(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハードコート層形成用組成物中の全硬化性化合物に対する前記硬化性化合物(A)と単官能モノマー(C)との合計含有割合が、20重量%〜70重量%である、請求項1または2に記載の光学積層体の製造方法。
前記ハードコート層形成用組成物が、前記硬化性化合物(B)として、9個以上のラジカル重合性不飽和基を含有する硬化性化合物(B1)を含む、請求項1から3のいずれかに記載の光学積層体の製造方法。
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムを形成する(メタ)アクリル系樹脂が、正の複屈折を発現する構造単位と負の複屈折を発現する構造単位とを有する、請求項1から6のいずれかに記載の光学積層体の製造方法。
前記(メタ)アクリル系樹脂フィルムを形成する(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量が、10000〜500000である、請求項1から7のいずれかに記載の光学積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.光学積層体の全体構成
図1(a)は、本発明の好ましい実施形態による光学積層体の概略断面図であり、
図1(b)は、浸透層を有さない光学積層体の概略断面図である。
図1(a)に示す光学積層体100は、(メタ)アクリル系樹脂フィルムから形成される基材層10と、浸透層20と、ハードコート層30とをこの順に備える。ハードコート層30は、(メタ)アクリル系樹脂フィルムにハードコート層形成用組成物を塗工して形成される。浸透層20は、ハードコート層形成用組成物が(メタ)アクリル系樹脂フィルムに浸透して形成される。基材層10は、このようにハードコート層形成用組成物が(メタ)アクリル系樹脂フィルムに浸透した際に、(メタ)アクリル系樹脂フィルムにおいてハードコート層形成用組成物が到達(浸透)しなかった部分である。一方、
図1(b)に示す光学積層体200は、浸透層が形成されていない。
図1(a)および(b)に示す境界Aは、(メタ)アクリル系樹脂フィルムのハードコート層形成用組成物塗工面により規定される境界である。したがって、境界Aは、光学積層体100においては浸透層20とハードコート層30との境界であり、浸透層が形成されていない光学積層体200においては基材層10’(すなわち、(メタ)アクリル系樹脂フィルム)とハードコート層30’との境界である。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0010】
浸透層20は、上記のとおり、光学積層体100において、ハードコート層形成用組成物が(メタ)アクリル系樹脂フィルムに浸透して形成される。すなわち、浸透層20とは、(メタ)アクリル系樹脂フィルムにおいて、ハードコート層成分が存在している部分である。浸透層20の厚みは、例えば1.0μm以上である。なお、浸透層20の厚みとは、上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムにおいてハードコート層成分が存在している部分の厚みであり、具体的には、(メタ)アクリル系樹脂フィルムにおいてハードコート層成分が存在している部分(浸透層)と存在していない部分(基材層)との境界Bと、境界Aとの距離である。
【0011】
本発明の光学積層体は、必要に応じて、ハードコート層30の外側に任意の適切なその他の層(図示せず)が配置されてもよい。その他の層は、代表的には、粘着剤層(図示せず)を介して配置される。
【0012】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムを形成する(メタ)アクリル系樹脂が、ハードコート層形成用組成物に溶出して、ハードコート層中に当該(メタ)アクリル系樹脂が存在していてもよい。
【0013】
図2は、本発明の別の実施形態による光学積層体の概略断面図である。光学積層体300は、ハードコート層30の浸透層20とは反対側に、ブロック層40をさらに備える。ブロック層40は上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムを形成する(メタ)アクリル系樹脂が、ハードコート層形成用組成物に溶出し、ハードコート層形成用組成物が、当該(メタ)アクリル系樹脂と相分離を起こすことにより生じる。ブロック層40を備える光学積層体は、硬度に優れる。
【0014】
本発明の光学積層体の500nm〜600nmの波長領域におけるハードコート層の反射スペクトルの振幅は、好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.3%以下であり、さらに好ましくは0.1%以下である。本発明によれば、反射スペクトルの振幅の小さい、すなわち、干渉ムラの少ない光学積層体を得ることができる。
【0015】
本発明の光学積層体のハードコート層表面の鉛筆硬度は、好ましくは2H以上、より好ましくは3H以上である。
【0016】
本発明の光学積層体は、例えば、偏光フィルム(偏光板とも称される)に適用される。具体的には、本発明の光学積層体は、偏光フィルムにおいて、偏光子の片面または両面に設けられ、偏光子の保護材料として好適に用いられ得る。
【0017】
B.基材層
上記基材層は、(メタ)アクリル系樹脂フィルムから形成される。より詳細には、上記のように、基材層は、(メタ)アクリル系樹脂フィルムにハードコート層形成用組成物を塗工した際に、(メタ)アクリル系樹脂フィルムにおいて、当該ハードコート層形成用組成物が到達(浸透)しなかった部分である。
【0018】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂を含む。(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、例えば、(メタ)アクリル系樹脂を主成分として含む樹脂成分を含有する成形材料を、押出し成形して得られる。
【0019】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの透湿度は、好ましくは200g/m
2・24hr以下であり、より好ましくは80g/m
2・24hr以下である。本発明によれば、このように透湿度の高い(メタ)アクリル系樹脂フィルムを用いても、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとハードコート層との密着性に優れ、かつ、干渉ムラの抑制された光学積層体を得ることができる。なお、透湿度は、例えば、JIS Z 0208に準じた方法により、40℃、相対湿度92%の試験条件で測定することができる。
【0020】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの波長380nmにおける光の透過率は、好ましくは15%以下であり、より好ましくは12%以下であり、さらに好ましくは9%以下である。波長380nmの光の透過率がこのような範囲であれば、優れた紫外線吸収能が発現するので、光学積層体の外光等による紫外線劣化が防止され得る。
【0021】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの面内位相差Reは、好ましくは10nm以下であり、より好ましくは7nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下であり、特に好ましくは3nm以下であり、最も好ましくは1nm以下である。(メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚み方向位相差Rthは、好ましくは15nm以下であり、より好ましくは10nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下であり、特に好ましくは3nm以下であり、最も好ましくは1nm以下である。面内位相差および厚み方向位相差がこのような範囲であれば、位相差に起因する画像表示装置の表示特性への悪影響が顕著に抑制され得る。より具体的には、干渉ムラや3Dディスプレイ用液晶表示装置に用いる場合の3D像の歪みが顕著に抑制され得る。面内位相差および厚み方向位相差がこのような範囲の(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、例えば、後述のグルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いて得ることができる。なお、面内位相差Reおよび厚み方向位相差Rthは、それぞれ、以下の式で求められる:
Re=(nx−ny)×d
Rth=(nx−nz)×d
ここで、nxは(メタ)アクリル系樹脂フィルムの遅相軸方向の屈折率であり、nyは(メタ)アクリル系樹脂フィルムの進相軸方向の屈折率であり、nzは(メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚み方向の屈折率であり、d(nm)は(メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚みである。遅相軸は、フィルム面内の屈折率が最大になる方向をいい、進相軸は、面内で遅相軸に垂直な方向をいう。代表的には、ReおよびRthは、波長590nmの光を用いて測定される。
【0022】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C
1−6アルキルが挙げられる。より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0023】
上記(メタ)アクリル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10000〜500000、より好ましくは30000〜300000、さらに好ましくは50000〜200000である。重量平均分子量が当該範囲内であれば、ハードコート層形成用組成物との相溶性に優れる。また、重量平均分子量が小さすぎると、フィルムにした場合の機械的強度が不足する傾向がある。重量平均分子量が大きすぎると、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
【0024】
上記(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは110℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。ガラス転移温度がこのような範囲であれば、耐久性および耐熱性に優れた(メタ)アクリル系樹脂フィルムが得られ得る。ガラス転移温度の上限は特に限定されないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。
【0025】
上記(メタ)アクリル系樹脂は、好ましくは、正の複屈折を発現する構造単位と負の複屈折を発現する構造単位とを有する。これらの構造単位を有していれば、その存在比を調整して、(メタ)アクリル系樹脂フィルムの位相差を制御することができ、低位相差の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを得ることができる。正の複屈折を発現する構造単位としては、例えば、ラクトン環、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、酢酸セルロース、ポリエステル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリオレフィン等を構成する構造単位、後述の一般式(1)で示される構造単位が挙げられる。負の複屈折を発現する構造単位としては、例えば、スチレン系モノマー、マレイミド系モノマー等を由来とする構造単位、ポリメチルメタクリレートの構造単位、後述の一般式(3)で示される構造単位等が挙げられる。本明細書において、正の複屈折を発現する構造単位とは、当該構造単位のみを有する樹脂が正の複屈折特性を示す場合(すなわち、樹脂の延伸方向に遅相軸が発現する場合)の構造単位を意味する。また、負の複屈折を発現する構造単位とは、当該構造単位のみを有する樹脂が負の複屈折特性を示す場合(すなわち、樹脂の延伸方向と垂直な方向に遅相軸が発現する場合)の構造単位を意味する。
【0026】
上記(メタ)アクリル系樹脂として、ラクトン環構造またはグルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が好ましく用いられる。ラクトン環構造またはグルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は耐熱性に優れる。より好ましくは、グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂である。グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いれば、上記のように、低透湿、かつ、位相差および紫外線透過率の小さい(メタ)アクリル系樹脂フィルムを得ることができる。グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂(以下、グルタルイミド樹脂とも称する)は、例えば、特開2006−309033号公報、特開2006−317560号公報、特開2006−328329号公報、特開2006−328334号公報、特開2006−337491号公報、特開2006−337492号公報、特開2006−337493号公報、特開2006−337569号公報、特開2007−009182号公報、特開2009−161744号公報に記載されている。これらの記載は、本明細書に参考として援用される。
【0027】
好ましくは、上記グルタルイミド樹脂は、下記一般式(1)で表される構造単位(以下、グルタルイミド単位とも称する)と、下記一般式(2)で表される構造単位(以下、(メタ)アクリル酸エステル単位とも称する)とを含む。
【化1】
式(1)において、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
3は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。式(2)において、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
6は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。
【0028】
グルタルイミド樹脂は、必要に応じて、下記一般式(3)で表される構造単位(以下、芳香族ビニル単位とも称する)をさらに含んでいてもよい。
【化2】
式(3)において、R
7は、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
8は、炭素数6〜10のアリール基である。
【0029】
上記一般式(1)において、好ましくは、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R
3は水素、メチル基、ブチル基、またはシクロヘキシル基であり、さらに好ましくは、R
1はメチル基であり、R
2は水素であり、R
3はメチル基である。
【0030】
上記グルタルイミド樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(1)におけるR
1、R
2、およびR
3が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0031】
グルタルイミド単位は、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位をイミド化することにより、形成することができる。また、グルタルイミド単位は、無水マレイン酸等の酸無水物、または、このような酸無水物と炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸等をイミド化することによっても、形成することができる。
【0032】
上記一般式(2)において、好ましくは、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R
6は水素またはメチル基であり、さらに好ましくは、R
4は水素であり、R
5はメチル基であり、R
6はメチル基である。
【0033】
上記グルタルイミド樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(2)におけるR
4、R
5、およびR
6が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0034】
上記グルタルイミド樹脂は、上記一般式(3)で表される芳香族ビニル単位として、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン等を含み、さらに好ましくはスチレンを含む。このような芳香族ビニル単位を有することにより、グルタルイミド構造の正の複屈折性を低減し、より低位相差の(メタ)アクリル系樹脂フィルムを得ることができる。
【0035】
上記グルタルイミド樹脂は、芳香族ビニル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、R
7およびR
8が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0036】
上記グルタルイミド樹脂における上記グルタルイミド単位の含有量は、例えばR
3の構造等に依存して変化させることが好ましい。グルタルイミド単位の含有量は、グルタルイミド樹脂の総構造単位を基準として、好ましくは1重量%〜80重量%であり、より好ましくは1重量%〜70重量%であり、さらに好ましくは1重量%〜60重量%であり、特に好ましくは1重量%〜50重量%である。グルタルイミド単位の含有量がこのような範囲であれば、耐熱性に優れた低位相差の(メタ)アクリル系樹脂フィルムが得られ得る。
【0037】
上記グルタルイミド樹脂における上記芳香族ビニル単位の含有量は、目的や所望の特性に応じて適切に設定され得る。用途によっては、芳香族ビニル単位の含有量は0であってもよい。芳香族ビニル単位が含まれる場合、その含有量は、グルタルイミド樹脂のグルタルイミド単位を基準として、好ましくは10重量%〜80重量%であり、より好ましくは20重量%〜80重量%であり、さらに好ましくは20重量%〜60重量%であり、特に好ましくは20重量%〜50重量%である。芳香族ビニル単位の含有量がこのような範囲であれば、低位相差、かつ、耐熱性および機械的強度に優れた(メタ)アクリル系樹脂フィルムが得られ得る。
【0038】
上記グルタルイミド樹脂には、必要に応じて、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位以外のその他の構造単位がさらに共重合されていてもよい。その他の構造単位としては、例えば、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体から構成される構造単位が挙げられる。これらのその他の構造単位は、上記グルタルイミド樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
【0039】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を含む。紫外線吸収剤としては、上記所望の特性が得られる限りにおいて、任意の適切な紫外線吸収剤が採用され得る。上記紫外線吸収剤の代表例としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、およびオキサジアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上記紫外線吸収剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜5重量部であり、より好ましくは0.2重量部〜3重量部である。紫外線吸収剤の含有量がこのような範囲であれば、紫外線を効果的に吸収することができ、かつ、フィルム成形時のフィルムの透明性が低下することがない。紫外線吸収剤の含有量が0.1重量部より少ない場合、紫外線の遮断効果が不十分となる傾向がある。紫外線吸収剤の含有量が5重量部より多い場合、着色が激しくなったり、成形後のフィルムのヘイズが高くなり、透明性が悪化したりする傾向がある。
【0041】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、目的に応じて任意の適切な添加剤を含有し得る。添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤;位相差低減剤等が挙げられる。含有される添加剤の種類、組み合わせ、含有量等は、目的や所望の特性に応じて適切に設定され得る。
【0042】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂と、紫外線吸収剤と、必要に応じてその他の重合体や添加剤等とを、任意の適切な混合方法で充分に混合し、予め熱可塑性樹脂組成物としてから、これをフィルム成形することができる。あるいは、(メタ)アクリル系樹脂と、紫外線吸収剤と、必要に応じてその他の重合体や添加剤等とを、それぞれ別々の溶液にしてから混合して均一な混合液とした後、フィルム成形してもよい。
【0043】
上記熱可塑性樹脂組成物を製造するには、例えば、オムニミキサー等、任意の適切な混合機で上記のフィルム原料をプレブレンドした後、得られた混合物を押出混練する。この場合、押出混練に用いられる混合機は、特に限定されるものではなく、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の押出機や加圧ニーダー等、任意の適切な混合機を用いることができる。
【0044】
上記フィルム成形の方法としては、例えば、溶液キャスト法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法等、任意の適切なフィルム成形法が挙げられる。溶融押出法が好ましい。溶融押出法は溶剤を使用しないので、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
【0045】
上記溶融押出法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。成形温度は、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。
【0046】
上記Tダイ法でフィルム成形する場合は、公知の単軸押出機や二軸押出機の先端部にTダイを取り付け、フィルム状に押出されたフィルムを巻取って、ロール状のフィルムを得ることができる。この際、巻取りロールの温度を適宜調整して、押出方向に延伸を加えることで、1軸延伸することも可能である。また、押出方向と垂直な方向にフィルムを延伸することにより、同時2軸延伸、逐次2軸延伸等を行うこともできる。
【0047】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、上記所望の位相差が得られる限りにおいて、未延伸フィルムまたは延伸フィルムのいずれでもよい。延伸フィルムである場合は、1軸延伸フィルムまたは2軸延伸フィルムのいずれでもよい。2軸延伸フィルムである場合は、同時2軸延伸フィルムまたは逐次2軸延伸フィルムのいずれでもよい。
【0048】
上記延伸温度は、フィルム原料である熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度近傍であることが好ましく、具体的には、好ましくは(ガラス転移温度−30℃)〜(ガラス転移温度+30℃)、より好ましくは(ガラス転移温度−20℃)〜(ガラス転移温度+20℃)の範囲内である。延伸温度が(ガラス転移温度−30℃)未満であると、得られるフィルムのヘイズが大きくなり、あるいは、フィルムが裂けたり、割れたりして所定の延伸倍率が得られないおそれがある。逆に、延伸温度が(ガラス転移温度+30℃)を超えると、得られるフィルムの厚みムラが大きくなったり、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質が十分に改善できなかったりする傾向がある。さらに、フィルムがロールに粘着するといったトラブルが発生しやすくなる傾向がある。
【0049】
上記延伸倍率は、好ましくは1.1〜3倍、より好ましくは1.3〜2.5倍である。延伸倍率がこのような範囲であれば、フィルムの伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を大幅に改善することができる。結果として、厚みムラが小さく、複屈折が実質的にゼロであり(したがって、位相差が小さく)、さらに、ヘイズが小さいフィルムを製造することができる。
【0050】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、その光学的等方性や機械的特性を安定化させるために、延伸処理後に熱処理(アニーリング)等を行うことができる。熱処理の条件は、任意の適切な条件を採用し得る。
【0051】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚みは、好ましくは10μm〜200μmであり、より好ましくは20μm〜100μmである。厚みが10μm未満であると、強度が低下するおそれがある。厚みが200μmを超えると、透明性が低下するおそれがある。
【0052】
上記(メタ)アクリル系樹脂フィルムの表面の濡れ張力は、好ましくは40mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上、さらに好ましくは55mN/m以上である。表面の濡れ張力が少なくとも40mN/m以上であると、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとハードコート層との密着性がさらに向上する。表面の濡れ張力を調整するために、任意の適切な表面処理を施すことができる。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン吹き付け、紫外線照射、火炎処理、化学薬品処理が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、コロナ放電処理、プラズマ処理である。
【0053】
C.浸透層
上記浸透層は、上記のとおり、(メタ)アクリル系樹脂フィルムにハードコート層形成用組成物が浸透することにより形成される。言い換えれば、浸透層は(メタ)アクリル系樹脂フィルムを形成する(メタ)アクリル系樹脂とハードコート層を形成する成分との相溶化領域の一部に対応し得る。
【0054】
上記浸透層において、(メタ)アクリル系樹脂フィルムを形成する(メタ)アクリル系樹脂の濃度が、ハードコート層側から基材層側にかけて連続的に高くなることが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂の濃度が連続的に変化すること、すなわち(メタ)アクリル系樹脂の濃度変化に起因する界面が形成されていないことにより界面反射を抑制することができ、干渉ムラの少ない光学積層体を得ることができるからである。
【0055】
上記浸透層の厚みの下限は、例えば1.0μmであり、好ましくは1.2μmであり、より好ましくは1.5μmであり、さらに好ましくは2μmである。浸透層の厚みの上限は、好ましくは((メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚み×70%)μmであり、より好ましくは((メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚み×40%)μmであり、さらに好ましくは((メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚み×30%)μmであり、特に好ましくは((メタ)アクリル系樹脂フィルム×20%)μmである。浸透層の厚みがこのような範囲であれば、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとハードコート層との密着性に優れ、かつ、干渉ムラの抑制された光学積層体を得ることができる。なお、浸透層の厚みは、ハードコート層の反射スペクトル、またはSEM、TEM等の電子顕微鏡による観察により測定することができる。反射スペクトルによる浸透層の厚みの測定方法の詳細は、実施例における評価方法として後述する。
【0056】
D.ハードコート層
ハードコート層は、上記のとおり、上記(メタ)アクリル系樹脂フィルム上にハードコート層形成用組成物を塗工して形成される。ハードコート層形成用組成物は、例えば、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化し得る硬化性化合物を含む。好ましくは、ハードコート層形成用組成物は、光硬化型の硬化性化合物を含む。硬化性化合物は、モノマー、オリゴマーおよびプレポリマーのいずれであってもよい。
【0057】
上記ハードコート層形成用組成物は、必須の構成成分として、1個以上のラジカル重合性不飽和基および芳香環を含有する硬化性化合物(A)と、2個以上のラジカル重合性不飽和基を含有するが、芳香環を含有しない硬化性化合物(B)と、1個のラジカル重合性不飽和基を含有するが、芳香環を含有しない単官能モノマー(C)と、を含む。ラジカル重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等が挙げられる。上記3種の硬化性化合物を含むハードコート層形成用組成物によれば、ハードコート層形成時における塗布層の加熱温度(後述)を低く設定しても、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとハードコート層との密着性および硬度に優れる光学積層体を得ることができる。
【0058】
硬化性化合物(A)は、ラジカル重合性不飽和基と芳香環とを各々1個以上含有する。硬化性化合物(A)は、(メタ)アクリル系樹脂とハードコート層の形成成分との相溶化領域の凝集力を向上させ得、結果として、基材層とハードコート層との密着性を向上させ得る。また、硬化性化合物(A)は、ハードコート層を高屈折率化させ得るので、ハードコート層上に低屈折率の反射防止層を積層した場合に、より反射率の低い反射防止フィルムを得ることができる。
【0059】
硬化性化合物(A)が含有するラジカル重合性不飽和基の数は、好ましくは1個〜4個である。また、硬化性化合物(A)が含有する芳香環の数は、好ましくは1個〜6個である。芳香環としては、ベンゼン環、複素環またはこれらの縮合環が例示できる。好ましくは、芳香環はベンゼン環である。芳香環は置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0060】
硬化性化合物(A)の具体例としては、エトキシ化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のモノマー、ベンジル基、フェニル基等のアリール基またはフルオレン構造を含有する(メタ)アクリレートのオリゴマーまたはプレポリマーが挙げられる。硬化性化合物(A)は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
硬化性化合物(A)の分子量(オリゴマーまたはポリマーの場合は重量平均分子量)は、好ましくは250以上であり、より好ましくは450を超え、さらに好ましくは450〜10000である。分子量が当該範囲内であれば、相溶化領域の凝集力が十分に向上され得るので、基材層とハードコート層との密着性に優れた光学積層体が得られ得る。
【0062】
ハードコート層形成用組成物中の全硬化性化合物に対する硬化性化合物(A)の含有割合は、10重量%〜60重量%であり、好ましくは15重量%〜55重量%であり、さらに好ましくは20重量%〜50重量%である。このような範囲であれば、ハードコート層形成時の加熱温度を低く、加熱時間を短く設定することができ、加熱による変形(例えば、(メタ)アクリル系樹脂フィルムの収縮)が抑制された光学積層体を効率よく生産することができる。
【0063】
硬化性化合物(B)は、2個以上のラジカル重合性不飽和基を含有する一方で、芳香環を含有しない。ハードコート層形成用組成物がラジカル重合性不飽和基を2個以上含有する多官能な硬化性化合物(B)を含むことにより、十分な硬度を有するハードコート層が形成され得る。
【0064】
1つの実施形態において、ハードコート層形成用組成物は、硬化性化合物(B)として、9個以上のラジカル重合性不飽和基を含有する硬化性化合物(B1)を含む。硬化性化合物(B1)を含むハードコート層形成用組成物を塗工してハードコート層を形成すれば、ハードコート層形成用組成物に溶出した(メタ)アクリル系樹脂フィルム中の成分(代表的には、(メタ)アクリル系樹脂フィルム中の樹脂成分)が、ハードコート層形成時にハードコート層の空気界面にまで拡散することを防いで、硬度に優れる光学積層体を得ることができる。好ましくは、ハードコート層に硬化性化合物(B1)によるブロック層が形成される。ブロック層が形成されていれば、より硬度に優れる光学積層体を得ることができる。硬化性化合物(B1)が含有するラジカル重合性不飽和基の数は、好ましくは10個以上であり、より好ましくは15個以上であり、さらに好ましくは20個〜100個である。硬化性化合物(B1)が含有するラジカル重合性不飽和基の数が多いほど、ハードコート層自体の硬度を向上させることができる。
【0065】
硬化性化合物(B1)としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー;不飽和基を有するメタクリレートポリマー等が挙げられる。なかでも、反応性と透明性の点から、ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーまたはプレポリマーが好ましい。硬化性化合物(B1)は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルとポリオールとから得られるヒドロキシ(メタ)アクリレートを、ジイソシアネートと反応させることにより得ることができる。
【0067】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、トリシクロデカンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジオール、スピログリコール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコース類等が挙げられる。
【0069】
上記ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族、脂肪族または脂環族の各種のジイソシアネート類を使用することができる。上記ジイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、およびこれらの水添物等が挙げられる。
【0070】
硬化性化合物(B1)の重量平均分子量は、好ましくは1000以上であり、より好ましくは1500以上であり、さらに好ましくは2000〜50000である。硬化性化合物(B1)は9個以上のラジカル重合性不飽和基を有しているので、硬化性化合物(B1)が比較的小さい重量平均分子量であっても、(メタ)アクリル系樹脂フィルム中の成分がハードコート層の空気界面にまで拡散することを防ぎ、硬度に優れる光学積層体を得ることができる。もちろん、より硬度に優れる光学積層体を得ること等を目的として、より重量平均分子量の大きい硬化性化合物(B1)を用いてもよい。
【0071】
別の実施形態において、ハードコート層形成用組成物は、硬化性化合物(B)として、2個〜8個のラジカル重合性不飽和基を有する硬化性化合物(B2)を含み得る。当該別の実施形態において、ハードコート層形成用組成物は、硬化性化合物(B)として、硬化性化合物(B2)のみを含んでいてもよいが、より硬度に優れた光学積層体を得る観点からは、上記硬化性化合物(B1)と硬化性化合物(B2)との両方を含むことが好ましい。
【0072】
硬化性化合物(B2)が含有するラジカル重合性不飽和基の数は、例えば2個〜6個であり得る。ハードコート層形成用組成物が2個〜6個のラジカル重合性不飽和基を含有する硬化性化合物(B2)を含んでいれば、ハードコート層形成時における塗布層の加熱温度を低く設定しても、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとハードコート層との密着性に優れる光学積層体を得ることができる。
【0073】
硬化性化合物(B2)としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパントテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびこれらのオリゴマーまたはポリマー等の(メタ)アクリロイル基を有する化合物;ウレタン(メタ)アクリレート、およびこれらのオリゴマーまたはプレポリマー等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
硬化性化合物(B2)は、好ましくは水酸基を有する。ハードコート層形成用組成物が、このような硬化性化合物(B2)を含んでいれば、ハードコート層形成時の加熱温度をより低く、加熱時間をより短く設定することができ、加熱による変形が抑制された光学積層体を効率よく生産することができる。また(メタ)アクリル系樹脂フィルムとハードコート層との密着性に優れる光学積層体を得ることができる。水酸基を有する硬化性化合物(B2)としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0075】
硬化性化合物(B2)の重量平均分子量は、好ましくは3000以下であり、より好ましくは2000以下であり、さらに好ましくは1500以下であり、特に好ましくは1000以下であり、特に好ましくは500以下である。比較的小さい重量平均分子量を有する硬化性化合物(B2)を用いることにより、浸透層の厚みを大きくすることができる。その結果、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとハードコート層との密着性に優れ、かつ、干渉ムラの抑制された光学積層体を得ることができる。
【0076】
ハードコート層形成用組成物中の全硬化性化合物に対する硬化性化合物(B)の含有割合は、30重量%〜80重量%であり、好ましくは30重量%〜75重量%であり、さらに好ましくは35重量%〜70重量%、特に好ましくは40重量%〜60重量%である。このような範囲であれば、十分な硬度を有する光学積層体を得ることができる。
【0077】
ハードコート層形成用組成物が、硬化性化合物(B1)および硬化性化合物(B2)の両方を含む場合、これらの配合重量比(B1/B2)は、例えば30/70〜99/1、好ましくは40/60〜99/1、より好ましくは50/50〜99/1であり得る。
【0078】
単官能モノマー(C)は、1個のラジカル重合性不飽和基を含有する一方で、芳香環を含有しない。単官能モノマー(C)は、(メタ)アクリル系樹脂フィルムに容易に浸透するので、浸透層が好適に形成され得る。また、ハードコート層形成用組成物が単官能モノマー(C)を含んでいれば、ハードコート層形成時の加熱温度を低く、加熱時間を短く設定することができ、加熱による変形が抑制された光学積層体を効率よく生産することができる。
【0079】
単官能モノマー(C)の重量平均分子量は、好ましくは500以下、より好ましくは300以下、さらに好ましくは250未満、特に好ましくは200未満である。このような単官能モノマーであれば、(メタ)アクリル系樹脂フィルムに容易に浸透および拡散する。このような単官能モノマーとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソホロニルアクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0080】
単官能モノマー(C)は、好ましくは水酸基、エーテル、アミン(モルホリン環を含む)等の極性基を有し、より好ましくは水酸基を有する。このような単官能モノマーであれば、(メタ)アクリル系樹脂フィルムに対する浸透性または溶解性に優れる。その結果、ハードコート層形成時の加熱温度をより低く、加熱時間をより短く設定することができ、加熱による変形が抑制された光学積層体を効率よく生産することができる。また、上記ハードコート層形成用組成物が、水酸基を有する単官能モノマーを含んでいれば、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとハードコート層との密着性に優れる光学積層体を得ることができる。このような単官能モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンメタノールモノアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のN−(2−ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等が挙げられる。なかでも好ましくは、4−ヒドロキシブチルアクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドである。
【0081】
単官能モノマー(C)の沸点は、ハードコート層形成時における塗布層の加熱温度(後述)より高いことが好ましい。上記単官能モノマーの沸点は、例えば、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは180℃以上であり、特に好ましくは200℃以上である。このような範囲であれば、ハードコート層形成時における加熱により単官能モノマーが揮発することを防止でき、(メタ)アクリル系樹脂フィルムに単官能モノマーを十分に浸透させることができる。
【0082】
ハードコート層形成用組成物中の全硬化性化合物に対する単官能モノマー(C)の含有割合は、好ましくは10重量%〜40重量%であり、より好ましくは12重量%〜35重量%、さらに好ましくは15重量%〜30重量%である。単官能モノマー(C)の含有割合がこのような範囲内であれば、ハードコート層形成時の加熱温度を低く、加熱時間を短く設定することができ、加熱による変形が抑制された光学積層体を効率よく生産することができる。
【0083】
ハードコート層形成用組成物中の全硬化性化合物に対する前記硬化性化合物(A)と単官能モノマー(C)との合計含有割合は、好ましくは20重量%〜70重量%、より好ましくは30重量%〜65重量%、さらに好ましくは40重量%〜60重量%である
【0084】
上記ハードコート層形成用組成物は、好ましくは、任意の適切な光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0085】
1つの実施形態においては、ハードコート層の基材層とは反対側の表面は、凹凸構造を有する。ハードコート層の表面が凹凸構造であれば、光学積層体に防眩性を付与することができる。このような凹凸構造を形成する方法としては、例えば、ハードコート層形成用組成物に微粒子を含有させる方法が挙げられる。微粒子は無機微粒子であってもよく、有機微粒子であってもよい。無機微粒子としては、例えば、酸化ケイ素微粒子、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化錫微粒子、炭酸カルシウム微粒子、硫酸バリウム微粒子、タルク微粒子、カオリン微粒子、硫酸カルシウム微粒子等が挙げられる。有機微粒子としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂粉末(PMMA微粒子)、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等が挙げられる。これらの微粒子は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
上記微粒子の形状は、任意の適切な形状が採用され得る。好ましくは略球形であり、より好ましくはアスペクト比が1.5以下の略球形である。微粒子の重量平均粒径は、好ましくは1μm〜30μmであり、より好ましくは2μm〜20μmである。微粒子の重量平均粒径は、例えば、コールターカウント法により測定できる。
【0087】
上記ハードコート層形成用組成物が上記微粒子を含む場合、上記微粒子の含有割合は、ハードコート層形成用組成物中のモノマー、オリゴマーおよびプレポリマーの合計量に対して、好ましくは1重量%〜60重量%であり、より好ましくは2重量%〜50重量%である。
【0088】
上記ハードコート層形成用組成物は、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、レベリング剤、ブロッキング防止剤、分散安定剤、揺変剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、分散剤、界面活性剤、触媒、フィラー、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0089】
上記レベリング剤としては、例えば、フッ素系またはシリコーン系のレベリング剤が挙げられ、好ましくは、シリコーン系レベリング剤である。上記シリコーン系レベリング剤としては、例えば、反応性シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられる。なかでも好ましくは、反応性シリコーンである。反応性シリコーンを添加すれば、ハードコート層表面に滑り性が付与され耐擦傷性が長期間にわたり持続するようになる。上記レベリング剤の含有割合は、ハードコート層形成用組成物中のモノマー、オリゴマーおよびプレポリマーの合計量に対して、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは0.01重量%〜5重量%である。
【0090】
上記ハードコート層形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン(CPN)、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、シクロヘキサノール、イソプロピルアルコール(IPA)、酢酸イソブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
本発明によれば、溶媒を含まないハードコート層形成用組成物、あるいは溶媒として(メタ)アクリル系樹脂フィルム形成材料の貧溶媒のみを含むハードコート層形成用組成物を用いても、ハードコート形成用組成物が(メタ)アクリル系樹脂フィルムに浸透して、所望の厚みを有する浸透層を形成することができる。
【0092】
上記ハードコート層の厚みは、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは3μm以上であり、さらに好ましくは4μm〜10μmである。このような範囲であれば、硬度に優れる光学積層体を得ることができる。また、本発明の光学積層体は、上記のように(メタ)アクリル系樹脂フィルム中の成分のハードコート層(ハードコート層形成用組成物)への拡散が抑制されるため、ハードコート層の厚みを薄くしても、硬度に優れる。
【0093】
上記のとおり、(メタ)アクリル系樹脂フィルムを形成する(メタ)アクリル系樹脂が、ハードコート層形成用組成物に溶出して、ハードコート層中に当該(メタ)アクリル系樹脂が存在していてもよい。本発明においては、多官能の硬化性化合物(B)を含むハードコート層形成用組成物によりハードコート層を形成しているため、当該(メタ)アクリル系樹脂がハードコート層の表面側へ移動することを抑制し得る。1つの実施形態においては、当該(メタ)アクリル系樹脂の濃度が、浸透層の基材層側からハードコート層へ連続的に低くなる。このような実施形態においては、(メタ)アクリル系樹脂の濃度が連続的に変化すること、すなわち(メタ)アクリル系樹脂の濃度変化に起因する界面が形成されていないことにより界面反射を抑制することができ、干渉ムラの少ない光学積層体を得ることができる。別の実施形態においては、当該(メタ)アクリル系樹脂とハードコート層形成用組成物とが相分離し、ハードコート層の浸透層とは反対側にブロック層が形成される。このような実施形態においても、当該(メタ)アクリル系樹脂の濃度が、浸透層の基材層側からブロック層を除くハードコート層へ連続的に低くなることが好ましい。
【0094】
ブロック層の厚みは、好ましくは1μm〜10μmであり、さらに好ましくは2μm〜5μmである。
なお、ブロック層の厚みは、ハードコート層の反射スペクトル、またはSEM、TEM等の電子顕微鏡による観察により測定することができる。
【0095】
E.その他の層
本発明の光学積層体は、必要に応じて、ハードコート層の外側に任意の適切なその他の層が配置され得る。代表例としては、反射防止層およびアンチグレア層が挙げられる。反射防止層およびアンチグレア層としては、当業界で通常用いられている反射防止層およびアンチグレア層が採用され得る。
【0096】
F.光学積層体の製造方法
本発明の光学積層体の製造方法は、(メタ)アクリル系樹脂フィルム上にハードコート層形成用組成物を塗布して塗布層を形成し、該塗布層を加熱することを含む。好ましくは、ハードコート層は、加熱後の塗布層を硬化処理して形成される。
【0097】
ハードコート層形成用組成物の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、スロットオリフィスコート法、カーテンコート法、ファウンテンコート法、コンマコート法が挙げられる。
【0098】
上記塗布層の加熱温度は、ハードコート層形成用組成物の組成に応じて、適切な温度に設定され得、好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂フィルムに含まれる樹脂のガラス転移温度以下に設定される。(メタ)アクリル系樹脂フィルムに含まれる樹脂のガラス転移温度以下の温度で加熱すれば、加熱による変形が抑制された光学積層体を得ることができる。上記塗布層の加熱温度は、例えば、50℃以上100℃未満、好ましくは50℃以上80℃未満、より好ましくは50℃〜75℃である。このような範囲の温度で加熱すれば、ハードコート層形成用組成物中のモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマー(特に、単官能モノマー(C))が(メタ)アクリル系樹脂フィルム中に良好に浸透および拡散する。当該加熱、その後の硬化処理を経て、浸透したハードコート層形成用組成物および(メタ)アクリル系樹脂フィルムの形成材料により、上記C項で説明した浸透層が形成される。その結果、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとハードコート層との密着性に優れ、かつ干渉ムラの抑制された光学積層体を得ることができる。なお、ハードコート層形成用組成物が溶媒を含む場合、当該加熱により、塗布したハードコート層形成用組成物を乾燥させることができる。
【0099】
1つの実施形態においては、上記加熱温度は硬化性化合物(A)および単官能モノマー(C)の含有割合に応じて設定され得る。例えば、ハードコート層形成用組成物中の全硬化性化合物に対する前記硬化性化合物(A)と単官能モノマー(C)との合計含有割合が20重量%〜70重量%であれば、80℃未満の加熱温度で、密着性および硬度が優れ、かつ、干渉ムラおよび加熱による変形が抑制された光学積層体が得ることが可能であり、環境負荷が小さく効率のよい製造プロセスとすることができる。
【0100】
上記硬化処理としては、任意の適切な硬化処理が採用され得る。代表的には、硬化処理は紫外線照射により行われる。紫外線照射の積算光量は、好ましくは200mJ〜400mJである。
【実施例】
【0101】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0102】
(1)鉛筆硬度
実施例および比較例で得られた光学積層体のハードコート層側表面について、JIS K 5400に準じて(荷重500g)、鉛筆硬度を測定し、以下の基準で評価した。
○:鉛筆硬度が2H以上である
×:鉛筆硬度がH以下である
(2)ハードコート層の密着性
ハードコート層の基材フィルムに対する密着性を、JIS K−5400の碁盤目剥離試験(基板目数:100個)に準じて測定し、以下の基準で評価した。
○:剥離数が0である
×:剥離数が1以上である
(3)干渉ムラ
実施例および比較例で得られた光学積層体の基材フィルム側に、黒色アクリル板(三菱レイヨン社製、厚み2mm)をアクリル系粘着剤を介して貼着した後、3波長蛍光灯下で、干渉ムラを目視観察し、以下の基準で評価した。
○:干渉ムラの発生無し
×:干渉ムラの発生が認められる
(4)浸透層の厚み
実施例および比較例で得られた光学積層体の基材層側に、黒色アクリル板(三菱レイヨン社製、厚み2mm)を、厚み20μmのアクリル系粘着剤を介して貼着した。次いで、ハードコート層の反射スペクトルを、瞬間マルチ測光システム(大塚電子社製、商品名:MCPD3700)を用いて以下の条件で測定し、FFTスペクトルのピーク位置から、(ハードコート層+浸透層)の厚みを評価した。なお屈折率は、アタゴ社製のアッベ屈折率計(商品名:DR−M2/1550)を用い、中間液としてモノブロモナフタレンを選択して測定した。
・反射スペクトル測定条件
リファレンス:ミラー
アルゴリズム:FFT法
計算波長:450nm〜850nm
・検出条件
露光時間:20ms
ランプゲイン:ノーマル
積算回数:10回
・FFT法
膜厚値の範囲:2〜15μm
膜厚分解能:24nm
また、ハードコート層の厚みは、下記積層体(R)についての上記反射スペクトル測定により評価した。
・積層体(R):基材フィルムとしてPET基材(東レ社製、商品名:U48−3、屈折率:1.60)を用い、塗布層の加熱温度を60℃とした以外は、実施例1と同様にして得た。
なお、当該積層体に用いられるPET基材には、ハードコート層形成用組成物が浸透しないので、積層体(R)から得られるFFTスペクトルのピーク位置から、ハードコート層のみの厚みが測定される。当該評価の結果、ハードコート層の厚みは5.3μmであった。
((ハードコート層+浸透層)の厚み)−((ハードコート層)の厚み)から算出される正の値を浸透層の厚みとした。
【0103】
<製造例1>基材フィルムAの作製
特開2010−284840号公報の製造例1に記載のイミド化MS樹脂(重量平均分子量:105,000)100重量部およびトリアジン系紫外線吸収剤(アデカ社製、商品名:T−712)0.62重量部を、2軸混練機にて220℃にて混合し、樹脂ペレットを作製した。得られた樹脂ペレットを、100.5kPa、100℃で12時間乾燥させ、単軸の押出機にてダイス温度270℃でTダイから押出してフィルム状に成形した(厚み160μm)。さらに当該フィルムを、その搬送方向に150℃の雰囲気下に延伸し(厚み80μm)、次いでフィルム搬送方向と直交する方向に150℃の雰囲気下に延伸して、厚み40μmの基材フィルムA((メタ)アクリル系樹脂フィルム)を得た。得られた基材フィルムAの波長380nmの光の透過率は8.5%、面内位相差Reは0.4nm、厚み方向位相差Rthは0.78nmであった。また得られた基材フィルムAの透湿度は、61g/m
2・24hrであった。なお、光透過率は、日立ハイテク(株)社製の分光光度計(装置名称;U−4100)を用いて波長範囲200nm〜800nmで透過率スペクトルを測定し、波長380nmにおける透過率を読み取った。また、位相差値は、王子計測機器(株)製 商品名「KOBRA21−ADH」を用いて、波長590nm、23℃で測定した。透湿度は、JIS K 0208に準じた方法により、温度40℃、相対湿度92%の条件で測定した。
【0104】
<実施例1>
硬化性化合物(A)としてのフェノールノボラック系アクリレート(日立化成社製、製品名「ヒタロイドUV251」)30部と、硬化性化合物(B)としてのウレタンアクリレートのオリゴマー(Mw=2300、官能基数:15)とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(新中村化学社製、製品名「UA53H」)70部と、単官能モノマー(C)としてのヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学社製、製品名「4−HBA」)20部と、レベリング剤(DIC社製、商品名:PC4100)0.5部と、光重合開始剤(チバ・ジャパン社製、商品名:イルガキュア907)3部とを混合し、固形分濃度が50%となるように、メチルイソブチルケトンで希釈して、ハードコート層形成用組成物を調製した。
【0105】
製造例1で得られた基材フィルムA上に、得られたハードコート層形成用組成物を塗布して塗布層を形成し、当該塗布層を75℃で1分間加熱した。加熱後の塗布層に高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm
2の紫外線を照射して塗布層を硬化させて、基材層、ハードコート層および浸透層を形成し、光学積層体を得た。
【0106】
<実施例2>
硬化性化合物(A)としてフルオレン含有アクリレートのオリゴマー(大阪ガスケミカルズ社製、製品名「EA−HR034」)を30部用いたこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0107】
<実施例3>
硬化性化合物(A)としてフルオレン含有アクリレートのオリゴマー(共栄社化学社製、製品名「HIC−GL」)を30部用いたこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0108】
<実施例4>
硬化性化合物(A)としてエトキシ化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート(新中村化学社製、製品名「A−LEN−10」)を30部用いたこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0109】
<実施例5>
フェノールノボラック系アクリレート(日立化成社製、製品名「ヒタロイドUV251」)の配合量を50部としたこと、硬化性化合物(B)(新中村化学社製、製品名「UA53H」)の配合量を50部としたこと、および、加熱温度を65℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0110】
<実施例6>
硬化性化合物(A)としてフルオレン含有アクリレートのオリゴマー(大阪ガスケミカルズ社製、製品名「EA−HR034」)を50部用いたこと、硬化性化合物(B)(新中村化学社製、製品名「UA53H」)の配合量を50部としたこと、および、加熱温度を65℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0111】
<実施例7>
単官能モノマー(C)としてアクリロイルモルホリン(興人社製、製品名「ACMO」)を30部用いたこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0112】
<実施例8>
単官能モノマー(C)としてシクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成社製、製品名「CHDMMA」)を30部用いたこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0113】
<比較例1>
硬化性化合物(A)を添加しなかったこと、および、硬化性化合物(B)(新中村化学社製、製品名「UA53H」)の配合量を100部としたこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0114】
<比較例2>
硬化性化合物(A)を添加しなかったこと、硬化性化合物(B)(新中村化学社製、製品名「UA53H」)の配合量を100部としたこと、および、ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学社製、製品名「4−HBA」)の配合量を50部としたこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0115】
<比較例3>
単官能モノマー(C)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0116】
<比較例4>
フェノールノボラック系アクリレート(日立化成社製、製品名「ヒタロイドUV251」)の配合量を50部としたこと、硬化性化合物(B)(新中村化学社製、製品名「UA53H」)の配合量を100部としたこと、および、単官能モノマー(C)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0117】
<比較例5>
硬化性化合物(A)としてフルオレン含有アクリレートのオリゴマー(大阪ガスケミカルズ社製、製品名「EA−HR034」)を30部用いたこと、および、単官能モノマー(C)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0118】
<比較例6>
フェノールノボラック系アクリレート(日立化成社製、製品名「ヒタロイドUV251」)の配合量を100部としたこと、および、硬化性化合物(B)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。
【0119】
上記実施例および比較例で得られた光学積層体の各種特性を評価した。評価結果をハードコート層形成用組成物の組成と共に表1に示す。
【表1】
【0120】
表1からも明らかなように、実施例の光学積層体は、80℃未満の加熱温度で浸透層が好適に形成されており、干渉ムラが認められない。さらに、ハードコート層と基材層との密着性に優れ、かつ、硬度にも優れる。一方、芳香環含有硬化性化合物(A)を含まないハードコート層形成用組成物を用いて得られた比較例1および2の光学積層体では、浸透層が形成されており、干渉ムラは認められないものの、密着性が不十分である。また、単官能モノマー(C)を含まない比較例3〜5のハードコート層形成用組成物を用いて得られた光学積層体では、浸透層の形成が不十分であり、その結果、密着性と干渉ムラに問題がある。また、多官能硬化性化合物(B)を含まないハードコート層形成用組成物を用いて得られた比較例6の光学積層体では、鉛筆硬度がH以下である。