(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1動作では、前記行列状の複数の変換素子のうちの中央部の行の前記トランジスタのゲートに前記導通電圧を供給する時点からその次に他の行の前記トランジスタのゲートに前記導通電圧を供給する時点までの所定の期間が、前記行列状の複数の変換素子のうちの周辺部の行の前記トランジスタのゲートに前記導通電圧を供給する時点からその次に他の行の前記トランジスタのゲートに前記導通電圧を供給する時点までの所定の期間より短いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
前記第1動作では、前記複数のトランジスタの各々のゲートに前記導通電圧を供給する時間をΔTon、前記トランジスタの転送効率の時定数をτとすると、ΔTon≧3×τの関係が成り立つことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、放射線撮像装置の放射線の検出能力について説明する。本願発明者は、
図4に示すように、以下のことを見出した。
(1)検出能力は、横軸に放射線の照射時間[ms]、縦軸に放射線が照射された画像の平均値で[LSB]で表せること。
(2)放射線の照射条件において、放射線が照射された画像の平均値が大きい領域が検出可能な範囲であり、放射線が照射された画像の平均値の小さい領域が検出不可能な領域であること。
(3)上記のグラフの傾きが変化する地点は、リセット動作の周期であること。
【0012】
放射線撮像装置は、放射線の照射の開始や終了といった放射線の照射の有無を検出することが可能である。放射線の照射の開始の検出までにリセット動作が行われた変換素子から、放射線の照射により発生した信号電荷の一部が失われてしまうことによる画像上のアーチファクトを補正する必要がある。このような、画像補正を行う際、信号電荷の一部が失われてしまった画素以外の画素のデータを用いて、アーチファクトを補正することができる。このような場合、放射線の照射の開始の検出が遅れることによって、リセット動作において、放射線撮像装置内の全ての画素からの信号が失われてはならない。すなわち、各画素のうちの所定の画素のリセット動作中に、放射線の照射が開始された場合、その次になされる所定の画素のリセット動作までに放射線の照射の開始の検出がなされなければならない。言い換えると、放射線の照射の開始の検出は、リセット動作の周期の時間内になされなければならない。このため、放射線の照射の開始から放射線の検出までの時間の限界は、リセット動作の周期となる。すなわち、リセット動作の周期の時間を超える長い放射線照射時間の場合、より強い放射線でないと検出できなくなり、
図4に示すように、リセット動作の周期の時間を超える領域では、右上がりのグラフとなる。これにより、よりアーチファクトの小さい画像を得るためにリセット動作の周期を短くすると、放射線撮像装置で放射線の照射を検出する際の検出能力が低下し、照射時間が長くて弱い放射線の検出が困難になる。
【0013】
そこで、良質な放射線画像を取得し、かつ放射線の検出能力を向上させることができる放射線撮像システムの実施形態を、以下、説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態による放射線撮像装置100を有する放射線撮像システムの構成例を示す図である。放射線撮像システムは、放射線撮像装置100、放射線源501、曝射スイッチ503及び放射線制御装置502を有する。曝射スイッチ503が押されると、放射線源501は、放射線制御装置502からの制御信号により、被写体を介して放射線撮像装置100に放射線505を照射する。放射線撮像装置100は、放射線505を、被写体を介して、入射する。
【0015】
放射線撮像装置100は、撮像部101、駆動部102、処理部106、制御部108及び電流検出部508を有する。撮像部101は、第1の撮像部101a及び第2の撮像部101bを有する。処理部106は、読み出し回路103、アナログ/デジタル変換器14及び信号処理部105を有する。読み出し回路103は、第1の読み出し回路103a及び第2の読み出し回路103bを有する。アナログ/デジタル変換器104は、第1のアナログ/デジタル変換器104a及び第2のアナログ/デジタル変換器104bを有する。撮像部101a及び101bは、被写体を透過した放射線に応じた信号を生成する。第1の読み出し回路103aは第1の撮像部101aの信号を読み出し、第2の読み出し回路103bは第2の撮像部101bの信号を読み出す。第1のアナログ/デジタル変換器104aは第1の読み出し回路103aにより読み出された信号をアナログからデジタルに変換し、第2のアナログ/デジタル変換器104bは第2の読み出し回路103bにより読み出された信号をアナログからデジタルに変換する。信号処理部105は、アナログ/デジタル変換器104a及び104bにより変換されたデジタル信号を処理する。電流検出部508は、撮像部101に流れる電流を検出することにより、放射線の照射を検出する。制御部108は、撮像部101を駆動する駆動部102に制御信号を出力することによって、撮像部101の動作を制御する。
【0016】
図2は、
図1の放射線撮像装置100の一部の構成例を示す図である。撮像部101は、複数の行及び複数の列を構成するように2次元行列状に配列された複数の画素201を有する。ここでは、簡易化のため、画素201が8行×8列を構成するように配された撮像部101を示している。また、撮像部101には、信号線Sig
1〜Sig
8が各列の画素201に対応するようにそれぞれ配されている。例えば、第m行目及び第n列目の画素201は、変換素子S
mnとトランジスタT
mnとを有する。変換素子S
mnは、2つの電極の間に半導体を有し、放射線又は光を電荷に変換する。変換素子S
mnの一方の電極は、トランジスタT
mnに電気的に接続され、他方の電極は、センサバイアス線202に電気的に接続される。
【0017】
変換素子S
mnは、放射線を直接的又は間接的に電荷に変換する。例えば、変換素子S
mnの上部には、蛍光体が設けられる。蛍光体は、放射線を光に変換する。変換素子S
mnは、例えば、半導体としてのアモルファスシリコンを用いたPIN型フォトダイオード又はMIS型光電変換素子等であり、光を電荷に変換する。これにより、変換素子S
mnは、放射線を電荷に変換することができる。なお、変換素子S
mnは、半導体としてのアモルファスセレンを用いて、放射線を直接電荷に変換する素子であってもよい。放射線は、X線、α線、β線、γ線等の電磁波を含む。
【0018】
トランジスタT
mnは、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)である。トランジスタT
mnは、ゲートとソースとドレインとを有し、ソース及びドレインの一方が変換素子S
mnの一方の電極に接続され、ソース及びドレインの他方が処理部106内の読み出し回路103(
図1)に接続される。トランジスタT
mnのゲートに信号Gmの導通電圧が供給されると、トランジスタT
mnが導通状態になり、変換素子S
mnに蓄積された電荷の量に応じた信号が信号線Sig
nに出力される。この際、処理部106の定電圧源から所定の定電圧が導通状態のトランジスタT
mnを介して変換素子S
mnに供給されることにより、変換素子S
mnで発生した電荷がリセットされる。信号G1〜G8の導通電圧に応じて、変換素子S
11〜S
88の電荷がそれぞれリセットされる。このように、複数の画素201に対して、定電圧源に接続されたトランジスタT
mnを、複数の行に対して順に導通状態にする動作を、リセット動作と称する。
【0019】
駆動部102は、信号G1〜G8を撮像部101に出力する。駆動部102は、信号G1〜G8として、トランジスタT
mnを導通状態にする導通電圧とトランジスタT
mnを非導通状態にする非導通電圧とを選択的に複数のトランジスタT
11〜T
88のゲートに供給する。駆動部102は、画素201の各行に対応して、例えば、DフリップフロップDFF1〜DFF8(これらをまとめて「DFF」という)を有し、シフトレジスタを構成する。また、駆動部102は、各DフリップフロップDFFに対応して、論理積回路AND及びレベルシフト回路LEVELを有する。駆動部102には、タイミングジェネレータTGから信号DIO、信号CPV及び信号OEが入力される。信号DIOは、DフリップフロップDFF1に信号を入力するためのスタートパルス信号である。信号CPVは、各DフリップフロップDFFの保持するパルスを次段のDフリップフロップDFFにシフトするためのシフトクロック信号である。信号OEは、各DフリップフロップDFFの保持する状態をそれに対応するレベルシフト回路LEVELに出力するか否かを決定するための出力イネーブル信号である。複数の論理積回路ANDは、それぞれ、DフリップDFF1〜DFF8と信号OEとの論理積信号をレベルシフト回路LEVELに出力する。レベルシフト回路LEVELは、電圧レベルをシフトする回路である。このようにして、駆動部102は、信号OEがハイレベル状態のときは、各DフリップフロップDFFが保持する導通電圧又は非導通電圧を選択的に撮像部101に出力する。また、駆動部102は、信号OEがローレベル状態のときは、非導通電圧を、撮像部101に出力する。
【0020】
電流検出部508は、アンプampX及び帰還抵抗Rfで構成される増幅回路50と、比較器CMPとを有する。電流検出部508は、バイアス線202を介して、複数の変換素子S
11〜S
88にバイアス電圧Vsを印加する。放射線の照射によって、撮像部101に放射線が入射し、それに応じたバイアス電流がバイアス線202に流れる。増幅回路50は、バイアス線202の電流を電圧に変換する。比較器CMPは、この変換された電圧と基準電位VrefXとを比較し、その結果を信号507として出力する。このようにして、電流検出部508は、放射線が照射されたことを検出する。
【0021】
制御部108は、信号507を入力し、放射線の照射に応じて、放射線撮像装置100を駆動する。制御部108は、タイミングジェネレータTG、カウンタCNT、ユニット510、記憶部M及びスイッチSWを有する。ユニット510は、電流検出部508からの信号507によって、放射線が照射されたことに応答して、カウンタCNTのカウンタ値に応じた値を記憶部Mに格納する。また、ユニット510は、スイッチSWによって切り替えることにより、信号OEの線をタイミングジェネレータTGに接続するか、又は信号OEの線をローレベル状態に固定する。タイミングジェネレータTGは、2種類のタイミングTGK及びTGHを生成する。動作の詳細な説明は、後に、
図3を参照しながら説明する。
【0022】
図3は、放射線撮像システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。
図3は、上から、撮像部101の動作の状態、放射線が照射されたことを検出するための検出信号507の出力値、及びその検出信号507の判定結果が示されている。さらに、その下には、信号DIO、CPV及びOE、カウンタCNTのカウンタ値counter、並びに記憶部Mが記憶している情報memoryが示されている。その下には、信号G1〜G8が示されている。
【0023】
第1動作は、複数の画素201の少なくとも1行を単位として周期的にリセットするリセット動作と、トランジスタT
mnを非導通状態とする蓄積動作を交互に行う。リセット動作は、駆動部102が複数の画素201の複数行のうちの少なくとも1つの行のトランジスタT
mnのゲートに対する信号G1〜G8の導通電圧の供給を複数行に対して順次、行い、画素201の全てのリセットが行う。その後、蓄積動作は、全てのトランジスタT
mnを非導通状態とする信号G1〜G8の非導通電圧を駆動部102がトランジスタT
mnのゲートに供給する。このリセット動作と蓄積動作は、放射線が照射されるまで繰り返し複数回行われる。ここで、第1動作の周期とは、画素201の全てをリセットするのに要する時間ΔKと、全てのトランジスタT
mnを非導通状態とする蓄積動作の時間Wと、の和の時間ΔK+Wである。すなわち、ある画素201のリセットの開始とその次になされるその画素201のリセットの開始の間の時間である。または、ある画素201のリセットの終了とその次になされるその画素201のリセットの終了の間の時間である。また、すべての画素201をリセットするリセット動作は、信号DIOが入力された後に、信号CPVに応じて信号G1〜G8が順番に活性化されることによって為される。このリセット動作は、複数の画素201のそれぞれにおいて生じている暗電流に基づくノイズ信号成分を周期的に初期化する。また、信号DIOが入力された後は、信号CPVに応じてカウンタ値counterが1から8まで順次カウントされる。カウント値counterは、リセットする行に対応する。例えば、カウント値counterが1であれば、信号G1が導通電圧になり、第1行がリセットされる。制御部108は、検出信号507が閾値より大きくなり、放射線の照射開始を判定すると、信号G1〜G8の導通電圧の供給を停止することによって、第1動作を中断し、第2動作に移行するように駆動部102を制御する。例えば、信号G1の第1行で、リセット動作が中断され、カウント値counterは1で停止する。
【0024】
第2動作は、変換素子S
mnが放射線の照射に応じた電荷を生成し、その電荷を蓄積する蓄積動作である。第2動作では、変換素子S
mnで発生した電荷に応じた電気信号を画素201に蓄積するために、トランジスタT
mnを非導通状態とする信号G1〜G8の非導通電圧を駆動部102がトランジスタT
mnのゲートに供給する。本実施形態では、蓄積動作は、複数の画素201の全てのトランジスタT
mnのゲートに対して駆動部102が信号G1〜G8の非導通電圧を供給しているものである。第2動作では、画素201のそれぞれは、放射線が照射されることによって生じた電荷を含む電荷に応じた電気信号を蓄積する。また、この第2動作では、放射線が照射されたことに応じて、カウンタ値counterの値が記憶部Mに格納される。ここでは、カウンタ値counterの「1」が記憶部Mに格納される。制御部108は、検出信号507が閾値より小さくなると、放射線の照射終了を判定し、第2動作を終了し、第3動作に移行する。
【0025】
第3動作では、制御部108は、駆動部102が複数の画素201の複数行のうちの少なくとも1つの行のトランジスタT
mnのゲートに対する信号G1〜G8の導通電圧の供給を複数行に対して順に行うように、駆動部102を制御する。第3動作は、変換素子S
mnに蓄積された電荷の量に応じた画素信号が画素201のそれぞれから処理部106に読み出される読み出し動作である。信号G1〜G8が導通電圧になることにより、トランジスタT
11〜T
88が行単位で導通状態になり、変化素子S
11〜S
11の画素信号が行単位で信号線Sig
1〜Sig
8に読み出される。読み出し動作では、信号線Sig
1〜Sig
8に処理部106の定電圧源が接続されず、リセットなしで、画素信号が信号線Sig
1〜Sig
8に読み出される。制御部108は、第3動作の終了に応じて、第4動作に移行するように、駆動部102を制御する。
【0026】
第4動作は、第1動作と同様に、複数の画素201のそれぞれを少なくとも1行を単位として周期的にリセットするリセット動作と、トランジスタT
mnを非導通状態とする蓄積動作を交互に行う。第4動作の各周期の動作は、第1動作の各周期の動作と同じである。第4動作では、上記の第1動作の周期を複数回行った後、第1動作において信号G1〜G8の導通電圧の供給が停止された行で、信号G1〜G8の導通電圧の供給を停止することによって終了する。この終了は、例えば、前述の記憶部Mに格納された情報memoryの「1」にしたがって為される。すなわち、信号G1の導通電圧のリセット動作を最後にして、第4動作が終了する。ここでは、第1動作の周期を2周期分為された後の3周期目で第4動作が中断されているが、各画素201の暗電流によって生じた電荷をリセットするために十分な回数だけ繰り返して為されなければならない。第1動作の周期を2回以上繰り返し行われた後に終了することが好ましい。制御部108は、第1動作にあわせて第4動作における信号G1〜G8の導通電圧の供給を停止することによって、第4動作を中断して第4動作を終了し、第4動作の終了に応じて、第5動作に移行するように、駆動部102を制御する。
【0027】
第5動作は、第2動作と同様に、変換素子S
mnで発生した電荷に応じた電気信号を画素201に蓄積するために、トランジスタT
mnを非導通状態とする信号G1〜G8の非導通電圧を駆動部102がトランジスタT
mnのゲートに供給する蓄積動作である。ただし、第5動作においては、画素201のそれぞれは、放射線が照射されていないため、暗電流によって生じた電荷に応じた電気信号を蓄積する。制御部108は、第5動作が終了すると、第6動作に移行する。
【0028】
第6動作では、駆動部102が複数の画素201の複数行のうちの少なくとも1つの行のトランジスタT
mnのゲートに対する信号G1〜G8の導通電圧の供給を複数行に対して順に行う。第6動作は、暗電流によって生じた電荷に応じた電気信号(暗時の画素信号)を画素201のそれぞれから処理部106に読み出す読み出し動作である。暗時の画素信号は、画素201が有するオフセット成分を補正のための信号を含む。信号処理部105は、第3動作で読み出した第1の画像信号と、第6動作で読み出した暗時の第2の画像信号との差分を算出し、放射線画像として出力する。この差分の補正により、オフセット成分を除去した放射線画像を得ることができる。なお、この差分処理は、放射線撮像装置100の外部に設けられた別の処理装置で行ってもよい。
【0029】
次に、最も好適な第1動作について、説明する。前述のように、電流検出部508がバイアス線202の電流を検出して放射線の照射の開始等を検出するように構成すると、以下の課題が存在する。すなわち、放射線の照射の開始から、放射線の照射の開始の検出までの間にリセット動作が行われた変換素子S
mnから、放射線の照射により発生した信号電荷の一部が失われてしまう。これは、リセット動作におけるトランジスタT
mnの導通時間が長い程、影響が大きくなる。このため、アーチファクトの小さい画像を得るためには、リセット動作におけるトランジスタT
mnの導通時間を短くすることが望ましい。ただし、トランジスタT
mnの導通時間を短くすると、リセット動作における暗電流によって生じた電荷のリセット効果が低減してしまう。すなわち、暗電流によって生じた電荷を十分にリセットできず、変換素子S
mnに残ってしまう。このため、十分にリセットされる導通時間を最低限確保する必要がある。
【0030】
そこで、第1動作では、複数のトランジスタT
11〜T
88の各々のゲートに信号G1〜G8の導通電圧を供給する時間をΔTonとした時、ΔTon≧3×τの関係が成り立つと良い。ここで、τは画素201のトランジスタT
11〜T
88の転送効率の時定数である。通常、放射線撮像装置100において、τは、2〜5μs程度であるので、ΔTonは、6〜15μsであることが望ましい。また、放射線撮像装置100においては、3000行程度の信号G1〜G3000の走査線を有するため、リセット動作の時間ΔKは、18ms〜45ms程度となる。
【0031】
また、本実施形態では、上記のリセット動作の後、蓄積動作を行う。これによって、リセット動作の周期が短くなることを防いでいる。ここで、本実施形態の目的である、アーチファクトの小さい放射線画像を取得し、かつ放射線の検出能力を向上させるために、最も好適な第1動作の周期について説明する。第1動作の周期ΔK+Wは、以下の2点から決めることとする。
【0032】
(1)診断で使用される放射線の照射時間の最大値
(2)放射線撮影後のプレビュー時間
【0033】
(1)について、診断で使用される放射線の照射時間の最大値は500ms程度である。このため、500msの放射線が検出できれば良い。
【0034】
(2)について、一般的に、放射線撮像装置100では、放射線撮影直後に取得画像をプレ表示する機能がある。放射線撮影の終了からプレ表示されるまでの時間をプレビュー時間と言う。このプレビュー時間は、3s以内であることが望ましい。
図3に示したタイミングチャートにおいて、プレビュー時間は、第3動作の開始から第6動作の終了までの期間である。ここで、一般的な静止画撮影用の放射線撮像装置100において、第3動作及び第6動作の時間は500ms程度であり、第5動作の時間は1s程度である。よって、第4動作は1s程度であることが望ましい。また、前述のように、第4動作における第1動作の周期は2回以上行うことが望ましい。よって、第1動作の周期ΔK+W及び第4動作の周期ΔK+Wは、500ms以下であることが望ましい。
【0035】
上記の(1)及び(2)より、第1動作の周期は、本実施形態において500ms程度が望ましい。
【0036】
本実施形態の効果を
図4に示す。本実施形態のように、リセット動作におけるトランジスタT
mnの導通時間ΔTonを短くすることにより、放射線の照射により発生した信号電荷の一部が失われてしまうことによる画像上のアーチファクトを小さくすることができる。また、第1動作がリセット動作のみの場合、第1動作の周期ΔKは短くなり、検出能力が低くなる。これに対し、本実施形態のように、第1動作において、リセット動作のみではなく、リセット動作の後に蓄積動作を行うことで、第1動作の周期ΔK+Wを長くすることができ、検出能力が高くなる。これによって、放射線の照射の開始から放射線の照射の開始の検出までの時間を長くすることができる。すなわち、
図4に示したように、放射線の照射時間の長い領域における検出能力を向上させることができ、照射時間が長くて弱い放射線も検出可能となる。
【0037】
また、本実施形態の他の効果について、
図5を用いて説明する。本実施形態では、第1動作において、リセット動作と蓄積動作を交互に行って、放射線の照射を待っている。放射線の照射の開始により、
図5に示すように、バイアス線202に流れるバイアス電流が流れ始める。このバイアス電流は、放射線の照射の開始からの蓄積時間、すなわち放射線の照射の開始時点から各行のトランジスタT
mnのゲートに信号G1〜G8の導通電圧が供給されるまでの時間に応じた大きさで、流れる。このため、本実施形態のように、リセット動作の後、蓄積時間を入れた場合に、信号G8の行でのバイアス電流と蓄積動作後の信号G1の行でのバイアス電流とを比較すると、後者の方が大きくなり、検出感度が高い状態となっている。このため、本実施形態において、蓄積動作後の信号G1の行で放射線の照射を検出される可能性が高い。放射線撮像装置100において、信号G1の行は、最上端の行であるため、画像診断の際に使われない領域となる可能性が高い。すなわち、信号G1の行でのアーチファクトは画像診断する際に、問題となりにくい。これは、放射線の照射の開始を検出することが可能な放射線撮像装置100において、大きなメリットとなる。
【0038】
図6は、
図3の第1動作の他の駆動方法について説明する。
図6では、信号G1〜G8の各行毎のリセット動作の順序が異なっている。第1動作では、まず、奇数行のリセット動作を行い、次に、蓄積動作を行い、次に、偶数行のリセット動作を行い、次に、蓄積動作を行う。第1動作では、この4個の動作を1周期として、放射線が照射されるまで、繰り返し行う。奇数行のリセット動作では、奇数行の信号G1、G3、G5、G7を順次、導通電圧にする。偶数行のリセット動作では、偶数行の信号G2、G4、G6、G8を順次、導通電圧にする。この場合、ある行のトランジスタT
mnのゲートに信号G1〜G8の導通電圧を供給した次のタイミングで、その行に隣接する行以外の行のトランジスタT
mnのゲートに信号G1〜G8の導通電圧を供給している。放射線の照射の開始の検出までにリセット動作が行われた変換素子S
mnから、放射線の照射により発生した信号電荷の一部が失われてしまうことにより、画像上のアーチファクトが発生してしまうことがある。本実施形態は、その場合、信号電荷の一部が失われてしまった画素以外の画素のデータを用いて補正する際に有効な動作手法である。この動作手法によれば、画素の信号電荷が失われてしまっても、それに隣接する画素は信号電荷が失われないので、アーチファクトを補正する際、隣接する画素のデータを用いて補正することができる。
図6に示すように、奇数行の信号G1、G3、G5、G7に順次導通電圧を供給した後、偶数行の信号G2、G4、G6、G8に順次導通電圧を供給する動作を行った場合、リセット動作の周期は
図3のリセット動作の半分になる。このような動作においても、蓄積動作を入れることで、照射時間の長い領域における検出能力を向上させることができる。
【0039】
図7は、
図3の第1動作のさらに他の駆動方法について説明する。
図7では、
図3の第1動作のリセット動作が2行単位ずつ為された場合を示している。まず、2行の信号G1及びG2が導通電圧になり、次に、2行の信号G3及びG4が導通電圧になり、次に、2行の信号G5及びG6が導通電圧になり、次に、2行の信号G7及びG8が導通電圧になる。これによって、バイアス線202に流れる電流の量が2倍になり、検出能力を向上させることができる。このような場合、リセット動作の周期は、
図3のリセット動作の半分になる。このような動作においても、蓄積動作を入れることで、照射時間の長い領域における検出能力を向上させることができる。
【0040】
図8は、
図3の第1動作のさらに他の駆動方法について説明する。
図8では、
図6と同様に、第1動作では、まず、奇数行のリセット動作を行い、次に、蓄積動作を行い、次に、偶数行のリセット動作を行い、次に、蓄積動作を行う。第1動作では、この4個の動作を1周期として、放射線が照射されるまで、繰り返し行う。奇数行のリセット動作では、2行単位でリセット動作が行われる。まず、奇数行の2行の信号G1及びG3が導通電圧になり、次に、奇数行の2行の信号G5及びG7が導通電圧になる。偶数行のリセット動作も、2行単位でリセット動作が行われる。まず、偶数行の2行の信号G2及びG4が導通電圧になり、次に、偶数行の2行の信号G6及びG8が導通電圧になる。以上のように、まず、奇数行を2行単位ずつ順次導通電圧を供給して奇数行のリセット動作を行い、次に、蓄積動作を行い、次に、偶数行を2行単位ずつ順次導通電圧を供給して偶数行のリセット動作を行い、次に、蓄積動作を行う。これによって、バイアス線202に流れる電流の量が2倍になり、検出能力を向上させることができ、かつ信号電荷の一部が失われてしまうことによる画像上のアーチファクトを隣接する画素のデータを用いて補正することができる。この場合、リセット動作の周期は、
図3のリセット動作の4分の1になる。このような動作においても、蓄積動作を入れることで、照射時間の長い領域における検出能力を向上させることができる。
【0041】
以上のように、本実施形態は、リセット動作の形態に限定されず、様々な形態のリセット動作の後に蓄積動作を入れることが可能である。また、本実施形態において、第1動作の周期がより長い方が、より長い放射線の検出が可能となる。ただし、第1動作の周期を長く設定し過ぎた場合、上記のプレビュー時間が長くなってしまう。これは、放射線撮像装置100の使い勝手の悪化を招くことになる。よって、第1動作の周期は診断で使用される放射線の照射時間の最大が確保されていれば十分である。
【0042】
(第2の実施形態)
図9及び10は、本発明の第2の実施形態による放射線システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。
図9は、上から、撮像部101の動作の状態、放射線が照射されたことを検出するための検出信号507の出力値、及び検出信号507の判定結果が示されている。さらに、その下には、信号DIO、CPV及びOE、カウンタCNTのカウンタ値counter、並びに記憶部Mが記憶している情報memoryが示されている。その下には、信号G1〜G8が示されている。以下、本実施形態が第1の実施形態と異なる点を説明する。
【0043】
本実施形態の第1動作は、リセット動作と蓄積動作を交互に行う第1の実施形態とは異なり、リセット動作のみを複数回繰り返し行う。ただし、ある行のトランジスタT
mnを導通状態にする時点から、その次の行のトランジスタT
mnを導通状態にするまでの期間Δt(
図10)を行毎に異なるように設定できる。
図10には、画像診断で重要となる関心領域内の行の信号G3〜G6と、画像診断の際に使用されない関心領域外の信号G1,G2,G7,G8とで、上記の期間Δtを変えている。具体的には、関心領域外の信号G1,G2,G7,G8では期間Δtを長く設定し、関心領域内の信号G3〜G6では期間Δtを短く設定している。例えば、放射線撮像装置100が3000行の画素201から構成される場合において、中央部の2000行が関心領域の場合、関心領域の2000行では、期間Δt=10μsとする。また、周辺部の500行ずつが関心領域外の場合、関心領域外の計1000行では、期間Δt=480μsとする。こうすることにより、第1動作の周期を500msとすることができる。
【0044】
第1の実施形態と同様に、制御部108は、放射線が照射されたことに応じて、第1動作の信号G1〜G8の導通電圧の供給を停止することによって第1動作を中断して第2動作に移行するように駆動部102を制御する。本実施形態における第2動作、第3動作、第5動作及び第6動作は、第1の実施形態で説明した動作と同様である。第4動作においては、上述の第1動作の周期を2回以上繰り返し行われた後に終了することが好ましい。
【0045】
次に、本実施形態の効果を説明する。放射線の照射の開始の検出までにリセット動作が行われた変換素子S
mnから、信号電荷の一部が失われてしまうことによる画像上のアーチファクトは、放射線の照射の開始からの蓄積時間に応じて生じている。これは、放射線の照射の開始からの蓄積時間が長いほど、失われる電荷の量が大きくなるためである。すなわち、
図10の期間Δtが長い行では、アーチファクトは大きくなる。画像診断において、関心領域内では、アーチファクトは小さい方が望ましい。このため、本実施形態において、関心領域内で期間Δtを短くしている。また、放射線の照射の開始の検出は、関心領域外で為されることが望ましい。このため、関心領域外での期間Δtを長く設定し、関心領域外で放射線照射の開始の検出が為されるようにしている。
【0046】
第1の実施形態で述べたように、リセット動作を短くすると、照射時間が長くて弱い放射線の照射に対する検出能力が低下してしまう。本実施形態によれば、関心領域外での期間Δtを長く設定することにより、リセット動作の期間を長くすることができるので、関心領域内でのアーチファクトを小さくし、さらに放射線の照射の検出能力を向上させることができる。
【0047】
また、
図10では、関心領域内と関心領域外で期間Δtの長さを変えているが、これに限定されるものではない。放射線撮像装置100には、画像診断に使用されないダミー画素が含まれている。このダミー画素の行でのみ期間Δtを長く設定してもよい。
【0048】
以上のように、第1及び第2の実施形態によれば、駆動部102は、少なくとも1つの行の単位で順にトランジスタT
11〜T
88のゲートに導通電圧を供給することによるリセット動作を複数回行う第1動作を行う。次に、駆動部102は、検出部508により放射線の照射が検出されると、導通電圧を供給することを停止し、複数のトランジスタT
11〜T
88のゲートに非導通電圧を供給することによる蓄積動作を含む第2動作を行う。次に、駆動部102は、第2動作の後に、行の単位で順にトランジスタT
11〜T
88のゲートに導通電圧を供給することによる読み出し動作を含む第3動作を行う。次に、駆動部102は、第3動作が終了すると、少なくとも1つの行の単位で順にトランジスタT
11〜T
88のゲートに導通電圧を供給することによるリセット動作を複数回行う第4動作を行う。次に、駆動部102は、第4動作が終了すると、複数のトランジスタT
11〜T
88のゲートに非導通電圧を供給することによる蓄積動作を含む第5動作を行う。次に、駆動部102は、第5動作が終了すると、第4動作を終了し、行の単位で順にトランジスタT
11〜T
88のゲートに導通電圧を供給することによる読み出し動作を含む第6動作を行う。
【0049】
第1動作では、ある行のトランジスタのゲートに導通電圧を供給する時点からその次に他の行のトランジスタのゲートに導通電圧を供給する時点までの期間を第1の期間とする。そして、他の行のトランジスタのゲートに導通電圧を供給する時点からその次にさらに他の行のトランジスタのゲートに導通電圧を供給する時点までの期間を第2の期間とする。この場合、第1の期間は、第2の期間と異なる。
【0050】
第1の実施形態では、
図3の駆動方法が行われる。第1動作では、すべての行のリセット動作とその次のすべての行のリセット動作との間の期間を第3の期間とする。そして、すべての行のリセット動作内のある行のトランジスタのゲートに導通電圧を供給する時点からその次に他の行のトランジスタのゲートに導通電圧を供給する時点までの期間を第4の期間とする。その場合、第3の期間は、第4の期間よりも長い。
【0051】
第2の実施形態では、
図9及び
図10の駆動方法が行われる。第1動作では、2次元行列状の複数の変換素子S
11〜S
88のうちの中央部の行のトランジスタのゲートに導通電圧を供給する時点からその次に他の行のトランジスタのゲートに導通電圧を供給する時点までの期間を第5の期間とする。そして、2次元行列状の複数の変換素子S
11〜S
88のうちの周辺部の行のトランジスタのゲートに導通電圧を供給する時点からその次に他の行のトランジスタのゲートに導通電圧を供給する時点までの期間を第6の期間とする。第5の期間は、第6の期間より短い。
【0052】
第1動作を行うことにより、第1動作の周期ΔK+Wを長くすることができるので、良質な放射線画像を取得し、放射線の検出能力を向上させることができる。
【0053】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。