特許第6238700号(P6238700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238700
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20171120BHJP
   C08L 3/02 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20171120BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20171120BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20171120BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08L3/02
   C08K3/36
   C08L9/06
   B60C1/00 A
   C08K5/548
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-245274(P2013-245274)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-198821(P2014-198821A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年9月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-51968(P2013-51968)
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 秀一朗
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−096917(JP,A)
【文献】 特開2009−029992(JP,A)
【文献】 特開平11−071481(JP,A)
【文献】 特開2004−204176(JP,A)
【文献】 特開2011−144239(JP,A)
【文献】 特開2011−195638(JP,A)
【文献】 特開2011−231303(JP,A)
【文献】 特開2006−233177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、チッ素吸着比表面積20〜200m/gのシリカ、下記一般式(1)で示される結合単位Aと下記一般式(2)で示される結合単位Bとを含み、かつ該結合単位Bの含有量が1〜70モル%であるメルカプト基を有するシランカップリング剤、及び糖類を含み、
ゴム成分100質量部に対して、シリカの含有量が30〜150質量部であるタイヤ用ゴム組成物。
【化1】
【化2】
(式中、Rは水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。Rは分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を示す。RとRとで環構造を形成してもよい。)
【請求項2】
前記糖類は、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、オリゴ糖及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記糖類は、多糖類及び/又はその誘導体である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分100質量部に対して、前記糖類の含有量は2〜25質量部である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記シリカが、チッ素吸着比表面積が20〜100m/gのシリカ(I)と、チッ素吸着比表面積が180〜200m/gのシリカ(II)であり、前記ゴム成分100質量部に対する該シリカ(I)及び(II)の合計含有量が30〜150質量部、該シリカ(I)及び(II)の含有量が以下の式を満たす請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(シリカ(I)の含有量)×0.2≦(シリカ(II)の含有量)≦(シリカ(I)の含有量)×6.5
【請求項6】
前記ゴム成分100質量%中、スチレンブタジエンゴムの含有量は30質量%以上である請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物をトレッドに適用した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤの転がり抵抗性とウェットグリップ性能(湿潤路面でのグリップ性又は制動距離)を共に改善する方法として、シリカ充填剤を使用し、ガラス転移温度の高いゴム組成物を用いて低温でのヒステリシスロスを増加させる手法が知られているが、該ゴム組成物でウェットグリップ性能は向上するものの、高温でのヒステリシスロスも増加して転がり抵抗性が増大し、耐摩耗性能も低下する傾向がある。また、混練中にシリカが凝集して粘度が上昇し、練り生地が悪化して加工性が低下するという問題もある。
【0003】
スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等の共重合体を用いる手法も提案されているが、ウェットグリップ性能と転がり抵抗性の高次元での両立は難しく、また、充填剤を減量して低発熱性を改善しても、ゴムの軟化に起因して操縦安定性やウェットグリップ性能が低下するという問題がある。
【0004】
更に、シリカ配合ゴムの補強効果を高めるために各種シランカップリング剤を添加することも提案され、特許文献1などには、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤が開示されているが、ゴム組成物の加工の際の粘度上昇が発生する等の問題がある。また、メルカプト系シランカップリング剤も開示されているが、加工の際の練り生地の平滑度が悪化する等の問題がある。
【0005】
このように、シリカ配合系では、製造時の加工性に優れるとともに、作製されるゴム組成物の低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び操縦安定性をバランス良く改善することは難しく、更なる改善が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−363346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、良好な加工性を有しつつ、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び操縦安定性をバランス良く改善できるタイヤ用ゴム組成物、及び該ゴム組成物をトレッドに用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ゴム成分、シリカ、下記一般式(1)で示される結合単位Aと下記一般式(2)で示される結合単位Bとを含み、かつ該結合単位Bの含有量が1〜70モル%であるメルカプト基を有するシランカップリング剤、及び糖類を含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化1】
【化2】
(式中、Rは水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。Rは分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を示す。RとRとで環構造を形成してもよい。)
【0009】
前記糖類は、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、オリゴ糖及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
前記糖類は、多糖類及び/又はその誘導体であることが好ましい。
【0011】
前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量は15〜150質量部、前記糖類の含有量は2〜25質量部であることが好ましい。
【0012】
前記シリカが、チッ素吸着比表面積が100m/g以下のシリカ(I)と、チッ素吸着比表面積が180m/g以上のシリカ(II)であり、前記ゴム成分100質量部に対する該シリカ(I)及び(II)の合計含有量が10〜150質量部、該シリカ(I)及び(II)の含有量が以下の式を満たすことが好ましい。
(シリカ(I)の含有量)×0.2≦(シリカ(II)の含有量)≦(シリカ(I)の含有量)×6.5
【0013】
前記ゴム成分100質量%中、スチレンブタジエンゴムの含有量は30質量%以上であることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製したトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゴム成分、シリカ、特定のメルカプト系シランカップリング剤、及び糖類を含むタイヤ用ゴム組成物であるので、該ゴム組成物の加工時(作製時)に優れた加工性を得ながら、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び操縦安定性をバランス良く改善した空気入りタイヤを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分と、シリカと、特定のメルカプト基を有するシランカップリング剤と、糖類とを含む。
【0017】
シリカ配合ゴムにおいて、特定のメルカプト系シランカップリング剤と糖類の両成分を添加することで、加工時(製造時)に優れた加工性を確保しながら、作製されるゴム組成物の低燃費性(転がり抵抗性)、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び操縦安定性の性能バランス、特に低燃費性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性の性能バランスを相乗的に改善できる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、特定のメルカプト系シランカップリング剤を糖類とともに使用することで、シリカの分散性が相乗的に改善されるためであると推察される。
【0018】
ゴム成分としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、などが挙げられる。なかでも、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性及び耐摩耗性を改善するという点から、SBR、BRが好ましく、SBRが特に好ましい。
【0019】
SBRとしては特に限定されず、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)、これらの変性SBR等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性及び耐摩耗性を改善するという点から、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物(変性剤)により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された変性SBRが好ましい。なお、ゴムの末端に変性剤を反応させたものが好ましく、変性方法はSBR溶液中に変性剤を添加して反応させる方法等、従来公知の方法で実施できる。
【0020】
分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物としては、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されないが、分子中に2個以上のエポキシ基および1個以上の窒素含有基を有する多官能化合物が好ましく、下記式で示される多官能化合物がより好ましい。
【0021】
【化3】
(式中、R11及びR12は、同一又は異なって、炭素数1〜10の2価の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R13及びR14は、同一若しくは異なって、水素原子、又は炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、及び3級アミンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。R15は、炭素数1〜20の1〜6価の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、エーテル、3級アミン、エポキシ、カルボニル、及びハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。mは1〜6(好ましくは1〜4)の整数を表す。)
【0022】
上記多官能化合物は、ジグリシジルアミノ基を有する多官能化合物であることが更に好ましい。また、多官能化合物の分子内のエポキシ基の数は2個以上、より好ましくは3個以上、さらに好ましくは4個以上である。
【0023】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性及び耐摩耗性を改善できるという点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、100質量%でもよい。
【0024】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等の1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)を含むBR等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、シス含有量が95質量%以上のBRが好ましい。
【0025】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下であり、配合しなくてもよい。40質量%を超えると、ウェットグリップ性能、転がり抵抗性及び耐摩耗性の性能バランスが低下するおそれがある。
【0026】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(無水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。湿式法シリカの市販品としては、デグッサ社製ウルトラシル(Ultrasil)VN3、日本シリカ工業(株)製のニップシールVN3 AQなどが挙げられる。シリカは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は好ましくは20m/g以上、より好ましくは50m/g以上、更に好ましくは100m/g以上、特に好ましくは150m/g以上である。また好ましくは400m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下である。20m/g未満では、分散性改良効果や補強効果が小さくなる傾向があり、400m/gを超えると、分散性が悪く、タイヤの発熱性が増大する傾向がある。
【0028】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。15質量部未満では、配合する効果、すなわちウェットグリップ性能と転がり抵抗の改善が得られず、150質量部を超えると、シリカの分散性が悪くなり、耐摩耗性および強度などの特性が低下する傾向がある。
【0029】
2種以上のシリカを配合する場合、チッ素吸着比表面積が100m/g以下のシリカ(I)と、チッ素吸着比表面積が180m/g以上のシリカ(II)とを所定の割合で配合することが好ましい。該シリカ(I)及び(II)を所定の割合で配合することで、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性を更に改善できる。
【0030】
シリカ(I)のNSAは、好ましくは100m/g以下、より好ましくは80m/g以下、更に好ましくは60m/g以下である。100m/gを超えると、シリカ(I)及び(II)の併用による効果が充分に得られないおそれがある。シリカ(I)のNSAは、好ましくは20m/g以上、より好ましくは30m/g以上である。20m/g未満であると、充分な補強性が得られず、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0031】
シリカ(I)としては特に限定されないが、例えば、デグッサ社製のウルトラシル360、ローディア社製のZ40、ローディア社製のRP80などを使用できる。シリカ(I)は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
シリカ(I)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。1質量部未満では、転がり抵抗が充分に低減しない傾向がある。シリカ(I)の含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは50質量部以下である。150質量部を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。
【0033】
シリカ(II)のNSAは、好ましくは180m/g以上、より好ましくは190m/g以上、更に好ましくは200m/g以上である。180m/g未満であると、シリカ(I)及び(II)の併用による効果が充分に得られないおそれがある。また、シリカ(II)のNSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは240m/g以下である。300m/gを超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0034】
シリカ(II)としては特に限定されないが、例えば、ローディア社製のゼオシル1205MPなどを使用できる。シリカ(II)は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
シリカ(II)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。1質量部未満では、充分な耐摩耗性が得られない傾向がある。また、シリカ(II)の含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは60質量部以下である。150質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0036】
シリカ(I)及び(II)の合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。5質量部未満では、シリカ(I)及び(II)をブレンドすることによる充分な補強効果が得られない傾向がある。シリカ(I)及び(II)の合計含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。150質量部を超えると、ゴム組成物中において、シリカが均一に分散することが困難となり、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0037】
シリカ(I)の含有量及び(II)の含有量は、以下の式を満たすことが好ましい。
(シリカ(I)の含有量)×0.2≦(シリカ(II)の含有量)≦(シリカ(I)の含有量)×6.5
シリカ(II)の含有量は、シリカ(I)の含有量の好ましくは0.2倍以上、より好ましくは0.5倍以上である。0.2倍未満であると、充分な補強性が得られないおそれがある。また、シリカ(II)の含有量は、シリカ(I)の含有量の好ましくは6.5倍以下、より好ましくは4倍以下、更に好ましくは等倍(1倍)以下である。6.5倍を超えると、充分な改善効果が得られないおそれがある。
なお、シリカ(I)及びシリカ(II)の含有量は、ゴム成分100質量部に対する質量部のことである。
【0038】
本発明では、特定のメルカプト系シランカップリング剤として、下記一般式(1)で示される結合単位Aと下記一般式(2)で示される結合単位Bとを含み、かつ該結合単位Bの含有量が1〜70モル%であるメルカプト基を有するシランカップリング剤が使用される。
【化4】
【化5】
(式中、Rは水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。Rは分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を示す。RとRとで環構造を形成してもよい。)
【0039】
上記構造のシランカップリング剤は、結合単位Aと結合単位Bのモル比が上記条件を満たすため、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC−S−C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
【0040】
また、結合単位Aと結合単位Bのモル比が上記条件を満たす場合、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは、結合単位Bはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの−C15部分が結合単位Bの−SH基を覆うため、ポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
【0041】
本発明の効果が良好に得られるという点から、上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、好ましくは65モル%以下、より好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す一般式(1)、(2)に対応するユニットを形成していればよい。
【0042】
のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などが挙げられる。
【0043】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
【0044】
の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基等が挙げられる。該アルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
【0045】
の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等が挙げられる。該アルキニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
【0046】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等が挙げられる。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
【0047】
の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基等が挙げられる。該アルケニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
【0048】
の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基等が挙げられる。該アルキニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
【0049】
上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3〜300の範囲が好ましい。この範囲内であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの−C15が覆うため、スコーチタイムが短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
【0050】
上記構造のシランカップリング剤としては、例えば、Momentive社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60等を使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記特定のメルカプト基を有するシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは16質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。1質量部未満であると、低燃費性が悪化し、20質量部を超えても、低燃費性及びウェットグリップ性能などの特性の更なる向上は認められず、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
【0052】
本発明のゴム組成物では、他のシランカップリング剤を併用してもよい。
他のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシランなどが挙げられる。なかでも、シランカップリング剤の補強性効果と加工性の点からは、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが好ましく、加工性の点からは、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。なお、他のシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましく、前記特定のメルカプト系シランカップリング剤の含有量よりも少量であることが好ましい。
【0053】
本発明で使用される糖類としては、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、オリゴ糖、多糖類、これらの誘導体(これらと類似構造を有し、同様の効果が得られる化合物)などが挙げられる。なかでも、本発明の効果が顕著に得られるという点から、多糖類、その誘導体が好ましい。なお、本発明では、オリゴ糖は5〜9個の単糖類の結合物、多糖類は10個以上の単糖類の結合物とする。糖類は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
単糖類及びその誘導体としては、トリオース類(ケトトリオース、アルドトリオースなど);テトロース類(ケトテトロース、エリトロース、トレオースなどのアルドテトロースなど);ペントース類(リブロース、キシルロースなどのケトペントース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソースなどのアルドペントース、デオキシリボースなど);ヘキソース類(プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトースなどのケトヘキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロースなどのアルドヘキソース、フコース、フクロース、ラムノースなどのデオキシ糖など);ヘプトース類(セドヘプツロースなど);これらの誘導体等が挙げられる。なかでも、フルクトースが好ましい。
【0055】
二糖類及びその誘導体としては、トレハロース、コージビオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトースなどのα−ジグルコシド;イソトレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオースなどのβ−ジグルコシド;ネオトレハロースなどのα,β−ジグルコシド;ラクトース、スクロース、イソマルツロース(パラチノース);これらの誘導体等が挙げられる。なかでも、マルトースが好ましい。
【0056】
三糖類、四糖類、オリゴ糖及びこれらの誘導体としては、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオースなど;アカルボース、スタキオースなど;フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、オリゴグルコサミン、デキストリン、シクロデキストリンなどの環状オリゴ糖;これらの誘導体;などが挙げられる。
【0057】
多糖類及びその誘導体の重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果が良好に得られる点から、好ましくは1万〜200万、より好ましくは5万〜150万、更に好ましくは5万〜100万、特に好ましくは10万〜100万である。なお、重量平均分子量は、パルスアンペロメトリック検出器付き高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC)やキャピラリー電気泳動法により求めることができる。
【0058】
多糖類及びその誘導体としては、セルロース、アミロースやアミロペクチンなどのデンプン、グリコーゲンなどのホモ多糖類;アガロース、カラギーナン、ペクチンなどのヘテロ多糖類;ヘパリン、キチン、ヒアルロン酸などのムコ多糖類;これらの誘導体(ニトロセルロース、アセチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)等が挙げられる。なかでも、デンプン、キチンが好ましい。
【0059】
糖類の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。2質量部未満では、充分に加工性やウェットグリップ性能が向上せず、また、低燃費性や耐摩耗性の改善効果も得られないおそれがある。また、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。25質量部を超えると、硬度が著しく低下して充分な硬度が確保できず、本発明の効果が良好に得られないおそれがある。
【0060】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、通常ゴム工業で使用される配合剤、例えば、酸化亜鉛、老化防止剤、軟化剤(オイルなど)、加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合してもよい。
【0061】
加硫剤としては、硫黄が挙げられる。硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが使用できる。
【0062】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。また、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下である。0.5質量部未満では、加硫速度が遅くなり、加硫不足になる傾向があり、3.0質量部を超えると、逆に加硫速度が速くなり、スコーチングする傾向がある。
【0063】
加硫促進剤としては、グアニジン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンデート系の化合物などが挙げられる。
【0064】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.5質量部である。また、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。1.0質量部未満では、加硫速度が遅くなり、加硫不足になる傾向があり、4.0質量部を超えると、加硫速度が速くなり、スコーチングする傾向がある。
【0065】
本発明のゴム組成物は、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等、一般的な方法で製造できる。具体的には、加硫剤、加硫促進剤以外の配合材料を130〜160℃の温度で混練りし(ベース練り工程)、次いで、硫黄及び加硫促進剤を添加し、80〜120℃で混練して未加硫ゴムを作製した後(仕上げ練り工程)、該未加硫ゴムを150〜190℃(好ましくは160〜180℃)の温度で加硫して加硫ゴム組成物を製造できる。
【0066】
本発明のゴム組成物は、タイヤのトレッドとして好適に使用できる。
【0067】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、未加硫の段階でトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上で通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱・加圧してタイヤを得る。
【0068】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラックバス用タイヤ、軽トラックタイヤなど各種タイヤに適用できる。
【実施例】
【0069】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0070】
以下の実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
SBR:旭化成ケミカルズ(株)製のアサプレンE15(分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)したS−SBR、スチレン単位量:23質量%)
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B
シリカ1:デグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g、DBP吸油量:210ml/100g)
シリカ2:デグッサ社製のウルトラシル360(NSA:50m/g)
シリカ3:ローディア社製のゼオシル1205MP(NSA:200m/g)
シランカップリング剤1:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤2:モメンティブ社製のA1891(3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン)
シランカップリング剤3:モメンティブ社製のNXT−Z15(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(上記一般式(1)、(2)において、結合単位A:85モル%、結合単位B:15モル%))
シランカップリング剤4:モメンティブ社製のNXT−Z30(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(上記一般式(1)、(2)において、結合単位A:70モル%、結合単位B:30モル%))
シランカップリング剤5:モメンティブ社製のNXT−Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(上記一般式(1)、(2)において、結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
シランカップリング剤6:モメンティブ社製のNXT−Z80(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(上記一般式(1)、(2)において、結合単位A:20モル%、結合単位B:80モル%))
糖類1:ナカライテスク(株)製のフルクトース(単糖類)
糖類2:ナカライテスク(株)製のマルトース(二糖類)
糖類3:ナカライテスク(株)製のトウモロコシでんぷん(多糖類)
糖類4:ナカライテスク(株)製のキチン(粉末)(多糖類:β−1,4−ポリ−N−アセチル−D−グルコサミン)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH−24
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
【0071】
<実施例及び比較例>
表1〜2に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を160℃で3分間混練し、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
【0072】
得られた未加硫ゴム組成物をシート状に押し出し、タイヤのトレッド部に成形して、試作タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。
【0073】
得られた未加硫ゴム組成物及び試作タイヤについて、以下の評価を行った。結果を表1〜2に示す。
【0074】
<加工性(ムーニー粘度)>
未加硫ゴム組成物について、JIS K6301に基づき、(株)島津製作所製のMV202を用いて、130℃でムーニー粘度(ML1+4)を測定した。比較例1のムーニー粘度の値を100として、各配合のムーニー粘度を指数表示した。ムーニー粘度は指数値が小さいほど加工性に優れていることを示す。
【0075】
<低燃費性(転がり抵抗)>
転がり抵抗試験機を用いて、試作タイヤを15×6JJリムに装着し、230kPaの内圧で、3.43kNの荷重、80km/hの速度で走行させたときの転がり抵抗値を測定し、比較例1を100として各配合の転がり抵抗値を指数表示した。指数が大きいほど転がり抵抗性能に優れており、低燃費性が良好であることを示す。
【0076】
<ウェットグリップ性能>
試作タイヤを装着したトラクション試験車にて、水が散布されているアスファルト路面のテストコースにおいて、時速100km/hでブレーキをかけたときに停止するまでの制動距離を測定し、比較例1の距離を100として各配合のウェットグリップ性能を指数表示した。指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れていることを示す。
【0077】
<耐摩耗性>
試作タイヤを装着して実車走行し、30000km走行時のトレッドパターンの溝深さの変化を測定した。比較例1の摩耗量を100として、各配合の摩耗量を指数表示した。指数が大きいほど耐摩耗性が優れていることを示す。
【0078】
<操縦安定性>
試作タイヤを国産FF2000ccの全輪に装着してテストコースを実車走行し、ドライバーの官能評価により、操縦安定性を評価した。評価は10点満点とし、比較例1を6点として相対評価した。評点が大きいほど操縦安定性に優れていることを示す。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
表1〜2から、特定のメルカプト基を有するシランカップリング剤と単糖類又は二糖類を併用すること、該シランカップリング剤と多糖類を併用することにより、良好な加工性を維持しつつ、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性及び操縦安定性の性能バランス、特に低燃費性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性の性能バランスを相乗的に改善できることが明らかとなった。また、更に特定2種のチッ素吸着比表面積を有するシリカを用いた場合、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性をより顕著に改善できた。また、糖類として多糖類を用いた場合に、より効果的に相乗効果が発揮された。