特許第6238717号(P6238717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238717
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】光学機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 13/06 20060101AFI20171120BHJP
【FI】
   G03B13/06
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-254571(P2013-254571)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-114396(P2015-114396A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】中原 征二
(72)【発明者】
【氏名】榎田 弓貴也
【審査官】 井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−092232(JP,A)
【文献】 特開昭61−005234(JP,A)
【文献】 特開2007−206169(JP,A)
【文献】 特開2012−203089(JP,A)
【文献】 特開2003−004907(JP,A)
【文献】 特開2012−123151(JP,A)
【文献】 特開2006−058746(JP,A)
【文献】 特開2007−010802(JP,A)
【文献】 特開2004−309801(JP,A)
【文献】 米国特許第04309093(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0002871(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 13/00 −13/28
G03B 7/00 − 7/30
G02B 5/00
G02B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元配置された複数のマイクロレンズを有する焦点板を含み、結像光学系により前記焦点板上に形成された光学像を接眼光学系を通して観察可能とするファインダ光学系と、
測光センサと、
記複数のマイクロレンズにより拡散した光の一部を前記測光センサに導く測光光学系とを有し、
前記測光光学系の光軸は、前記ファインダ光学系の光軸とは異なり、
前記ファインダ光学系の光軸のうち前記焦点板において前記複数のマイクロレンズが2次元配置されたベース面と交差する部分を焦点板光軸とし、
前記各マイクロレンズにおいて、それぞれ前記ベース面に直交する断面であって、前記焦点板光軸と前記測光光学系の光軸とを含む平面に直交し、該マイクロレンズの頂点を含む断面を第1の断面とし、前記平面に平行であり、前記頂点を含む断面を第2の断面とするとき、
前記各マイクロレンズは、前記第1の断面における前記頂点での局所曲率半径R1と、前記第2の断面における前記頂点での局所曲率半径R2とが、
1.7<R1/R2<5.0
なる条件を満足するように形成されていることを特徴とする光学機器。
【請求項2】
2次元配置された複数のマイクロレンズを有する焦点板を含み、結像光学系により前記焦点板上に形成された光学像を接眼光学系を通して観察可能とするファインダ光学系と、
測光センサと、
記複数のマイクロレンズにより拡散した光の一部を前記測光センサに導く測光光学系とを有し、
前記測光光学系の光軸は、前記ファインダ光学系の光軸とは異なり、
前記ファインダ光学系の光軸のうち前記焦点板において前記複数のマイクロレンズが2次元配置されたベース面と交差する部分を焦点板光軸とし、前記ベース面からの前記焦点板光軸の方向ベクトルをOVとし、該方向ベクトルOVと同じ始点からの前記測光光学系の光軸の方向ベクトルをPMとし、
前記各マイクロレンズにおいて、前記ベース面上にてベクトルPM−OVの方向に直交する方向に延びる線を母線とし、前記ベクトルPM−OVの方向に平行な方向に延びる線を子線とし、それぞれ前記ベース面に直交する断面であって、前記母線および該マイクロレンズの頂点を含む断面を第1の断面とし、前記子線および前記頂点を含む断面を第2の断面とするとき、
前記各マイクロレンズは、前記第1の断面における前記頂点での局所曲率半径R1と、前記第2の断面における前記頂点での局所曲率半径をR2とが、
1.7<R1/R2<5.0
なる条件を満足するように形成されていることを特徴とする光学機器。
【請求項3】
前記各マイクロレンズは、前記ベース面上において前記第1の断面に沿って延びる長径と前記第2の断面に沿って延びる短径とを有する楕円を前記長径回りで回転させることで形成される形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学機器。
【請求項4】
前記複数のマイクロレンズの前記頂点の間隔が等間隔であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項5】
前記複数のマイクロレンズが、前記ベース面から前記頂点までの高さが異なるn種類のマイクロレンズを含み、前記高さが同じである同種類のマイクロレンズの前記頂点間の間隔の最小値をLiとし、iを前記高さが低い方の前記マイクロレンズから順に1からn−1までの自然数として与えるとき、
i+1>1.7×L
を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学機器
【請求項6】
前記複数のマイクロレンズは、それぞれの前記頂点が、相互に等間隔Lで隣接する複数の基準点のそれぞれに対して、以下の条件を満足する変位量Eの範囲で規則性なく位置するように配置されており、
E≦0.3L
かつ相互に隣接する前記マイクロレンズの前記頂点間の間隔Pが、
0.4L≦P≦1.6L
なる条件を満足すること特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学機器。
【請求項7】
2次元配置された複数のマイクロレンズを有する焦点板を含み、結像光学系により前記焦点板上に形成された光学像を接眼光学系を通して観察可能とするファインダ光学系と、
測光センサと、
記複数のマイクロレンズにより拡散した光の一部を前記測光センサに導く測光光学系とを有する光学装置における焦点板であって、
前記測光光学系の光軸は、前記ファインダ光学系の光軸とは異なり、前記ファインダ光学系の光軸のうち前記焦点板において前記複数のマイクロレンズが2次元配置されたベース面と交差する部分を焦点板光軸とし、
前記各マイクロレンズにおいて、それぞれ前記ベース面に直交する断面であって、前記焦点板光軸と前記測光光学系の光軸とを含む平面に直交し、該マイクロレンズの頂点を含む断面を第1の断面とし、前記平面に平行であり、前記頂点を含む断面を第2の断面とするとき、
前記各マイクロレンズは、前記第1の断面における前記頂点での局所曲率半径R1と、前記第2の断面における前記頂点での局所曲率半径R2とが、
1.7<R1/R2<5.0
なる条件を満足するように形成されていることを特徴とする焦点板。
【請求項8】
2次元配置された複数のマイクロレンズを有する焦点板を含み、結像光学系により前記焦点板上に形成された光学像を接眼光学系を通して観察可能とするファインダ光学系と、
測光センサと、
記複数のマイクロレンズにより拡散した光の一部を前記測光センサに導く測光光学系とを有する光学装置における焦点板であって、
前記測光光学系の光軸は、前記ファインダ光学系の光軸とは異なり、前記ファインダ光学系の光軸のうち前記焦点板において前記複数のマイクロレンズが2次元配置されたベース面と交差する部分を焦点板光軸とし、前記ベース面からの前記焦点板光軸の方向ベクトルをOVとし、該方向ベクトルOVと同じ始点からの前記測光光学系の光軸の方向ベクトルをPMとし、
前記各マイクロレンズにおいて、前記ベース面上にてベクトルPM−OVの方向に直交する方向に延びる線を母線とし、前記ベクトルPM−OVの方向に平行な方向に延びる線を子線とし、それぞれ前記ベース面に直交する断面であって、前記母線および該マイクロレンズの頂点を含む断面を第1の断面とし、前記子線および前記頂点を含む断面を第2の断面とするとき、
前記各マイクロレンズは、前記第1の断面における前記頂点での局所曲率半径R1と、前記第2の断面における前記頂点での局所曲率半径をR2とが、
1.7<R1/R2<5.0
なる条件を満足するように形成されていることを特徴とする焦点板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結像光学系により光学像が形成される焦点板を有する光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
光学機器の代表例である一眼レフカメラ等の撮像装置には、撮像面と光学的に等価な位置に焦点板が配置されており、撮像光学系(結像光学系)によって光学像(被写体像)が撮像面上と焦点板上とに形成される。ユーザは、焦点板上に形成された光学像を、ペンタプリズム等の正立像形成部材および接眼光学系を通して観察し、撮影構図やピント状態を確認することができる。このように構成されるファインダ光学系において、焦点板は、フレネルレンズやマイクロレンズ等が形成された拡散面によって撮像光学系からの光を拡散させることで、ピント状態を視認し易くしている。また、焦点板の拡散面は、ここで拡散した光の一部をファインダ光学系の光軸とは異なる光軸を有する測光光学系を通して測光センサに入射させ、測光を行わせる。
【0003】
従来の撮像装置では焦点板の拡散特性は撮像光学系の開放F値がF2.8〜F5.6である場合に対して最適化されていたが、最近では開放F値が8程度の撮像光学系も多く用いられる。この場合、焦点板の拡散特性が従来のままであるとファインダ光学系により観察される光学像(ファインダ像)が暗くなる。このような光学像の暗さを解消するために、焦点板での拡散を弱くしてファインダ像を明るくする方法はあるが、焦点面での拡散が弱くなると測光センサに入射する光量が不足して測光精度が低下する可能性がある。開放F値が8程度の撮像光学系を用いた場合でも明るいファインダ像の観察を可能とし、かつ測光精度を高く維持するためには、以下2つの方法を応用することも考えられる。
【0004】
1つは、特許文献1にて開示された透過型明視スクリーン上に縦横に配置された複数のマイクロレンズ(単位球面)のピッチを縦方向と横方向とで異ならせることで、測光センサに入射する光量を増加させるよう、縦方向での拡散のみを強める方法である。もう1つは、特許文献2に開示されているフレネルレンズを備えた焦点板を、そのフレネルレンズの中心が接眼光学系の光軸に対して測光センサ側にずれて位置するように配置することで、焦点板から測光センサに光を向かわせるパワーを強める方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−062238号公報
【特許文献2】特開2009−3423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にて開示された透過型明視スクリーンを焦点板として応用してファインダ像が明るく見え、かつ十分な測光精度を得ようとすると、ファインダ光学系を通して焦点板の形状むらが視認されてしまうという問題がある。一方、特許文献2にて開示された焦点板では、接眼光学系の光軸に対してフレネルレンズのパワーが対称とならないため、ファインダ像に明るさむらが発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、焦点板の形状むらを視認させず、明るさむらのない明るいファインダ像の観察を可能とし、さらに高い測光精度が得られるようにした光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての光学機器は、2次元配置された複数のマイクロレンズを有する焦点板を含み、結像光学系により焦点板上に形成された光学像を接眼光学系を通して観察可能とするファインダ光学系と、測光センサと、複数のマイクロレンズにより拡散した光の一部を測光センサに導く測光光学系とを有する。該測光光学系の光軸は、ファインダ光学系の光軸とは異なり、ファインダ光学系の光軸のうち焦点板において複数のマイクロレンズが2次元配置されたベース面と交差する部分を焦点板光軸とし、各マイクロレンズにおいて、それぞれベース面に直交する断面であって、焦点板光軸と測光光学系の光軸とを含む平面に直交し、該マイクロレンズの頂点を含む断面を第1の断面とし、該平面に平行であり、該頂点を含む断面を第2の断面とするとき、各マイクロレンズは、第1の断面における頂点での局所曲率半径R1と、第2の断面における頂点での局所曲率半径R2とが、
1.7<R1/R2<5.0
なる条件を満足するように形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の一側面としての光学機器は、2次元配置された複数のマイクロレンズを有する焦点板を含み、結像光学系により焦点板上に形成された光学像を接眼光学系を通して観察可能とするファインダ光学系と、測光センサと、複数のマイクロレンズにより拡散した光の一部を測光センサに導く測光光学系とを有する。該測光光学系の光軸は、ファインダ光学系の光軸とは異なり、ファインダ光学系の光軸のうち焦点板において複数のマイクロレンズが2次元配置されたベース面と交差する部分を焦点板光軸とし、ベース面からの焦点板光軸の方向ベクトルをOVとし、該方向ベクトルOVと同じ始点からの測光光学系の光軸の方向ベクトルをPMとする。各マイクロレンズにおいて、ベース面上にてベクトルPM−OVの方向に直交する方向に延びる線を母線とし、ベクトルPM−OVの方向に平行な方向に延びる線を子線とし、それぞれベース面に直交する断面であって、母線および該マイクロレンズの頂点を含む断面を第1の断面とし、子線および該頂点を含む断面を第2の断面とするとき、各マイクロレンズは、第1の断面における頂点での局所曲率半径R1と、第2の断面における頂点での局所曲率半径をR2とが、
1.7<R1/R2<5.0
なる条件を満足するように形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の一側面としての焦点板は、2次元配置された複数のマイクロレンズを有する。該焦点板は、結像光学系により焦点板上に形成された光学像を接眼光学系を通して観察可能とするファインダ光学系と、測光センサと、上記複数のマイクロレンズにより拡散した光の一部を測光センサに導く測光光学系とを有する光学装置に用いられる。該測光光学系の光軸は、ファインダ光学系の光軸とは異なり、該焦点板は、ファインダ光学系の光軸のうち焦点板において複数のマイクロレンズが2次元配置されたベース面と交差する部分を焦点板光軸とし、各マイクロレンズにおいて、それぞれベース面に直交する断面であって、焦点板光軸と測光光学系の光軸とを含む平面に直交し、該マイクロレンズの頂点を含む断面を第1の断面とし、該平面に平行であり、該頂点を含む断面を第2の断面とするとき、各マイクロレンズは、第1の断面における頂点での局所曲率半径R1と、第2の断面における頂点での局所曲率半径R2とが、
1.7<R1/R2<5.0
なる条件を満足するように形成されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の他の一側面としての焦点板は、2次元配置された複数のマイクロレンズを有する。該焦点板は、結像光学系により焦点板上に形成された光学像を接眼光学系を通して観察可能とするファインダ光学系と、測光センサと、上記複数のマイクロレンズにより拡散した光の一部を測光センサに導く測光光学系とを有する光学装置に用いられる。該測光光学系の光軸は、ファインダ光学系の光軸とは異なり、該焦点板は、ファインダ光学系の光軸のうち焦点板において複数のマイクロレンズが2次元配置されたベース面と交差する部分を焦点板光軸とし、ベース面からの焦点板光軸の方向ベクトルをOVとし、該方向ベクトルOVと同じ始点からの測光光学系の光軸の方向ベクトルをPMとし、各マイクロレンズにおいて、ベース面上にてベクトルPM−OVの方向に直交する方向に延びる線を母線とし、ベクトルPM−OVの方向に平行な方向に延びる線を子線とし、それぞれベース面に直交する断面であって、母線およびマイクロレンズの頂点を含む断面を第1の断面とし、子線および頂点を含む断面を第2の断面とするとき、各マイクロレンズは、第1の断面における頂点での局所曲率半径R1と、第2の断面における頂点での局所曲率半径をR2とが、
1.7<R1/R2<5.0
なる条件を満足するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マイクロレンズの形状が上記条件を満足することで、形状むらが視認されにくい焦点板を実現できるとともに、明るさむらがほとんどない明るいファインダ像の観察が可能で高い測光精度が得られる光学機器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1である光学機器の構成および該光学機器に用いられる焦点板の形状に関する定義を示す図。
図2】実施例1における焦点板の形状および拡散特性を示す平面図。
図3】実施例1における焦点板の各マイクロレンズの形状を示す図。
図4】実施例1における焦点板の拡散特性を示すグラフ図。
図5】実施例1の光学機器におけるF値とファインダ像の明るさとの関係を示すグラフ図。
図6】本発明の実施例2である光学機器に用いられる焦点板の形状および拡散特性を示す平面図。
図7】実施例2における焦点板の拡散特性を示すグラフ図。
図8】実施例2の光学機器におけるF値とファインダ像の明るさとの関係を示すグラフ図。
図9】本発明の実施例3である光学機器に用いられる焦点板の形状および拡散特性を示す平面図。
図10】実施例3の焦点板における面頂点の配置および焦点板の断面形状を示す図。
図11】実施例3における焦点板の拡散特性を示すグラフ図。
図12】実施例3の光学機器におけるF値とファインダ像の明るさとの関係を示すグラフ図。
図13】本発明の実施例4である光学機器に用いられる焦点板の形状および拡散特性を示す平面図。
図14】実施例4における焦点板の断面形状および実施例4の光学機器におけるF値とファインダ像の明るさとの関係を示す図。
図15】実施例4における焦点板の拡散特性を示すグラフ図。
図16】本発明の実施例5である光学機器に用いられる焦点板の形状および拡散特性を示す平面図。
図17】実施例5の焦点板における面頂点の配置を示す図および実施例5の光学機器におけるF値とファインダ像の明るさとの関係を示すグラフ図。
図18】実施例5における焦点板の拡散特性を示すグラフ図。
図19】本発明の実施例6である光学機器に用いられる焦点板の形状および拡散特性を示す平面図。
図20】実施例6における焦点板の拡散特性を示すグラフ図と実施例6の光学機器におけるF値とファインダ像の明るさとの関係を示すグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0015】
図1(a)には、本発明の実施例1である光学機器としての一眼レフデジタルカメラ(撮像装置)の構成を示している。カメラには、取り外し可能に交換レンズが装着されている。交換レンズ内の撮像光学系(結像光学系)1を通った光は、可動ミラー2によって反射され、不図示の撮像素子と光学的に等価な焦点面に配置された焦点板3上に光学像(実像)である被写体像を形成する。焦点板3上に形成された被写体像は、ペンタプリズム等の正立像形成部材4によって正立像に変換され、接眼光学系5を通して該接眼光学系5の射出瞳に位置するユーザの眼に到達する。これにより、ユーザは、焦点板3上の被写体像(ファインダ像)を観察可能となる。焦点板3、正立像形成部材4および接眼光学系5により、ファインダ光学系が構成される。
【0016】
焦点板3のうち正立像形成部材4側の面には、複数のマイクロレンズMLが2次元配置された拡散面が形成されている。拡散面にて被写体像を形成する光が拡散することで、被写体像のぼけ(ピント状態)が視認し易くなる。また、拡散した光の一部は、接眼光学系5の上方に配置された測光光学系6を通して測光センサ7に導かれ、測光センサ7上に被写体像が形成される。これにより、測光が可能となる。
【0017】
ここで、撮像光学系1の光軸に沿ってカメラ内に入射した中心光線は、可動ミラー2によって反射された後、焦点板3のうち被写体像が形成される矩形の有効領域の中心に到達する。そして、中心光線は、焦点板3の有効領域の中心から射出して正立像形成部材4で反射された後、接眼光学系5内をその光軸に沿って進み、接眼光学系5の射出瞳の中心に到達する。この中心光線が焦点板3から正立像形成部材4および接眼光学系5内を通って射出瞳に至る光路を、本実施例では、ファインダ光学系の光軸といい、図1(a)では点線で示している。焦点板3において、各マイクロレンズMLは、拡散面のベース面上に後述するような楕円半球形状の凸曲面を有するように形成されている。焦点板3のみを示す図1(b)には、平面であるベース面を一点鎖線Bで示している。ファインダ光学系の光軸のうち上記ベース面と交差する部分(ベース面の法線に平行な部分)を、本実施例では焦点板光軸という。
【0018】
一方、焦点板3の拡散面によって焦点板光軸に対して傾きを持って進んだ中心光線は、正立像形成部材4から射出して測光光学系6の光軸に沿って進み、測光センサ7において被写体像が形成される矩形の有効領域の中心に至る。この中心光線が焦点板3から正立像形成部材4および測光光学系6を通って測光センサ7に至る光路を、本実施例では広義の測光光学系の光軸といい、図1(a)では実線で示している。図1(a)から分かるように、測光光学系の光軸は、ファインダ光学系の一部を通るが、ファインダ光学系の光軸とは異なる。なお、以下の説明において、測光光学系の光軸のうち焦点板3から射出して正立像形成部材4に入射するまでの部分、すなわち図1(a)に示すように焦点板光軸に対して傾き角θを有する部分を、便宜的に測光光軸という。焦点板光軸に対する測光光軸の傾き角θは8〜11度である。
【0019】
次に、各マイクロレンズMLの形状について説明する。本実施例では、図1(b)に示すように、焦点板光軸が延びる方向にz軸をとり、焦点板3の有効領域の長辺が延びる方向にx軸を、同有効領域の短辺が延びる方向にy軸をとる。そして、各マイクロレンズMLにおけるそれぞれベース面に直交する断面であって、焦点板光軸と測光光軸とを含む平面に直交し、マイクロレンズMLの頂点を含む断面(xz断面)を第1の断面とし、該平面に平行で頂点を含む断面(yz断面)を第2の断面とする。
【0020】
また、第1および第2の断面を別の表現で表すこともできる。図1(b)に示すように、ベース面からの焦点板光軸の方向ベクトルをOVとし、該方向ベクトルOVと同じ始点からの測光光軸の方向ベクトルをPMとする。各マイクロレンズMLにおいて、ベース面上にてベクトルPM−OVの方向に直交する方向に延びる線を母線(x軸)とし、ベクトルPM−OVの方向に平行な方向に延びる線を子線(y軸)とする。そして、それぞれベース面に直交する断面であって、母線および該マイクロレンズMLの頂点を含む断面(xz断面)を第1の断面とし、子線および頂点を含む断面(yz断面)を第2の断面とする。
【0021】
以下の説明において、第1の断面および第2の断面をそれぞれ、xz断面およびyz断面という。
【0022】
図2(a)には、本実施例におけるマイクロレンズMLの具体的形状を焦点板光軸の方向から見て示している。本実施例では、上述したように楕円半球形状の凸曲面を有するマイクロレンズMLが、ベース面上に、それらの頂点が六角格子状または正三角格子状に等間隔で位置するように規則的に配置されている。図2(a)において、明るい(白に近い)部分ほどベース面からの高さが高い部分であることを示している。
【0023】
図3(a)を用いてマイクロレンズMLの凸曲面を定義する。図3(a)には楕円球体を示しているが、実際のマイクロレンズMLはこの楕円球体の上半分の凸曲面を有する。この楕円球体は、母線GLに沿った長径2×D1と子線CLに沿った短径2×D2を有する楕円を母線GL回り(長径回り)に回転させることで形成される形状を有する。ここで、図2(a)に示したマイクロレンズMLのD1およびD2は、
D1=85μm
D2=57μm
である。
【0024】
図3(a)において、TPはマイクロレンズMLの頂点である。図3(b)には、楕円球体のxz断面を、図3(c)は楕円球体のyz断面を示す。xz断面およびyz断面は、上記定義の通り、いずれも頂点TPを含む断面である。
【0025】
そして、本実施例では、マイクロレンズMLは、xz断面における頂点TPでの局所曲率半径R1(図3(b)参照)と、yz断面における頂点TPでの局所曲率半径R2(図3(c)参照)とが、
1.7<R1/R2<5.0 (1)
なる条件を満足するように形成されている。
【0026】
具体的には、図2(a)に示したマイクロレンズMLは、
R1=127μm
R2=57μm
(R1/R2=2.23)
を有するように形成されており、条件(1)を満足している。
【0027】
条件(1)の技術的な意味について説明する。マイクロレンズが規則的に2次元配置された焦点板において、マイクロレンズの曲率半径が大きくなる(曲率が緩くなる)と光を拡散させる作用の強さは低下するため、開放F値が暗い撮像光学系を用いても十分明るく視認性が良いファインダ像が得られる。しかし、拡散作用が弱くなると、焦点板3で拡散することで測光光学系6に入射して測光センサ7に到達する光量が減少するため、測光精度が低下する。このため、本実施例では、測光光学系6に入射しない方向への光の拡散量を少なく(拡散作用を弱く)する一方、測光光学系6に入射する方向への光の拡散量を多く(拡散作用を強く)する。
【0028】
本実施例では、図1(a)に示すように、測光光学系6(および測光センサ7)を接眼光学系5の上方に配置している。この場合、測光光学系6に入射する光は、焦点板3上において、焦点板光軸に対してy軸方向に傾いて進む光である。このため、本実施例では、マイクロレンズMLにおける光を測光光学系6に向かわせない方向での拡散作用、すなわちx軸方向での拡散作用を弱くするために、R1をできるだけ大きくする。一方、光を測光光学系6に向かわせる方向での拡散作用、すなわちy軸方向での拡散作用を強くするために、R2をできるだけ小さくする。ただし、以下の理由により、R1とR2を条件(1)の範囲内に収める必要がある。
【0029】
R1/R2の値が条件(1)の下限を下回ると、x軸方向とy軸方向とで十分な拡散作用の差が生じないため、明るいファインダ像を提示しつつ、高い測光精度を得ることが困難である。また、R1/R2の値が条件(1)の上限を上回ると、x軸方向とy軸方向とで十分な拡散作用の差が大きくなりすぎて、ぼけた被写体像の形状がいびつになり、実際の被写体の形状との乖離が大きくなるので、好ましくない。
【0030】
本実施例の焦点板3の拡散特性を、図2(b)および図4(a),(b)に示す。図2(b)は、点像を本実施例の焦点板3の拡散面で拡散させたとき拡散強度分布を示す。x軸方向の拡散角度をθxで示し、y軸方向の拡散角度をθyで示している。図2(b)において、明るい(白に近い)部分ほど拡散強度が高い部分であることを示している。また、図2(b)には、測光光学系6に向かう拡散光の焦点板光軸に対する傾き角(θ=8〜11度)の目安としての10度を示す円を示している。
【0031】
図4(a),(b)は、図2(b)におけるθy方向とθx方向での拡散強度分布の断面を示している。これらの図の比較から分かるように、図4(a)に示すθyが8〜11度の範囲の拡散強度(拡散量)は、図4(b)に示すθxが8〜11度の範囲の拡散強度(拡散量)より強い(多い)。また、θy方向とθx方向のいずれにおいても、傾き角0度を中心として概ね対称な拡散強度分布が得られている。
【0032】
図5には、撮影光学系1のF値とファインダ像の明るさとの関係を、F1.8を基準として示している。この図において、実線は本実施例の焦点板3を用いた場合のF値ごとのファインダ像の明るさを示しており、点線は一般的な焦点板(以下、従来焦点板という)を用いた場合のF値ごとのファインダ像の明るさを示している。F8において、従来焦点板を用いた場合はF1.8に対して1.2段明るさが低下するのに対して、本実施例の焦点板3を用いた場合は0.3段低下するにすぎない。
【0033】
このように、本実施例の焦点板3を用いることにより、焦点板上のマイクロレンズの形状を目立たせることなく、明るさむらのない明るいファインダ像を提示することができるとともに、高い測光精度を確保することができる。
【実施例2】
【0034】
図6(a)には、本発明の実施例2であるカメラにおける焦点板3A上の複数のマイクロレンズMLの具体的形状を焦点板光軸の方向から見て示している。図6(a)において、明るい(白に近い)部分ほどベース面からの高さが高い部分であることを示している。
【0035】
本実施例は、実施例1のマイクロレンズMLのD2を、
D2=40μm
に変更したものに相当する。D1は、実施例1と同じ85μmである。
【0036】
また、本実施例のマイクロレンズMLのR1およびR2は、
R1=181μm
R2=40μm
(R1/R2=4.53)
であり、R1/R2は条件(1)を満足している。
【0037】
本実施例の焦点板3Aの拡散特性を、図6(b)および図7(a),(b)に示す。図6(b)は、点像を本実施例の焦点板3Aの拡散面で拡散させたとき拡散強度分布を示す。θx,θyの意味は図2(b)と同じである。また、図6(b)において、明るい(白に近い)部分ほど拡散強度が高い部分であることを示している。さらに、この図でも、測光光学系6に向かう拡散光の焦点板光軸に対する傾き角(θ=8〜11度)の目安としての10度を示す円を示している。
【0038】
図7(a),(b)は、図6(b)におけるθy方向とθx方向での拡散強度分布の断面を示している。これらの図の比較から分かるように、図7(a)に示すθyが8〜11度の範囲の拡散強度(拡散量)は、図7(b)に示すθxが8〜11度の範囲の拡散強度(拡散量)より強い(多い)。また、θy方向とθx方向のいずれにおいても、傾き角0度を中心として概ね対称な拡散強度分布が得られている。
【0039】
図8には、撮影光学系1のF値とファインダ像の明るさとの関係を、F1.8を基準として示している。この図において、実線は本実施例の焦点板3Aを用いた場合のF値ごとのファインダ像の明るさを示しており、点線は従来焦点板を用いた場合のF値ごとのファインダ像の明るさを示している。F8において、従来焦点板を用いた場合はF1.8に対して1.2段明るさが低下するのに対して、本実施例の焦点板3Aを用いた場合は0.7段低下するにすぎない。
【0040】
このように、本実施例の焦点板3Aを用いることにより、焦点板上のマイクロレンズの形状を目立たせることなく、明るさむらのない明るいファインダ像を提示することができるとともに、高い測光精度を確保することができる。
【実施例3】
【0041】
図9(a)には、本発明の実施例3であるカメラにおける焦点板3B上の複数のマイクロレンズMLの具体的形状を焦点板光軸の方向から見て示している。図9(a)において、明るい(白に近い)部分ほどベース面からの高さが高い部分であることを示している。
【0042】
本実施例では、それぞれ楕円半球形状の凸曲面を有する2種類のマイクロレンズML1,ML2が、ベース面上に、それらの頂点が六角格子状または正三角格子状に位置するように混在して配置されている。マイクロレンズML1は、ベース面から頂点までの高さおよび長径と短径の長さが、マイクロレンズML2のそれらよりも短い。ただし、いずれのマイクロレンズML1,ML2も条件(1)を満足するように形成されており、具体的には両マイクロレンズML1,ML2は、共通のD1,D2,R1およびR2として、
D1=85μm
D2=57μm
R1=127μm
R2=57μm
(R1/R2=2.23)
を有する。
【0043】
そして、本実施例では、マイクロレンズML1のみがx軸方向に並んだ列とマイクロレンズML1,ML2がx軸方向に交互に並んだ列とがy軸方向に交互に配置されている。
【0044】
このような配置において、マイクロレンズML1の配置ピッチ(頂点間の間隔)の最小値はマイクロレンズML2の配置ピッチの最小値よりも短い。
【0045】
図10(a)には、本実施例の焦点板3B上におけるマイクロレンズML1の頂点TP1(黒丸)とマイクロレンズML2の頂点TP2(白抜き丸)の配置を示している。マイクロレンズML1の頂点間の間隔の最小値L1とマイクロレンズML2の頂点間の間隔の最小値L2は、
L2>1.7×L1 (2)
なる条件を満足している。
図9(a)および図10(a)では、
L1=20μm
L2=40μm
である。
【0046】
なお、本実施例では、焦点板3B上に互いに高さが異なる2種類のマイクロレンズML1,ML2を形成した場合について説明しているが、3種類以上のn種類のマイクロレンズを形成してもよい。3種類以上のn種類のマイクロレンズを用いる場合は、条件(2)に代えて、以下の条件(3)を満足するように各種類のマイクロレンズを形成すればよい。
【0047】
i+1>1.7×L (3)
ただし、Liはベース面から頂点までの高さが同じである同種類のマイクロレンズの頂点間の間隔の最小値であり、iを頂点の高さが低い方のマイクロレンズから順に1からn−1までの自然数として与える。
【0048】
図10(b)には、本実施例におけるマイクロレンズML1,ML2のベース面からの高さを示している。マイクロレンズML2の頂点のベース面からの高さH2は、マイクロレンズML1の頂点のベース面からの高さH1よりも高く設定されており、その高低差Hは0.5μmである。
【0049】
条件(2)および条件(3)の技術的な意味について説明する。マイクロレンズが規則的に2次元配置された焦点板において、マイクロレンズの配置ピッチPと拡散強度分布における輝点の配置ピッチ(角度ピッチ)θとの関係は、
θ=λ/P (4)
であり、角度ピッチθは配置ピッチPの逆数に比例する。λは光の波長である。このような焦点板では、点光源のぼけ像は輝点の集まりとして観察され、線状物体は点光源が線状に並んだものと考えられる。このため、線状物体のぼけ像も点光源のぼけ像が並んだものとなる。さらに、任意の形状および面積を有する物体のぼけ像も、同様に点光源の集まりと考えることができる。すなわち、ぼけ像がより自然に見えるためには、拡散強度分布における輝点の角度ピッチθPが小さいほどよい。
【0050】
ぼけ像のぼけ味は、マイクロレンズの配置ピッチPが大きいほど良好なものとなる。しかし、配置ピッチPが大きいマイクロレンズだけを焦点板に形成すると、拡散角度が小さい領域に輝点が集中してピント合わせが困難になったり、ユーザに個々のマイクロレンズが視認され易くなったりする。このため、拡散角度が大きい領域に輝点を分布させ、個々のマイクロレンズが視認されにくくするためには、配置ピッチPはある程度小さい方が望ましい。したがって、これらの相反する要求を同時に満足するためには、焦点板に配置ピッチPが大きいマイクロレンズと配置ピッチPが小さいマイクロレンズの両方を設けることが望ましい。
【0051】
本実施例の焦点板3Bの拡散特性を、図9(b)および図11(a),(b)に示す。図9(b)は、点像を本実施例の焦点板3Bの拡散面で拡散させたとき拡散強度分布を示す。θx,θyの意味は図2(b)と同じである。また、図9(b)において、明るい(白に近い)部分ほど拡散強度が高い部分であることを示している。さらに、この図でも、測光光学系6に向かう拡散光の焦点板光軸に対する傾き角(θ=8〜11度)の目安としての10度を示す円を示している。
【0052】
図11(a),(b)は、図9(b)におけるθy方向とθx方向での拡散強度分布の断面を示している。これらの図の比較から分かるように、図11(a)に示すθyが8〜11度の範囲の拡散強度(拡散量)は、図11(b)に示すθxが8〜11度の範囲の拡散強度(拡散量)より強い(多い)。また、θy方向とθx方向のいずれにおいても、傾き角0度を中心として概ね対称な拡散強度分布が得られている。
【0053】
図12には、撮影光学系1のF値とファインダ像の明るさとの関係を、F1.8を基準として示している。この図において、実線は本実施例の焦点板3Bを用いた場合のF値ごとのファインダ像の明るさを示しており、点線は従来焦点板を用いた場合のF値ごとのファインダ像の明るさを示している。F8において、従来焦点板を用いた場合はF1.8に対して1.2段明るさが低下するのに対して、本実施例の焦点板3Bを用いた場合は0.3段低下するにすぎない。
【0054】
このように、本実施例の焦点板3Bを用いることにより、焦点板上のマイクロレンズの形状を目立たせることなく、明るさむらのない明るいファインダ像を提示することができるとともに、高い測光精度を確保することができる。
【実施例4】
【0055】
図13(a)には、本発明の実施例2であるカメラにおける焦点板3C上の複数のマイクロレンズMLの具体的形状を焦点板光軸の方向から見て示している。図13(a)において、明るい(白に近い)部分ほどベース面からの高さが高い部分であることを示している。
【0056】
本実施例は、実施例3の2種類のマイクロレンズML1,ML2のD2,R1およびR2を以下のように変更したものに相当する。D1は、実施例3と同じ85μmである。
D2=40μm
R1=181μm
R2=40μm
(R1/R2=4.53)
R1/R2は条件(1)を満足している。
【0057】
図14(a)には、本実施例におけるマイクロレンズML1,ML2のベース面からの高さを示している。マイクロレンズML2の頂点のベース面からの高さH2は、マイクロレンズML1の頂点のベース面からの高さH1よりも高く設定されており、その高低差Hは0.5μmである。
【0058】
本実施例の焦点板3Aの拡散特性を、図13(b)および図15(a),(b)に示す。図13(b)は、点像を本実施例の焦点板3Cの拡散面で拡散させたとき拡散強度分布を示す。θx,θyの意味は図2(b)と同じである。また、図13(b)において、明るい(白に近い)部分ほど拡散強度が高い部分であることを示している。さらに、この図でも、測光光学系6に向かう拡散光の焦点板光軸に対する傾き角(θ=8〜11度)の目安としての10度を示す円を示している。
【0059】
図15(a),(b)は、図13(b)におけるθy方向とθx方向での拡散強度分布の断面を示している。これらの図の比較から分かるように、図15(a)に示すθyが8〜11度の範囲の拡散強度(拡散量)は、図15(b)に示すθxが8〜11度の範囲の拡散強度(拡散量)より強い(多い)。また、θy方向とθx方向のいずれにおいても、傾き角0度を中心として概ね対称な拡散強度分布が得られている。
【0060】
図14(b)には、撮影光学系1のF値とファインダ像の明るさとの関係を、F1.8を基準として示している。この図において、実線は本実施例の焦点板3Cを用いた場合のF値ごとのファインダ像の明るさを示しており、点線は従来焦点板を用いた場合のF値ごとのファインダ像の明るさを示している。F8において、従来焦点板を用いた場合はF1.8に対して1.2段明るさが低下するのに対して、本実施例の焦点板3Cを用いた場合は0.6段低下するにすぎない。
【0061】
このように、本実施例の焦点板3Cを用いることにより、焦点板上のマイクロレンズの形状を目立たせることなく、明るさむらのない明るいファインダ像を提示することができるとともに、高い測光精度を確保することができる。
【実施例5】
【0062】
図16(a)には、本発明の実施例5であるカメラにおける焦点板3D上の複数のマイクロレンズMLの具体的形状を焦点板光軸の方向から見て示している。図16(a)において、明るい(白に近い)部分ほどベース面からの高さが高い部分であることを示している。
【0063】
本実施例では、複数のマイクロレンズMLが、それらの頂点が不規則に並ぶように2次元配置されている。ただし、各マイクロレンズMLは、D1,D2,R1およびR2として、
D1=85μm
D2=57μm
R1=127μm
R2=57μm
(R1/R2=2.23)
を有し、R1/R2は条件(1)を満足している。
【0064】
図17(a)には、複数のマイクロレンズMLの頂点TPの配置を示している。それぞれのマイクロレンズMLの頂点TPは、六方格子状に20μmの等間隔で配置された複数の基準点Gのそれぞれを中心とした半径2μmの円RLの範囲内にランダムに(規則性なく)位置する。つまり、頂点TPの基準点Gからの変位量をEとし、相互に隣接する基準点Gの間隔(等間隔)をLとすると、これらは、
E≦0.3L (5)
なる条件(5)を満足する。
【0065】
さらに、相互に隣接するマイクロレンズMLの頂点間の間隔Pは、
0.4L≦P≦1.6L (6)
なる条件(6)を満足する。
【0066】
Pが条件(6)の下限を下回ると、マイクロレンズML同士が接近しすぎて十分な拡散作用が得られず、その部分において光が白く抜けたように見えてしまうので好ましくない。また、EおよびPがそれぞれ条件(5),(6)の上限を上回ると、マイクロレンズML同士が遠くなりすぎて拡散作用が強すぎ、その部分において黒い粒状感が目立ってしまう。ファインダ光学系としての見えを良好に保つためには、マイクロレンズをランダムに配置する際は条件(5)を満足することが望ましい。
【0067】
本実施例の焦点板3Dの拡散特性を、図16(b)および図18(a),(b)に示す。図16(b)は、点像を本実施例の焦点板3Dの拡散面で拡散させたとき拡散強度分布を示す。θx,θyの意味は図2(b)と同じである。また、図16(b)において、明るい(白に近い)部分ほど拡散強度が高い部分であることを示している。さらに、この図でも、測光光学系6に向かう拡散光の焦点板光軸に対する傾き角(θ=8〜11度)の目安としての10度を示す円を示している。
【0068】
図18(a),(b)は、図16(b)におけるθy方向とθx方向での拡散強度分布の断面を示している。これらの図の比較から分かるように、図18(a)に示すθyが8〜11度の範囲の拡散強度(拡散量)は、図18(b)に示すθxが8〜11度の範囲の拡散強度(拡散量)より強い(多い)。また、θy方向とθx方向のいずれにおいても、傾き角0度を中心として概ね対称な拡散強度分布が得られている。
【0069】
図17(b)には、撮影光学系1のF値とファインダ像の明るさとの関係を、F1.8を基準として示している。この図において、実線は本実施例の焦点板3Dを用いた場合のF値ごとのファインダ像の明るさを示しており、点線は従来焦点板を用いた場合のF値ごとのファインダ像の明るさを示している。F8において、従来焦点板を用いた場合はF1.8に対して1.2段明るさが低下するのに対して、本実施例の焦点板3Dを用いた場合は0.3段低下するにすぎない。
【0070】
このように、本実施例の焦点板3Aを用いることにより、焦点板上のマイクロレンズの形状を目立たせることなく、明るさむらのない明るいファインダ像を提示することができるとともに、高い測光精度を確保することができる。
【実施例6】
【0071】
図19(a)には、本発明の実施例6であるカメラにおける焦点板3D上の複数のマイクロレンズMLの具体的形状を焦点板光軸の方向から見て示している。図19(a)において、明るい(白に近い)部分ほどベース面からの高さが高い部分であることを示している。
【0072】
本実施例は、実施例5のマイクロレンズMLのD2,R1およびR2を以下のように変更したものに相当する。D1は、実施例3と同じ85μmである。
D2=40μm
R1=181μm
R2=40μm
(R1/R2=4.53)
R1/R2は条件(1)を満足している。
【0073】
本実施例の焦点板3Eの拡散特性を、図19(b)および図20(a),(b)に示す。図19(b)は、点像を本実施例の焦点板3Dの拡散面で拡散させたとき拡散強度分布を示す。θx,θyの意味は図2(b)と同じである。また、図19(b)において、明るい(白に近い)部分ほど拡散強度が高い部分であることを示している。さらに、この図でも、測光光学系6に向かう拡散光の焦点板光軸に対する傾き角(θ=8〜11度)の目安としての10度を示す円を示している。
【0074】
図20(a),(b)は、図19(b)におけるθy方向とθx方向での拡散強度分布の断面を示している。これらの図の比較から分かるように、図20(a)に示すθyが8〜11度の範囲の拡散強度(拡散量)は、図20(b)に示すθxが8〜11度の範囲の拡散強度(拡散量)より強い(多い)。また、θy方向とθx方向のいずれにおいても、傾き角0度を中心として概ね対称な拡散強度分布が得られている。
【0075】
図20(c)には、撮影光学系1のF値とファインダ像の明るさとの関係を、F1.8を基準として示している。この図において、実線は本実施例の焦点板3Aを用いた場合のF値ごとのファインダ像の明るさを示しており、点線は従来焦点板を用いた場合のF値ごとのファインダ像の明るさを示している。F8において、従来焦点板を用いた場合はF1.8に対して1.2段明るさが低下するのに対して、本実施例の焦点板3Aを用いた場合は0.6段低下するにすぎない。
【0076】
このように、本実施例の焦点板3Aを用いることにより、焦点板上のマイクロレンズの形状を目立たせることなく、明るさむらのない明るいファインダ像を提示することができるとともに、高い測光精度を確保することができる。
【0077】
上述した実施例1〜6について、条件(1)中のR1/R2を表1にまとめて示す。
【0078】
【表1】
【0079】
なお、上記各実施例では、一眼レフカメラに焦点板を含むファインダ光学系と測光センサとを設けた場合について説明したが、一眼レフカメラ以外の光学機器にも、本発明を適用することは可能である。
【0080】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
明るいファインダ像を提示でき、測光精度も高くすることができる一眼レフカメラ等の光学機器を提供することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 撮像光学系
3,3A〜3E 焦点板
5 接眼光学系
6 測光光学系
7 測光センサ
ML,ML1,ML2 マイクロレンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20