(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持部材は、前記放射線発生部を支持する伸縮可能なアーム部を含み、前記制御手段は、前記アーム部の伸縮を制限することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の移動型放射線撮影装置。
前記アーム部は基部と該基部に対して移動可能に結合する入れ子式の移動部とを有し、該移動部は3段以上で構成されることを特徴とする請求項5に記載の移動型放射線撮影装置。
前記制御手段は、前記放射線発生部が前記特定の非撮影位置に配置された場合に、前記アーム部の上方への移動は許可し、前記アーム部の下方への移動は制限することを特徴とする請求項7に記載の移動型放射線撮影装置。
前記支持部材は、前記放射線発生部を間接的に支持する回転可能な支柱部を有し、前記制御手段は、前記支柱部の回転を制限することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の移動型放射線撮影装置。
前記特定手段は、前記支持部材に含まれるコリメータの回転状態を検知するセンサ、前記放射線発生部の回転状態を検知するセンサ、前記放射線発生部のチルト機構によるチルト状態を検知するセンサ、前記放射線発生部を支持するアーム部の伸縮状態を検知するセンサ、前記放射線発生部を支持するアーム部の支柱部に対する昇降状態を検知するセンサ、前記放射線発生部を間接的に支持する支柱部の伸縮状態を検知するセンサ及び前記放射線発生部を間接的に支持する支柱部の回転状態を検知するセンサの少なくともいずれか1つのセンサからの検知を取得することを特徴とする請求項12に記載の移動型放射線撮影装置。
前記支持部材に作用するデッドマンロック式の動作規制部材を更に有し、前記制御手段は、前記移動型放射線撮影装置に電力が供給された状態において前記動作規制部材を制御することにより、前記支持部材の動作を制限することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の移動型放射線撮影装置。
前記放射線発生部のコリメータの射出面から射出方向に離れる位置に延在するハンドル部を更に有することを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の移動型放射線撮影装置。
前記非撮影位置にある前記放射線発生部及びコリメータの少なくともいずれかについて、少なくとも1側面を覆う壁を有する収納部を更に有することを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の移動型放射線撮影装置。
前記非撮影位置にある前記放射線発生部のコリメータよりも上方に配置される表示部を更に有することを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項に記載の移動型放射線撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施例に係る移動型X線撮影装置の構成を示す図である。
【0010】
図1において、X線管球1は、X線を発生させ、照射するためのX線管球(放射線発生部)である。X線管球1は、種々の撮影に対応するため、管球の位置姿勢を変更することで管球を特定の撮影形態に合わせて配置し、放射線の照射範囲を設定する設定部材あるいは支持部材に固定されている。支持部材は移動台車である台車部6上に形成され、支持部材はX線管球1を台車部6に対して移動可能に支持する。ここで設定部材あるいは支持部材は、例えばコリメータ2、X線管球1を支持するアーム3、X線管球1を間接的に支持する支柱4等を含む。その他、この設定部材は放射線発生部の位置姿勢を変更して放射線の照射範囲を設定するための部材を含む。
【0011】
一方で、撮影を行わない状態、例えば待機状態や移動型X線撮影装置を移動させる際には、院内の他の構造と接触して移動型X線撮影装置或いは当該他の構造に悪影響が及ぶことがないよう、全体を必要に応じてコンパクトにすることが便宜である。そのため、例えば移動時には、例えばアーム3を収縮させ、アーム3を支柱4に対して降下させるなどして、X線管球1(放射線発生部)を特定の非撮影位置(ホームポジション、収納位置)に配置させることがある。
検知センサは、X線管球1が当該非撮影位置に配置されたことを検知する。
検知センサは、例えばアーム3や、台車部6のアーム3と対向する位置に設けられ、アーム3と台車部6との接触を検知する接触センサである。接触センサが接触を検知すると、検知結果の情報として検知信号が生成され
制御部へと出力する。なお、接触時にのみ信号を生成して出力する形態でも、非接触時及び接触時にそれぞれ信号を生成して出力する形態であっても良く、また瞬間的な接触検知があっただけでは検知結果としての信号を送信せず、ある特定時間または特定圧力での接触が検知されることに応じて検知結果としての信号を出力する形態としてもよい。
【0012】
制御部は、検知信号を受けることに応じて、前記設定部材の少なくとも1つの動作を制限する制御を行う。例えば、アーム3の伸縮動作を禁止する、アーム3の支柱4に対する昇降動作を禁止する、などの制御を行う。これにより、例えば
図1に示す例でいえば、ホームポジションにあるアーム3の伸張動作によるX線管球1(放射線発生部)とモニタ9と衝突が回避される。また、アーム3の昇降が禁止されることにより、アーム3と台車部6の干渉が回避される。
【0013】
設定部材について説明する。コリメータ2は、X線管球1に設置されたX線照射範囲を制限する。アーム3は、筒状或いは棒状の外形を有し、水平方向に延在する支持部材であり、その端部でX線管球1を支持する。1つの実施例では、アーム3は、少なくとも水平方向にX線管球1を移動させるための伸縮機構と、伸縮位置固定機構とを備える。支柱4は、筒状或いは棒状の外形を有し、鉛直方向に延在する支持部材であり、そのアーム3を支持する支柱である。アーム支持部5は、アーム3のX線管球1が配置された端部とは異なる端部で支柱4の側面部とを連結し、アーム3を支柱4に沿って移動可能な手段と前記移動による任意の位置に固定可能な手段とを有するアーム支持部である。台車部6は、支柱4を支持する。移動機構7は、台車部6を移動可能にするための移動機構であり、複数のタイヤ、もしくはキャスタを地面に設置した状態で回転することで台車部6を移動させる。支柱回転部8は、台車部6と支柱4を連結し、ベアリングを構成することで、支柱4を台車部6上で地面と垂直な軸を中心に回転可能にする。
【0014】
支柱回転部8その他の設定部材に対して、無励磁作動ブレーキを配置することで、無励磁作動ブレーキの通電状態で支柱4の回転を任意の位置で止めることができる。無励磁作動ブレーキは、
制御部により通電され、或いは
制御部から特定の信号を受信した場合にのみ動作の規制を解除して動作を許可するブレーキであり、いわゆるデッドマンロック式の動作規制部材の例である。デッドマンロック式の動作規制部材が用いられる場合には、
制御部は、
バッテリ等の給電部から移動型X線撮影装置に電力が供給された状態において、前記規制対象の設定部材に配備された動作規制部材に対して選択的に電力を供給しない制御を行うことにより、動作の規制が解除される。このような動作規制部材によれば、装置が暴走してしまう可能性を低減することができる。安全性の高い移動型放射線撮影装置とすることができる。
【0015】
上述のアーム3がX線管球1を支持する伸縮可能であり、かつホームポジションにある場合には、
制御部は伸縮を制限される制御を適用することができる。これにより、例えばモニタ9とX線管球1との衝突する可能性を低減することができる。
【0016】
上述のアーム3が支柱4に対して昇降移動可能に支持される場合には
制御部によりホームポジションにある際にはX線管球1の降下が制限される。上昇動作については、収納位置から安全に離脱する移動方法の1つであると考えられるため、
制御部により規制されず、許可される。降下のみ制限する際には、アーム3に対する操作者からの操作力を検知する荷重センサ等を例えばアーム支持部5等に設けておき、特定の閾値以上の荷重が上方に印加された場合には
制御部はデッドマンロック式の動作規制部材に送電し移動を許可する制御を行う。一方で下方に荷重が印加されることによっては動作規制部材への通電をしない等の制御により下方への移動を制限する。
【0017】
上述の支柱4が多段階で構成され伸縮可能となっている構成を採用している場合には、
制御部はX線管球1がホームポジションにある際には支柱4の伸縮を制限する制御を適用することができる。ここで、支柱4の伸張及び収縮の両方を規制する制御とし、非収納位置への離脱はアーム3の昇降によることとすることができる。これは、例えば支柱4の高さが高くなりすぎると天井等の上方の構造物と衝突する可能性がある点では、高さ方向になるべくコンパクトな外形を維持することが有利なためである。もちろん、上述したアーム3と同様にして支柱4の伸張のみ許可し、収縮を規制するよう
制御部が制御しても良い。アーム3の支柱4に対する昇降機能が省略された移動型放射線発生装置には有効であるほか、例えば、アーム3と支柱4の上昇を同時に行うことにより、より早く装置を展開しX線管球1を効率的に運用することができる。
【0018】
また上述の支柱4が軸方向に回転可能となっている場合には、X線管球1がホームポジションにある際に
制御部の制御に応じて支柱4の回転を制限する制御を適用することができる。これにより、支柱4の回転により収納部10及び収納受け部11とが、予定しない接触により破損等する可能性を低減することができる。
【0019】
その他、デッドマンロック式の動作規制部材ではなく、電磁ブレーキのように
制御部から受電あるいは特定の信号を受信した場合に設定部材の動作を規制する動作規制部材を用いることもできる。例えば、手動での設定部材の位置決めを行うように構成され、部材同士の摩擦によって配置が固定されることとなる。操作者からの操作力に対して
制御部により制御された電磁ブレーキにより設定部材の動作が制限されることとなる。
【0020】
モニタ9は、情報を表示する表示部であり、台車部6の上面側に設置されている。そして、モニタ9は、
制御部の制御に応じて回診時に撮影する患者情報や、患者の場所、検査情報リストを表示する。モニタ9の表示される情報は不図示の通信部により外部のRIS(Radiology Information System)等から受信した被検者情報や、通信部により外部のPACS(Picture Archiving&Communication Systems)へと送信される画像情報を含む。また、撮影条件の設定や撮影したX線画像を院内ネットワークに送信する操作も可能である。モニタ9には、いわゆる接触位置を検知してモニタ9の表示情報を操作するための信号を出力するタッチパネル等の位置検出デバイスが設けられていても良い。
【0021】
収納棒10は、アーム3、もしくは、X線管球1から突出している収納棒である。収納受け部11は、台車部6上に設置された収納棒受け部である。突出する収納棒10は同じく突出する収納棒受け部11に嵌まり込むことで、アーム3や、X線管球1を装置移動時の収納位置へとガイドする。そして、収納棒10もしくは、収納棒受け部11には、互いが嵌まり込んだことを検知する
接触センサを有している。
【0022】
図2に、X線管球1のさらに具体的な構成を示す。13は、コリメータ2がX線管球1に対して回転する回転機構である。回転機構13により、X線照射領域は、コリメータ2により制限された照射野形状を維持して回転させることができる。14は、X線管球1をチルトさせるための回転機構である。15は、X線管球1をアーム3の長さ方向を通る軸を中心に回転させる回転機構である。回転機構13〜15は、それぞれ、無励磁作動ブレーキが構成され、回転を止める手段を有している。回転を止める手段は、永電磁ホルダを使用し、回転機構13〜15の回転軸を吸着させても良い。永電磁ホルダは、通電することにより動作を規制する動作規制部材の一例である。
【0023】
これにより、収納棒10、もしくは収納棒受け部11の接触センサにより、X線管球1が移動時の収納位置にあることを検知し、X線管球1が移動時の収納位置にある時には、回転機構13〜15の回転を停止させることができる。
【0024】
設定部材に含まれるコリメータ2は、回転機構13により射出方向に対する回転が可能となっている。コリメータ2により整形される放射線ビーム束が円形或いは方形に整形することができる。ここで例えば放射線ビーム束がコリメータ2により、射出方向にみて方形形状となっている場合には、矩形の検出領域を有する放射線検出器が撮影形態に合わせて任意の位置姿勢で配置されたとしても適切な照射領域を設定することができる。
制御部はコリメータ2の射出方向に対する回転を制限する制御を適用することができる。これは、コリメータ2が例えばモニタ9あるいはモニタ9の固定部材と衝突する可能性を低減することができる。なお、コリメータ2の回転によってはモニタ9他の移動型放射線撮影装置の部材と衝突する可能性がない場合には、コリメータ2の回転を規制しないよう制御することができる。
【0025】
設定部材に含まれる回転機構14は、X線管球1をチルトさせることができる。ここで、チルトとは、X線管球1の中心付近を通り射出方向と直交する一軸を中心にX線管球1を回転させる動作を指す。
制御部は、回転機構14によるX線管球1のチルト動作を制限する制御を適用することができる。チルト動作の規制により、例えばモニタ9等の部材と衝突する可能性を回避することができる。
【0026】
設定部材に含まれる回転機構15は、アーム4の軸方向に対してX線管球1を回転させることができる。ここで、
制御部は、回転機構15によるX線管球1の当該回転を制限することができる。これにより、X線管球1あるいはアーム3が移動型放射線撮影装置の他の部材と衝突する可能性を低減することができる。なお、収納位置においてもともと接触状態にある収納棒10及び収納棒受け部11についても、予定しない大きさの荷重がかかることによる破損等の影響がある。
【0027】
収納位置或いは非撮影位置は、上述の定義のほか、移動型放射線撮影装置が移動する際の放射線発生部の位置として定められた位置、移動型放射線撮影装置が照射範囲に含まれるような前記放射線発生部の位置、及び放射線発生部による放射線の発生が制限される位置、の少なくともいずれかであってよい。いずれにしろ、収納位置にある場合には、安全に非収納位置とする動作以外の設定部材の動作が
制御部により禁止されることとなるため、移動型X線撮影装置への衝撃を少なくし、かつ使い勝手が向上する。またここでモニタ9には、
制御部の制御に応じて、収納位置にある場合には、当該収納位置から安全に移動させるための動作を行うよう、図面やアイコン等をモニタ9に表示することで操作者に注意喚起をすることができる。
【0028】
図3、
図4は、本発明の実施形態に係る移動型放射線撮影装置の外観図である。
図1、2と同様の符番を付したものについては同様の構成であることを示している。
【0029】
移動ハンドル301は移動型放射線撮影装置の操作者が把持し、台車部6を移動運転するためのハンドルである。
図3には詳細に図示されていないが、移動ハンドル301は鉛直上方から見た場合、モニタ9の周部に沿う略コの字型の投影形状を有している。
図3に示す例では、操作者は、ハンドル301により移動型放射線撮影装置を移動させるため、
直進移動方向の方向を向いて立つこととなる。
【0030】
放射線発生部の例であるX線管球1の放射線の射出口にはコリメータ2が結合されており、コリメータ2の下部の射出面から整形された放射線が射出される。コリメータ2は移動型放射線撮影装置の
直進移動方向に対して一部鉛直方向の高さが減じられた
凹部が形成されており、この
凹部にコリメータ2が納置される(収め置かれる)。このコリメータ2が収め置かれる位置を例えば非撮影位置(収納位置、ホームポジション)とすることができる。
【0031】
また、
凹部により、ホームポジションにあるX線発生部1及びコリメータ2がより低い位置に配置されることとなる。これにより前方の視野がX線発生部1やコリメータ2、アーム3により邪魔される場合が減り、周囲の視認性が向上する。
凹部は、アーム部3が接触する台車部6の上面と、モニタ9を固定するモニタ固定部の上面とに対して高さが減じられることで形成されている。一方でこの
凹部は、
直進移動方向と交叉する方向については凹形状となっていない構造をとることができる。このような状況下では、例えば、X線管球1がホームポジションにある場合でも、支柱回転部8により支柱4が回転によってはX線管球1及びコリメータ2が台車部6等に接触することなく移動可能である。この点から、上述の
制御部はX線管球1が非撮影位置にある場合にも支柱部4の回転動作を規制せず、許可する制御を適用することが可能である。これにより移動型放射線撮影装置の利便性が向上する。
【0032】
その他、
凹部の底面は、X線管球1から漏洩するX線が台車部6の内部の
制御部や
バッテリに悪影響を及ぼさないよう、放射線を吸収或いは反射する遮蔽部材が貼られていてもよい。あるいは、当該底面の内側つまり台車部6の内部であって、底面を形成する部材の当該底面の裏面側の面に当該遮蔽部材が形成されていてもよい。
【0033】
図3に示すように、コリメータ2の射出面側には、射出方向に向けて突出する
凸部が設けられている。
凸部が非撮影位置において移動型放射線撮影装置の台車部6のたとえば
凹部の上面と接触する。この
凸部はいわゆるストッパの機能を果たしており、コリメータ2の射出面が台車部6の上面と接触して破損等する可能性を低減することができる。たとえばこの凸部にゴム等のエラスティックな部材あるいは緩衝部材で形成された部材を採用することにより、コリメータ2及び台車部6の上面に対する衝撃も緩和することができる。
凸部は、照射範囲に入らない範囲で複数設けることができる。また当該凸部あるいは同等の機能を有するストッパ部材は、X線管球1、アーム3等に設けられていても良い。
【0034】
また、
図3に示すようにコリメータ2には1対の
コリメータハンドルを設けることができる。
コリメータハンドルはコリメータ2の側面に対して固定されている。当該
コリメータハンドルにより操作者によるコリメータ2の回転、あるいはX線管球1を位置決めするための種々の設定部材の移動が容易に行える。また、この
コリメータハンドルは、
凸部よりもコリメータ2の射出面から射出方向に離れる位置に延在する長さとすることができる。ここで、かかる
コリメータハンドルが先述の
凸部の機能を兼ねることとしてもよい。或いは、ハンドルに沿って台車部6の上面の高さが減じられるような外形としてもよい。
【0035】
図3に示すように、
凹部が
直進移動方向と交叉する方向については凹形状となっていない形状を有している場合には、
コリメータハンドルは非撮影位置(収納位置)において操作者が把持可能に露出する。これにより、
コリメータハンドルを用いたX線管球1の操作が容易になる。
【0036】
アーム3は例えばパンタグラフ式やテレスコピック式の構造により伸縮可能となっている。
図3に示す例では、アーム3は入れ子式(テレスコピック式)の構造が採用され、支柱4に昇降可能に固定された第一のアーム部と、第一のアーム部に対して移動可能に係合する第二のアーム、第二のアームに対して移動可能に係合する第三のアーム、第三のアームに対して移動可能に係合し一端にX線管球1が固定された第四のアームとを有する3段伸縮式のアーム(伸縮する4段以上のアーム)である。あるいは、移動可能なアームを4段以上、例えば5段や6段以上の構成とすることができる。アームの最大長を一定とした場合、アームの段数を多くした場合、その分アームの最短長は短くなる。ここでは、アームの最大長とは、伸縮する4段以上のアームである場合、移動可能な第二、第三、第四のアームを支柱部から最も離れた位置に移動させた際の支柱からアームの端部までの距離をいう。アームの最短長とは、第二、第三、第四のアームを支柱側に最も移動させ、第一のアーム内に最大限収納した際の支柱からアームの端部までの距離をいう。例えば4段式の伸縮アームを採用することにより、少なくとも3段式のアームを採用する場合に比べて最短長を短くすることができるため、最大長を稼ぎつつ収納時にはよりコンパクトとすることができる。またこれにより、放射線発生部がホームポジションにある場合でもモニタ9の表示情報が確認可能に露出させつつ、移動型放射線撮影装置の全体の大きさを抑えることができる。仮に、移動型放射線撮影装置が正に移動している最中にモニタ9の情報を確認するケースがなくとも、例えば病室の手前で待機している場合や、他の医療従事者等が患者のポジショニングを行っている場合で、X線管球1がホームポジションにある場合にも、モニタ9の情報が確認することができる点は大きなメリットであり、装置の小型化、アームの最大長を確保しつつ、装置の利便性を大きく向上させることができる。
【0037】
支柱部4は多段構成になっており、台車部6に固定された
固定支柱に対して、
移動支柱が昇降可能に固定されている。
移動支柱はアーム支持部5を介してアーム3を支持し、間接的にX線管球1を支持している。また、
固定支柱は支柱回転部8により
図3の一点鎖線で示す軸の周りに回転可能に構成され、
固定支柱の回転に応じて
移動支柱が回転し、結果的にX線管球1が支柱4の軸の周りに回転可能となっている。
【0038】
支柱4が伸縮可能になることにより、支柱4を収縮させた場合、例えばX線管球1がホームポジションにある場合には、支柱4の高さが低くなる。これにより、支柱4が操作者の視界をより邪魔しないこととなり、前方視認性が向上する。この伸縮可能な支柱4は、伸縮する4段以上のアームの構成とあいまって、前方視認性を大きく向上させ、移動型の放射線撮影装置の周辺視界を良好とすることができる。
【0039】
その他、
図3に示す例では、収納棒10は、アーム3から突出しなくても良く、台車部6に設けられた収納棒受け部11と、互いに磁石と磁気センサで、アーム3やX線管球1が装置移動時の収納位置にあることを検知しても良い。また、
図3のような装置では、管球取出し時に、回転機構13〜15の回転を停止させるだけでなく、アーム支持部5の支柱4に対する垂直上方方向の移動と、支柱回転部8のブレーキ解除から支柱の回転の2つの挙動のみを許可しても良い。
【0040】
図4の外観図に示される移動型放射線撮影装置の実施例では、なお、
図3と同様の符番が付された構成については、同様の機能を有する構成であり説明を省略することがある。本実施形態は
図3に係る実施形態と同様であり、
図3に基づき説明した点と異なる点を中心に説明する。
【0041】
図4に示す例では、
凹部はX線管球1及びコリメータ2の少なくともいずれかについて
直進移動方向に対する2側面の少なくとも一部を覆う1対の
壁部材を有する。これら
壁部材と、合わせて設けられている
凹部とにより、放射線発生部またはコリメータの収納部が形成される。この
壁部材は、台車部6と一体的に構成されていてもよい。
壁部材によりX線管球1或いはコリメータ2の側面が覆われ、これによりこれら部材に対して外部からの衝撃が加わる可能性が低減される。
【0042】
図3で示す例では、鉛直方向に対してはコリメータ2とX線管球1との接合部付近にモニタ9の表示面が配置されることとなっているが、
図4に示す例ではモニタ9はコリメータ2よりも上方に配置される。実施例の一つでは、約30kgのX線管球1及びコリメータ2を用いる場合で、収縮させた支柱3の高さを約1.0−1.5mとすることができるため、通常の成人の身長1.6m−1.7mに対しては前方視界が確保できると同時に、前方あるいは
直進移動方向を見るときと、モニタ9を見るときとで、視線の移動がより少ない配置関係となっている。また、モニタ9には迎角がつけられており、これも視線の移動距離の短縮に貢献する。
【0043】
その他、
図4に示す例では、管球取出し時に、回転機構13〜15の回転を停止させるだけでなく、アーム支持部5の支柱4に対する垂直移動のみの挙動を許可しても良い。これらにより、さらにX線管球1がモニタ9に接触することがなくなる。
【0044】
以上のような構成により、装置の移動時において、X線管球の回転を止めることで、X線管球がモニタに接触することがなくなり、操作者は簡便にX線管球を取り出すことができ、操作者の操作性が向上する。
【0045】
図5に基づいて実施例に係る移動型放射線撮影装置を主に制御の観点から説明する。
図1等と同様の符番が振られた構成については、同様の機能を有するものとして説明を省略する。
【0046】
アーム3には、放射線発生部1(X線管球1)、コリメータ2、アーム3等が操作者から受けた操作力を検知するための荷重検知センサ507が設けられる。その他、アーム3の下面には、台車部6の特定の部材との接触を検知するための接触センサ501が設けられる。例えば磁気センサ等が用いられる。接触センサ501は、例えばアーム3が伸縮機構531を有する場合に、非撮影位置におけるアーム3の伸縮状態となった際に台車部の特定の部材と接触センサ501が近接又は接触するように配置されている。収納の際、放射線発生部1がチルトしていたりすると、例えばモニタ9等の他の部材と干渉するため、アームと台車部6が接触しないような構造となっていても良い。
【0047】
支柱4は伸縮可能な支柱とした場合に可動支柱541と固定支柱542とを有する。駆動制御部500は装置の各設定部材の移動や動作を制御する制御部であり、前記放射線発生部を配置し放射線の照射範囲を設定するための設定部材の動作を制限する。この駆動制御部500の収納検知部502で接触センサ501からの信号を検知する。接触したことを示す信号が接触センサ501から出力されたことに応じて収納検知部502は収納を検知する。ブレーキ制御部503は収納に応じて各設定部材のブレーキに対して、ブレーキを作動させる信号を出力する。
【0048】
放射線発生部1のコリメータを回転させる回転機構13、管球チルトのための回転機構14、支柱の軸周りの管球の回転機構15のそれぞれには、ブレーキ513、514、515が設けられている。それぞれ必要に応じてコリメータ回転ブレーキ513、管球チルトブレーキ514、発生部回転ブレーキ515とも呼称する。ブレーキ513−5は、上述の通り例えばデッドマンロック式の無励磁作動ブレーキを採用することができる。
【0049】
アーム3を伸縮させる伸縮機構531には伸縮を規制するためのブレーキ508(伸縮ブレーキ)が設けられる。伸縮機構は例えばテレスコピック式の伸縮機構が用いられる。アーム支持部5のアーム昇降機構551には、昇降を規制するためのブレーキ504(昇降ブレーキ)が設けられる。なお係るブレーキ504は支柱4側に設けられていても良い。
【0050】
支柱541の支柱昇降機構542には、昇降を規制するためのブレーキ505(昇降ブレーキ)が設けられる。また支柱回転部8には、支柱の回転を規制するための支柱回転ブレーキ506が設けられる。
【0051】
収納位置にある場合、これらブレーキはブレーキ制御部503からの信号に応じて作動し、動作や移動が規制されることとなる。ここでデッドマンロック式のブレーキが採用されている場合には、非通電状態においてブレーキの動作がされることとなるため、ブレーキ制御部503は各ブレーキに対してブレーキの解除制御を行わないことにより動作規制を行う制御をすることとなる。
【0052】
その他、撮影制御部591、表示制御部594、駆動制御部500は
図1に示す例でいう
制御部に対応する。撮影制御部591には放射線発生部1による放射線の発生を制御する発生制御部592と、放射線撮像装置595を制御する撮影制御部593とを有する。放射線撮像装置595は、例えば放射線を可視光に変換する蛍光体と可視光を電気信号に変換する複数の光電変換素子からなるイメージセンサ部とを有するX線イメージセンサと、電気信号を増幅及びAD変換して放射線画像データを生成する読み出し部とを有する。放射線画像データは撮像装置の通信回路により移動型放射線撮影装置の表示制御部594の撮影制御部591に送信され、表示制御部594の制御により表示部9(モニタ)に表示される。なお、放射線撮像装置595は例えばカセッテ型のFPD(フラットパネルディテクタ)であって、目的に合わせて任意のタイプのFPDが選ばれ、移動型放射線撮影装置に接続される。なお、移動型放射線撮影装置と放射線撮像装置を合わせて特に移動型の放射線撮影システムと呼ぶことがある。
【0053】
図6に基づいて実施例に係る移動型放射線撮影装置の制御の流れを説明する。ステップS601で例えば電源ボタンが押下されることにより、
バッテリから装置の各部に電力が供給され、
制御部の制御に応じて移動型放射線撮影装置が起動される。ステップS602で駆動制御部500が、アーム3が収納位置にあるか否かを判定する。かかる判定には、収納検知部502が接触センサ501からの信号を検知したか否かの結果情報を用いる。収納検知部502が、放射線発生部1が非撮影位置(収納位置)にあると検知した場合にはステップS603に進む。
【0054】
ステップS603で駆動制御部500は、荷重検知センサ507からの信号によりアーム3に上方への力がかかっているか否かを検知する。ここで駆動制御部500が、上方に向かう力の大きさが所定の閾値を超える大きさであると判定した場合には、ステップS605に進み、ブレーキ制御部503はアームの昇降ブレーキ504の作動を解除する。また、ステップS606でブレーキ制御部503は可動支柱542の昇降ブレーキ505の作動を解除する。これにより、上方への力が検知された場合には、放射線発生部1を非撮影位置から移動させることが可能となる。一方ステップS603で上方への力が検知されない場合、ステップS604でブレーキ制御部503は全ブレーキを作動させ、各設定部材の動作を規制する。あるいはここで既にブレーキが作動されている場合には、ブレーキ制御部503によりブレーキの作動が維持される。このように、アームが収納位置にある場合、上方への力が検知されない限り、昇降ブレーキ504、505の作動は解除されない。ステップS607で電源オフが検知されたか否かを制御部で判定し、電源OFFが検知された場合には処理を終了し、検知されない場合には再びステップS602に進む。
【0055】
S602で収納位置にはないと判定された場合、ステップS608でブレーキ制御部503は荷重検知センサ507からの信号により操作力がかかっているか否かの判定を行う。そして操作力がかかっていると判定された場合には、ブレーキ制御部503は各ブレーキを解除する。ここでモータ等を有するアシスト機構が設けられている場合には、操作力の大きさに応じてモータを駆動する。これによりユーザは各設定部材をより小さい力で移動させやすくなる。そして各設定部材が操作者の操作に応じて位置決めされることとなる。
【0056】
図7に基づいて本発明のその他の実施例に係る移動型X線撮影装置の構成を説明する。本実施例では、X線管球とモニタの相対位置を検出することを鑑みたもので、本発明の適用範囲を広げている。
【0057】
図7において、1〜6、9〜11は、
図1で示した通りである。支柱回転部8は、実施例1の説明から更に、台車部6に対する支柱4の回転角度センサを有している。12は、装置全体の駆動を制御する制御部である。回転機構13〜15は、実施例1の説明から更に、それぞれ回転角度を検知する回転角度センサを有している。支柱回転部8と回転機構13〜15の回転角度検知結果は、制御部12に送られる。16と17は、ラックであり、18と19は、ピニオンである。ピニオン18、19には、それぞれピニオンの回転数センサが構成され、回転数センサの検知結果は制御部12に送られる。これにより、制御部12は、ピニオンの回転数から、ラック上のピニオンの位置を算出する。つまり、支柱4に沿ってアーム支持部5を移動させると、支柱4に構成されたラック16上をアーム支持部5内に構成されたピニオン18が回転し、移動することで、アーム支持部5の位置が算出できる。そして、アーム3を水平方向に移動させると、アーム支持部5内に構成されたラック17上をアーム3内に構成されたピニオン19が回転し、移動することで、アーム3の位置を算出できる。そして、アーム3は、回転機構15を介してX線管球1に接続されているため、制御部12に送られた回転角度検知結果により、X線管球1と台車部6の相対位置を算出することが可能となる。つまり、モニタ9は台車部6に固定されているため、制御部12は、モニタ9とX線管球1の相対位置が算出できる。
図7では、アーム3とアーム支持部5による1段延長式のアーム伸縮を示しているが、それ以上の段数を有するアームであっても良く、段数に応じたラック・ピニオンとピニオン18、19と同等の回転数センサを有すれば良い。また、安定したピニオンの回転を得るために、支柱4とアーム支持部5間やアーム支持部5とアーム3間には別途リニアガイド機構を設けても良い。その他のアーム形状に関しては、X線管球1内に加速度センサを設け、加速度センサの検知結果から、X線管球1の移動量を算出することで、X線管球1の収納位置からの相対位置を把握できる。また、X線管球1とモニタ9に世界座標検知センサを有することで、それぞれの絶対位置から相対位置を把握しても良い。また、制御部12は、モニタ9とX線管球1の相対位置と、前記相対位置における回転機構13〜15それぞれのX線管球1がモニタ9に接触しない回転角度テーブルを有している。これにより、X線管球1が装置移動時の収納位置から取り出された状態であっても、X線管球1とモニタ9の相対位置により、回転機構13〜15の回転を制限することで、X線管球1とモニタ9が接触することがなくなる。
【0058】
次に
図8に基づき、実施例に係る移動型放射線撮影装置を主に制御の観点から説明する。なお、先述の図で示す構成と同様の構成には同様の符番が付されている。これらについては説明を省略する。
【0059】
放射線発生部1、アーム3、アーム支持部5、支柱、支柱回転部にはそれぞれ、放射線発生部1のチルト機構14によるチルト状態を検知するチルトセンサ700、放射線発生部1を支持するアーム3の伸縮状態を検知するアーム長さセンサ701、放射線発生部1を支持するアーム3の支柱4に対する昇降状態を検知するアーム位置センサ702、放射線発生部1を間接的に支持する支柱4の伸縮状態を検知する支柱位置センサ703、放射線発生部1を間接的に支持する支柱4の回転状態を検知する支柱回転センサ704がそれぞれ設けられ、これら各設定部材の位置姿勢の状態をセンシングする。その他、設定部材に含まれるコリメータ2の回転状態を検知するセンサ、放射線発生部1の回転状態を検知するセンサを設けておいても良い。これらセンサの出力は駆動制御部500の管球位置検知部705に入力される。管球位置検知部705は、これらセンサからの入力に基づいて放射線発生部1の位置姿勢を特定する。ここで接触判定部706は、メモリ708に記憶された接触位置テーブル707を用いて、放射線発生部1、コリメータ2、またはアーム3等が移動型放射線撮影装置の他の部材と接触しているか否かを判定する。接触位置テーブルには、各センサの出力値がどの値のときに接触するか否かを予めテーブルとして記憶しておく。かかるテーブルは、各設定部材は移動型放射線発生装置の各部材の大きさや配置関係に基づいて実験的に作成される。
【0060】
また、別の例では、接触判定部706は、メモリ708に記憶された放射線発生部1、アーム3、支柱4を含む移動型放射線発生装置全体の三次元構造モデルを用いて、放射線発生部1と移動型放射線発生装置の各部材との接触を判定することとしてもよい。ブレーキ制御部502は、かかる接触の判定結果に応じて、部材間の衝撃を減らすため、動作を制限する必要がある設定部材のブレーキを動作させる制御を行う。
【0061】
図9は、上述の実施例に係るシステムのフローチャート図である。
図9において、ステップS0では、例えば電源スイッチが押されることにより制御部が装置を起動させる。ステップS1では、収納棒10、もしくは収納棒受け部11の接触センサにより、X線管球1が収納状態にあるかどうかを検知する。X線管球1が収納状態にある場合には、ステップS2に移行し、X線管球1が収納状態にない場合には、ステップS3に移行する。ステップS2は、回転機構13〜15の回転を禁止する。ステップS3は、制御部12が各回転角度センサの検知結果から、X線管球1とモニタ9の相対位置を算出する。ステップS4は、回転機構13〜15の回転角度センサから、X線管球1の向きを検知する。ステップS5は、制御部12がステップS3とステップS4の情報を元に、制御部12が有するX線管球1とモニタ9が接触しない回転角度テーブルから、X線管球1がモニタ9に接近していないかを判断する。接近の判断は、制御のサンプリング時間や、装置の形状、X線管球を取りまわす移動速度で主に決定され、X線管球1とモニタ9が接触しなければよい。接近していると判断する場合には、ステップS6に移行し、接近していないと判断する場合には、ステップS7に移行する。ステップS6は、ステップS5で接近と判断された回転に起因する回転機構13〜15のいずれか、もしくは全ての回転を禁止する。また、ステップS5で接近と判断された回転に起因しない回転機構に関しては、回転を許可する。ステップS7は、回転機構13〜15の回転を全て許可する。そして、ステップS7の後、再度ステップS3に戻る。
【0062】
尚、ステップS6では、独立して回転を禁止せず、回転機構13〜15を全て回転禁止にしても良い。これにより、X線管球の回転禁止が操作者に明確になり、X線管球の位置を移動することが、優先して行うことができ、操作者に明確な操作を認識させることができる。また、ステップS6のあと、一定時間後に、回転禁止を解除しても良い。
以上のような構成により、操作者が、X線管球を取りまわす際に、X線管球がモニタに接触することがなくなり、操作性が向上した移動型X線撮影装置を提供することが可能となる。
【0063】
図10に実施例に係るその他の装置構成図を示す。
図10に示す例では、モニタ9の上にX線管球が収納され、収納時のX線管球の周囲に被曝防護用の壁が台車部6から突出している構成を鑑みている。また、モニタ9は、1対のガイドレールによりスライド可能に支持される。これにより、収納時もX線管球1の下からモニタ9をスライドさせ、情報を確認することが可能である。
図10に示す例では、収納棒10は、アーム3から突出しなくても良く、台車部6に設けられた収納棒受け部11と、互いに磁石と磁気センサで、アーム3やX線管球1が装置移動時の収納位置にあることを検知しても良い。また、
図10に示す装置では、管球取出し時に、回転機構13〜15の回転を停止させるだけでなく、アーム支持部5の支柱4に対する垂直移動と、アーム3の伸縮の2つの挙動のみを許可しても良い。アーム3の伸縮を停止させるには、アーム3の伸縮位置固定手段により行えば良い。そして、制御部12は、さらにX線管球1と台車部6の被曝防護用の壁が接触しない回転角度テーブルを有することで、
図9のステップS5にX線管球1が台車部6の被曝防護用の壁に接近していないかを判断することを追加しても良い。これらにより、X線管球1がモニタのみならず、台車部6の被曝防護用の壁にも接触することがなくなる。
【0064】
以上のような構成により、操作者が、X線管球を取りまわす際に、X線管球がモニタに接触することがなくなり、操作性が向上した移動型X線撮影装置を提供することが可能となる。
【0065】
図11に基づいて本発明のその他の実施例に係る移動型放射線撮影装置を説明する。この実施例では、X線管球1の回転機構がモータからなるアクチュエータを有することを鑑みたもので、本発明の適用範囲を広げている。それぞれ回転機構13、14,15には発生部回転アクチュエータ1101、チルトアクチュエータ1102、コリメータ回転アクチュエータ1103が設けられ、駆動制御部500の回転制御部1105により制御される。また、支柱回転部8にも支柱回転アクチュエータ1104を設けることとしても良い。これにより回転機構13〜15には、モータからの回転動力伝達機構が構成され、各モータの作動により、X線管球1を任意の向きに移動制御することができる。また、各モータを作動させない際は、モータ制御部1105によりモータの通電を切り、モータの回転をフリーにし、手動でX線管球1の移動が可能にしても良い。
【0066】
図12は、本発明の実施例3に係わるシステムのフローチャート図である。
図12において、ステップS9では、X線管球1を回転する指示があったか否かを判定する。例えば、不図示の操作部にX線管球の各回転機構13−15のそれぞれによる回転に対応する指示釦が設けられ、かかるボタンを押下することにより指示があったことを駆動制御部500で検出する。ステップS9により、かかる指示があるまで装置は待機することとなる。
【0067】
ステップS3は、先述の実施例で説明した通りである。ステップS10は、制御部12が、X線管球1とモニタ9が接触しない回転角度テーブルから、ステップS3の情報から、X線管球1がモニタ9に接近する領域にあるかを判断する。前記領域より外にある場合には、ステップS3に戻り、前記領域内にある場合には、ステップS11に移行する。ステップS11は、回転機構13〜15のモータ回転により、X線管球1を装置移動時の収納状態に近い方向に回転させる。制御部12は、X線管球1とモニタ9が接触しない回転角度テーブルから、X線管球1を収納位置まで移動させる際に、少なくともX線管球1とモニタ9が接触しない位置にくるまでX線管球1を回転させる。
【0068】
以上のような構成により、操作者が、X線管球を装置移動時の収納位置まで移動する際に、X線管球とモニタが接触することがなくなり、さらに操作者に対してX線管球の操作性が向上する。
【0069】
図13は実施例に係る移動型放射線撮影装置を電子計算機のハードウェアとソフトウェアを一部用いて構成した例である。本実施例では、移動型放射線発生装置の制御部は、CPU(Central Processing Unit)1301、RAM(Random Access Memory)1302、ROM(Read Only Memory)1303、モニタとのインタフェースであるDVI(Digital Visual Interface)1304,無線通信部1305、装置の各設定部材等とのインタフェース(I/F)1306、記憶部1307、給電回路1308を有する。DVI1304はモニタ1359と接続され、無線通信部1305は放射線撮像部1309と無線通信する。I/F1306は支柱回転部1358、固定支柱1357、可動支柱1356、アーム支持部1355、アーム1353、放射線発生部1351等と接続する。これら構成については、先述の実施例と同様の構造及び機能を有する。記憶部1307には、モニタ1359に表示されるGUI(Graphical User Interface)データ1371、接触位置テーブル1372のほか、ソフトウェアプログラムとして管球位置取得モジュール1373、接触判定モジュール1374、ブレーキ制御モジュール1375、収納判定モジュール1376、表示制御モジュール1377、撮影制御モジュール1378、発生制御モジュール1379を有する。これらモジュールはそれぞれ先述の実施例に係る管球位置検知部、接触判定部、ブレーキ制御部、収納検知部、表示制御部、撮影制御部、発生制御部として機能し、CPU1301によりRAM1302に展開され、CPU1301により実行されることにより
図6、9、12のフローチャートに示す制御が実現する。もちろん、
図11の例で示す回転制御部1105の機能を有する回転制御モジュールを記憶部1307でコンピュータ実行可能に有していても良い。
【0070】
なお上述の実施例で説明した機能を適宜組み合わせ、変更した装置についても、本発明の実施例に含まれる。例えば、放射線を照射するX線管球1と、X線管球1のX線照射方向に配置され、X線照射領域を制限するコリメータ2と、X線管球1を支持するアーム3と、アーム3を地面と鉛直方向に移動可能にする支柱4と、支柱4を支持し、移動可能な手段を有する台車部6と、台車部6の上面にモニタ9を有する移動型X線発生装置においてX線管球1は、X線照射方向を変えるために、少なくとも2軸で回転する回転機構14、15を有し、コリメータ2は、X線照射の中心を軸として回転させる回転機構13を有し、X線管球1が装置移動時の収納位置にある場合、全ての回転機構13−15の回転を禁止するように
制御部を動作させることができるここでX線管球1は、モニタ9との相対位置を検知するセンサ700−704を有し、センサ700−704の検知結果によって、駆動制御部500が全ての回転機構13−15の回転を許可することとすることができる。またここで、全ての回転機構13−15は、回転角度を検知するセンサをそれぞれ有し、X線管球1とモニタ9の相対位置検知センサと回転角度検知センサの検知結果によって、回転機構13−15の回転をそれぞれ独立して禁止するよう制御することができる。また更に、回転機構13−15は、さらに自動で回転可能にするアクチュエータ1101−1103を有し、X線管球1とモニタ9の相対位置検知センサと回転角度検知センサの検知結果によって、回転機構13−15の回転をそれぞれ独立して回転させて、X線照射方向を変更するように制御することができる。
【0071】
また例えば、指示釦に応じて回転機構13乃至15の動作を制御することとしているが、これに限らず上述の設定部材あるいは支持部材のそれぞれについてスイッチを設けることとしてもよい。1つの実施形態では、スイッチは支持部材のそれぞれに対して1つ設けられる。1つの実施形態では、係るスイッチに加え、あるいは係るスイッチに代えて、複数の支持部材あるいは支持部材の全体に対応して1つのスイッチが設けられる。駆動制御部500のブレーキ制御部503は、スイッチがオン状態とされたことに応じて支持部材の動作制限を解除する。またブレーキ制御部503は、収納検知部502により収納位置にあることが検知された場合には、スイッチがオン状態とされても支持部材の一部の動作制限を解除しない。具体的には、X線管球1の鉛直上方への移動以外の移動、つまりは下方及び側方への移動が制限される。このようにすることで、スイッチが押下されない限り支持部材が移動しなくなるため、安全性を向上させることができる。
【0072】
また係るスイッチを1つでなく複数とすることにより、不意にスイッチが押下され支持部材が移動してしまう可能性をへらし、安全性を向上させることができる。
【0073】
その他、上述の例ではX線の用いた撮影装置として説明したが、これに限定されず、その他の放射線を用いた撮影装置も本発明の実施形態に含まれる。
【0074】
また、上述の例に限らずアームの伸縮、アーム昇降や支柱の伸縮、回転等の機能のうち少なくともいずれかの機能を有する移動型撮影装置であっても良い。
【0075】
上述の例では、支柱は鉛直方向に延在し、アームは水平方向に延在する梁部材として説明したが、これに限らず、支柱及びアームがそれぞれ第一の方向及び第一の方向とは異なる第二の方向に延在する部材であってもよい。
【0076】
上述の例に限らず、非撮影位置(収納位置)は複数の位置、あるいは範囲または領域を持っていてもよい。
【0077】
X線管球1は回転陽極型の反射型ターゲットを用いることができるが、これに限らず、固定陽極型の透過型ターゲットを有する放射線発生部を採用することができる。この場合には、陽極の回転機構等が不要となるため小型化が可能で、支持構造の耐加重性の要求が下がるため、アーム3や支柱4をより細くできコンパクトが可能なほか、少なくとも放射線発生部以外の構造を安価に製造可能となる。