(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンタや複写機などの画像形成装置に搭載する画像加熱装置としての定着装置には各種方式の装置がある。その一つとしてベルト(フィルム)加熱方式の装置がある。これは、セラミックス製の基板上に発熱抵抗体を有するヒータと、このヒータを内包接触しつつ移動する定着ベルトと、その定着ベルトと圧接して画像を担持した記録材を挟持搬送して加熱するニップを形成する加圧用回転体と、を有する。他の装置形態として、加熱源と、該加熱源を内包しない定着ローラと、その定着ローラと圧接してニップを形成する加圧用回転体と、を有する外部加熱方式、ローラ対方式の装置などがある。
【0003】
これら画像加熱装置は、未定着のトナーによる画像を保持した記録材(以下、用紙と記す)を、定着ベルトまたは定着ローラ、及び加圧用回転体との間に形成されたニップに導入し加熱することで、該トナーを溶融し、用紙に当該画像を定着させる。
【0004】
ところで、このような画像加熱装置で、装置に使用可能な最大幅の用紙よりも幅が小さい小サイズ用紙を連続してニップに導入して加熱させた際に、ニップ内の用紙が接しない領域(非通紙部領域)の温度が上昇する(以下、非通紙部昇温と記す)。これは、ニップ内の用紙が接しない領域においては、定着ベルトや定着ローラからの熱が用紙や用紙上のトナーによって奪われることがないため、ニップの非通紙部の温度が通紙部よりも上昇する現象である。
【0005】
また、非通紙部昇温は、プリンタの処理速度(プロセススピード)が速くなるほど発生しやすい。これは、高速化に伴い用紙がニップを通過する時間が短くなるため、短い時間でトナー像に十分な熱を伝える必要があり、そのために、定着ベルトや定着ローラの温度をさらに高温にするからである。非通紙部の過度な温度上昇は、加圧用回転体の熱による変質、変形を招来することがあり、そのため、各種対策が講じられている。
【0006】
特許文献1では、加圧用回転体の弾性層の炭素繊維により、部材回転軸方向(以下、幅方向と記す)に高熱伝導化することで、非通紙部昇温抑制を図る例を開示している。
【0007】
一方、定着ベルトや定着ローラがトナー画像を加熱定着するのに十分な温度に達するまでの時間(以下、立ち上がり時間と記す)を短くすることも省エネルギー化の観点から求められている。そのため近年、加圧用回転体の弾性層を、空隙を配置した弾性層、即ち、多孔質の弾性層とすることで、低熱容量・低熱伝導率化が行われている。加圧用回転体を低熱容量・低熱伝導率化することで、画像加熱装置の作動開始時に加熱体が加圧用回転体によって奪われる熱量を小さく抑え、加圧用回転体と接触するベルト状の回転体あるいは定着ローラの温度上昇速度を向上させるという発想である。
【0008】
空隙を形成する方法として、以下3つの方法が提案されている。特許文献2では、未架橋シリコーンゴムに発泡剤を混合し、発泡硬化することで空隙を形成している。特許文献3では未架橋シリコーンゴムにあらかじめ中空充填剤を混合することで、成形架橋後に空隙を形成している。特許文献4では、吸水性ポリマーに水を含ませた含水材料を未架橋シリコーンゴムに分散し、架橋時に脱水することで空隙を形成している。
【0009】
また、画像加熱装置に求められる別の観点として、用紙の搬送方向における光沢段差の抑制が求められている。これは定着ニップ通過直後に用紙によって熱が奪われた通紙部分と熱が奪われない紙間部分とに対応する定着部材の表面温度における温度差に起因する課題である。これは、用紙温度と加圧用回転体の表面温度との差が大きい状態、すなわち、加圧用回転体の表面温度が高い状態ほど発生しやすい。また、加圧用回転体の回転方向の温度ムラが大きい状態であるほど発生しやすい。
【0010】
そのため、特許文献5では、加圧用回転体を冷却する冷却手段と、用紙が定着ニップへの進入する前に用紙を加熱する予備加熱手段とを有し、加圧用回転体と用紙との温度差が小さくなるように制御し、光沢段差を抑える例を開示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、画像加熱装置に用いられる加圧回転体に基づいて説明するが、本発明の範囲はこの形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を損ねない範囲で変更されたものも本発明に含まれる。
【0021】
《第1の実施形態》
(1)画像形成部
図1は本発明に従う画像加熱装置を定着装置110として搭載した画像形成装置の一例である電子写真プリンタ100の概略構成を示す縦断面模式図である。まず、画像形成部の概略を説明する。このプリンタ100は、電子写真プロセスを利用して記録材Pにトナー像を転写して、定着装置110で記録材Pにトナー像を熱定着させる。
【0022】
記録材Pは画像形成装置によって画像が形成されるシート状の記録媒体であり、例えば、定型或いは不定型の普通紙、厚紙、薄紙、封筒、葉書、シール、樹脂シート、OHTシート、光沢紙等が含まれる。以下、用紙と記す。また、以下の説明では、便宜上、記録材の扱いを通紙、排紙、給紙、通紙部、非通紙部などの用語を用いて説明するが、記録材は紙に限定されるものではない。
【0023】
プリンタ100は、感光ドラム101の周囲に帯電ローラ102、露光装置103、現像装置104、転写ローラ105、クリーニング装置109を配置している。感光ドラム101は、アルミニウムの円筒基体の外周面に帯電極性が負極性のOPC感光材料を塗布して形成され、矢印R1方向に300mm/secのプロセススピードで回転する。
【0024】
帯電ローラ102は、感光ドラム101に当接して従動回転し、不図示の電源から直流電圧に交流電圧を重畳した振動電圧を印加されることにより、感光ドラム101の表面を一様な負極性の暗部電位VDに帯電させる。露光装置103は、画像データを展開した画像信号に応じてON−OFF変調されたレーザービームを走査して、感光ドラム101の表面に画像の静電像を形成する。露光部分では、レーザービームによって帯電が解除されて暗部電位VDが明部電位VLに低下する。
【0025】
現像装置104は、負極性に帯電させた一成分現像剤を現像スリーブ104aに磁気的に担持させて感光ドラム101との対向部へ搬送する。不図示の電源から現像スリーブ104aに、負極性の直流電圧Vdcに交流電圧を重畳した振動電圧を印加することにより、相対的に正極性となった明部電位VLの部分に負極性に帯電したトナーが付着して静電像が反転現像される。
【0026】
転写ローラ105は、感光ドラム101に圧接して用紙Pを挟持搬送する転写部T1を形成する。不図示の電源から転写ローラ105へ正極性の電圧を印加することにより、負極性に帯電して感光ドラム101に担持されたトナー像が転写部T1を挟持搬送される用紙Pへ転写される。
【0027】
用紙Pは、カセット106から給紙ローラ107によって取り出され、レジストローラ108で待機し、感光ドラム101のトナー像に同期させてレジストローラ108により転写部T1へ給送される。転写部T1でトナー像を転写されて感光ドラム101から分離された用紙Pは、定着装置110へ搬送される。
【0028】
定着装置110は、未定着のトナー像を担持した用紙Pを加熱・加圧して、トナー像を用紙P上に定着して定着画像とする。画像を定着された用紙Pは、排紙ローラ111によって、プリンタ筐体上の排紙トレイ112へ排出・積載される。クリーニング装置109は、感光ドラム101にクリーニングブレードを摺擦させて、転写部T1を通過して感光ドラム101に残留した転写残トナーを除去する。
【0029】
(2)定着装置
図2は本実施の形態における定着装置110の要部の概略構成を示す横断面図である。この定着装置110は、ベルト(フィルム)加熱方式、テンションレスタイプの画像加熱装置であり、以下にその概略構成について説明する。
【0030】
ここで、本例の定着装置110又はその構成部材に関して、正面側とは定着装置110を用紙入口側から見た面、背面側とはその反対側の面(用紙出口側)である。左右とは定着装置110を正面側から見て左(一端側)または右(他端側)である。また、上流側と下流側は用紙搬送方向(記録材搬送方向、記録材進行方向)cに関して上流側と下流側である。長手方向(幅方向)や用紙幅方向とは、用紙搬送路面において、用紙Pの搬送方向cに直交する方向に実質平行な方向である。短手方向とは用紙搬送路面において、用紙Pの搬送方向cに実質平行な方向である。厚み方向とは用紙面に垂直な方向をいう。
【0031】
本例の定着装置110においては、用紙Pの搬送は、用紙幅中心のいわゆる中央基準搬送でなされる。いわゆる片側基準搬送でなされてもよい。以下、装置に使用可能な最大幅の用紙を大サイズ用紙、それよりも幅が小さい用紙を小サイズ用紙と記す。
【0032】
本例の定着装置110は、加熱部材としての加熱ベルトユニット5と、この加熱ベルトユニット5とニップNを構成する画像加熱装置用の加圧回転体としての弾性加圧ローラ4と、を有している。
【0033】
加熱ベルトユニット5において、1は横断面略半円弧状・樋型で、図面に垂直方向を長手方向とする横長のベルトガイド部材である。ガイド部材1は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイト)や液晶ポリマー等の耐熱性樹脂からなる成形品である。
【0034】
2はガイド部材1の下面の略中央に長手方向に沿って形成した溝1a内に収容保持させた横長のヒータ(加熱源:加熱部材を構成する要素の一つ)である。3は可撓性を有するエンドレスベルト(加熱ベルト、エンドレスフィルム)である。ベルト3は、ヒータ2を装着したガイド部材1にルーズに外嵌させた筒状のものである。
【0035】
ヒータ2は、本例においては、セラミック基板上に発熱抵抗体を設けた構成を有するセラミックヒータである。
図2に示すヒータ2は、アルミナ等の横長・薄板状のヒータ基板2aと、その表面側(ベルト摺動面側)に長手に沿って形成具備させた線状あるいは細帯状のAg/Pdなどの通電発熱体(発熱抵抗体)2bと、を有する。また、ヒータ2は、通電発熱体2bを覆って保護するガラス層等の薄い表面保護層2cを有する。
【0036】
そして、ヒータ基板2aの裏面側にサーミスタ等の検温素子2dが接触している。このヒータ2は、制御回路部6で制御される電源部7から通電発熱体2bに対する電力供給により迅速に昇温する。そしてヒータ2の温度に関する情報が検温素子2dから制御回路部6に入力する。制御回路部6は検温素子2dから入力する温度情報に基づいてヒータ2の温度が所定の定着温度(目標温度)に昇温して維持されるように電源部7から通電発熱体2bに対する供給電力を制御する。
【0037】
ベルト3は、熱容量を小さくして装置のクイックスタート性を向上させるために、膜厚を総厚100μm以下、好ましくは20μm以上60μm以下としたベースフィルムの表面に表面層をコーティングした複合層フィルムなどである。
【0038】
ベースフィルムの材料としては、PI(ポリイミド)・PAI(ポリアミドイミド)・PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)・PES(ポリエーテルスルホン)等の樹脂材料や、SUS、Niなどの金属材料が用いられる。
【0039】
表面層の材料としては、PTFEポリテトラフルオロエチレン)・PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル)・FEP(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル)等のフッ素樹脂材料が用いられる。
【0040】
図3は加圧回転体としての弾性加圧ローラ4の俯瞰模型図である。加圧ローラ4は鉄やアルミニウム等からなる基体(芯金)4aと、基体4aの外回り(外周部)に同心一体にローラ状に形成されたシリコーンゴムの混合物を含む弾性層4bと、弾性層4bの外周面に積層されたフッ素樹脂等からなる離型層4cと、を有する。
【0041】
そして、加圧ローラ4は上記の加熱ベルトユニット5のヒータ2の表面保護層2cにベルト3を介して加圧機構(不図示)により所定の加圧力で加圧されている。その加圧力に応じて加圧ローラ4の弾性層4bが弾性変形し、加圧ローラ4の表面とベルト3の表面との間に、用紙搬送方向cに関して、未定着トナー画像Tの加熱定着に必要な所定幅のニップNが形成される。ニップN内でのベルト3と加圧ローラ4の接触時間は一般的には20〜80msec程度である。
【0042】
加圧ローラ4は駆動源Mの駆動力が不図示のギア等の動力伝達機構を介して伝達されて所定の周速度で矢印bの反時計方向に回転駆動される。ベルト3は、画像形成実行時に加圧ローラ4が矢印bの反時計方向に回転駆動されることにより加圧ローラ4の回転に従動して矢印aの時計方向に回転する。
【0043】
加圧ローラ4が回転駆動され、ベルト3が従動回転し、ヒータ2が所定の温度に立ち上げられて温調されている状態において、画像形成部側から未定着のトナー像Tを担持した用紙Pが定着装置110側に搬送され、ニップNに導入される。用紙PはニップNで挟持搬送される過程でヒータ2の熱がベルト3を介して付与される。トナー像Tはヒータ3の熱とニップNの圧力によって用紙Pの面に固着像として溶融定着される。即ち、用紙上(記録材上)のトナー像Tが加熱されて定着される。ニップNを出た用紙Pはベルト3から曲率分離して定着装置110から排出搬送されていく。
【0044】
(3)加圧回転体
上記の加圧回転体4を構成する材料、製造方法等を以下に詳細に説明する。
【0045】
<加圧回転体4の弾性層4b>
加圧回転体である加圧ローラ4を構成している弾性層4bについて説明する。弾性層4bは、加圧ローラ4の回転軸方向(以下、軸方向と記す)、および回転軸の垂直方向(以下、周方向と記す)に高熱伝導率であり、厚み方向には低熱伝導率であることが求められる。本実施の形態では、弾性層4bに針状フィラー4b1(
図6、
図7:細長くとがった形態の充填材、添加材)を軸方向、周方向に配向させることで、厚み方向の熱伝導性を抑えつつ、軸方向、周方向の熱伝導率向上を図った。更に、弾性層4bに空隙4b2(多孔質)を形成して低熱容量化も図った。
【0046】
図4〜
図7を用いて、弾性層4bについてさらに詳しく説明する。
図4は、直径D及び長さLの針状フィラー4b1の拡大斜視図である。針状フィラー4b1は、弾性層4b中で加圧ローラ4の軸方向および周方向に配向して存在している。なお、針状フィラー4b1の物性等については後述する。
【0047】
図5は、
図3の加圧ローラ4の弾性層4bを切り出した切り出しサンプル4bsの拡大斜視図である。切り出しサンプル4bsは、
図3の加圧ローラ4の弾性層4bを、加圧ローラ4の周方向及び長手方向に沿って切り出してある。
【0048】
切り出しサンプル4bsの表面図(a表面)、周方向断面(b断面)および長手方向断面(c断面)を観察すれば、表面図では
図6の(a)に示すように、針状フィラー4b1の長さLの部分が主として観察できる。周方向断面図、長手方向断面図では
図6の(b)と(c)に示すように、針状フィラー4b1の直径Dの断面と、針状フィラー4b1の長さLの部分が主として観察できる。 また、
図6の(a)〜(c)いずれにも、均一に分布した空隙4b2を観察することができる。以上の構成を拡大斜視図で示したのが
図7である。
【0049】
次に、
図2の弾性層4bを特徴的に表現するものとして、ベースポリマー、空隙4b2、針状フィラー4b1が挙げられる。以下順を追って説明する。
【0050】
<ベースポリマー>
弾性層4bのベースポリマーは付加硬化型液状シリコーンゴムを架橋硬化することで得られる。即ち、弾性層4bは付加硬化型シリコーンゴムの混合物を含む。
【0051】
付加硬化型液状シリコーンゴムはビニル基等の不飽和結合を有するオルガノポリシロキサン(A)と、Si−H結合(ヒドリド)を有するオルガノポリシロキサン(B)とを有する未架橋シリコーンゴムである。加熱等によりビニル基等の不飽和結合に対してSi−Hが付加反応することで架橋硬化が進行する。反応を促進する触媒として(A)には白金化合物を含有するのが一般的である。この付加硬化型液状シリコーンゴムは、本発明の目的を損なわない範囲で流動性を調節できる。
【0052】
<空隙4b2>
加圧回転体の弾性層4bの弾性層中には、配向した針状フィラー4b1と空隙4b2とが共存する。そのため、針状フィラー4b1と空隙4b2とが相互に干渉しない状態で配置できることが重要である。
【0053】
本発明者らによる検討の結果、発泡剤による空隙形成(特許文献2)や、中空粒子による空隙形成(特許文献3)等の空隙形成手段によっては空隙形成の際に針状フィラーの配向阻害を起こす場合があった。針状フィラーの配向状態は配向方向の熱伝導率を支配するため配向が阻害されると非通紙部昇温抑制と立ち上がり時間の短縮の効果が低減することとなり好ましくない。
【0054】
一方、吸水性ポリマーに水を含ませた含水材料を用いて空隙を形成(特許文献4)した場合には、共存する針状フィラーの配向阻害を低減できる。これは、針状フィラーと含水材料が分散した未架橋付加硬化型液体シリコーンゴム(以下、この液体を液体組成物と記す)に発現するチクソトロピー性により、液体組成物の流動時に低粘度化するためでないかと想定される。
【0055】
弾性層4bの空隙率は10体積%以上、70体積%以下が好適である。空隙率を上記範囲内とすることによって、立ち上がり時間のより一層の短縮を図ることができる。
【0056】
<針状フィラー4b1>
本発明に用いられる針状フィラーとしては、
図4に示すように、直径Dに対する長さLの比が大きい、すなわちアスペクト比が高い材料が使用できる。フィラー底面の形状は円状でも角状でも構わず、後述した成形方法で配向する材料で有れば適用可能である。
【0057】
このような材料として、ピッチ系炭素繊維(炭素繊維:CF)が挙げられる。熱伝導率λが500W/(m・K)以上であるピッチ系炭素繊維を含有することにより、好適な加圧回転体を提供することができる。更にこのピッチ系炭素繊維が針状であることにより、より好適な加圧回転体となる。
【0058】
針状(棒状)の炭素繊維を配向させると配向した向きに熱移動の経路ができるため熱伝導が良くなる。加圧回転体の弾性層4bの長手方向(回転軸線方向)や周方向(回転方向)と実質平行となるように多数の炭素繊維(の長手方向)を配向させる。これにより、加圧回転体の弾性層4bの長手方向と周方向には熱伝導を多く、厚み方向には熱伝導を少なくすることができる。なお、炭素繊維(の長手方向)の配向方向は、加圧回転体の長手方向や周方向と一致する形態だけでなく、後述する熱伝導率の関係を満たす範囲内において互いに交差する関係となっていても構わない。
【0059】
長手方向の熱伝導が多いことで、後述するように、非通紙部昇温を緩和することができる。また、非通紙部の幅が広いときには昇温部分が広くなり長手方向の熱伝導が不十分になることがある。そこで、周方向の熱伝導を多くすることで、更なる非通紙部昇温の緩和が可能となる。
【0060】
針状のピッチ系炭素繊維は、より具体的な形状として、
図4において直径Dが5μm〜11μmでありかつ長さL(平均長さ)が50μm〜1000μm程度のものが例示でき、工業的に入手容易である。
【0061】
ここで、針状フィラー4b1を弾性層4b中に5〜40体積%含むことが望ましい。針状フィラーの含有量を上記範囲内とすることで、本発明に係る弾性層4bの熱伝導率をより確実に改善することができる。また、針状フィラーの含有による弾性層4bの成形性にも大きな影響を与えにくい。
【0062】
なお、本発明においては、発明の特徴の範囲を超えない限りは、弾性層4b中に、本発明に記載されていないフィラーや充填材や配合剤が、公知の課題の解決手段として含まれていても構わない。
【0063】
<加圧回転体の製造方法>
以下のような製造方法により、非通紙部昇温を抑制しつつ、立ち上がり時間短縮効果および、回転方向の温度ムラ緩和効果を得る加圧回転体を得ることができる。
【0064】
(i)液体組成物配合工程
未架橋付加硬化型液状シリコーンゴムに上記の針状フィラー4b1と吸水性ポリマーに水を含ませた含水材料を配合する。配合は、未架橋付加硬化型液状シリコーンゴムと針状フィラー4b1と含水材料を所定の量を秤量し、遊星式の万能混合攪拌機など、公知のフィラー混合撹拌手段により分散させることが可能である。
【0065】
(ii)液体組成物層形成工程
液体組成物を公知の方法で型注型する。予め公知のプライマー処理を行った基体4aを配置した金型に、液体組成物を基体4aの軸方向、周方向に流動を与えながら注型する。この流動により、針状フィラー4b1が弾性層4bの長手方向、周方向に配向し、この両方向の熱伝導率を効果的に高めることができる。
【0066】
なお、液体組成物を弾性層長手方向、弾性層周方向に流動を与えながら層形成できる方法であれば、特に限定されない。また、この流動は一度に与えてもよいし、多段階に例えば軸方向の流動を与えた後に、周方向の流動を与えてもよい。プライマー処理を行わずに弾性層4bと基体4aが層間接着する場合は、プライマーを用いなくても良い。
【0067】
(iii)シリコーンゴム成分架橋硬化工程
液体組成物が充填されている型を密閉し、水の沸点以下の温度で5分〜120分熱処理し、シリコーンゴム成分を架橋硬化する。熱処理温度としては、60〜90℃が望ましい。密閉下であるので、含水材料中の水分を保持したまま、シリコーンゴム成分を架橋硬化させることができる。
【0068】
シリコーンゴム成分が硬化する前に、水分が蒸発する後述する工程で、空隙がない無発泡の層(以下、スキン層と記す)が形成される。このスキン層は、発泡することで多孔質化した部分よりも、密度が高いので、容積比熱が高く、立ち上がり時間短縮の観点では好ましくない。そのため、この工程は金型を密閉した状態で行うことが望ましい。
【0069】
(iv)脱型工程
金型を適宜、水冷や空冷を行った後、架橋硬化後液体組成物層が積層された基体4aを脱型する。
【0070】
(v)脱水工程
基体4aに積層した液体組成物層を加熱処理により含水材料中の水分を蒸発させて脱水し、空隙4b2を形成する。熱処理条件としては、100℃〜250℃、1〜5時間が望ましい。
【0071】
(vi)離型層4cの積層工程
接着剤を用いて、弾性層4b上に離型層4cであるフッ素樹脂製チューブを被覆し、一体化する。接着剤を用いずに弾性層4bと離型層4cが層間接着する場合は、接着剤を用いなくても良い。なお、離型層4cは工程の最後に形成することは必ずしも必要ではなく、予め金型内部にチューブを配置してから液体組成物を注型する方法によっても離型層を積層できる。また、弾性層4bを形成した後に、離型層4cをフッ素樹脂材のコーティング等の公知の方法によって形成することも可能である。
【0072】
<加圧回転体の弾性層4bの熱伝導率>
ここで、弾性層4bに関して、加圧回転体の回転軸に沿う方向の熱伝導率(軸方向熱伝導率)をλ
MDとする。また、厚み方向の熱伝導率(厚み方向熱伝導率)をλ
NDとする。また、加圧回転体の回転方向の熱伝導率(周方向熱伝導率)をλ
TDとする。そして、軸方向熱伝導率λ
MDと厚み方向熱伝導率λ
NDとの熱伝導率比λ
MD/λ
NDをα1と記す。周方向熱伝導率)λ
TDと厚み方向熱伝導率λ
NDとの熱伝導率比λ
TD/λ
NDをα2と記す。本例では、α1とα2がどちらも6〜900
(6倍以上900倍以下)とするのが好ましい。
【0073】
熱伝導率比α1が6未満だと非通紙部昇温抑制の効果が十分に得られない場合がある。熱伝導率比α2が6未満だと加圧回転体の回転方向の温度ムラが生じ、高品位な画像が得られない場合がある。熱伝導率比α1、α2を、900倍よりも大きくするためには針状フィラー量や空隙が増え、加工成形が困難である。
【0074】
また、厚み方向の熱伝導率λ
NDが0.08W/(m・K)以上0.6W/(m・K)以下であることが好ましい。0.08W/(m・K)より低い厚み方向熱伝導率λ
NDでは加工成形が困難である場合や、空隙の量が多く加熱装置に搭載する加圧回転体としての強度が得られない場合がある。0.6W/(m・K)より高い厚み方向熱伝導率λ
NDでは立ち上がり時間の短縮の効果が十分に得られない場合がある。
【0075】
(4)実施例
本実施例では以下の材料を使用した。基体4aはφ22.8(mm)且つゴム積層部分の幅長さが320mmの鉄製芯金を使用した。含水材料はレオジック250H(東亜合成株式会社製)に水を含水させたものである。レオジック250Hの量は含水材料に対して1wt%で調整した。離型層4cには厚さ50μmの予め内面処理されているPFAフッ素樹脂チューブ(グンゼ株式会社製)を使用した。針状フィラー4b1は以下に示したピッチ系炭素繊維を使用した。
【0076】
<商品名:XN−100−05M(日本グラファイトファイバー(株)製)>
平均繊維直径D:9μm
平均繊維長L:50μm
熱伝導率900W/(m・K)
この針状フィラーを以下、100−05Mと記す。
【0077】
<商品名:XN−100−15M(日本グラファイトファイバー(株)製)>
平均繊維直径V:9μm
平均繊維長L:150μm
熱伝導率900W/(m・K)
この針状フィラーを以下、100−15Mと記す。
【0078】
<商品名:XN−100−01Z(日本グラファイトファイバー(株)製)>
平均繊維直径D:9μm
平均繊維長L:1000μm
熱伝導率900W/(m・K)
この針状フィラーを以下、100−01と記す。
【0079】
なお、本実施例では、弾性層4bと基体4a間、弾性層4bと離型層4c間を以下の材料によって、接着を行っている。
【0080】
弾性層4bと基体4a間の接着には「DY39−051」(商品名、東レ・ダウコーニング株式会社製)のA液およびB液、弾性層4bと離型層4cの接着には「SE1819CV」(商品名、東レ・ダウコーニング株式会社製)のA液およびB液を使用した。
【0081】
本実施例では以下のような工程を経た。液体組成物配合工程では、各種材料を上記したように液体組成物を得た。次いで、万能混合撹拌機により混合し、内部にプライマー処理済みの基体4aを設置したφ30パイプ状筒型に弾性層形成用の液体組成物を注型し、型を密閉した。シリコーンゴム成分の硬化工程では熱風オーブン内90℃、1時間の条件で熱処理を行った。さらに、脱水工程では、予め水冷と脱型を行い、熱風オーブン内200℃、4時間の条件で熱処理を行った。最後に、離型層4cとして、弾性層4b上にPFAフッ素樹脂を上記した接着剤を用いて被覆した。
【0082】
(実施例1)
未架橋付加硬化型液状シリコーンゴムに、針状フィラー「100−01Z」を40体積%、含水材料を40体積%混合し液体組成物を調整した。上記のように、液体組成物を注型し、硬化・脱型・脱水・離型層積層の工程を経て、本実施例1の加圧回転体を得た。
【0083】
(実施例2〜5)
実施例1と同様の方法で、表1に示した処方により、本実施例2〜5の加圧回転体をそれぞれ得た。
【0084】
(比較例1)
上記液体組成物の代わりに、針状フィラーや含水材料を含まずに、弾性層4bが熱伝導率0.6W/(m・K)となるような付加硬化型シリコーンゴムを使用した。製造工程は実施例1と同様な方法で、本比較例1の加圧回転体を得た。なお、本比較例1は、針状フィラーや含水材料を含まずに製造したので、の弾性層4bに針状フィラーや空隙を有していない。
【0085】
(比較例2)
上記液体組成物の代わりに、針状フィラーは含むが含水材料は含まない付加硬化型シリコーンゴムを使用した。製造工程は実施例1と同様な方法で、表1に示した処方の通り、本比較例2の加圧回転体を得た。なお、本比較例2の弾性層4bは、針状フィラーは有しているが、含水材料を含まずに製造したので、空隙は有していない。
【0086】
(比較例3)
実施例1と同様の方法で、液体組成物層形成工程において周方向にのみ流動を与えて、針状フィラーを周方向に配向させた本比較例3の加圧回転体を得た。
【0087】
(比較例4)
実施例1と同様の方法で、液体組成物層形成工程において長手方向にのみ流動を与えて、針状フィラーを長手方向に配向させた本比較例4の加圧回転体を得た。
【0088】
(比較例5)
実施例1と同様な方法で、針状フィラー「100−01」を45体積%、含水材料を10体積%混合した液体組成物を使用した場合では、成形上困難であり、評価に適した本比較例5の加圧回転体を得ることができなかった。
【0089】
(比較例6)
実施例1と同様な方法で、針状フィラー「100−05M」を5体積%、含水材料を80体積%混合した液体組成物を使用した場合では、成形上困難であり、評価に適した本比較例6の加圧回転体を得ることができなかった。
【0090】
(比較例7)
実施例1の液体組成物の代わりに、針状フィラー「100−05M」を2体積%、含水材料を40体積%混合した液体組成物を用い、他の製造工程は実施例1と同様な方法で、表1に示した処方の本比較例7の加圧回転体を得た。
【0091】
(評価方法)
<厚み方向、軸方向、周方向の熱伝導率>
加圧回転体4の弾性層4bの切り出しサンプル4bs−a、4bs−b、4bs−cの熱伝導率測定を以下のように行った。本測定例では、まず厚み方向の熱伝導率測定を行った。
図8を用いて、加圧回転体の弾性層4bの厚み方向、軸方向、周方向の熱伝導率測定について説明する。
図8(a)は、弾性層4bの切り出しサンプル4bsから周方向(設定厚み)×軸方向(設定厚み)×厚み(1.5mm以下)に切り出した厚み方向の熱伝導率測定用試料4bs−aである。
【0092】
この被測定試料に対し、a表面の上下方向からマイクロヒーターとセンサで測定試料で挟み、測定を行う。測定は温度波分析法熱物性測定装置ai−Phase Mobile(株式会社アイフェイズ製)を使用した。
【0093】
軸方向、周方向の熱伝導率の測定の際は、
図8(b)、
図8(c)のように、軸方向の熱伝導率測定用試料4bs−b、周方向の熱伝導率測定用試料4bs−cを用意し、上記と同様の方法で測定した。なお、本測定例では厚み方向、軸方向、周方向の熱伝導測定5回の平均値を用い、軸方向熱伝導率λ
MDと厚み方向熱伝導率λ
NDの比α1(=λ
MD/λ
ND)、および周方向熱伝導率λ
TDと厚み方向熱伝導率λ
NDの比α2(=λ
TD/λ
ND)を算出した。
【0094】
<非通紙部昇温度>
非通紙部昇温評価には、上記方法にて作製した実施例1〜5、比較例1〜4(比較例5,6は成型不可のため不記載)の加圧回転体4をそれぞれ搭載した
図2に記載の上記のベルト加熱方式の定着装置110を使用した。
【0095】
定着装置110に搭載された加圧回転体4の周速度を234mm/secとなるように調整し、ヒータ温度を190℃に設定した。温度15℃、湿度15%の環境下において、キヤノン(株)製のGF−C104:A4サイズの記録材を500枚通紙したときの非通紙部領域(A4縦サイズ紙が通過しない領域)のフィルム3の表面の温度を測定した。この温度測定には株式会社アピステ製 赤外線サーモグラフィFSV−7000Sを用いた。
【0096】
<立ち上がり時間>
立ち上がり時間の評価には、上記の定着装置110に、通紙を行わない空回転状態において、ヒータスイッチが入ってから、ベルト3の表面温度が180℃になるまでの時間を測定した。
【0097】
<光沢段差抑止性能の評価>
光沢段差の評価には、上記の定着装置110で、ベルト3の表面温度が180℃に達した後に未定着トナー像が載ったコート紙(王子製紙製;OKトップコート+157)を通紙して得られた画像の搬送方向の光沢段差を目視で比較した。
【0098】
(評価結果)
実施例1〜5、比較例1〜4における各加圧回転体4の弾性層4bの処方、物性、非通紙部温度、及び立ち上がり時間の評価結果を表1に示した。
【0100】
比較例1では、非通紙部温度が310℃であり、この温度よりも低ければ、非通紙部昇温抑制効果がある。立ち上がり時間は24.1秒であり、この時間を10%短縮した21.7秒よりも短ければ、立ち上がり時間の短縮効果がある。
【0101】
実施例1〜5では、周方向および軸方向に配向した針状フィラーによって、周方向、軸方向の熱伝導率が高く、非通紙部昇温抑制効果があり、また、光沢段差についても特に問題はなかった。また、熱伝導率比α1、α2がともに6以上であり、立ち上がり時間短縮効果もあった。
【0102】
比較例2では、非通紙部昇温抑制効果、光沢段差抑制効果はあるものの、弾性層4bが空隙を含まないため、厚み方向の熱伝導率が0.6W/m・Kよりもはるかに高くなった。そのため、立ち上がり時間が26.1秒となり、立ち上がり時間の短縮効果は認められない。
【0103】
比較例3は、立ち上がり時間短縮効果、光沢段差抑制効果はあるものの、熱伝導率比α1が小さいため、非通紙部昇温抑制効果は認められない。
【0104】
比較例4は、立ち上がり時間短縮効果、非通紙部昇温抑制効果はあるものの、熱伝導率比α2が小さいため、光沢段差抑制効果は認められない。
比較例7は、針状フィラーの配合量が少ないため、熱伝導率比α1、α2が小さく、非通紙部昇温抑制、光沢段差抑制の効果は認められない。
【0105】
以上説明したように、本発明に係る画像加熱装置用の加圧回転体4は、画像Tを担持した記録材Pを挟持搬送しつつ加熱するニップNを加熱部材5と共に形成する、弾性層4bを備える。弾性層4bは長手方向及び周方向の熱伝導率が厚み方向の熱伝導率に対し6倍以上900倍以下となる特性(異方性)を備えている。
【0106】
より具体的には、弾性層4bは針状フィラー4b1を含み、針状フィラー4b1は加圧回転体4の長手方向及び加圧回転体の周方向の熱伝導率が厚み方向の熱伝導率に対し6倍以上900倍以下となるように配向している。
【0107】
これにより、通紙部昇温を抑制しつつ、立ち上がり時間の短縮を実現し、光沢段差の発生がなく安定的に高品位な定着画像を得ることが可能な加圧回転体、及び該加圧回転体を具備する画像加熱装置を提供できる。
【0108】
上記の第1の実施形態における定着装置110において、ヒータ2はセラミックヒータに限られない。ニクロム線ヒータ、電磁誘導発熱部材にすることができる。また、ベルト3に通電発熱層を設けてベルト自体を発熱させる構成にすることもできる。
【0109】
《第2の実施形態》
画像加熱装置110は上述した第1の実施形態の
図2の装置形態に限られない。
図9、
図10、
図11に、それぞれ、他の装置構成例の概略図を示した。
【0110】
(1)
図9の装置は、可撓性を有するエンドレスベルト(加熱ベルト)3Aを複数の支持部材1、8、9間に張りを与えて懸け回して支持させ、モータで駆動される駆動部材としての支持ローラ8により回転駆動させる。
【0111】
そして、ベルト3Aの内側にヒータ支持部材1に支持させた固定のヒータ(加熱源)2をベルト3Aの内面に接触させて配設する。このベルト3Aを介してヒータ2と共にニップNを形成する加圧回転体としての弾性加圧ローラ4を圧接させた装置構成にすることもできる。用紙PはニップNで挟持搬送されて加熱される。
【0112】
ヒータ2はセラミックヒータ、ニクロム線ヒータ、電磁誘導発熱部材にすることができる。また、ベルト3Aに通電発熱層を設けてベルト自体を発熱させる構成にすることもできる。
【0113】
(2)
図10の装置は、繰り出し部10から巻き取り部11に走行移動される可撓性を有する有端のウエブ状のベルト(加熱ベルト)3Bを用いる。そして、繰り出し部10と巻き取り部11との間においてベルト3Bの内側に固定のヒータ支持部材1で支持させた固定のヒータ(加熱源)2をベルト3Bの内面に接触させて配設する。このベルト3Bを介してヒータ2と共にニップNを形成する加圧回転体としての弾性加圧ローラ4を圧接させた装置構成にすることもできる。用紙PはニップNで挟持搬送されて加熱される。
【0114】
(3)
図11の装置は、加熱部材として回転駆動される加熱ローラ(定着ローラ)12を用いたものである。加熱ローラ12はローラ内に配設されたハロゲンヒータ13等の加熱源により内側から加熱されて表面温度が所定の定着温度に温調される。加圧回転体としての弾性加圧ローラ4はこの加熱ローラ12と圧接してニップNを形成する。用紙PはニップNで挟持搬送されて加熱される。
【0115】
加熱ローラ12の加熱源による加熱を加熱ローラ12の外側から行う構成にすることもできる。加熱ローラ12の加熱を電磁誘導加熱する構成、加熱ローラ12に通電発熱層を設けてローラ自体を発熱させる構成にすることもできる。
【0116】
図9から
図11の各装置において、加圧回転体としての加圧ローラ4は第1の実施形態の装置で説明した加圧ローラ4と同様に構成される。また、加圧ローラ4は回転駆動あるいは走行駆動される加熱ベルト3A(
図9)、3B(
図10)、あるいは加熱ローラ12(
図11)に従動して回転する装置構成にすることもできる。加圧ローラ4も加熱する装置構成にすることもできる。
【0117】
《その他の事項》
(1)本発明における加圧回転体4はローラ体の形態に限られず、複数の張架部材間に回転可能に懸回張設される、ベースベルトとその外回りに積層された弾性層を有する全体的に可撓性を有するエンドレスベルト体の形態のものにすることもできる。
【0118】
(2)本発明における画像加熱装置110には、未定着トナー像(顕画剤像、現像剤像)Tを加熱して固着画像として定着又は仮定着する装置の他に、定着されたトナー像を再加熱してつや等の表面性を改質する装置も包含される。
【0119】
(3)画像形成装置の画像形成部は電子写真方式に限られない。静電記録方式や磁気記録方式の画像形成部であってもよい。また、転写方式に限られず、記録材に対して直接方式でトナー像を形成する構成のものであってもよい。
【0120】
(4)実施の形態において定着装置110は、実施例の電子写真プリンタ以外のモノカラーもしくはフルカラーの画像形成装置、複写機、ファクシミリ、プリンタ、これらの複合機等で実施されてもよい。即ち、実施例の定着装置及び電子写真プリンタは、上述した構成部材の組み合わせには限定されず、それぞれの代替部材で一部又は全部を置き換えた別の実施形態で実現してもよい。