まれるNOを浄化する排気浄化装置では、還元剤の供給量によっては、生成されるNHの一部が、還元触媒から流出することが起こりうる。また、NOセンサは、NOと併せて、NHにも反応する。
【0008】
よって、NHを用いて排気ガスに含まれるNOを浄化する排気浄化装置では、例えば、NOセンサの検出値がNH濃度を示すと考えられる場合には、NOセンサの検出値を用いて、還元触媒への還元剤の供給が制御されることによって、還元触媒からのNHの流出(還元触媒からのNHのスリップ)を低減しつつ、排気ガスに含まれるNOの浄化が図られている。
【0009】
上記のように、尿素水溶液やアンモニア水が還元剤として用られる既存の排気浄化装置では、NOセンサの検出値を用いることによって、還元触媒からのNHの流出の低減が図られている。しかしながら、NOセンサはNOおよびNHの濃度を検出するものであることから、還元触媒から流出するNHの濃度を正確に検出することが困難である。
【0010】
ここで、還元触媒から流出するNHの濃度をより正確に検出するための方法としては、例えば特許文献1に記載の技術のように、還元触媒から流出される排気ガスが通る排気通路に、NHを検出するアンモニアセンサ(以下「NHセンサ」と示す場合がある。)をさらに設ける方法が挙げられる。NHセンサの検出値を用いることによって、NOセンサの検出値を用いる場合よりもより正確に還元触媒から流出するNHの濃度を把握することが可能となることが、期待される。よって、排気浄化装置では、より厳密な制御を行うことができる可能性がある。
【0011】
しかしながら、例えば、NHセンサの初期不良や経時劣化などによって、NHセンサの検出値と、還元触媒から流出する実際のNHの濃度とが異なる事態が生じうる。また、NHセンサの検出値と、還元触媒から流出する実際のNHの濃度とが異なる事態が生じた場合には、NHセンサが設けられている排気浄化装置を用いたとしても、還元触媒からのNHの流出を低減しつつ、排気ガスに含まれるNOの浄化率の向上を図ることができない恐れがある。
【0012】
また、例えば特許文献1に記載の技術は、NOセンサの検出値およびNHセンサの検出値の双方が正しいことを前提としている。そのため、例えば特許文献1に記載の技術を用いたとしても、還元触媒からのNHの流出を低減しつつ、排気ガスに含まれるNOの浄化率の向上を図ることができるとは限らない。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、アンモニアセンサを含み、アンモニアを用いて排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する排気浄化装置における、アンモニアセンサの検出値の妥当性を診断することが可能な、新規かつ改良された診断装置、排気浄化装置、および診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点によれば、エンジンから排出される排気ガスが流入され、アンモニアを用いて上記排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する還元触媒と、上記排気ガスが上記還元触媒へと流入する排気通路に、上記アンモニアを生成させることが可能な還元剤を供給する還元剤供給部と、上記還元触媒から流出する窒素酸化物を検出する窒素酸化物センサと、上記還元触媒から流出するアンモニアを検出するアンモニアセンサとを含む排気浄化装置における、上記アンモニアセンサの検出値の妥当性を診断する診断装置であって、上記窒素酸化物センサの検出値と上記アンモニアセンサの検出値とに基づいて、上記アンモニアセンサの検出値の妥当性を判定する判定部を備え、
上記判定部は、上記エンジンが燃料無噴射状態である場合における、上記窒素酸化物センサの検出値と、上記アンモニアセンサの検出値とを比較することによって、上記アンモニアセンサの検出値の妥当性を判定する、診断装置が提供される。
【0015】
かかる構成によって、アンモニアセンサを含み、アンモニアを用いて排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する排気浄化装置における、アンモニアセンサの検出値の妥当性を診断することができる。
【0016】
また、上記判定部は、上記窒素酸化物センサの検出値と上記アンモニアセンサの検出値との差分の絶対値が、所定の規定値以下の場合に、上記アンモニアセンサの検出値が妥当であると判定し、上記絶対値が上記規定値より大きい場合に、上記アンモニアセンサの検出値が妥当ではないと判定する、または、上記絶対値が上記規定値未満の場合に、上記アンモニアセンサの検出値が妥当であると判定し、上記絶対値が上記規定値以上の場合に、上記アンモニアセンサの検出値が妥当ではないと判定してもよい。
【0017】
また、上記アンモニアセンサの検出値が妥当ではないと判定された場合に、上記アンモニアセンサの検出値を補正する補正部をさらに備えてもよい。
【0018】
また、上記補正部は、窒素酸化物センサの検出値とアンモニアセンサの検出値との差分の値と、上記窒素酸化物センサの検出値を上記アンモニアセンサの検出値で除算した値とを算出し、上記差分の値がアンモニア濃度によって変わるか否かに基づいて、上記差分の値、または、上記除算した値を用いて、上記アンモニアセンサの検出値を補正してもよい。
【0019】
また、上記補正部は、上記差分の値がアンモニア濃度によって変わる場合には、上記アンモニアセンサの検出値に、上記除算した値を乗じることによって、上記アンモニアセンサの検出値を補正し、上記差分の値がアンモニア濃度によって変わらない場合には、上記アンモニアセンサの検出値に、上記差分の値を加算することによって、上記アンモニアセンサの検出値を補正してもよい。
【0020】
また、上記判定部は、上記エンジンが燃料無噴射状態となってから、所定の時間が経過した後に、上記アンモニアセンサの検出値の妥当性の判定を開始してもよい。
【0021】
また、上記判定部は、上記エンジンが燃料無噴射状態であり、かつ、上記還元触媒への上記還元剤の供給がされていない場合における、上記窒素酸化物センサの検出値と、上記アンモニアセンサの検出値とを比較してもよい。
【0022】
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の観点によれば、エンジンから排出される排気ガスが流入され、アンモニアを用いて上記排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する還元触媒と、上記排気ガスが上記還元触媒へと流入する排気通路に、上記アンモニアを生成させることが可能な還元剤を供給する還元剤供給部と、上記還元触媒から流出する窒素酸化物を検出する窒素酸化物センサと、上記還元触媒から流出するアンモニアを検出するアンモニアセンサと、上記窒素酸化物センサの検出値と上記アンモニアセンサの検出値とに基づいて、上記アンモニアセンサの検出値の妥当性を判定する判定部と、を備え、上記判定部は、上記エンジンが燃料無噴射状態である場合における、上記窒素酸化物センサの検出値と、上記アンモニアセンサの検出値とを比較することによって、上記アンモニアセンサの検出値の妥当性を判定する、排気浄化装置が提供される。
【0023】
かかる構成によって、アンモニアセンサの検出値の妥当性を診断することができる。
【0024】
また、上記目的を達成するために、本発明の第3の観点によれば、エンジンから排出される排気ガスが流入され、アンモニアを用いて上記排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する還元触媒と、上記排気ガスが上記還元触媒へと流入する排気通路に、上記アンモニアを生成させることが可能な還元剤を供給する還元剤供給部と、上記還元触媒から流出する窒素酸化物を検出する窒素酸化物センサと、上記還元触媒から流出するアンモニアを検出するアンモニアセンサとを含む排気浄化装置における、上記アンモニアセンサの検出値の妥当性を診断する診断方法であって、上記窒素酸化物センサの検出値と上記アンモニアセンサの検出値とに基づいて、上記アンモニアセンサの検出値の妥当性を判定するステップを有し、上記判定するステップでは、上記エンジンが燃料無噴射状態である場合における、上記窒素酸化物センサの検出値と、上記アンモニアセンサの検出値とを比較することによって、上記アンモニアセンサの検出値の妥当性が判定される、診断方法が提供される。
【0025】
かかる方法を用いることによって、アンモニアセンサを含み、アンモニアを用いて排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する排気浄化装置における、アンモニアセンサの検出値の妥当性を診断することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、アンモニアセンサを含み、アンモニアを用いて排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する排気浄化装置における、アンモニアセンサの検出値の妥当性を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1A】本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理の一例を示す流れ図である。
図1B】本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理の一例を示す流れ図である。
図2】本発明の実施形態に係る排気浄化装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
(本発明の実施形態に係る診断方法)
本発明の実施形態に係る診断装置と、本発明の実施形態に係る排気浄化装置との構成の一例について説明する前に、本発明の実施形態に係る診断方法について説明する。以下では、本発明の実施形態に係る診断装置が、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を行う場合を例に挙げて、本発明の実施形態に係る診断方法について説明する。なお、後述するように、本発明の実施形態に係る排気浄化装置は、本発明の実施形態に係る診断装置の機能を有する。つまり、本発明の実施形態に係る排気浄化装置が、以下に示す本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を行うことも可能である。
【0030】
[1]本発明の実施形態に係る診断方法の概要
NHを用いて排気ガスに含まれるNOを浄化する排気浄化装置では、例えば下記に示すような理由によって、NOセンサとNHセンサとが還元触媒から流出される排気ガスが通る排気通路に設けられる。
・NOセンサの検出値を用いて還元触媒からの流出されるNHを検出する場合には、還元触媒から流出するNHの濃度を正確に検出することが困難である
・NOセンサの検出値から、還元触媒からの流出されるNHの影響を除外して処理したい場合がある
【0031】
NHセンサが設けられ、NHセンサの検出値が用いられることによって、排気浄化装置では、NOセンサの検出値を用いる場合よりもより正確に還元触媒から流出するNHの濃度を把握することが可能となることが、期待される。よって、排気浄化装置では、例えば、NHセンサの検出値を用いて還元触媒において吸着させることが可能なNHの量を許容値以下に抑えながら制御が行われることによって、排気ガスに含まれるNOの浄化率をより高めることができる可能性がある。また、NHセンサの検出値を用いた制御により、排気ガスに含まれるNOの浄化率をより高めることによって、例えば、将来的に厳しくなることが予想されるNO規制をより容易に満たすことが可能となる。
【0032】
しかしながら、上述したように、例えば、NHセンサの初期不良や経時劣化などによって、NHセンサの検出値と、還元触媒から流出するNHの濃度とが異なる事態が生じうる。また、NHセンサの検出値と、還元触媒から流出するNHの濃度とが異なる事態が生じた場合には、NHセンサが設けられている排気浄化装置を用いたとしても、還元触媒からのNHの流出を低減しつつ、排気ガスに含まれるNOの浄化率の向上を図ることができない恐れがある。
【0033】
そこで、本発明の実施形態に係る診断装置は、NOセンサの検出値とNHセンサの検出値とに基づいて、NHセンサの検出値の妥当性を診断する(診断処理)。本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、エンジンが燃料無噴射状態である場合における、NOセンサの検出値と、NHセンサの検出値とを比較することによって、NHセンサの検出値の妥当性を判定する。
【0034】
ここで、本発明の実施形態に係る“エンジンが燃料無噴射状態である場合”とは、例えば、エンジンからNOが排出されていない状態に該当する。本発明の実施形態に係る燃料無噴射状態は、例えば、車両が坂道を下っている場合にアクセルが踏まれていない状況など、いわゆるオーバーランの状況で生じる。
【0035】
上述したように、NOセンサは、NHにも反応する。また、エンジンが燃料無噴射状態である場合には、エンジンからNOが排出されていないので、エンジンが燃料無噴射状態である場合におけるNOセンサの検出値は、NHの検出結果を示すこととなる。さらに、NOセンサの検出値の妥当性を診断する既存の技術を用いることによって、NOセンサの検出値が妥当であることを保証することは、可能である。
【0036】
したがって、本発明の実施形態に係る診断装置は、エンジンが燃料無噴射状態である場合における、NOセンサの検出値と、NHセンサの検出値とを比較することによって、NHセンサの検出値の妥当性(例えば、NHセンサの検出値が妥当であるか否か)を判定することができる。
【0037】
また、本発明の実施形態に係る診断装置が、NHセンサの検出値の妥当性を診断することによって、NHセンサを備える排気浄化装置におけるNHセンサの検出値の妥当性が保証される。
【0038】
よって、NHセンサを備える排気浄化装置では、例えば、妥当性が保証されるNHセンサの検出値を用いて還元触媒において吸着させることが可能なNHの量を許容値以下に抑えながら制御を行うことが可能となるので、排気ガスに含まれるNOの浄化率をより高めることができる。また、妥当性が保証されるNHセンサの検出値を用いた制御により、排気ガスに含まれるNOの浄化率をより高めることによって、例えば、将来的に厳しくなることが予想されるNO規制をより容易に満たすことができる。
【0039】
なお、本発明の実施形態に係る診断処理は、上記に限られない。
【0040】
例えば、本発明の実施形態に係る診断装置は、エンジンが燃料無噴射状態であり、かつ、還元触媒への還元剤の供給がされていない場合における、NOセンサの検出値と、NHセンサの検出値とを比較してもよい。
【0041】
ここで、本発明の実施形態に係る“還元触媒への還元剤の供給がされていない場合”に、NOセンサとNHセンサとにおいてNHが検出されたときには、検出されたNHは、還元触媒から自然に流出したNHに相当する。つまり、エンジンが燃料無噴射状態であり、かつ、還元触媒への還元剤の供給がされていない場合における、NOセンサの検出値と、NHセンサの検出値とを比較するときには、本発明の実施形態に係る診断装置は、還元触媒から自然に流出したNHに基づいて、NHセンサの検出値の妥当性を判定することとなる。還元触媒からNHが自然に流出する場合としては、例えば、排気温度つまり触媒温度が上昇することによって、触媒におけるNHの飽和吸着量が減少した場合などが挙げられる。なお、本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、還元触媒への還元剤の供給によって、還元触媒から意図的に流出されたNHに基づいて、NHセンサの検出値の妥当性を判定することも可能である。
【0042】
本発明の実施形態に係る診断処理の具体例については、後述する。
【0043】
また、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理は、上記診断処理に限られない。
【0044】
例えば、本発明の実施形態に係る診断装置は、上記診断処理においてNHセンサの検出値が妥当ではないと判定された場合に、NHセンサの検出値を補正してもよい(補正処理)。本発明の実施形態に係る補正処理の具体例については、後述する。
【0045】
[2]本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理
次に、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理について、より具体的に説明する。以下では、本発明の実施形態に係る診断装置が、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を行う場合を例に挙げて、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理の一例について説明する。
【0046】
図1A図1Bは、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理の一例を示す流れ図である。ここで、図1Aに示すステップS100〜S110の処理、および図1Bに示すステップS112〜S118、S128の処理が、本発明の実施形態に係る診断処理の一例に該当する。また、図1Bに示すステップS120〜S126の処理が、本発明の実施形態に係る補正処理の一例に該当する。
【0047】
本発明の実施形態に係る診断装置は、NOセンサが正常であるか否かを判定する(S100)。ステップS100の処理は、NOセンサの検出値の妥当性を診断する処理に該当する。本発明の実施形態に係る診断装置は、ステップS100において、例えば、NOセンサや、圧力センサ、温度センサなど、排気浄化装置に設けられる各種センサの検出値を用いる処理など、NOセンサの検出値の妥当性を診断することが可能な任意の処理を行うことによって、NOセンサが正常であるか否かを判定する。具体例を挙げると、本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、NOセンサの検出値にゼロ点のオフセットがなく、NOセンサの検出値が妥当な値を示すと判定された場合に、NOセンサが正常であると判定する。
【0048】
ステップS100において、NOセンサが正常であると判定されない場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、異常時の処理を行い(S102)、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を終了する。ここで、ステップS102における異常時の処理としては、例えば、排気浄化装置が備えられる車両などのユーザや、排気浄化装置が備えられる車両などを管理するユーザ(例えば、車両などの製造メーカ、販売メーカなど)に対して、NOセンサの異常を通知する処理などが挙げられる。
【0049】
また、ステップS100において、NOセンサが正常であると判定された場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、エンジンが燃料無噴射状態であるか否かを判定する(S104)。本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、エンジンを制御するECU(Engine Control Unit)における制御状態に基づいて、エンジンが燃料無噴射状態であるか否かを判定する。ここで、例えば、本発明の実施形態に係る診断装置が、ECUの機能を有する場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、自装置におけるエンジンの制御状態に基づいて、エンジンが燃料無噴射状態であるか否かを判定する。また、例えば、本発明の実施形態に係る診断装置が、ECUの機能を有さない場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、外部デバイスである外部ECUから伝達される制御状態を示すデータに基づいて、エンジンが燃料無噴射状態であるか否かを判定する。
【0050】
ステップS104においてエンジンが燃料無噴射状態であると判定されない場合には、エンジンは通常運転状態であり、本発明の実施形態に係る診断装置は、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を終了する。
【0051】
ステップS104においてエンジンが燃料無噴射状態であると判定された場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、燃料無噴射状態であると判定されてから所定の第1規定時間が経過したか否かを判定する(S106)。ここで、本発明の実施形態に係る第1規定時間は、予め設定されている固定の時間あってもよいし、ユーザ操作などによって変更可能な可変の時間であってもよい。
【0052】
ステップS106において、燃料無噴射状態であると判定されてから第1規定時間が経過したと判定されない場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、ステップS104からの処理を繰り返す。また、本発明の実施形態に係る診断装置は、ステップS106において燃料無噴射状態であると判定されてから第1規定時間が経過したと判定された場合に、ステップS108以降の処理、NOセンサの検出値と、NHセンサの検出値とを用いた処理を行う。
【0053】
つまり、本発明の実施形態に係る診断装置が、ステップS106の処理を行う場合には、本発明の実施形態に係る診断処理において、エンジンが燃料無噴射状態となってから、所定の時間(図1A図1Bに示す例では、第1規定時間)が経過した後に、NOセンサの検出値とNHセンサの検出値とに基づくNHセンサの検出値の妥当性の判定が開始される。
【0054】
ステップS106において、燃料無噴射状態であると判定されてから第1規定時間が経過したと判定された場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、NOセンサの検出値が所定の規定値Aより大きいか否かを判定する(S108)。なお、本発明の実施形態に係る診断装置は、ステップS108において、NOセンサの検出値が規定値A以上であるか否かを判定することも可能である。
【0055】
ステップS108において、NOセンサの検出値が規定値Aより大きいと判定されない場合には、エンジンは通常運転状態であり、本発明の実施形態に係る診断装置は、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を終了する。また、本発明の実施形態に係る診断装置は、ステップS108においてNOセンサの検出値が規定値Aより大きいと判定された場合に、後述するステップS110以降の処理を行う。つまり、本発明の実施形態に係る規定値Aは、例えば、NOセンサの検出値を用いたNHセンサの検出値の妥当性の判定を行うか否かを判定するための閾値の役目を果たす。
【0056】
ここで、本発明の実施形態に係る規定値Aとしては、例えば、NOセンサの計測精度の範囲内では、NOセンサの検出値を用いたNHセンサの検出値の妥当性の判定を行わせない値が設定される。また、本発明の実施形態に係る規定値Aは、例えば、予め設定されている固定値あってもよいし、ユーザ操作などによって変更可能な可変値であってもよい。
【0057】
ステップS108において、NOセンサの検出値が規定値Aより大きいと判定された場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、NHセンサの検出値が所定の規定値Bより大きいか否かを判定する(S110)。なお、本発明の実施形態に係る診断装置は、ステップS110において、NHセンサの検出値が規定値B以上であるか否かを判定することも可能である。
【0058】
ステップS110において、NHセンサの検出値が規定値Bより大きいと判定されない場合には、エンジンは通常運転状態であり、本発明の実施形態に係る診断装置は、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を終了する。また、本発明の実施形態に係る診断装置は、ステップS110においてNHセンサの検出値が規定値Bより大きいと判定された場合に、後述するステップS112以降の処理を行う。つまり、本発明の実施形態に係る規定値Bは、例えば、NHセンサの検出値を用いたNHセンサの検出値の妥当性の判定を行うか否かを判定するための閾値の役目を果たす。
【0059】
ここで、本発明の実施形態に係る規定値Bとしては、例えば、NHセンサの計測精度の範囲内では、NHセンサの検出値を用いたNHセンサの検出値の妥当性の判定を行わせない値が設定される。また、本発明の実施形態に係る規定値Bは、予め設定されている固定値あってもよいし、ユーザ操作などによって変更可能な可変値であってもよい。
【0060】
ステップS110において、NHセンサの検出値が規定値Bより大きいと判定された場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、NHセンサの妥当性判定に係る処理を開始する(S112)。
【0061】
本発明の実施形態に係る診断装置は、NOセンサの検出値とNHセンサの検出値との差分の絶対値を算出し、当該絶対値が所定の規定値Cより大きいか否かを判定する(S114)。ここで、本発明の実施形態に係る規定値Cは、予め設定されている固定値あってもよいし、ユーザ操作などによって変更可能な可変値であってもよい。なお、本発明の実施形態に係る診断装置は、ステップS114において、NOセンサの検出値とNHセンサの検出値との差分の絶対値が、規定値C以上であるか否かを判定することも可能である。
【0062】
ステップS114において、NOセンサの検出値とNHセンサの検出値との差分の絶対値が規定値Cより大きいと判定されない場合、すなわち、当該絶対値が規定値C以下であると判定された場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、NHセンサの検出値が妥当であると判定する(S116)。そして、本発明の実施形態に係る診断装置は、後述するステップS128からの処理を行う。
【0063】
なお、ステップS114において、NOセンサの検出値とNHセンサの検出値との差分の絶対値が、規定値C以上であるか否かが判定されるときには、本発明の実施形態に係る診断装置は、当該絶対値が規定値C以上であると判定されない場合、すなわち、当該絶対値が規定値C未満であると判定された場合に、NHセンサの検出値が妥当であると判定する。
【0064】
また、ステップS114において、NOセンサの検出値とNHセンサの検出値との差分の絶対値が規定値Cより大きいと判定された場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、NHセンサの検出値が妥当ではないと判定する(S118)。なお、ステップS114において、NOセンサの検出値とNHセンサの検出値との差分の絶対値が、規定値C以上であるか否かが判定されるときには、本発明の実施形態に係る診断装置は、当該絶対値が規定値C以上であると判定された場合に、NHセンサの検出値が妥当ではないと判定する。
【0065】
ステップS118において、NHセンサの検出値が妥当ではないと判定されると、本発明の実施形態に係る診断装置は、NOセンサの検出値とNHセンサの検出値との差分の値(NO値−NH値。以下、「差分値」と示す場合がある。)、および補正値fの計算を開始する(S120)。本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、NOセンサの検出値とNHセンサの検出値とが取得されるごとや、定期的に、差分値および補正値fを計算する。ここで、本発明の実施形態に係る補正値fは、例えば、下記の数式1に示すように、NOセンサの検出値をNHセンサの検出値で除算した値を、補正値として算出する。なお、下記の数式1では、NOセンサの検出値を“NO”と示し、NHセンサの検出値を“NH”と示している。
【0066】
f=NO/NH
・・・(数式1)
【0067】
本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、ステップ120の処理が開始されてから、エンジンにおいて燃料が噴射されたか否かを判定する(S122)。本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、ステップS104の処理と同様に、ECUにおける制御状態に基づいて、エンジンにおいて燃料が噴射されたか否かを判定する。
【0068】
ステップS122において、エンジンにおいて燃料が噴射されたと判定された場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、後述するステップS126の処理を行う。なお、燃料の噴射が始まるとNOが流出する可能性がある。そのため、ステップS122において、エンジンにおいて燃料が噴射されたと判定された場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、補正値の算出を中止した上で、後述するステップS126の処理を行う。
【0069】
また、ステップS122において、エンジンにおいて燃料が噴射されたと判定されない場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、燃料が噴射されない状態において所定の第2規定時間が経過したか否かを判定する(S124)。本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、燃料の噴射が始まるまでは、補正値の信頼性を高めるために、補正値を算出し続ける。つまり、本発明の実施形態に係る診断装置は、複数のNH濃度の状態における補正値を算出し、算出された補正値が近似する値となっているかをみる。そして、本発明の実施形態に係る診断装置は、第2規定時間が経過したときに、補正値の算出を終了する。ここで、本発明の実施形態に係る第2規定時間は、予め設定されている固定の時間あってもよいし、ユーザ操作などによって変更可能な可変の時間であってもよい。
【0070】
ステップS124において燃料が噴射されない状態において第2規定時間が経過したと判定されない場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、ステップS122からの処理を繰り返す。
【0071】
ステップS122においてエンジンにおいて燃料が噴射されたと判定された場合、または、ステップS124において燃料が噴射されない状態で第2規定時間が経過したと判定された場合には、本発明の実施形態に係る診断装置は、NHセンサの検出値の補正を行う(S126)。ここで、本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、ステップS126において、差分値(NO値−NH値)がNH濃度によって変わるか否かに基づいて補正の仕方を変えて、NHセンサの検出値を補正する。
【0072】
より具体的には、本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、ステップS126において、例えば下記の(a)、(b)に示すように、差分値がNH濃度によって変わるか否かに応じた補正の仕方によって、NHセンサの検出値を補正する。
【0073】
(a)差分値がNH濃度によって変わる場合
本発明の実施形態に係る診断装置は、NHセンサの検出値に、補正値fを乗じることによって、NHセンサの検出値を補正する。
【0074】
(b)差分値がNH濃度によって変わらない場合
差分値がNH濃度によって変わらない場合には、NHセンサの検出値のオフセット異常と考えられる。よって、本発明の実施形態に係る診断装置は、NHセンサの検出値に、差分値を加算することによって、NHセンサの検出値を補正する。つまり、差分値がNH3濃度によって変わらない場合、差分値は、補正値の役目を果たす。
【0075】
本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、ステップS126において、例えば上記(a)、上記(b)に示すように、NHセンサの検出値を補正する。なお、本発明の実施形態に係るNHセンサの検出値を補正する方法が、上記(a)、上記(b)に示す例に限られないことは、言うまでもない。
【0076】
ステップS116の処理またはステップS126の処理が行われると、本発明の実施形態に係る診断装置は、NHセンサの妥当性判定に係る処理を終了する(S128)。そして、本発明の実施形態に係る診断装置は、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を終了する。
【0077】
本発明の実施形態に係る診断装置は、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理として、例えば図1A図1Bに示す処理を行う。本発明の実施形態に係る診断装置が、例えば図1A図1Bに示す処理を行うことによって、本発明の実施形態に係る診断処理が実現される。
【0078】
したがって、例えば図1A図1Bに示す処理を行うことによって、本発明の実施形態に係る診断装置は、アンモニアセンサを含み、アンモニアを用いて排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する排気浄化装置における、アンモニアセンサの検出値の妥当性を診断することができる。
【0079】
なお、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理は、図1A図1Bに示す処理に限られない。
【0080】
例えば、本発明の実施形態に係る診断装置は、図1Aに示すステップS106の処理を行わなくてもよい。また、本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、図1Aに示すステップS108の処理、およびステップS110の処理を行わないことも可能である。
【0081】
また、本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、図1Bに示すステップS120〜S126の処理(本発明の実施形態に係る補正処理の一例)を行わないことも可能である。
【0082】
図1A図1Bにおける上記の各ステップが行われない場合であっても、本発明の実施形態に係る診断処理が実現される。よって、図1A図1Bにおける上記の各ステップが行われない場合であっても、本発明の実施形態に係る診断装置は、アンモニアセンサを含み、アンモニアを用いて排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する排気浄化装置における、アンモニアセンサの検出値の妥当性を診断することができる。
【0083】
(本発明の実施形態に係る診断装置、排気浄化装置)
次に、上述した本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を行うことが可能な、本発明の実施形態に係る診断装置、排気浄化装置の構成の一例について、説明する。
【0084】
[I]本発明の実施形態に係る排気浄化装置
図2は、本発明の実施形態に係る排気浄化装置100の構成の一例を示すブロック図である。ここで、図2では、燃料を燃焼させて排気ガスを排出するエンジン200を併せて示している。エンジン200としては、例えば、ディーゼルエンジンなどのように、NOを含む排気ガスを排出するエンジンが挙げられる。
【0085】
排気浄化装置100は、例えば、還元触媒102と、還元剤供給部104と、NOセンサ106と、NHセンサ108と、制御部110とを備える。還元触媒102には、エンジン200から排出された排気ガスが流入される排気通路112A(排気ガスが還元触媒102へと流入する排気通路)と、還元触媒102から排気ガスが排出される排気通路112Bとが接続される。
【0086】
また、排気浄化装置100は、例えば、DPF(Diesel Particulate Filter)のような、排気ガスからPM(Particulate Matter)やすすを低減させるフィルタ(図示せず)や、温度センサなどの各種センサ(図示せず)をさらに備えていてもよい。
【0087】
還元触媒102は、エンジン200から排出される排気ガスが流入され、NHを用いて排気ガスに含まれるNOを浄化する。還元触媒102は、還元剤として供給される尿素水溶液やアンモニア水が、例えば加水分解や熱分解などによって分解されることによって生成されるNHを吸着し、NHと流入される排気ガスに含まれるNOとの還元反応を促進させる。還元触媒102によりNHとNOとの還元反応が促進されることによって、流入される排気ガスに含まれるNOは、窒素や水、二酸化炭素などに分解され、排気ガスに含まれるNOは、浄化される。
【0088】
ここで、還元触媒102としては、NHとNOとの還元反応を促進する機能を有する任意の触媒が挙げられる。
【0089】
還元剤供給部104は、排気通路112Aに、NHを生成させることが可能な還元剤を供給する。還元剤が排気通路112Aに供給されることによってNHが生成され、生成されたNHが還元触媒102へと流入される。ここで、本発明の実施形態に係る還元剤としては、例えば、尿素水溶液やアンモニア水など、分解されることによってNHを生成させることが可能な任意の水溶液が挙げられる。
【0090】
還元剤供給部104は、例えば、還元剤が貯蔵される貯蔵タンク150と、還元剤噴射弁152と、制御部110から伝達される制御信号により制御されるポンプ154とを主な構成要素として備える。貯蔵タンク150とポンプ154とは、還元剤供給通路156Aで接続され、また、ポンプ154と還元剤噴射弁152とは、還元剤供給通路156Bで接続される。また、還元剤供給通路156Bには、貯蔵タンク150へと続く循環通路158が設けられる。循環通路158には、オリフィス160が設けられ、オリフィス160によって循環通路158を介して貯蔵タンク150に戻される還元剤の流れに抵抗が与えられ、還元剤供給通路156内の圧力が高められる。
【0091】
還元剤供給部104は、例えば図2に示すような構成を有し、制御部110からそれぞれに伝達される制御信号によって、ポンプ154の動作と、還元剤噴射弁152の開閉とが制御されることによって、還元剤を還元触媒102へ供給する。
【0092】
なお、本発明の実施形態に係る還元剤供給部の構成は、図2に示す構成に限られない。
【0093】
例えば、本発明の実施形態に係る還元剤供給部は、還元剤供給通路156Bの圧力を計測する圧力センサ(図示せず)が備えられていてもよい。圧力センサ(図示せず)を備える場合、制御部110は、例えば、圧力センサ(図示せず)の検出値を用いて、ポンプ154の動作と還元剤噴射弁152の開閉とを制御する。
【0094】
また、本発明の実施形態に係る還元剤供給部は、還元剤を還元触媒102へ供給することが可能な、公知の構成であってもよい。
【0095】
NOセンサ106は、排気通路112Bに設けられ、還元触媒102から流出するNOを検出する。NOセンサ106としては、例えば、NOを検出することが可能であり、NHにも反応する、公知のNOセンサが挙げられる。
【0096】
NHセンサ108は、排気通路112Bに設けられ、還元触媒102から流出するNHを検出する。NHセンサ108としては、例えば、一種類のイオンのみを伝導させる性質をもつ固体電解質を用いたNHセンサなど、NHを検出することが可能な、公知のNHセンサが挙げられる。
【0097】
排気浄化装置100では、図2に示すように、NOセンサ106とNHセンサ108とが排気通路112Bに設けられる。ここで、NOセンサ106とNHセンサ108とは、例えば、NHの濃度分布の偏りの影響を受けないような位置に設置される。理想的には、例えば、NOセンサ106とNHセンサ108とそれぞれ検出するNHの濃度が、一致する位置に、NOセンサ106とNHセンサ108とが設置されることが望ましい。
【0098】
なお、例えば図1BのステップS114に示すように、排気浄化装置100は、NOセンサの検出値とNHセンサの検出値との差分の絶対値と、所定の規定値Cとの比較結果に基づいて、NHセンサの検出値の妥当性を判定することが可能である。よって、仮に、NOセンサ106とNHセンサ108とそれぞれ検出するNHの濃度が一致しない場合であっても、排気浄化装置100は、本発明の実施形態に係る診断処理によって、NHセンサ108の検出値の妥当性を診断することができる。
【0099】
制御部110は、例えば、DCU(Dosing Control Unit)などで構成され、排気浄化装置100全体を制御する役目を果たす。また、例えば、制御部110が、ECUを備える場合(または、DCUがECUの機能を有する場合)には、制御部110は、エンジン200を制御する役目を果たす。ここで、図2では、制御部110が排気浄化装置100全体とエンジン200とを制御する例、すなわち、制御部110がDCUおよびECUの機能を有する例を示している
【0100】
また、制御部110は、例えば、判定部120と、補正部122とを備え、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を主導的に行う役目を果たす。
【0101】
判定部120は、本発明の実施形態に係る診断処理を主導的に行う役目を果たし、NOセンサ106の検出値とNHセンサ108の検出値とに基づいて、NHセンサ108の検出値の妥当性を診断する。判定部120は、例えば、エンジン200が燃料無噴射状態である場合における、NOセンサ106の検出値と、NHセンサ108の検出値とを比較することによって、NHセンサ108の検出値の妥当性を判定する。また、判定部120は、例えば、図1Aに示すステップS100〜S110の処理、および図1Bに示すステップS112〜S118、S128の処理などを行うことによって、NHセンサ108の検出値の妥当性を判定してもよい。
【0102】
補正部122は、本発明の実施形態に係る補正処理を主導的に行う役目を果たし、判定部120においてNHセンサ108の検出値が妥当ではないと判定された場合に、NHセンサ108の検出値を補正する。補正部122は、例えば、図1Bに示すステップS120〜S126の処理を行うことによって、NHセンサ108の検出値を補正する。
【0103】
制御部110は、例えば、判定部120および補正部122を備えることによって、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を主導的に行う。
【0104】
なお、本発明の実施形態に係る制御部の構成は、図2に示す構成に限られない。
【0105】
例えば、本発明の実施形態に係る制御部は、補正部122を備えない構成をとってもよい。補正部122を備えない構成であっても、本発明の実施形態に係る制御部は、本発明の実施形態に係る診断処理を行うことが可能である。よって、本発明の実施形態に係る制御部が補正部122を備えない構成であっても、本発明の実施形態に係る排気浄化装置は、NHセンサ108の検出値の妥当性を診断することができる。
【0106】
排気浄化装置100は、例えば図2に示す構成によって、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理(例えば、本発明の実施形態に係る診断処理、および本発明の実施形態に係る補正処理)を行う。したがって、排気浄化装置100は、例えば図2に示す構成によって、NHセンサ108の検出値の妥当性を診断することができる。
【0107】
なお、本発明の実施形態に係る排気浄化装置の構成は、図2に示す構成に限られない。
【0108】
例えば、本発明の実施形態に係る排気浄化装置は、図2に示す判定部120、および補正部122の一方、または双方を、個別に備える(例えば、判定部120、および補正部122の一方、または双方を、制御部110とは別体の処理回路で実現する)ことができる。
【0109】
また、上述したように、本発明の実施形態に係る排気浄化装置は、補正部122を備えない構成をとることも可能である。
【0110】
[II]本発明の実施形態に係る診断装置
本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、図2に示す制御部110と同様の構成を有し、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を主導的に行う。本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば、排気浄化装置(例えば、図2に示す還元触媒102、還元剤供給部104、NOセンサ106、およびNHセンサ108を備える排気浄化装置)から取得されるNOセンサ106の検出値とNHセンサ108の検出値とに基づいて、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を行う。
【0111】
したがって、本発明の実施形態に係る診断装置は、例えば上記に示す構成によって、図2に示す排気浄化装置100と同様に、NHセンサ108の検出値の妥当性を診断することができる。
【0112】
なお、本発明の実施形態に係る診断装置の構成は、上記に示す構成に限られない。
【0113】
例えば、本発明の実施形態に係る診断装置は、上述した本発明の実施形態に係る排気浄化装置の変形例に係る構成と、同様の構成をとることが可能である。
【0114】
また、本発明の実施形態に係る診断装置は、図2に示す排気浄化装置100(変形例に係る構成も含む)と同様の構成をとってもよい。すなわち、本発明の実施形態に係る診断装置は、本発明の実施形態に係る排気浄化装置として機能することも可能である。
【0115】
[III]
以上のように、本発明の実施形態に係る診断装置と、本発明の実施形態に係る排気浄化装置とは、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理として、例えば、上述した本発明の実施形態に係る診断処理を行う。
【0116】
したがって、本発明の実施形態に係る診断装置と、本発明の実施形態に係る排気浄化装置とは、アンモニアセンサを含み、アンモニアを用いて排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する排気浄化装置における、アンモニアセンサの検出値の妥当性を診断することができる。
【0117】
また、NHセンサの検出値の妥当性が保証されることによって、本発明の実施形態に係る排気浄化装置(または、本発明の実施形態に係る診断装置における診断結果を用いる排気浄化装置)は、排気ガスに含まれるNOの浄化率をより高めることができ、また、将来的に厳しくなることが予想されるNO規制をより容易に満たすことができる。
【0118】
以上、本発明の実施形態として排気浄化装置を挙げて説明したが、本発明の実施形態は、例えば、車両や船舶など、ディーゼルエンジンなどのようにNOを含む排気ガスを排出するエンジンで駆動する移動体に適用することが可能である。
【0119】
また、本発明の実施形態として診断装置を挙げて説明したが、本発明の実施形態は、かかる形態に限られない。本発明の実施形態として診断装置は、例えば、車両や船舶など、ディーゼルエンジンなどのようにNOを含む排気ガスを排出するエンジンで駆動する移動体に適用することが可能である。また、本発明の実施形態は、例えば、上記のような移動体に組み込むことが可能な、DCUや、ECU、処理IC(Integrated Circuit)に適用することもできる。
【0120】
(本発明の実施形態に係るプログラム)
コンピュータを、本発明の実施形態に係る診断装置、または、本発明の実施形態に係る排気浄化装置として機能させるためのプログラム(例えば、“本発明の実施形態に係る診断処理”や、“本発明の実施形態に係る診断処理、および本発明の実施形態に係る補正処理”など、本発明の実施形態に係る診断方法に係る処理を実行することが可能なプログラム)が、コンピュータにおいて実行されることによって、アンモニアセンサを含み、アンモニアを用いて排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する排気浄化装置における、アンモニアセンサの検出値の妥当性を診断することができる。
【0121】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0122】
例えば、上記では、コンピュータを、本発明の実施形態に係る診断装置、または、本発明の実施形態に係る排気浄化装置として機能させるためのプログラム(コンピュータプログラム)が提供されることを示したが、本発明の実施形態は、さらに、上記プログラムを記憶させた記録媒体も併せて提供することができる。
【符号の説明】
【0123】
100 排気浄化装置
102 還元触媒
104 還元剤供給部
106 NOセンサ
108 NHセンサ
110 制御部
112A、112B 排気通路
120 判定部
122 補正部
200 エンジン
図1A
図1B
図2