(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸化亜鉛粒子の質量(Mm)と、前記ブロック化イソシアネート化合物および前記ポリオールの合計質量(Mu)との比(Mm/Mu)が、2/1以上4/1以下(質量比)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
前記1価アルコールが、エタノール、プロパノール、ブタノール、メトキシプロパノールおよびシクロヘキサノールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
前記ケトン溶剤が、アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の電子写真感光体の製造方法は、支持体、支持体上に形成された下引き層、下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体を製造する。そして、酸化亜鉛粒子、ポリオール、下記式(1)で示される構造でイソシアネート基がブロックされたブロック化イソシアネート化合物、および、混合溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製する工程を有することを特徴とする。
【0026】
(式(1)中、Xは、単結合または酸素原子を示し、R
1およびR
2は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
加えて、混合溶剤が、1価アルコールを上記式(1)で示される構造に対して1当量以上かつ混合溶剤の全質量に対して90質量%以下含有し、かつ、ケトン溶剤および環状エーテル溶剤を混合溶剤の全質量に対して7質量%以上含有することを特徴としている。ケトン溶剤および環状エーテル溶剤は、一方を用いても、両方を用いてもよい。
【0027】
上記式(1)中のR
1およびR
2の炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基)が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましい。また、上記式(1)中のXが単結合である場合は、上記式(1)中のXの左隣のCと右隣のR
2とが直結していることを意味する。
【0028】
ケトンは、カルボニル基の炭素原子が炭素原子2つに挟まれて結合している構造(−C(C=O)C−)を有している。ケトン溶剤(ケトン系溶剤)としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、イソホロンなどが挙げられる。これらの中でも、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが好ましい。
【0029】
環状エーテルは、酸素原子が炭素原子2つに挟まれて結合している構造(−COC−)を有し、かつ環状の構造を有している。環状エーテル溶剤(環状エーテル系溶剤)としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどが挙げられる。これらの中でも、テトラヒドロフランが好ましい。
【0030】
1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(1−プロパノールなど)、ブタノール(1−ブタノールなど)、メトキシプロパノール(1−メトキシ−2−プロパノールなど)、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。これらの中でも、エタノール、プロパノール、ブタノール、メトキシプロパノール、シクロヘキサノールが好ましい。
【0031】
本発明者らは、下引き層用塗布液に含有される混合溶剤が、上記組成になっていることにより、本発明の効果を達成することができる理由を、以下のように推測している。本発明の効果とは、時間の経過による、下引き層用塗布液の粘度の上昇の抑制と、下引き層用塗布液における酸化亜鉛粒子の分散安定性の高さ(酸化亜鉛粒子の粒径の大きくなりにくさ)とを両立することである。
【0032】
上述のとおり、時間の経過による下引き層用塗布液の粘度の上昇は、上記ブロック化イソシアネート化合物とポリオールとの硬化反応が進みやすいことによると考えられる。ここで、下引き層用塗布液に1価アルコールを含有させることで、上記ブロック化イソシアネート化合物の上記式(1)で示される構造のエステル結合と1価アルコールとの置換反応が起こる。そして、上記ブロック化イソシアネート化合物とポリオールとの硬化反応の平衡状態が変化する。その結果、上記ブロック化イソシアネート化合物とポリオールとの硬化反応が進みにくくなるためであると推測される。特に、下引き層用塗布液に1価アルコールを上記式(1)で示される構造に対して1当量以上含有させることで、時間の経過による下引き層用塗布液の粘度の上昇が抑制されると考えられる。
【0033】
他方、下引き層用塗布液における酸化亜鉛粒子の分散安定性は、下引き層用塗布液中の酸化亜鉛粒子のゼータ電位の絶対値がある程度大きいことが必要であると考えられる。下引き層用塗布液中の酸化亜鉛粒子のゼータ電位の調整は、下引き層用塗布液に含有させる溶剤の種類の選択や量の調整により行うことができる。
【0034】
本発明者らは、鋭意検討の結果、下引き層用塗布液中に、1価アルコールを1当量以上含有させることに加えて、1価アルコールの含有量を下引き層用塗布液中の混合溶剤の全質量に対して90質量%以下とした。さらに、下引き層用塗布液に、ケトン系溶剤および環状エーテル系溶剤の一方または両方からなる溶剤を混合溶剤の全質量に対して7質量%以上含有させた。その結果、下引き層用塗布液における酸化亜鉛粒子の分散安定性が高まることを見出した。特には、混合溶剤は、1価アルコールを混合溶剤の全質量に対して50質量%以下含有することが好ましい。
【0035】
また、下引き層用塗布液に含有させる酸化亜鉛粒子は、支持体から感光層への電荷注入(例えば正孔注入)による黒点状の画像欠陥(黒ポチ)を抑制する観点から、シランカップリング剤などの表面処理剤で処理(表面処理)されていることが好ましい。
【0036】
酸化亜鉛粒子を表面処理するためのシランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0037】
本発明において用いられる下引き層用塗布液には、上述のとおり、酸化亜鉛粒子、ポリオールおよび上記式(1)で示される構造でイソシアネート基がブロックされたブロック化イソシアネート化合物が含有される。ポリオールと上記ブロック化イソシアネート化合物との硬化反応により、硬化性樹脂であるウレタン樹脂が生成される。
【0038】
ブロック化の対象となるイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソフォロンジイソシアネート、IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、HDI−トリメチロールプロパンアダクト体、HDI−イソシアヌレート体、HDI−ビウレット体が挙げられる。これらの中でも、ウレタン樹脂の架橋密度を高める観点および酸化亜鉛粒子への水分の吸着を抑制する観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが好ましい。また、中心骨格が、イソシアヌレートであるものが好ましい。また、これらのイソシアネート化合物は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記式(1)で示される構造でイソシアネート基がブロックされたブロック化イソシアネート化合物は、イソシアネート化合物のイソシアネート基に上記式(1)で示される構造を有する化合物を反応させることにより得られる。
【0040】
上記式(1)で示される構造を有する化合物としては、例えば、ジアルキルマロネート、アセト酢酸エステルなどが挙げられる。ジアルキルマロネートとしては、例えば、ジメチルマロネート、ジエチルマロネート、ジ(イソプロピル)マロネート、ジ(n−プロピル)マロネート、ジ(n−ブチル)マロネート、ジ(t−ブチル)マロネート、t−ブチルエチルマロネートなどが挙げられる。また、アセト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸t−ブチルなどが挙げられる。
【0041】
また、ポリオールとしては、例えば、ポリビニルアセタール、ポリフェノール、ポリエチレンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリルポリオールなどが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアセタールが好ましい。また、これらのポリオール樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
下引き層用塗布液に含有させる酸化亜鉛粒子の質量(Mm)と、上記ブロック化イソシアネート化合物およびポリオール樹脂の合計質量(Mu)との比(Mm/Mu)は、1/1以上(質量比)であることが好ましい。この比を満たすと、電気特性(製造した電子写真感光体を繰り返し使用した場合の明部電位の変動を抑制する)が向上するため好ましい。さらには、2/1以上(質量比)であることがより好ましい。一方、下引き層のクラック(ひび割れ)の発生を抑制する観点から、上記比(Mm/Mu)は、4/1以下(質量比)であることが好ましい。したがって、上記比(Mm/Mu)は、2/1以上4/1以下(質量比)であることが好ましい。
【0043】
また、下引き層用塗布液には、下引き層の表面粗さを調整する観点や下引き層のクラック(ひび割れ)の発生を抑制する観点から、有機樹脂粒子、レベリング剤などをさらに含有させてもよい。
【0044】
有機樹脂粒子としては、例えば、シリコーン粒子などの疎水性有機樹脂粒子や、ポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子などの親水性有機樹脂粒子などが挙げられる。
【0045】
また、下引き層用塗布液には、下引き層の電気特性の向上、膜形状安定性の向上、画質向上などを目的として、各種の添加物をさらに含有させてもよい。
【0046】
添加物としては、例えば、アルミニウム粒子、銅粒子などの金属粒子、カーボンブラックなどの導電性粒子や、キノン化合物、フルオレノン化合物、オキサジアゾール系化合物、ジフェノキノン化合物、アリザリン化合物、ベンゾフェノン化合物、多環縮合化合物、アゾ化合物などの電子輸送性物質や、金属キレート化合物や、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0047】
下引き層用塗布液の塗膜の乾燥温度(加熱温度)としては、100℃以上190℃以下であることが好ましい。上記範囲内であると、下引き層のクラック(ひび割れ)を抑制し、上記ブロック化イソシアネート化合物とポリオール樹脂との硬化反応が進みやすい。さらには、130℃以上155℃以下であることがより好ましい。また、下引き層用塗布液の塗膜の乾燥時間(加熱時間)は10分間以上120分間以下であることが好ましく、10分間以上60分間以下であることがより好ましい。
【0048】
本発明の製造方法で製造される電子写真感光体(以下「本発明の電子写真感光体」ともいう。)は、支持体、該支持体上に形成された下引き層および該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体である。好ましくは、該感光層として、前記下引き層上に設けられた電荷発生層および前記電荷発生層上に設けられた電荷輸送層を有する積層型の感光層を有する電子写真感光体である。
【0049】
図1に、本発明の製造方法で製造された電子写真感光体の層構成の例を示す。
図1中、101は支持体であり、102は下引き層であり、103は感光層であり、104は保護層である。
【0050】
感光層としては、下引き層側から電荷発生物質を含有する電荷発生層および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層をこの順に積層してなる積層型の感光層が好ましい。また、電荷輸送層に含有させる電荷輸送物質としては、正孔輸送物質が好ましい。
【0051】
支持体は、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル、亜鉛などの金属製(合金製)の支持体などが挙げられる。また、アルミニウム製の支持体やアルミニウム合金製の支持体を用いる場合は、ED管、EI管などを用いることができる。
【0052】
また、金属製支持体、樹脂製支持体上に、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化インジウム−酸化スズ合金などの導電性材料の薄膜を形成したものも支持体として用いることができる。
【0053】
また、支持体の表面には、レーザー光の散乱による干渉縞の抑制などを目的として、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理、電解複合研磨処理、湿式ホーニング処理、乾式ホーニング処理などの施してもよい。電解複合研磨とは、電解作用を有する電極と電解質溶液による電解および研磨作用を有する砥石による研磨である。
【0054】
支持体と下引き層との間には、レーザー光の散乱による干渉縞の抑制や、支持体の傷の隠蔽(被覆)などを目的として、導電層を設けてもよい。
【0055】
導電層は、カーボンブラック、金属粒子、金属酸化物粒子などの導電性粒子、結着樹脂、および、溶剤を分散処理することによって得られる導電層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥および/または硬化させることによって形成することができる。
【0056】
導電層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
【0057】
導電層用塗布液の溶剤としては、例えば、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。また、これらの溶剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
導電層の膜厚は、5μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0059】
支持体または導電層と感光層(電荷発生層、電荷輸送層)との間には、下引き層が設けられる。
【0060】
本発明において、下引き層は、上述のとおり、酸化亜鉛粒子、ポリオール樹脂、上記ブロック化イソシアネート化合物、および、混合溶剤を用いて調製された下引き層塗布液を用いて形成される。
【0061】
下引き層用塗布液は、例えば、酸化亜鉛粒子、ポリオール樹脂、上記ブロック化イソシアネート化合物、および、混合溶剤を分散処理することによって調製することができる。
【0062】
分散処理方法としては、例えば、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、ロールミルなどの分散処理装置を使用した方法が挙げられる。これらの分散処理装置に用いられる分散媒体としては、例えば、球状のガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズなどが挙げられる。また、これらのビーズの粒径(直径)は、0.3mm以上1.0mm以下であることが好ましい。
【0063】
下引き層の膜厚は、電子写真感光体の繰り返し使用による明部電位の変動を抑制する観点から、0.5μm以上40μm以下が好ましく、0.5μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0064】
また、上記導電層を設けない場合には、支持体の傷を隠蔽(被覆)する観点から、下引き層の膜厚は、10μm以上40μm以下であることが好ましく、15μm以上35μm以下であることがより好ましい。
【0065】
下引き層上には、感光層(電荷発生層、電荷輸送層)が設けられる。
【0066】
感光層が積層型の感光層である場合、電荷発生層は、電荷発生物質、結着樹脂および溶剤を分散処理することによって得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。また、電荷発生層は、電荷発生物質の蒸着膜としてもよい。
【0067】
分散処理方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、液衝突型高速分散機などを用いた方法が挙げられる。
【0068】
電荷発生物質としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、スクワリリウム色素、チアピリリウム塩、トリフェニルメタン色素、キナクリドン顔料、アズレニウム塩顔料、シアニン染料、アントアントロン顔料、ピラントロン顔料、キサンテン色素、キノンイミン色素、スチリル色素などが挙げられる。これらの中でも、感度の観点から、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが好ましく、これらの中でもヒドロキシガリウムフタロシアニンがより好ましい。また、ヒドロキシガリウムフタロシアニンの中でも、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θの7.4°±0.3°および28.2°±0.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶が好ましい。また、これらの電荷発生物質は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
感光層が積層型の感光層である場合、電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、尿素樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ブチラール樹脂が好ましい。また、これらの結着樹脂は、1種のみを使用してもよく、混合または共重合体として2種以上を併用してもよい。
【0070】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤または芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。また、これらの溶剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
電荷発生層の膜厚は、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
【0072】
また、電荷発生層には、必要に応じて、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを含有させることもできる。
【0073】
積層型の感光層を有する電子写真感光体において、電荷発生層上には、電荷輸送層が形成される。
【0074】
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を溶剤に溶解させて得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
【0075】
電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質に大別される。正孔輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ブタジエン化合物などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物が好ましい。また、これらの電荷輸送物質は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
感光層が積層型の感光層である場合、電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリアリルエーテル、ポリアリレート、ポリイミド、ウレタン樹脂、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリプロピレン、メタクリル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリアリレート、ポリカーボネートが好ましい。また、これらの結着樹脂は、1種のみを使用してもよく、混合または共重合体として2種以上を併用してもよい。
【0077】
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤または芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。また、これらの溶剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
電荷輸送層に含有させる電荷輸送物質および結着樹脂の比率(電荷輸送物質/結着樹脂)は、0.3/1以上10/1以下(質量比)であることが好ましい。
【0079】
電荷輸送層用塗布液の塗膜の加熱温度(乾燥温度)としては、電荷輸送層のクラック(ひび割れ)を抑制する観点から、60℃以上150℃以下であることが好ましく、80℃以上120℃以下であることがより好ましい。また、加熱時間(乾燥時間)としては、10分間以上60分間以下であることが好ましい。
【0080】
電子写真感光体が有する電荷輸送層が1層である場合、その電荷輸送層の膜厚は、5μm以上40μm以下であることが好ましく、8μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0081】
電荷輸送層を積層構成とした場合、支持体側の電荷輸送層の膜厚は、5μm以上30μm以下であることが好ましく、表面側の電荷輸送層の膜厚は、1μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0082】
また、電荷輸送層には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを含有させることもできる。
【0083】
また、本発明においては、感光層(電荷輸送層)上に、電子写真感光体の耐久性やクリーニング性の向上などを目的として、保護層を設けてもよい。
【0084】
保護層は、樹脂(あるいは、そのモノマーおよび/またはオリゴマー)を溶剤に溶解させて得られる保護層用塗布液を塗布し、得られた塗膜を乾燥および/または硬化させることによって形成することができる。
【0085】
保護層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリル酸コポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂が好ましい。また、これらの樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
また、保護層に電荷輸送能を持たせるために、電荷輸送能(正孔輸送能)を有するモノマーを種々の重合反応、架橋反応を用いて硬化させることによって保護層(第二電荷輸送層)を形成してもよい。具体的には、連鎖重合性官能基を有する電荷輸送性化合物(正孔輸送性化合物)を重合または架橋させ、硬化させることによって保護層(第二電荷輸送層)を形成することが好ましい。
【0087】
連鎖重合性官能基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アルコキシシリル基、エポキシ基などが挙げられる。硬化させる反応としては、例えば、ラジカル重合反応、イオン重合反応などが挙げられる。また、硬化反応の際には、熱、紫外線などの光、電子線などの放射線などを用いることができる。
【0088】
さらに、保護層には、必要に応じて、導電性粒子、紫外線吸収剤、耐摩耗性改良剤などを含有させることもできる。導電性粒子としては、例えば、酸化スズ粒子などの金属酸化物粒子が挙げられる。耐摩耗性改良剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン粒子などのフッ素原子含有樹脂粒子や、アルミナ、シリカなどが挙げられる。
【0089】
保護層の膜厚は、0.5μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0090】
上記各層の塗布液を塗布する際には、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ローラーコーティング法、マイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
【0091】
図2に、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成を示す。
【0092】
図2において、円筒状(ドラム状)の本発明の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。
【0093】
電子写真感光体1の表面(周面)は、回転過程において、帯電手段3(一次帯電手段:帯電ローラーなど)により、正または負の所定の電位に帯電される。
【0094】
次いで、電子写真感光体1の表面には、露光手段(像露光手段)(不図示)から露光光(像露光光)4が照射される。
【0095】
こうして電子写真感光体1の表面には、静電潜像が形成される。
【0096】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、次いで、現像手段5内の現像剤(トナー)で現像(正規現像または反転現像)され、電子写真感光体1の表面には、トナー像が形成される。
【0097】
次いで、電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6(転写ローラーなど)によって、転写材7に転写される。
【0098】
ここで、転写材7は、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて、電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に給送される。
【0099】
また、転写手段6には、バイアス電源(不図示)からトナーの保有電荷とは逆極性の電圧(転写バイアス)が印加される。
【0100】
トナー像が転写された転写材7は、電子写真感光体1の表面から分離され、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント、コピー)として電子写真装置外へプリントアウトされる。
【0101】
転写手段6は、一次転写部材、中間転写体および二次転写部材などからなる中間転写方式の転写手段であってもよい。
【0102】
トナー像が転写材7に転写された後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段9(クリーニングブレードなど)によってクリーニングされ、転写残りの現像剤(転写残トナー)などの付着物が除去される。
【0103】
また、転写残トナーを現像手段などで回収することもできる(クリーナーレスシステム)。
【0104】
さらに、電子写真感光体1の表面には、前露光手段(不図示)から前露光光10が照射され、除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。
【0105】
なお、
図2に示すように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0106】
本発明においては、上述の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段9などから選択される構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成してもよい。
【0107】
そして、このプロセスカートリッジを、電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。例えば、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段9の少なくとも1つの手段とを一体に支持してカートリッジ化する。そして、電子写真装置本体のレールなどの案内手段12を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0108】
露光光4としては、例えば、原稿からの反射光や透過光や、センサーで原稿を読み取り、信号化し、この信号にしたがって行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動または液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光などが挙げられる。
【実施例】
【0109】
以下に、具体的な実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0110】
〔実施例1〕
・下引き層用塗布液の調製
酸化亜鉛粒子(比表面積:19m
2/g、粉体抵抗:3.7×10
5Ω・cm、以下「酸化亜鉛粒子(1)」ともいう。)100部をトルエン500部と撹拌しながら混合した。これにシランカップリング剤(表面処理剤)であるN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:KBM602、信越化学工業(株)製)1.5部を添加し、6時間攪拌しながら混合した。その後、トルエンを減圧留去して、6時間140℃で乾燥させることによって、シランカップリング剤で表面処理された酸化亜鉛粒子を得た。
【0111】
次に、ポリオールとしてのブチラール樹脂(商品名:BM−1、積水化学工業(株)製)15部および上記式(1)で示される構造(X:酸素原子、R
1:エチル基、R
2:エチル基)でイソシアネート基がブロックされたブロック化イソシアネート化合物含有組成物(該ブロック化イソシアネート化合物の含有量:75質量%(残りは溶剤)、溶剤:ナフサおよび酢酸ブチル)15部を、メチルエチルケトン73.5部/1−ブタノール73.5部の混合溶剤に溶解させて溶液を得た。
【0112】
この溶液に、上記シランカップリング剤で表面処理された酸化亜鉛粒子81部、および、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン(東京化成工業(株)製)0.8部を加え、これを分散媒体として平均粒径1.0mmのガラスビーズ180部を用いた縦型サンドミルに入れ、23±3℃雰囲気下において回転数1500rpm(周速5.5m/s)の条件で4時間分散処理した。
【0113】
分散処理後、これにシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.01部を加えた。さらに、架橋型のポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子(商品名:TECHPOLYMERSSX−102、積水化成品工業(株)製、平均一次粒径:2.5μm)を5.6部加えて攪拌することによって、下引き層用塗布液を調製した。
【0114】
調製してから、1日後の下引き層用塗布液中の酸化亜鉛粒子の個数平均粒径を測定したところ、220nmであり、また、下引き層用塗布液の粘度を測定したところ、250mPa・sであった。
【0115】
また、調製した下引き層用塗布液を円筒容器に入れ、調製から1ヶ月間、毎秒1回転のロール架台で回転攪拌した。その後、下引き層用塗布液中の酸化亜鉛粒子の個数平均粒径を測定したところ、225nmであり、また、下引き層用塗布液の粘度を測定したところ、261mPa・sであった。
【0116】
なお、下引き層用塗布液中の酸化亜鉛粒子の個数平均粒径の測定は、下引き層用塗布液を1−ブタノールで希釈し、シスメックス(株)製の粒子径測定装置(商品名:ゼータサイザーナノ)を用いて行った。また、下引き層用塗布液の粘度の測定は、芝浦システム(株)製のB型粘度計(商品名:ビスメトロン形式VS−A1、単一円筒型回転粘度計)を用い、測定温度23℃、回転数60rpmの条件で行った。
【0117】
・電子写真感光体1の製造
23℃/60%RHの環境下で熱間押し出しすることにより得られた、長さ357.5mm、直径30mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金のED管、昭和アルミニウム(株)製)を支持体として用いた。
【0118】
次に、上述のように調製した下引き層用塗布液を1日間毎秒1回転のロール架台で回転攪拌し、その後、この下引き層用塗布液を、上記支持体上に浸漬塗布して塗膜を形成した。得られた下引き層用塗布液の塗膜を30分間150℃で加熱し、該下引き層用塗布液の塗膜を乾燥および硬化させることによって、膜厚が30μmの下引き層を形成した。
【0119】
次に、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)2部をシクロヘキサノン100部に溶解させた。この溶液に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.4°および28.1°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)4部、および、下記構造式(A)で示される化合物0.04部
【0120】
【化4】
【0121】
を加えた。これを、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、23±3℃の雰囲気下で1時間分散処理した。分散処理後、これに酢酸エチル100部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を上記下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を10分間90℃で乾燥させることによって、膜厚が0.20μmの電荷発生層を形成した。
【0122】
次に、下記構造式(B)で示されるアミン化合物50部(電荷輸送物質(正孔輸送物質))、
【0123】
【化5】
【0124】
下記構造式(C)で示されるアミン化合物50部(電荷輸送物質(正孔輸送物質))、
【0125】
【化6】
【0126】
および、ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱ガス化学(株)製)100部を、クロロベンゼン650部/ジメトキシメタン150部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を1日間放置した後、この電荷輸送層用塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間110℃で乾燥させることによって、膜厚が21μmの電荷輸送層を形成した。
【0127】
次に、下記構造式で示される化合物(D)36部、
【0128】
【化7】
【0129】
ポリテトラフルオロエチレン粒子(商品名:ルブロンL−2、ダイキン工業(株)製)4部、および、n−プロピルアルコール60部を混合した後、これを超高圧分散機に入れ、分散処理することによって、保護層用塗布液(第二電荷輸送層用塗布液)を調製した。
【0130】
この保護層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を5分間50℃で乾燥させた。乾燥後、窒素雰囲気下にて、加速電圧70kV、吸収線量8000Gyの条件で1.6秒間、支持体を回転させながら電子線を塗膜に照射した。その後、窒素雰囲気下にて、塗膜が130℃になる条件で3分間加熱処理を行った。なお、電子線の照射から3分間の加熱処理までの酸素濃度は20ppmであった。次に、大気中において、塗膜が100℃になる条件で30分加熱処理を行うことによって、膜厚が5μmである保護層(第二電荷輸送層)を形成した。
【0131】
このようにして、支持体、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および保護層(第二電荷輸送層)をこの順に有するドラム状の電子写真感光体(感光ドラム)1を製造した。
【0132】
次に、評価について説明する。
【0133】
製造した電子写真感光体1を、キヤノン(株)製の電子写真方式の複写機(商品名:GP405)に装着してベタ白画像(A4紙)を出力し、黒ポチの評価を行った。A4紙は短辺方向に搬送した。この複写機の帯電手段は、帯電ローラーを備えた接触帯電手段であり、帯電ローラーには直流電圧に交流電圧が重畳された電圧が印加される。
【0134】
出力したベタ白画像中の黒ポチの評価基準(ランクと数)は以下のとおりである。
【0135】
出力したベタ白画像において、縦をA4用紙の長辺長である297mm、横を電子写真感光体の1周分である94.2mmとした長方形の領域(以下、電子写真感光体1周分の面積と呼ぶ)に含まれる黒ポチの数を評価した。
【0136】
A:ベタ白画像中、電子写真感光体の1周分の面積あたり直径0.3mm以上の黒ポチが0個。
【0137】
B:ベタ白画像中、電子写真感光体の1周分の面積あたり直径0.3mm以上の黒ポチが1個以上3個以下。
【0138】
C:ベタ白画像中、電子写真感光体の1周分の面積あたり直径0.3mm以上の黒ポチが4個。
【0139】
D:ベタ白画像中、電子写真感光体の1周分の面積あたり直径0.3mm以上の黒ポチが5個。
【0140】
E:ベタ白画像中、電子写真感光体の1周分の面積あたり直径0.3mm以上の黒ポチが6個以上。
【0141】
結果(黒ポチのランクおよび数)を表7に示す。
【0142】
〔実施例2〜7〕
実施例1において、下引き層用塗布液の調製に用いたメチルエチルケトンおよび1−ブタノールの量を表2に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして下引き層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子の個数平均粒径および下引き層用塗布液の粘度を測定した。また、それぞれ調製した下引き層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
【0143】
〔実施例8〜12〕
実施例1において、下引き層塗布液の調製に用いた表面処理前の酸化亜鉛粒子81部を他の表面処理前の酸化亜鉛粒子(比表面積:40m
2/g、粉体抵抗:1.6×10
6Ω・cm、以下「酸化亜鉛粒子(2)」ともいう。)81部に変更した。さらに、下引き層用塗布液の調製に用いたメチルエチルケトンおよび1−ブタノールの量を表2に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして下引き層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子の個数平均粒径および下引き層用塗布液の粘度を測定した。また、それぞれ調製した下引き層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
【0144】
〔実施例13〜15〕
実施例1において、下引き層用塗布液の調製に用いたブチラール樹脂15部を他のブチラール樹脂(商品名:BM−S、積水化学工業(株)製)20部に変更した。さらに、下引き層用塗布液の調製に用いたメチルエチルケトンおよび1−ブタノールの量を表2に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして下引き層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子の個数平均粒径および下引き層用塗布液の粘度を測定した。また、それぞれ調製した下引き層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
【0145】
〔実施例16〕
実施例1において、下引き層用塗布液の調製に用いたブチラール樹脂15部をポリアクリルポリオール(商品名:バーノックWE−310、DIC(株)製)17部に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして下引き層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子の個数平均粒径および下引き層用塗布液の粘度を測定した。また、このようにして調製した下引き層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
【0146】
〔実施例17〕
実施例1において、下引き層用塗布液の調製に用いたブチラール樹脂15部を他のブチラール樹脂(商品名:BX−1、積水化学工業(株)製)15部に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして下引き層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子の個数平均粒径および下引き層用塗布液の粘度を測定した。また、このようにして調製した下引き層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0147】
〔実施例18〜22〕
実施例8〜12において、下引き層用塗布液の調製に用いたブロック化イソシアネート化合物含有組成物15部を上記式(1)で示される構造(X:単結合、R
1:エチル基、R
2:メチル基。)でイソシアネート基がブロックされたブロック化イソシアネート化合物含有組成物(該ブロック化イソシアネート化合物の含有量は59.8質量%(残りは溶剤)。)、溶剤:1−ブタノール/酢酸n−ブチル/その他の溶剤(1価アルコールでもケトン系溶剤でも環状エーテル系溶剤でもない。)=24.7/13.8/1.7(質量比))15部に変更した以外は、それぞれ実施例8〜12と同様にして下引き層用塗布液を調製した。それぞれ実施例8〜12と同様にして酸化亜鉛粒子の個数平均粒径および下引き層用塗布液の粘度を測定した。また、それぞれ調製した下引き層用塗布液を用いた以外は、実施例8〜12と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
【0148】
〔実施例23〕
実施例1において、下引き層用塗布液の調製に用いた2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンをアリザリン(1,2−ジヒドロキシアントラキノン)(東京化成工業(株)製)0.8部に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして下引き層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子の個数平均粒径および下引き層用塗布液の粘度を測定した。また、このようにして調製した下引き層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
【0149】
〔実施例24〕
実施例1において、下引き層用塗布液の調製に用いた2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン用いないように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして下引き層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子の個数平均粒径および下引き層用塗布液の粘度を測定した。また、このようにして調製した下引き層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表7に示す。
【0150】
〔実施例25〜34〕
実施例1において、下引き層用塗布液の調製に用いた溶剤を表2または4に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして下引き層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子の個数平均粒径および下引き層用塗布液の粘度を測定した。また、それぞれ調製した下引き層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表7、8に示す。
【0151】
〔実施例35〜39〕
実施例1において、下引き層用塗布液の調製に用いた酸化亜鉛粒子の表面処理を行わないように変更し、下引き層用塗布液の調製に用いたメチルエチルケトンおよび1−ブタノールの量を表4に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして下引き層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子の個数平均粒径および下引き層用塗布液の粘度を測定した。また、それぞれ調製した下引き層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表8に示す。
【0152】
〔実施例40〜53〕
実施例1において、下引き層用塗布液の調製に用いた各材料の量を表3および4に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして下引き層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子の個数平均粒径および下引き層用塗布液の粘度を測定した。また、それぞれ調製した下引き層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表8に示す。
【0153】
〔実施例54〕
実施例1において、酸化亜鉛粒子の表面処理に用いたN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン1.5部をN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM603、信越化学工業(株)製)1.5部に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして下引き層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子の個数平均粒径および下引き層用塗布液の粘度を測定した。また、それぞれ調製した下引き層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表8に示す。
【0154】
〔実施例55〕
実施例1において、下引き層用塗布液の塗膜の加熱温度を150℃から130℃に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表8に示す。
【0155】
〔実施例56〕
実施例1において、下引き層用塗布液の塗膜の加熱温度を150℃から190℃に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表8に示す。
【0156】
〔実施例57〕
実施例1において、下引き層用塗布液の塗膜の加熱温度を150℃から100℃に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表8に示す。
【0157】
〔比較例1〜19〕
実施例1において、下引き層用塗布液の調製に用いた各材料の種類および量を表5および6に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様にして下引き層用塗布液を調製し、実施例1と同様にして酸化亜鉛粒子の個数平均粒径および下引き層用塗布液の粘度を測定した。結果を表4に示す。また、それぞれ調製した下引き層用塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を製造し、評価した。結果を表9に示す。
【0158】
【表1】
【0159】
【表2】
【0160】
【表3】
【0161】
【表4】
【0162】
【表5】
【0163】
【表6】
【0164】
【表7】
【0165】
【表8】
【0166】
【表9】