【0016】
上記一般式(1)で表される具体的な2−アルケニルエーテル化合物として、R
1及びR
2の好ましいものとしてはR
5〜R
10が全て水素原子の式(2)又は式(3)で表される基が挙げられる。Qの好ましいものとしては、式:−CR
3R
4−で表されるアルキレン基としてR
3及びR
4が各々独立して、水素原子、炭素
原子数が1〜10のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基であるものが挙げられる。炭素
原子数3〜12のシクロアルキレン基の好ましいものとしてはシクロヘキシリデン基、炭素
原子数6〜10の単独芳香環からなるアリーレン基若しくは2〜3の炭素
原子数6〜10の芳香環が結合してなるアリーレン基の好ましいものとしてはフェニレン基、及びビフェニルジイル基が挙げられる。炭素
原子数7〜12の二価の脂環式縮合環の好ましいものとしては二価のテトラヒドロジシクロペンタジエン環が挙げられる。これらを組み合わせた二価基の好ましいものとしては、−CH
2−Ph−Ph−CH
2−基(本明細書においてPhは無置換のベンゼン環を意味する)、及び−CH
2−Ph−CH
2−基が挙げられる。好ましい具体的な化合物としては、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F、フェノールノボラック、トリフェニルメタンフェノール、CH
2−Ph−Ph−CH
2骨格のビフェニルアラルキル型フェノール、CH
2−Ph−CH
2骨格のフェニルアラルキル型フェノール、又は無置換のテトラヒドロジシクロペンタジエン骨格のフェノール若しくは両端にCH
2が結合した無置換のテトラヒドロジシクロペンタジエン骨格のフェノールのいずれかの基本骨格を有し、OR
1に対してR
2がオルト位又はパラ位に位置する2−アルケニルエーテル化合物が挙げられる。また、上記一般式(1)で表される2−アルケニルエーテル化合物以外の2−アルケニルエーテル化合物として、一般式(1)のフェノール骨格の代わりにナフタレン骨格を有する化合物、例えばナフタレンノボラックも挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0041】
合成例1:基質(4,4’−(ジメチルメチレン)ビス[2−(2−プロペニル)フェニルジアリルエーテル])の合成
500mL三口丸底フラスコに、炭酸カリウム(日本曹達株式会社製)138g(1.00mol)を純水125gに溶解した溶液、式(3)で表される4,4’−(ジメチルメチレン)ビス[2−(2−プロペニル)フェノール](大和化成株式会社製)80.6g(262mmol)、及び炭酸ナトリウム(関東化学株式会社製)52.0g(0.500mol、固体のまま)を仕込み、反応器を窒素置換し85℃に加熱した。窒素気流下、酢酸アリル(昭和電工株式会社製)220g(2.19mol)、トリフェニルホスフィン(北興化学工業株式会社製)2.62g(10.0mmol)、及び50%含水5%−Pd/C−STDタイプ(エヌ・イーケムキャット株式会社製)84.6mg(0.0200mmol)を入れ、窒素雰囲気中、105℃に昇温して4時間反応させた後、酢酸アリル22.0g(0.219mol)を追添し、加熱を12時間継続した。反応終了後、反応系を室温まで冷却したのち、純水を析出した塩がすべて溶解するまで加え、分液処理した。有機層を分離し、有機溶媒(70℃、50mmHg、2時間)を留去した。純水(200g)を添加した後、トルエン200gを加え、80℃以上の温度に保持して白色沈殿が析出していないことを確認した後、Pd/Cを濾過(1ミクロンのメンブランフィルター(アドバンテック社製KST−142−JAを用いて加圧(0.3MPa))により回収した。この濾滓をトルエン100gで洗浄するとともに、水層を分離した。50℃以上で有機層を純水200gで2度洗浄し、水層が中性であることを確認した。有機層を分離後、減圧下、濃縮し、式(4)で表される4,4’−(ジメチルメチレン)ビス[2−(2−プロペニル)フェニルジアリルエーテル]を主成分とする褐色液体(93.6g,241mmol、92.0%収率)を得た。この褐色液体を
1H−NMR測定した結果、式(4)で表される化合物を主成分として含むことを確認した。式(4)で表される化合物に帰属する測定データは以下のとおりである。
1H−NMR{400MHz,CDCl
3,27℃},δ1.66(6H,s,CH
3),δ3.39(4H,d,PhC
H2CH=CH
2),δ4.95−5.55(4H,m,PhCH
2CH=C
H2),δ5.25(2H,d,PhOCH
2CH=C
HH),δ5.42(2H,d,PhOCH
2CH=CH
H),δ5.25(4H,m,PhOCH
2C
H=CH
2,PhCH
2C
H=CH
2),δ6.73(d,2H,aromatic),δ6.90−7.08(m,2H,aromatic),δ7.13−7.40(2H,m,aromatic).
【化5】
【化6】
【0042】
実施例1:2,2−ビス(3−グリシジル−4−グリシジルオキシフェニル)プロパンの合成
200mL三口丸底フラスコに、上記合成例1で得られた4,4’−(ジメチルメチレン)ビス[2−(2−プロペニル)フェニルジアリルエーテル]18.1g(46.5mmol)、タングステン酸ナトリウム二水和物(日本無機化学工業株式会社製)1.53g(4.70mmol)、リン酸(和光純薬工業株式会社製)0.231g(2.35mmol)、硫酸(和光純薬工業株式会社製)0.230g(2.35mmol)、及び硫酸水素化トリオクチルメチルアンモニウム(MTOAHS、旭化学工業株式会社製)2.17g(4.70mmol)を入れ、トルエン(純正化学株式会社製)18gに溶解させた。65℃まで昇温した後、35質量%過酸化水素水溶液(菱江化成株式会社製)51.1g(0.465mol)を1時間かけて撹拌しながら滴下し、70℃でさらに2時間撹拌(撹拌速度400rpm)した。反応初期において、反応液のpHは1.5であり、2時間反応後の反応液のpHは3.7であった。反応終了後、反応液を室温まで冷却した後、純水20gを加え分液処理した。有機層を分離し、亜硫酸ナトリウム水溶液(10質量%、和光純薬工業株式会社製)15gを加えて洗浄することで残存する過酸化水素を還元した。水層を除き、純水20gを加えて再度洗浄した。有機層を単離し、有機溶媒(トルエン)を留去することによりエポキシ化合物のエポキシ当量比(E/Er=実測によるエポキシ当量/理論エポキシ当量)が1.16である生成物18.6g(41.0mmol、エポキシ当量131、収率88.2%)を得た。収率は、(上記後処理後、目的とするエポキシ化合物を含む混合物の取得量/反応率100%で酸化反応が進行した際に得られる物質量)×100)として算出した。生成物のエポキシ当量が式(5)で表される化合物の理論エポキシ当量と近いことから、生成物中にグリシジル基の加水分解物を殆ど含まないことが示唆される。この生成物を
1H−NMR測定した結果、式(5)で表される化合物を主成分として含むことを確認した。式(5)で表される化合物に帰属する測定データは以下のとおりである。生成物の
1H−NMRスペクトルを
図1に示す。
1H−NMR{400MHz,CDCl
3,27℃},δ1.64(6H,s,CH
3),δ2.54(2H,m,PhCH
2CHC
HHO),δ2.7−2.8(6H,m,PhC
H2CHCHHO,PhCH
2CHCH
HO),δ2.90(4H,m,PhOC
H2CHCH
2O),δ3.17(2H,m,PhOCH
2CHC
HHO),δ3.35(2H,m,PhOCH
2CHCH
HO),δ3.95(2H,m,PhCH
2C
HCH
2O),δ4.24(2H,dd,PhOCH
2C
HCH
2O),δ6.74(d,2H,aromatic),δ7.02−7.05(m,4H,aromatic).
【化7】
【0043】
合成例2:基質(オルト位又はパラ位にアリル基を有するフェノールノボラック型アリルエーテル(BRG−556−AL2と略記)の合成
2000mLの3つ口型フラスコに、炭酸カリウム(日本曹達株式会社製)171.1g(1.24mol)を純水155.6gに溶解した溶液、式(6)で表されるフェノールノボラック(ショウノール(登録商標)BRG−556、o=2〜7、平均値:5.1)(昭和電工株式会社製)500.0g、及び炭酸ナトリウム(関東化学株式会社製)65.61g(0.619mol、固体のまま)を仕込み、反応器を窒素置換し85℃に加熱した。窒素気流下、酢酸アリル(昭和電工株式会社製)272.7g(2.72mol)、トリフェニルホスフィン(北興化学工業株式会社製)3.247g(12.4mmol)、及び50%含水5%−Pd/C−STDタイプ(エヌ・イーケムキャット株式会社製)0.105g(0.0248mmol)を入れ、窒素雰囲気中、105℃に昇温して4時間反応させた後、酢酸アリル27.3g(0.273mol)を追添し、加熱を12時間継続した。その後撹拌を停止し、静置することで有機層と水層の二層に分離した。析出している塩が溶解するまで、純水(200g)を添加した後、トルエン200gを加え、80℃以上の温度に保持して白色沈殿が析出していないことを確認した後、Pd/Cを濾過(1ミクロンのメンブランフィルター(アドバンテック社製KST−142−JAを用いて加圧(0.3MPa))により回収した。この濾滓をトルエン100gで洗浄するとともに、水層を分離した。50℃以上で有機層を純水200gで2度洗浄し、水層が中性であることを確認した。有機層を分離後、減圧下、濃縮し、褐色油状物を得た(560g、定量的)。この褐色油状物を
1H−NMR測定した結果、式(7)で表されるフェノールノボラックアリルエーテル体(以下、BRG−556−ALと略記)を主成分として含むことを確認した。式(7)で表される化合物に帰属する測定データは以下のとおりである。
1H−NMR{400MHz,CDCl
3,27℃},δ3.6−4.0(4H,m,PhCH
2Ph),δ4.4−4.8(2H,m,C
H2CH=CH
2),δ5.1−5.3(1H,m,CH
2CH=CH
H),δ5.3−5.5(1H,m,CH
2CH=C
HH),δ5.8−6.2(1H,m,CH
2C
H=CH
2),δ6.6−7.3(12H,m,aromatic).
【化8】
【化9】
【0044】
1000mLのナスフラスコに磁気撹拌子と、上記合成で得られたフェノールノボラックアリルエーテル体500gを入れ、窒素雰囲気下、190℃で加熱した。3時間後、冷却し、黒色固体を得た(550g、定量的)。この黒色固体を
1H−NMR測定した結果、式(8)で表されるフェノールノボラックアリル置換体(以下、BRG−556−CLと略記)を主成分として含むことを確認した。式(8)で表される化合物に帰属する測定データは以下のとおりである。
1H−NMR{400MHz,CDCl
3,27℃},δ3.2−3.4(2H,m,C
H2CH=CH
2),δ3.6−4.0(5H,m,PhCH
2Ph,OH),δ4.6−5.0(1H,m,CH
2CH=CH
H),δ5.0−5.3(1H,m,CH
2CH=C
HH),δ5.8−6.1(1H,m,CH
2C
H=CH
2),δ6.6−7.2(12H,m,aromatic).
【化10】
【0045】
合成例1における4,4’−(ジメチルメチレン)ビス[2−(2−プロペニル)フェノール]を上記合成で得られたフェノールノボラックアリル置換体(BRG−556−CL)に変更した以外は合成例1と同様に酢酸アリルを用いてオルト位又はパラ位にアリル基を有するフェノールノボラック型アリルエーテルを合成し茶褐色油状物を得た(収率92%)。この茶褐色油状物を
1H−NMR測定した結果、式(9)で表されるオルト位又はパラ位にアリル基を有するフェノールノボラック型アリルエーテル(以下、BRG−556−AL2と略記)を主成分として含むことを確認した。式(9)で表される化合物に帰属する測定データは以下のとおりである。
1H−NMR{400MHz,CDCl
3,27℃},δ3.4−4.0(4H,m,PhOC
H2CH=CH
2,PhC
H2CH=CH
2),δ4.3−4.9(4H,m,PhCH
2Ph),δ5.2−5.3(4H,m,PhOCH
2CHC=
HH,PhCH
2CH=C
HH),δ5.3−5.5(2H,m,PhOCH
2CHC=H
H,PhCH
2CH=CH
H),δ5.8−6.2(1H,m,PhOCH
2C
HC=H
2,PhCH
2C
H=CH
2),δ6.5−7.3(12H,m,aromatic).
【化11】
【0046】
実施例2:フェノールノボラック型多価グリシジル化合物の合成
200mL三口丸底フラスコに、上記合成例2で得られたオルト位又はパラ位にアリル基を有するフェノールノボラック型アリルエーテル(BRG−556−AL2)20g(約106mmol)、タングステン酸ナトリウム二水和物3.48g(10.6mmol)、リン酸0.52g(5.27mmol)、硫酸0.51g(5.27mmol)、及びMTOAHS4.94g(10.6mmol)を入れ、トルエン20gに溶解させた。70℃まで昇温した後、35質量%過酸化水素水溶液61.7g(0.63mol)を1時間かけて撹拌しながら滴下し、70℃でさらに2時間撹拌(撹拌速度400rpm)した。反応初期において、反応液のpHは1.4であり、2時間反応後の反応液のpHは3.4であった。反応終了後、反応液を室温まで冷却した後、純水20gを加え分液処理した。有機層を分離し、亜硫酸ナトリウム水溶液(10質量%)20gを加えて洗浄することで残存する過酸化水素を還元した。水層を除き、純水20gを加えて再度洗浄した。有機層を単離し、有機溶媒(トルエン)を留去した。エポキシ当量が182、エポキシ当量比(E/Er=実測によるエポキシ当量/理論エポキシ当量)が1.54である茶色高粘性油状物を15.3g(81.4mmol、収率76.5%)得た。この茶色高粘性油状物を
1H−NMR測定した結果、式(10)で表されるフェノールノボラック型多価グリシジル化合物を主成分として含むことを確認した。式(10)で表される化合物に帰属する測定データは以下のとおりである。生成物の
1H−NMRスペクトルを
図2に示す。
1H−NMR{400MHz,CDCl
3,27℃},δ2.5−2.8(2H,m,PhOC
H2CHCH
2O),δ2.8−3.0(4H,m,PhC
H2CHCH
2O,PhCH
2CHC
H2O),δ3.1−3.4(2H,m,PhOCH
2CHC
H2O),δ3.6−4.0(6H,m,PhCH
2Ph,PhOCH
2C
HCH
2O,PhCH
2C
HCH
2O),δ6.6−7.2(12H,m,aromatic).
【化12】
【0047】
合成例3:基質(オルト位又はパラ位にアリル基を有するトリフェニルメタンノボラック(フェノールとベンズアルデヒドの重縮合物)アリルエーテル(TRI−220−AL2と略記)の合成
原料としてショウノール(登録商標)BRG−556の代わりに式(11)で表されるトリフェニルメタンノボラック(ショウノール(登録商標)TRI−220、p=2〜7、平均値:3.1)(昭和電工株式会社製)500.0gを用いた以外は、合成例2のBRG−556−AL2と同様に三段階で基質を合成した。まず、第一の工程でトリフェニルメタンノボラックアリルエーテル体(以下、TRI−220−ALと略記)を合成し茶褐色油状物を得た(収率94%)。この茶褐色油状物を
1H−NMR測定した結果、式(12)で表されるトリフェニルメタンノボラックアリルエーテル体を主成分として含むことを確認した。式(12)で表される化合物に帰属する測定データは以下のとおりである。
1H−NMR{400MHz,CDCl
3,27℃},δ3.2−3.4(2H,m,PhCHPh),δ4.5−4.6(2H,m,C
H2CH=CH
2),δ5.2−5.3(1H,m,CH
2CH=CH
H),δ5.3−5.5(1H,m,CH
2CH=C
HH),δ6.0−6.1(1H,m,CH
2C
H=CH
2),δ6.6−7.3(17H,m,aromatic).
【化13】
【化14】
【0048】
上記、BRG−556−AL2の合成同様、第二の工程でトリフェニルメタンノボラックアリル置換体(以下、TRI−220−CLと略記)体を合成し褐色油状物を得た(収率98%)。この褐色油状物を
1H−NMR測定した結果、式(13)で表される化合物を主成分として含むことを確認した。式(13)で表される化合物に帰属する測定データは以下のとおりである。
1H−NMR{400MHz,CDCl
3,27℃},δ3.2−3.4(2H,m,PhCHPh),δ4.8−4.9(1H,m,CH
HCH=CH
2),δ5.0−5.2(3H,m,C
HHCH=CH
2,CH
2CH=CH
H,CH
2CH=C
HH),δ5.8−6.1(1H,m,CH
2C
H=CH
2),δ6.6−7.4(17H,m,aromatic).
【化15】
【0049】
上記、BRG−556−AL2と同様、第三の工程でトリフェニルメタンノボラック型アリルエーテル(以下、TRI−220−AL2と略記)体を合成し褐色油状物を得た(収率98%)。この褐色油状物を
1H−NMR測定した結果、式(14)で表される化合物を主成分として含むことを確認した。式(14)で表される化合物に帰属する測定データは以下のとおりである。
1H−NMR{400MHz,CDCl
3,27℃},δ2.6−2.9(2H,m,PhOC
H2CH=CH
2),δ3.1−3.3(2H,m,PhCHPh),δ4.5−4.9(2H,m,PhCH
HCH=CH
2,PhOCH
HCH=CH
2),δ5.0−5.4(3H,m,PhC
HHCH=CH
2,PhOC
HHCH=CH
2,PhCH
2CH=C
H2,PhOCH
2CH=C
H2),δ5.8−6.1(2H,m,PhCH
2C
H=CH
2,PhOCH
2C
H=CH
2),δ6.6−7.3(17H,m,aromatic).
【化16】
【0050】
実施例3:トリフェニルメタンノボラック型多価グリシジル化合物の合成
200mL三口丸底フラスコに、上記合成例3で得られたオルト位又はパラ位にアリル基を有するトリフェニルメタンノボラック型アリルエーテル(TRI−220−AL2)15g(約48mmol)、タングステン酸ナトリウム二水和物3.48g(10.6mmol)、リン酸0.52g(5.27mmol)、硫酸0.51g(5.27mmol)、及びMTOAHS4.94g(10.6mmol)を入れ、トルエン20gに溶解させた。70℃まで昇温した後、35質量%過酸化水素水溶液61.7g(0.63mol)を1時間かけて撹拌しながら滴下し、70℃でさらに2時間撹拌(撹拌速度400rpm)した。反応初期において、反応液のpHは1.4であり、2時間反応後の反応液のpHは3.4であった。反応終了後、反応液を室温まで冷却した後、純水20gを加え分液処理した。有機層を分離し、亜硫酸ナトリウム水溶液(10質量%)20gを加えて洗浄することで残存する過酸化水素を還元した。水層を除き、純水20gを加えて再度洗浄した。有機層を単離し、有機溶媒(トルエン)を留去し、エポキシ当量が192、エポキシ当量比(E/Er=実測によるエポキシ当量/理論エポキシ当量)が1.34である茶色高粘性油状生成物を11.4g(36mmol、収率75.7%)得た。この茶色高粘性油状物を
1H−NMR測定した結果、式(15)で表されるトリフェニルメタンノボラック型多価グリシジル化合物を主成分として含むことを確認した。式(15)で表される化合物に帰属する測定データは以下のとおりである。生成物の
1H−NMRスペクトルを
図3に示す。
1H−NMR{400MHz,CDCl
3,27℃},δ2.4−2.6(2H,m,PhOC
H2CHCH
2O),δ2.6−2.8(4H,m,PhC
H2CHCH
2O,PhCH
2CHC
H2O),δ2.8−3.0(2H,m,PhOCH
2CHC
H2O),δ3.0−3.3(2H,m,PhCHPh),δ3.8−4.0(2H,m,PhOCH
2C
HCH
2O),δ4.1−4.3(2H,m,PhCH
2C
HCH
2O),δ6.6−7.3(12H,m,aromatic).
【化17】
【0051】
比較例1
過酸化水素水溶液添加終了後の反応時間を9時間とした以外は実施例1と同様にしてグリシジル化反応を行い、エポキシ当量が209、エポキシ当量比(E/Er=実測によるエポキシ当量/理論エポキシ当量)が1.85である生成物12g(収率66.3%)を得た。反応を長時間行ったため、ゲル状物が生成し、目的物の取得収率が下がり、エポキシ当量比も上昇した。
【0052】
比較例2
過酸化水素水溶液の滴下時間を3時間、過酸化水素水溶液添加終了後の反応時間を1時間とした以外は実施例1と同様にしてグリシジル化反応を行い、エポキシ当量が337、エポキシ当量比(E/Er=実測によるエポキシ当量/理論エポキシ当量)が1.85である生成物17.2g(収率95.0%)を得た。滴下を長時間行い、過酸化水素水溶液添加終了後の反応時間を短縮すると、エポキシ当量比が上昇する。
1H−NMR{400MHz,CDCl
3,27℃}分析により、反応中間体であるアリル体含有率が実施例1に比べて約50%高いことが確認された。エポキシ当量比上昇の要因は反応効率が低いためと推定される。
【0053】
比較例3
リン酸の量を2倍(0.462g(4.7mmol))とし、硫酸を共存させなかった以外は実施例1と同様にしてグリシジル化反応を行った。エポキシ当量が179、エポキシ当量比(E/Er=実測によるエポキシ当量/理論エポキシ当量)が1.58である生成物18.2g(収率86.3%)を得た。酸としてリン酸のみを使用すると、エポキシ当量比が上昇する。
1H−NMR{400MHz,CDCl
3,27℃}分析により、反応中間体であるアリル体含有率が実施例1に比べて約40%高いことが確認された。エポキシ当量比上昇の要因は反応効率が低いためと推定される。
【0054】
比較例4
リン酸の量を10倍とし、反応液のpHを0.5程度に調整した以外は実施例1と同様にしてグリシジル化反応を行った。加水分解物と考えられるゲル状物が多量に析出(53g、含水状)し、目的物を反応液から抽出することは困難であった。ゲル状物をろ取して、酢酸エチル(50mL)、メタノール(50mL)で順次洗浄、減圧下乾燥し、褐色固体を得た。得られた生成物の
1H−NMRスペクトルを
図4に示す。下段が生成物の
1H−NMRスペクトルであり、上段が目的物(式(5))の
1H−NMRスペクトルである。生成物中の目的物に帰属される信号の含有率は10%以下であり、90%以上が加水分解物及びその会合物(ゲル状物)に帰属される。加水分解物に帰属されると推察できる信号データは以下のとおりである。
1H−NMR{400MHz,DMSO−d
6,27℃}δ1.60(6H,s,CH
3),δ3.3−3.5(2H,brm,PhCH
2CH(O
H)CH
2(O
H),PhOCH
2CH(O
H)CH
2(O
H)),δ3.6(2H,brm,PhCH
2CH(OH)C
H2(OH)),δ3.8(2H,m,PhOCH
2CH(OH)C
H2(OH)),δ3.9(2H,brm,PhOCH
2C
H(OH)CH
2(OH)),δ4.4(2H,brm,PhCH
2C
H(OH)CH
2(OH)),δ4.6(2H,brm,PhOC
H2CH(OH)CH
2(OH)),δ4.9(2H,brm,PhC
H2CH(OH)CH
2(OH)),δ6.8(brm,2H,aromatic),δ6.9−7.1(m,4H,aromatic).
【0055】
比較例5
リン酸及び硫酸の量をそれぞれ0.5倍とし、反応液のpHを5.0に調整した以外は実施例1と同様にグリシジル化反応を行い、エポキシ当量が321、エポキシ当量比(E/Er=実測によるエポキシ当量/理論エポキシ当量)が2.84である生成物19.2g(収率91.1%)を得た。反応液のpHを4.0より高くすると、エポキシ当量比が上昇する。
1H−NMR{400MHz,CDCl
3,27℃}分析により、反応中間体であるアリル体含有率が実施例1に比べて約60%高いことが確認された。エポキシ当量比上昇の要因は反応効率が低いためと推定される。
【0056】
比較例6
リン酸を用いず代わりに硫酸を2倍量使用とし、反応液のpHを約0.5に調整した以外は実施例1と同様にグリシジル化反応を行った。エポキシ当量が182、エポキシ当量比(E/Er=実測によるエポキシ当量/理論エポキシ当量)が1.61である生成物9.2g(収率43.6%)を得た。収率低下の要因は比較例4と同様、加水分解が起こったためと推定される。