【実施例】
【0023】
以下、添付の図面を一例として参照して、本発明を詳細に説明する。
【0024】
以下の、本発明の有利な実施例の説明では、複数の異なる図において示された同様の機能の要素には同一または同様の符号を使用しており、これらの要素について繰り返し説明することは省略する。
【0025】
図1に、ガス感応性電界効果トランジスタ100の基本構成を示す。この電界効果トランジスタ100は、制御装置110によって駆動制御することができる。電界効果トランジスタはガス感応性のゲート電極115を有し、このゲート電極115には、混合気または混合流体125に含まれていた気体成分120が吸着または侵入し、この気体成分120から、電界効果トランジスタ100を用いてガスパラメータを求めることができる。ゲート電極
115は(ガス感応性の)絶縁層130によって、前記電界効果トランジスタ110のチャネル領域135から分離されており、このチャネル領域135は、電界効果トランジスタ100のソース端子領域140とドレイン端子領域145とを接続する。
【0026】
前記制御装置110は、前記チャネル領域135に設けられた半導体材料の物理的状態を所定の物理的状態にするため、前記ゲート電極115に準備電圧を印加するためのユニット150を含む。前記準備電圧として選択される電圧の大きさは、たとえば、その次にチャネル領域における電流を測定量として測定するためにゲート電極115に印加される電圧(検出電圧)より大きくすることができる。ゲート電極115に準備電圧を印加した後に、たとえば、検出ユニット160がゲート電極115に検出電圧を印加できるようにするため、スイッチ155を切り替えることができる。この検出電圧は、前記準備電圧より低い電圧である。これに代えて択一的に、たとえば、前記ゲート電極115に印加される電圧が前記検出電圧値まで低下するように(ないしは、符号が逆である場合には上昇するように)前記ユニット150を制御することもできる。このような構成の場合にはスイッチ
155を設けなくてもよく、それと同時に
、スイッチ155の切替も不要となる。したがって、ゲート電極115に検出電圧を印加した後に、測定量165を測定ないしは検出して、当該測定量165を用いて上述のガスパラメータ175を求めるユニット170へ当該測定量165を伝送することができる。前記測定量165はここでは、ソース端子140とドレイン端子145との間のチャネル領域135に流れる電流、または、ソース端子140とドレイン端子145との間の抵抗である。とりわけ、ゲート電極に準備電圧を印加すること、および、次に検出電圧を用いて測定量を検出することは、相互に連続して複数回行うこと、たとえば周期的に行うことができる。
【0027】
本発明の重要な背景は、トランジスタのスイッチオン直後のセンサベースラインを一定にするため、電気的なドリフトを最小化することである。トランジスタのチャネル領域135において不純物密度を高くすると、このトランジスタのドリフト特性はより強くなる。すなわち、動作中に動作点が変化する。このような動作点の変化により、本当の測定点を推定できなくなるか、または、動作点の予測不能な変化により、別の欠点も生じてしまう。本願にて開示するアプローチにより、素子における電圧のドリフトの偏差を防ぐことができるようになる。
【0028】
また、酸化物中の可動イオンの位置変化も、チャネル領域内の電界ないしは特性を変化させるので、動作点の変化にも繋がる。このような作用は、本願にて開示した発明によって改善することができる。
【0029】
化学的感応性のガスセンサを使用する際には、素子にかかるストレスを最小化するために動作方法のストラテジーが必要となる。本願にて開示したアプローチは、素子(すなわち電界効果トランジスタ)に印加するためのこのストラテジーを適合するための制御パラメータを提供するものである。
【0030】
本発明の重要な側面は動的な動作である。すなわち、ガス感応性素子を一定の電圧で動作させるのではなく、所定の動作ストラテジーを用いて動作させることである。動作中に(電界効果)トランジスタに一定バイアスストレスを使用すると、(とりわけチャネル領域において)不純物が飽和し、ひいては、可動イオンの分布状態を所定の分布状態にすることができ、これにより、動作点を一定にすることができる。その際には、素子は一定の動作点で動作するのではなく、ストレス点でも動作する。ないしは、ストレス期間または準備期間では動作電圧を変化させて(すなわち、準備電圧と検出電圧とで)動作する。よって、本願にて開示したアプローチは、動作中に(とりわけ、測定量の測定を行うためにチャネル領域135における)状態を一定にするために、一定バイアスストレスの作用を利用するということである。
【0031】
以下、
図2のチャートを参照して、本願にて開示したアプローチの基本動作を詳細に説明する。このチャートでは、縦軸上に、複数の異なる時点t(横軸)における、ゲート電極115に印加された電圧の特性経過を示している。トランジスタ100のスイッチオン後(すなわち、スイッチオン時点t
1における、ガスパラメータの検出方法の初期化の開始後)に、測定動作または制御動作自体を行う前に、このトランジスタ100に事前ストレスをかける。すなわち、時点t
2と時点t
3との間の準備期間t
23においてゲート電極115に準備電圧U
VSを印加する。可能な「ストレス」はたとえば、ドレイン電圧(すなわち、ソース端子とドレイン端子との間の電圧)を印加することなく、本来の動作点(すなわち、次の検出期間にて使用される動作電圧U
ES)を大きく上回る高いゲート電圧U
Gをゲート電極に印加することである。確かに、トランジスタ100(のチャネル領域)には電流は流れないが、高電界により、ゲート内に電子が引き込まれ、酸化物の空格子点が飽和する。準備期間t
23が終了する時点t
3において、ゲート電極115に検出電圧U
ESを印加し、時点t
4までの検出期間t
34の間に測定量165を、ここではたとえば、ソース領域140とドレイン領域145との間に電圧を印加した後にチャネル領域135に流れる電流を検出する。ゲート電極115ないしは絶縁層130の電気的特性にガス成分120が及ぼす作用は知られているので、このようにして、ユニット170において前記測定量165からガスパラメータ175を求めることができる。
【0032】
動作期間中にドリフトを戻すために、トランジスタ100に上述のようにストレスをかけること(すなわち、ゲート電極115に準備電圧U
VSを印加すること)を動作中にも繰り返すことができる。こうするためにはたとえば、時点t
4の後(すなわち、検出期間の終了時点後)、時点t
5までの(より短い)準備期間t
45にわたってゲート電極115に準備電圧U
VSを印加するステップを行うことができる。というのも、期間t
23における最初の印加ステップにおいてすでに、チャネル領域135の半導体材料の状態を所望の状態に再リフレッシュするだけでよいように、トランジスタ100は準備されているからである。その後、時点t
6までの第2の検出期間t
56における後続の検出ステップにおいて、再び測定量を検出することができ、この測定量から再びガスパラメータ175を検出することもできる。このようにして、トランジスタの準備サイクルを繰り返してその後に測定量を検出することにより、任意の長さの期間にわたって、ガスパラメータを求める基礎である測定量を高精度で測定または検出することができる。
【0033】
これに代えて択一的に、または、別の使用環境では、たとえば(複数の)前記印加ステップにおいて、検出電圧U
ESの符号と異なる符号を有する準備電圧U
VSを使用することも可能である。こうすることにより、たとえば、検出電圧の符号と同じ符号の準備電圧を用いた場合と異なってトランジスタ100のチャネル領域135が最適化されるようにすることができ、または、検出電圧の符号と同じ符号の準備電圧を用いた場合と異なる不純物または異なる可動イオンの作用の中性化に関して前記トランジスタ100のチャネル領域135を最適化することができる。その際には(複数の)準備期間を、検出電圧の符号と同じ符号を有する(複数の)準備電圧を選択した場合の準備期間の長さと同様または同一の長さとすることができる。しかし、準備電圧の大きさは必ず、検出電圧の値の大きさより大きくしなければならない。というのも、このようにして、チャネル領域135の半導体材料における妨害となる電気的特性がゲート電極115への印加により補償されることを補償できるからである。
図3は、検出電圧U
ESの符号と異なる符号を有する準備電圧U
VSを用いてゲート電極115に印加したときのゲート電極電圧U
Gの時間特性を示す基本図である。
【0034】
換言すると、別の手段として、トランジスタ100を深い蓄積状態に追いやる負のストレスをトランジスタにかけることが可能である。この蓄積動作状態ではトランジスタ100は導通状態ではないが、チャネル135には反転時と逆方向のキャリアが存在する。しかし、このキャリアもまた、酸化物キャリアの飽和の原因となる。酸化物中の空格子点がアクセプタ特性を有するかまたはドナー特性を有するかに応じて、種々のストレスメカニズムを変化させることができる。負のバイアス電圧(準備電圧)を使用したときのこのプロセス例を、
図3のチャートに示す。高温のストレス場により、酸化物中の可動イオンを所定のようにシフトさせることも可能である。ストレス電圧を印加することにより、素子の状態をいわば本来の動作前に早めることができる。
【0035】
さらにたとえば、検出ステップにおいて(すなわち期間t
23中に)測定量を測定または検出した後、ドリフトないしは不純物濃度の測定400を行うこともできる。この測定400の一例を、
図4のチャートに示す。その際には、
図3に示した準備電圧U
VSを、検出電圧U
ESの符号と異なる符号として使用する。その後、この測定の結果を使用して、次のステップにおいて実施する、ゲート電極115への準備電圧の印加を決定することができる。これによってたとえば、チャネル領域135における半導体材料が当該チャネル領域135におけるドリフト現象ないしは不純物濃度に及ぼす影響を補償できるように準備電圧を選択することができる。こうすると、検出ステップにおいて、ゲート電極115に印加される電圧が低下したときに不純物濃度の緩和を明確に検出することができ、実際の状態に応じて半導体材料を可能な限り迅速に、測定量の検出に最適な状態に戻すことができる。ドリフト/不純物濃度の測定400はたとえば、準備電圧U
VSの大きさより大きい絶対値(かつ異なる符号)を有する電圧U
Gをゲート電極115に印加することができる。このことにより、測定量のドリフトに影響を及ぼす実際の不純物濃度を検出することができる。その後、この測定したドリフトないしは不純物濃度に応じて、第2の準備期間t
45中に実施される(第2の)印加ステップにおいて前記準備電圧を選択することができる。この準備電圧U
VSの値としては、最初の準備期間t
23において行われる最初の第1の印加と同じ値を使用しているので、上述のことは
図4には示されていない。このことは
図4において、符号410によって示されている。
【0036】
図5に、ガス感応性電界効果トランジスタ100を用いてガスパラメータを測定するための本発明の方法500の一実施例の基本的なフローチャートを示す。同図のこの方法500の実施例の図示内容については、
図4に示したゲート電極115に印加するプロセスを用いている。このフローチャートでは、第1のステップにおいて、(たとえば
図1の時点t
1において)方法500を開始する510。次のステップにおいて、準備期間t
23中に電界効果トランジスタ100のゲート電極に準備電圧U
VSを印加するステップ520を実施する(この印加ステップ520は、トランジスタに「事前ストレス」をかけるステップと称することもできる)。その次に、検出ステップ520において、前記準備期間の直後の検出期間中に、前記準備電圧の絶対値より小さいレベル値を有する検出電圧をゲート電極に印加しながら、電界効果トランジスタのソース端子とドレイン端子との間の測定量を検出する。このステップでは、前記電界効果トランジスタは既知の動作モード(動作とも称する)で動作する。この検出ステップ530において測定量を検出すると、次の求めるステップ535において、前記測定量を用いて(すなわち前記測定量から)ガスパラメータを求める。さらに次のステップにおいて、測定量のドリフトを状態値547として測定する540。このドリフトはとりわけ、チャネル領域135における半導体材料の物理的状態を示唆するものである。この測定ステップ540は、さらに次の印加ステップ545の一部とすることもできる。測定ステップ540の後、計算ステップ540において、次の印加ステップ520に使用される(新たな)準備電圧U
VS1を計算することができる。この計算した準備電圧(変化した場合には、変化した準備電圧)U
VS1をゲート電極115に印加した後、再び、測定量の検出ステップ530と、当該測定量からガスパラメータを求めるステップ535とを行う。
【0037】
上述のアプローチはこのようにして、動作(モード)中(ないしは動作(モード)後)に再び短時間にわたって、前記ゲート電極115に準備電圧を印加するストレスモードに切り替えて動作点のドリフトを解消するプロセスを可能にするものである。
【0038】
また、具体的な実際の使用例に可能な限り適合した準備電圧を設定するためには、より詳しい規則にしたがって上述の準備電圧ないしはこの準備電圧を計算することもできる。このようなアプローチにより、たとえば別の測定方式を用いて発生したドリフトを測定し、これに適用されるストレス信号を前記測定された不純物から計算するという別の可能な手段が実現される。こうするためにはたとえば、半導体製造技術から知られているチャージポンプ法を(場合によっては応用形態で)使用することができる。したがって、このチャージポンプ法(または、この手法から派生した手法)を、電界効果トランジスタ100における蓄積状態の閾値を求めるのに使用することができる。しかし、チャージポンプ法と異なり、この測定手法ではトランジスタ100に第4の端子を設けなくてもよい。
【0039】
このようなアプローチを用いることにより、深い蓄積状態に移行するようにトランジスタにパルスを印加して、動作中にフラットバンド電圧を測定することが可能となる。このことは、(たとえばn型トランジスタの場合)負の電圧を一時的に印加することにより実現される。このようにして、フラットバンド電圧に達すると不純物の荷電反転が行われる。フラットバンド電圧とは、外部から印加され半導体において最小電界を引き起こす電圧を指す。その後に、トランジスタの輸送特性曲線600(すなわち、たとえばドレイン端子145に対してゲート電極115に電圧を印加したときにソース端子140とドレイン端子145との間の電流を表す特性曲線)を測定すると、不純物の荷電反転が生じたか否かを特定することができる。
図6Aおよび6Bに、電界効果トランジスタ100のこのような輸送特性曲線600を示す。ここでは、輸送特性曲線600を求めるために、まず最初に、前記輸送特性曲線600の第1の(上昇する)曲線610を得るために、上昇する電圧レベルをゲート電極115に印加し、その次に、当該輸送特性曲線600の第2の(下降する)曲線620を得るために、下降する電圧レベルを前記ゲート電極115に印加する。
図6Aには、フラットバンド電圧を下回った場合の輸送特性曲線600を示しているのに対し、
図6Bには、このフラットバンド電圧を下回らなかった場合の輸送特性曲線を示している。ここでは、この輸送特性曲線600の勾配は、ゲート電極115に印加された電圧に依存して変化し、また、この輸送特性曲線600は、上昇すると測定された輸送特性曲線(曲線610)と下降すると測定された輸送特性曲線(曲線620)との間にヒステリシスを形成する。
図6Aに示した輸送特性曲線600では、上昇するゲート電圧の場合のソース端子140とドレイン端子145との間の電流の値と、下降するゲート電圧の場合のソース端子140とドレイン端子145との間の電流の値との間に大きな差630が生じること(いずれも、ゲート電圧値640が等しいとき)が示されている。このことにより、チャネル領域135の半導体材料中の不純物の荷電反転が生じたことを推定することができる。それに対し、
図6Bに示した輸送特性曲線600では、上昇するゲート電圧の場合にチャネル領域に流れる電流と、下降するゲート電圧の場合にチャネル領域に流れる電流との間には小さい差630(これもそれぞれ、ゲート電圧値640が等しいとき)のみが生じている。本願にて開示したこのようなアプローチにより、チャネル領域における半導体材料中の不純物の荷電反転が生じなくなる、ゲート電極に印加される電圧を求めることができ、この電圧により、測定量の検出に妨害となる影響が及ぼされる可能性を無くすことができる。よって、不純物の作用が中性化される電圧の境界をこのようにテストすることにより、動作点を求めること、ないしは、測定量の測定のための実際の使用シナリオまたは測定シナリオにて実際に用いるべき、検出期間中にゲート電極に印加すべき検出電圧を求めることができる。たとえば、上述の輸送特性曲線600を評価して、上昇する輸送特性曲線610上の1つの値と、下降する特性曲線620上の1つの値との間の差が閾値を超えるか否か、すなわち、測定量のドリフトが過度に大きくてもはや許容範囲外にあるか否かを判定することができる。この場合にはその後、検出に使用される検出電圧の適合または変更を行うことができ、たとえば、検出電圧を上昇または下降させることができる。複数の負の電圧をテストすることにより、それぞれ対応する電圧においてフラットバンドを超えたか否かを特定することができる。このフラットバンド電圧を超えると、輸送曲線は所定の電圧領域だけシフトする。
【0040】
本発明は、電界効果をベースとする素子を用いた半導体をベースとするセンサ全般において、特に、トランジスタを用いた半導体をベースとするガスセンサにおいて使用することができる。
【0041】
上述にて説明し図面に示した実施例は、単に一例として選択したものに過ぎず、複数の異なる実施例全体を相互に組み合わせること、または、これらの実施例の一部の特徴を相互に組み合わせることも可能である。また、各実施例にさらに別の実施例の一部の特徴を補足することも可能である。
【0042】
さらに、本発明の方法の各ステップを繰り返して実施することも、また、ここで記載した順序と異なる順序で実施することも可能である。
【0043】
いずれかの実施例において、第1の特徴と第2の特徴とが「および/または」によって結合されている場合には、この実施例は、第1の特徴と第2の特徴との双方を含む実施形態と、第1の特徴または第2の特徴のいずれかのみを含む別の実施形態とを含むと解すべきである。