(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
記録材に形成されたトナー像を記録材に加熱定着するための定着用回転体と、前記定着用回転体の、前記定着用回転体の母線方向への移動を規制する規制部材と、熱によって気化した気化成分を捕集する捕集部材と、を有する定着装置において、
前記捕集部材は前記定着用回転体の曲面部に対向して配置されており、且つ前記規制部材に位置決めされていることを特徴とする定着装置。
前記装置は更に、前記定着用回転体との間に、記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧部材と、前記規制部材を介して前記ニップ部に圧力を付与する圧力付与機構と、前記ニップ部に掛かる圧力を解除する圧力解除機構と、を有し、前記圧力解除機構により前記ニップ部に掛かる圧力を解除すると前記規制部材が移動し、前記規制部材の移動と共に前記捕集部材も移動することを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
定着用回転体と、熱によって気化した気化成分を捕集する捕集部材と、を有し、記録材に形成されたトナー像を記録材に加熱定着する定着ユニットを有する画像形成装置において、
記録材の通紙条件に応じて前記定着用回転体と前記捕集部材との距離が変わるように前記捕集部材が移動可能となっていることを特徴とする画像形成装置。
前記装置は、画像面側が下になって記録材が排出されるフェースダウントレイと、装置のドアを開くことにより現れ、画像面側が上になって記録材が排出されるフェースアップトレイと、を有し、前記通紙条件は、前記フェースダウントレイに記録材を排出するフェースダウン排出モードと、前記フェースアップトレイに記録材を排出するフェースアップ排出モードであることを特徴とする請求項10〜12いずれか一項に記載の画像形成装置。
前記フェースアップ排出モードの時は前記フェースダウン排出モードの時よりも、前記捕集部材は前記定着用回転体から離間することを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
前記捕集部材の温度に関わる情報は、印字面情報、定着モード情報、プリント枚数情報のうち少なくとも一つであることを特徴とする請求項19〜21いずれか一項に記載の定着装置。
前記装置は、前記捕集部材の温度を検知する温度検知素子と、前記温度検知素子の検知温度に応じて前記捕集部材を移動させる制御部と、を有することを特徴とする請求項19に記載の定着装置。
前記装置は、前記定着用回転体を回転させるモータを有し、前記捕集部材は前記モータの動力で移動することを特徴とする請求項19〜23いずれか一項に記載の定着装置。
前記装置は、温度に応じて形状が変化する調整部材を有し、前記捕集部材は前記調整部材の形状変化に伴い移動することを特徴とする請求項19〜23いずれか一項に記載の定着装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施例1)
[全体構成]
図1及び
図2は、画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。画像形成装置1は、電子写真記録方式によって画像を形成するものであり、シート(記録材)Sを画像形成部へ搬送してトナー像を転写し、そのシートSを定着部へ搬送してトナー像を定着した後、排出部へと排出するものである。
【0016】
シートSは、装置下部に装填されたカセット2に積載収納されている。このシートSは、給送ローラ21によって最上位のシートから順に繰り出され、搬送ローラ対3により画像形成部に送られる。ここで、画像形成部には、感光体ドラム41や、感光体ドラム41に画像を書き込むレーザスキャナ14や、感光体ドラム41に形成されたトナー像を記録材に転写する転写ローラ42等がある。これらの構成は周知なので詳細な説明は割愛する。なお、
図1中のPは感光体やドラム41及び感光体ドラム41に作用するプロセス部を一体化したカートリッジを示している。なお、トナーは、オフセット対策として、炭化水素化合物等からなる離型ワックス成分を含有したものである。
【0017】
未定着のトナー画像が形成されたシートSは定着部(定着ユニット)100に送られる。定着部100は、定着フィルム(定着用回転体)と、定着フィルムの筒の中に配置された加熱定着用の熱源としてのセラミックヒータ、等によって構成される加熱ユニット101と、加熱ユニット101と圧接する加圧ローラ102を有する。また、定着部100は、定着用回転体や加圧ローラ、後述する捕集部材等を収容するフレーム107を有する。加熱ユニット101と加圧ローラ102によってシートを挟持搬送する定着ニップ部を形成している。シートSは定着ニップ部を通過しつつ加熱されることで定着処理されることになる。そして、シートSは、シート排出経路5を経由して、排出ローラ対6により機外に排出され、排出トレイ(フェースダウントレイ)7上に積載される。
【0018】
以上の説明は、画像面側が下になった状態の記録材を受けるフェースダウントレイを用いたフェースダウン排出モードの説明である。
【0019】
本例の装置には、
図2に示すように、装置のドア9を開くことにより現れ、画像面側が上になった状態の記録材を受けるフェースアップトレイ8が設けられている。ドア9とトレイ8は一体成型物でもよい。本例の装置は、このドア9を開いた状態で記録材を排出するフェースアップ排出モードも実行可能である。このように、本例の装置は、通紙条件として、フェースダウントレイに記録材を排出するフェースダウン排出モードと、フェースアップトレイに記録材を排出するフェースアップ排出モードを選択できる。
【0020】
[定着ユニット100]
画像形成装置1に搭載される定着ユニット100の詳細な構成に関して、
図5〜
図7を用いて説明する。
図5は定着ユニット100の分解図、
図6及び
図7は定着ユニット100における定着フィルムと捕集部材の関係を示す断面図である。なお、
図6(a)及び
図7(a)は定着ユニットの側面図であり、
図6(b)及び
図7(b)は定着ユニットをその長手方向の途中で切断した時の断面図である。
【0021】
定着ユニット100は、加熱ユニット101と加圧ローラ(加圧部材)102を有する。加熱ユニット101が加圧ローラ102に押圧されることにより定着ニップ部Nを形成する。加熱ユニット101は、加熱定着用の熱源としてのヒータ(セラミックヒータ)103、ヒータ103を支持する樹脂製のヒータホルダ104、ヒータホルダ104の外周を回転しシートSと直接接触することで、シートSに熱を伝えるエンドレスベルト状の定着フィルム(定着用回転体)105を有している。定着フィルムはポリイミド等の樹脂をベース層としたもの、或いはステンレス等の金属をベース層としたものであり、これらのベース層上に必要に応じてゴム層を設けたものである。ヒータホルダ104は金属製のステー110により補強されている。定着フィルム105の母線方向の端部と対向する位置であって、ステー110の端部の座面110A上にはフランジ106が配置されている。フランジ106は、定着フィルム105の母線方向への寄り移動を規制する規制部材の役割を担っている。なお、フランジ106はヒータホルダ104を保持しており、加熱ユニット101全体を定着部のフレーム107に支持させる役目も担っている。フレーム107には加圧ローラ102も支持されている。108は定着ニップ部Nを形成するための加圧バネ(圧力付与機構)であり、後述する捕集部材109の穴部109Hを通過しフランジ106の座面106Bを押圧している。
図6(b)に示すように、フランジ106が加圧バネ108によって圧力Fnで押圧されることにより加熱ユニット101と加圧ローラ102が圧接される。これにより、定着ニップ部Nを形成する。即ち、圧力付与機構は規制部材106を介してニップ部に圧力を付与している。ワックス成分を含有するトナーを用いて形成されたトナー像を坦持するシートSは、定着ニップ部Nで定着処理される。
【0022】
[捕集部材の構成]
次に、ワックスから気化した成分を捕集する構成について、
図5〜
図7を用いて説明する。109は、ワックスから気化し、その後、固化した成分を液相状態として(濡れを利用して)捕集する捕集部材(熱によって気化した気化成分を捕集する捕集部材)である。つまり、ワックスから気化した成分と捕集部材との間に分子間力が働くことで、この成分が捕集部材に吸着する。捕集部材は耐熱性が要求されるため、材質はエンジニアリングプラスチックが好ましい。本例の捕集部材109の材質は、PBT(polybutylene terephtalate)である。捕集部材109は、フランジ106の突き当て部106Aと当接する第一当接部109Aと、後述するレバー50が当接する第二当接部109Bと、ワックス成分が吸着する捕集部109Cと、を有する。捕集部材109の捕集部109Cは、(定着フィルムを介した)熱源103からの放射熱(定着フィルムの放射熱)により温まる。放射熱を受けることによって素早く温まるように、捕集部109Cの厚みは1mmとした。定着処理中の捕集部109Cの温度は、放射熱を受けることにより、少なくとも一種類のワックス成分が液相状態を保つ温度範囲内を推移する。このため捕集部材109は定着フィルムの表面に隣接して(定着フィルムの曲面部に対向して)設けられている。捕集部109Cがこのような温度となるように、
図6(b)で示す捕集部109Cと定着フィルム105の距離t(捕集部材109の第一当接部109Aがフランジ106の突き当て部106Aに位置決めされた状態の距離)が設定されている。本例ではt=2mmに設定している。捕集部109Cは定着フィルム105の外面に対向する部分であり、定着フィルムからの熱を効率よく受けて昇温しやすくなっている。なお、捕集部材109の第一当接部109Aがフランジ106の突き当て部106Aに位置決めされた状態の距離である距離tは、フェースダウン排出モード時に適した距離である。距離tは、定着処理中に捕集部材が保つべき温度、捕集部材の材質や形状に左右される捕集部材109の熱容量、加熱ユニット101の制御目標温度、等の各パラメータによって異なってくる。
【0023】
このように、本例の定着ユニットは、フレーム107内に、記録材に形成されたトナー像を加熱定着するための定着用回転体105を有する。更に、定着処理中に気化した成分を液相状態として捕集するように加熱定着用の熱源からの放射熱により加熱される捕集部材109を有する。
【0024】
ところで、捕集部材109は、定着フィルムからの距離が距離tより大きくなるように移動可能になっている。具体的には、FU排出モード時は、定着フィルムからの距離が距離t+αとなる。本例ではα=1mmに設定し、t+α=3mmに設定した。
【0025】
FU排出モードでプリントする時、ドア9が開いているため、装置内のエアフローがFD排出モードでプリントする時と異なった状態になる。本例の画像形成装置の場合、FU排出モードでプリントする時の定着器内の雰囲気温度は、FD排出モードでプリントする時よりも高くなることが判明した。FU排出モード時はFD排出モード時よりも定着器内のエアフローが小さくなったためと思われる。このため、プリンタの設置環境やヒータの制御温度が同じ条件下であっても、FU排出モード時はFD排出モード時よりも定着フィルムの周囲の温度が高くなりやすい。このような、通紙条件の変化に対応するため、本例の捕集部材は移動可能な構成となっている。以下、捕集部材の移動機構について説明する。
【0026】
[排紙口切り換え時の捕集部材移動構成]
排紙口を切り換えた時の捕集部材の位置について、
図3〜
図7を用いて説明する。上述のように、捕集部材109は、捕集部材の一部である当接部109Aがフランジ106の突き当て部106Aに突き当たることで位置決めされている。この位置はFD排出モードに適した位置である。捕集部材は、この位置よりも、定着フィルムの径方向(
図6(b)の矢印A方向)に対して移動可能となっている。
【0027】
一方、ドア9には、リンク(移動部材)51、52が接続されている。リンク51、52は捕集部材109を持ち上げるためのレバー50を動かすためのものであり、ドア9が閉じている状態では、レバー50、リンク51、52はそれぞれ
図3の状態である。
【0028】
図4のように、ドア9を開くとリンク51、52が広がり、リンク51がレバー50を
図4の右方向へ押す。レバー50は定着器に回動可能に設けられている部材である。リンク51がレバー50を押すと、レバー50が回動し、レバー50の一部50Bが捕集部材109の第二当接部109Bを押し上げ、捕集部材109が
図6(b)のA方向に移動する。この時、捕集部材109の第一当接部109Aは、フランジ106の突き当て部106Aから離間する。このような動作により、捕集部109Cが定着フィルム105から距離t+αの位置に移動する(
図7)。この距離t+αは、FU排出モードにおける定着処理中の捕集部109Cの温度が、放射熱を受けることにより、少なくとも一種類のワックス成分が液相状態を保つ温度範囲内を推移できる距離となっている。
【0029】
以上説明したように、本実施例によれば、排紙口の切り換えという通紙条件の変化によって定着器内の温度が変化しても、ワックス成分を捕集する捕集部材の位置を切り替えることができる。これにより、通紙条件に拘らず、捕集部材によるワックス成分の捕集能力を発揮できる。
【0030】
なお、本例の画像形成装置では、FU排出モードにおける定着器内の雰囲気温度がFDモードよりも高くなる構成であるため、定着フィルムと捕集部の距離をFU排出モードのほうがFD排出モードよりも長くなる設定とした。しかしながら、FU排出モードにおける定着器内の雰囲気温度がFDモードよりも低くなる画像形成装置である場合、定着フィルムと捕集部の距離をFU排出モードのほうがFD排出モードよりも短くなる設定とすればよい。
【0031】
(実施例2)
次に実施例2を説明する。本例は、通紙条件としての両面プリントモードの一面目プリント時と二面目プリント時において、捕集部材の位置を切り替えるものである。
図8は、両面搬送ユニット装着時の画像形成装置の断面図である。両面搬送ユニット200は、画像形成装置1に装着することで、両面プリントを可能とする装置であるが、無論、装着状態で片面プリントも可能である。
【0032】
両面プリント時、シートが搬送される経路は、一面目は通常の片面プリント時と同じであるが、シートSが排出ローラ対6に到達した後、排出ローラ対6によりシートの後端を先頭にして逆方向に搬送する。その後シートは両面搬送経路10を通り、片面プリントした面が裏側になった状態で通常の搬送経路に入り、シートSの二面目にプリントが行われる。定着部で2面目の定着が終わるとシート排出経路5を経由して、排出ローラ対6により機外に排出され、排出トレイ7上に積載される。
【0033】
本例の定着ユニットの構成は実施例1と同じなので説明は省略する。
図9はシートの一面目にプリントを行う時(一面目プリント時)の画像形成装置の断面図、
図10はシートの二面目にプリントを行う時(二面目プリント時)の画像形成装置の断面図である。二面目に画像を形成し定着ユニットに運ばれてきたシートは、一度目の定着処理により既に温まったシートである。この影響で二面目を定着処理する時に定着器内の雰囲気温度が上昇しやすく、捕集部材109も昇温しやすい。
【0034】
図9〜
図11に示すように、両面搬送装置200には、レバー50を動かすための移動部材201が設けられている。移動部材201は、両面搬送装置駆動モータ(不図示)の駆動と連動することで移動可能となっている。両面搬送装置200が画像形成装置1に装着された状態で一面目のプリントを行う時は両面搬送装置200は作動しない為、
図9に示すように移動部材201は初期位置から移動しない。二面目のプリントを行う時には、両面搬送装置モータが駆動することで、
図10のように移動部材201が矢印B方向に移動し、レバー50を回動させる。これにより、実施例1同様、捕集部材109を動かす。このような動作により、捕集部109Cが定着フィルム105から距離t+βの位置に移動する(
図11)。この距離t+βは、両面プリントモードの二面目を定着処理中の捕集部109Cの温度が、放射熱を受けることにより、少なくとも一種類のワックス成分が液相状態を保つ温度範囲内を推移できる距離となっている。本例ではβ=2mmに設定し、t+β=4mmに設定した。
【0035】
以上説明したように、本実施例によれば、両面プリントの一面目プリント時と二面目プリント時という通紙条件の変化によって定着器内の温度が変化しても、ワックス成分を捕集する捕集部材の位置を切り替えることができる。これにより、通紙条件に拘らず、捕集部材によるワックス成分の捕集能力を発揮できる。
【0036】
なお、本例の画像形成装置では、二面目定着時における定着器内の雰囲気温度が一面目定着時よりも高くなる構成であるため、定着フィルムと捕集部の距離を二面目定着時のほうが一面目定着時よりも長くなる設定とした。しかしながら、二面目定着時における定着器内の雰囲気温度が一面目定着時よりも低くなる画像形成装置である場合、定着フィルムと捕集部の距離を二面目定着時のほうが一面目定着時よりも短くなる設定とすればよい。
【0037】
上述の実施例1及び2では、ワックスから気化する成分を捕集する技術について説明した。しかしながら、定着フィルム105の回転摺動性を向上させるために定着フィルム105内面に塗布したグリスがヒータ103の熱により加熱されることで気化する場合も考えられる。よって、これに対応するため、捕集部材109の温度が捕集対象物を捕集するのに適した温度となるように、定着フィルムとの距離を設定しても良い。さらに、ワックス成分が液相状態を維持する温度範囲に捕集対象物が液相状態を維持する温度がオーバーラップする場合もある。その場合は、捕集部材109の温度をオーバーラップしている温度範囲内に入るように定着フィルムとの距離を設定しても良い。
【0038】
また、実施例1及び2における加熱ユニット101は定着フィルム105を用いたフィルム加熱加圧方式を採用している。しかしながら、熱ローラを用いた熱ローラ方式でも採用可能なものであり、熱ローラ方式で実施する場合には、熱ローラの回転軸を受ける軸受に対して捕集部材109を位置決めし、前述と同様に捕集部材を径方向に移動可能な構成にすれば良い。このことは以下に示す他の実施例でも同様である。
【0039】
(実施例3)
実施例3の装置は、捕集部材109をフランジ106に固定した構成である。捕集部材が移動しない構成なので、捕集部材109に、実施例1で示したような第二当接部は設けられていない。
図12は本例の定着装置を分解した時の斜視図、
図13は定着装置の側面図と断面図である。捕集部材のその他の構成は実施例1と同様である。
【0040】
このように、捕集部材109をフランジ106の突き当て部106Aに保持させて且つ固定する構成でも、ワックスの気化成分を捕集できる。なお、本例の場合、捕集部材109とフランジ106を一体成型品としてもよい。
【0041】
(実施例4)
次に、実施例4の装置を
図14及び
図15を用いて説明する。本例の装置300は、定着ニップ部に掛かる圧力を解除する機能を有し、圧力解除動作に連動して捕集部材が移動するものである。圧力解除状態は、定着ニップ部でジャムした記録材を取り除く場合や、装置の電源をオフした場合、等に設定される。
【0042】
図14に示すように、捕集部材109には軸109Dが設けられており、定着ユニットのフレーム107には軸109Dが嵌合する穴107Dが設けられている。捕集部材109は、穴107Dに嵌合する軸109Dを中心にして回動可能に保持されている。また、加熱ユニット101を加圧するための加圧板130が、フランジ106と加圧バネ108との間に配置されている。この加圧板130は、手動で、又はモータなどの動力を使って、持ち上げる(即ち定着ニップ部に掛かる圧力を下げる)ことが可能になっている。即ち、本例の装置は定着ニップ部に掛かる圧力を解除する圧力解除機構を有する。加圧板130は、フレーム107に設けられた回動支点107Aを中心にしてR1方向へ回動可能になっている。加圧板130が矢印R1方向へ回動すると、
図15(c)に示すようにバネ108が圧縮され、フランジ106に掛る圧力が低減し、定着ニップ部Nに掛る圧力が解除される。この時、ゴム層を有する加圧ローラ102はバネ108による加圧状態から解放されるので、加熱ユニット101を
図15(d)の矢印M1方向へ押し上げる。また、フランジ106もM1方向へ移動するので、フランジ16に保持されている捕集部材109は軸109Dを中心に
図15(d)に示す矢印R2方向へ回動する。即ち、圧力解除機構によりニップ部に掛かる圧力を解除すると規制部材が移動し、規制部材の移動に共に捕集部材も移動する。
【0043】
このように、圧力解除時に加熱ユニット101が移動する際も、捕集部材109と定着フィルム105との間に隙間が確保でき、定着フィルム105を保護することができる。
【0044】
(実施例5)
次に、実施例5の装置を
図16及び
図17を用いて説明する。本実施例の装置400は、捕集部材を複数有するものである。定着装置400は、二つの捕集部材409Lと409Rを備えている。二つの捕集部材は、いずれもフランジ106の突き当て部106Aに対して第一当接部(409LA、409RA)で保持されている。409LC及び409RCは実施例1の捕集部109Cと同じ機能を有する捕集部である。なお、
図16において、定着フィルム105は省略してある。
【0045】
捕集部材409L及び409Rは、同一形状で同一の熱容量のものでもよいが、本例では、材質と形状の少なくとも一方を異なるものにすることによって、二つの捕集部材で熱容量に差異を設けている。これにより、加熱ユニット101からの放射熱により加熱される二つの捕集部材の温度が変わるので、様々な気化成分を捕集可能となる。即ち、各々の捕集部材は異なる温度に保たれる。なお、捕集部材409Lと定着フィルム105間の距離と、捕集部材409Rと定着フィルム105間の距離に差異を設ける構成でもよい。
【0046】
(実施例6)
図18(a)は、捕集部材の他の例を示す図である。本例の捕集部材109Xは、定着フィルムと対向する面に多数のリブ109Xrを設けたものである。
図18(b)は、リブを設けていない捕集部材の例である。
【0047】
図18(a)と
図18(b)を比べると、捕集部材109Xの捕集部109XCの表面積は、捕集部材109の捕集部109Cの表面積の約1.8倍になっている。つまり、捕集部109XCと捕集部109Cの投影面積は等しいが、捕集部109XCの方が表面積アップに応じて捕集能力が向上する。
【0048】
図19は、リブ109Xrの詳細な形状を説明する断面図である。
図19(a)は断面形状が矩形のリブ、
図19(b)は断面形状が三角形のリブである。
図19(b)に示す様にリブ先端を細くすると、先端の熱容量が小さくなるので、気化成分を吸着する面が加熱ユニットからの放射熱により素早く昇温し、プリント開始初期から捕集効果を発揮しやすくなる。
【0049】
(実施例7)
次に実施例7を説明する。上述したように、ワックス等からの気化成分を効率よく捕集するためには、ワックス等から気化し、その後、固化して浮遊する成分が、捕集部材に付着しやすく、且つ捕集部材から再度気化し難いようにする必要がある。そのため、プリント中のできるだけ長い期間、気化成分が液相状態を保つ温度範囲に捕集部材の温度を維持させることが望ましい。
【0050】
しかしながら、捕集部材の温度は、連続プリント中の経過時間に応じて変化する(徐々に上昇する)。また、厚紙に形成した未定着トナー像を定着する際に適した定着装置の制御目標温度と、薄紙に形成した未定着トナー像を定着する際に適した定着装置の制御目標温度は異なる。このような制御目標温度の違い(定着モードの違い)によっても捕集部材の温度は異なる。
【0051】
そこで本実施例は、捕集部材の温度に関わる情報に基づき捕集部材の位置を移動させ、捕集部材の温度を気化成分の捕集に適した温度にするものである。
【0052】
図20は、実施例7の定着装置500の斜視図である。加圧ローラ102の軸にはギア508が取り付けられており、加圧ローラはモータ113の動力で回転する。定着フィルム105に対向する位置には捕集部材509が設けられている。捕集部材509は、加熱ユニット101からの放射熱により昇温する。捕集部材509は、フレーム107に対して回動可能に支持されている(
図21参照)。また、捕集部材509には、後述する捕集部材を回動させるためのカム114と当接するカム当接部509Aが形成されている。カム114はモータ113の動力で回転する。以下に、捕集部材移動機構に関して、
図20〜
図23を用いて詳述する。
【0053】
捕集部材移動機構は、捕集部材110を移動させる捕集部材移動手段112と、捕集部材移動手段112の動作を制御するCPU(制御部)500Cにより構成されている。
【0054】
捕集部材移動手段112は、モータ113と、カム114と、モータ113の動力伝達方向をギア508又はカム114に切換える振り子ギア列115と、により構成されている。カム114は、モータ113の動力を受けるギア部114Aと、捕集部材110の当接部509Aと当接するカム部114Bと、を有する。振り子ギア列115は、モータ113と噛み合うギア115A、ギア508もしくはカム114のギア部114Aと噛み合う振り子ギア115B、これら2つのギアを回転可能に保持するホルダ115Cと、により構成されている。モータ113は正逆転可能なモータであり、振り子ギア列115は、モータ113がCW方向に回転している際には加圧ローラのギア508に、CCW方向に回転している際にはカム114に動力を伝える。
【0055】
制御部は、プリント信号を受け取ると、捕集部材移動手段112を制御し、捕集部材110の位置を移動させる。ここで、プリント信号に含まれる情報としては、画像情報だけでなく、印字面情報(片面印字/両面印字)、定着モード情報(高温度モード//通常温度モード/低温度モード)等が含まれている。高温度モードとは、例えば記録材として厚紙を指定した時に設定されるモードであり、ヒータの制御目標温度が高いモードである。低温度モードとは、例えば記録材として薄紙を指定した時に設定されるモードであり、ヒータの制御目標温度が低いモードである。通常温度モードとは、例えば記録材として普通紙を指定した時に設定されるモードであり、ヒータの制御目標温度が高温度モードと低温度モードの中間の温度であるモードである。設定される定着モードに応じてヒータ103の制御目標温度が切換る。
【0056】
次に、プリント時の捕集部材509の動作及び温度変化について説明する。なお、
図21は、CPU500Cがプリント信号を受信する前の捕集部材509の初期位置を示した図である。また、
図22後述する低温度モードにおける捕集部材509の動作を、
図23は、高温度モードにおける捕集部材509の動作を示しており、
図24はこれら動作時の捕集部材509の温度推移を示している。
【0057】
まず、片面印字で且つ低温度モードであるプリント信号を受信した際の捕集部材509の動作について説明する。この条件の場合、加熱ユニットから放出される熱エネルギーは小さいので捕集部材509は昇温しにくい状況となっている。このため、低温度モードでは、捕集部材509は、プリント信号受信からプリントジョブ終了まで
図21で示した初期位置から変位せず、加熱ユニット101との間隔Tは常にtのままとなっている(
図22)。このため、低温度モードにおいては、モータ113はCW方向の回転しか行わない。CW方向の回転は定着ニップ部で記録材Sを搬送する方向である。なお、捕集部材509の温度は、
図24(a)の実線で示したような温度推移となり、気化成分が液相状態を保つ下限温度Tcと上限温度Tsの温度範囲内に維持されている。
【0058】
次に、両面印字と高温度モードの少なくとも一つの条件を含むプリント信号を受信した際の捕集部材509の動作について説明する。この条件の場合、加熱ユニットから放出される熱エネルギーは片面印字で且つ低温度モードの場合よりも大きいので捕集部材509は昇温しやすく、温度が高くなり過ぎる可能性がある。なお、両面印字時に捕集部材の温度が上がりやすい理由は、両面印字は片面印字よりもヒータの発熱時間が長いためである。このためCPU500Cは、プリント信号を受信すると、プリント動作開始前にモータ113をCCW方向へ回転させる。すると、振り子ギア列115はR4方向に回動し、振り子ギア115Bがカム114のギア部114Aと噛み合う。この結果、カム114がモータ113の動力で回動し、カム部114Bが捕集部材509の当接部509Aを押し上げ、捕集部材509の位置を
図22で示した初期位置から変位させる(R3方向へ回動させる)。そして、不図示のエンコーダの信号によって、捕集部材509と加熱ユニット101の間隔がt´(t´>t)になるような位置に捕集部材509が移動し、保持される(
図23(a))。その後、プリントジョブが開始されると、モータ113がCW方向へ回転することで振り子ギア列115がギア508と噛み合う位置に戻り、加圧ローラに駆動を伝える。そして、加圧ローラ102が回転することにより、トナー画像が印字された記録材Sを搬送しながら定着処理する(
図23(b))。プリント動作が完了した際には、モータ113をCCW方向へ回転させることによってカム114を回転させ、不図示のエンコーダの信号によって、捕集部材509が
図21の初期位置に戻るように制御し停止する。なお、捕集部材509の温度は、
図24(b)の実線で示したような温度推移となる。
図24(b)の点線は、両面印字や高温度モードにおいて捕集部材509が間隔tの位置のままである場合の捕集部材509の温度推移を示している。この場合、捕集部材の温度は上限温度Tsを超えてしまい、気化成分を捕集する能力が低下してしまう。
【0059】
捕集部材と加熱ユニットの距離を切換える条件は、上述した印字面情報とヒータの制御目標温度情報だけでなく、その他の条件を加味しても構わない。即ち、捕集部材の温度に関わる情報は、印字面情報、定着モード情報、プリント枚数情報のうち少なくとも一つであればよい。また、捕集対象物は、ワックスから気化する成分だけでなく、定着フィルムの摺動抵抗を低減させるグリスから発生する物質等であってもよい。捕集部材が捕集対象物を捕集するのに適した温度となるように、捕集部材と加熱ユニットの距離を調整できるようにすればよい。
【0060】
(実施例8)
図25〜27を用いて実施例8を説明する。本実施例は、捕集部材609の温度をモニタする温度検知素子THを設け、温度検知素子THの検知温度に応じて捕集部材609を移動させるものである。即ち、本例では捕集部材の温度に関わる情報として、捕集部材の温度そのものを用いるものである。プリント中、CPU500Cは、温度検知素子THからの温度情報に応じてモータ213を駆動し、カム214を回動させる。カム214が回動すると捕集部材609の当接部609Aをカム214が押し上げ、捕集部材609と加熱ユニット(定着フィルム105)との間隔が変更される。この動作により、捕集部材609の温度が、捕集効果が高い温度に保たれる。なお、実施例6のモータ113は加圧ローラ駆動と捕集部材移動の用途を兼ねていたが、本例のモータ213は捕集部材移動専用である。
【0061】
次に、
図26を用いて、プリント時の捕集部材609の動作及び温度推移について説明する。CPU500Cは、プリント信号を受信するとヒータ103への電力投入を開始する。これに伴い、捕集部材609は昇温する。捕集部材609の初期位置は実施例6で説明した間隔tの位置である。
【0062】
複数枚のプリントを行うプリントジョブを実行すると、捕集部材609の温度が徐々に高くなる。温度検知素子THは、その温度状態を逐次検知する。CPU500Cは、捕集部材の温度が温度範囲Ts−Tcから外れないように、温度検知素子THの検知温度に応じてモータ213を制御する。捕集部材の温度が上昇すると、捕集部材609と加熱ユニットとの間隔が実施例6と同様のt´(t´>t)に広がるように調整される。本例の装置は捕集部材を移動させる専用の動力源(本例ではモータ)を搭載しているので、プリント処理中に捕集部材を移動させることができ、捕集部材の温度管理を行いやすいというメリットがある。また、実施例6と比較した場合、捕集部材を移動させるための時間を確保しなくても済むというメリットもある。
【0063】
なお、本例では、捕集部材の温度を直接モニタしているが、捕集部材の温度を推測できる他の位置で温度モニタしても構わない。また、
図25に示すように、温度検知素子を用いずに、プリント枚数情報を基に捕集部材の温度を推測してもよい。
【0064】
(実施例9)
図27〜30を用いて実施例9を説明する。
図27に示すように、加熱ユニット101の端部に設けられたフランジ106には、加熱ユニット101と捕集部材709との間隔を調整する調整部材302が設けられている。調整部材302は、温度によって変形するバイメタルで構成されている。加熱ユニット101の温度が上昇すると、
図28(a)に示すように、捕集部材709の当接部709Aと当接する調整部材の当接部302Aが延伸されたような状態となる。ここで、バイメタルとは、熱膨張の異なる2種類の金属(302B、302C)を貼り合わせ、温度の変化によるこれら2種類の金属の曲がり方が変化する性質を利用することで、温度が変化した場合に自身の形状を変化させる素材である(
図28(b)参照)。
図28(b)の上段及び下段は、二つの金属を束ねない場合及び拘束部材で束ねた場合の、温度に応じた変形状態を示している。なお、本例では、調整部材としてバイメタルを用いたが、温度によって形状が変化する他の材質でもよい。
【0065】
次に、
図29及び
図30を用いて、プリント時の捕集部材の動作及びプリント動作中の捕集部材の温度推移について説明する。
【0066】
図29は、プリント動作開始前からプリントジョブ中の捕集部材の位置を示した動作説明図である。
図29(a)はプリント信号を受信する前の捕集部材709の初期位置を示している。プリントジョブの枚数が進んでくると、加熱ユニット101の温度が徐々に高くなり、この温度変化に伴い調整部材302が変形する。捕集部材は調整部材の形状変化に伴い移動する。即ち、捕集部材709と加熱ユニット101との間隔がtからt´(t´>t)に広がるように、捕集部材709の位置が変位する(
図29(b))。このような構成により、捕集部材709の温度を適切な温度範囲Ts−Tc内に維持させることが出来る。
図30はワックス捕集部材709のプリントジョブ中における温度推移を示したグラフである。このグラフのように、本構成によれば、捕集部材の温度が気化成分が液相状態を保つ下限温度Tcと気化成分が液相状態を保つ上限温度Tsとの間の最適温度を維持することが可能となる。本例によれば、捕集部材を移動させるための動力源を必要としないので、装置内のスベース削減及びコスト削減が可能になる。