(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238567
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】放電回路、電源装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
H02M7/06 H
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-106152(P2013-106152)
(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公開番号】特開2014-45643(P2014-45643A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2016年5月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-171145(P2012-171145)
(32)【優先日】2012年8月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100066061
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】松本 真一郎
【審査官】
北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−234481(JP,A)
【文献】
特開2001−306160(JP,A)
【文献】
特開平11−052779(JP,A)
【文献】
特開2011−010295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧の入力ライン間に接続された容量素子の電荷を放電する放電回路において、
直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第一回路と、
直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第二回路と、を有し、
前記第一回路の複数の抵抗素子の間と前記第二回路の複数の抵抗素子の間を接続し、
前記第一回路と前記第二回路の複数の抵抗素子のいずれか1つが故障した場合、前記容量素子の電荷を所定値まで放電するための時間は1秒以下であることを特徴とする放電回路。
【請求項2】
交流電圧の入力ライン間に接続された容量素子の電荷を放電する放電回路において、
直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第一回路と、
直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第二回路と、を有し、
前記第一回路の複数の抵抗素子の間と前記第二回路の複数の抵抗素子の間を接続し、
前記第一回路の複数の抵抗素子の接続部と前記第二回路の複数の抵抗素子の接続部を抵抗素子を介して接続することを特徴とする放電回路。
【請求項3】
前記第一回路と前記第二回路の抵抗素子の数は2以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の放電回路。
【請求項4】
前記第一回路の複数の抵抗素子及び前記第二回路の複数の抵抗素子の抵抗値は同じであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放電回路。
【請求項5】
交流電圧の入力ライン間に接続された容量素子と、
前記交流電圧を整流及び平滑して出力する整流平滑手段と、
直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第一回路と、
直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第二回路と、を有し、
前記第一回路の複数の抵抗素子の間と前記第二回路の複数の抵抗素子の間を接続し、
前記第一回路と前記第二回路の複数の抵抗素子のいずれか1つが故障した場合、前記容量素子の電荷を所定値まで放電するための時間は1秒以下であることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
交流電圧の入力ライン間に接続された容量素子と、
前記交流電圧を整流及び平滑して出力する整流平滑手段と、
直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第一回路と、
直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第二回路と、を有し、
前記第一回路の複数の抵抗素子の間と前記第二回路の複数の抵抗素子の間を接続し、
前記第一回路の複数の抵抗素子の接続部と前記第二回路の複数の抵抗素子の接続部を抵抗素子を介して接続することを特徴とする電源装置。
【請求項7】
前記第一回路と前記第二回路の抵抗素子の数は2以上であることを特徴とする請求項5または6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記第一回路の複数の抵抗素子及び前記第二回路の複数の抵抗素子の抵抗値は同じであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項9】
記録材に画像を形成する画像形成装置において、
画像を形成するための画像形成手段と、
前記画像形成装置に電力を供給する電源と、を有し、
前記電源は、交流電圧の入力ライン間に接続された容量素子と、前記交流電圧を整流及び平滑して出力する整流平滑手段と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第一回路と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第二回路と、を有し、前記第一回路の複数の抵抗素子の間と前記第二回路の複数の抵抗素子の間を接続し、
前記第一回路と前記第二回路の複数の抵抗素子のいずれか1つが故障した場合、前記容量素子の電荷を所定値まで放電するための時間は1秒以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
記録材に画像を形成する画像形成装置において、
画像を形成するための画像形成手段と、
前記画像形成装置に電力を供給する電源と、を有し、
前記電源は、交流電圧の入力ライン間に接続された容量素子と、前記交流電圧を整流及び平滑して出力する整流平滑手段と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第一回路と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第二回路と、を有し、前記第一回路の複数の抵抗素子の間と前記第二回路の複数の抵抗素子の間を接続し、
前記第一回路の複数の抵抗素子の接続部と前記第二回路の複数の抵抗素子の接続部を抵抗素子を介して接続することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記第一回路と前記第二回路の抵抗素子の数は2以上であることを特徴とする請求項9または10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記第一回路の複数の抵抗素子及び前記第二回路の複数の抵抗素子の抵抗値は同じであることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記画像形成手段を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段の動作を制御するコントローラと、を有し、
前記電源は、前記コントローラに電力を供給することを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用交流電源に接続される放電回路、電源装置及びその電源装置を搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5(a)は、従来の電源装置を備える電子機器である。尚、符号の詳細は後述する実施例で説明する。このような構成の電子機器では、アウトレットL1a,L2aからインレットL1b,L2bを引き抜いた際、電力供給ライン間(以下、インレットL1b,L2b間という)にはアクロス・ザ・ライン・コンデンサ(以下、Xコンデンサ)Cxに充電された電圧が観測される。しかし、インレットL1b,L2bを引き抜いた後、インレットL1b,L2b間に長時間に渡って高い電圧が発生していることは望ましくない。そこで、XコンデンサCxと並列に放電抵抗Rd1を設けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
インレットL1b,L2bを引き抜いた後の、インレットL1b,L2b間の電圧波形を
図5(b)に示す。
図5(b)の横軸は時間、縦軸はインレットL1b,L2b間の電圧を示す。時刻t=0でインレットL1b,L2bをアウトレットL1a,L2aから引き抜くと、インレットL1b,L2b間には、最大で+V
pk(商用交流電源電圧のピーク値)が発生する。この電圧はXコンデンサCxに充電された電圧であり、その後、放電抵抗Rd1を介して放電され低下していく。この電圧低下曲線は、所謂RC放電曲線であり、インレットL1b,L2b間の電圧V(t)、時刻tを用いて、概ね次式で表される。
式(1)中のτは時定数と呼ばれる値であり、放電抵抗Rd1の抵抗値をr
0、XコンデンサCxの静電容量をcとして、概ね次式で表される。
【0004】
一般に、インレットL1b,L2bを引き抜いて1秒後のインレットL1b,L2b間の電圧V(1sec)が、初期値V
pkの36.8%(=e
−1:定数eはネイピア数)以下になること(次式)が望ましい。
従って、時定数τは、1以下であること(次式)が望ましい。
尚、放電抵抗Rd1で消費される電力Pは、商用交流電源電圧が正弦波である場合、概ね次式で表される。
【0005】
仮に、XコンデンサCxの静電容量c=1.0[uF]、商用交流電源電圧のピーク値が325[Vdc](=AC230[Vrms]×√2)であった場合、式(4)より、放電抵抗Rd1の抵抗値r
0≒1.0[MΩ]以下であることが望ましい。この場合、式(5)より、P≒53[mW]となる。
【0006】
このような構成では、放電抵抗Rd1がオープン故障した場合、又は、放電抵抗Rdiの抵抗素子に異常が発生して放電機能が低下した場合等は、インレットL1b,L2bを引き抜いた後に、XコンデンサCxの放電に長い時間を要することとなる。この場合、長時間に渡って、インレットL1b,L2b間に高い電圧が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−306160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、放電抵抗が故障又は異常が発生した場合にも、インレットを引き抜いた後にすみやかに電源供給ライン間の電圧を低下させることが望ましい。
【0009】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、放電抵抗が故障又は異常が発生した場合にも、インレットを引き抜いた後にすみやかに電源供給ライン間の電圧を低下させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。
【0011】
(1)交流電圧の入力ライン間に接続された容量素子の電荷を放電する放電回路において、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第一回路と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第二回路と、を有し、前記第一回路の複数の抵抗素子の間と前記第二回路の複数の抵抗素子の間を接続し
、前記第一回路と前記第二回路の複数の抵抗素子のいずれか1つが故障した場合、前記容量素子の電荷を所定値まで放電するための時間は1秒以下であることを特徴とする放電回路。
(2)
交流電圧の入力ライン間に接続された容量素子の電荷を放電する放電回路において、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第一回路と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第二回路と、を有し、前記第一回路の複数の抵抗素子の間と前記第二回路の複数の抵抗素子の間を接続し、前記第一回路の複数の抵抗素子の接続部と前記第二回路の複数の抵抗素子の接続部を抵抗素子を介して接続することを特徴とする放電回路。
(3)交流電圧の入力ライン間に接続された容量素子と、前記交流電圧を整流及び平滑して出力する整流平滑手段と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第一回路と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第二回路と、を有し、前記第一回路の複数の抵抗素子の間と前記第二回路の複数の抵抗素子の間を接続し
、前記第一回路と前記第二回路の複数の抵抗素子のいずれか1つが故障した場合、前記容量素子の電荷を所定値まで放電するための時間は1秒以下であることを特徴とする電源装置。
(4)交流電圧の入力ライン間に接続された容量素子と、前記交流電圧を整流及び平滑して出力する整流平滑手段と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第一回路と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第二回路と、を有し、前記第一回路の複数の抵抗素子の間と前記第二回路の複数の抵抗素子の間を接続し、前記第一回路の複数の抵抗素子の接続部と前記第二回路の複数の抵抗素子の接続部を抵抗素子を介して接続することを特徴とする電源装置。
(5)記録材に画像を形成する画像形成装置において、画像を形成するための画像形成手段と、前記画像形成装置に電力を供給する電源と、を有し、前記電源は、交流電圧の入力ライン間に接続された容量素子と、前記交流電圧を整流及び平滑して出力する整流平滑手段と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第一回路と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第二回路と、を有し、前記第一回路の複数の抵抗素子の間と前記第二回路の複数の抵抗素子の間を接続し
、前記第一回路と前記第二回路の複数の抵抗素子のいずれか1つが故障した場合、前記容量素子の電荷を所定値まで放電するための時間は1秒以下であることを特徴とする画像形成装置。
(6)記録材に画像を形成する画像形成装置において、画像を形成するための画像形成手段と、前記画像形成装置に電力を供給する電源と、を有し、前記電源は、交流電圧の入力ライン間に接続された容量素子と、前記交流電圧を整流及び平滑して出力する整流平滑手段と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第一回路と、直列に接続された複数の抵抗素子を備え、前記入力ライン間に接続された第二回路と、を有し、前記第一回路の複数の抵抗素子の間と前記第二回路の複数の抵抗素子の間を接続し、前記第一回路の複数の抵抗素子の接続部と前記第二回路の複数の抵抗素子の接続部を抵抗素子を介して接続することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放電抵抗が故障又は異常が発生した場合にも、インレットを引き抜いた後にすみやかに電源供給ライン間の電圧を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】従来例の電源装置の構成を示す図、放電曲線を示すグラフ
【
図6】実施例1〜3の電源装置の前提となる構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明を実施するための形態を、実施例により詳しく説明する。
【0020】
本発明の電源装置の前提となる構成について
図6に基づき説明する。
図6に示すように放電抵抗を2本(Rd1,Rd2)並列に接続すれば、いずれか一方がオープン故障した場合、他方でXコンデンサCxの放電を担うことができる。
【0021】
図6のように放電抵抗を2本並列に接続する構成の場合、次のようになることが望ましい。即ち、放電抵抗Rd1,Rd2のいずれか一方がオープン故障した場合でも、インレットL1b,L2bを引き抜いた1秒後のインレットL1b,L2b間の電圧V(1sec)が、初期値V
pkの36.8%(=e
−1)以下になることが望ましい。ここで、Rd1の抵抗値=Rd2の抵抗値=r
1とすると、次式を満たすことが望ましい。
【0022】
一方、正常状態即ち放電抵抗Rd1,Rd2ともにオープン故障していない状態で放電抵抗Rd1,Rd2により消費される電力P’は、概ね次式で表される。
仮に、XコンデンサCxの静電容量c=1.0[uF]、商用交流電源電圧のピーク値が325[Vdc](=AC230[Vrms]×√2)であった場合、式(6)より、Rd1,Rd2の抵抗値はr
1≒1.0[MΩ]以下であることが望ましい。この場合、式(7)より、P’≒107[mW]となる。即ち、放電抵抗が2本並列に接続されている場合の正常状態における消費電力P’(≒107[mW])が、放電抵抗が1本接続されている場合の消費電力P(≒53[mW])の2倍となる。このように、放電抵抗を2本(Rd1,Rd2)並列に接続した場合、放電抵抗での消費電力が大きくなるという課題がある。
【0023】
以下に、放電抵抗を複数設けてオープン故障に対応し、且つ、放電抵抗の消費電力を低減するための構成例について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1に、実施例1の電源装置を示す。電源装置は、商用交流電源Vacの出力端子であるアウトレットL1a,L2aに接続されたインレットL1b(第一入力端子),L2b(第二入力端子)から、商用交流電源Vacの電力供給を受ける。インレットL1b,L2bの間には、商用交流電源電圧に重畳されたノイズが電源装置に入力するのを抑制するために、アクロス・ザ・ライン・コンデンサ(所謂Xコンデンサ)Cxが接続されている。電源装置に供給された商用交流電源電圧は、ダイオードD101,D102,D103,D104からなるブリッジ回路DA1で整流され、その後、一次電解コンデンサC1で平滑化され、概ね一定の直流電圧となる。この直流電圧は、本実施例の電源装置を備える電子機器等の負荷Loadに供給される。
【0025】
本実施例では、インレットL1b,L2b間に、抵抗Rd11(第一抵抗)と抵抗Rd12(第二抵抗)を直列に接続する(以下、第一抵抗群という)。且つ、インレットL1b,L2b間に、抵抗Rd21(第三抵抗)と抵抗Rd22(第四抵抗)を直列に接続する(以下、第二抵抗群という)。即ち、第一抵抗群と第二抵抗群をXコンデンサCxに並列に接続する。更に、抵抗Rd11と抵抗Rd12の接続箇所と、抵抗Rd21と抵抗Rd22の接続箇所を接続する。即ち、本実施例では、放電抵抗を形成する複数の抵抗をはしご(ラダー)状に接続する。尚、いずれの抵抗もオープン故障していない場合、放電抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22の抵抗値が全て等しいときには、抵抗Rd11と抵抗Rd12の接続箇所と、抵抗Rd21と抵抗Rd22の接続箇所は、同電位となる。これらの抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22を、XコンデンサCxの放電抵抗とする(以下、放電抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22という)。
【0026】
ここで、放電抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22の抵抗値を、全てr
2とした場合、放電抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22のいずれか1本がオープン故障した場合の時定数τは概ね次式で表される。
いずれか一本がオープン故障した場合でも、インレットL1b,L2bを引き抜いてから1秒後のインレットL1b,L2b間の電圧V(1sec)が、初期値V
pkの36.8%(=e
−1)以下になることが望ましい。即ち、次式を満たすことが望ましい。
【0027】
一方、正常状態即ち放電抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22のいずれもオープン故障していない状態において、放電抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22で消費される電力P’は、概ね次式で表される。
仮に、XコンデンサCxの静電容量c=1.0[uF]、商用交流電源電圧のピーク値が325[Vdc](=AC230[Vrms]×√2)であったとする。この場合、式(9)より、放電抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22の抵抗値がr
2≒670[kΩ]以下であることが望ましい。この場合、式(10)より、P’≒79[mW]となる。このように、本実施例のように構成することによって、
図6で説明した、2本の放電抵抗が並列に接続されている場合の消費電力P’(≒107[mW])よりも、正常状態における消費電力を低減することができる。
【0028】
以上、本実施例によれば、放電抵抗が故障又は異常が発生した場合にも、インレットを引き抜いた後にすみやかに電源供給ライン間の電圧を低下させることができる。
【実施例2】
【0029】
図2に、実施例2の電源装置を示す。
図1等と同様の箇所には同じ符号を付し、説明を省略する。実施例1では、抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22で構成した放電抵抗を、本実施例ではm行n列のマトリクス状に構成したことが特徴である。
【0030】
具体的には次のような構成とする。即ち、抵抗Rd11、抵抗Rd12、・・・、抵抗Rd1nを直列に接続した抵抗群を第1直列抵抗群とし、抵抗Rd21、抵抗Rd22、・・・、抵抗Rd2nを直列に接続した抵抗群を第2直列抵抗群とする。更に、抵抗Rdm1、抵抗Rdm2、・・・、抵抗Rdmnを直列に接続した抵抗群を第m直列抵抗群とする。ここで、m≧2且つn≧2である。そして、複数の抵抗群である第1直列抵抗群から第m直列抵抗群までのm個の直列抵抗群を、XコンデンサCxに並列に接続する。そして、第1直列抵抗群における各抵抗間の接続箇所と、第2直列抵抗群における対応する各抵抗間の接続箇所とを、それぞれ接続する。同様に、第2直列抵抗群における各抵抗間の接続箇所と、第3直列抵抗群における対応する各抵抗間の接続箇所とを、それぞれ接続する。このように、第j直列抵抗群における各抵抗間の接続箇所と、第(j+1)直列抵抗群における対応する各抵抗間の接続箇所とを、それぞれ接続する。即ち、各抵抗群の各抵抗の接続箇所と、各抵抗群に隣り合う抵抗群の各抵抗の対応する接続箇所とを接続する。ここで、1≦j≦(m−1)である。尚、いずれの抵抗もオープン故障していない場合、放電抵抗を構成する全ての抵抗の抵抗値が等しいときは、所定の接続箇所と、その所定の接続箇所に隣り合う接続箇所は、同電位となる。例えば、抵抗Rd22と抵抗Rd23の接続箇所と、抵抗Rd32と抵抗Rd33の接続箇所は、同電位となる。
【0031】
以下、m×n個の抵抗をm行n列のマトリクス状に接続した放電抵抗を、放電抵抗群Rdmnという。放電抵抗群Rdmnの抵抗値を、全てr
3とした場合、いずれか1本がオープン故障した場合の合成抵抗値が[{1/(m−1)+(n−1)/m}×r
3]となるため、時定数τは概ね次式で表される。
いずれか一本がオープン故障した場合でも、インレットL1b,L2bを引き抜いた1秒後のインレットL1b,L2b間の電圧V(1sec)が、初期値V
pkの36.8%(=e
−1)以下になることが望ましい。即ち、次式を満たすことが望ましい。
【0032】
一方、正常状態即ちいずれの抵抗もオープン故障していない状態において、放電抵抗の合成抵抗値が(n/m×r
3)となるため、放電抵抗で消費される電力P’は、概ね次式で表される。
仮に、XコンデンサCxの静電容量c=1.0[uF]、商用交流電源電圧のピーク値が325[Vdc](=AC230[Vrms]×√2)、m=5行、n=5列であったとする。この場合、式(12)より、放電抵抗群Rdmnの抵抗値r
3≒950[kΩ]以下であることが望ましい。この場合、式(13)より、P’≒56[mW]となる。このように、本実施例のように構成することによって、
図6で説明した、2本の放電抵抗が並列に接続されている場合の消費電力P’(≒107[mW])よりも、正常状態における消費電力を低減することができる。
【0033】
尚、mとnの値について、m=n=1とした場合は
図5(a)と同じ構成となる。また、m=2、n=1とした場合は
図6と同じ構成となる。更に、m=1、n=2とした場合は2本の抵抗を直列に接続した構成となり、2本の抵抗のいずれか1本がオープン故障を起こすと、放電できなくなる。このため、本実施例の放電抵抗群Rdmnをマトリクス状に接続する構成においては、m≧2且つn≧2とする。実施例1で説明した構成は、本実施例におけるm=n=2の場合に相当する。
【0034】
以上、本実施例によれば、放電抵抗が故障又は異常が発生した場合にも、インレットを引き抜いた後にすみやかに電源供給ライン間の電圧を低下させることができる。
【実施例3】
【0035】
図3(a)に、実施例3の電源装置を示す。
図1等と同様の箇所には同じ符号を付し、説明を省略する。インレットL1b,L2b間に、抵抗Rd11と抵抗Rd12を直列接続に接続し、且つ、インレットL1b,L2b間に、抵抗Rd21と抵抗Rd22を直列接続に接続する。本実施例では、更に抵抗Rd11と抵抗Rd12の接続箇所と、抵抗Rd21と抵抗Rd22の接続箇所を、抵抗Rd11yを介して接続する。尚、抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22がオープン故障しておらず、且つ、全ての抵抗の抵抗値が等しい場合には、抵抗Rd11と抵抗Rd12の接続箇所と、抵抗Rd21と抵抗Rd22の接続箇所は、同電位となる。以上の抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22,Rd11yを、XコンデンサCxの放電抵抗とする。
【0036】
抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22,Rd11yの抵抗値を、全てr
4とした場合、抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22のいずれか1本がオープン故障した場合の時定数τ
aは概ね次式で表される。
【0037】
一方、抵抗Rd11yがオープン故障した場合の時定数τ
bは概ね次式で表される。
いずれか一本がオープン故障した場合でも、インレットL1b,L2bを引き抜いた1秒後のインレットL1b,L2b間の電圧V(1sec)が、初期値V
pkの36.8%(=e
−1)以下になることが望ましい。式(14−a),式(14−b)より、τ
a>τ
bであるから、次式を満たすことが望ましい。
【0038】
ここで、正常状態即ち抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22,Rd11yのいずれもオープン故障していない状態において、放電抵抗で消費される電力P’は、概ね次式で表される。
【0039】
仮に、XコンデンサCxの静電容量c=1.0[uF]、商用交流電源電圧のピーク値が325[Vdc](=AC230[Vrms]×√2)であったとする。この場合、式(15)より、抵抗Rd11,Rd12,Rd21,Rd22,Rd11yの抵抗値r
4≒600[kΩ]以下であることが望ましい。この場合、式(16)より、P’≒88[mW]となる。このように、本実施例のように構成することによって、
図6で説明した、2本の放電抵抗が並列に接続されている場合の消費電力P’(≒107[mW])よりも、正常状態における消費電力を低減することができる。
【0040】
尚、
図3(b)に示すように、マトリクス状に抵抗を接続することで、さらに放電抵抗での消費電力を抑制することが可能である。即ち、実施例2で説明したように、抵抗Rdm1、抵抗Rdm2、・・・、抵抗Rdmnを直列に接続した抵抗群を第m直列抵抗群とし、第1直列抵抗群から第m直列抵抗群までのm個の直列抵抗群を、XコンデンサCxに並列に接続する。本実施例では、第1直列抵抗群における各抵抗間の接続箇所と、第2直列抵抗群における対応する各抵抗間の接続箇所とを、それぞれ抵抗Rd11y,Rd12y、・・・、Rd1(n−1)yを介して接続する。同様に、第2直列抵抗群における各抵抗間の接続箇所と、第3直列抵抗群における対応する各抵抗間の接続箇所とを、それぞれ抵抗Rd21y、Rd22y、・・・、Rd2(n−1)yを介して接続する。このように、第j直列抵抗群における各抵抗間の接続箇所と、第(j+1)直列抵抗群における対応する各抵抗間の接続箇所とを、それぞれ抵抗Rdjkyを介して接続する。即ち、各抵抗群の各抵抗の接続箇所と、各抵抗群に隣り合う抵抗群の各抵抗の対応する接続箇所とを、抵抗を介して接続する。ここで、1≦j≦(m−1)、1≦k≦(n−1)である。尚、いずれの抵抗もオープン故障していない場合、放電抵抗を構成する全ての抵抗の抵抗値が等しいときは、所定の接続箇所と、その所定の接続箇所に隣り合う接続箇所は、同電位となる。例えば、抵抗Rd22と抵抗Rd23の接続箇所と、抵抗Rd32と抵抗Rd33の接続箇所は、同電位となる。
【0041】
図3(b)のような構成においても、全ての抵抗の抵抗値が等しいとして、
図3(a)と同様に考えることができる。この場合、第j直列抵抗群を構成する抵抗のいずれか1本がオープン故障した場合と、各接続箇所を接続している抵抗Rdjkyがオープン故障した場合とに分けて考えることにより、
図3(a)と同様に望ましい抵抗値を求めることができる。そして、正常状態における放電抵抗の消費電力P’を求めることができ、従来よりも正常状態における消費電力を低減することができることがわかる。
【0042】
尚、本実施例は、各直列抵抗群の接続箇所間を、インピーダンスを介して接続する構成であれば抵抗に限定されない。各直列抵抗群の接続箇所間を、例えば、電界効果トランジスタ(FET)等の半導体素子を用いて特定の抵抗値を示すように構成された回路モジュールや、抵抗とインダクタを直列に組み合わせた素子等を介して接続する構成としてもよい。
【0043】
以上、本実施例によれば、放電抵抗が故障又は異常が発生した場合にも、インレットを引き抜いた後にすみやかに電源供給ライン間の電圧を低下させることができる。
【実施例4】
【0044】
実施例1〜3で説明した電源装置は、例えば画像形成装置の低圧電源、即ちコントローラ(制御部)やモータ等の駆動部へ電力を供給する電源として適用可能である。以下に、実施例1〜3の電源装置が適用される画像形成装置の構成を説明する。
【0045】
[画像形成装置の構成]
画像形成装置の一例として、レーザビームプリンタを例にあげて説明する。
図4に電子写真方式のプリンタの一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ300は、静電潜像が形成される像担持体としての感光ドラム311、感光ドラム311を一様に帯電する帯電部317(帯電手段)、感光ドラム311に形成された静電潜像をトナーで現像する現像部312(現像手段)を備えている。そして、感光ドラム311に現像されたトナー像をカセット316から供給された記録材としてのシート(不図示)に転写部318(転写手段)によって転写して、シートに転写したトナー像を定着器314で定着してトレイ315に排出する。この感光ドラム311、帯電部317、現像部312、転写部318が画像形成部である。また、レーザビームプリンタ300は、実施例1〜3で説明した電源装置400を備えている。尚、実施例1〜3の電源装置400を適用可能な画像形成装置は、
図4に例示したものに限定されず、例えば複数の画像形成部を備える画像形成装置であってもよい。更に、感光ドラム311上のトナー像を中間転写ベルトに転写する一次転写部と、中間転写ベルト上のトナー像をシートに転写する二次転写部を備える画像形成装置であってもよい。
【0046】
レーザビームプリンタ300は、画像形成部による画像形成動作や、シートの搬送動作を制御する不図示のコントローラを備えており、実施例1〜3に記載の電源装置400は、例えばコントローラに電力を供給する。また、実施例1〜3に記載の電源装置400は、感光ドラム311を回転するため又はシートを搬送する各種ローラ等を駆動するためのモータ等の駆動部に電力を供給する。即ち、実施例1〜3の負荷Loadは、コントローラや駆動部に相当する。本実施例の画像形成装置の電源装置400では、はしご状に放電抵抗を接続している。はしご状に接続された放電抵抗のいずれか1本がオープン故障した場合でも、インレットL1b,L2bを引き抜いた後にすみやかにインレットL1b,L2b間の電圧を低下させることができる。更に、本実施例の画像形成装置では、電源装置400の放電抵抗がいずれもオープン故障していない正常状態において、放電抵抗による消費電力を低減することができる。
【0047】
以上本実施例によれば、画像形成装置に搭載された電源装置の放電抵抗が故障又は異常が発生した場合にも、インレットを引き抜いた後にすみやかに電源供給ライン間の電圧を低下させることができる。
【符号の説明】
【0048】
Cx アクロス・ザ・ライン・コンデンサ
L1b,L2b インレット
Rd11、Rd12、Rd21、Rd22 放電抵抗
Vac 商用交流電源