特許第6238680号(P6238680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6238680-コンバイン 図000002
  • 特許6238680-コンバイン 図000003
  • 特許6238680-コンバイン 図000004
  • 特許6238680-コンバイン 図000005
  • 特許6238680-コンバイン 図000006
  • 特許6238680-コンバイン 図000007
  • 特許6238680-コンバイン 図000008
  • 特許6238680-コンバイン 図000009
  • 特許6238680-コンバイン 図000010
  • 特許6238680-コンバイン 図000011
  • 特許6238680-コンバイン 図000012
  • 特許6238680-コンバイン 図000013
  • 特許6238680-コンバイン 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238680
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/16 20060101AFI20171120BHJP
   A01F 12/10 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A01F12/16 D
   A01F12/10 D
   A01F12/16 J
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-227118(P2013-227118)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-84737(P2015-84737A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】阿川 陽一
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 春樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 昌範
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−258372(JP,A)
【文献】 特開2003−219724(JP,A)
【文献】 特開2013−192548(JP,A)
【文献】 特開2012−130289(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第2001−0017714(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00−41/16,61/00−61/04
A01F 12/10−12/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に載置されたエンジンと、刈取った穀稈を脱穀する脱穀部と、挟持レールとの間で穀稈の株元側を挟持して、穀稈の穂先側を前記脱穀部内に通過させながら搬送する穀稈搬送装置と、を備え、手刈りされた手刈り穀稈を前記穀稈搬送装置に供給して手扱ぎ可能なコンバインにおいて、
押し操作している間だけ前記穀稈搬送装置を駆動し、離し操作することで前記穀稈搬送装置を停止する復帰式押しスイッチからなる手扱ぎスイッチと、
前記穀稈搬送装置の穀稈搬送方向上流に配置され、前記手刈り穀稈を支持する支持姿勢と、前記穀稈搬送装置の上方に退避した退避姿勢と、に切換え可能な穀稈支持体と、を備え、
前記手扱ぎスイッチは、前記穀稈支持体よりも穀稈搬送方向上流に配置されてなる、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記穀稈支持体の前記支持姿勢と、前記退避姿勢と、を検出する検出手段と、
前記検出手段が、前記穀稈支持体の前記支持姿勢を検出すると、前記手扱ぎスイッチからの操作信号を許容し、前記検出手段が、前記穀稈支持体の前記退避姿勢を検出すると、前記手扱ぎスイッチからの操作信号を許容しない制御手段と、を備えてなる、
請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記穀稈搬送装置の近傍に、前記エンジンの停止指令を出力するエンジン緊急停止手段を設けてなる、
請求項1または2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記穀稈支持体は、前記支持姿勢と、前記退避姿勢と、にそれぞれ保持可能なロック機構を有してなる、
請求項1ないし3のいずれか記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取られた穀稈を脱穀部にて脱穀を行うコンバインに係り、詳しくは、該脱穀部に手動で穀稈の供給が可能なコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自脱型のコンバインは、走行しながら機体前部に配設された前処理部にて穀稈を刈取り、刈取られた穀稈をフィードチェーンによって後方に搬送しつつ、穀稈の穂先側を脱穀部にて脱穀する。しかし、コンバインでは、例えば圃場の四隅や畔際の穀稈は刈取ることが困難なため、一部手刈りにて刈取作業を行っている。
【0003】
従来、このようにして手刈りで刈取った穀稈を、補助搬送装置からフィードチェーンを介して脱穀部に供給して、手扱ぎ作業を行うものがあり、補助搬送装置の近傍に配置した復帰式押ボタンスイッチを操作することで該補助搬送装置及びフィードチェーンを駆動させるものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−130289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載のものは、一人の作業者によって手扱ぎ作業を行う場合、片手で上記復帰式押ボタンスイッチを操作して補助搬送装置及びフィードチェーンを駆動しつつ、もう片手で扱室に穀稈を供給しなければならず、供給の際に穀稈の姿勢が不安定となり、手扱ぎ作業を円滑に行うことが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、手扱ぎの際に供給する穀稈を支持する穀稈支持体を設けて、もって上述した課題を解決したコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、機体(3)に載置されたエンジン(E)と、刈取った穀稈を脱穀する脱穀部(6)と、挟持レール(30)との間で穀稈の株元側を挟持して、穀稈の穂先側を前記脱穀部(6)内に通過させながら搬送する穀稈搬送装置(16)と、を備え、手刈りされた手刈り穀稈を前記穀稈搬送装置(16)に供給して手扱ぎ可能なコンバイン(1)において、
押し操作している間だけ前記穀稈搬送装置(16)を駆動し、離し操作することで前記穀稈搬送装置(16)を停止する復帰式押しスイッチからなる手扱ぎスイッチ(42)と、
前記穀稈搬送装置(16)の穀稈搬送方向上流に配置され、前記手刈り穀稈を支持する支持姿勢と、前記穀稈搬送装置(16)の上方に退避した退避姿勢と、に切換え可能な穀稈支持体(49)と、を備え、
前記手扱ぎスイッチ(42)は、前記穀稈支持体(49)よりも穀稈搬送方向上流に配置されてなる、
ことを特徴とする。
【0008】
例えば図12を参照して、前記穀稈支持体(49)の前記支持姿勢と、前記退避姿勢と、を検出する検出手段(51)と、
前記検出手段(51)が、前記穀稈支持体(49)の前記支持姿勢を検出すると、前記手扱ぎスイッチ(42)からの操作信号を許容し、前記検出手段(51)が、前記穀稈支持体(49)の前記退避姿勢を検出すると、前記手扱ぎスイッチ(42)からの操作信号を許容しない制御手段(79)と、を備えてなる。
【0009】
例えば図3又は図4を参照して、前記穀稈搬送装置(16)の近傍に、前記エンジン(E)の停止指令を出力するエンジン緊急停止手段(34)を設けてなる。
【0010】
例えば図9を参照して、前記穀稈支持体(49)は、前記支持姿勢と、前記退避姿勢と、にそれぞれ保持可能なロック機構(48)を有してなる。
【0011】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明は、支持姿勢と退避姿勢とに切換え可能な穀稈支持体を設けたので、簡単な構成でもって、支持姿勢にした穀稈支持体が手扱ぎ穀稈を安定的に支持し、手扱ぎ作業を円滑に行うことができる。また、退避姿勢にした穀稈支持体は、上方からの穀稈搬送装置への手扱ぎ穀稈の供給を阻止するので、例えば走行中に手扱ぎ作業することを防止して、安全性を向上することができる。
【0013】
また、手扱ぎスイッチを設けて、片手で感覚的に穀稈搬送装置の駆動操作ができるので、穀稈搬送装置を停止する場合でも迅速に操作が可能で、安全性を向上することができる。手扱ぎスイッチの操作で片手が塞がったとしても、穀稈支持体を設けたので、もう片方の手だけでも容易に穀稈の供給ができ、作業性を向上することができる。
【0014】
請求項2に係る本発明は、制御手段は、穀稈支持体を退避姿勢にすると手扱ぎ操作手段からの操作信号を許容しないので、誤って該手扱ぎ操作手段を操作したとしても穀稈搬送装置の駆動を防止することができ、安全性を向上することができる。
【0015】
請求項3に係る本発明は、機体にエンジン緊急停止手段を設けたので、例えば、穀稈搬送装置を緊急停止させたい場合に、補助者によって該エンジン緊急停止手段を操作することで、エンジン及び穀稈搬送装置を緊急停止することができる。
【0016】
請求項4に係る本発明は、穀稈支持体を支持作用姿勢と供給阻止姿勢にそれぞれ保持可能なロック機構を設けたので、例えば手扱ぎ作業中に穀稈支持体の姿勢が変更されてしまうことを防止して、作業性及び安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るコンバインを示す全体側面図。
図2】その平面図。
図3】手扱ぎ台及びその周辺構成を示し、該手扱ぎ台が退避姿勢である斜視図。
図4】手扱ぎ台及びその周辺構成を示し、該手扱ぎ台が支持姿勢である斜視図。
図5】手扱ぎ台及びその周辺構成を示し、該手扱ぎ台が退避姿勢である平面図。
図6】手扱ぎ台及びその周辺構成を示し、該手扱ぎ台が支持姿勢である平面図。
図7】手扱ぎ台及びその周辺構成を示し、該手扱ぎ台が退避姿勢である側面図。
図8】手扱ぎ台及びその周辺構成を示し、該手扱ぎ台が支持姿勢である側面図。
図9】手扱ぎ台を示す拡大図。
図10】本発明の実施の形態に係る動力伝達図。
図11】油圧装置の油圧回路を示し、(a)は通常作業時の図、(b)は緊急停止時の図。
図12】本発明の実施の形態に係る制御ブロック図。
図13】本発明の実施の形態に係る制御フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。コンバイン1は、図1及び図2に示すように、クローラ走行装置2により支持される機体3を有しており、該機体3の前方には、穀稈の刈取りと搬送を行う前処理部5が昇降自在に設けられている。上記機体3は、その一側(左側)に、刈取った穀稈から穀粒を脱穀する脱穀部6が配置され、他側(右側)に、運転操作部7及びエンジンEが配置されており、その後方に脱穀された穀粒を一時貯蔵するグレンタンク9及び該グレンタンク9内の穀粒を機外へ排出する排出オーガ10が配置されている。
【0019】
上記前処理部5は、前部に設けられる穀稈を分草するデバイダ11と、該デバイダ11の後方で分草された穀稈を引起こす引起装置12と、穀稈を刈取るレシプロ式の刈刃13と、引起こされた穀稈の株元側を掻き込む株元掻込装置15と、上記刈刃13によって刈取られた穀稈を後方に搬送して上記脱穀部6のフィードチェーン16(穀稈搬送装置)に受け渡す搬送装置17と、から構成されている。前処理部5の両側面には、それぞれ保守・整備のために簡単に着脱することを可能としたサイドカバー19が配設されている。
【0020】
上記引起装置12は、爪付きチェーン12aと引起ケース12bとを有し、該爪付きチェーン12aの爪が引起ケース12b内を上方に回動して穀稈を引き起こす。上記引起装置12によって引き起こされた穀稈は、上記刈刃13によって切断され、上記株元掻込装置15によって後方に掻き込まれて集束される。該株元掻込装置15は、上記引起装置12によって引起こされた穀稈の株元を掻込む掻込ベルト20と、該掻込ベルト20によって掻込まれた穀稈を集束するスターホイール21とから構成されており、これら掻込ベルト20及びスターホイール21は、それぞれ刈取り条数に応じた数(本実施形態においては6つ)だけ設けられている。
【0021】
上記搬送装置17は、スターホイール21から後送された穀稈の株元側を搬送する主株元搬送体22と、その穂先側を搬送する穂先搬送体23と、これらによって後方に搬送されて合流した穀稈の株元側を搬送する後方株元搬送体25と、穀稈の扱ぎ深さを調節する扱深搬送体26と、から構成されている。上記主株元搬送体22及び穂先搬送体23によって後方に搬送された穀稈は、上記扱深搬送体26によって穀稈の挟持位置が変更されつつ、上記後方株元搬送体25に受け渡され、更に上記フィードチェーン16へと受け渡される。
【0022】
上記脱穀部6は、上部に扱胴(不図示)を内蔵した扱室27を有しており、該扱室27の下方には、扱室27から漏下した穀粒を含む夾雑物を、揺動選別及び風選別する選別室(不図示)が設けられている。上記扱室27の機体外側には、上記フィードチェーン16が配設されており、該フィードチェーン16の回転軌跡の上方側には、スプリング29によって下方に付勢される挟持レール30が配置されている。上記フィードチェーン16は、上記挟持レール30との間に穀稈を挟持して、穀稈の穂先側を上記扱室27内に通過させながら搬送し、穀稈の脱穀を行う。上記扱室27の上方は、脱穀カバー28で覆われており、該脱穀カバー28は、機体内側の枢支軸(不図示)に回動自在に支持され、扱室27の上方を開放し得る。該脱穀カバー28の上記フィードチェーン16の近傍には、上記エンジンEの停止指令を出力するエンジン緊急停止スイッチ34(エンジン緊急停止手段)が配置されている。
【0023】
上記エンジンEからの動力は、上記前処理部5の昇降支軸である横筒(不図示)、縦伝動筒31、下部伝動筒32、中間伝動筒33、上部伝動筒35、そして引起伝動筒36へと伝達されるが、該中間伝動筒33には、図3ないし図8に示すように、パイプ状のフレーム37が固定されている。該フレーム37は、機体後方に延出していると共に、該フレーム37に沿って延びるブラケット39が取付けられている。該ブラケット39は、長孔39aを有しており、該長孔39aに係合するボルト40,40によって、位置調整可能にブラケット41が取付けられている。
【0024】
該ブラケット41には、上記フィードチェーン16の駆動又は停止操作を行う手扱ぎスイッチ42が設けられており、該手扱ぎスイッチ42は、上記フィードチェーン16の穀稈搬送方向上流に配置されている。該手扱ぎスイッチ42は、押し操作することで上記フィードチェーン16を駆動し、離し操作することで上記フィードチェーン16を停止することができるように構成される復帰式押しスイッチからなる。このように手扱ぎスイッチ42を構成したので、片手で感覚的にフィードチェーン16の駆動操作を行うことができ、該フィードチェーン16を停止する場合でも迅速に操作が可能で、安全性を向上することができる。また、上記手扱ぎスイッチ42は、上記ブラケット41の位置を変更することで、作業者の体格に合わせて位置調節が可能であり、作業性を向上することができる。
【0025】
上記フレーム37の後端には、ブラケット43が固定されており、該ブラケット43は、上記後方株元搬送体25の案内レール45を穀稈の挟持方向に付勢支持すると共に、上記フィードチェーン16によって後方搬送される穀稈を案内する穀稈ガイド46を支持している。上記前処理部5によって刈取・搬送される穀稈は、上記穀稈ガイド46の下方を通って上記フィードチェーン16に受け渡される。
【0026】
また、上記ブラケット43の側方には、支持ブラケット47が固定されており、該支持ブラケット47には、図9に示すように、棒状部材が曲げ加工されて湾曲した手扱ぎ台49(穀稈支持体)が回動可能に取付けられている。該手扱ぎ台49は、その根元部分に不図示のスプリングピンを有しており、該スプリングピンが上記支持ブラケット47に形成された不図示の切欠きの範囲で回動し、回動範囲が設定されている。上記手扱ぎ台49は、該回動範囲内において、手刈りされた手刈り穀稈を支持する支持姿勢(図9の実線)と、上記フィードチェーン16の上方に退避する退避姿勢(図9の二点鎖線)と、に切換え可能になっている。手刈り穀稈をフィードチェーン16に供給する場合には、上記穀稈ガイド46及び支持姿勢にした上記手扱ぎ台49の上面にて、それぞれ穀稈の穂先側及び株元側が支持され、片手で穀稈を流すようにしてフィードチェーン16に供給することができる。上記支持ブラケット47の切欠きには、上記支持姿勢及び退避姿勢にそれぞれ対応する二つの溝が設けられており、上記スプリングピンは、これら二つの溝に係合するように付勢されて、上記手扱ぎ台49が支持姿勢と退避姿勢にそれぞれ保持可能(ロック可能)となっている。すなわち、上記スプリングピン及び支持ブラケット47の切欠きに設けられた二つの溝は、ロック機構48を構成している。該ロック機構が48によって、例えば手扱ぎ作業中に手扱ぎ台49の姿勢が変更されてしまうことを防止して、作業性及び安全性を向上することができる。
【0027】
また、上記手扱ぎ台49の根元部分の上記スプリングピンと反対側には、ピン49aが突出している。上記支持ブラケット47に取付けられたブラケット50には、手扱ぎ台検出スイッチ51(検出手段)が回動自在に取付けられており、該手扱ぎ台検出スイッチ51は、上記ピン49aの位置を検出することで、上記手扱ぎ台49の上記支持姿勢又は退避姿勢を検出することができるようになっている。
【0028】
次いで、エンジンから各部への動力伝達について、図10に沿って説明する。上記エンジンEの出力軸52の回転は、それぞれプーリ及びベルトを介して、エアコンの冷媒を圧縮するコンプレッサ53と、走行HSTポンプ55及び走行HSTモータ56からなる走行HST57と、に伝達される。上記コンプレッサ53は、該コンプレッサ53への動力伝達を断接する電磁クラッチ59を有している。上記走行HSTモータ56からの動力は、車速センサ60を有する走行トランスミッション61に伝達され、変速された後に上記クローラ走行装置2へと出力される。上記走行HSTポンプ55の圧油の一部は、ギヤポンプ62を介して、上記排出オーガ10を駆動する排出ラセン駆動部63の油圧モータ65に伝達される。該油圧モータ65は正逆転可能であり、該油圧モータ65の駆動を正逆切換えることで、上記排出オーガ10を正転・逆転駆動することができる。
【0029】
また、上記エンジンEの出力軸52の回転は、脱穀クラッチ66を介して、中間軸67に伝達されており、該中間軸67の回転は、搬送HST69と、脱穀部6と、に伝達されている。該搬送HST69の動力は、上記フィードチェーン16と、刈取クラッチ70を介在した上記前処理部5と、に伝達されるようになっている。
【0030】
次いで、上記前処理部5の昇降シリンダ5aを伸縮させる油圧装置71について、図11に沿って説明する。上記油圧装置71は、エンジンEからの動力によって駆動するギヤポンプ72と、電磁方向制御弁73と、昇降シリンダ5aと、オイルタンク75と、を有しており、上記電磁方向制御弁73を切換えることで上記昇降シリンダ5aを駆動することができるようになっている。また、上記油圧装置71は、開閉切換え可能なアンロード弁76と、リリーフ弁77と、を有しており、上記前処理部5にて穀稈の刈取りを行う通常作業時においては、上記アンロード弁76は開状態となって、上記リリーフ弁77を介することなく上記オイルタンク75に作動油が送られる(図11(a)の状態)。上記エンジン緊急停止スイッチ34がON操作されると、上記アンロード弁76が作動して閉状態となって、上記ギヤポンプ72から圧送された作動油は、上記リリーフ弁77に送られる(図11(b)の状態)。すると、該油圧装置71の油圧回路内に圧力が立ち、該圧力が上記リリーフ弁77の設定圧力を超えると、該リリーフ弁77が開状態となって、上記オイルタンク75へ作動油が送られる。この際、上記エンジンEには、上記リリーフ弁77の設定圧分の負荷が与えられる。
【0031】
図12は、本実施の形態における制御ブロック図を示しており、コンバイン1は、マイコン(CPU,ROM,RAM等を含む)からなり該制御ブロック図を構成する制御手段79を備えている。該制御手段79の入力側には、上記エンジン緊急停止スイッチ34と、上記刈取クラッチ70及び上記脱穀クラッチ66の入状態又は切状態をそれぞれ検出する刈取クラッチセンサ80及び脱穀クラッチセンサ81と、上記車速センサ60と、上記手扱ぎスイッチ42と、上記手扱ぎ台検出スイッチ51と、が接続されている。上記制御手段79の出力側には、エンジン停止リレー82と、上記アンロード弁76を開状態又は閉状態に切換えるアンロード弁切換手段83と、上記排出ラセン駆動部63を操作することで上記排出オーガ10の正逆転駆動又は停止を行うオーガ駆動操作手段85と、上記コンプレッサ53への動力を断接する上記電磁クラッチ59を操作する電磁クラッチ操作手段86と、上記搬送HST69を操作する搬送HST操作手段87と、が接続されている。該搬送HST操作手段87は、例えばHSTのトラニオン軸を操作する電動モータからなり、また、他の切換手段及び操作手段は、例えば電磁ソレノイド等のアクチュエータからなる。
【0032】
上記エンジン停止リレー82は、ONになることで上記エンジンEへの燃料供給をカットするエンジン燃料カットソレノイド89を通電させて、上記エンジンEを停止することができる。該エンジン停止リレー82には、上記エンジン緊急停止スイッチ34のON操作に基づいて、上記制御手段79を介さずに、リレースイッチがONとなるように信号が送られる。なお、図12の点線で示すように、上記エンジン緊急停止スイッチ34のON操作に基づいて、上記制御手段79を介さずに、上記アンロード弁切換手段83又はオーガ駆動操作手段85へ作動信号を送るように構成してもよい。
【0033】
次いで、図13に沿って、手扱ぎ作業における制御について説明する。まず、手扱ぎ制御にあっては、エンジン緊急停止スイッチ34がONかOFFかをチェックする(ステップS1)。該エンジン緊急停止スイッチ34がONの場合には、上記エンジン停止リレー82に、上記制御手段79を介さずに直接、リレースイッチがONとなるように信号が送られ、エンジンEへの燃料供給がカットされて該エンジンEが停止する(ステップS2)。このように、上記エンジン緊急停止スイッチ34の操作に基づいてエンジン停止リレー82に直接信号を送ることで、エンジン停止までの時間が短縮化されるので、手扱ぎ作業中にフィードチェーン16の駆動を迅速に停止することができ、安全性を向上することができる。
【0034】
次に、上記アンロード弁切換手段83を操作して、上記アンロード弁76を開状態から閉状態に切換える(ステップS3)と共に、上記オーガ駆動操作手段85を操作して、上記排出オーガ10を駆動する(ステップS4)。更に、上記電磁クラッチ操作手段86によって上記電磁クラッチ59を接続して、上記コンプレッサ53を駆動する(ステップS5)。これらステップS3,S4,S5において、リリーフ弁77の設定圧分の負荷、排出オーガ10駆動分の負荷、コンプレッサ53駆動分の負荷が、それぞれエンジンEに与えられるので、エンジン停止までの時間が短縮化され、安全性を向上することができる。なお、ステップS4において、排出オーガ10を、上記油圧モータ65を正逆切換えて駆動することで逆転駆動して、上記グレンタンク9内の穀粒が機外へ流出してしまうことを防止してもよい。
【0035】
更に、上記搬送HST69を中立にすることで、該搬送HST69内の油圧モータがブレーキの役割を担い、該搬送HST69の伝動下流の上記フィードチェーン16を停止させる(ステップS6)。これにより、例えばエンジンEが惰性により回転しても、フィードチェーン16を即時停止することができ、安全性を向上することができる。
【0036】
上記ステップS1において、上記エンジン緊急停止スイッチ34がOFFの場合には、手扱ぎ条件が成立しているか否かをチェックする(ステップS7)。該手扱ぎ条件は、例えば、上記刈取クラッチ70のOFF、上記脱穀クラッチ66のON、上記車速センサ60による走行停止(車速0)の検知、等があり、これらが全て満たされることで上記手扱ぎ条件が成立する。該手扱ぎ条件が成立しない場合には、最初に戻る。
【0037】
上記ステップS7において手扱ぎ条件が成立する場合には、上記手扱ぎ台検出スイッチ51のON/OFFをチェックする(ステップS8)。上記手扱ぎ台検出スイッチ51がOFF、すなわち上記手扱ぎ台49が退避姿勢となっている場合には、上記手扱ぎスイッチ42からの操作信号を許容することなく、最初に戻る。上記手扱ぎ台検出スイッチ51がON、すなわち上記手扱ぎ台49が支持姿勢となっている場合には、上記手扱ぎスイッチ42からの操作信号を許容して、上記手扱ぎスイッチ42の操作をチェックする(ステップS9)。上記手扱ぎスイッチ42がON、すなわち押し操作されている場合には、上記搬送HST69を駆動させてフィードチェーン16を駆動する(ステップS10)。他方、上記手扱ぎスイッチ42がOFF、すなわち離し操作されている場合には、上記搬送HST69を中立としてフィードチェーン16を停止する(ステップS11)。
【0038】
本発明は、以上のような構成からなるので、作業者は、手扱ぎ作業をする場合には、まずクローラ走行装置2を停止し、刈取クラッチ70をOFF、脱穀クラッチ66をONにする。そして、機体3を降りて、手扱ぎ台49を支持姿勢にしてロックする。作業者は、機体3側方の手扱ぎ台49近傍に立ち、穀稈ガイド46及び手扱ぎ台49に手刈りした手刈り穀稈を載置する。この状態で、例えば左手で手扱ぎスイッチ42を押し操作(ON)してフィードチェーン16を駆動しつつ、右手で穀稈ガイド46及び手扱ぎ台49に載置された手刈り穀稈をフィードチェーン16に流すようにして供給していく。
【0039】
該手扱ぎ台49を設置したことで、穀稈を安定した姿勢で載置することができ、手扱ぎ作業を円滑に行うことができる。また、簡単な離し操作(OFF)でフィードチェーン16を停止できる手扱ぎスイッチ42によって安全性を向上しつつ、手扱ぎ台49によって片手で簡単に手刈り穀稈を供給でき、作業性も向上できる。更に、手扱ぎ台49は、退避姿勢の時には手扱ぎスイッチ42からの信号を許容せず、かつ上方からの手扱ぎ穀稈の供給を阻止するので、例えば走行中に運転操作部7からフィードチェーン16に手刈り穀稈を供給することを防止して、安全性を向上することができる。退避姿勢にあっては、手扱ぎ台49は機体側方に突出しないので、コンパクトにコンバイン1を構成することができる。
【0040】
手扱ぎ作業中にフィードチェーン16を停止したい場合には、手扱ぎスイッチ42を離し操作(OFF)してもよいが、他にも例えば補助者がエンジン緊急停止スイッチ34をON操作してもエンジンE及びフィードチェーン16を緊急停止することができ、安全性を向上することができる。
【0041】
なお、上記フィードチェーン16の他に、穀稈を脱穀部内へと搬送する補助搬送装置を別に設けてもよく、そのような場合でも、該補助搬送装置は、フィードチェーン16と同様に駆動・停止制御され、本発明では、該補助搬送装置も含めてフィードチェーン(穀稈搬送装置)とする。また、エンジン緊急停止スイッチ34は、スイッチではなく、レバー等の他のON/OFF切換え手段としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 コンバイン
3 機体
6 脱穀部
16 フィードチェーン(穀稈搬送装置)
30 挟持レール
34 エンジン緊急停止スイッチ(エンジン緊急停止手段)
42 手扱ぎスイッチ
48 ロック機構
49 手扱ぎ台(穀稈支持体)
51 手扱ぎ台検出スイッチ(検出手段)
79 制御手段
E エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13