特許第6238719号(P6238719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238719ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットおよびその製造方法
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  • 特許6238719-ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットおよびその製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238719
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/183 20060101AFI20171120BHJP
   C08G 63/80 20060101ALI20171120BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20171120BHJP
   B29C 49/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   C08G63/183
   C08G63/80
   C08J3/12 ZCFD
   B29C49/00
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-258191(P2013-258191)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-113441(P2015-113441A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】木田 真理子
(72)【発明者】
【氏名】石川 翔
(72)【発明者】
【氏名】濱 隆司
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−231269(JP,A)
【文献】 特開2000−169599(JP,A)
【文献】 特開2011−235601(JP,A)
【文献】 特開2006−104304(JP,A)
【文献】 特開平10−182805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00−63/91
B29C 49/00−49/80
C08J 3/00−3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)〜(v)を満たすことを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット。
(i)エチレンテレフタレート単位を主体とし、ジエチレングリコール単位の割合が全ポリマー単位に対して0.7〜1.0重量%であり、
(ii)固有粘度が0.70〜1.0dl/gであり、
(iii)X線回析法で計測・算出した微結晶サイズが54〜64Åであり、
(iv)アセトアルデヒド含量が2.0ppm以下であり、
(v)当該ペレットを用いて射出成形した角板の厚さ5mm部分のヘイズが14%以下。
【請求項2】
請求項1記載のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを用いてブロー成形して得られる中空成形容器。
【請求項3】
請求項1記載のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを用いて溶融成形して得られる成形体。
【請求項4】
下記(a)および/又は(b)の工程で、溶融重縮合時の反応液に分散して存在する平均粒径が0.3μm以下の分散粒子(C1)を、生成するポリエチレンテレフタレートに対して0.1〜30ppm添加して、
(a)エステル化により、ポリエチレンテレフタレートオリゴマーを生成せしめる工程、
(b)ポリエチレンテレフタレートを溶融重縮合させる工程、
(c)予備結晶化を110〜180℃の温度範囲で、10分間〜4時間行う工程、及び
(d)固相重合を205〜230℃の温度範囲で、5〜50時間行う工程
からなることを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットの製造方法。
【請求項5】
下記(イ)および/又は(ロ)の工程で、エステル化あるいは溶融重縮合時に平均粒径が0.3μm以下で分散する固体状チタン化合物からなる分散粒子(C2)を、生成するポリエチレンテレフタレートに対してチタン原子換算で0.1〜30ppm添加して、
(イ)エステル化により、ポリエチレンテレフタレートオリゴマーを生成せしめる工程、
(ロ)ポリエチレンテレフタレートを溶融重縮合させる工程、
(ハ)予備結晶化を110〜180℃の温度範囲で、10分間〜4時間行う工程、および
(ニ)固相重合を205〜230℃の温度範囲で、5〜50時間行う工程、
からなることを特徴とするポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可塑化し易く、耐熱性に優れる成形体を得るに好適なポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット及びその製法ならびにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートは、機械的強度、耐熱性、透明性およびガスバリヤー性に優れているので、特にミネラルウォーター、お茶、炭酸飲料、ジュースなどの飲料充填用中空容器の素材として使用されている。
【0003】
ミネラルウォーターやお茶、ジュースなどは殺菌処理を行うため中空容器に高温(80℃から95℃)で充填するため、透明性に優れ、耐熱性を付与した耐熱中空容器が使用されている。
【0004】
成形体の耐熱性を改良する方法として、エチレンテレフタレート単位を主体とし、ジエチレングリコール単位の割合が全ジオール単位中1.0〜2.5モル%であり且つ環状三量体の含有量が0.5重量%以下であるポリエステル樹脂に0.1〜45ppbのポリエチレンを配合して、結晶化速度を速くする方法が提案されている(特開平9−151308号公報:特許文献1)。
【0005】
一方、可塑化温度を低くする方法として、イソフタル酸とジエチレングリコールを少量共重合させたポリエチレンテレフタレートを用いることが提案されている(特開2006−104304号公報:特許文献2)。
【0006】
しかしながら、何れの方法でも、可塑化温度の低温化と耐熱性を両立させるには、不十分である。ジエチレングリコール単位水準が低いポリエチレンテレフタレート樹脂は結晶化度が高く、成形体の耐熱性を高くすることができる一方で、ペレットを用いてボトル等を成形する際の成形温度が高くなり、成形時の樹脂分解が促進され、ボトル等のフレーバーを悪化させるアセトアルデヒド量が増加する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−151308号公報
【特許文献2】特開2006−104304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、得られる成形体の耐熱性、透明性を維持しながら、可塑化温度を低くできるポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットおよびその製造方法、ならびにその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の課題を達成するために、鋭意検討した。その結果、ジエチレングリコール単位水準が低いポリエチレンテレフタレートはその分子構造の規則性の高さの故に結晶化度が高く微結晶サイズを小さくすることができないと考えていたが、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びまたはそのペレットの製造条件を精密にコントロールすることで、比較的小さな微結晶サイズを生成せしめることができることを見出した。さらに、当該ポリエチレンテレフタレート樹脂及びまたはそのペレットを提供することで、成形体の耐熱性、透明性に優れ、しかも射出成形などの成形時の成形温度を低くすることができることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、
(i)エチレンテレフタレート単位を主体とし、ジエチレングリコール単位の割合が全ポリマー単位に対して0.7〜1.0重量%であり、
(ii)固有粘度が0.70〜1.0dl/gであり、
(iii)X線回析法で計測・算出した微結晶サイズが54〜64Åであり、
(iv)アセトアルデヒド含量が2.0ppm以下であり、
(v)当該ペレットを用いて射出成形した角板の厚さ5mm部分のヘイズが14%以下
であることを特徴とポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットに関する発明である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットから得られる成形体は、耐熱性、透明性に優れ、しかも、射出成形などの溶融成形する際に可塑化温度を低くすることができるので、成形時に発生するアセトアルデヒド、環状三量体の副生を抑制することができる。また、本発明によれば、耐熱性、透明性に優れた成形体を製造することができ、しかも、射出成形などの溶融成形する際に可塑化温度を低くすることができるポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットおよびその製造方法を提供することができる。本発明に係る成形体は、耐熱性、透明性に優れ、各種成形品、容器などの用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、ヘイズの測定に用いられる段付き角板状成形体を示す斜視図である
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)>
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)は、エチレンテレフタレート単位を主体として、ジエチレングリコール単位の割合が全ポリマー単位に対して、0.7〜1.0重量%、好ましくは0.8〜1.0重量%の範囲で含み、固有粘度(IV)が0.70〜1.0dl/gの範囲にあり、好ましくは0.72〜0.90dl/gの範囲にある。
【0014】
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)は、全構成単位に対するテレフタル酸、エチレングリコールからなる単位の割合が95重量%以上、より好ましくは97重量%以上であるが、本発明の効果を損なわない範囲でテレフタル酸以外の酸成分、エチレングリコール、ジエチレングリコール以外のジオール及びまたはグリコール成分を含んでいてもよい。
【0015】
ジエチレングリコール単位の含有量が、上記範囲にあると、結晶性が適度に高いために固相重合工程においてポリエチレンテレフタレート樹脂のペレットの結晶化速度が低下せず、また固相重合行程や成形工程の際にペレット同士の融着がおきにくいので好ましい。また、得られる成形体の耐熱性が優れているため好ましい。
【0016】
固有粘度(IV)が上記範囲にあるポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)は、射出成形や中空成形を行う際の成形性が良好となることから好ましい。
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)は、微結晶サイズが54〜64Å、好ましくは55〜63Åの範囲にある。
【0017】
また、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)の微結晶サイズは、X線回折装置(理学電機社製 高分解能小角X線散乱装置)を用いて、ペレット1粒をホルダーに取り付けて測定を行った。得られた値(長周期)に下式で求められるペレットの結晶化度(結晶部の割合)を掛けて求めた。
結晶化度=1455×(ペレットの密度−1335)/(ペレットの密度×(1455−1335))
1335(kg/m3):ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットの非晶密度
1455(kg/m3):ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットの結晶密度
【0018】
微結晶サイズが64Åより大きくなると可塑化下限温度が高くなり、成形時の樹脂の分解を促進する結果、アセトアルデヒドが増加してフレーバーが悪化する。一方で微結晶サイズが54Åより小さくなり過ぎると固相重合工程や成形工程でペレット同士の融着が起きる場合があるので好ましくない。
【0019】
さらに、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)は、当該樹脂ペレット(A)を用いて射出成形した角板の厚さ5mm部分のヘイズが14%以下、好ましくは13%以下である。角板の厚さ5mm部分のヘイズが14%を超えると、対応する成形ボトルの透明性が悪化し飲料用ボトルの重大な品質が劣化する。
【0020】
ここで、射出成形した角板の厚さ5mm部分のヘイズとは、本実施例においては、図1に示す形状を有する段付き角板(A部の厚みは約6mm、B部の厚みは約4mm、C部の厚みは約2mm、D部の厚さは約7mm、E部の厚さは約5mm、F部の厚さは3mmである)を、射出成形機を用いて成形し、射出開始後、11〜15個目の成形体について、スガ試験機(株)製ヘイズメーター(HZ−V3)を用いて、成形品の厚さ5mm部分(E部)のヘイズを測定し、5枚の平均値より求めた。また、本発明のポリエチレンテレフタレートのペレットの密度は1400Kg/m3から1420Kg/m3である。密度が1420Kg/m3より大きいと、融点が高くなり,可塑化下限温度が高くなる。また、1400Kg/m3より小さくなると、固相重合工程や成形工程でペレット同士の融着が起きるので好ましくない。
【0021】
また、本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)のアセトアルデヒド含量は2.0ppm以下であり、ペレット(A)を用いて成形した際の成形物中のアセトアルデヒド含量は18ppm以下が好ましい。
【0022】
<重縮合触媒(B)>
本発明に係る重縮合触媒(B)は、溶融重縮合時の反応混合物に可溶及びまたは不溶な重縮合触媒(B)であり、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物が単独または組み合わせて用いられる。ゲルマニウム化合物としては二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシドなどが用いられる。チタン化合物としてチタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド等のチタンアルコキシド類,及び特開2005−325201に記載したチタンアルコキシド化合物と有機リン化合物との反応物、さらには、シュウ酸チタン、クエン酸チタンなどのチタンキレート化合物類、あるいはWO03/72633号に記載のTi−OH結合を一部に含む酸化チタン化合物類が挙げられる。かかる触媒の使用割合は、生成する全ポリマー重量に対して、全、金属原子換算で、0.1〜400ppm、好ましくは0.5〜300ppm用いられる。
【0023】
<分散粒子(C)>
本発明に係る分散粒子(C)は、平均粒径が0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下、さらに好ましくは0.001〜0.3μm、最も好ましくは0.001〜0.2μmの平均粒径を有し、ポリエチレンテレフタレート樹脂中で分散する分散粒子である。
【0024】
本発明に係る分散粒子(C1)は、溶融重縮合時の反応液に分散して存在することで、生成ポリエチレンテレフタレート中に微分散して、ポリエチレンテレフタレートの結晶核剤となり、固相重合工程で生成するポリエチレンテレフタレートの微結晶サイズを小さくすることができると推定している。
【0025】
かかる分散粒子(C)の一つとしては、周期律表1〜3,13〜16族の元素、当該元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、珪酸塩、硫酸塩あるいはそれらの混合物などの無機化合物(C1)が挙げられる。
【0026】
これら分散粒子(C1)の中でも、酸化物が好ましく、より好ましくはMgO、ZnO、SiO2である。
本発明に係る分散粒子(C)の他の例としては、上記の重縮合触媒(B)に該当する固体状チタン化合物(C2)、好ましくはTi−OH結合を一部に含む酸化チタン化合物類を用いることができる。当該固体状チタン化合物(C2)は、固体触媒調整時の粒子径が大きな場合があっても、生成ポリエチレンテレフタレート中に徐々に溶解して、微粒子状に分散して存在し、ポリエチレンテレフタレートの結晶核剤となると推定している。
【0027】
また、重縮合触媒(B)として好ましく用いられる二酸化ゲルマニウムは、溶融重縮合時の反応液に溶解するため、当該ポリエチレンテレフタレート中に分散粒子として存在しない。従って、分散粒子(C)としては用いられない。
【0028】
なお、本発明に係る分散粒子(C)の平均粒径は、島津製作所社製SALD2000J レーザー回析式粒度分布計を用いて測定した、重量平均の値である。
また、本発明に係る重縮合触媒(B)が、溶融重縮合時の反応液中で、0.3μm以下の粒子として分散する場合には分散粒子(C)の一部としても用いることもできる。平均粒径が0.3μmを超える分散粒子を用いた場合は、得られる成形体の透明性が低下する。分散粒子(C)の平均粒径が0.001μmを外れると、核剤効果が弱い。
【0029】
<ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)の製造方法>
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)は、ポリエチレンテレフタレートを製造する種々公知の製造方法で得ることができるが、ジエチレングリコール含量が低水準かつ微結晶サイズが小さい等を特徴とするため、例えば、以下の製造方法を例示として挙げることができる。
【0030】
〈製造例1〉
下記の(a)および/または(b)の工程で、平均粒径0.3μm以下の分散粒子(C1)を、生成するポリエチレンテレフタレートに対して0.1〜30ppm添加して、
(a)オリゴマー化工程、
(b)溶融重縮合工程、
(c)110〜180℃の温度範囲で、10分間〜4時間予備結晶化を行う予備結晶化工程、および
(d)205℃〜230℃で5〜50時間反応させる、固相重合工程
を行う方法。あるいは、
【0031】
〈製造例2〉
下記の(イ)および/または(ロ)の工程で、固体状チタン化合物からなる分散粒子(C2)を、生成するポリエチレンテレフタレートに対してチタン原子換算で0.1〜30ppm添加して、
(イ)オリゴマー化工程、
(ロ)溶融重縮合工程、
(ハ)110〜180℃の温度範囲で、10分間〜4時間予備結晶化を行う予備結晶化工程、および
(ニ)205℃〜230℃で5〜50時間反応させる、固相重合工程
を行う方法があげられる。
【0032】
さらに、具体的な例示として以下の方法を特徴として実施することができる。
(1)溶融重縮合時に平均粒径0.3μm以下に分散する固体状チタン化合物(C2)を、例えば、Ti―OH結合を一部に含む酸化チタン化合物類を、生成ポリエチレンテレフタレートに対して、チタン原子換算で0.1〜30ppmの範囲で用いて、ポリエチレンテレフタレートを溶融重縮合させる。次いで溶融重縮合後の固相重合前の予備結晶化の工程を110〜180℃の温度範囲で、1分間〜4時間行い、205〜230℃で5〜50時間固相重合させる方法。尚、この場合、適度な重縮合速度とするため、固体状チタン化合物とは別異の重縮合触媒、好ましくはゲルマニウム化合物と併せて、生成するポリエチレンテレフタレートに対して、金属原子換算で0.1〜400ppm、好ましくは0.5〜300ppmとなるように用いられる。また、この場合にあっては、固体状チタン化合物は、オリゴマー化工程において、本発明の効果を損なわない範囲で、添加することもできる。
【0033】
(2)平均粒径0.3μm以下の分散粒子(C1)を、生成するポリエチレンテレフタレートに対して、金属原子換算で0.1〜30ppm分散させた後、ポリエチレンテレフタレートを溶融重縮合させ、次いで溶融重縮合後の固相重合前の予備結晶化の工程を110〜180℃の温度範囲で、1分間〜4時間行い、さらに205〜230℃で5〜50時間固相重合させる方法。この場合にあっても、分散粒子(C1)を、オリゴマー化工程で添加することもできる。
【0034】
なお、上記(1)に記載の方法で、ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)を製造する際には、に、分散粒子(C1)と分散粒子(C2)とを併用してもよいが、その場合は、分散粒子(C1)と分散粒子(C2)との合計量が、金属原子換算で、生成するポリエチレンテレフタレートに対して、0.1〜30ppmの範囲になるようにする必要がある。
【0035】
また、上記範囲内にジエチレングリコールの含量を調節するため、主原料として使用するエチレングリコールから一部ジエチレングリコールが副生するため、ジエチレングリコール生成を抑制する添加剤を用いる。
【0036】
かかる添加剤としてはトリエチルアミン等の第三級アミン、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第4級アンモニウム、炭酸リチウム等の無機塩基を全重合原料に対し、0.001〜10重量%、好ましくは0.005〜1重量%用いることができる。また、重合原料として用いる、エチレングリコールを主体とするジオール成分とテレフタル酸を主体とする酸成分との仕込みを、ジオール成分/酸成分(モル比)=1.00〜1.40、好ましくは1.00〜1.30用いることにより、ジエチレングリコールの含量を適宜調節し、上記範囲内のジエチレングリコール含量とすることができる。
【0037】
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)は、上記の条件に加えて種々公知の製造方法を参照して製造することができる。すなわち、
テレフタル酸とエチレングリコールを含む原料はエステル化触媒の存在下、オリゴマーを形成させ、重縮合触媒及び安定剤の存在下、高温減圧下で溶融重縮合を行ってポリマーとされる。エステル化触媒はテレフタル酸がエステル化の自己触媒となるため、特に使用する必要はない。この工程により得られるオリゴマーの数平均分子量は通常500〜5000である。
【0038】
重縮合触媒としてはゲルマニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物が単独または組み合わせて用いられる。また、重縮合時に用いられる安定化剤としてリン酸エステル類、リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸などのリン化合物が用いられる。
【0039】
かかる触媒の使用割合は、全生成ポリマー中、触媒中の金属の重量として0.1〜400ppm、好ましくは0.5〜300ppm用いられる。安定剤の使用割合は安定剤中のリン原子の割合として、全重合原料中、0.1〜1000ppm、好ましくは0.5〜200ppmである。ここで、エステル化反応の反応温度・圧は240〜280℃、1〜3kg/cm2Gである。重縮合時の反応温度・圧は250〜300℃、500〜0.1mmHgであり、このようにして得られるポリエチレンテレフタレート樹脂は0.40〜0.75dl/gである。次に上記の溶融重縮合により得られたポリマーは固相重合に供されるが、固相重合を行う前に溶融重縮合により得られたポリマーを乾燥状態で110〜180℃、好ましくは140〜180℃で1分間〜4時間行う。この予備結晶化の温度がこの範囲より高いと所望する微結晶サイズより大きな微結晶サイズのポリマーが生成し、可塑化下限温度が高くなり、樹脂分解を促進する結果、成形物のフレーバーが悪化する。また、固相重合工程は少なくとも1段からなり、通常、205〜230℃、好ましくは210〜230℃、1kg/cm2G〜10mmHg、好ましくは0.5kg/cm2G〜10mmHg、50時間以下、好ましくは10〜25時間行う。固相重合により得られたポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)の極限粘度は0.70〜1.0dl/gである。
【0040】
<中空容器の成形方法>
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)は、射出成形や押出成形といった溶融成形での成形温度を低くできるので、得られる成形体、例えばプリフォームならびに中空容器材質中のアセトアルデヒドなどの副生成物を少なくすることができる。
【0041】
中空容器を成形する方法として、射出成形とブロー成形の2工程により中空容器を成形するのが一般的である。
先ず本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)を除湿エア乾燥により含有水分量を50ppm以下に調整する。次いで、射出成形機械などの成形機に供給してプリフォームと呼ばれる予備成形品を成形する。この工程では、ペレットがスクリュウを搭載したシリンダー内に投入されスクリュウ回転により樹脂が可塑化(溶融)された後、金型内に射出し冷却固化させて取り出すことによりプリフォームが得られる。シリンダーの設定温度は280〜300℃が一般的である。
【0042】
次いで、このプリフォームはブロー成形機に供給される。ブロー成形機は加熱工程とブロー工程の2工程からなり、加熱工程ではプリフォームを例えば赤外線ヒーターを用いて所定の温度に加熱、材料を軟化させる。次いで加熱されたプリフォームはブロー工程に移送され所定形状の金型に挿入し、延伸ロッドと呼ばれる棒と高圧エアにより延伸ブロー成形を行い、金型から取り出し中空容器を成形する。通常ブロー成形では加熱、ブローを連続的に行う成形システムとなっている。
【0043】
ブロー成形方法としては大きく2つの方法が挙げられる。非耐熱中空容器を成形する場合は、加熱されたプリフォームを金型内でブロー成形を行い、直ちに金型から取り出す。一方耐熱中空容器は、金型温度を例えば130℃以上の高温に調整しヒートセットと呼ばれる手法により、ブロー(延伸)時に生成した歪を緩和させ耐熱性を付与させる。ブロー時のプリフォーム温度はその表面温度で、100〜115℃が一般的である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で得られたポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットの物性は以下の方法で測定した。
【0045】
(1)ジエチレングリコール共重合量の定量
試料をフラスコに精秤し、モノエタノールアミンで加水分解する。過剰のモノエタノールアミンをテレフタル酸で中和し1,6-ヘキサンジオールを内部標準として、GC(ガスクロマトグラフィー)により定量する。この分析方法で定量されたジエチレングリコール量を、用いたサンプル量で割った値をジエチレングリコールの共重合量(wt%)とする。
【0046】
(2)固有粘度(IV)の測定
固有粘度は、ポリエチレンテレフタレート樹脂0.5gをテトラクロロエタン/フェノール=50/50(wt%/wt%)混合溶液100ml中に加熱溶解した後、冷却して25℃で測定された溶液粘度から算出した。
【0047】
(3)微結晶サイズの測定
前記記載の方法で測定した。
【0048】
(4)アセトアルデヒドの測定
試料2.0gを秤量し、フリーザーミルを用いて冷凍粉砕する。粉砕試料は窒素置換したバイアル瓶に投入、さらに内部標準物質(アセトン)と水を入れて密栓する。バイアル瓶は120±2℃の乾燥機で1時間加熱した後、上澄み液をガスクロマトグラフィーに注入し測定した。
【0049】
(5)ヘイズの測定
ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを、真空乾燥機を用いて150℃、15時間乾燥した。乾燥後の樹脂ペレット中の水分量は40ppm以下であった。乾燥したポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを、スクリューフィーダを用い、5×10-33/時間に相当する回転数でフィードし(株)名機製作所射出成形機M70Bを用いて、シリンダー設定温度295℃、成形サイクル70秒、スクリュー回転数120rpm、計量18秒で成形して、段付角板状の成形品を得た。段付角板状成形体は、図1に示すような形状を有しており、A部の厚みは約6mm、B部の厚みは約4mm、C部の厚みは約2mm、D部の厚さは約7mm、E部の厚さは約5mm、F部の厚さは3mm、重量は75gである。
【0050】
射出成形開始後、11個目〜15個目の成形品について、スガ試験機(株)製ヘイズメーター(HZ−V3)を用いて、成形品の5mm厚さ部(E部)のヘイズを測定し、5枚の平均値を5mmヘイズとして示した。
【0051】
(6)耐熱性の評価
上記ヘイズの測定と同様の方法でポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを乾燥し、住友重機械工業製SE-180射出成形機により樹脂温度295℃でプリフォームを成形した。このプリフォームの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた後、コーポプラスト社製BLOWMAX6E延伸ブロー成形機を用いて二軸延伸ブロー成形し、引き続き約150℃に設定した金型内で1.5秒間熱固定し、500mlの中空成形容器を得た。中空成形容器を40℃、95%RH雰囲気で3日間保管した後の容量(A)と40℃、95%RH雰囲気で3日間保管した後さらに87℃の熱水を充填し、キャップをした状態で23℃の室温下10分間保持し、次いで23℃の水槽に1時間保持した後の容量(B)の比から体積収縮率(|1−B/A|×100)を計算した。体積収縮率が2%以下の場合を○、2.1〜3%の場合を△、3.1%以上の場合を×とした。
【0052】
(7)可塑化下限温度
上記方法により得られたポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを170℃の除湿エアを用いて4時間乾燥を行い、その含有水分量を50ppm以下に調整した。乾燥した樹脂ペレットを住友重機械工業社製SE180DU−C150射出成形機に投入し、シリンダー設定温度を295℃、スクリュウ回転数を150rpm、サイクルタイム25秒に設定し成形を行った。プリフォームは、1ショットに4個得られ、それぞれの重量は28gである。プリフォームの外観を観察し、未溶融による白化物の有無を確認し、白化が認められなければシリンダーの設定温度を5℃低減させ成形を行い、再びプリフォームの白化の有無を確認した。この操作をプリフォームの白化が見られるまで繰り返し、(プリフォームの白化が見られたときのシリンダーの設定温度)+5℃を可塑化下限温度とした。
【0053】
(8)成形品アセトアルデヒドの測定
上記方法により得られたポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを、ヘイズの測定と同様の方法で乾燥した。乾燥したポリエチレンテレフタレートを、住友重機械工業製SE-180DU−C150射出成形機を用いて、シリンダー設定温度を上記で求めた可塑化下限温度とし、成形サイクル25秒、スクリュー回転数150rpm、軽量5秒で成形してプリフォームを得た。プリフォームは、1ショットに4個得られ、それぞれの重量は28gである。
【0054】
成形開始後20個目の成形品について、試料2.0gを秤量し、フリーザーミルを用いて冷凍粉砕する。粉砕試料は窒素置換したバイアル瓶に投入、さらに内部標準物質(アセトン)と水を入れて密栓する。バイアル瓶は120±2℃の乾燥機で1時間加熱した後、上澄み液をガスクロマトグラフィーに注入し測定した。
【0055】
〔実施例1〕
〔ポリエチレンテレフタレート樹脂および樹脂ペレットの製造〕
第1、第2、第3、第4および第5の反応器が槽型であり、また第6の反応器が二軸回転式の横型反応器からなる連続重縮合装置を用いて、以下のとおり操作して連続重合を行い、ポリエチレンテレフタレート樹脂を製造した。
【0056】
予め3750重量部の反応液が滞留されており、攪拌下255℃で窒素雰囲気下に0.17MPaGの条件下に維持された第1反応器に、毎時高純度テレフタル酸1437重量部およびエチレングリコール520重量部を混合して調製されたスラリーと毎時酸化マグネシウム(和光純薬工業、平均粒径0.05μm、純度99.9%)0.055部とエチレングリコール55部を混合して調製されたスラリーとテトラエチルアンモニウム20%水溶液0.03重量部を連続的に供給し、第1段目のエステル化反応を行った。この第1段目のエステル化反応においては、203重量部の水と3重量部のエチレングリコールとの混合液が留去された。また、この第1段目のエステル化反応物は、平均滞留時間が2.0時間になるように制御され、連続的に攪拌下260℃で0.08MPaGの条件下に維持された第2反応器に導かれた。
【0057】
この反応器2においては、毎時0.49重量部の二酸化ゲルマニウムと49重量部のエチレングリコールとの均一溶液(非晶性GeO2をエチレングリコールに加熱溶解してGeO2濃度1重量%として使用)が連続的に供給されるとともに、毎時84重量部の水と7重量部のエチレングリコールとの混合液が連続的に留去されて、第2段目のエステル化反応が継続された。また、この第2段目のエステル化反応物は、平均滞留時間が2.0時間になるように制御され、連続的に攪拌下265℃で常圧の条件下に維持された第3反応器に導かれた。
【0058】
この第3反応器においては、毎時1.23重量部のトリメチルホスフェートと22重量部のエチレングリコールとが混合された均一溶液が連続的に供給されるとともに、毎時21重量部の水と38重量部のエチレングリコールとの混合液が連続的に留去され、第3段目のエステル化反応が継続された。
【0059】
この第3段目のエステル化反応物も平均滞留時間が2.0時間となるように制御され、連続的に攪拌下275℃で9kPa absに維持された第4反応器に導かれた。この第4反応器においては、毎時62重量部のエチレングリコールと6重量部の水との混合物が連続的に留去されて第1段目の重縮合反応が行われた。また、この第1段目の重縮合反応物は、平均滞留時間が1.0時間となるように制御され、連続的に攪拌下280℃で0.7kPa absに維持された第5反応器に導かれた。
【0060】
この第5反応器においては、毎時26重量部のエチレングリコールと3重量部の水との混合液が連続的に留去されて第2段目の重縮合反応が継続された。また、この第2段目の重縮合反応物は、平均滞留時間が1.0時間になるように制御され、連続的に280℃〜285℃で0.1〜0.3kPa absの条件下に維持された横型二軸回転式反応槽である第6反応器に導かれた。この第6反応器においては、毎時12重量部のエチレングリコールと1重量部の水との反応液が連続的に留去されて第3段目の重縮合反応が継続された。また、この第3段目の重縮合反応物は、平均滞留時間が2.5時間となるように制御され、連続的にポリエステル抜き出し装置によって、反応器外にストランド状で抜き出され、水中に浸漬されて冷却された後、ストランドカッターによってチップ状に裁断された。
以上の液相重合によって得られたポリエチレンテレフタレート樹脂のIVは0.59dl/gであった。
【0061】
さらに、その液相重合によるポリエチレンテレフタレート樹脂は、窒素雰囲気下約150℃で約2時間乾燥するとともに結晶化を行った後、塔型の固相重合器に装填し、窒素雰囲気下225℃で10時間固相重合を行った。このようにして得られたポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットのIVは0.80dl/g、ジエチレングリコール(DEG)は0.9重量%、微結晶サイズは62Å、成形品の5mmヘイズは5%、ボトル耐熱性は○であり、可塑化下限温度は285℃であった。
【0062】
〔実施例2〕
実施例1の第1反応器において、毎時高純度テレフタル酸1437重量部およびエチレングリコール547重量部を混合して調製されたスラリーと毎時酸化亜鉛(和光純薬工業、酸化亜鉛、平均粒径0.02μm、純度99.9%)0.028部とエチレングリコール28部のスラリーに変更した以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表1に示す。
【0063】
〔実施例3〕
実施例1において、第1反応器において、毎時高純度テレフタル酸1437重量部およびエチレングリコール547重量部を混合して調製されたスラリーと毎時酸化マグネシウム(和光純薬工業、酸化マグネシウム、平均粒径0.2μm、純度99.9%)0.028部とエチレングリコール28部のスラリーに変更し、固相重合時間を6.5時間に変更した以外は実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表1に示す。
【0064】
〔実施例4〕
実施例1において、結晶化温度を170℃へ変更した以外は、実施例1と同様の方法の方法でポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表1に示す。
【0065】
〔実施例5〕
〔固体状チタン化合物の調製〕
1000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500mlを秤取し、氷浴にて冷却した後攪拌しながら四塩化チタン5gを滴下した。塩化水素の発生が止まったら氷浴より取り出し、攪拌しながら25%アンモニア水を滴下し、液のpHを8にした。生成したチタン水酸化物の沈殿は2500回転、15分間の遠心沈降で上清と分離した。その後、得られたチタン水酸化物の沈殿を脱イオン水で5回洗浄した。洗浄後の固液分離は2500回転、15分間の遠心沈降で行った。洗浄後のチタン水酸化物を70℃、1.3kPa abs、18時間の減圧乾燥で水分を除去し、固体状チタン化合物を得た。得られた固体状チタン化合物は重縮合触媒と使用する前に10μm程度の粒子に粉砕した。
【0066】
このようにして得られた固体状チタン化合物の付着水分量をカールフィッシャー水分計により測定したところ、6.7重量%の水分を含有していることがわかった。また熱重量測定により加熱減量を測定したところ、280℃までに当初重量の7.50重量%、280℃から600℃までにさらに2.17重量%が減量し、この減量は水分および窒素化合物の脱離によるものであることが分かった。触媒に含まれる窒素は1.3重量%であり、塩素は14ppmしか含まれていないことから、窒素は塩化アンモニウムに由来するものではなく、アンモニアに由来するものであると考えられる。これらのことから、得られた固体状チタン化合物はチタン対水酸基がモル比で1:0.15であることがわかった。なお、窒素は微量全窒素分析装置(化学発光法)で、塩素はクロマトグラフィーで分析し、それぞれアンモニア、塩化水素として脱離するとして計算した。
ICP測定装置を使用して測定した溶液中のチタンの含有量は、30重量%であった。
【0067】
(ポリエチレンテレフタレート樹脂および樹脂ペレットの製造)
第1、第2、第3、第4および第5の反応器が槽型であり、また第6の反応器が二軸回転式の横型反応器からなる連続重縮合装置を用いて、以下のとおり操作して連続重合を行い、ポリエチレンテレフタレート樹脂を製造した。
【0068】
予め3750重量部の反応液が滞留されており、攪拌下255℃で窒素雰囲気下に0.17MPaGの条件下に維持された第1反応器に、毎時高純度テレフタル酸1437重量部およびエチレングリコール579重量部を混合して調製されたスラリーを連続的に供給し、第1段目のエステル化反応を行った。この第1段目のエステル化反応においては、203重量部の水と3重量部のエチレングリコールとの混合液が留去された。また、この第1段目のエステル化反応物は、平均滞留時間が2.0時間になるように制御され、連続的に攪拌下260℃で0.08MPaGの条件下に維持された第2反応器に導かれた。
【0069】
この反応器2においては、毎時0.165重量部の上記で調製した固体状チタン化合物と54重量部のエチレングリコールとのスラリーが連続的に供給されるとともに、毎時84重量部の水と7重量部のエチレングリコールとの混合液が連続的に留去されて、第2段目のエステル化反応が継続された。また、この第2段目のエステル化反応物は、平均滞留時間が2.0時間になるように制御され、連続的に攪拌下265℃で常圧の条件下に維持された第3反応器に導かれた。
【0070】
この第3反応器においては、毎時0.06重量部の85%リン酸と0.3重量部のエチレングリコールとが混合された均一溶液が連続的に供給されるとともに、毎時21重量部の水と38重量部のエチレングリコールとの混合液が連続的に留去され、第3段目のエステル化反応が継続された。
【0071】
この第3段目のエステル化反応物も平均滞留時間が2.0時間となるように制御され、連続的に攪拌下275℃で9kPa abs に維持された第4反応器に導かれた。この第4反応器においては、毎時62重量部のエチレングリコールと6重量部の水との混合物が連続的に留去されて第1段目の重縮合反応が行われた。また、この第1段目の重縮合反応物は、平均滞留時間が1.0時間となるように制御され、連続的に攪拌下280℃で0.7kPa absに維持された第5反応器に導かれた。
【0072】
この第5反応器においては、毎時26重量部のエチレングリコールと3重量部の水との混合液が連続的に留去されて第2段目の重縮合反応が継続された。また、この第2段目の重縮合反応物は、平均滞留時間が1.0時間になるように制御され、連続的に280℃〜285℃で0.1〜0.3kPa absの条件下に維持された横型二軸回転式反応槽である第6反応器に導かれた。この第6反応器においては、毎時12重量部のエチレングリコールと1重量部の水との反応液が連続的に留去されて第3段目の重縮合反応が継続された。また、この第3段目の重縮合反応物は、平均滞留時間が2.5時間となるように制御され、連続的にポリエステル抜き出し装置によって、反応器外にストランド状で抜き出され、水中に浸漬されて冷却された後、ストランドカッターによってチップ状に裁断された。
以上の液相重合によって得られたポリエチレンテレフタレート樹脂のIVは0.59dl/gであった。
【0073】
さらに、その液相重合によるポリエチレンテレフタレート樹脂は、窒素雰囲気下約150℃で約2時間乾燥するとともに結晶化を行った後、塔型の固相重合器に装填し、窒素雰囲気下225℃で13時間固相重合を行い、ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを得た。結果を表1に示す。
【0074】
〔実施例6〕
実施例5の第1反応器において、毎時高純度テレフタル酸1437重量部およびエチレングリコール593重量部を混合して調製されたスラリーした以外は、実施例5と同様の方法でポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表1に示す。
【0075】
〔実施例7〕
実施例5の固相重合時間を16時間に変更した以外は、実施例5と同様の方法でポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表1に示す。
【0076】
〔実施例8〕
実施例5の第1反応器において、毎時高純度テレフタル酸1437重量部およびエチレングリコール524重量部を混合して調製されたスラリーと毎時酸化マグネシウム(和光純薬工業、酸化マグネシウム、平均粒径0.05μm、純度99.9%)0.055部とエチレングリコール55部のスラリーに変更した以外は、実施例5と同様の方法でポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
〔比較例1〕
実施例1の第1反応器において、毎時高純度テレフタル酸1437重量部およびエチレングリコール575重量部を混合して調製されたスラリーを連続的に供給し、酸化マグネシウムスラリーを添加せず、その他は実施例1と同様の方法でポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表2に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットは微粒子を添加していないため、微結晶サイズが大きく可塑化下限温度が高くなった。
【0079】
〔比較例2〕
実施例1の方法にて、酸化マグネシウムの粒径(タテホ化学工業、酸化マグネシウム、平均粒径0.5μm、純度99.9%)を変更した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表2に示す。微粒子径が大きいため、ヘイズ値が上昇した。
【0080】
〔比較例3〕
実施例1の方法にて、第1反応器において、毎時高純度テレフタル酸1437重量部およびエチレングリコール300重量部を混合して調製されたスラリーと毎時酸化マグネシウム(タテホ化学工業、酸化マグネシウム、平均粒径0.5μm、純度99.9%)0.275重量部およびエチレングリコール275重量部を混合して調製されたスラリーに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表2に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットは微粒子添加量が多いため、ヘイズ値が上昇した。
【0081】
〔比較例4〕
実施例1の方法にて、固相重合における結晶化の温度を190℃へ変更した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表2に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットは結晶化温度が高いため、微結晶サイズが大きくなり可塑化下限温度が上昇した。
【0082】
〔比較例5〕
実施例1の方法において、第1反応器にジエチレングリコールを12重量部添加した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表2に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットはジエチレングリコール濃度が高いため、ボトル耐熱性が低下した。
【0083】
〔比較例6〕
実施例1の方法において、液相重合後のIVが0.70dl/gとなるよう重合し、固相重合時間を4時間に変更した以外は、実施例1と同様の方法でポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表2に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットは微結晶サイズが小さすぎ、成形機シリンダー内でペレット同士が融着し塊となるため、成形温度を高めに設定して可塑化した。
【0084】
〔比較例7〕
実施例1の方法において、固相重合温度を200℃に変更し、固相重合時間を20時間に変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表2に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットは微結晶サイズが小さすぎ、成形機シリンダー内でペレット同士が融着し塊となるため、成形温度を高めに設定して可塑化した。
【0085】
〔比較例8〕
〔触媒の調製〕
1000mlガラス製ビーカーに脱イオン水500mlを秤取し、氷浴にて冷却した後、撹拌しながら四塩化チタン5gを滴下した。塩化水素の発生が止まったら氷浴より取り出し、室温下で撹拌しながら25%アンモニア水を滴下し、液のpHを9にした。これに、室温下で攪拌しながら15%酢酸水溶液を滴下し、液のpHを5にした。生成した沈殿物を濾過により、分離した。洗浄後の沈殿物を、30重量%エチレングリコール含有水でスラリー濃度2.0重量%のスラリーとして30分間保持した後、二流体ノズル式のスプレードライヤーを用いて温度90℃で造粒乾燥を行い、固体状チタン化合物を得た。
【0086】
ICP分析法により測定した固体状チタン化合物中のチタンの含有量は、34.8重量%であった。次に、300mlガラス製フラスコにエチレングリコール170gとグリセリン30gを秤取し、これに上記固体状チタン化合物を5.75g添加し、170℃で2時間加熱して溶解させた。ICP分析法により測定した溶液中のチタンの含有量は、1.0重量%であった。
【0087】
〔ポリエチレンテレフタレート樹脂および樹脂ペレットの製造〕
比較例1の第2反応器において、酸化ゲルマニウム溶液の替りに上記で調合したチタン触媒溶液を1.67重量部添加した以外は、比較例1と同様の方法でポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットを調製した。結果を表2に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂ペレットは微結晶サイズが大きく、可塑化下限温度が上昇した。
【0088】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット(A)から得られる成形体は、耐熱性、透明性に優れ、しかも、射出成形などの溶融成形する際に可塑化温度を低くすることができるので、成形時に発生するアセトアルデヒド等の副生を抑制することができるので、各種公知の成形方法で成形して、ボトルなどの中空容器に限らず、シート、フィルム、繊維、パイプなどの種々の用途に用い得る。
図1