特許第6238634号(P6238634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238634
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】コーヒー粉体組成物
(51)【国際特許分類】
   A23F 5/24 20060101AFI20171120BHJP
   A23F 5/10 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A23F5/24
   A23F5/10
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-166067(P2013-166067)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-33350(P2015-33350A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】須藤 丈博
(72)【発明者】
【氏名】片山 透
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−527574(JP,A)
【文献】 特表2013−530716(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02486487(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F3/00−5/50
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎コーヒー豆を微粉砕して得られる不溶性コーヒー粉末と、焙煎コーヒー豆の抽出物を乾燥して得られる可溶性コーヒー粉末と、を含有し、以下の要件を満たすコーヒー粉体組成物:
(i)不溶性コーヒー粉末のメジアン径が90〜300μm、
(ii)可溶性コーヒー粉末のメジアン径が50〜500μm、
(iii)可溶性コーヒー粉末のBET比表面積が1.0〜2.0m/g、及び
(iv)不溶性コーヒー粉末と可溶性コーヒー粉末の混合割合が、不溶性コーヒー粉末:可溶性コーヒー粉末(重量比)として、1:2〜1:10。
【請求項2】
焙煎コーヒー豆を微粉砕して得られるメジアン径が90〜300μmの不溶性コーヒー粉末を準備する工程、
焙煎コーヒー豆の抽出物を乾燥して得られるメジアン径が50〜500μmでありBET比表面積が1.0〜2.0m/gである可溶性コーヒー粉末を準備する工程、及び
不溶性コーヒー粉末と可溶性コーヒー粉末とを、不溶性コーヒー粉末:可溶性コーヒー粉末(重量比)が1:2〜1:10の混合割合で混合する工程、
を含む、コーヒー粉体組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品に添加してコーヒー風味を付与することが可能な焙煎コーヒー豆の微粉末を含有するコーヒー粉体組成物に関する。また、本発明は上記コーヒー粉体組成物を配合し、加熱殺菌処理して得られる、容器詰めコーヒー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活や消費者嗜好の多様化に伴い、より高級なもの、より高品質なもの、より機能的なもの、新規な香りや味を有するものなど、味にバラエティが求められている。コーヒー風味を有する飲食品は、その独特の香ばしい香りや上質な苦味が好まれており、コーヒー風味を有する飲食品のバラエティ化の一つとして、コーヒー豆を焙煎した焙煎コーヒー豆を微粉砕して得られる焙煎コーヒー豆微粉末を飲食品に添加して利用する方法が知られている。例えば、平均粒子径が2μm以下のコーヒー豆微粉砕品を含有することを特徴とするコーヒー風味強化剤(特許文献1)や、コーヒー豆の抽出液を濃縮したコーヒーエキスと平均粒子径30〜50μmに微粉化したコーヒー豆とを混合してなるコーヒーペースト(特許文献2)等を、缶コーヒーなどの嗜好飲料、アイスクリーム等の冷菓、パン等の焼成食品等の飲食品に添加して、コーヒー風味を付与する方法が提案されている。また、コーヒー豆の微粉砕品を主原料とするコーヒー飲料(特許文献3)や、焙煎コーヒー豆微粉末とコーヒー抽出液とを混合して乾燥処理することにより凝集体を形成させた、お湯に溶かして飲用するタイプの粉末コーヒー(いわゆる、インスタントコーヒー)も知られている(特許文献4〜6)。
【0003】
一方、焙煎コーヒー豆は、劣化しやすく、香りの飛散や酸化がすぐに進行してしまうことが知られている。そのため、酸素に触れぬように密封状態として保存したり、窒素等を使用したガス置換処理を行うなどしたりして、少しでも新鮮さを保つ状態を維持する工夫がなされている。また、大気中で保存される焙煎コーヒー豆の保存安定性を向上させる方法として、コーヒー豆に糖質を添加する方法(特許文献7)や、イソ吉草酸エチル或いは醗酵かつ焙煎処理された醗酵焙煎コーヒー豆を添加する方法(特許文献8)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−124486号公報
【特許文献2】特開2007−289035号公報
【特許文献3】特開2005−318812号公報
【特許文献4】特開昭54−76866号公報
【特許文献5】特開昭55−26887号公報
【特許文献6】米国特許第8043645号明細書
【特許文献7】特開2001−112415号公報
【特許文献8】再表2010/038867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
焙煎コーヒー豆を微粉砕して得られる焙煎コーヒー豆の粉砕物(焙煎コーヒー豆微粉末)は、粉砕によりその表面積が増大するため、さらに香りの飛散や酸化が著しい。
【0006】
本発明の課題は、飲食品に添加してコーヒー風味を付与することが可能であり、また、大気中での保存安定性が向上した焙煎コーヒー豆の微粉末を含む組成物を提供することにある。
【0007】
また、焙煎コーヒー豆の微粉末を配合して得られるコーヒー飲料は、焙煎コーヒー豆由来の香ばしい香り(焙煎香)が特徴であるが、長期間保存される容器詰め飲料の形態(特に、酸素透過性のある容器の形態)では、加熱殺菌や冷蔵状態での保存などの熱履歴や光照射等の影響から、焙煎香が減少したり変化したりし易く、風味が変化しやすいという問題がある。
【0008】
本発明の課題は、焙煎香の保存安定性を向上した焙煎コーヒー豆の微粉末を配合した容器詰めのコーヒー飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の粒子径に微粉砕された焙煎コーヒー豆の微粉末(「不溶性コーヒー粉末」とも呼ぶ。)に、焙煎コーヒー豆の抽出物を乾燥して得られる可溶性コーヒー粉末で、特定の粒子径かつ比表面積を有する可溶性コーヒー粉末を混合してコーヒー粉体組成物の形態とすることで、大気中に長時間晒されることで品質が低下してしまう焙煎コーヒー豆微粉末の保存安定性を向上させることができることを見出した。また、本発明者らは、上記の焙煎コーヒー豆微粉末と、上記の可溶性コーヒー粉末とを配合して調製した容器詰めコーヒー飲料が、焙煎コーヒー豆微粉末由来の焙煎香を安定に維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、これに限定されるものではないが、本発明は以下を包含する。
1.焙煎コーヒー豆を微粉砕して得られる不溶性コーヒー粉末と、焙煎コーヒー豆の抽出物を乾燥して得られる可溶性コーヒー粉末とを含有し、以下の要件を満たすコーヒー粉体組成物:
(i)不溶性コーヒー粉末のメジアン径が50〜300μm、
(ii)可溶性コーヒー粉末のメジアン径が50〜500μm、
(iii)可溶性コーヒー粉末のBET比表面積が1.0〜2.0m/g、及び
(iv)不溶性コーヒー粉末と可溶性コーヒー粉末の混合割合が、不溶性コーヒー粉末:可溶性コーヒー粉末(重量比)として、1:2〜1:10。
2.上記1に記載のコーヒー粉体組成物を配合して得られる、コーヒー飲料。
3.焙煎コーヒー豆を微粉砕して得られるメジアン径が50〜300μmの不溶性コーヒー粉末を準備する工程、
焙煎コーヒー豆の抽出物を乾燥して得られるメジアン径が50〜500μmでありBET比表面積が1.0〜2.0m/gである可溶性コーヒー粉末を準備する工程、及び
不溶性コーヒー粉末と可溶性コーヒー粉末とを、不溶性コーヒー粉末:可溶性コーヒー粉末(重量比)が1:2〜1:10の混合割合で混合する工程
を含む、コーヒー粉体組成物の製造方法。
4.焙煎コーヒー豆を微粉砕して得られるメジアン径が50〜300μmの不溶性コーヒー粉末を準備する工程、
焙煎コーヒー豆の抽出物を乾燥して得られるメジアン径が50〜500μmでありBET比表面積が1.0〜2.0m/gである可溶性コーヒー粉末を準備する工程、
不溶性コーヒー粉末と可溶性コーヒー粉末とを1:2〜1:10(重量比)の割合となるように配合してコーヒー調合液を得る工程、
コーヒー調合液を加熱殺菌処理する工程、及び
容器に充填する工程
を含む容器詰めコーヒー飲料の製造方法。
5.コーヒー調合液を得る工程の前に、不溶性コーヒー粉末と可溶性コーヒー粉末とを混合して、コーヒー粉体組成物を得る工程を含む、上記4の製造方法。
6.コーヒー粉体組成物を、1〜365日間保存する工程を含む、上記5の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、常温・空気中に曝露される条件下であっても、3ヶ月を越えてコーヒー風味(強い芳香とフレーバー)が安定化されたコーヒー粉体組成物が得られる。この組成物は、焙煎コーヒー豆微粉末の経時変化、特に空気中での経時変化による風味の変化や酸化による劣化が抑えられているので、保存後の本発明の組成物を加熱殺菌などの高温処理が施される食品加工に利用した場合にも、良好なコーヒー風味を有する飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(不溶性コーヒー粉末)
本発明の「不溶性コーヒー粉末」とは、焙煎コーヒー豆を微粉砕して得られるもの(焙煎コーヒー豆微粉末)をいう。ここで、「焙煎コーヒー豆」とは、コーヒーの生豆に対して焙煎と呼ばれる加熱処理を施したものである。焙煎によって生豆に含まれている成分が化学変化してコーヒーの風味(強い芳香性やフレーバー)が醸し出されており、また、空隙含有構造体が形成されている。
【0013】
本発明の不溶性コーヒー粉末の原料となる焙煎コーヒー豆は、特に限定されない。直火式、熱風式、半熱風式、炭火式、遠赤外線式、マイクロ波式、過熱水蒸気式などの方法で、水平(横)ドラム型、垂直(縦)ドラム型、垂直回転ボール型、流動床型、加圧型などの装置を用い、コーヒー豆の種別に対応して、所定の目的に応じた焙煎度に仕上げればよい。ただし、焙煎度が高いと油脂成分がコーヒー豆表面に析出しやすくなり、粉砕が困難になったり、粉砕処理して得られる微粉末がケーキングを起こし易くなったりする。この観点から、アグトロンカラーメーターで測定した値(アグトロン値)を指標として、45〜70程度、好ましくは50〜60程度となるように焙煎された焙煎コーヒー豆が好適に用いられる。なお、コーヒー豆の種別についても、限定されるものではなく、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などを使用できるが、ロブスタ種は好ましい態様の一例である。
【0014】
この焙煎コーヒー豆を粉砕処理して、本発明の不溶性コーヒー粉末を得る。粉砕処理は、焙煎後、24時間以内、好ましくは20時間以内、より好ましくは15時間以内、特に好ましくは10時間に行うことが好ましい。焙煎後の放置時間が長いと、油脂成分がコーヒー豆表面に析出しやすくなる。
【0015】
乾式での粉砕処理は、メジアン径で1mm以下に粗粉砕した後、微粉砕することが好ましい。微粉砕をする前に、予め粗粉砕することにより、一層効率よく短時間に微粉砕することができ、コーヒーの香り(フレーバー)の飛散を最小限に抑えることができる。また、粒度分布を狭くできるという利点もある。粗粉砕は、メジアン径で約1mm以下、好ましくは0.5mm以下になるように粉砕するが、その方法は特に制限されない。ロール式ミル、ボール式ミル、石臼式ミル等、種々の形式の粉砕機を使用することができる。
【0016】
焙煎コーヒー豆の微粉砕は、メジアン径で50〜300μmとなるように粉砕する。メジアン径で300μmを超える粉末は、飲食品に配合した場合に食感や舌触りなどのテクスチャーに違和感を与えることがある。より好ましい微粉砕の程度の上限はメジアン径で250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。また、メジアン径で50μm未満となるまで微粉砕処理した場合には、本発明の保存安定効果が得られない傾向がある。より好ましい微粉砕の程度の下限はメジアン径で70μm以上、さらに好ましくは80μm以上、特に好ましくは90μm以上である。微粉砕の方法も特に制限されず、ロール式粉砕機、バーハンマー式やピンハンマー式等の衝撃式粉砕機、気流式粉砕機など、種々の形式の粉砕機を使用することができるが、ロール式粉砕機が好ましく用いられる。
【0017】
このようにして得られる不溶性コーヒー粉末の比表面積は、0.05〜0.50m/g、好ましくは0.10〜0.30m/g程度である。なお、本明細書でいう「比表面積」は、BET式多点法で測定される値を意味する。
【0018】
(可溶性コーヒー粉末)
本発明の「可溶性コーヒー粉末」とは、焙煎コーヒー豆の抽出液(以下、「コーヒー抽出液」という)を乾燥させて粉末状に加工したものをいう。
【0019】
本発明の可溶性コーヒー粉末の原料となる焙煎コーヒー豆は、特に限定されない。直火式、熱風式、半熱風式、炭火式、遠赤外線式、マイクロ波式、過熱水蒸気式などの方法で、水平(横)ドラム型、垂直(縦)ドラム型、垂直回転ボール型、流動床型、加圧型などの装置を用い、コーヒー豆の種別に対応して、所定の目的に応じた焙煎度に仕上げればよい。メカニズムは不明であるが、不溶性コーヒー粉末の原料となる焙煎コーヒー豆と異なる焙煎度のコーヒー豆、特に不溶性コーヒー粉末の焙煎コーヒー豆よりも焙煎度が高い、すなわちアグトロン値が小さい焙煎度のコーヒー豆を可溶性コーヒーの抽出原料に用いると、本発明の効果をより一層顕著に発現できる。アグトロンカラーメーターで測定した値(アグトロン値)を指標として、35〜60程度、好ましくは45〜50程度となるように焙煎された焙煎コーヒー豆は好適な態様の一例である。なお、コーヒー豆の種別についても、限定されるものではなく、アラビカ種、ロブスタ種、リベリカ種などを使用できるが、特にロブスタ種が好ましい。
【0020】
コーヒー抽出液は、上記の焙煎コーヒー豆に温水等の水溶性溶媒を用いて定法により抽出することにより得られる。コーヒー抽出液の乾燥方法は特に限定されない。例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥などを用いることができるが、比表面積が1.0〜2.0m/g、好ましくは1.0〜1.8m/gとなるように、すなわち空隙の多い多孔質構造体となるように、乾燥することが重要である。また、可溶性粉末の粒子径は、50〜500μm、好ましく80〜400μm、より好ましくは100〜300μmとする。
【0021】
(コーヒー粉体組成物)
本発明のコーヒー粉体組成物は、上記の不溶性コーヒー粉末及び上記の可溶性コーヒー粉末の粉体同士を混合して得られる粉体混合物である。その混合割合は、不溶性コーヒー粉末:可溶性コーヒー粉末が重量比で、1:2〜1:10、好ましくは1:3〜1:8程度である。コーヒーの芳香性や強いフレーバーを有する不溶性コーヒー粉末(焙煎コーヒー豆微粉末)に対して、可溶性コーヒー粉末を取り囲むように存在させることにより、焙煎コーヒー豆微粉末から放散されるフレーバー成分を可溶性コーヒー粉末の多孔質部分で捕捉し、さらに長期保存中に析出する焙煎コーヒー豆微粉末のコーヒーオイルなどの呈味成分を吸着することにより、コーヒーの芳香やフレーバーの保存安定性が向上すると考えられる。
【0022】
この粉体混合物を飲食品に添加すれば、焙煎コーヒー豆微粉末の有するコーヒー風味を飲食品に添加することができる。一般に、焼成や加熱殺菌などの高温処理が施される食品加工に焙煎コーヒー豆微粉末を利用した場合、高温処理の過程で焙煎コーヒー豆微粉末が有するコーヒー風味が減少したり変化したりするという問題があるが、本発明の粉体混合物を用いた場合には、高温処理が施される食品加工に利用した場合にも、焙煎コーヒー豆微粉末が有する良好なコーヒー風味を 飲食品に付与することができる。
【0023】
本発明の粉体組成物は、液体に容易に分散し、溶解する。この溶液中では、保存中に可溶性コーヒー粉末に移行した焙煎コーヒー豆微粉末のフレーバー成分や呈味成分など、焙煎コーヒー豆微粉末の有するコーヒー風味をそのまま還元して味わうことができる。すなわち、本発明の粉体組成物は、飲料の製造、特に加熱殺菌処理して製造される容器詰め飲料の製造に好適に利用できる。本発明のコーヒー粉体組成物を飲料の製造に用いる場合、その配合量は、飲料全体に対して0.1〜5.0重量%、好ましくは0.3〜4.0重量%、より好ましくは0.5〜3.0重量%、特に好ましくは0.6〜2.0重量%程度である。このように、本発明のコーヒー粉体組成物を用いると、コーヒー豆の使用量を増加させることなく、コーヒー風味や濃厚感が高いコーヒー飲料を製造することができる。
【0024】
(容器詰めコーヒー飲料)
上記の不溶性コーヒー粉末及び上記の可溶性コーヒー粉末の粉体を水と混合し、必要に応じて乳成分、甘味料、pH調整剤等を添加してコーヒー調合液を得、これを加熱殺菌処理して容器に充填することにより、容器詰めコーヒー飲料を製造することができる。加熱殺菌処理の方法は特に限定されない。例えば、各地の法規(日本にあっては食品衛生法)に従って行えばよい。
【0025】
一般に、容器詰めコーヒー飲料は、常温で保存されて販売されたり、5〜10℃に冷蔵されて販売されたり、冬季には55℃に保温されて販売されたりする。焙煎コーヒー豆微粉末を含有するコーヒー飲料は、飲用温度によってその風味が変化しやすく、特に冷蔵温度(5〜10℃)で飲用する場合には、焙煎コーヒー豆微粉末の苦味が顕著に発現して、嗜好性が低下するという問題がある。しかし、上記の不溶性コーヒー粉末と可溶性コーヒー粉末とを特定割合で配合したコーヒー飲料は、冷蔵温度で飲用しても、焙煎コーヒー豆微粉末に起因する過度な苦味が知覚されにくく、良好なコーヒー風味(豊かな芳香とフレーバー)を愉しむことができる。
【0026】
容器詰めコーヒー飲料を製造する際、上述のコーヒー粉体組成物を調製し、これを水等と混合して調合液を得て、加熱殺菌処理をしてコーヒー飲料を製造することが好ましい。いったんコーヒー粉体組成物の形態とすることで、保存安定性と冷蔵温度での嗜好性の両方の観点において、より一層優れた効果を発揮する。不溶性コーヒー粉末と可溶性コーヒー粉末とは、混合してから1〜365日間、好ましくは5〜180日間、より好ましくは10〜90日間程度保存してもよい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0028】
[実施例1]
(1)不溶性コーヒー粉末の調製
ロブスタ種のコーヒー豆を定法にてアグトロン値が50〜60(55程度)になるまで焙煎して、焙煎コーヒー豆を得た。この焙煎コーヒー豆をロール式粉砕機にて粒子径がメジアン径で105μm程度となるまで微粉砕して、焙煎コーヒー豆微粉末(不溶性コーヒー粉末)を得た。
(2)可溶性コーヒー粉末の調製
ロブスタ種のコーヒー豆を定法にてアグトロン値が45〜49になるまで焙煎して、焙煎コーヒー豆を得た。この焙煎コーヒー豆を原料とし、湯による抽出処理を行ってコーヒー抽出液を得、これを種々の方法で乾燥処理して粒子径及び比表面積の異なる可溶性コーヒー粉末を得た(表1参照)。
(3)コーヒー粉体組成物の調製
上記(1)で調製した不溶性コーヒー粉末(焙煎コーヒー豆微粉末)と、上記(2)で調製した可溶性コーヒー粉末とを表2に示す割合で混合して粉体混合物を得、これをBIB(バッグインボックス)型容器に入れて常温で3ヶ月間保存し、専門パネルによりコーヒー風味について官能評価した。評価は、粉体混合物1.5重量%、砂糖8重量%、水91.5重量%を混合してコーヒー飲料の形態として評価した。評価結果は、コーヒー風味が強いものから順に、4点、3点、2点、1点の4段階で表し、3点以上を合格とした。本実施例における粒子径及び比表面積の測定方法を以下に示す。
【0029】
(粒子径の測定)
粒子径の測定には、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製、型式:MT3300EXII)を用いた。測定は、粉体の試料をエアーで分散させながら、レーザー光を試料に照射し、回折散乱パターンから粒子径分布の測定(乾式レーザー回折散乱法)を行い、粒子径の累積データの50%径をメジアン径とした。
【0030】
(比表面積の測定)
比表面積の測定には、細孔分布測定装置(ユアサアイオニクス株式会社製、型式:Nova4200e)を用いた。窒素ガスを用いたガス吸着法(定容法)により測定した吸着脱離等温線(横軸:相対圧力、縦軸:吸着ガス量)の相対圧力(P/P)0.1〜0.3の範囲で良い直線性が見られるポイントにBET式を適用し、BET多点法比表面積を求めた。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
結果を表3に示す。BET比表面積が1.0〜2.0m/gとなる可溶性コーヒー粉末を、不溶性コーヒー粉末と可溶性コーヒー粉末との混合割合(重量比)が1:2〜1:10となるように混合したコーヒー粉体混合物では、大気中に長時間晒されることで品質が低下してしまう焙煎コーヒー豆微粉末の保存安定性を向上させることができた。このコーヒー粉体混合物を用いて調製されたコーヒー飲料は、焙煎コーヒー豆微粉末のコーヒー風味(強い芳香とフレーバー)を有し、保存に伴う劣化臭の無い風味良好なコーヒー飲料であった。
【0034】
【表3】
【0035】
[実施例2]
実施例1で調製したコーヒー飲料(本発明品1〜6)を食品衛生法に従った殺菌条件で加熱殺菌後、熱可塑性樹脂の容器に150gずつ充填し、容器蓋をヒートシールして密封して容器詰めコーヒー飲料を製造した。この容器詰めコーヒー飲料を1ヶ月間常温で保存した後、冷蔵温度(5〜10℃)に冷却したものを官能評価した。
【0036】
また、比較として、表2の本発明品1〜6に示す不溶性コーヒー粉末(A)と可溶性コーヒー粉末(B)とをそれぞれ個別に準備し、これら粉体を直接に水に添加して(すなわち、これら粉体の粉体混合物を調製することなしに)、コーヒー飲料としたものを準備した。この飲料の組成は以下の通りであった:粉体(A+Bの総量)1.5重量%、砂糖8重量%、水91.5重量%;各粉体は表2の本発明品1〜6に示す混合割合で配合された。このコーヒー飲料を、上記と同様に加熱殺菌処理、容器充填、保存して容器詰めコーヒー飲料を製造した(本発明品7〜12)。
【0037】
本発明品のコーヒー飲料は、レトルト殺菌による高温処理が施されているにも関わらず、良好なコーヒー風味を有する容器詰めコーヒー飲料であった。AとBを混合して粉体混合物を予め得てから調製した本発明品1〜6と、粉体A及びBをそれぞれ直接に調合液に配合して調製した本発明品7〜12について、それぞれ一対比較を行った(本発明品1と7、本発明品2と8、本発明品3と9、本発明品4と10、本発明品5と11、本発明品6と12)。その結果、予め粉体混合物を調製した本発明品1〜6は、本発明品7〜12に比べて特に風味良好であった。