特許第6238596号(P6238596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238596
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】高周波焼入装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/10 20060101AFI20171120BHJP
   C21D 1/42 20060101ALI20171120BHJP
   H05B 6/36 20060101ALI20171120BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20171120BHJP
   H05B 6/42 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C21D1/10 G
   C21D1/42 J
   H05B6/36 Z
   H05B6/10 331
   H05B6/42
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-135576(P2013-135576)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-10251(P2015-10251A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026088
【氏名又は名称】富士電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】己之上 潤二
(72)【発明者】
【氏名】長尾 武彦
(72)【発明者】
【氏名】増谷 有亮
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−230522(JP,A)
【文献】 実開昭58−174893(JP,U)
【文献】 実開平02−126395(JP,U)
【文献】 特開平04−154908(JP,A)
【文献】 特開2003−129129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/00、 1/42
H05B 6/00− 6/10
H05B 6/14− 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導コイルが設けられたコイルユニットと、移動手段に固定された基端側部材と、コイルユニットを保管するコイル保管部とを有し、
コイルユニットは、誘導コイルに電気的につながるコイル側接点と、冷却液導入口と冷却液排出口とを有し、
基端側部材は、コイルユニットを一体的に保持する結合状態と、コイルユニットを分離可能な分離可能状態とを切り換える係脱切り換え機構を有し、係脱切り換え機構には外力によって操作されて結合状態と分離可能状態とを切り換える操作部があり、さらに基端側部材には、基端側接点と冷却液供給口と冷却液回収口とを有し、
コイルユニットが基端側部材と結合状態にあるとき、コイルユニットの一部が基端側部材と係合してコイルユニットが基端側部材に接合され、コイルユニットのコイル側接点と、冷却液導入口と、冷却液排出口とがそれぞれ基端側部材の基端側接点と、冷却液供給口と、冷却液回収口とに接合された状態となり、
コイル保管部は、コイルユニットを保管することが可能であると共に、アクチェータが設置されており、
コイルユニットを基端側部材に結合した状態で移動手段によってコイルユニットをコイル保管部に移動させ、コイル保管部に設置されたアクチェータによって基端側部材の操作部を動かして係脱切り換え機構を結合状態から分離可能状態に切り換え、コイルユニットを基端側部材から切り離すことが可能であり、
且つコイルユニットを保持していない状態の基端側部材を移動手段によってコイル保管部に保管されているコイルユニットに近接し、コイル保管部に設置されたアクチェータによってコイルユニットの操作部を動かして係脱切り換え機構を結合状態にしてコイルユニットを基端側部材に保持することが可能であり、
係脱切り換え機構は、スライド部材を有し、スライド部材の一部が操作部を構成しており、当該操作部を操作してスライド部材を摺動させることにより、スライド部材とコイルユニットとの接触位置が変化してコイルユニットが移動し、コイルユニットのコイル側接点と、冷却液導入口と、冷却液排出口とがそれぞれ基端側部材の基端側接点と、冷却液供給口と、冷却液回収口とに接合されることを特徴とする高周波焼入装置。
【請求項2】
前記スライド部材は、傾斜面を有し、コイルユニットの一部が傾斜面と接触することを特徴とする請求項に記載の高周波焼入装置。
【請求項3】
コイルユニットの一部に係合部があり、前記スライド部材は、開口を有し、当該開口には前記係合部が通過可能な大きさを持った大開口部と、当該大開口部と連続し、前記係合部が通過不能な小開口部とがあり、結合状態においては小開口部の近傍が前記係合部と接していることを特徴とする請求項又はに記載の高周波焼入装置。
【請求項4】
コイルユニットはユニット側フランジ部材を有し、当該ユニット側フランジ部材の一方の面側に誘導コイルがあり、他方の面側にコイル側接点があり、当該ユニット側フランジ部材の表面であってコイル側接点側に冷却液導入口と冷却液排出口とが開口し、
基端側部材には基端側フランジ部材があり、基端側フランジ部材にはコイル側接点が通過可能な挿通開口と、冷却液供給口と、冷却液回収口とが開口し、
ユニット側フランジ部材と基端側フランジ部材とが合致することによってコイルユニットの冷却液導入口及び冷却液排出口と、基端側部材の冷却液供給口及び冷却液回収口とが接合されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の高周波焼入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波焼入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼製のワークを硬化させる方法の一つに焼入がある。焼入は、ワークを加熱して一定の温度まで上昇し、その後に急冷して行う。
ワークを加熱する方法には、加熱炉を使用する方法と、誘導加熱を利用する方法がある。誘導加熱を利用する焼入は、高周波焼入と称されている。高周波焼入は、高周波電源と、誘導コイルを使用して行う焼入方法である。
即ち高周波焼入は、誘導コイルに高周波電流を通電し、この状態の誘導コイルをワークに近接させる。その結果、ワークに渦電流(誘導電流)が発生し、ワークが誘導加熱され、ワーク自身が赤熱する。そして赤熱したワークを急冷してワークの組成をマルテンサイト化する。
【0003】
高周波焼入れは、短時間で処理が可能であり、且つ、表面側だけを焼入れ硬化させることができることから、機械部品の焼入れに広く活用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−233339号公報
【特許文献2】特開2011−58059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、高周波焼入は、大量生産に適する技術であり、多品種少量生産には不向きであると言われている。
即ち高周波焼入は、前記した様にワークを誘導加熱して赤熱させるものであるため、昇温に要する時間が加熱炉を利用する場合に比べて極めて短い。
その一方で、高周波焼入は、ワークの形状に対応した誘導コイルを使用してワークを加熱する必要があり、ワークが変わるたびに誘導コイルを取り替える必要があるため、段取り時間が掛かる。
即ち高周波焼入は、誘導コイルをワークに近接させてワークに誘導電流を発生させるものであるため、誘導コイルとワークとの間の距離を一定に保つ必要がある。そのため処理対象が変わると、使用する誘導コイルも変える必要がある。
【0006】
ここで誘導コイルは重いので、装置から取り外したり固定するのに力を要する。また誘導コイルを取り替える際には、誘導コイルに電流を流すための配線を接続しなおす必要がある。さらに焼入処理を行う際に誘導コイル自身も昇温するため、誘導コイルに冷却水が通水される場合が多い。そのため誘導コイルを取り替える際には、冷却水の配管を接続し直す必要があり、それに要する時間も掛かってしまう。
【0007】
ここで、高周波焼入装置に機械的なチャックを設け、当該チャックで誘導コイルを保持させる方策が考えられる。
しかしながらこの方策は、装置が大がかりになってしまうという問題がある。即ち前記した様に、誘導コイルは重いので、これを保持するチャックは、相当に大型のものを採用せざるを得ない。
またチャックを駆動するためのシリンダ等の装置をチャックの近傍に搭載することとなり、ますます重量が増してしまう。また高周波焼入は、ワークの表面に沿って誘導コイルを移動させたり、ワークを急冷する際に一時的に誘導コイルを退避させる場合が多いが、シリンダ等の装置がワークを移動させる際の妨げになる。
さらに、チャックを利用する方策では、電気接続や冷却水配管のやり替えを自動的に行うことは困難である。
【0008】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、誘導コイルの取り替えを自動的に行うことが可能な高周波焼入装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、誘導コイルが設けられたコイルユニットと、移動手段に固定された基端側部材と、コイルユニットを保管するコイル保管部とを有し、コイルユニットは、誘導コイルに電気的につながるコイル側接点と、冷却液導入口と冷却液排出口とを有し、基端側部材は、コイルユニットを一体的に保持する結合状態と、コイルユニットを分離可能な分離可能状態とを切り換える係脱切り換え機構を有し、係脱切り換え機構には外力によって操作されて結合状態と分離可能状態とを切り換える操作部があり、さらに基端側部材には、基端側接点と冷却液供給口と冷却液回収口とを有し、コイルユニットが基端側部材と結合状態にあるとき、コイルユニットの一部が基端側部材と係合してコイルユニットが基端側部材に接合され、コイルユニットのコイル側接点と、冷却液導入口と、冷却液排出口とがそれぞれ基端側部材の基端側接点と、冷却液供給口と、冷却液回収口とに接合された状態となり、コイル保管部は、コイルユニットを保管することが可能であると共に、アクチェータが設置されており、コイルユニットを基端側部材に結合した状態で移動手段によってコイルユニットをコイル保管部に移動させ、コイル保管部に設置されたアクチェータによって基端側部材の操作部を動かして切り換え機構を結合状態から分離可能状態に切り換え、コイルユニットを基端側部材から切り離すことが可能であり、且つコイルユニットを保持していない状態の基端側部材を移動手段によってコイル保管部に保管されているコイルユニットに近接し、コイル保管部に設置されたアクチェータによってコイルユニットの操作部を動かして切り換え機構を結合状態にしてコイルユニットを基端側部材に保持することが可能であり、係脱切り換え機構は、スライド部材を有し、スライド部材の一部が操作部を構成しており、当該操作部を操作してスライド部材を摺動させることにより、スライド部材とコイルユニットとの接触位置が変化してコイルユニットが移動し、コイルユニットのコイル側接点と、冷却液導入口と、冷却液排出口とがそれぞれ基端側部材の基端側接点と、冷却液供給口と、冷却液回収口とに接合されることを特徴とする高周波焼入装置である。
【0010】
本発明の高周波焼入装置は、コイルユニットと、移動手段に固定された基端側部材と、コイルユニットを保管するコイル保管部とを有している。
コイルユニットは、誘導コイルを主要部品とするものであり、コイル側接点や冷却液の出入り口がユニット化されたものである。
基端側部材は、コイルユニットを接合するための部材であり、コイルユニットを一体的に保持する結合状態と、コイルユニットを分離可能な分離可能状態とを切り換える係脱切り換え機構を有している。
ここで本発明で採用する基端側部材は、係脱切り換え機構を動作させるためのアクチェータを持たず、これに代わって操作部が設けられている。即ち本発明の基端側部材では、外力によって操作部を操作することにより結合状態と分離可能状態とを切り換えられる。そして本発明では、操作部を操作するための外力は、コイル保管部に設けられたアクチェータから供給される。
そのため本発明の高周波焼入装置では、基端側部材の重量が軽く、また体積も小さい。 本発明の高周波焼入装置では、コイルユニットが基端側部材と結合状態にあるとき、コイルユニットの一部が基端側部材と係合してコイルユニットが基端側部材に接合され、コイルユニットのコイル側接点と、冷却液導入口と、冷却液排出口とがそれぞれ基端側部材の基端側接点と、冷却液供給口と、冷却液回収口とに接合された状態となるから、電気接続や冷却液通路同士の接続についても自動的に行うことができる。
コイルユニットの冷却液導入口から導入された冷却液は、誘導コイル内を循環して冷却液排出口に至る場合と、ワークに向けて噴射供給される場合とがある。
【0011】
本発明の高周波焼入装置では、スライド部材を利用した係脱切り換え機構が採用されている。
本発明の高周波焼入装置では、操作部を操作してスライド部材を摺動させ、スライド部材とコイルユニットとの接触位置を変化させてコイルユニットをいずれかの方向に移動させ、コイルユニットを結合状態にする。
【0012】
請求項に記載の発明は、前記スライド部材は、傾斜面を有し、コイルユニットの一部が傾斜面と接触することを特徴とする請求項に記載の高周波焼入装置である。
【0013】
本発明の高周波焼入装置では、スライド部材が傾斜面を有している。そのためスライド部材を摺動させると、コイルユニットがスライド部材の摺動方向に対して交差する方向に移動する。
【0014】
請求項に記載の発明は、コイルユニットの一部に係合部があり、前記スライド部材は、開口を有し、当該開口には前記係合部が通過可能な大きさを持った大開口部と、当該大開口部と連続し、前記係合部が通過不能な小開口部とがあり、結合状態においては小開口部の近傍が前記係合部と接していることを特徴とする請求項又はに記載の高周波焼入装置である。
【0015】
本発明の高周波焼入装置は、スライド部材に係合部が通過可能な大きさを持った大開口部を有しているから、コイルユニットの一部を当該開口に挿通することができる。またスライド部材には、大開口部と連続し、係合部が通過不能な小開口部がある。そのためコイルユニットを大開口部に挿通させた状態で、スライド部材を摺動させることにより、コイルユニットの脱落を阻止することができる。
【0016】
請求項に記載の発明は、コイルユニットはユニット側フランジ部材を有し、当該ユニット側フランジ部材の一方の面側に誘導コイルがあり、他方の面側にコイル側接点があり、当該ユニット側フランジ部材の表面であってコイル側接点側に冷却液導入口と冷却液排出口とが開口し、基端側部材には基端側フランジ部材があり、基端側フランジ部材にはコイル側接点が通過可能な挿通開口と、冷却液供給口と、冷却液回収口とが開口し、ユニット側フランジ部材と基端側フランジ部材とが合致することによってコイルユニットの冷却液導入口及び冷却液排出口と、基端側部材の冷却液供給口及び冷却液回収口とが接合されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の高周波焼入装置である。
【0017】
本発明の高周波焼入装置では、コイルユニットはユニット側フランジ部材があり、基端側部材には基端側フランジ部材がある。そしてこれらのフランジ部材には、冷却液を流通させる冷却液導入口等が設けられており、両フランジを合わせた際に冷却液導入口等が合致し、冷却液配管が接続される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の高周波焼入装置は、誘導コイルの取り替えを自動的に行うことが可能であり、多品種少量生産を行う高周波焼入装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態の高周波焼入装置の全体斜視図である。
図2図1の高周波焼入装置における産業用ロボット(移動装置)の先端部であり、基端側部材にコイルユニットが接合された状態を示す斜視図である。
図3図1の高周波焼入装置における産業用ロボット(移動装置)の先端部であり、基端側部材とコイルユニットが分離された状態を示す斜視図である。
図4図1の高周波焼入装置で採用するコイルユニットの構造を示す透視斜視図である。
図5図1の高周波焼入装置で採用する基端側部材の構造を示す分解斜視図である。
図6図1の高周波焼入装置で採用する基端側部材の一部破断斜視図であり、スライド部材の近傍を示す。
図7図1の高周波焼入装置で採用する基端側部材を裏面側から観察した斜視図である。
図8】基端側部材の開口にコイルユニットの先端部分を差し込んだ状態を示す、一部破断斜視図である。
図9】基端側部材の開口にコイルユニットの先端部分を差し込んだ状態を示す、断面図である。
図10】基端側部材にコイルユニットが接続された状態を示す、断面図である。
図11】(a)〜(c)は、基端側部材にコイルユニットを結合する手順を示す説明図である。
図12】(a)〜(c)は、基端側部材からコイルユニットを取り外す手順を示す説明図である。
図13図1の高周波焼入装置のコイル保管部の断面斜視図である。
図14図1の高周波焼入装置のコイル保管部にコイルユニットが配置された状態を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の高周波焼入装置1は、産業用ロボット2を移動手段とするものであり、産業用ロボット2のアーム3でコイルユニット5を保持する。
即ち本実施形態の高周波焼入装置1は、産業用ロボット2のアーム3に基端側部材6が取り付けられており、当該基端側部材6にコイルユニット5が接続されている。
また本実施形態の高周波焼入装置1は、コイル保管部8を有している。さらに、実際に焼入を行う、作業エリア10がある。
以下、順次説明する。
【0021】
産業用ロボット2は、公知のそれと同様に、複数のアーム3及び関節11を有し、8程度の自由度を持つものである。
【0022】
コイルユニット5は、図3図4に示すように、略「コ」の字状の枠体12に誘導コイル15が取り付けられたものである。
枠体12は、図3に示す様に天面を形成するユニット側フランジ部材20と、左右の側壁部21,22の3面を有し、他の3面が開放された構造をしている。
ユニット側フランジ部材20の表面には、2個の位置決め孔23a,23bが設けられている。
またユニット側フランジ部材20の表面には、冷却液導入口25a,25b,25cと冷却液排出口26a,26b,26cの組み合わせを3組備えている。
【0023】
図4に示す様に、誘導コイル15は、小型の半開放鞍型コイルであり、2つの4分の1円弧部32a,32bと、2つの直線部33a,33bと、一つの2分の1円弧部35が直列に接続されたものである。よって、誘導コイル15は、ワークに対してワークの半径方向に接近及び離間することができる。
また、誘導コイル15は、銅合金等の良導体で構成された中空の導線で構成されており、誘導コイル15の内部を冷却液が流通する。
コイルユニット5には、誘導コイル15に電気的につながるコイル側接点30a,30bが設けられている。即ちコイル側接点30a,30bは、給電部31a,31bを介して誘導コイル15に電気的につながっている。
【0024】
コイル側接点30a,30bは、図4の姿勢を基準として水平に配された銅合金等の良導体で構成されたバーである。コイル側接点30a,30bには、銀メッキが施されている(図示せず)。
前記した様に、コイル側接点30a,30bと、誘導コイル15との間は、銅合金等の良導体で構成された給電部31a,31bによって接続されている。
誘導コイル15は、図3図4の様に、コイル本体28が枠体12内にあり、コイル側接点30a,30bは枠体12の外にある。すなわち、給電部31a、31bは、枠体12のユニット側フランジ部材20を貫通している。
【0025】
ユニット側フランジ部材20を中心に考えると、ユニット側フランジ部材20の一方の面側に誘導コイル15があり、他方の面側にコイル側接点30a,30bがある。そしてユニット側フランジ部材20の表面であってコイル側接点30a,30b側に冷却液導入口25a,25b,25cと冷却液排出口26a,26b,26cとが開口している。
【0026】
誘導コイル15のコイル側接点30a,30bはユニット側フランジ部材20から突出した位置にあり、コイル側接点30a,30bの表面は、ユニット側フランジ部材20の表面と平行に配置されている。
また給電部31a,31bであって、枠体12の外にある部分は、ユニット側フランジ部材20に対して垂直に突出している。そのため給電部31a,31bとコイル側接点30a,30bを一方の側面側から観察すると、「T」状を呈している。
即ちコイル側接点30a,30bは、給電部31a,31bの先端に対して、90度方向両側に突出した突出部32を有している。
【0027】
前記した様に給電部31a,31bとコイル側接点30a,30bを一方の側面側から観察すると、「T」状を呈しており、直立姿勢の給電部31a,31bに対して、図面右側に突出した右側突出部27aと、左側に突出した左側突出部27bとがある。そして本実施形態では、右側突出部27aの下面に、右係合部材28aが設けられ、左側突出部27bの下面に左係合部材28bが設けられている。
右係合部材28aは、二つのコイル側接点30a,30bの右側突出部27aに跨がって設けられている。同様に左係合部材28bは、二つのコイル側接点30a,30bの左側突出部27bに跨がって設けられている。
【0028】
右係合部材28a及び左係合部材28bは、いずれも絶縁性を有した樹脂であって、相当の硬度を有している。右係合部材28a及び左係合部材28bの底面は、傾斜面と水平面を有する形状をしている。
【0029】
給電部31a,31b及び誘導コイル15の内部は空洞であって、冷却液流路(図示せず)が形成されている。そして図4の様に、冷却液導入口25aと冷却液排出口26aの枠体12の内部側の開口が、チューブ36a,36bを介して冷却液流路(図示せず)に接続されている。
【0030】
コイル側接点30a,30b同士の間及び給電部31a,31bには、図示しない絶縁板が挟まれている。
【0031】
次に基端側部材6について説明する。基端側部材6は、基端側枠38と、スライド部材40と、基端側接点43a,43bとを有している。
基端側枠38は、天面と底面を含む4面が囲まれた枠である。
即ち基端側枠38は、天面となる取り付け壁41と、底面となる基端側フランジ部材45とを有し、さらに両者を接続する側面壁46a,46bを有している。基端側枠38は、4面が囲まれた枠であり、内部は空洞である。
取り付け壁41の下には、図9の様にバネ7と基端側接点43a,43bを配置する収容室77が設けられている。収容室77には、開口78(挿通開口)が設けられている。
【0032】
基端側フランジ部材45には、図7に示す様に、中央部分に大きな開口78が設けられている。基端側フランジ部材45は、前述したユニット側フランジ部材20と合致するものであり、ユニット側フランジ部材20の表面に設けられた開口等に対応する部材が存在する。即ち基端側フランジ部材45には、図7に示す様に、底側表面から2個の位置決めピン47a,47bが突出している。
また、基端側フランジ部材45の底側表面には、冷却液供給口48a,48b,48cと冷却液回収口50a,50b,50cが設けられている。また冷却液供給口48a,48b,48c及び冷却液回収口50a,50b,50cにはそれぞれオーリング44が設けられている。
【0033】
さらに、基端側フランジ部材45に加圧気体供給口を設け、コイルユニット5のユニット側フランジ部材20にも当該加圧気体供給口に接合される加圧気体導入口を設け、加圧気体導入口と噴射ノズル(図示せず)とを配管接続し、加圧気体をワークに向けて噴射してもよい。すなわち、長尺状のワークを移動焼入れする場合には、ワークの誘導加熱中の部位に冷却液が飛散しないように、加圧気体で冷却液を吹き飛ばすのが望ましい。
【0034】
基端側枠38の側面壁46a,46bには、係合溝57a,57bが設けられている。係合溝57a,57bは、側面壁46a,46bのユニット側フランジ部材20の近傍であって、ユニット側フランジ部材20に対して平行に延びている。係合溝57a,57bは、側面壁46a,46bの内側に設けられており、側面壁46a,46bの全幅に至る長さをもっている。即ち側面壁46aの係合溝57aと、側面壁46bの係合溝57bは、対向する位置にある。
【0035】
また、基端側枠38の側面壁46a,46bの外側には、近接センサ66a、66bが設けられている。近接センサ66a、66bは、側面壁46a,46bに対して直交しており、センサ部が、ユニット側フランジ部材20(下方)側を向いている。各近接センサ66a、66bは、誘導コイル15までの距離を検出し、両センサによる検出値は、図示しない制御装置に入力される。両センサによる検出値に差がある場合には、制御装置は、基端側部材6にコイルユニット5が正常に接続されていないと判定し、図示しない警報装置を作動させて警報を発する。近接センサ66a、66bとしては、例えば赤外線センサを採用することができる。
【0036】
スライド部材40は、厚さが5mmから15mm程度の薄い部材であり、平面視が略正方形の枠状の部材である。即ちスライド部材40には、中央に開口51が設けられている。開口51は、図5の様に、面積の大きな大開口部52と、面積の小さな小開口部53が合体したものである。
ここで、大開口部52の幅Wa(図5)は、前記した誘導コイル15のコイル側接点30a,30bの幅w(図2)よりも広く、コイル側接点30a,30b及び左右の係合部材28a,28bが挿通可能である。
これに対して小開口部53の幅Wbは、コイル側接点30a,30bの幅wよりも狭く、コイル側接点30a,30b及び左右の係合部材28a,28bが通過することはできない。
ただし、小開口部53の幅Wbは、給電部31a,31bの突出部32の幅よりも広く、突出部32は小開口部53を通過することができる。
【0037】
スライド部材40の小開口部53の両脇側であって、大開口部52の近傍部分には傾斜面55a,55bが形成されている。傾斜面55a,55bは、小開口部53側から大開口部52に向かって、厚さが薄くなって行く方向に傾斜する平面である。
【0038】
本実施形態では、スライド部材40の枠を形成する4辺の内、大開口部52に面する辺が開放側操作部70(解除側操作部)として機能し、小開口部53に面する辺が接合側操作部71として機能する。また残る2辺は、ガイド部72a,72bとして機能する。
【0039】
基端側接点43a,43bは、前記したコイル側接点30a,30bと同等の幅を有する接点であり、表面に銀メッキが施されている(図示せず)。また、基端側接点43a,43bは中空であり、内部には図示しない配管(チューブ)を介して冷却液が循環供給される。
【0040】
次に、基端側部材6の各部材の関係について説明する。
本実施形態では、スライド部材40は、その両脇部分が基端側枠38の係合溝57a,57bに係合している。より具体的には、スライド部材40のガイド部72a,72bが、基端側枠38の係合溝57a,57bと係合している。
そのためスライド部材40が構成する平面は、ユニット側フランジ部材20の内面側が構成する平面に対して平行に配置されている。そしてスライド部材40は、前記した係合溝57a,57b内を摺動することができる。
即ちスライド部材40は、ユニット側フランジ部材20の内面側との間で平行状態を維持しつつ、スライドすることができる。
【0041】
また基端側接点43a,43bは、基端側枠38内の取り付け壁41側に設けられている。本実施形態では、基端側接点43a,43bは、その一部が収容室77内にあり、下面が収容室77の開口78に対向している。
そして基端側接点43a,43bは、バネ7によって開口78側に向かって押圧されている。
【0042】
次に、コイル保管部8について説明する。
コイル保管部8は、図13図14の様に、二段の棚であり、図1の様に複数の保管部区画65を有している。即ちコイル保管部8は、図13図14の様に、下棚80と、上棚81を有している。そして各保管部区画65には、下棚80に設けられたユニット保持部82と、上棚81に設けられた2台のアクチェータ83,85が配置されている。
即ちユニット保持部82は、下棚80に設けられた正方形の開口84と、当該開口84の周囲に配された複数の押さえ部材86によって構成されている。
【0043】
また上棚81についても開口88が設けられており、前記したアクチェータ83,85は、開口の近傍に対向して設けられている。
本実施形態では、アクチェータ83,85は、いずれもエアーシリンダであり、ロッドの先端に押圧部材87が取り付けられている。また本実施形態では、一方のアクチェータ83が、接合用アクチェータ83として機能し、他方が解除用アクチェータ85として機能する。一つのアクチェータが接合用と解除用を兼用してもよい。すなわち、ロッドの先端(押圧部材87)にスライド部材40を固定又は係合し、ロッドを伸長又は収縮させてスライド部材40を往復移動させてもよい。
【0044】
さらに、コイルユニット5側の右係合部材28a,左係合部材28bと、基端側部材6側のスライド部材40,係合溝57a,57bによって係脱切り換え機構が構成されている。係脱切り換え機構のうちのスライド部材40が接合用アクチェータ83、解除用アクチェータ85に押圧操作されて、基端側部材6とコイルユニット5の係脱が切り換えられる。
【0045】
次に作業エリア10について説明する。
本実施形態では、作業エリア10は、各種のワークを焼入することができる様に、図1に示す様に、3種類のワーク保持手段90,91,92を備えている。また、図1に示す様に、作業エリア10は略L字形の作業台10aを有しており、産業用ロボット2がL字の屈曲部分付近に配置されている。そのため、アーム3が作業エリア10の全体に届き易くなっている。また、作業台10aは、側壁13と底壁14を有している。側壁13と底壁14によって、作業台10aは、上方が開口した器状を呈しており、ワークを冷却した冷却液を受けることができる。ワーク保持手段90〜92は、作業台10aの底壁14上に配置されている。
【0046】
ワーク保持手段90は、ワークを横持ち支持して回転させる機能を備えたものであり、図示しないモータの動力を受けて回転する保持部材93(チャック)と、これに対向する支持部材95(センタピン)が設けられている。ワーク保持手段90で保持されたワークは、移動焼入れされる。すなわち、ワークに沿って誘導コイル15を移動させ、ワークを順に誘導加熱する。また、枠体12には、図示しない冷却ジャケットが誘導コイル15に近接して設けられており、ワークにおける誘導コイル15によって誘導加熱された箇所に順に冷却液を噴射供給する。
【0047】
ワーク保持手段91は、ワークを縦姿勢で保持して回転させる機能を備えたものであり、図示しないモータの動力を受けて回転する保持部材96が上向きに設けられている。ワーク保持手段91の両側には冷却ジャケット61,62が設けられている。すなわち、2つの冷却ジャケット61,62の間にワーク保持手段91が配置されている。各冷却ジャケット61,62には、図示しない冷却液供給管が接続されている。各冷却ジャケット61,62は、ワーク保持手段91によって保持されて回転するワークに冷却液を噴射供給することができる。
【0048】
ワーク保持手段92は、定盤である。ワーク保持手段92の近傍には、図示しない冷却液ノズルが設けられており、ワークに冷却液を噴射供給することができる。
【0049】
次に、本実施形態の高周波焼入装置1の機能について、実際の作業手順に従って説明する。
作業の前提として、作業エリア10のいずれかのワーク保持手段90、91、92にワークが設置されている。またコイル保管部8には、図14の様に、複数のコイルユニット5が保管されている。なお各コイルユニット5は、いずれも誘導コイル15の形状が異なるものである。ただし、各コイルユニット5の枠体12の形状は共通であり、いずれも同一形状のユニット側フランジ部材20を備えている。
誘導コイル15は、枠体12内に収まっている必要はなく、枠体12と一体化されていればよい。
また産業用ロボット2のアーム3には、基端側部材6だけが図示しないねじで固定されている。
【0050】
最初の工程として、産業用ロボット2に、所望のコイルユニット5を取り付ける。実施形態の高周波焼入装置1では、コイルユニット5の取り付けが自動で行われる。
即ち産業用ロボット2を動作させて、基端側部材6をコイル保管部8に移動する。そしてアーム3に固定された基端側部材6を所望のコイルユニット5の真上の位置に一旦停止させる。この時の、基端側部材6と、コイルユニット5の位置関係は、図11(a)の通りである。
【0051】
その後、産業用ロボット2を動作させて、図11(b)の様に基端側部材6を降下させ、基端側部材6の基端側フランジ部材45に設けられている開口78に、コイルユニット5のコイル側接点30a,30b及び左右の係合部材28a,28bを挿入する。
このとき、図8に示す様に、コイルユニット5のコイル側接点30a,30b及び左右の係合部材28a,28bは、図8図9の様に、スライド部材40の大開口部52を通過して、基端側部材6の基端側枠38の内に入る。
また基端側フランジ部材45の下面に設けられている2個の位置決めピン47a,47bが、ユニット側フランジ部材20の表面に設けられた2個の位置決め孔23a,23bに入る。
【0052】
そしてこの状態で、接合用アクチェータ83のロッドを伸ばし、先端に取り付けられた押圧部材87で、スライド部材40の接合側操作部71を押す。
押圧されたスライド部材40は、係合溝57a,57bに沿って摺動する。その結果、図9の様に給電部31a,31bの左右の突出部27a,27b(左右の係合部材28a,28b)が、スライド部材40の大開口部52(図6)にあった状態から、図10の様に左右の係合部材28a,28bがスライド部材40の小開口部53(図6)にある状態となる。
そしてその過程で、スライド部材40の傾斜面55a,55bが、コイルユニット5のコイル側接点30a,30bの下に設けられた係合部材28a,28bと接触し、さらに傾斜面55a,55bが発生させる垂直方向の分力によって、係合部材28a,28bを持ち上げる。即ちスライド部材40の傾斜面55a,55bが、コイルユニット5の係合部材28a,28bの下に押し込まれることにより、コイルユニット5が上昇し、基端側部材6側に引き寄せられる。
【0053】
その結果、コイルユニット5のユニット側フランジ部材20が基端側部材6の基端側フランジ部材45と合致する。
そしてユニット側フランジ部材20の冷却液導入口25a,25b,25cが、基端側フランジ部材45の冷却液供給口48a,48b,48cと合致する。またユニット側フランジ部材20の冷却液排出口26a,26b,26cが、基端側フランジ部材45の冷却液回収口50a,50b,50cと合致する。
そして前記した様に、基端側フランジ部材45の冷却液供給口48a,48b,48c及び冷却液回収口50a,50b,50cにはそれぞれオーリング44が設けられているから、基端側フランジ部材45側の各孔(冷却液供給口48a〜48c,冷却液回収口50a〜50c)と、ユニット側フランジ部材20の各孔(冷却液導入口25a〜25c,冷却液排出口26a〜26c)とは液密性を保った状態で接合される。
【0054】
コイルユニット5が上昇し、基端側部材6側に引き寄せられることによって、コイルユニット5のコイル側接点30a,30bが上昇する。そして図10の様に、コイル側接点30a,30bが基端側接点43a,43bと接触する。ここで、基端側接点43a,43bは、バネ7によって常時外側(下側)に向かって押圧されており、コイル側接点30a,30bは、常時バネ7の付勢力によって基端側接点43a,43bに押し付けられている。
【0055】
本実施形態では、この様に、スライド部材40を移動することにより、基端側部材6がコイルユニット5を一体的に保持する結合状態とすることができる。
そしてこの際には、スライド部材40の小開口部53の近傍の平坦部分が、コイルユニット5の係合部材28a,28bと接触し、コイルユニット5が基端側部材6から脱落することはない。
またコイルユニット5のコイル側接点30a,30bが基端側部材6の基端側接点43a,43bと接触し、誘導コイル15が電気的に接続される。
さらにユニット側フランジ部材20の各冷却液導入口25a,25b,25cが、基端側フランジ部材45の各冷却液供給口48a,48b,48cと合致し、ユニット側フランジ部材20の各冷却液排出口26a,26b,26cが、基端側フランジ部材45の各冷却液回収口50a,50b,50cと合致して各冷却水配管についても接続が完了する。
【0056】
こうしてコイルユニット5を基端側部材6に接続した後、産業用ロボット2を動作させてコイルユニット5を作業エリア10に移動し、ワークを誘導加熱(焼入)する。
【0057】
またコイルユニット5を交換する際には、図12(a)〜図12(c)に示す手順を経る。すなわち、産業用ロボット2を動作させ、コイルユニット5の元保管されていたコイル保管部8に移動する。そして上棚81に設けられた開口88に、コイルユニット5を入れる。その後、解除用アクチェータ85のロッドを伸ばし、先端に取り付けられた押圧部材87で、スライド部材40の開放側操作部70を押す。
押圧されたスライド部材40は、係合溝57a,57bに沿って摺動する。その結果、図10の様に突出部32がスライド部材40の小開口部53にあった状態から、図9の様に給電部31a,31bの突出部32がスライド部材40の大開口部52にある状態となり、左右の係合部材28a,28bと、スライド部材40との係合関係が解除される。
その結果、コイルユニット5は、基端側部材6と分離可能な状態となる。基端側部材6は、コイルユニット5を分離可能な分離可能状態に切り換わる。
そのため産業用ロボット2を動作させて、基端側部材6を真上に上昇させると、コイルユニット5は、基端側部材6を離れる。
【0058】
そして産業用ロボット2を動作させて、次に使用するコイルユニット5が保管されたコイル保管部8に基端側部材6を移動させ、先述した動作を繰り返して新たなコイルユニット5を基端側部材6に接続する。
【0059】
以上説明した実施形態では、ユニット側フランジ部材20の表面には、冷却液導入口25a,25b,25cと冷却液排出口26a,26b,26cがあり、基端側フランジ部材45には、冷却液供給口48a,48b,48cと冷却液回収口50a,50b,50cが設けられている。そのため本実施形態の高周波焼入装置1では、3系統の冷却回路を有し、その内の2系統が、誘導コイル15と連通しており、誘導コイル15内に冷却液を循環供給する。誘導コイル15内の冷却液流路は、コイル側接点30a,30bに至っており、誘導コイル15内を循環する冷却液は、コイル側接点30a,30bにも流れる。誘導コイル15に連通する冷却回路は、1系統であってもよい。また、残りの1系統は、枠体12に設置された図示しない冷却ジャケットと連通しており、冷却ジャケットに冷却液を供給する。
【0060】
また、ワーク保持手段91で保持されるワークを焼入れする場合には、当該ワークに適合したコイルユニット5が基端側部材6に接続される。当該コイルユニット5には、冷却液導入口25a〜25cと冷却ジャケット(図示せず)が設けられていない。そのため、基端側部材6の基端側フランジ部材45の冷却液供給口48cは、ユニット側フランジ部材20によって閉塞される。又は、ユニット側フランジ部材20の冷却液導入口25cに栓(図示せず)が施され、当該栓によって基端側フランジ部材45の冷却液供給口48a〜48cは閉塞される。そして、誘導加熱されて昇温したワークには、作業エリア10に配置された冷却ジャケット61,62から冷却液が噴射供給される。
【0061】
以上説明した実施形態では、係脱切り換え機構のスライド部材40を摺動させることによってコイルユニット5を基端側部材6側に引き寄せたが、代わりに、カムを回動させることによって同様の作用を発揮させることもできる。すなわち、コイルユニット5側の右係合部材28a,左係合部材28bと、基端側部材6側の係合溝57a,57bの間に各々カムを配置し、当該カムを回動させてカムを右係合部材28a,左係合部材28b,係合溝57a,57bに押圧させ、コイルユニット5と基端側部材6を係合させたり、カムを回動させて当該カムの右係合部材28a,左係合部材28b,係合溝57a,57bに対する押圧を解除してコイルユニット5と基端側部材6の係合を解除することも可能である。
【0062】
以上説明した実施形態では、アーム3を有する産業用ロボット2を採用したが、産業用ロボット2の代わりに、ガイドレールを有するXYテーブルを使用し、基端側部材6をガイドレールに沿って移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 高周波焼入装置
2 産業用ロボット(移動手段)
5 コイルユニット
6 基端側部材
8 コイル保管部
20 ユニット側フランジ部材
25a〜25c 冷却液導入口
26a〜26c 冷却液排出口
28a 右係合部材
28b 左係合部材
30a,30b コイル側接点
40 スライド部材
43a,43b 基端側接点
45 基端側フランジ部材
48a〜48c 冷却液供給口
50a〜50c 冷却液回収口
51 スライド部材の開口
52 大開口部
53 小開口部
55a,55b 傾斜面
70 開口側操作部
71 接合側操作部
78 開口(挿通開口)
83 接合用アクチェータ
85 解除用アクチェータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14