【実施例】
【0034】
<3.実施例>
以下、本発明の実施例について説明する。本実施例では、黒色顔料を含有するラジカル硬化型の異方性導電フィルムを作製し、異方性導電フィルムの透過率を測定した。また、異方性導電接フィルムを用いて接続構造体を作製し、接続構造体の導通抵抗、ピール強度、及び遮光特性について評価した。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
異方性導電フィルムの透過率の測定、接続構造体の作製、導通抵抗の測定、ピール強度の測定、及び遮光特性の評価は、次のように行った。
【0036】
[異方性導電フィルムの透過率の測定]
異方性導電接着フィルムの未硬化の状態の透過率について、分光光度計((株)島津製作所製 UV−3600)を用いて測定した。
【0037】
[接続構造体の作製]
図2は、本実施例における接続構造体を示す斜視モデル図である。厚み0.7mmのガラス表面に黒インク(帝国インキ製造社製 GLS−HF919)を5μm厚でコーティングし、その表面をITO(Indium Tin Oxide)コートすることでガラス/黒インク層/ITOとなる評価用ガラス基板51を作製した。また、黒インク層には、1μm〜6μmの大きさで、1mm
2あたり150〜200個となるピンホールを形成した。評価用ガラス基板51は、中間層に黒インク層を有する以外は、公知の評価用ITO(Indium Tin Oxide)コーティングガラス基板(全表面ITOコート、ガラス厚0.7mm)と同様である。この評価用ガラス基板51と、評価用FPC(400μmP、Cu18μmt−Auメッキ、25μmt−Espanex-S基材)52とを、異方性導電フィルム53を用いて接合した。
【0038】
1.5mm幅にスリットされた異方性導電フィルム53を、評価用ガラス基板51に貼り付け、その上にFPC52を仮固定した後、100μm厚の緩衝材(ポリテトラフルオロエチレン)を用い、1.5mm幅のヒートツールにて150℃−4MPa−10secの条件で接合し、接続構造体を作製した。
【0039】
[導通抵抗の測定]
接続構造体について、初期及び60℃/95%/500hrの高温高湿試験後について、接続抵抗を測定した。デジタルマルチメータ(品番:デジタルマルチメータ7555、横河電機社製)を用いて4端子法にて電流1mAを流したときの接続抵抗を測定した。
【0040】
[ピール強度の測定]
接続構造体について、初期及び60℃/95%/500hrの高温高湿試験後について、ピール強度を測定した。評価用FPC52を評価用ガラス基板51から90°方向に剥離する90°剥離試験(JISK6854−1)を行い、ピール強度(N/mm)を測定した。
【0041】
[遮光特性の評価]
接続構造体について、予めピンホールが形成された評価用ガラス基板51側から照明を当て、評価用FPC52側から金属顕微鏡で観察し、1mm
2あたりのピンホールの数が10未満の場合を「◎」、1mm
2あたりのピンホールの数が10以上50未満の場合を「○」、1mm
2あたりのピンホールの数が50以上の場合を「×」と評価した。
【0042】
[トータル判定]
遮光性の評価が「◎」の場合であって、高温高湿試験後の導通抵抗が5.0Ω未満の場合を「A」と評価した。また、遮光性の評価が「◎」の場合であって、高温高湿試験後の導通抵抗が5.0Ω以上10.0未満の場合を「B」と評価した。遮光性の評価が「◎」の場合であって、高温高湿試験後の導通抵抗が10.0Ω以上の場合を「C」と評価した。また、遮光性の評価が「○」の場合であって、高温高湿試験後の導通抵抗が5.0Ω未満の場合を「B」と評価した。また、遮光性の評価が「○」の場合であって、高温高湿試験後の導通抵抗が5.0Ω以上の場合を「C」と評価した。また、遮光性の評価が「×」の場合を「C」と評価した。
【0043】
[実施例1]
膜形成樹脂としてポリエステルウレタン樹脂(品名:UR8200、東洋紡績株式会社製、メチルエチルケトン/トルエン=50/50の混合溶媒にて20質量%に溶解したもの)60質量部、ラジカル重合性樹脂(品名:EB−600、ダイセル・サイテック社製)34質量部、シランカップリング剤(品名:KBM−503、信越化学社製)1質量部、リン酸アクリレート(品名:P−1M、共栄化学社製)1質量部、及び反応開始剤(品名:パーヘキサC、日本油脂社製)4質量部を配合した接着剤中に導電性粒子(品名:AUL705、積水化学工業社製)を粒子密度5000個/mm
2となるよう分散させ、さらに、平均一次粒径60nmのチタン系黒色顔料(品名:12S、三菱マテリアル社製)を12質量部分散させることにより、厚み20μmの異方性導電フィルムを作製した。
【0044】
実施例1の異方性導電フィルムの透過率は、13.4%であった。また、異方性導電フィルムを用いて作製した接続構造体の初期の導通抵抗は2.2Ω、高温高湿試験後の導通抵抗は7.0Ωであった。また、初期のピール強度は6.0N/cm、高温高湿試験後のピール強度は4.1N/cmであった。また、遮光特性の評価は◎であった。よって、トータル判定はBであった。表1にこれらの結果を示す。
【0045】
[実施例2]
平均一次粒径100nmのチタン系黒色顔料(品名:13M−C、三菱マテリアル製)を12質量部分散させた以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製した。
【0046】
実施例2の異方性導電フィルムの透過率は、13.3%であった。また、異方性導電フィルムを用いて作製した接続構造体の初期の導通抵抗は2.0Ω、高温高湿試験後の導通抵抗は5.5Ωであった。また、初期のピール強度は6.1N/cm、高温高湿試験後のピール強度は4.0N/cmであった。また、遮光特性の評価は◎であった。よって、トータル判定はBであった。表1にこれらの結果を示す。
【0047】
[実施例3]
平均一次粒径800nmのチタン系黒色顔料(品名:Tilack D、赤穂化成社製)を12質量部分散させた以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製した。
【0048】
実施例3の異方性導電フィルムの透過率は、13.8%であった。また、異方性導電フィルムを用いて作製した接続構造体の初期の導通抵抗は1.8Ω、高温高湿試験後の導通抵抗は3.2Ωであった。また、初期のピール強度は6.0N/cm、高温高湿試験後のピール強度は4.3N/cmであった。
【0049】
また、
図3は、実施例3の異方性導電フィルム用いて作製した接続構造体について、、予めピンホールが形成された評価用ガラス基板側から照明を当て、評価用FPC側から金属顕微鏡で観察した写真である。ピンホールは観察されず、遮光特性の評価は◎であった。よって、トータル判定はAであった。表1にこれらの結果を示す。
【0050】
[比較例1]
黒色顔料を分散させなかった以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製した。
【0051】
比較例1の異方性導電フィルムの透過率は、84.6%であった。また、異方性導電フィルムを用いて作製した接続構造体の初期の導通抵抗は1.8Ω、高温高湿試験後の導通抵抗は3.0Ωであった。また、初期のピール強度は5.8N/cm、高温高湿試験後のピール強度は4.0N/cmであった。
【0052】
また、
図4は、比較例1の異方性導電フィルム用いて作製した接続構造体について、予めピンホールが形成された評価用ガラス基板側から照明を当て、評価用FPC側から金属顕微鏡で観察した写真である。ピンホールが観察され、遮光特性の評価は×であった。よって、トータル判定はCであった。表1にこれらの結果を示す。
【0053】
[比較例2]
平均一次粒径800nmのチタン系黒色顔料(品名:Tilack D、赤穂化成社製)を1質量部分散させた以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製した。
【0054】
比較例2の異方性導電フィルムの透過率は、67.4%であった。また、異方性導電フィルムを用いて作製した接続構造体の初期の導通抵抗は1.8Ω、高温高湿試験後の導通抵抗は3.2Ωであった。また、初期のピール強度は5.9N/cm、高温高湿試験後のピール強度は4.0N/cmであった。また、遮光特性の評価は×であった。よって、トータル判定はCであった。表1にこれらの結果を示す。
【0055】
[実施例4]
平均一次粒径800nmのチタン系黒色顔料(品名:Tilack D、赤穂化成社製)を2質量部分散させた以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製した。
【0056】
実施例4の異方性導電フィルムの透過率は、50.3%であった。また、異方性導電フィルムを用いて作製した接続構造体の初期の導通抵抗は1.8Ω、高温高湿試験後の導通抵抗は3.0Ωであった。また、初期のピール強度は6.0N/cm、高温高湿試験後のピール強度は4.2N/cmであった。また、遮光特性の評価は○であった。よって、トータル判定はBであった。表1にこれらの結果を示す。
【0057】
[実施例5]
平均一次粒径800nmのチタン系黒色顔料(品名:Tilack D、赤穂化成社製)を5質量部分散させた以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製した。
【0058】
実施例5の異方性導電フィルムの透過率は、17.9%であった。また、異方性導電フィルムを用いて作製した接続構造体の初期の導通抵抗は1.8Ω、高温高湿試験後の導通抵抗は3.1Ωであった。また、初期のピール強度は6.1N/cm、高温高湿試験後のピール強度は4.0N/cmであった。また、遮光特性の評価は◎であった。よって、トータル判定はAであった。表1にこれらの結果を示す。
【0059】
[実施例6]
平均一次粒径800nmのチタン系黒色顔料(品名:Tilack D、赤穂化成社製)を36質量部分散させた以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製した。
【0060】
実施例6の異方性導電フィルムの透過率は、11.2%であった。また、異方性導電フィルムを用いて作製した接続構造体の初期の導通抵抗は2.3Ω、高温高湿試験後の導通抵抗は7.9Ωであった。また、初期のピール強度は6.3N/cm、高温高湿試験後のピール強度は4.1N/cmであった。また、遮光特性の評価は◎であった。よって、トータル判定はBであった。表1にこれらの結果を示す。
【0061】
[比較例3]
平均一次粒径800nmのチタン系黒色顔料(品名:Tilack D、赤穂化成社製)を48質量部分散させた以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製した。
【0062】
比較例3の異方性導電フィルムの透過率は、10.7%であった。また、異方性導電フィルムを用いて作製した接続構造体の初期の導通抵抗は2.5Ω、高温高湿試験後の導通抵抗は11.3Ωであった。また、初期のピール強度は6.5N/cm、高温高湿試験後のピール強度は4.2N/cmであった。また、遮光特性の評価は◎であった。よって、トータル判定はCであった。表1にこれらの結果を示す。
【0063】
[比較例4]
黒色顔料として平均一次粒径15nmのカーボンブラック(品名:#2350、三菱化学製)を12質量部分散させた以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムを作製した。
【0064】
比較例4の異方性導電フィルムの透過率は、12.0%であった。また、異方性導電フィルムを用いて作製した接続構造体の初期の導通抵抗は5.2Ω、高温高湿試験後の導通抵抗は10.6Ωであった。また、初期のピール強度は1.5N/cm、高温高湿試験後のピール強度は0.5N/cmであった。また、遮光特性の評価は◎であった。よって、トータル判定はCであった。表1にこれらの結果を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示すように、黒色顔料を適量配合することにより、ピンホールからの光漏れを防止する修復機能を付与することができ、また、加飾部の意匠性を維持することができることが分かった。実施例1〜6に示すように、チタン系黒色顔料を用いる場合、平均一次粒径が60nm以上800nm以下のものを、接着剤成分100質量部に対して2〜40質量部配合することにより、導通抵抗、ピール強度、及び遮光特性に優れた接続構造体が得られることが分かった。なお、比較例4に示すように、カーボンブラックは、ラジカル補足性を有し、硬化阻害の要因となるため、ラジカル硬化型の異方性導電フィルムの場合、カーボンブラック以外の黒色顔料を用いる必要がある。