(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238706
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60C 9/18 20060101AFI20171120BHJP
B29D 30/38 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
B60C9/18 B
B29D30/38
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-248400(P2013-248400)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105029(P2015-105029A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】滝田 広一
【審査官】
岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭47−006177(JP,U)
【文献】
特開昭55−142753(JP,A)
【文献】
特開昭62−299555(JP,A)
【文献】
実開昭53−144980(JP,U)
【文献】
特開平05−116506(JP,A)
【文献】
特開昭62−214067(JP,A)
【文献】
特開2013−204179(JP,A)
【文献】
特開2009−221774(JP,A)
【文献】
特開2000−025412(JP,A)
【文献】
特開2013−216164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00−19/12
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部にベルトを備えた空気入りタイヤであって、
前記ベルトは、
間隔を空けて特定方向に延びるように配置された複数の線材を含む基材を備え、
前記基材は、2次元的に繰り返し形成された複数の多角形部を含み、
前記各多角形部は、捩合部と単線部とにより画定され、
前記各捩合部は、前記線材のうち、隣接して配置された線材同士を2回以上捩り合わせることにより形成され、
前記各単線部は、前記捩合部を構成する線材の一方であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ベルトは、前記基材が帯状であり、両側部が長手方向に延びる縦線材でそれぞれ構成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ベルトは、前記基材が、前記縦線材を3本以上備え、前記各縦線材の間の各分割領域にそれぞれ複数の多角形部を形成してなることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ベルトは、前記基材を構成する各多角形部の形状が相違していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ベルトは、前記各分割領域間で形状の相違する多角形部をそれぞれ配置してなることを特徴とする請求項3に従属する請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ベルトは、前記縦線材を3本備え、前記各縦線材の間に第1分割領域と第2分割領域とを形成し、車両に装着した状態で、前記第1分割領域を内側に位置させると共に、前記第2分割領域を外側に位置させ、前記第1分割領域に比べて前記第2分割領域の多角形部のハニカム密度を大きくしてなることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ベルトは、前記多角形部の形状が捩合部ピッチを変更することにより調整可能であることを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記ベルトは、前記捩合部ピッチが、線材同士の捩合回数、捩合部から延びる単線材の傾斜角度、又は、隣接する線材の間隔を変更することにより調整可能であることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ベルトは、前記基材の全体をコーティングする被覆部をさらに備えたことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記多角形部は、四角形又は六角形であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
トレッド部にベルトを備えた空気入りタイヤであって、
前記ベルトは、
線材同士を互いに捩り合わせてなる捩合部と、
前記捩合部から延びる、前記線材の一方からなる単線部と、
で囲まれた多角形部を、同一平面上に連続的に形成してなる基材を備え、
前記基材の捩合部は2本の線材同士を2回以上捩り合わせることにより形成したことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項12】
線材同士を互いに2回以上捩り合わせてなる捩合部と、前記捩合部から延びる、前記線材の一方からなる単線部と、で囲まれた多角形部を、同一平面上に連続的に形成する基材を備えたベルトの形成工程を備えることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項13】
さらに、前記基材の全体を被覆部でコーティングするベルトの形成工程を備えることを特徴とする請求項12に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1として、長手方向に並設した複数本のワイヤコイルに対して交差する2方向から他のワイヤコイルをからげるようにした構成のタイヤのベルト(補強部材)が公知である。
また特許文献2として、交差する3方向にそれぞれ延びる複数本のベルトコードを織り合わせた構成のタイヤのベルトが公知である。
また特許文献3として、網目構造を有する金属薄板からなるタイヤのベルトが公知である。
【0003】
しかしながら、特許文献1では、長手方向に延びるワイヤコイルに交差する他のワイヤコイルをからげているだけであるので、互いに摺接して摩耗し、場合によっては破断する恐れがある。特に軽量化のためにワイヤコイルに樹脂材料を使用した場合等にはこの問題が顕著なものとなる。
また特許文献2でも前記特許文献1に記載のものと同様に、ベルトコード同士が互いに摺接して摩耗し、場合によっては破断する恐れがある。
また特許文献3では、全体が単一の金属薄材で構成されているため、組み込まれたタイヤが縁石等に乗り上げることにより、その一部に外力が集中すると破断する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−237203号公報
【特許文献2】特開平5−162508号公報
【特許文献3】特開2000−25412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、軽量で、耐久性に優れたベルトを備えた空気入りタイヤ及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
トレッド部にベルトを備えた空気入りタイヤであって、
前記ベルトは、
間隔を空けて特定方向に延びるように配置された複数の線材を含む基材を備え、
前記基材は、2次元的に繰り返し形成された複数の多角形部を含み、
前記各多角形部は、捩合部と単線部とにより画定され、
前記各捩合部は、前記線材のうち、隣接して配置された線材同士を2回以上捩り合わせることにより形成され、
前記各単線部は、前記捩合部を構成する線材の一方である空気入りタイヤを提供する。
【0007】
この構成により、線材を2回以上捩り合わせて形成した捩合部で、線材同士の擦れを効果的に防止できる。したがって、線材同士が擦れて摩耗により破断する恐れを大幅に低減できる。また多角形部で多方向の剛性を高めることができる。さらに多角形部は同一平面上に連続的に形成されただけであるので多層化する必要がなく、軽量化が可能となる。つまり、ベルトの耐久性を維持しつつ軽量化が可能となる。
【0008】
前記ベルトは、前記基材が帯状であり、両側部が長手方向に延びる縦線材でそれぞれ構成されているのが好ましい。
【0009】
この構成により、基材の両側部の縦線材で、ベルトを安定した形状に維持しやすくなり、剛性バランスを優れたものとすることができる。
【0010】
前記ベルトは、前記基材が、前記縦線材を3本以上備え、前記各縦線材の間の各分割領域にそれぞれ複数の多角形部を形成してなるのが好ましい。
【0011】
この構成により、ベルトに適切なものとなるように、各分割領域での剛性を変更することができる。
【0012】
前記ベルトは、前記基材を構成する各多角形部の形状
が相違しているのが好ましい。
【0013】
この構成により、必要とされる剛性に方向性がある場合であっても、それに応じて多角形部の形状を変更することにより対応することができる。例えば、剛性が必要とされる方向には短く、必要とされない方向には長くなるように形成すればよい。
【0014】
前記ベルトは、前記各分割領域間で形状の相違する多角形部をそれぞれ配置してなるのが好ましい。
【0015】
この構成により、各分割領域での剛性の高低をベルトに適した値に設定することができる。
【0016】
前記縦線材を3本備え、前記各縦線材の間に第1分割領域と第2分割領域とを形成し、車両に装着した状態で、前記第1分割領域を内側に位置させると共に、前記第2分割領域を外側に位置させ、前記第1分割領域に比べて前記第2分割領域の多角形部のハニカム密度を大きくするのが好ましい。
【0017】
この構成により、第1分割領域で車両走行時の乗心地を良好なものとしつつ、第1分割領域に比べて剛性を高められた第2分割領域によってコーナリング性能を高めることが可能となる。
【0018】
前記ベルトは、前記多角形部の形状が捩合部ピッチを変更することにより調整可能であればよい。
【0019】
前記ベルトは、前記捩合部ピッチが、線材同士の捩合回数、捩合部から延びる単線材の傾斜角度、又は、隣接する線材の間隔を変更することにより調整可能であればよい。
【0020】
前記ベルトは、前記基材の全体をコーティングする被覆部をさらに備えるようにすればよい。
前記多角形部は、四角形又は六角形であればよい。
【0021】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
トレッド部にベルトを備えた空気入りタイヤであって、
前記ベルトは、
線材同士を互いに捩り合わせてなる捩合部と、
前記捩合部から延びる、前記線材の一方からなる単線部と、
で囲まれた多角形部を、同一平面上に連続的に形成してなる基材を備え、
前記基材の捩合部は2本の線材同士を2回以上捩り合わせることにより形成したものである。
【0022】
この構成により、線材を2回以上捩り合わせて形成した捩合部で、線材同士の擦れを効果的に防止できる。したがって、線材同士が擦れて摩耗により破断する恐れを大幅に低減できる。また多角形部で多方向の剛性を高めることができる。さらに多角形部は同一平面上に連続的に形成されただけであるので多層化する必要がなく、軽量化が可能となる。つまり、カーカスプライの耐久性を維持しつつ軽量化が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、タイヤのベルトを、捩合部と単線部とで囲まれた複数の多角形部からなる基材を備え、捩合部を2本の線材同士を2回以上捩り合わせた構成としたので、線材同士の擦れが殆どなく、従って摩耗により切断する恐れがない。したがって、ベルトの耐久性を高めて、長期に亘って所望の性能を発揮させることができる。またベルトを1枚で構成しても十分な剛性を確保することができるので、軽量化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係る空気入りタイヤの部分断面図である。
【
図9】第2実施形態に係るベルトの基材を示す平面図である。
【
図10】第3実施形態に係るベルトの基材を示す平面図である。
【
図11】第4実施形態に係るベルトの基材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0026】
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤの部分断面図を示す。この空気入りタイヤでは、外部構造は、トレッド部11、ショルダー部12、サイド部13及びビード部14で構成されている。また内部構造は、トレッド部11からショルダー部12にかけて設けられるベルト15を備える。ベルト15の外周側に補強プライ16が設けられている。ベルト15の内周側にはカーカス17が設けられている。カーカス17はトレッド部11からビード部14に向かい、そこに内蔵されるビードコア18で折り返して外面側に至る。なお、
図1では、他の部材については省略している。
【0027】
(第1実施形態)
図2は、第1実施形態に係るベルト15を示す。このベルト15は基材2の表面を被覆部3で覆ってシート状としたものである。
【0028】
図3に示すように、基材2は、複数本の線材4を所定位置で捩り合わせて複数の多角形部5を形成してシート状としたものである。
【0029】
線材4には、スチール等の金属材料、ポリエステル、アラミド、レーヨン、ナイロン等の有機繊維からなる樹脂材料等を使用することができる。各線材4は、1本で構成してもよいが、より細い複数本を束ねてあるいは撚り合わせて1本とした構成とすることもできる。
【0030】
基材2は、1本の線材4を、上下方向(縦方向)に複数本並設し、隣り合う線材同士を上下方向に所定ピッチで捩り合わせたものである。すなわち、隣り合う線材同士が捩り合わされた捩合部6と、この捩合部6から延びる一方の線材4からなる単線部7とで囲まれた多角形部5が形成される。ここでは、多角形部5は正六角形で構成されている。また捩合部6は、線材同士を2回以上捩り合わせることにより形成する。ここでは、線材同士を2回半捩り合わせることで捩合部6を形成している(
図2では、捩合部6の中心位置に円形の空間部が示されているが、これは捩合状態をわかりやすくするためのものであって、実際には空間部は形成されない。)。両側部の線材4(縦線材8)は上下方向に真っ直ぐ延びたままで使用する。多角形部5は、縦線材8の間で同一平面上に連続的に形成され、ハニカム形態を構成する。
【0031】
図4に示すように、1つの多角形部5に着目してより詳細に説明する。この多角形部5は、隣接する2本の線材4を捩り合わせた捩合部6から分岐してそれぞれ延びる第1線材4Aからなる第1単線部7Aと、第2線材4Bからなる第2単線部7Bとを有する。また、第1線材4Aと、この第1線材4Aに対して第2線材4Bとは反対側に隣接する第3線材4Cとを捩り合わせた第1捩合部6Aを有する。さらに、第2線材4Bと、この第2線材4Bに対して第1線材4Aとは反対側に隣接する第4線材4Dとを捩り合わせた第2捩合部6Bを有する。さらにまた、第1捩合部6Aから分岐した第1線材4Aからなる第3単線部7Cと、第2捩合部6Bから分岐した第2線材4Bからなる第4単線部7Dとを有する。第3単線部7Cと第4単線部7Dとは捩り合わされて捩合部6となる。
【0032】
多角形部5の形状は捩合部ピッチすなわちハニカム密度を変更することにより、縦長あるいは横長の形状に変更することができる。ここに、捩合部ピッチとは、
図3に示すように、縦方向の捩合部6の間隔(ここでは中心位置の間隔を使用)である縦ピッチP1と、横方向の捩合部6の間隔である横ピッチP2とを意味する。
【0033】
縦ピッチP1の調整は、捩合部6の捩合回数の増減、あるいは、単線部7の傾斜角度の調整により行うことができる。
【0034】
捩合部6の捩合回数は増やせば増やすほど、線材同士が擦れにくい構成とすることができるが、前述の通り使用時の線材同士の擦れを十分に防止できる2回以上であればよい。捩合回数を調整することで、捩合部6の長さを変更して縦ピッチP1を調整することができる。例えば、
図7に示すように、捩合回数を増やすことで、各正六角形を縦長の形状とすることができるし、捩合回数を減少させることで、図示しないが横長の形状とすることもできる。
【0035】
また捩合部6から延びる単線部7の傾斜角度(
図3の上下方向(縦方向)に対する単線部7の傾斜角度θ)を変更することによっても縦ピッチP1を調整することができる。
図5では、捩合部6に対する傾斜角度、すなわち縦方向に対する傾斜角度θを大きくして横長形状としている。
図6では、捩合部6に対する傾斜角度、すなわち縦方向に対する傾斜角度θを小さくして縦長形状としている。
【0036】
横ピッチP2の調整は、線材4の間隔を調整することにより行うことができる。すなわち、線材4の間隔を広くすることにより多角形部5を横長とすることができ、狭くすることにより縦長とすることができる。
【0037】
このように、捩合部6の捩合回数の増減又は単線部7の傾斜角度θの調整により正六角形を縦長又は横長のいずれの形状にも調整することができる。縦長形状とすることにより、横方向に比べて縦方向の剛性を小さくすることができる。一方、横長形状とすることにより、縦方向に比べて横方向の剛性を小さくすることができる。
【0038】
また基材2の多角形部5の形状は六角形(正六角形のほか、縦長又は横長の六角形を含む)に限らず、
図8に示す四角形としてもよい。すなわち、捩合部6に対して単線部7の長さを十分に大きくすることにより四角形とすることができる。
図8では多角形部5は菱形形状となっている。
【0039】
前記構成からなる基材2は、図示しない薄いゴム(トッピングゴム)で被覆したり、フィルム状の合成樹脂を熱溶着させてコーティングしたりして被覆部3を形成することによりベルト15となる。
【0040】
前記構成からなるベルト15を備えたタイヤでは、従来2枚は必要であったベルトを1枚で済ませることができ、軽量化が可能となる。また線材同士の捩合部6は、2回以上の捩合回数で捩り合わせるようにしているので、使用(タイヤによる走行)状態で線材同士が擦れることがない。したがって、線材4が摩耗により損傷して切断に至る心配がない。
【0041】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係るベルト15を示す。このベルト15は、縦線材8を4本設けることにより3箇所の分割領域(第1分割領域9A、第2分割領域9B及び第3分割領域9C)を有する構成となっている。各分割領域にはそれぞれ複数の多角形部5が形成されており、第2分割領域9Bに形成される多角形部5と第1分割領域9A及び第3分割領域9Cに形成される多角形部5とでその形状を相違させている。すなわち、第2分割領域9Bの多角形部5は正六角形で形成されているのに対し、第1分割領域9A及び第3分割領域9Cの多角形部5は縦長(幅狭)の六角形で形成されている。ここでは、タイヤ幅方向の横ピッチP2を、第1分割領域9AでP2a、第2分割領域9BでP2b、第3分割領域9CでP2cとした場合、P2b>P2a、P2c(P2aとP2cは等しくても、相違していてもよい。)としている。これにより、ベルト15のタイヤ幅方向中央部でハニカム密度が粗となり、両側で密となる。
【0042】
図10は、第3実施形態に係るベルト15を示す。このベルト15は、前記第2実施形態に係るベルト15と同様に、縦線材8を4本設けることにより3箇所の分割領域(第1分割領域9A、第2分割領域9B及び第3分割領域9C)を有する構成となっている。各分割領域にはそれぞれ複数の多角形部5が形成されている。但し、各分割領域に形成される多角形部5は、前記第2実施形態とは逆に、第1分割領域9A及び第3分割領域9Cで正六角形で形成されているのに対し、第2分割領域9Bで縦長(幅狭)の六角形で形成されている点で相違する。ここでは、タイヤ幅方向の横ピッチP2を、第1分割領域9AでP2a、第2分割領域9BでP2b、第3分割領域9CでP2cとした場合、P2a、P2c>P2b(P2aとP2cは等しくても、相違していてもよい。)としている。これにより、ベルト15のタイヤ幅方向両側でハニカム密度が粗となり、中央部で密となる。
【0043】
図11は、第4実施形態に係るベルト15を示す。このベルト15は、縦線材8を3本設けることにより2箇所の分割領域(第1分割領域9A及び第2分割領域9B)を有する構成となっている。各分割領域にはそれぞれ複数の多角形部5が形成されている。第1分割領域9Aでは、多角形部5が正六角形で構成され、第2分割領域9Bでは、縦長(幅狭)の六角形で形成されている。ここでは、タイヤ幅方向の横ピッチP2を、第1分割領域9AでP2a、第2分割領域9BでP2bとした場合、P2a>P2bとしている。そして、このようなベルト15を備えた空気入りタイヤを車両に装着して使用する際、内側にハニカム密度が粗となった第1分割領域9A(外側に密となった第2分割領域9B)を位置させた状態で使用する。
【実施例】
【0044】
比較例のベルトを備えた空気入りタイヤと、本発明に係る実施例のベルトを備えた空気入りタイヤとで実車フィーリングテストを行った。詳しくは、サイズが195/65R15 91Hで、空気圧が180kPaの空気入りタイヤを使用し
、耐久性及びロードノイズ(R/N)について評価した。以下に示すこれらの値は、比較例1又は2を100とした場合の指数を示す
。
耐久性では、JIS D4230に準拠し、タイヤ強度(破壊エネルギー)試験を行い、測定値を指数化した。数値が大きいほど耐久性に優れていることを示す。
ロードノイズ(R/N)とは、時速100kmで舗装良路のテストコースを走行したときのドライバーの窓側の耳の位置において測定したOAL(オーバーオール)指数である。数値が小さいほど性能が良いことを示す。
【0045】
【表1】
比較例1:従来構成のベルトを2枚備えた空気入りタイヤ
比較例2:長手方向に並設した複数本のワイヤコイルに対して交差する2方向から他のワイヤコイルをからげたもの(特開平1−237203号公報参照)
比較例3:交差する3方向にそれぞれ延びる複数本のベルトコードを織り合わせたもの(特開平5−162508号公報参照)
実施例1:
図3に示すベルト(第1実施形態)
実施例2:
図6に示すベルト
実施例3:
図9に示すベルト(第2実施形態)
実施例4:
図10に示すベルト(第3実施形態)
実施例5:
図11に示すベルト(第4実施形態)
【0046】
前記表1から明らかなように、いずれの実施例でも比較例に比べ
て耐久性を向上させることができた。また実施例3及び5ではロードノイズについても低減することができた。これは、ショルダー部12のハニカム構造を密にすることにより、タイヤ走行時の振動によるタイヤ断面の振動、特にトレッド部とサイドウォール部が同相で、ショルダー部12が逆相で振動する変形モード(断面2次モード)において、腹となる部分(ショルダー部12)を抑えることが有効であったと考えられる。
【0047】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、前記実施形態では、ベルトは1層で構成したが、2層以上としても構わない。
【0049】
また前記実施形態では、横方向に並設した複数本の線材4を、隣接する線材同士で縦方向の所定位置で捩り合わせることにより基材2を形成するようにしたが、互いに交差する斜め方向に延びる線材同士を互いに捩り合わせることによって基材2を形成するようにしてもよい。
【0050】
さらに
図8では、基材2を3本の縦線材8により2つの分割領域を形成するようにしたが、
図9及び
図10に示すように3つの分割領域を形成するようにしてもよいし、図示しないが5つの分割領域を形成するようにしてもよい。そして、各分割領域で多角形部5の形状やサイズを変更する等により剛性を相違させるようにすればよい。なお、分割領域はこれら例示の数に限らず、用途に応じて分割数を自由に変更することも可能である。
【0051】
また各分割領域の多角形部5は、全て六角形で構成したが、前記第1実施形態と同様に、四角形等の他の多角形で構成してもよい。また各分割領域で、多角形の形状を相違させてもよい。例えば、多角形部を、第1分割領域では六角形、第2領域では四角形としてもよい。また、境界部分の縦線材に形成される捩合部の長さは同じでなくてもよく、位置も縦方向にずれていてもよい。これは、多角形部がいずれの形状のものであっても同じである。
【符号の説明】
【0052】
2…基材
3…被覆部
4…線材
4A…第1線材
4B…第2線材
4C…第3線材
4D…第4線材
5…多角形部
6…捩合部
6A…第1捩合部
6B…第2捩合部
7…単線部
7A…第1単線部
7B…第2単線部
7C…第3単線部
7D…第4単線部
8…縦線材
9A…第1分割領域
9B…第2分割領域
9C…第3分割領域
11…トレッド部
12…ショルダー部
13…サイド部
14…ビード部
15…ベルト
16…補強プライ
17…カーカス
18…ビードコア