【実施例】
【0038】
以下に本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0039】
実施例1〜13、比較例1〜6
表1〜3の何れか1に示す量(質量部)の成分を、二軸押出機を用いて150〜180℃で溶融混練して塩化ビニル樹脂組成物を製造した。以下の試験1〜5を行った。結果を表1〜3の何れか1に示す。
【0040】
使用した原材料
成分(a)塩化ビニル樹脂
成分(a−1):
製造会社:株式会社カネカ
種類: ポリ塩化ビニル
平均重合度:700
【0041】
成分(b): イソソルバイドジエステル系可塑剤
成分(b−1):
製造会社:ロケットジャパン
商品名:ID−46
種類:イソソルバイドジオクタノエート
粘度:80mPa・S(JIS K2283に準拠し20℃で測定)
【0042】
成分(b’)イソソルバイドジエステル系可塑剤以外の可塑剤(比較成分)
比較成分(b’−1):
製造会社:株式会社ジェイプラス
商品名:DOP
種類:ジ(2−エチルヘキシル)フタレート(DEHP)
【0043】
比較成分(b’−2):
製造会社:花王株式会社
商品名:TOTM
種類:トリメリット酸2−エチルヘキシル(TOTM)
【0044】
比較成分(b’−3):
製造会社: 株式会社ジェイプラス
商品名:DOA
種類:ジ(2−エチルヘキシル)アジペート(DEHA)
【0045】
比較成分(b’−4):
製造会社: BASFジャパン株式会社
商品名:Hexamoll
R DINCH
種類:ジイソノニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシレート(DINCH)
【0046】
成分(c)シラン化合物
成分(c−1): トリアルコキシシラン化合物
製造会社:東レダウコーニングシリコン株式会社
商品名: Z−6036
種類:3 − メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【0047】
成分(c−2): トリアルコキシシラン化合物
製造会社:東レダウコーニングシリコン株式会社
商品名: Z−6519
種類:ビニルトリエトキシシラン
【0048】
成分(c−3): テトラアルコキシシラン化合物
製造会社:東レダウコーニングシリコン株式会社
商品名: Z−6697
種類:テトラエトキシシラン
【0049】
成分(d)その他の任意成分1(安定剤)
成分(d−1):ジオクチル錫ジメルカプト系安定剤
製造会社:株式会社ADEKA
商品名: アデカスタブ465
種類: ジオクチル錫ジメルカプト
【0050】
成分(e)その他の任意成分2(滑材)
成分(e−1): ポリエチレンワックス系滑材
製造会社:三井化学株式会社
商品名: ハイワックス4202E
種類:ポリエチレンワックス
【0051】
成分(e−2): モンタン酸系滑材
製造会社:クラリアントジャパン株式会社
商品名: リコワックスOP
種類:モンタン酸部分鹸化エステル
【0052】
評価方法
1.射出成形性
型締圧120トンの射出成形機を用い、幅10mm×長さ80mm×厚さ2mmの試験片を下記の成形条件で成形した。
成形温度 180℃
金型温度 40℃
射出速度 50mm/秒
射出圧力 1400Kg/cm
2
保圧圧力 400〜1400Kg/cm
2
射出時間 10秒
冷却時間 45秒
続いて、得られた試験片について、フローマークやウェルドマークの有無を、目視観察し、以下の基準で評価した。
◎:フローマーク及びウェルドマークは認められない
○:フローマーク又はウェルドマークがわずかに認められる
△:フローマーク及びウェルドマークが認められる
×:甚だしいフローマーク及びウェルドマークが認められる
【0053】
2.耐放射線亀裂性
上記射出成形性と同様にして作成した幅10mm×長さ80mm×厚さ2mmの試験片についてコバルト60を線源とするγ線を40KGy照射した後の亀裂有無を目視観察した。
【0054】
3.耐放射線変色(ΔYI)
(1)得られた塩化ビニル樹脂組成物からテストロールを用いてシートを作成し、これを更にプレス装置を用いて2mm厚プレスシートに成形してテストサンプルとした。テストサンプルは2片用意した。
(2)得られたテストサンプルについて、照射前の黄色度(YI値)をJIS
K7105に準拠し、コンピュータカラーマッチングシステム〔住化カラー(株)製〕を用いて測定した。
(3)次いで、上記テストサンプルの一つはコバルト60を線源とするγ線を20KGy照射した。もう一つは40KGy照射した。テストサンプルの着色黄変は、照射後も徐々に進行する為、色が安定化するまで照射後サンプルを恒温恒湿の条件下(23℃、50%相対湿度)で3日間静置した。
(4)その後、照射後サンプルのYI値を上記と同じ方法で測定して、各々の照射後YI値を求めた。変色度の評価指標として、下記式で定義した黄変度(ΔYI値)を各々計算した。
ΔYI値=(照射後YI値)−(照射前YI値)
【0055】
4.耐放射線溶出性
(1)テストサンプルは、上記の3.耐放射線変色(ΔYI値)の測定と同じ方法で作成したものを用いた。
(2)γ線を照射前のテストサンプルと、コバルト60を線源とするγ線を40KGy照射後のテストサンプルについて、日本医療器材協会が定めた医療用プラスチック試験規格の塩化ビニル樹脂コンパウンドI規格に準拠し、ΔpHと紫外吸収スペクトルを測定した。
(3)即ち、テストサンプルを3mm四方に裁断し、所定量精秤して硬質ガラス製容器に投入し、121℃で1時間加熱抽出した。前記抽出液を所定量精秤し、試験液を作成した。またテストサンプルを投入しなかったこと以外は上記と同様の操作を行い、ブランクを作成した。
(4)上記で得た試験液の水素イオン指数(pH)とブランクの水素イオン指数(pH)を測定し、その差(ΔpH)を計算した。
(5)また上記で得た試験液の波長220〜350nmにおける紫外線吸収スペクトルの吸光度の最大値と、ブランクの波長220〜350nmにおける紫外線吸収スペクトルの吸光度の最大値を測定し、その差(ΔUV)を計算した。
(6)上記のようにしてγ線を照射前のテストサンプルのΔpHとΔUV、及びγ線を40KGy照射後のテストサンプルのΔpHとΔUVを求めた
(7)ΔpHについては、照射前、照射後の何れも1.5以下を合格と判断した。
(8)ΔUVについては、照射前、照射後の何れも0.1以下を合格と判断した。
【0056】
5.落下試験
(1)上記で得た塩化ビニル樹脂組成物を用い、内径6mm、肉厚2mm(外径10mm)、長さ50mmの略円筒形のジョイント部材を、射出成型機を使用して作成した。
(2)次に、軟質塩化ビニル樹脂組成物製の外径6mm、肉厚1mm、長さ1mのチューブを2本用意し、上記で得たジョイント部材両端のジョイント部に、各1本、10mm差し込んで接続した。
(3)続いて、一方のチューブの非接続端を高さ240cmの天井に固定し、他方のチューブの非接続端を手で把持して、上記接続体を天井に沿って略緊張状態に伸ばした後、他方のチューブの非接続端を手から離して上記接続体を落下させた。
(4)上記試験を10回繰返し、下記の基準で評価した。
〇:チューブがジョイントから抜けることは、1回もない
×:10回中、1〜3回、チューブがジョイントから抜けた
××:10回中、4回以上、チューブがジョイントから抜けた
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表1および表2に示すように、実施例の本発明の組成物は、γ線滅菌に対し優れた部材の耐亀裂性、耐変色性を示し、優れた射出成形性を有し、医療用材料に要求される溶出性試験において問題を生じない。これに対して比較例1、3〜6は、γ線滅菌に対する部材の耐亀裂性、耐変色性、射出成形性、医療用材料に要求される溶出性試験の少なくとも何れか一つが劣った。
【0061】
比較例2は、可塑剤の配合量が多いため、ジョイント部材として必要な剛性が不足し、落下試験に劣った。