特許第6238670号(P6238670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6238670-有機層含有全固体型太陽電池 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238670
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】有機層含有全固体型太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20171120BHJP
   H01L 51/48 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01L31/04 112B
   H01L31/04 182Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-207319(P2013-207319)
(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公開番号】特開2015-72981(P2015-72981A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 享平
(72)【発明者】
【氏名】西野 仁
(72)【発明者】
【氏名】白井 肇
(72)【発明者】
【氏名】上野 啓司
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−173082(JP,A)
【文献】 特開2011−159848(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0161596(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0230942(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−10/40、30/00−99/00
Science Direct
IEEE Xplore
Scitation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p型半導体層及びn型結晶シリコン層を備える全固体型太陽電池において、
該p型半導体層がp型有機半導体高分子を含み、
該p型半導体層と該n型結晶シリコン層との間に強誘電体層を有し、且つ
該強誘電体層が、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体、及びテトラチアフルバレン-p-クロラニルからなる群より選択される少なくとも1種を含有する
全固体型太陽電池。
【請求項2】
前記強誘電体層がポーリング処理されたものである、請求項1に記載の全固体型太陽電池。
【請求項3】
前記強誘電体層がフッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体を含有する、請求項1又は2に記載の全固体型太陽電池。
【請求項4】
前記p型有機半導体高分子がポリ(3,4−エチレン−ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルフォネートである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の全固体型太陽電池。
【請求項5】
n型結晶シリコン層上に強誘電体層を設ける工程、及び
強誘電体層上にp型有機半導体高分子を含むp型半導体層を設ける工程
を含み、
該強誘電体層が、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体、及びテトラチアフルバレン-p-クロラニルからなる群より選択される少なくとも1種を含有する
請求項1〜のいずれか一項に記載の全固体型太陽電池の製造方法。
【請求項6】
さらに前記強誘電体層に対して垂直な方向に、50〜200℃において外部電場を印加する工程を含む、請求項に記載の全固体型太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機層含有全固体型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、環境にやさしい発電デバイスとして注目されており、pn接合を利用したシリコン系半導体を中心に開発が進んできた。しかしながら、シリコン系半導体はその製造工程において、ドライプロセスを要するため、設備投資に多大なコストを要する点が指摘されている。
【0003】
より低コストの太陽電池の開発が待たれる中、近年では、ドライプロセスを必要としない、塗布型の太陽電池が提案され、有機系材料を中心として、色素増感太陽電池や有機太陽電池の開発が進められている。そのなかでも、特に、有機太陽電池は電解液を用いない太陽電池であるため、次世代の太陽電池として注目されている。
【0004】
有機太陽電池では、A.J.Heeger等が、ポリチオフェン系導電性高分子(ポリ(3−ヘキシルチオフェン);P3HT)と、フラーレン誘導体([6,6]−フェニル−C61 酪酸メチルエステル;PCBM)の混合溶液をキャストすることでバルクへテロジャンクションによる有機系太陽電池の開発を報告している(非特許文献1)。現在では光吸収層にP3HT、ホール輸送層にPEDOT:PSS(ポリ−(3,4−エチレン−ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルフォネート)を用いたものが広く知られている(非特許文献2及び3)。
【0005】
しかしながら、有機太陽電池では、シリコン系半導体を用いた太陽電池と比較して、変換効率が一般的に低く、一層の変換効率向上が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】N.S.Sariciftci, L.Smilowitz, A.J.Heeger, and F.Wudl, Science, 258, 1474(1992).
【非特許文献2】J.Y.Kim, K.Lee, N.E.Coates, D.Moses, T.−Q.Nguyen, M.Dante, A.J.Heeger, Science, 317, 222(2007).
【非特許文献3】T.Ino, M.Ono, N.Miyaguchi, Q.Liu, Z.Tang, R.Ishikawa, K.Ueno, and H.Shirai, Jpn. J. Appl. Phys. 51(2012).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、変換効率をより向上した全固体型の太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、p型有機半導体高分子を含有するp型半導体層とn型半導体層(n型シリコンウェハー等)の間に強誘電体層(ポリフッ化ビニリデン−トリフルオロエチレンポリマー等)を挿入することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記全固体型太陽電池及びその製造方法に関する。
【0010】
項1.p型半導体層及びn型半導体層を備える全固体型太陽電池において、該p型半導体層がp型有機半導体高分子を含み、該p型半導体層と該n型半導体層との間に強誘電体層を有する、全固体型太陽電池。
【0011】
項2.前記強誘電体層がポーリング処理されたものである、前記項1に記載の全固体型太陽電池。
【0012】
項3.前記強誘電体層がフッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンの共重合体を含有する、前記項1又は2に記載の全固体型太陽電池。
【0013】
項4.前記p型有機半導体高分子がポリ(3,4−エチレン−ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルフォネートである、前記項1〜3のいずれか一項に記載の全固体型太陽電池。
【0014】
項5.前記n型半導体層がn型シリコンからなる、前記項1〜4のいずれか一項に記載の全固体型太陽電池。
【0015】
項6.n型半導体層上に強誘電体層を設ける工程、及び
強誘電体層上にp型有機半導体高分子を含むp型半導体層を設ける工程
を含む、前記項1〜5のいずれか一項に記載の全固体型太陽電池の製造方法。
【0016】
項7.さらに前記強誘電体層に対して垂直な方向に、50〜200℃において外部電場を印加する工程を含む、前記項6に記載の全固体型太陽電池の製造方法。
【0017】
以下、本発明の全固体型太陽電池について詳細に説明する。
【0018】
本発明の全固体型太陽電池は、(1)p型有機半導体高分子を含むp型半導体層、(2)強誘電体層、及び(3)n型半導体層を備える。
【0019】
(1)p型半導体層
本発明では、上記のとおり、p型半導体層はp型有機半導体高分子を含む。p型半導体層は、単層でも複層でもよい。複層の場合は、各層全てがp型有機半導体高分子を含む層であってもよいし、少なくとも1層がp型有機半導体高分子を含む層であってもよい。
【0020】
(1.1)p型有機半導体高分子
本発明で用いるp型有機半導体高分子としては、特に限定されるわけではないが、例えば、ポリ(3,4−エチレン−ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルフォネート (PEDOT:PSS)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン) (P3HT)、ポリ(3−オクチルチオフェン) (P3OT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’−7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9’−スピロビフルオレン (spiro−MeO−TAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;トリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0021】
これらのp型有機半導体高分子の中でも、変換効率の観点から、ポリ(3,4−エチレン−ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルフォネート (PEDOT:PSS)が特に好ましい。
【0022】
なお、ポリ(3,4−エチレン−ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルフォネート (PEDOT:PSS)は、導電性高分子であるポリ(3,4−エチレン−ジオキシチオフェン) (PEDOT)と水溶性高分子であるポリスチレンスルフォネート (PSS)とを混合した化合物であり、例えば、以下の構造:
【0023】
【化1】
【0024】
[式中、nは1以上の整数である。]
を有する化合物である。PEDOT:PSSは、市販のものを用いても、公知の方法により別途製造したものを用いてもよい。市販のPEDOT:PSSとしては、例えばSigma−Aldrich社製のPEDOT:PSS等が挙げられる。
【0025】
p型半導体層には、上記p型有機半導体高分子以外にも、セレン、ヨウ化銅(CuI)等のヨウ化物、層状コバルト酸化物等のコバルト錯体、CuSCN、MoO、NiO等を含ませてもよい。層状コバルト酸化物としては、ACoO(A=Li、Na、K、Ca、Sr、Ba;0≦X≦1)等が挙げられる。
【0026】
p型半導体層の厚みは、特に制限されないが、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜0.5μmが特に好ましい。複層の場合、p型半導体層の厚みは、総厚みを上記した範囲内とすることが好ましい。p型半導体層の厚みを上記範囲内とすることにより、より均質な膜が得られるとともに、キャリアの失活がより制限され、より高い変換効率が得られる。
【0027】
(1.2)p型半導体層の形成方法
次に、p型半導体層の形成方法について、説明する。
【0028】
前記p型半導体層の形成方法は特に制限されないが、p型有機半導体高分子を含む溶液を用いた湿式方法により形成することができる。
【0029】
前記p型有機半導体高分子の溶液としては、前記p型有機半導体高分子を溶媒に溶解又は懸濁させたものを使用することができる。これらの溶媒には、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、特に制限されず、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤のいずれも使用することができるが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。特に、フッ素系ノニオン系界面活性剤が好ましく、中でも好ましい界面活性剤は、デュポン社製のZonyl(登録商標)FSN、Zonyl(登録商標)FSN−100、FS−300等が挙げられる。
【0030】
界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、より均質な混合物を得つつ、電気特性及び変換効率を維持できる観点から、p型有機半導体高分子100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.05〜1重量部がより好ましい。
【0031】
使用する溶媒は、抵抗を低減し、短絡電流密度を向上させて変換効率を向上させることができる観点から、極性溶媒が好ましく、アルコール類がより好ましい。なお、極性溶媒の中でも、アルコール類はグリコール類よりも向上効果が優れているが、アルコール類とグリコール類との混合溶媒を使用すると、開放電圧及びフィルファクターも向上させ、アルコール類単独と比較してさらに変換効率を向上させることができる。特に、メタノールとエチレングリコールとの混合溶媒が最も好ましい。
【0032】
なお、アルコール類としては、メタノール、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール等が挙げられ、グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0033】
溶媒としてアルコール類とグリコール類との混合溶媒を使用する場合、その混合比率はアルコール類100重量部に対して、グリコール類3〜30重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。この範囲とすることにより、より優れた変換効率が得られる。
【0034】
また、湿式法を行う際の溶液には、最終的に得ようとするp型半導体層に応じて、セレン、ヨウ化銅(CuI)等のヨウ化物、層状コバルト酸化物等のコバルト錯体、CuSCN、MoO、NiO、有機ホール輸送材等を含ませてもよい。層状コバルト酸化物の具体例は上記したものを用いればよい。
【0035】
ここでは、p型半導体層の製造方法について一例を示したが、これに限定されることはなく、様々な組成及び条件で作製することができる。
【0036】
(2)強誘電体層
本発明では、上記のとおり、p型半導体層とn型半導体層との間に強誘電体を含む強誘電体層を備える。特に、p型半導体層と接するように強誘電体層を備えることが好ましい。
【0037】
強誘電体層の厚みは、特に制限されないが、0.3nm〜1μmが好ましく、0.3nm〜30nmが特に好ましい。
【0038】
(2.1)強誘電体
上記強誘電体は、例えば、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体、テトラチアフルバレン-p-クロラニル等が挙げられる。これらの中でも、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体が、強誘電体の双極子モーメントの大きさや汎用性の観点より好ましい。
【0039】
フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体における両者の比は、強誘電体としての特性を発現させる観点より、フッ化ビニリデン:トリフルオロエチレンの重量比で8:2〜5:5であることが好ましく、8:2〜7:3であることが特に好ましい。フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体としては、Mw(重量平均分子量)が40000〜90000程度、好ましくは60000〜80000程度の共重合体を用いることができる。また、Mn(数平均分子量)としては、26000〜60000程度、好ましくは35000〜50000程度の共重合体を用いることができる。Mw及びMnは、例えば、GPC測定によって求めることができる。
【0040】
(2.2)ポーリング処理
強誘電体層は、ポーリング処理を行うことで光電変換効率をより向上させることができる。ポーリング処理は、強誘電体層を形成した後であればどの段階で行ってもよいが、操作の簡便性の観点より、全固体型太陽電池を作製した後に行うことが好ましい。
【0041】
ポーリング処理の方法としては、強誘電体層に対して垂直の方向に外部電場を印加することで行うことができる。外部電場の印加は、強誘電体層のp型半導体層側にマイナス極、n型半導体層側にプラス極として印加することが好ましい。印加する外部電場は特に限定されないが、通常20〜100MV/cm程度、好ましくは40〜60MV/cm程度である。外部電場の印加時間は、特に限定されないが、通常15〜120分程度、好ましくは15〜45分程度である。外部電場を印加する際の温度は、特に限定されないが、通常50〜200℃程度、好ましくは70〜120℃程度である。
【0042】
(2.3)強誘電体層の形成方法
次に、強誘電体層の形成方法について説明する。
【0043】
強誘電体層の形成方法は特に限定されないが、強誘電体又は強誘電体の前駆体を含む溶液を用いた湿式方法により形成することができる。
【0044】
強誘電体として、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体等のポリマーを使用する場合、ポリマーをアセトン等の有機溶媒に溶かした溶液をコーティングし、加熱等を行うことにより強誘電体層を形成することができる。
【0045】
ここでは、強誘電体層の製造方法について一例を示したが、これに限定されることはなく、様々な組成及び条件で作製することができる。
【0046】
(3)n型半導体層
本発明では、上記のとおりn型半導体層を備える。特に、強誘電体層と接するようにn型半導体層を備えることが好ましい。
【0047】
本発明のn型半導体層を構成する材料は、n型シリコン(n型の単結晶シリコン、多結晶シリコン又はアモルファスシリコン等)、酸化チタン、酸化ジルコニア、又はこれらの混合体等の無機材料;フラーレン又はその誘導体等の有機材料等が挙げられる。中でもn型の単結晶シリコン、多結晶シリコン又はアモルファスシリコン等のn型シリコンであることが好ましい。従来はp型半導体層にPEDOT:PSS等の有機材料を用いる場合には、n型半導体層も有機材料を用いることが好ましいとされていたが、本発明においては、n型シリコン、特にn型単結晶シリコンを用いることにより、変換効率がより向上される。また、p型半導体層に対して、n型半導体層(好ましくはn型シリコン層)を、上記強誘電体層を介して設けることにより、PEDOT:PSSの塗布性を向上することができる。
【0048】
n型半導体層の厚みは、特に制限されないが、1nm〜5mm程度が好ましく、0.1〜500μm程度がより好ましい。n型半導体層の上記範囲内とすることにより、より変換効率を向上させることができる。
【0049】
n型半導体層を構成する材料にn型単結晶シリコンを用いる場合、その結晶面は(100)、(110)、(111)等が存在するが、成膜する分子の配向性の点から(100)又は(111)であることが好ましい。
【0050】
(4)下部電極
本発明では、n型半導体層の上(強誘電体層及びp型半導体層と反対側)に、さらに、下部電極を備えることが好ましい。
【0051】
この下部電極を構成する材料は、特に制限されないが、キャリアの再結合をより低減し、電極としての導電性を確保するという観点から、Al、Al(CsCO)又はInGa等が好ましい。
【0052】
下部電極の厚みは、特に制限されないが、1nm〜10μm程度が好ましく、0.02〜1μm程度が特に好ましい。下部電極の厚みを上記範囲内とすることにより、シート抵抗をより低減し、結果として太陽電池の抵抗をより低減でき、また、パッシベーション膜としてキャリアの再結合をより抑制するため、フィルファクター特性をより維持できる。
【0053】
なお、n型半導体層の上に下部電極を形成する方法は特に制限されず、例えば、スパッタ、蒸着等を採用できる。
【0054】
(5)上部電極
本発明では、p型半導体層の上(強誘電体層及びn型半導体層と反対側)に、上部電極を備えることが好ましい。
【0055】
上部電極を構成する材料としては、特に制限されないが、例えば、カーボン、金、銀、タングステン、モリブデン、チタン等が上げられる。また、金、銀、タングステン、モリブデン、チタン等の金属の合金等も好ましく用いられる。中でもより高い導電性を有し、加工がよりしやすい等の観点から、銀が好ましい。
【0056】
上部電極の厚みは、特に制限されないが、0.01〜100μm程度が好ましく、0.1〜10μm程度が特に好ましい。
【0057】
なお、p型半導体層の上に上部電極を形成する方法は、特に制限されず、例えば、塗布、印刷、スパッタ、蒸着等を採用できる。
【発明の効果】
【0058】
本発明の全固体型太陽電池は、p型有機半導体高分子を含むp型半導体層とn型半導体層との間に強誘電体層を備えるため、有機半導体を備える全固体型太陽電池の光電変換効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】実施例の全固体型太陽電池の構造の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0061】
実施例1
図1に示す構造を有する太陽電池を作製した。具体的には以下のとおり処理を行った。
【0062】
n型単結晶シリコン基板(結晶面(100)、厚さ300μm)に対して、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンのランダム共重合体(平均分子量49000;モル比7:3) 1gをアセトン 12.6mLに溶かした溶液を、1000rpmで3分間スピンコートし、さらに120℃で1時間アニール処理を施し、強誘電体層(厚み6nm)を形成した。成膜された強誘電体層をAFM(日立ハイテク社製)で確認したところ、高さ6nm、幅1μmの海島構造であった。得られた強誘電体層上に、PEDOT:PSS(Aldrich社製「PEDOT/PSS 2.8 wt % dispersion in H2O, low-conductivity grade」) 100mgをZonyl(登録商標)FS−300(デュポン株式会社製) 0.1mgのメタノール/エチレングリコール溶液に溶解したものを1000rpm、60秒スピンコートした後、140℃で30分乾燥することでPEDOT:PSS(厚み0.1μm)を堆積させた。下部電極として、n型シリコン上にインジウムガリウム合金(組成比1:1)を塗布し、プレス機で圧着することで下部電極(厚み10μm)を形成した。上部電極として、p型半導体層上にスクリーン印刷をすることで銀電極(厚さ6μm)を形成し、実効面積5×5mmの太陽電池を作製した。
【0063】
実施例2
図1に示す構造を有する太陽電池を作製した。具体的には以下のとおり処理を行った。
【0064】
n型単結晶シリコン基板(結晶面(100)、厚さ300μm)に対して、フッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンのランダム共重合体(平均分子量49000;モル比7:3) 0.1gをアセトン 12.6mLに溶かした溶液を、1000rpmで3分間スピンコートし、さらに120℃で1時間アニール処理を施し、強誘電体層(厚み6nm)を形成した。成膜された強誘電体層をAFM(日立ハイテク社製)で確認したところ、高さ6nm、幅1μmの海島構造であった。得られた強誘電体層上に、PEDOT:PSS(Aldrich社製「PEDOT/PSS 2.8 wt % dispersion in H2O, low-conductivity grade」) 100mgをZonyl(登録商標)FS−300(デュポン株式会社製) 0.1mgのメタノール/エチレングリコール溶液に溶解したものを1000rpm、60秒スピンコートした後、140℃で30分乾燥することでPEDOT:PSS(厚み0.1μm)を堆積させた。下部電極として、n型シリコン上にインジウムガリウム合金(組成比1:1)を塗布し、プレス機で圧着することで下部電極(厚み10μm)を形成した。上部電極として、p型半導体層上にスクリーン印刷をすることで銀電極(厚さ6μm)を形成し、実効面積5×5mmの太陽電池を作製した。作製した太陽電池に対して、120℃、50MV/cm(太陽電池のn型単結晶シリコン基板側にプラス極、銀電極側にマイナス極)で30分間ポーリング処理を行った。
【0065】
比較例1
n型単結晶シリコン基板(結晶面(100)、厚さ300μm)に対して、PEDOT:PSS(Aldrich社製「PEDOT/PSS 2.8 wt % dispersion in H2O, low-conductivity grade」) 100mgをZonyl(登録商標)FS−300(デュポン株式会社製) 0.1mgのメタノール/エチレングリコール溶液に溶解したものを1000rpm、60秒スピンコートした後、140℃で30分乾燥することでPEDOT:PSS(厚み0.1μm)を堆積させた。下部電極として、n型シリコン上にインジウムガリウム合金(組成比1:1)を塗布し、プレス機で圧着することで下部電極(厚み10μm)を形成した。上部電極として、p型半導体層上にスクリーン印刷をすることで銀電極(厚さ6μm)を形成し、実効面積5×5mmの太陽電池を作製した。
【0066】
<試験例1>
各実施例又は比較例で得られた太陽電池のセルに対して、山下電装株式会社製のソーラシミュレータでAM1.5(JISC8912Aランク)の条件下の100mW/cmの光を照射して、光電変換効率特性を評価した。
【0067】
実施例1では、短絡電流(JSC)=28.9mA・cm−2、開放電圧(VOC)=0.57V、フィルファクター(FF)=0.69、光電変換効率(η)=11.4%の特性であった。
【0068】
実施例2では、短絡電流(JSC)=29.7mA・cm−2、開放電圧(VOC)=0.58V、フィルファクター(FF)=0.71、光電変換効率(η)=12.3%の特性であった。
【0069】
比較例1では、短絡電流(JSC)=27.7mA・cm−2、開放電圧(VOC)=0.54V、フィルファクター(FF)=0.68、光電変換効率(η)=10.2%の特性であった。
【0070】
以上の結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
図1