(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の焦点検出処理を行う際の前記フォーカスレンズのステップ駆動の駆動量は、前記第1の焦点検出処理を行う際の前記フォーカスレンズのステップ駆動の駆動量よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について
図1から
図9を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は本実施例のデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、デジタルカメラ100は、CPUやMPU等によって構成され全体の制御を司るシステムコントローラ129と、光学系全体を制御するレンズコントローラ107を有する。システムコントローラ129とレンズコントローラ107間の通信では、被写体像を結像させるフォーカスレンズ101の駆動命令、停止命令、ステップ駆動の駆動量、駆動速度がシステムコントローラ129から送信される。
【0017】
また、さらに入射光線を調節する絞り102の開口制御の駆動量、駆動速度、およびレンズ側の各種データの送信要求がシステムコントローラ129から送信される。なお、
図1には光学系を構成するレンズのうちフォーカスレンズ101のみを示しているが、このほか不図示の変倍レンズや固定レンズが設けられている。
【0018】
ステップ駆動とは、ステッピングモータに印加されるパルス信号に基づいてフォーカスレンズを断続的に間欠駆動することを意味する。
【0019】
フォーカス制御の際、システムコントローラ129はレンズコントローラ 107に対して、レンズ駆動方向やステップ駆動の駆動量および駆動速度についての指令を行う。レンズコントローラ107は、システムコントローラ129からのレンズ駆動命令を受信すると、レンズ駆動制御部104を通じてレンズ駆動機構103を制御する。レンズ駆動機構103は、ステッピングモータを駆動源として有し、レンズ101を光軸に沿って駆動する。
【0020】
レンズ101の焦点位置は、例えばレンズ駆動機構105を構成するモータの回転パルス数を検出するパルスエンコーダ等により構成されるレンズ位置情報検出部109を通じて、レンズコントローラ107に送られる。その出力は、レンズコントローラ107内の不図示のハードウェアカウンタに接続され、レンズが駆動されると位置情報がハード的にカウントされる。レンズコントローラ107がレンズ位置を読み取る際は、内部のハードウェアカウンタのレジスタにアクセスして、記憶されているカウンタ値を読み出される。
【0021】
レンズコントローラ107は、システムコントローラ129からの絞り制御命令を受信すると、絞り制御駆動部106を介して、絞り102を駆動する絞り駆動機構105を制御し、受信した駆動量に従って絞り102を制御する。
【0022】
レンズコントローラ107には、少なくとも一部が不揮発性記憶媒体で構成されるメモリ108が接続されている。メモリ108は、不図示の変倍レンズの焦点距離、絞り102の開放絞り値、設定可能な絞り駆動速度といった性能情報が記憶されている。
【0023】
絞り102で調節された入射光線は、機械シャッタであるフォーカスプレーンシャッタ110の開口から光学フィルタ111を介して、撮像素子112に至る。光学フィルタ111は、赤外線をカットして可視光線を撮像素子112へ導く機能と、光学ローパスフィルタとしての機能を有する。
【0024】
フォーカルプレーンシャッタ110は、先幕および後幕を備えて構成されており、入射光線の透過および遮断を制御する。シャッタ制御部114は、システムコントローラ129からの信号に応じて、フォーカルプレーンシャッタ110の先幕および後幕の走行駆動を制御する。フォーカルプレーンシャッタ110の先幕および後幕は、バネを駆動源として有しており、シャッタ走行後、次の動作のためにバネチャージを要する。
【0025】
そのため、シャッタチャージ機構113がバネのチャージを行う。また、システムコントローラ129は、撮像素子112における所定の測光領域の出力から得られる露光量と、撮像素子112の電荷蓄積時間、露光感度および絞り値との関係が定められたプログラム線図を不図示の不揮発性メモリに記憶している。
【0026】
撮像素子112は、撮像系全体の駆動タイミングを決定しているタイミングジェネレータ118からの信号に基づく、画素ごとの水平駆動および垂直駆動を制御するドライバ117からの出力によって制御される。そして、撮像素子112は、被写体像を光電変換して画像信号を生成して出力する。撮像素子112から出力された画像信号は、CDS/AGC回路115で増幅され、A/Dコンバータ116でデジタル信号へ変換される。
【0027】
A/Dコンバータ116から出力されたデジタル信号は、カメラDSPへ出力させるデジタル信号の出力先をシステムコントローラ129からの信号に基づいて選択するセレクタ121を介して、メモリコントローラ127へ出力される。メモリコントローラ127へ入力されたデジタル信号は、フレームメモリであるDRAM128に全て転送される。
【0028】
デジタルカメラ100は、DRAM128への転送結果をセレクタ121を介してビデオメモリ120へ定期的(毎フレーム)に転送することで、モニタ表示部119よりファインダ表示を行っている。
【0029】
カメラDSP126には、システムコントローラ129のほか、タイミングジェネレータ118と、セレクタ121を通じてA/Dコンバータ116と、ビデオメモリ120、ワークメモリ125とが接続されている。
【0030】
撮影時は、システムコントローラ129からの制御信号によって、1フレーム分のデジタル信号をDRAM128から読み出し、カメラDSP126で画像処理を行ってから、一旦、ワークメモリ125で記憶される。
【0031】
そして、ワークメモリ125のデータは、圧縮・伸張回路124で所定の圧縮フォーマットに基づいてデータ圧縮され、その結果が外部の不揮発性メモリ123に記録される。不揮発性メモリ123は、通常、半導体メモリカードなどの着脱可能な記録媒体が用いられる。不揮発性メモリ123はとして、磁気ディスクや光ディスクをはじめとして任意の不揮発性記録媒体を用いても差し支えない。
【0032】
システムコントローラ129と接続されている操作スイッチ131は、ユーザーがデジタルカメラ100の各種設定項目に対する操作入力を行うための入力デバイス群であり、任意の入力デバイスが含まれる。表示部130は、液晶パネル、LED(発光ダイオード)、有機ELパネルなどの表示素子であり、操作スイッチ131に含まれるスイッチ類により設定または選択されたデジタルカメラ100の動作状態を表示する。
【0033】
レリーズスイッチSW1(132)は、内包する2段階ストロークのレリーズボタンが半押し(1段押下)された際にオンとなり、オンされることでシステムコントローラ129は測光や焦点検出などの撮影準備動作を開始する。レリーズスイッチSW2(133)は、レリーズボタンが全押し(2段押下)された際にオンとなり、オンされることで静止画記録のための撮影動作(電荷蓄積および電荷読み出し動作)を開始させる。
【0034】
ライブビューモードスイッチ134は、モニタ表示部119でのファインダ表示(ライブビュー)のオン/オフを制御するためのスイッチである。動画スイッチ135は、動画を取得するために、電荷蓄積および電荷読み出しを繰り返し行う動作を開始させるためのスイッチである。
【0035】
デジタルカメラ100の電源投入時は、初期設定として静止画を記録する設定(以下、静止画モードと称す。)になっているが、動画スイッチ135が操作されることで、動画を記録する設定(以下、動画モードと称す。)に切り替わる。動画モード状態で動画スイッチ135が再び操作されると、静止画モードに設定が戻される。
【0036】
次に、カメラDSP126内の回路ブロックについて、
図2を用いて説明する。
【0037】
撮像素子112で生成された画像信号は、上述のようにCDS/AGC回路116で増幅され、A/Dコンバータでデジタル信号に変換され、セレクタ121を介してカメラDSP126へ入力される。カメラDSP126は、コントラストAFに用いられるコントラスト評価値の算出、顔の検出を行う。
【0038】
コントラスト評価値を算出するため、カメラDSP126に入力された画像データは、まずカメラDSP126内のDSP内部メモリ201を経て、焦点検出領域抽出ブロック202に入力される。焦点検出領域抽出ブロック202は、全画面分の画像データから焦点検出領域とその近傍の画像を抽出して、コントラスト評価値算出ブロック203に供給する。焦点検出領域の面積(大きさ)は、画面全体の大きさを1として1/5〜1/10程度であることが望ましい。
【0039】
なお、画面内における焦点検出領域の位置や面積(大きさ)は、システムコントローラ129より、領域設定手段としての焦点検出領域抽出ブロック202に対して設定できるよう構成される。コントラスト評価値算出ブロック203は、焦点検出領域とその近傍の画像に対してデジタルフィルタ演算により所定の空間周波数成分を抽出して、コントラスト評価値としてシステムコントローラ230に出力する。
【0040】
顔領域検出ブロック204は、DSP内部メモリ201を経て入力された全画面分の画像データから、公知の技術により顔の特徴点を抽出することで、顔領域を検出する。検出された顔領域の情報はシステムコントローラ230に出力される。
【0041】
次に、焦点検出領域について説明する。
【0042】
図3は、焦点検出領域を示す模式図である。
図3において、撮影構
図301の中に、主被写体である人物302、背景の樹木303、水平3領域と垂直3領域の計9領域で独立して焦点検出可能な多点焦点検出領域(薄網点部)が存在している。多点焦点検出領域(薄網点部)は撮影構
図301に対して位置が固定で、最終的に合焦する焦点検出領域はデジタルカメラ100の焦点検出動作に任される。
【0043】
図3においては、人物302乃至背景の樹木303の一部分が、多点の各焦点検出領域に含まれている。多点焦点検出領域(薄網点部)において、人物302の顔に対して左側の輪郭部を含む焦点検出領域304、顔に対して輪郭内側の焦点検出領域305、顔に対して右側の輪郭部306が存在している。
【0044】
顔に対する左右の輪郭部の焦点検出領域(304、306)と輪郭内部の焦点検出領域305を焦点検出動作時に選択的に着目して、着目した焦点検出領域のコントラスト評価結果に基づいて、オートフォーカス制御が行われる。
【0045】
デジタルカメラ100の電源が入れられて、被写体像の撮像と撮像結果を表示部130に表示するライブビュー動作が始まった後、SW1(131)が押下されることで、水平3領域と垂直3領域の計9領域に対してコントラスト評価が行われる。
【0046】
次に、本実施例の動作について
図4のフローチャートを用いて説明する。特に説明しない限り、下記制御はシステムコントローラ129の制御により行われる。
【0047】
まず、レリーズスイッチSW1(132)が操作されて、焦点検出命令が発生することにより開始される。なお、デジタルカメラ100は、あらかじめ電源が投入されていて、ライブビュー命令の発生に伴い1秒間に30乃至60fps程度の撮像とライブビュー表示が開始されるものとする。
【0048】
はじめに、ステップS401にて、顔領域検出ブロック204で顔領域の検出が行われる。検出後、ステップS402へ進む。
【0049】
ステップS402では、ステップS401で顔領域が検出されたか判定される。検出できた場合は、ステップS403へ進む。検出できなかった場合は、ステップS408へ進む。
【0050】
ステップS403では、領域設定手段としての焦点検出領域抽出ブロック202にてステップS401で検出された顔領域を多点焦点検出領域(
図3薄網線部)との位置関係を比較して、顔領域に内包される多点焦点検出領域(以後、顔内包枠と称す。)の有無が判定される。顔内包枠が有る場合は、ステップS404へ進む。顔内包枠が無い場合は、ステップS407へ進む。
【0051】
ステップS404では、焦点検出動作に係る駆動モードの選択状況について判定される。本実施例に係る撮像装置は、焦点検出動作時に大きなレンズ駆動で焦点位置を大まか(粗調)に検出する第1の焦点検出処理である第1スキャンと、小さなレンズ駆動で焦点位置を高精度(微調)に検出する第2の焦点検出処理である第2スキャンを備える。焦点検出に係る駆動モードが第1の焦点検出処理である第1スキャンであった場合は、ステップS405へ進む。焦点検出に係る駆動モードが第2の焦点検出処理である第2スキャンであった場合は、ステップS406へ進む。
【0052】
ステップS405では、複数の焦点検出領域を有する多点焦点検出領域(
図3薄網線部)のうち、顔輪郭を含む領域(以後、顔輪郭枠と称す。)が、オートフォーカス制御に直接的に着目する多点焦点検出領域(以下、着目AF枠と称す。)として選択される。焦点検出領域を示す模式図である
図3においては、顔輪郭枠は304または306が選択される。
【0053】
大まかに焦点位置を検出する第1スキャンにおいて、耳や髪といった高コントラストな被写体領域が入る顔輪郭枠に着目する。例えば、逆光のような外乱要因が入ってコントラスト評価しづらい条件下でも、合焦近傍にオートフォーカス制御しやすくなり、ピントの読み飛ばしを回避しやすくできる。選択後、ステップS409へ進む。
【0054】
ステップS406では、多点焦点検出領域(
図3薄網線部)のうち、顔輪郭の内側である顔内包枠305が着目AF枠として選択される。背景領域を含まない領域を設定することで、遠近競合なく正確に顔に合焦するようオートフォーカス制御することができるようになる。選択後、ステップS409へ進む。
【0055】
ステップS407では、顔の位置と多点焦点検出領域との位置関係により、例えば顔の中央部に多点焦点検出領域の境界が存在してしまい、顔領域を左右に2分割するように多点焦点検出領域が配置される条件において実行される処理ステップである。また、撮影距離により顔の大きさが小さく写り、顔領域のほとんどが1つの多点焦点検出領域に収まってしまうような条件において実行される処理ステップである。
【0056】
これら条件では、ステップS401にて顔を検出できているものの顔内包枠を設定できないため、顔領域が最も含まれている多点焦点検出領域を着目AF枠として選択される。このようにすることで
、顔輪郭枠や顔内包枠に着目した焦点検出ができないものの、輪郭部を含む顔に着目した焦点検出を行うことができるようになる。選択後、ステップS409へ進む。
【0057】
ステップS408では、顔を検出していない条件であり、人物以外の物体等に焦点検出を行う条件において実行される処理ステップである。この条件では、所定の水平3領域と垂直3領域の計9領域全てを着目AF枠として選択される。選択後、ステップS409へ進む。
【0058】
ステップS409では、再度、ステップS404と同様に、焦点検出動作に係る駆動モードの選択状況について判定される。焦点検出に係る駆動モードが第1スキャンであった場合は、ステップS410へ進む。焦点検出に係る駆動モードが第2スキャンであった場合は、ステップS413へ進む。
【0059】
ステップS410では、大きなレンズ駆動で焦点位置を大まか(粗調)に検出する第1スキャンが行われるよう制御される。制御後、ステップS411へ進む。
【0060】
ステップS411では、スキャン中にコントラストピークを検出したか判定される。コントラストピークを検出した場合は、ステップS412にて焦点検出に係る駆動モードを小さなレンズ駆動で焦点位置を高精度に検出する第2スキャンに移行させる。移行後、ステップS401へ戻る。コントラストピークを検出していない場合も、ステップS401へ戻る。
【0061】
ステップS413では、第2スキャンが行われるよう制御される。制御後、ステップS41
4へ進む。
【0062】
ステップS414では、ステップS411と同様に、スキャン中にコントラストピークを検出したか判定される。コントラストピークを検出していない場合は、ステップS401に戻る。コントラストピークを検出した場合は、ステップS415にてコントラストピーク位置を最終合焦位置としてフォーカス制御され、本実施例の動作を終了する。
【0063】
上述の動作を行うことにより、コントラスト評価方式の焦点検出(オートフォーカス)を行う際、顔が存在する場合に顔に着目させつつ、誤ったフォーカス位置での合焦判定や合焦不能を抑えて、高精度に焦点検出を行うことができるようになる。
【0064】
(変形例)
本実施例では、顔輪郭部として
図3の304や306を例示していた。しかし、これに限らず、顔領域から判定できる人物の頭部や首部、あるいは公知の人体検知結果に基づく胴体部など、他の被写体検出方式による検出結果から得られる輪郭部に対応した複数の焦点検出領域を有する多点焦点検出領域であっても差し支えない。このような構成にすることで、実施例と同様にコントラストの高い輪郭部を使って合焦近傍へ大まかにフォーカス制御しやすくできる。
【0065】
つまり、被写体の輪郭は、少なくとも1つの身体部位の輪郭であり、被写体の輪郭内部は、身体部位の輪郭内部であっても良い。
【実施例2】
【0066】
実施例1では、焦点検出動作時に大きなレンズ駆動で焦点位置を大まかに検出する第1スキャンと、小さなレンズ駆動で焦点位置を高精度に検出する第2スキャンを備えて、焦点検出に係る駆動モードを切り替えていた。
【0067】
しかし、これに限らず、被写体のコントラスト評価値に関連したフォーカスレンズの速度制御指標に基づいてスキャン速度を変更する形態を採用し、焦点位置を大まかに検出するか高精度に検出するかを変更しても良い。以下、上述した動作の実施例について説明する。なお、デジタルカメラ100の構成は、実施例1と同様である。
【0068】
本実施例2における焦点検出に係る駆動について説明する。
【0069】
図5は、被写体のコントラスト評価値に関連したフォーカスレンズの速度制御指標値を説明するグラフである。
【0070】
図5において、フォーカスレンズの速度制御指標値は、第1のコントラスト評価値を第2のコントラスト評価値で正規化したものである。
【0071】
第1のコントラスト評価値は、画像信号からデジタルフィルタ演算により所定の空間周波数成分を抽出して得られる。
【0072】
第2のコントラスト評価値は、画像信号を用いて生成された輝度信号の最大値と最小値の差分を取ることで得られる。
【0073】
フォーカスレンズの速度制御指標値は、被写体の輝度レベルがフォーカス移動で変動する悪影響に耐性を持つ特徴があり、被写体までのデフォーカス量が小さくなるにつれて値が大きくなる。
【0074】
この指標値がフォーカスレンズの速度制御閾値vを上回るか否かによって、オートフォーカス制御の速度つまりフォーカスレンズ101の駆動速度を変更する。よって、合焦近傍においてのみ低速のコントラストスキャンを行うよう制御でき、焦点検出の精度を維持しながら時間短縮を図ることができる。
【0075】
図5において、異なる空間周波数特性の被写体におけるフォーカスレンズの速度制御指標値の例を501と502に示す。501は、コントラスト評価値算出ブロック203で着目する所定の空間周波数領域が被写体の空間周波数特性に多く含まれる場合の指標例を示したものである。502は、コントラスト評価値算出ブロック203で着目する所定の空間周波数領域が被写体の空間周波数特性にあまり含まれない、例えば特定の空間周波数特性に偏り気味な被写体における指標例を示したものである。
【0076】
耳や頭髪や頬など様々な空間周波数が混在した部位で構成される顔輪郭部は501になりやすい。一方、眉や目といった高周波成分にやや偏った部位と、鼻や頬など非常に低周波成分に偏っていて、中間の周波数成分が少ない部位で構成される顔内包枠は502の特性になりやすい。
【0077】
デジタルカメラ100で規定されているフォーカスレンズの速度制御閾値vに対して、501では合焦近傍に近いDF1で速度変更が開始され、502ではさらにピントのボケる方向にあるDF2で速度変更が開始される。あまりにピントに近い位置まで高速でオートフォーカス制御するとピント位置を読み飛ばしやすくするため、高速でオートフォーカス制御する像面移動速度に応じて、ピント位置から適度に手前で減速できることが望ましい。
【0078】
したがって、大まかに焦点位置を検出する時には、高速にオートフォーカス制御しながら短時間に焦点検出するのが好ましいため、顔輪郭部に着目した焦点検出が適している。
一方、高精度に焦点位置を検出する場合には、低速にオートフォーカス制御しながら焦点検出するのが好ましいため、顔内包枠に着目した焦点検出が適している。
【0079】
したがって、本実施例では、フォーカス速度制御値が閾値v以下のフォーカス状態の場合は、顔輪郭部に着目して、高速にオートフォーカス制御しながら大まかに短時間に焦点検出する。フォーカス速度制御値が閾値vを上回るフォーカス状態の場合は、顔内包枠に着目して、低速にオートフォーカス制御しながら高精度に焦点検出を行う。
【0080】
図6は、上述したようなフォーカスレンズの速度制御指標値に基づいてオートフォーカス制御の速度を変更する動作を説明するグラフである。
図6において、横軸に至近から無限までのフォーカス範囲を示し、縦軸にフォーカス速度およびフォーカスレンズの速度制御指標値を示している。601は顔輪郭枠におけるフォーカスレンズの速度制御指標値の変化を示しており、602は顔内包枠におけるフォーカスレンズの速度制御指標値の変化を示している。
【0081】
601では、顔と背景とが遠近競合しており、耳と背景でフォーカスレンズの速度制御指標値が高くなっている。また、相対的にコントラストの高い被写体であるため、フォーカスレンズの速度制御指標値のレベルが高く、ピーク波形の半値幅も広くなっている。
【0082】
一方、602では、目のフォーカス位置でフォーカスレンズの速度制御指標値が高くなっている。また、相対的にコントラストの高い被写体の面積が小さいため、フォーカスレンズの速度制御指標値のレベルが低くなっている。603は、このようなフォーカスレンズの速度制御指標値におけるフォーカスレンズの駆動速度の制御を示したものであり、フォーカス位置D1で顔輪郭部のフォーカスレンズの速度制御指標値が閾値vを上回り、速度が落とされている。フォーカス速度が低速の状態で目のフォーカス位置を通過することで、不図示のコントラストピークを高精度に検出できるようになっている。
【0083】
コントラストピーク検出後、合焦位置へのレンズ駆動に切り替えるため、フォーカス位置D3でフォーカスレンズ101の制御が停止している。例えば、顔内包枠を着目AF枠とすると、602に示す半値幅の非常に狭いフォーカスレンズの速度制御指標値となる。このため、フォーカス速度を低速に変更した段階で、フォーカス位置D2に示すように既に目のフォーカス位置近傍に位置してしまい、高精度にコントラスト評価を行うことができなくなってしまう。
【0084】
次に、本実施例2の動作について
図7のフローチャートを用いて説明する。特に説明しない限り、下記制御はシステムコントローラ129の制御により行われる。
【0085】
まず、レリーズスイッチSW1(132)が操作されて、焦点検出命令が発生することにより開始される。なお、デジタルカメラ100は、あらかじめ電源が投入されていて、ライブビュー命令の発生に伴い1秒間に30乃至60fps程度の撮像とライブビュー表示が開始されるものとする。
【0086】
はじめに、ステップS701にて、顔領域検出ブロック204で顔領域の検出が行われる。検出後、ステップS702へ進む。
【0087】
ステップS702では、ステップS701で顔領域が検出されたか判定される。検出できた場合は、ステップS703へ進む。検出できなかった場合は、ステップS709へ進む。
【0088】
ステップS703では、ステップS701で検出された顔領域を多点焦点検出領域(
図3薄網線部)との位置関係を比較して、顔領域に内包される多点焦点検出領域である顔内包枠の有無が判定される。顔内包枠が有る場合は、ステップS704へ進む。顔内包枠が無い場合は、ステップS708へ進む。
【0089】
ステップS705では、本実施例の特徴である、フォーカスレンズの速度制御指標値を算出し、つづくステップS706で所定の閾値vとの大小関係が比較される。閾値v以下の場合は、ステップS706へ進む。閾値vより大きい(上回る)場合は、ステップS707へ進む。
【0090】
ステップS706では、多点焦点検出領域(
図3薄網線部)のうち、顔輪郭を含む顔輪郭枠が、フォーカス制御に直接的に着目する多点焦点検出領域である着目AF枠として選択される。選択後、ステップS710へ進む。
【0091】
ステップS707では、多点焦点検出領域(
図3薄網線部)のうち、顔輪郭の内側である顔内包枠305が着目AF枠として選択される。選択後、ステップS710へ進む。
【0092】
ステップS708では、顔の位置と多点焦点検出領域との位置関係により、ステップS701にて顔を検出できているものの顔内包枠を設定できないため、顔領域が最も含まれている多点焦点検出領域を着目AF枠として選択される。選択後、ステップS710へ進む。
【0093】
ステップS709では、顔を検出していない条件であり、人物以外の物体等に焦点検出を行う条件において実行される処理ステップである。この条件では、所定の水平3領域と垂直3領域の計9領域全てを着目AF枠として選択される。選択後、ステップS710へ進む。
【0094】
ステップS710では、再度、フォーカスレンズの速度制御指標を算出し、閾値vとの大小関係が比較される。閾値v以下の場合は、ステップS711へ進む。閾値vを上回る場合は、ステップS714へ進む。
【0095】
ステップS711では、高速のレンズ駆動で焦点位置を大まかに検出する高速スキャンが行われるよう制御される。制御後、ステップS712へ進む。
【0096】
ステップS712では、フォーカスレンズの駆動速度を落とすことなく高速スキャン状態でコントラストピークを検出したか判定される。コントラストピークを検出した場合は、ステップS713にて、低速のレンズ駆動で焦点位置を高精度に検出する低速スキャンに移行させる。移行後、ステップS701へ戻る。コントラストピークを検出していない場合も、ステップS701へ戻る。
【0097】
ステップS714では、低速スキャンが行われるよう制御される。制御後、ステップS715へ進む。
【0098】
ステップS715では、低速スキャン中にコントラストピークを検出したか判定される。コントラストピークを検出していない場合は、ステップS701へ戻る。コントラストピークを検出した場合は、ステップS716にてコントラストピーク位置を最終合焦位置としてオートフォーカス制御され、本実施例の動作を終了する。
【0099】
上述の動作を行うことにより、焦点検出に係る時間を短縮しながら高精度に焦点検出を行うことができるようになる。また、顔が存在する場合に顔に着目させつつ、誤ったフォーカス位置での合焦判定や合焦不能を抑えて、高精度に焦点検出を行うことができるようになる。
【実施例3】
【0100】
実施例1では、格子状に配置された多点の焦点検出領域の中から、顔輪郭枠や顔内包枠を選択していた。しかし、これに限らず、任意の大きさの領域で顔輪郭枠や顔内包枠を設定しても良い。以下、上述した構成の実施例について説明する。なお、デジタルカメラ100の構成は、実施例1と同様である。
【0101】
本実施例3における焦点検出領域について説明する。
【0102】
図8は、任意の大きさで顔輪郭枠や顔内包枠の設定状況を示す模式図である。
図8において、撮影構
図801の中に、主被写体である人物802、背景の樹木803、任意の大きさの領域で設定された顔輪郭枠804、同様に任意の大きさの領域で設定された顔内包枠805が存在している。
【0103】
顔輪郭枠804は顔検出で得られた顔領域情報に基づいて、焦点検出領域を顔の輪郭に沿った方向を長手方向に矩形で設定され、短手方向は背景との遠近競合をできるだけ避けるために狭く設定される。顔内包枠805は顔検出で得られた顔領域情報に基づいて、顔輪郭の内側に焦点検出領域が設定される。
【0104】
顔内包枠には強いコントラストの部位が少ないため、できるだけコントラスト成分を拾う目的で、顔輪郭を含まない程度でできる限り大きく設定される。このような設定を行うため、顔輪郭枠804は顔内包枠805より領域が小さく設定される。
【0105】
次に、本実施例3の動作について
図9のフローチャートを用いて説明する。特に説明しない限り、下記制御はシステムコントローラ129の制御により行われる。
【0106】
まず、レリーズスイッチSW1(132)が操作されて、焦点検出命令が発生することにより開始される。なお、デジタルカメラ100は、あらかじめ電源が投入されていて、ライブビュー命令の発生に伴い1秒間に30乃至60fps程度の撮像とライブビュー表示が開始されるものとする。
【0107】
はじめに、ステップS901にて、顔検出ブロック204で顔領域の検出が行われる。検出後、ステップS902へ進む。
【0108】
ステップS902では、ステップS901で顔領域が検出されたか判定される。検出できた場合は、ステップS903へ進む。検出できなかった場合は、ステップS909へ進む。
【0109】
ステップS903では、フォーカスレンズの速度制御指標値を算出し
、所定の閾値vとの大小関係が比較される。閾値v以下の場合は、ステップS905へ進む。閾値vより大きい(上回る)場合は、ステップS907へ進む。
【0110】
ステップS905では、検出された顔領域に基づいて、顔輪郭線の方向に長く、その垂直方向に短い顔輪郭AF枠の焦点検出領域を設定する。顔輪郭線の方向には少なくとも耳から頬のまで含まれる長さが好ましく、垂直方向は耳がぎりぎり収まる程度で背景の混入が少ない長さが好ましい。このような領域設定を行うことにより、背景との遠近競合を避けつつ、高コントラストな顔輪郭の部位を多く含められるため、ピント位置の見逃しを抑えることができる。設定後、ステップS906へ進む。
【0111】
ステップS906では、ステップS905で設定した顔輪郭AF枠を着目AF枠として設定する。設定後、ステップS910へ進む。
【0112】
ステップS907では、検出された顔領域に基づいて、顔輪郭の内側でできるだけ大きく領域が得られるよう顔内包AF枠の焦点検出領域を設定する。顔内包部には高コントラストな部位が少ないため、できるだけ領域を広くして、少しでも多くコントラストを拾えるようにする。このような領域設定を行うことにより、ピント位置の見逃しを抑えつつ、高精度な焦点検出を行うことができる。設定後、ステップS908へ進む。
【0113】
ステップS908では、ステップS907で設定した顔内包AF枠を着目AF枠として設定する。設定後、ステップS910へ進む。
【0114】
ステップS909では、顔を検出していない条件であり、人物以外の物体等に焦点検出を行う条件において実行される処理ステップである。この条件では、実施例2のステップS709で説明したような、所定の水平3領域と垂直3領域の計9領域を着目AF枠として選択される。選択後、ステップS910へ進む。
【0115】
ステップS910では、再び、フォーカスレンズの速度制御指標値と閾値vとの大小関係が比較される。閾値v以下の場合は、ステップS911へ進む。閾値vを上回る場合は、ステップS914へ進む。
【0116】
ステップS911では、高速のレンズ駆動で焦点位置を大まかに検出する高速スキャンが行われるよう制御される。制御後、ステップS912へ進む。
【0117】
ステップS912では、フォーカス速度を落とすことなく高速スキャン状態でコントラストピークを検出したか判定される。コントラストピークを検出した場合は、ステップS913にて、低速のレンズ駆動で焦点位置を高精度に検出する低速スキャンに移行させる。移行後、ステップS901へ戻る。コントラストピークを検出していない場合も、ステップS901へ戻る。
【0118】
ステップS914では、低速スキャンが行われるよう制御される。制御後、ステップS915へ進む。
【0119】
ステップS915では、低速スキャン中にコントラストピークを検出したか判定される。コントラストピークを検出していない場合は、ステップS901に戻る。コントラストピークを検出した場合は、ステップS916にてコントラストピーク位置を最終合焦位置としてフォーカス制御され、本実施例の動作を終了する。
【0120】
上述の動作を行うことにより、顔輪郭AF枠を用いて大まかに焦点検出する際に、遠近競合の影響を抑えることができるようになる。また、顔内包AF枠を用いて高精度に焦点検出する際、逆光や露光量オーバー/アンダー条件といった悪条件でもコントラスト評価を正しく行える可能性を高めることができるようになる。
【0121】
(変形例)
本実施例では、顔輪郭部として耳から頬にかけての領域を顔輪郭AF枠として設定していた。しかし、これに限らず、人物の頭部や首部、あるいは公知の人体検知結果に基づく胴体部など、他の被写体検出方式による検出結果から得られる輪郭部に対応する焦点検出領域であっても差し支えない。
【0122】
つまり、被写体の輪郭は、少なくとも1つの身体部位の輪郭であり、被写体の輪郭内部は、身体部位の輪郭内部であっても良い。
【0123】
この場合、長手方向と短手方向はステップS905およびステップS907の説明に対して入れ替わった形状となる可能性があるが、特に差し支えない。このような構成にすることで、実施例と同様にコントラストの高い輪郭部を使って合焦近傍へ大まかにフォーカス制御しやすくできる。