(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238668
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 8/10 20060101AFI20171120BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20171120BHJP
【FI】
F21S8/10 170
F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-203597(P2013-203597)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-69860(P2015-69860A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一
(72)【発明者】
【氏名】駒野 健二
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 啓輔
【審査官】
鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−018517(JP,A)
【文献】
特開2011−187318(JP,A)
【文献】
特開2011−134524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの開口部周縁に形成されたレンズ取付溝に、アウタレンズの外周縁に突設されたレンズ取付脚を挿入して接着剤によって接着することによって該アウタレンズを前記ハウジングに取り付け、これらのハウジングとアウタレンズによって画成される灯室内に、少なくともLEDと、該LEDから出射する光を反射させるリフレクタを収容して構成される車両用灯具において、
前記アウタレンズの外周縁部を前記リフレクタよりも径方向外側まで延設し、その延設部の表面を凸曲面とするとともに、その凸曲面形状を、前記LEDから出射して前記リフレクタで反射した反射光が当該凸曲面で全反射して前記レンズ取付脚へ入射する形状とし、
前記延設部の裏面における前記レンズ取付脚外側側面および前記レンズ取付脚の外側の周縁にシボ加工を施したことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記アウタレンズの凸曲面の前記反射光が全反射する点における接線と左右の直線との成す角度αを25°以下に設定するとともに、同凸曲面の前記反射光が全反射する点における法線と前記反射光との成す角度βを40°以上に設定したことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記レンズ取付溝は、車両前方に向かって開口し、
前記レンズ取付脚は、車両後方に向かって突出するリブ状に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォグランプなどの車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の前部左右に配置されるフォグランプなどの車両用灯具は、ハウジングとその開口部を覆うアウタレンズによって画成される灯室内に、少なくとも光源と、該光源から出射される光を車両前方へと反射させるリフレクタを収容して構成されている。斯かる車両用灯具においては、アウタレンズは、その周縁がハウジングの開口部周縁に
図7に示す構造によって止着されている。
【0003】
すなわち、
図7は従来の車両用灯具におけるアウタレンズのハウジングへの止着部を示す部分断面図であり、同図に示すように、ハウジング102の開口部周縁にはアウタレンズ103側(
図7の上方)に向かって開口するレンズ取付溝102aが形成され、アウタレンズ103の外周縁近傍にはハウジング102側(
図7の下方)に向かうレンズ取付脚103aがアウタレンズ103のレンズ面と略直交するように突設されている。
【0004】
而して、アウタレンズ103をハウジング102に止着するには、加熱によって溶融状態にあるホットメルトなどの接着剤109をハウジング102のレンズ取付溝102aに注入した後、アウタレンズ103のレンズ取付脚103aをハウジング102のレンズ取付溝102aに挿入する。そして、その状態から接着剤109が冷却されて固化することによって、アウタレンズ103の外周縁近傍がハウジング102の開口部周縁に止着される。
【0005】
ところが、上記止着構造によってアウタレンズ103をハウジング102に止着する従来の車両用灯具においては、アウタレンズ103に一体に突設された透明なレンズ取付脚103aの先端部が接着剤109やハウジング102などの不透明部材に接しているため、当該車両用灯具を正面から見たときにアウタレンズ103のレンズ取付脚103aの部分が黒縁状に暗く見え、全体の美観が損なわれるという問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1には、
図8に示す車両用灯具が提案されている。
【0007】
すなわち、
図8は特許文献1において提案された車両用灯具要部の平断面図であり、図示の車両用灯具201においては、レンズ取付脚203aがアウタレンズ203の最外周位置に設けられ、該レンズ取付脚203aのレンズ面を起点としてハウジング202に至るまでの適宜な範囲に、アウタレンズ103の内側に向かって湾曲する導光部203bが設けられるとともに、該導光部203bのハウジング202側先端の内側部分に、前記導光部203bに光を導入する採光部203cが設けられている。そして、ハウジング202には、光源205からの光と外光を反射させてレンズ取付脚203aの前記採光部203cに向かわせる反射面202bが設けられている。
【0008】
斯かる車両用灯具201によれば、光源205からの光と外光がハウジング202の反射面202bで反射した反射光が採光部203cからレンズ取付脚203a内に導入され、この光が導光部203bを導光してアウタレンズ203のレンズ面から外部へと出射するため、アウタレンズ203のレンズ面に暗部が生じることがなく、車両用灯具201全体の美観が損なわれることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−260108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1において提案された
図8に示す車両用灯具201においては、ハウジング202からの反射光を利用するため、ハウジング202に反射面202bを形成する必要があり、ハウジング202の形状が複雑化するという問題がある。また、アウタレンズ203のレンズ取付脚203aには、ハウジング202の反射面202bで反射した反射光を取り入れるための採光部203cと、該採光部203cから取り入れた光を導光させるための導光部203bを形成する必要があるため、レンズ取付脚203aの形状も複雑化するという問題がある。
【0011】
さらに、特許文献1において提案された車両用灯具201においては、光源205が電球である場合には、電球から光が全方位に出射するため、光源205から横方向に出射する光の強度は強いためにレンズ取付脚203aは光るが、光源205が指向性の高い光を出射するLED(発光ダイオード)である場合には、横方向への光の強度は弱いためにレンズ取付脚203aを光らせる効果が期待できないという問題がある。なお、横方向の光の強度を高めるために別光源を使用する例もあるが、別光源を使用するとコストアップを免れないという問題がある。
【0012】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、光源がLEDである場合であっても、簡単な構成でアウタレンズのレンズ取付脚部分を光らせて美観を高めることができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングの開口部周縁に形成されたレンズ取付溝に、アウタレンズの外周縁に突設されたレンズ取付脚を挿入して接着剤によって接着することによって該アウタレンズを前記ハウジングに取り付け、これらのハウジングとアウタレンズによって画成される灯室内に、少なくともLEDと、該LEDから出射する光を反射させるリフレクタを収容して構成される車両用灯具において、
前記アウタレンズの外周縁部を前記リフレクタよりも径方向外側まで延設し、その延設部の表面を凸曲面とするとともに、その凸曲面形状を、前記LEDから出射して前記リフレクタで反射した反射光が当該凸曲面で全反射して前記レンズ取付脚へ
入射する形状とし
、
前記延設部の裏面における前記レンズ取付脚外側側面および前記レンズ取付脚の外側の周縁にシボ加工を施したことを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記アウタレンズの凸曲面の前記反射光が全反射する点における接線と左右の直線との成す角度αを25°以下に設定するとともに、同凸曲面の前記反射光が全反射する点における法線と前記反射光との成す角度βを40°以上に設定したことを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、
前記レンズ取付溝は、車両前方に向かって開口し、
前記レンズ取付脚は、車両後方に向かって突出するリブ状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、LEDから出射してリフレクタで反射した反射光
がアウタレンズ表面(レンズ面)で全反射
して該アウタレンズのレンズ取付脚へと
入射するようにしたため、レンズ取付脚が反射光によって光り、光源がLEDであっても、車両用灯具を正面から見たときにアウタレンズのレンズ取付脚の部分が黒縁状に暗く見えて全体の美観が損なわれるという不具合の発生が防がれる。
そして、アウタレンズの延設部の裏面におけるレンズ取付脚外側側面とレンズ取付脚外側の周縁にシボ加工を施したため、それらから出射する光が拡散して均一化されるため、車両用灯具の美観が一層高められる。
【0017】
また、アウタレンズのリフレクタよりも径方向外方に
延出する延設部の表面を凸曲面とし、その凸曲面の形状を所定の条件(具体的には、凸曲面の表面の反射光が全反射する点における接線と左右の直線との成す角度αを25°以下、同凸曲面の反射光が全反射する点における法線と反射光との成す角度βを40°以上に設定すること)を満たすようにすればよく、ハウジングやアウタレンズに大きな形状変化を伴う特別な加工を施す必要がないため、簡単な構成で前記効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】本発明に係る車両用灯具のアウタレンズを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明に係る車両用灯具のアウタレンズとエクステンションを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図7】従来の車両用灯具におけるアウタレンズのハウジングへの止着部を示す部分断面図である。
【
図8】特許文献1において提案された車両用灯具要部の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係る車両用灯具の正面図、
図2は
図1のA−A線断面図、
図3は
図1のB−B線断面図、
図4は
図3のC部拡大詳細図、
図5は本発明に係る車両用灯具のアウタレンズを取り外した状態を示す斜視図、
図6は同車両用灯具のアウタレンズとエクステンションを取り外した状態を示す斜視図である。
【0021】
本実施の形態に係る車両用灯具1は、車両の前部左右に配置されるフォグランプであって、
図2及び
図3に示すように、ハウジング2とその前面開口部を覆うアウタレンズ3によって画成される灯室4内に、横方向(
図3の左右方向)に並設された光源である複数(図示例では、6つ)のLED5と、これらのLED5を実装する平板状の基板6と、前記各LED5から出射する光を車両前方(
図2の左方)へと反射させるリフレクタ7と、該リフレクタ7の周囲を覆うエクステンション8などを収容して構成されている。
【0022】
前記ハウジング2は、不透明樹脂によってボックス状に一体成形されており、その円形リング状の開口部周縁には、
図4に詳細に示すように、前記エクステンション8の外周縁との間に、車両前方に向かって開口するレンズ取付溝2aが全周に亘って形成されている。
【0023】
前記アウタレンズ3は、ポリカーボネイトなどの透明樹脂によって円弧曲面状に一体成形されており、その外周縁には、車両後方に向かって突出するリブ状のレンズ取付脚3aが全周に亘って一体に形成されている。このアウタレンズ3をハウジング2に止着するには、ハウジング2の開口部周縁にエクステンション8の外周縁との間に形成されたレンズ取付溝2aに、加熱によって溶融状態にあるホットメルトなどの接着剤9を注入した後、アウタレンズ3のレンズ取付脚3aをハウジング2のレンズ取付溝2aに挿入する。そして、その状態から接着剤9が冷却されて固化することによって、アウタレンズ3の外周縁近傍がハウジング2の開口部周縁に止着され、該アウタレンズ3とハウジング2との間に、密閉された前記灯室4が画成される。
【0024】
複数の前記LED5を実装した前記基板6は、ハウジング2の上部に固定された基板ホルダ10の下面に取り付けられており、この基板6の下方に前記リフレクタ7が配設されている。ここで、リフレクタ7は、不透明樹脂によって前方と上方が開口する矩形ボックス状に一体成形されており、左右の側壁7aによって囲まれた主反射部7bは、後方に向かって斜め上方に立ち上がる楕円曲面として構成されている。そして、リフレクタ7の内面は反射面を構成しており、この反射面には反射率を高めるためのアルミ蒸着等の処理が施されている。
【0025】
前記エクステンション8は、不透明樹脂によって一体成形されており、前記灯室4内のアウタレンズ3の内側に該アウタレンズ3の内面に沿うように配置されている。そして、このエクステンション8の下半部には、前記リフレクタ7によって反射して車両前方へと向かう反射光を通すための開口部8aが形成されており、この開口部8aの上方の部分8bは、前記基板ホルダ10やLED5、基板6等を前方から覆うルーバー状の遮蔽部を構成している。
【0026】
以上のように構成された車両用灯具1において、バッテリなどの不図示の電源から各LED5に電流が供給されると、各LED5が発光し、その光は、リフレクタ7によって車両前方へと反射し、アウタレンズ3を通過して車両前方へと出射する。
【0027】
ところで、本実施の形態に係る車両用灯具1においては、
図3に示すように、アウタレンズ3の外周縁部(図示のZ領域)がリフレクタ7よりも径方向外側まで延設されて延設部3Aが形成されており、この延設部3Aの表面(レンズ面)は、
図4に詳細に示すように凸曲面とされている。そして、延設部3Aの表面(レンズ面)の凸曲面形状は、
図3に示すように、LED5から出射してリフレクタ7の側壁7aの内面(反射面)で反射した光が
図4に詳細に示すように当該凸曲面で全反射してアウタレンズ3のレンズ取付脚3aへと向かうような形状とされている。具体的には、
図4に示すように、アウタレンズ3の延設部3Aの凸曲面の反射光Lが全反射する点pにおける接線Tと左右の直線Dとの成す角度αが25°以下(本実施の形態では、22°)に設定されるとともに、同凸曲面の点pにおける法線Nと反射光Lとの成す角度βが40°以上(本実施の形態では、56°)に設定されている。また、本実施の形態では、アウタレンズ3のレンズ取付脚3aとその周縁の表面(
図4のE面)にはシボ加工が施されている。
【0028】
而して、本実施の形態に係る車両用灯具1によれば、
図3に示すように、LED5から出射してリフレクタ7の側壁7aの内面(反射面)で反射した反射光Lを
図4に詳細に示すようにアウタレンズ3の延設部3Aの表面(レンズ面)で全反射させて該アウタレンズ3のレンズ取付脚3aへと向かわせるようにしたため、レンズ取付脚3aとその周縁が反射光Lによって光り、光源がLED5であっても、車両用灯具1を正面から見たときにアウタレンズ3のレンズ取付脚3aの部分が黒縁状に暗く見えて全体の美観が損なわれるという不具合の発生が防がれる。
【0029】
そして、アウタレンズ3のリフレクタ7よりも径方向外方に延設された延設部3Aの表面を凸曲面とし、その凸曲面の形状を所定の条件(具体的には、凸曲面の表面の反射光Lが全反射する点pにおける接線Tと左右の直線Dとの成す角度αを25°以下、同凸曲面の点pにおける法線Nと反射光Lとの成す角度βを40°以上に設定すること)を満たすようにすればよく、ハウジング2やアウタレンズ3に大きな形状変化を伴う特別な加工を施す必要がないため、簡単な構成で前記効果を得ることができる。
【0030】
また、本実施の形態では、アウタレンズ3のレンズ取付脚3aとその周縁の表面(
図4に示すE面)にシボ加工を施したため、それらの表面から出射する光が拡散して均一化され、このことによって車両用灯具1の美観が一層高められるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0031】
1 車両用灯具
2 ハウジング
2a ハウジングのレンズ取付溝
3 アウタレンズ
3A アウタレンズの延設部
3a アウタレンズのレンズ取付脚
4 灯室
5 LED
6 基板
7 リフレクタ
7a リフレクタの側壁
7b リフレクタの主反射部
8 エクステンション
8a エクステンションの開口部
8b エクステンションの遮蔽部
9 接着剤
10 基板ホルダ
L 反射光