特許第6238721号(P6238721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238721
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】医療用計測具および外科手技システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/29 20060101AFI20171120BHJP
   A61B 90/00 20160101ALI20171120BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61B17/29
   A61B90/00
   A61B5/10 300Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-260598(P2013-260598)
(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公開番号】特開2015-116267(P2015-116267A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2015年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100086379
【弁理士】
【氏名又は名称】高柴 忠夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】傍島 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】原 慎
(72)【発明者】
【氏名】甕 紘介
【審査官】 近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−126803(JP,U)
【文献】 特開昭63−277028(JP,A)
【文献】 実開昭57−176202(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00 − 90/98
A61B 5/107
G01B 3/00 − 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本の医療用鉗子を備える外科手技システムにおいて前記二本の医療用鉗子に取り付けられる医療用計測具であって、
直線状の形態と、非直線状の形態とに変形可能であり、長手方向に力を加えても実質的に伸長しないように形成された本体と、
前記本体の両端部に設けられ、前記二本の医療用鉗子に着脱可能に係止される係止部と、
を備え
前記本体が、前記係止部が係止された前記二本の医療用鉗子同士を離間させた時に直線状に変形し且つ実質的に伸長しないことで、前記二本の医療用鉗子同士をそれ以上離間しないように拘束し、前記二本の医療用鉗子間の距離を所定の距離に保持可能であることを特徴とする医療用計測具。
【請求項2】
前記係止部は、前記医療用鉗子の径方向から接近させて前記医療用鉗子に係止可能である、請求項1に記載の医療用計測具。
【請求項3】
前記係止部は、前記医療用鉗子に係止された際の前記医療用鉗子の径方向と、前記本体が直線状であるときの前記長手方向とが直交しないように、前記本体に対して傾けて取り付けられている、請求項1に記載の医療用計測具。
【請求項4】
前記係止部が前記本体に対して回動可能に取り付けられている、請求項1に記載の医療用計測具。
【請求項5】
前記二本の医療用鉗子は、先端に開閉可能なジョーを有し、
前記係止部が、前記ジョーの開閉動作を妨げないように、前記二本の医療用鉗子のそれぞれに対して前記ジョーよりも基端側の位置に係止される請求項1に記載の医療用計測具。
【請求項6】
二本の医療用鉗子を備える外科手技システムにおいて前記二本の医療用鉗子に取り付けられる医療用計測具であって、
直線状の形態と、非直線状の形態とに変形可能であり、長手方向に力を加えても実質的に伸長しないように形成された本体と、
前記本体の両端部に、前記本体の端部側の一部を巻いた状態で設けられ、前記二本の医療用鉗子に着脱可能に係止される係止部と、
を備え、
前記係止部は、前記本体の巻き取り量を増減することにより前記本体の長さを変化させることができ、
前記係止部を係止した前記二本の医療用鉗子同士を離間させて、前記本体を前記直線状の形態に変形させると、前記本体が前記直線状の形態を保つことにより、前記二本の医療用鉗子間の距離が前記本体の長さに保持される医療用計測具。
【請求項7】
第一及び第二の医療用鉗子と、
直線状の形態と、非直線状の形態とに変形可能であり、長手方向に力を加えても実質的に伸長しないように形成され、かつ一方の端部が、前記第一の医療用鉗子に着脱可能又は外れないように形成された本体と、前記本体の他方の端部に設けられ、前記第二の医療用鉗子に着脱可能に係止される係止部とを有する医療用計測具と、
を備え
前記医療用計測具の前記本体が、前記第一及び第二の医療用鉗子に前記医療用計測具が係止された状態で、前記第一及び第二の医療用鉗子同士を離間させた時に直線状に変形し且つ実質的に伸長しないことで、前記第一及び第二の医療用鉗子同士がそれ以上離間しないように拘束し、前記第一及び第二の医療用鉗子間の距離を所定の距離に保持可能なことを特徴とする外科手技システム。
【請求項8】
前記第一及び第二の医療用鉗子は、先端に開閉可能なジョーを有し、
前記医療用計測具が、前記ジョーの開閉動作を妨げないように、前記第一及び第二の医療用鉗子のそれぞれに対して前記ジョーよりも基端側の位置に係止される請求項7に記載の外科手技システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用計測具、より詳しくは、体内で組織の寸法を計測するのに適した医療用計測具、および当該医療用計測具を備えた外科手技システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肥満症や胃がん等に対する外科手技として、ルーワイバイパス法(Roux en Y Gastric Bypass)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。ルーワイバイパス法では、残胃や食道等に空腸を接続するため、空腸の端部を所定の長さにわたり食道付近まで移動させる必要がある。所定の長さは、がん病巣の大きさや肥満の程度等により変化するため、術者は、患者の体内で所定の長さを適切に計測する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2011−528117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、腹腔鏡下手術等により体内で組織の長さを計測する場合は、メジャーをトロッカー経由で体内に配置し、鉗子等で把持した組織をメジャーにあてがいながら計測を行っている。しかしながらこの方法で空腸等の小腸を計測すると、計測済みの部位をたぐる際に、周囲組織も移動するため、メジャーの位置や向きが変化し、計測がしにくくなることがある。
また、鉗子等に所定の長さを示すマーキングを施し、組織を鉗子等に沿わせて長さを計測することも行われているが、トロッカー等から導入した鉗子等の向きの調節には限界があるため、やはり計測がしにくくなることがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、体内での組織計測を好適に行うことができる医療用計測具および外科手技システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、二本の医療用鉗子を備える外科手技システムにおいて前記二本の医療用鉗子に取り付けられる医療用計測具であって、直線状の形態と、非直線状の形態とに変形可能であり、長手方向に力を加えても実質的に伸長しないように形成された本体と、前記本体の両端部に設けられ、前記二本の医療用鉗子に着脱可能に係止される係止部とを備え、前記本体が、前記係止部が係止された前記二本の医療用鉗子同士を離間させた時に直線状に変形し且つ実質的に伸長しないことで、前記二本の医療用鉗子同士をそれ以上離間しないように拘束し、前記二本の医療用鉗子間の距離を所定の距離に保持可能であることを特徴とする医療用計測具である。
【0007】
前記係止部は、前記医療用鉗子の径方向から接近させて前記医療用鉗子に係止可能であってもよい。
また、前記係止部は、前記医療用鉗子に係止された際の前記医療用鉗子の径方向と、前記本体が直線状であるときの前記長手方向とが直交しないように、前記本体に対して傾けて取り付けられてもよいし、前記係止部が前記本体に対して回動可能に取り付けられてもよい。
また、前記二本の医療用鉗子は、先端に開閉可能なジョーを有し、前記係止部が、前記ジョーの開閉動作を妨げないように、前記二本の医療用鉗子のそれぞれに対して前記ジョーよりも基端側の位置に係止されてもよい。
本発明の第二の態様は、二本の医療用鉗子を備える外科手技システムにおいて前記二本の医療用鉗子に取り付けられる医療用計測具であって、直線状の形態と、非直線状の形態とに変形可能であり、長手方向に力を加えても実質的に伸長しないように形成された本体と、前記本体の両端部に、前記本体の端部側の一部を巻いた状態で設けられ、前記二本の医療用鉗子に着脱可能に係止される係止部と、を備え、前記係止部は、前記本体の巻き取り量を増減することにより前記本体の長さを変化させることができ、前記係止部を係止した前記二本の医療用鉗子同士を離間させて、前記本体を前記直線状の形態に変形させると、前記本体が前記直線状の形態を保つことにより、前記二本の医療用鉗子間の距離が前記本体の長さに保持される医療用計測具である。
【0008】
本発明の第の態様は、第一および第二の医療用鉗子と、直線状の形態と、非直線状の形態とに変形可能であり、長手方向に力を加えても実質的に伸長しないように形成され、かつ一方の端部が、前記第一の医療用鉗子に着脱可能又は外れないように形成された本体と、前記本体の他方の端部に設けられ、前記第二の医療用鉗子に着脱可能に係止される係止部とを備えた医療用計測具と、を備え、前記医療用計測具の前記本体が、前記第一及び第二の医療用鉗子に前記医療用計測具が係止された状態で、前記第一及び第二の医療用鉗子同士を離間させた時に直線状に変形し且つ実質的に伸長しないことで、前記第一及び第二の医療用鉗子同士がそれ以上離間しないように拘束し、前記第一及び第二の医療用鉗子間の距離を所定の距離に保持可能なことを特徴とする外科手技システムである。
また、前記第一及び第二の医療用鉗子は、先端に開閉可能なジョーを有し、前記医療用計測具が、前記ジョーの開閉動作を妨げないように、前記第一及び第二の医療用鉗子のそれぞれに対して前記ジョーよりも基端側の位置に係止されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の医療用計測具および外科手技システムによれば、体内での組織計測を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態に係る医療用計測具を示す図である。
図2】同医療用計測具が医療用鉗子に装着された、本実施形態の外科手技システムを示す図である。
図3】同外科手技システムを用いて第一部位把持工程を行っている図である。
図4】同外科手技システムを用いて直線化工程を行っている図である。
図5】同外科手技システムを用いて組織計測工程を行っている図である。
図6】同医療用計測具を他の位置に装着した例を示す図である。
図7】同医療用計測具における係止部の他の例を示す図である。
図8】同係止部を他の位置に取り付ける例を示す図である。
図9】本発明の第二実施形態に係る医療用計測具を示す図である。
図10】同医療用計測具が医療用鉗子に装着された状態を示す図である。
図11】同医療用計測具の他の例を示す図である。
図12】同医療用計測具における係止部の他の例を示す図である。
図13】同医療用計測具における係止部の他の例を示す図である。
図14】同医療用計測具における係止部の他の例を示す図である。
図15】同医療用計測具における係止部の他の例を示す図である。
図16】同医療用計測具が鉗子に収納可能に取り付けられた例を示す図である。
図17】同医療用計測具が鉗子に収納可能に取り付けられた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第一実施形態について、図1から図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態の医療用計測具(以下、単に「計測具」と称する。)1を示す図である。計測具1は、長尺の本体10と、本体10の両端部に設けられた係止部20とを備えている。
【0012】
本体10は、長手方向の寸法(長さ)が既知(例えば20cm)であり、直線状の形態と、湾曲した状態等の非直線状の形態とに変形可能である。本体10は、直線状にして長手方向に牽引しても、実質的に伸長せず、長さが変化しない材料で形成されている。このような本体10としては、例えば、糸、紐、帯状の布等の各種可撓性材料や、金属製の鎖等のように、材料自体は可撓性を有さないが、本体として変形可能なものが挙げられる。この他、硬質の棒状の部材を複数接続した、多関節状の構造としてもよい。
【0013】
係止部20は、例えば金属等の硬質な材料で、環状に形成されている。係止部20の内径は、後述する医療用鉗子を挿通可能な大きさであり、医療用鉗子を挿通することにより、医療用鉗子に着脱可能に係止することができる。
【0014】
上記のように構成された計測具1と、トロッカーに挿通可能な2本の医療用鉗子(以下、単に「鉗子」と称する。)とで構成された本実施形態の外科手技システム100(図2参照。)を用いて、生体組織である空腸の寸法を計測する方法の手順について説明する。
計測前の準備として、術者は患者の腹壁に穴をあけ、穴にトロッカー等の導入器具を取り付ける。穴の個数は適宜設定できるが、一般的には、観察用に少なくとも一つ、鉗子導入用に少なくとも二つ形成される。
【0015】
導入器具の設置後、術者は、計測具1を導入器具に挿入し、体内に導入する(計測具導入工程)。続いて術者は、第一の鉗子および第二の鉗子を、それぞれ異なる導入器具に挿入して体内に導入する。次に術者は、第一の鉗子を係止部20の一方に通して係止部20を第一の鉗子に係止し、第二の鉗子を係止部20の他方に通して係止部20を第二の鉗子に係止する。
こうして、図2に示すように、計測具1が第一の鉗子51および第二の鉗子52に装着される(計測具装着工程)。計測具装着工程における具体的な動作には特に制限はない。例えば、組織上に置かれた計測具1に対し、鉗子を前進させて環状の係止部20に挿通してもよいし、一方の鉗子で係止部20を把持し、静止させた他方の鉗子に係止部20を掛けてもよい。
【0016】
次に術者は、図3に示すように、第一の鉗子51で空腸JEの第一部位JE1を把持する(第一部位把持工程)。
続いて術者は、図4に示すように、第一の鉗子51と第二の鉗子52とを離間させ、計測具1の本体10を直線状にする(直線化工程)。
【0017】
計測具1の本体10は、長手方向に牽引するような力を加えても実質的に伸長しないため、直線化工程後の状態において、第一の鉗子51と第二の鉗子52との距離は、本体10の長さと略同一である。したがって、術者は、本体10を直線状に保ちつつ、第二の鉗子を空腸JE上の第二部位JE2に近づけるまたは接触させる(図5に示すように、第二の鉗子52で第二部位JE2を把持することを含む)ことにより、空腸JEにおける二点間の距離を計測することができる(組織計測工程)。組織計測工程において、術者は、対象組織である空腸JEを本体10と平行または略平行となるように、直線状または略直線状としてもよい。このようにすることで、対象組織の計測をより正確に行うことができる。
【0018】
本体10の長さ以上の計測を行う際は、組織計測工程後に、第一の鉗子を第一部位JE1から外し、第一の鉗子51で第二部位JE2を把持する。その後第二部位JE2を新たな第一部位として、直線化工程および組織計測工程を行う。この動作を繰り返すことで、本体10の長さの整数倍の寸法を計測することができる。
【0019】
以上説明したように、本実施形態の計測具1、および計測具1と二本の鉗子51、52とからなる外科手技システム100によれば、両端の係止部20を2本の鉗子51および52に係止して、本体10を直線状にすることで、2本の鉗子間の距離が既知の所定値となるため、この状態を利用して、患者の体内でも好適に組織の寸法を計測することができる。
また、係止部20を備えることで、本体10が組織とは離間した状態で2本の鉗子51、52に支持されるため、計測中に本体と鉗子との位置関係が大きく変化せず、安定した計測を行うことができる。
【0020】
本実施形態において、計測具導入工程は、鉗子の導入と同時に行われてもよい。例えば、係止部の一方を鉗子の一方に装着したり、一方の鉗子で計測具を把持したりした状態で鉗子を導入することにより同時に行うことができる。
【0021】
また、本実施形態において、係止部を係止する位置は、上述した例に限られず、鉗子の開閉動作を概ね妨げない位置であればよい。例えば、図6に示すように、鉗子51および52において、開閉可能な一対のジョーのうちの一方のジョー55に取り付けられてもよい。
【0022】
また、本実施形態において、係止部の構造は様々に変更することが可能である。図7に示す係止部21は、弾性変形可能な材料で略C字状に形成されているため、係止部21を鉗子51等の外周面に接近させ、係止部21で鉗子51を挟むようにして、係止部を鉗子に係止してもよい。この場合、係止部を鉗子の径方向から鉗子に接近させて係止できるので、計測具装着工程を容易に行うことができる。図8に示すように、係止部21がジョー55に取り付けられても構わない。
【0023】
さらに、磁石を用いて係止部を形成し、磁力により係止部を係止させてもよい。この場合は、本体を過度に牽引すると、係止部が鉗子から外れることがあるため、直線化工程において、本体を過度に牽引しないように注意するのが好ましい。
【0024】
次に、本発明の第二実施形態について、図9を参照して説明する。本実施形態と第一実施形態との異なるところは、本体と係止部との接続態様である。なお、以降の説明において、すでに説明したものと共通する構成等については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
図9は、本実施形態の計測具101を示す図である。計測具101においては、係止部20が本体10に対して傾いた状態で取り付けられている。その結果、係止部20が鉗子に係止された状態における鉗子の径方向D1と、直線化された状態における本体10の長手方向D2とが直交していない点が第一実施形態の計測具1と異なっている。両端部の係止部20は、長手方向D2に対して同じ側に傾けられている。
【0026】
二本の鉗子51、52に対して、図10に示すように計測具101を装着すると、長手方向D2と鉗子51および52の軸線X1、X2とは、それぞれ鉗子の先端側において鋭角をなす。
【0027】
本実施形態の計測具101によっても、第一実施形態の計測具1と同様に、患者の体内でも好適に組織の寸法を計測することができる。
互いに離間した2つの導入器具にそれぞれ鉗子を挿入して手技を行う場合、通常2本の鉗子は同一の対象部位に向けられるため、平行とはならず、先端側においてより接近した状態となる。計測具101は、これに近い状態で2本の鉗子に係止することができるため、計測中に係止部に過度な力が作用しにくい。係止部の構造が、上述の係止部21や磁力による係止の場合、過度な力が作用すると、係止が外れてしまう可能性があるが、計測具101では、そのような事態を好適に防止することができる。
【0028】
本体10に対する鉗子の姿勢変化をさらに許容するためには、図11に示すような構造も好ましい。図11に示す計測具111では、本体112の両端部に設けられた回動軸113に係止部20が取り付けられており、係止部20が鉗子に係止された状態における鉗子の径方向D1と、直線化された状態における本体10の長手方向D2とのなす角度が可変となっている。このようにすることで、組織計測中における鉗子と本体との位置関係の変化に応じて係止部20が回動し、係止部に過度な力が作用することをさらに好適に防止することができる。
【0029】
以上、本発明の計測具および外科手技システムについて、各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【0030】
例えば、本発明の計測具において、係止部の少なくとも一方を、本体の2以上の異なる部位に着脱可能としてもよい。このようにすると、直線化工程における鉗子間の距離(すなわち、一回の直線化工程で計測できる長さ)を、患者の体形や手技内容等に応じて調節することが可能になり、より好適に計測を行うことができる。
係止部を本体の2以上の異なる部位に着脱可能とする構造には特に制限はない。例えば、図12に示すように、本体40に複数の穴41を設け、穴41に挿入可能な突起61を係止部60に設けてもよいし、図13に示すように鋭利な突起62を本体40に刺入することで係止部60を本体50に装着してもよい。
また、上述した構成とは異なるが、図14に示すように、本体40の一方の端部側の一部範囲を巻いた状態で係止部70に固定すると、巻き取り量を増減することにより係止部間に配置される本体40の長さを変化させて直線化工程における鉗子間の距離を調節することができる。さらに、図15に示すように、止め具71を用いた公知の構造を用いて係止部間に配置される本体40の長さを調節可能にしてもよい。
直線化工程における鉗子間の距離を調節可能に構成する場合は、本体40に目盛45を設けると調節が容易になり、好ましい。
【0031】
また、本発明の外科手技システムにおいては、計測具の一方の端部が、2本の鉗子の一方から外れないように取り付けられていてもよい。このようにすると、鉗子を導入することで計測具が体内に導入できるため、手技が容易になる。この場合、計測具に設けられる係止部は、一つのみとなる場合がある。
計測具の一方の端部を鉗子から外れないように取り付ける場合、計測具の本体を鉗子の内部に収納可能にしてもよい。このようにすると、組織の計測を行うときだけ本体を引き出せばよいため、計測具の取り扱いが容易となる。収納可能とする構成については特に制限はない。例えば、図16に示すように、本体10の端部にゴムやバネ等の弾性体81を接続し、弾性体81を鉗子51の内部に固定する構造や、図17に示すように、本体10の端部を鉗子51内に設けた巻取用のリール82に巻きつけた構造等が挙げられる。図16および図17では、本体10が鉗子51のジョー55、56間から引き出される例を示しているが、鉗子51を用いた他の手技の妨げとならないよう、ジョーと干渉しない鉗子の外周面等から本体が引き出されるように構成してもよい。
【0032】
さらに、本発明の計測具および外科手技システムは、上述したルーワイバイパス法以外にも、組織の計測を必要とするあらゆる外科手技に適用可能である。例えば、悪性腫瘍の根治のための食道や小腸の切除及びこれに付随する吻合術や、十二指腸転換を伴う胆膵バイパス術(Duodenal Switch)などが好適な例として挙げられる。
【0033】
本発明には、以下の技術思想が含まれる。
(付記項)
直線状の形態と、非直線状の形態とに変形可能であり、長手方向に力を加えても実質的に伸長しないように形成された本体と、前記本体の少なくとも一方の端部に設けられ、医療用鉗子に着脱可能に係止される係止部とを備えた医療用計測具を体内に導入する計測具導入工程と、
前記係止部の両端部を、それぞれ第一の医療用鉗子と第二の医療用鉗子に係止する計測具装着工程と、
前記第一の医療用鉗子で体内組織の第一部位を把持する第一部位把持工程と、
前記第一の医療用鉗子と前記第二の医療用鉗子とを離間させて、前記本体を直線状の形態にする直線化工程と、
前記本体を直線状に保ちつつ、前記第二の医療用鉗子を前記体内組織の第二部位JE2に近づけるまたは接触させることにより、前記第一部位と前記第二部位との間の距離を計測する組織計測工程と、
を備える、体内組織の計測方法。
【符号の説明】
【0034】
1、101、111 医療用計測具
10、40、112 本体
20、21、60、70 係止部
51、52 医療用鉗子
100 外科手技システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17