(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
施療子を備え且つ左右に一対で配備されたマッサージ部材と、 前記施療子が左右方向で近接離反するように、前記一対のマッサージ部材のうち少なくとも一方を動作させて揉み動作を発生させるマッサージ機構と、を有していて、前記マッサージ部材は、前記近接離反方向に対して略直交する方向に向かって伸びるアーム部材を備えており、前記施療子は、前記アーム部材の先端部であって当該アーム部材の突出方向に沿って伸びる延長線が当該施療子の内部を貫通するように配設されていて、
前記施療子と使用者との間にはカバーが設けられ、
前記施療子は、前記カバーの損耗を防ぐために前記カバー裏面を転動可能とすべく、
前記アーム部材の先端部には、当該アーム部材の突出方向を向くと共に前記カバーに略添うように伸びる軸体が設けられており、前記施療子は、前記軸体回りに回転自在となるように取り付けられている
ことを特徴とするマッサージ装置。
前記アーム部材は、先端部が上下に分岐した形状とされており、分岐した上側の先端部と下側の先端部とのそれぞれに施療子が配備されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマッサージ装置。
前記マッサージ機構は、前記アーム部材の先端部が左右方向で近接離反するように、前記アーム部材の基端部を駆動するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマッサージ装置。
座部と、座部の後部に設けられた背もたれ部と、前記背もたれ部内に配設され且つ請求項1〜4のいずれかに記載されたマッサージ装置と、を有することを特徴とする椅子型マッサージ機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された従来の椅子型マッサージ機においては、マッサージ装置の施療子は、車輪のような円盤状の形状とされている。この施療子は、マッサージ装置を上下方向に移動させる際の利便性を考えて、左右方向に回転軸を向けてアーム部材の先端側に取り付けられている場合が多い。
このように、施療子の回転軸を左右方向に向くようにすると、施療子は、上下方向には転動容易で移動しやすいが、左右方向には転動しないものになる。そのため、施療部に加えられる「揉み感」がどうしても単調なものになりがちである。また、揉みマッサージの際に施療子を左右方向(すなわち、揉み玉の非回転方向)に往復移動させると、施療子が体表に隆起した施療部に強く擦れて、必要以上に強い「揉み感」を感じさせてしまうこともあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、施療部に対して必要以上に強い「揉み感」を感じさせることなく、多様で飽きのこない揉み感やマッサージ感を与えることができるマッサージ装置及びこのマッサージ装置を備えた椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明のマッサージ装置は、施療子を備え且つ左右に一対で配備されたマッサージ部材と、前記施療子が左右方向で近接離反するように、前記一対のマッサージ部材のうち少なくとも一方を動作させて揉み動作を発生させるマッサージ機構と、を有していて、前記マッサージ部材は、前記近接離反方向に対して略直交する方向に向かって伸びるアーム部材を備えており、前記施療子は、前記アーム部材の先端部であって当該アーム部材の突出方向に沿って伸びる延長線が当該施療子の内部を貫通するように配設されていることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記アーム部材の先端部には、当該アーム部材の突出方向を向く軸体が設けられており、前記施療子は、前記軸体回りに回転自在となるように取り付けられているとよい。
好ましくは、前記施療子は、前記アーム部材の近接離反方向に対して略平行する方向に回転自在とされているとよい。
【0009】
好ましくは、前記アーム部材は、先端部が上下に分岐した形状とされており、分岐した上側の先端部と下側の先端部とのそれぞれに施療子が配備されているとよい。
好ましくは、前記マッサージ機構は、前記アーム部材の先端部が左右方向で近接離反するように、前記アーム部材の基端部を駆動するように構成されているとよい。
また、本発明の椅子型マッサージ機は、座部と、座部の後部に設けられた背もたれ部と、前記背もたれ部内に配設され且つ上記に記載されたマッサージ装置と、を有することを特徴とする。
なお、本発明にかかるマッサージ装置の最も好ましい形態は、施療子を備え且つ左右に一対で配備されたマッサージ部材と、 前記施療子が左右方向で近接離反するように、前記一対のマッサージ部材のうち少なくとも一方を動作させて揉み動作を発生させるマッサージ機構と、を有していて、前記マッサージ部材は、前記近接離反方向に対して略直交する方向に向かって伸びるアーム部材を備えており、前記施療子は、前記アーム部材の先端部であって当該アーム部材の突出方向に沿って伸びる延長線が当該施療子の内部を貫通するように配設されていて、
前記施療子と使用者との間にはカバーが設けられ、前記施療子は、前記カバーの損耗を防ぐために前記カバー裏面を転動可能とすべく、前記アーム部材の先端部には、当該アーム部材の突出方向を向く
と共に前記カバーに略添うように伸びる軸体が設けられており、前記施療子は、前記軸体回りに回転自在となるように取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るマッサージ装置及びこのマッサージ装置を備えた椅子型マッサージ機によれば、施療部に対して多様で飽きの来ない揉み感やマッサージ感を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
図1〜
図5は、本発明に係るマッサージ装置1の実施形態を示し、
図6は、このマッサージ装置1を備えた椅子型マッサージ機2の実施形態を示している。
図6に示すように、この椅子型マッサージ機2は、使用者の臀部を下方から支持する座部3と、この座部3の後部に設けられた背もたれ部4とを有しており、背もたれ部4の内部に、マッサージ装置1とこのマッサージ装置1を上下方向に移動可能にする上下移動機構5が設けられている。
【0013】
なお、以下の説明において、マッサージ装置1に関しては、起立状態にある背もたれ部4の高さ方向を上下方向とおき、これを基準に左右方向や前後方向を決めて構造の説明をする。これは、椅子型マッサージ機2に着座した使用者から見た上下方向、前後方向、左右方向と一致する。
また、マッサージ装置1の説明においては、例えば、
図3では、図の上下方向を装置説明での上下方向と呼び、
図3の紙面貫通方向を装置説明での前後方向と呼び、
図3の左右方向を装置説明での右左方向又は幅方向と呼ぶ。なお、
図3などには、本実施形態の説明で用いる上下方向、左右方向を明確に記している。
【0014】
椅子型マッサージ機2の座部3の左右両側には、この椅子型マッサージ機2を床面へ設置するための脚フレーム6が設けられており、この脚フレーム6によって座部3が所定高さに支持されている。
背もたれ部4は、その下端部が座部3の後部又は脚フレーム6の後部に対して枢支され、前後揺動自在な状態に保持されている。この背もたれ部4は、脚フレーム6内に配設されたリニアアクチュエータ機構などのリクライニング機構により、リクライニング可能となっている。この背もたれ部4の左右両側には、エアバッグ式の上腕マッサージ装置7が設けられている。
【0015】
また、座部3の前部には、下肢をマッサージ可能とする下肢用マッサージ装置8が設けられている。
図6は、下肢用マッサージ装置8が収容された収納状態の椅子型マッサージ機2を示している。ただ、これらは、椅子型マッサージ機2における装備の一例であり、その有無や細部機構が限定されるものではない。
図1に示すように、マッサージ装置1は、施療子91〜94を先端側に備え且つ左右で一対配備されたマッサージ部材10、11と、これらの施療子91〜94が左右方向に近接離反するように、一対のマッサージ部材10、11のうち少なくとも一方を動作させて揉み動作を発生させるマッサージ機構12と、を有している。このマッサージ機構12は、使用者の肩部〜背部〜腰部(すなわち施療部)を揉みマッサージする揉み駆動部を備えている。また、このマッサージ装置1には、使用者の肩部〜背部〜腰部を叩きマッサージする叩き駆動部が、上述した揉み駆動部とは別に設けられている。さらに、このマッサージ装置1は、上述した上下移動機構5により上下方向に移動自在とされている。
【0016】
まず、
図1〜
図4を用いてマッサージ装置1を説明する。
マッサージ装置1は、左右で一対で配備されたマッサージ部材と、この一対のマッサージ部材を動作させるマッサージ機構12とを有している。より正確には、左側に設けられるマッサージ部材は左マッサージ部材10と呼ばれ、右側に設けられるマッサージ部材は右マッサージ部材11と呼ばれ、これら左右のマッサージ部材10、11は左右方向に所定の間隔だけ離れて1つずつ設けられている。
【0017】
図2に詳しく説明するように、上述した左マッサージ部材10は、マッサージ装置1のベース部材32側から使用者側に向かって(前方に向かって)突出する左アーム部材15を備えている。この左アーム部材15の突端(先端)は上方と下方との2方向に分かれて突出しており、分岐した上側の先端部と下側の先端部とのそれぞれに施療子(左上施療子91及び左下施療子92)が配備されている。
【0018】
また、右マッサージ部材11も、左マッサージ部材10と同様に、マッサージ装置1のベース部材32側から使用者側に向かって(前方に向かって)突出する右アーム部材16を備えている。この右アーム部材16の突端(先端)は上方と下方との2方向に分かれて突出しており、分岐した上側の先端部と下側の先端部とのそれぞれに施療子(右上施療子93及び右下施療子94)が配備されている。
【0019】
つまり、左アーム部材15と右アーム部材16とを互いに近接離反させると、左アーム部材15の左上施療子91と右アーム部材16の右上施療子93とが左右方向に近接離反したり、左アーム部材15の左下施療子92と右アーム部材16の右下施療子94とが左右方向に近接離反したりして、上側の両施療子91、93及び下側の両施療子92、94の間に背側の施療部を挟み込むようにして揉みマッサージを行うことが可能となる。
【0020】
図5は、左マッサージ部材10を拡大して示した図であり、左マッサージ部材10に用いられた左アーム部材15を詳細に示したものである。次に、
図5に示された左アーム部材15を例に挙げて、本発明のアーム部材を説明する。
図5に示すように、左アーム部材15は、いずれも側方視で(左方から見た場合に)略ブーメラン形状に形成されたものである。具体的には、左アーム部材15は、上下方向の中途側が後方に向かって屈曲したような上下に長い板状の部材であり、上下方向の中途側に比べて上端側が前方上側に、また下端側が前方下側に突出したような形状となっている。
【0021】
また、左アーム部材15は、上下方向の中途側が上端側や下端側に比べて前後方向に広幅に形成されており、この広幅の中途側には後述する第1回転軸17が挿通する挿通孔18がこの左アーム部材15を左右方向に貫通するように形成されている。また、左アーム部材15は、中途側を基準として前方上方に向かって上端を突出させると共に、前方下方に向かって下端を突出させたような形状とされている。そして、左アーム部材15の上端には上述した施療子91が、また左アーム部材15の下端には施療子92がそれぞれ設けられている。
【0022】
なお、上述した説明は左アーム部材15に関するものであったが、右アーム部材16にも左アーム部材15と同じ構成を備えた部材が設けられている。この右アーム部材16は、部材の構成は左アーム部材15と同じであるが、部材の配置が左アーム部材15と左右対称となっている。
図4に示すように、上述した左アーム部材15における上下方向の中途側には挿通孔18が、また右アーム部材16における上下方向の中途側には挿通孔19が形成されている。それぞれの挿通孔18、19は、各アーム部材15、16を左右方向に貫通するように形成されており、左側面と右側面との双方に略円形に開口していて、内部に第1回転軸17や後述する傾斜回転部材20を挿通できるようになっている。さらに、各アーム部材15、16の後端面には、それぞれのアーム部材15、16の供回りを規制する規制ピン21が設けられている。なお、この第1回転軸17、傾斜回転部材20及び規制ピン21については、後ほど詳述する。
【0023】
ところで、アーム部材15、16の先端部には、上述したように4つの施療子91〜94が設けられている。これらの施療子91〜94は、いずれも各アーム部材15、16の2つの先端部(上端部と下端部)に設けられており、それぞれの施療子91〜94はアーム部材の突出方向に沿って伸びる延長線L(
図5に示す)が施療子91〜94の内部をそれぞれ貫通するように配設されている。具体的には、上述したアーム部材15、16の先端部には、この先端部の突出方向を向く軸体22がそれぞれ設けられており、それぞれの軸体22を取り囲むように施療子91〜94が取り付けられている。
【0024】
なお、施療子91〜94は、アーム部材15、16の軸体22に対して回転する方が好ましいが、アーム部材15、16の軸体22に対して回転しないように固定されたものであっても良い。なお、以降では、アーム部材15、16の先端部に対して回転する施療子の例を挙げて、本発明のマッサージ装置1を説明する。
図5に示すように、施療子91〜94は、外観が略球状又は楕球状の部材であり、その表面は例えば樹脂や硬質ゴムなどのような弾力性に富んだ材料から形成されたシートで適宜被覆されている。これらの施療子91〜94は、球や楕球を等分したような1組の半割部材を対面状に組み合わせて形成されていて、1組の半割部材同士をねじ止めや嵌め合わせといった手段で連結して形成されている。
【0025】
また、施療子91〜94は、上述したようにアーム部材15、16の先端に設けられた軸体22に対して回転自在に取り付けられている。具体的には、
図5に示す例では、軸体22は左側のアーム部15の突出方向と同じ方向に向かってアーム部15の突端から外方に伸びるように突出している。例えば、左上施療子91の場合であれば、アーム部材15の上端部は中途側から前方上側に向かって伸びているので、このアーム部15の突出方向と同じ方向(後方下側から前方上側に向かう斜め方向)に沿って軸体22は配設されている。
【0026】
そして、この軸体22における軸方向の中途側には、軸体22より大径の円板状に形成されることにより、左上施療子91を軸体22から抜けないように抜け止めする抜け止め部23が設けられている。このような抜け止め部23に対して、左上施療子91は軸体22の抜け止め部23を周囲から抱持するように取り付けられており、軸体22に対して施療子はアーム部材15、16の突出方向に沿った軸回りに回転自在となっている。それゆえ、左上施療子91を軸体22回りに回転させると、アーム部材15、16の近接離反方向に対して略平行する方向に左上施療子91は回転する。
【0027】
すなわち、上述した左上施療子91を含む各施療子91〜94は、いずれもアーム部材15、16の突出方向に沿ってアーム部15、16の突端から延長線Lを伸ばせば、延長線Lが施療子91〜94の内部を貫通するような位置に配設されているということもできる。
このような施療子91〜94を採用すると、アーム部材15、16の上下方向の中途側から上端部に向かう線や中途側から下端部に向かう線が、左右方向を向く第1回転軸17(マッサージ機構12に設けられた第1回転軸17、詳細は後述)に対してほぼ直交する方向(言い換えれば、施療子91〜94が近接離反する方向に対して交差する方向)に向かって伸びることになり、施療子91〜94が左右方向に沿って転動可能となるので、揉みマッサージ時において、施療子91〜94を施療部の表面に沿って転がしながらマッサージすることが可能となり、単に施療子91〜94を押し当てるだけのマッサージとは異なるマッサージ感を使用者に与えることが可能となる。
【0028】
すなわち、施療子が左右方向軸心回りに回動する構成の場合、施療子を施療部に押し当てたままアーム部材を左右に往復移動させると、施療子が体表に隆起した施療部(骨などがあって隆起した施療部)に強く擦れて、マッサージを受ける使用者に痛みを感じさせてしまう場合がある。また、揉みマッサージの際に転動しない施療子の場合は、施療部の上を施療子が滑るように移動するだけであるため、施療部に加えられる感覚がどうしても単調なものになり、使用者に与えるマッサージ感も飽きられやすいものとなる。
【0029】
ところが、本実施形態のマッサージ装置1のように揉みマッサージの際に施療子91〜94が左右方向に転動する構成を採用すれば、隆起した施療部があっても、施療子91〜94が転がって隆起した施療部の上を容易に乗り越えるので、マッサージを受ける使用者に施療部が強く擦れて痛みを与えることがない。
また、施療子91〜94が施療部の上を転動する際には、施療子91〜94が転がる際に加わる刺激や転動する施療子91〜94に対して施療部が巻き込まれるような刺激が発生するので、施療部に対するマッサージ感も多様なものとなり、飽きが来ないマッサージ感や揉み感を使用者に提供することが可能となる。
【0030】
また、施療子91〜94の表面、すなわち施療子91〜94と使用者との間には、カバーなどが設けられることが多いが、左右方向に回転しない従来の施療子の場合、施療子がカバーを擦るように作用し、長期間の使用に伴ってカバーが破損する可能性もある。しかしながら、本実施形態の施療子91〜94の場合、施療子91〜94がその揉み方向(近接離反方向)に沿って転動するために、上記したカバーの破損などを可及的に抑えることが可能となる。
【0031】
次に、上述した施療子やマッサージ部材10を揺動させるマッサージ機構12について説明する。
なお、このようなマッサージ機構12には、さまざまな駆動手段や動力伝達機構を採用することができる。以降では、マッサージ機構12の一例として、揉みモータ24や叩きモータ33で発生した回転駆動力を揉み動作や叩き動作に変換してマッサージを行う機構を挙げて、本発明のマッサージ装置1を説明する。
【0032】
また、マッサージ機構12は、左右一対のマッサージ部材10のうち少なくとも一方を動作させて揉み動作を発生させるものである。このようなマッサージ機構12には、例えば左右それぞれのマッサージ部材10をいずれも近接離反させて揉み動作を発生させる構成や、左右のマッサージ部材10のうち一方のマッサージ部材10を固定しておいて、他方のマッサージ部材10を一方のマッサージ部材10に近接離反させて揉み動作を発生させる構成を採用することができる。なお、以降に示す本実施形態のマッサージ機構12には、左右それぞれのマッサージ部材10の両方を近接離反させて揉み動作を発生させるものを挙げる。
【0033】
上述したマッサージ機構12は、左右のマッサージ部材10、11に揉み動作を発生させる揉み駆動部と、左右のマッサージ部材10、11に叩き動作を発生させる叩き駆動部と、マッサージ装置1(左右のマッサージ部材10、11、揉み駆動部及び叩き駆動部)を背もたれ部4内で上下方向に移動可能にする上下移動機構5とを有している。
揉み駆動部は、アーム部材15、16の基端部に対して先端部を左右方向で近接離反させることにより施療部を揉みマッサージするものであり、アーム部材15、16の基端部を左右方向の揺動させることで先端部を揺動させる構成とされている。
【0034】
具体的には、この揉み駆動部は、上述した各マッサージ部材10、11の挿通孔18、19に対してそれぞれ挿通された傾斜回転部材20を備えている。この傾斜回転部材20の中央には、傾斜回転部材20を軸心方向に貫通する第1回転軸17が設けられている。この第1回転軸17は左右それぞれの傾斜回転部材20を連通状態で貫通すると共に軸心を左右方向へ向けて、ベース部材32上に架設されていて、この第1回転軸17と傾斜回転部材20とが揉み駆動部を構成している。また、揉み駆動部は、この第1回転軸17を回転駆動する揉みモータ24と、マッサージ部材10、11の後部に設けられてアーム部材15、16が第1回転軸17に伴って連れ回りすることを規制する振れ止め機構25とを有している。この振れ止め機構25には例えばボールジョイント等の自在継ぎ手29を採用可能である。
【0035】
傾斜回転部材20は、第1回転軸17の中途側に取り付けられた円筒状の部材であり、第1回転軸17の軸径よりも大きな外径を備えている。また、傾斜回転部材20は、第1回転軸17と同軸となるように取り付けられており、その外周面にはベアリング27を取り付けるための段差部26が形成されている。具体的には、傾斜回転部材20の外周面は、背もたれ部4の中央側を向く側に比べて外側の方が径が小さくなっており、回転軸心に沿った方向の中途側で径が変化するようになっている。この傾斜回転部材20における径が変化する箇所に上述した段差部26が形成されている。
【0036】
この段差部26は、傾斜回転部材20の軸心に対して傾斜しており、軸回りを周回する円軌道に沿って形成されている。そして、この段差部26には、段差を利用して上述したベアリング27が取り付けられている。また、ベアリング27は、上述したアーム部材15、16の挿通孔18、19に嵌入させられており、アーム部材15、16を傾斜回転部材20に対して回転自在に支持している。
【0037】
第1回転軸17は、上述した左マッサージ部材10の挿通孔18の中心と、右マッサージ部材10の挿通孔19の中心とを連通すると共に左右方向に沿って伸びる軸部材である。第1回転軸17の左右両側の端部は、それぞれ軸受28で回転自在にベース部材32上に支持されている。また、第1回転軸17の右側の端部には、第1回転軸17を左右方向を向く軸回りに回転駆動する揉みモータ24が設けられている。
【0038】
具体的には、揉みモータ24の駆動軸にはウォーム歯車からなる動力伝達部材が設けられており、この揉みモータ24により動力伝達部材を回転させることで第1回転軸17が回転駆動するようになっている。
振れ止め機構25は、左マッサージ部材10及び右マッサージ部材11が第1回転軸17と同伴回転しないようにするためのものであり、各マッサージ部材10、11の後端側に、例えばボールジョイントやユニバーサルジョイント等の自在継ぎ手29を係合させることで各マッサージ部材10、11の回転(供回り)を規制する構成としてある。
【0039】
この振れ止め機構25は、後述する叩き駆動部のリンクレバー30を介して、叩き駆動部の第2回転軸31に各マッサージ部材10、11を接続することで供回りを規制する構成となっている。具体的には、各マッサージ部材10、11のアーム部材15、16の後端側には、後方に向かって突出する規制ピン21が設けられている。この規制ピン21は、先端(後端)が球状に丸まっており、この球状とされた規制ピン21の端部を、叩き駆動部のリンクレバー30の先端に設けられた自在継ぎ手29に係合させることで叩き駆動部に対してアーム部材15、16を前後方向・左右方向及び上下方向に沿って揺動自在に連結している。
【0040】
それゆえ、第1回転軸17が回転したときに、この回転に伴って各マッサージ部材10、11が回転しようとしても、各マッサージ部材10、11のアーム部材15、16が振れ止め機構25によって第1回転軸17と供回りしない状態に保持される。具体的には、自在継ぎ手29を採用した振れ止め機構25では、前後方向・左右方向及び上下方向に沿ったアーム部材15、16の動作は所定範囲だけ許容されているので、アーム部材15、16は基端側を基準として先端側を上下・左右・前後に沿ってある程度の角度なら揺動させることができる。
【0041】
叩き駆動部は、第1回転軸17の上部位置でこれと平行するように軸心を左右方向へ向けて設けられた第2回転軸31と、この第2回転軸31を回転駆動する叩きモータ33と、を備えている。
具体的には、叩きモータ33の駆動軸は第2回転軸31の左右方向の中央部に設けられたギヤ34に接続されており、叩きモータ33を回転駆動させるとモータの回転駆動力がギヤ34を介して第2回転軸31に伝達して第2回転軸31を駆動できるようになっている。また、第2回転軸31におけるギヤ34の外側には軸受35が設けられており、第2回転軸31は軸受35を介して左右方向を向く軸回りに回転自在とされている。そして、軸受35のさらに外側の第2回転軸31には、互いに第2回転軸31に対して180°の位相差で偏心して設けられた左右の偏心駆動体36が設けられており、これら左右の偏心駆動体36から下方に向けてリンクレバー30(クランク軸)が配設されている。
【0042】
偏心駆動体36は、第2回転軸31と軸心を不一致にさせたものであり、叩きモータ33を駆動させると偏心駆動体36が第2回転軸31の軸心に対して偏心回転するようになっている。またリンクレバー30の下端部は、各アーム部材15、16の上下方向の中途側(挿通孔18、19)に連結されている。具体的には、このリンクレバー30の下端部には、アーム部材15、16(マッサージ部材10)の上下方向中途側に設けられた規制ピン21が自在継ぎ手29を介して連結されており、この規制ピン21とリンクレバー30との連結構造が、上述した自在継ぎ手29を用いた振れ止め機構25を構成している。
【0043】
従って、この叩き駆動部では、叩きモータ33を駆動させると、偏心駆動体36が第2回転軸31の軸心に対して偏心回転し、これを受けてリンクレバー30が上下方向に押引動作するようになる。その結果、左右のアーム部材15、16は互いの施療子91〜94を第1回転軸17のまわりで小刻みに揺動させ、施療子91〜94が叩き動作を行うようになる。なお、左右の偏心駆動体36を第2回転軸31に対して180°の位相差で偏心して設けているため、左マッサージ部材10の施療子91、92と右マッサージ部材11の施療子93、94とが左右方向において相対逆向きに移動し、左マッサージ部材10と右マッサージ部材11とが交互に叩き動作することになる。
【0044】
なお、左右のアーム部材15、16に生じる揺動は、左右の偏心駆動体36が180°の位相差で設けられていることから、交互に生じるようになっているが、施療子91〜94の動きは上述した動きに限定されるものではない。例えば、左右の偏心駆動体36に対してそれらの位相差をゼロにさせるような切換機構を設けておけば、左右のアーム部材15、16同士が同期して同じ向きに揺動するように、叩き動作の設定(叩きパターン)を変更することに可能になる。
【0045】
次に、上述したマッサージ装置1を支持するベース部材32と、このベース部材32を背もたれ部4内で上下移動させる上下移動機構5とについて説明する。
上述した背もたれ部4の内部には背もたれフレーム37が設けられており、この背もたれフレーム37には上下移動機構5が取り付けられている。この上下移動機構5は、マッサージ機構12が設けられたベース部材32と、このベース部材32の上部及び下部の左右両側に、回転軸心を左右外方向へ突出させて回転自在に保持されたガイドローラ38を有している。加えて、このガイドローラ38を嵌め入れて上下方向の移動をガイドする左右一対のガイドレール39を有している。ガイドレール39は、背もたれ部4の内部に長手方向を上下に向けて組み込まれている。
【0046】
さらに、両ガイドレール39の相互間には昇降モータ40により回転駆動可能とされたネジ軸41が設けられ、ベース部材32には、このネジ軸41に螺合するナット部材(図示略)が内蔵されている。従って、昇降モータ40の作動でネジ軸41が回転駆動されると、ナット部材がネジ軸41の回転方向の力を並進方向の力に返還するため、ベース部材32と共にマッサージ機構12が背もたれ部4内を上下動するようになる。
【0047】
これにより、座部3に座って背もたれ部4に背中を押しつけた使用者は、マッサージ機構12を上下に移動させて、肩部から背中及び腰部にわたる広い範囲でマッサージを受けられるものとなっている。
次に、上述した施療子、マッサージ部材10及びマッサージ機構12を用いてマッサージを行う方法、言い換えれば本発明のマッサージ方法について、揉みマッサージに焦点を当てて、説明する。
【0048】
マッサージ機構12では、上述した上下移動機構5の昇降モータ40を動作させれば、両ガイドレール39に案内されたベース部材32が昇降し、使用者の背中における所望の位置にベース部材32(マッサージ装置1)を移動させることができる。このように所望の位置にあるベース部材32に設けられた揉みモータ24を駆動させることでマッサージ装置1により揉みマッサージが行われる。
【0049】
揉みマッサージを行う際には、まず揉みモータ24を駆動させる。そうすると、揉みモータ24に接続された第1回転軸17が左右方向を向く軸回りに回転し、この第1回転軸17に同軸で取り付けられた傾斜回転部材20も左右方向を向く軸回りに回転するようになる。
一方、このように左右方向を向く軸回りに回転する傾斜回転部材20に対して、マッサージ部材10、11にも、この傾斜回転部材20の回転に連動して、左右方向を向く軸回りに回転駆動力が作用する。ただ、マッサージ部材10、11の回転方向は傾斜回転部材20と同じ方向ではない。というのも、マッサージ部材10、11は、傾斜回転部材20の外周面の表面に傾斜状に形成された段差部26にベアリング27を介して取り付けられているため、左右方向を向く軸に対して傾斜した軸回りに回転するものとなっている。そのため、上述したマッサージ部材10は左右方向に対して傾斜した軸回りに回転することになる。
【0050】
また、上述した振れ止め機構25が用いられているため、アーム部材15、16の後端側に設けられた規制ピン21はリンクレバー30の自在継ぎ手29に連結されており、アーム部材15、16は基端側を基準として先端側を上下・左右・前後に沿ってある程度の角度なら揺動できるものの、大きな角度で揺動することは許容されていない。そのため、マッサージ部材10、11は、傾斜回転部材20と一緒に回転することはなく、左右方向に沿って揺動する方向のみに移動が許容される。その結果、マッサージ部材10、11は、基端側を基準として先端側が左右に揺動するようになる。
【0051】
ここで、左側の傾斜回転部材20の外周面に取り付けられるベアリング27の向きと、右側の傾斜回転部材20の外周面に取り付けられるベアリング27の向きとを、左右に線対称なものとしておけば、左右のマッサージ部材10、11の揺動方向が左右で反転したものとなる。
つまり、左マッサージ部材10が施療子91、92を右方へ移動させるときには、右マッサージ部材11は施療子93、94を左方へ移動させることになり、左右の施療子91、93や施療子92、94同士が相互に近接・離反するため、施療子91〜94間に施療部を挟み込むことが可能となる。また、左マッサージ部材10が施療子91、92を左方へ移動させるときには、右マッサージ部材11は施療子93、94を左方へ移動させることになり、左右の施療子91、93や施療子92、94同士が相互に離間することで施療部に対する挟持が解除される。このようにして、左右の施療子91、93や施療子92、94同士の近接離反に応じて施療部が間歇的に施療子91〜94間で挟まれることで施療部に対する揉み動作(揉みマッサージ)が行われる。
【0052】
ところで、上述したマッサージ装置1では、4つの施療子91〜94では、近接離反方向に対して略直交する方向に向かってアーム部材15、16が伸びている。そして、それぞれの施療子91〜94はアーム部材15、16の突出方向を向く軸回りに回転するので、いずれの施療子91〜94も左右方向に転動容易となり、それぞれの施療子91〜94が左右方向に移動しやすくなる。つまり、揉みマッサージの際にアーム部材15、16を近接離反させると、それぞれの施療子91〜94が、軸体22回りに回転して施療部の表面を転動しつつ左右方向に移動する。そのため、回転しない施療子で擦るようにマッサージした場合とは異なったマッサージ感や揉み感を施療部に与えることが可能となり、複雑で飽きの来ない「揉み感」を提供することが可能となる。
【0053】
また、揉みマッサージの際に施療子を非回転状態で左右方向に往復移動させると、施療子が体表に隆起した施療部に強く擦れて、必要以上に強い「揉み感」を感じさせてしまう場合がある。しかし、本発明の施療子91〜94は回転状態で左右方向に往復移動するので、各施療子91〜94が体表に隆起した施療部に強く擦れることない。そのため、施療部に対して常に心地よい「揉み感」を与えることも可能となる。
【0054】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
また、上記実施形態では、左右一対のアーム部材15、16の上下それぞれに施療子91〜94が設けられた「4つ玉式」のものを例示したが、本願発明は、この形態のアーム部材に限定されない。左右一対のアーム部材15、16にそれぞれ1つの施療子が設けられた「2つ玉式」のものにも、本願発明を適用してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、施療子91〜94は外観が略球状又は楕球状の部材であったが、施療子91〜94の外観は他の形状とすることもできる。例えば、施療子91〜94を円筒状としたり、多角形状としたりすることも可能である。
また、上記実施形態では、アーム部材15、16と軸体22と抜け止め部23とが別体に設けられた例を挙げたが、これらの部材をすべて一体物として形成しても良い。