特許第6238733号(P6238733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238733
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】作業車輌
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/20 20100101AFI20171120BHJP
   F01N 13/00 20100101ALI20171120BHJP
   B60K 13/04 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
   F01N13/20 Z
   F01N13/00 Z
   !B60K13/04 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-269072(P2013-269072)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-124673(P2015-124673A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】渡部 英知
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 賢志郎
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−105230(JP,U)
【文献】 特開2003−206741(JP,A)
【文献】 特開2008−000021(JP,A)
【文献】 特開2003−063332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00−99/00
A01D 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを、上方側のボンネットフードと、左右のサイドカバーと、前方のフロントグリルと、によって覆た作業車輌において、
前記エンジンの排気管を、前記サイドカバーに垂直な方向に対して傾斜した排気方向に延びて前記サイドカバーに形成した排気孔に対向し、かつ前記排気管の先端が前記排気孔の周縁部と略面一となるように配置し、
前記サイドカバーの前記排気孔の前記周縁部に、前記排気管と所定空隙を有するように煤付着防止部材を設け、
前記煤付着防止部材は、黒色からなると共に、前記サイドカバーに対して機体外側に突出する鍔部を有し
前記鍔部は、前記サイドカバーに垂直な方向から視た場合に前記排気管の前記先端に対して前記排気方向に位置する部分が、前記排気管の前記先端に対して前記排気方向の反対側に位置する部分に比べて、前記排気孔の前記周縁部に対して機体外側に高く突出するように形成されてなる、
ことを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記ボンネットフードの後方に配置された運転操作部を備え、
前記排気管は、前記排気方向が前記サイドカバーに垂直な方向に対して機体前方側に傾斜した方向となるように配置され、
前記鍔部は、少なくとも前記排気管の前記先端に対して前方に位置する部分及び下方に位置する部分が、前記排気管の前記先端に対して後方に位置する部分に比べて、前記排気孔の前記周縁部に対して機体外側に高く突出するように形成されてなる、
請求項1記載の作業車輌。
【請求項3】
前記煤付着防止部材は、前記鍔部から機体内側に突出し、前記鍔部との間に前記周縁部に係合するU字溝を形成する突出部を有する可撓性の部材からなり、
前記突出部は、前記排気管の前記先端に対する前記排気方向の反対側を切欠かれた形状からなる、
請求項1又は2記載の作業車輌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車輌に係り、詳しくは、エンジンを覆うサイドカバーに排気孔を設けた作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのエギゾーストマニホールドにマフラーを取付けて消音すると共に、該マフラーのアウトレットパイプをボンネットのサイドカバーに形成した排気孔に向けて配索し、エンジンの排気ガスを該排気孔から機外へと排出するトラクタが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−105853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トラクタは、安全上、サイドカバーからアウトレットパイプ(排気管)を突出して設けることは好ましくなく、上記特許文献1記載のものは、アウトレットパイプの先端にパイプ状の導風管を取付けて、該導風管をサイドカバーから突出又は面一にして設けている。しかしながら、該トラクタは、導風管から排出された排気ガスに水蒸気や煤を含み、サイドカバーに黒色の汚れとして霧状もしくは液状に付着することがあった。
【0005】
そこで、本発明は、サイドカバーにエンジン排気の汚れが付着することを防止した作業車輌を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車輌(1)は、エンジンを、上方側のボンネットフード(10)と、左右のサイドカバー(11L,11R)と、前方のフロントグリル(12)と、によって覆た作業車輌(1)において、
前記エンジンの排気管(15)を、前記サイドカバー(11L)に垂直な方向に対して傾斜した排気方向(C)に延びて前記サイドカバー(11L)に形成した排気孔(16)に対向し、かつ前記排気管(15)の先端(15a)が前記排気孔(16)の周縁部(11a)と略面一となるように配置し、
前記サイドカバー(11L)の前記排気孔(16)の前記周縁部(11a)に、前記排気管(15)と所定空隙を有するように煤付着防止部材(17)を設け、
前記煤付着防止部材(17)は、黒色からなると共に、前記サイドカバー(11L)に対して機体外側に突出する鍔部(17b)を有し
前記鍔部(17b)は、前記サイドカバー(11L)に垂直な方向から視た場合に前記排気管(15)の前記先端(15a)に対して前記排気方向(C)に位置する部分(19)が、前記排気管(15)の前記先端(15a)に対して前記排気方向の反対側(D)に位置する部分(21)に比べて、前記排気孔(16)の前記周縁部(11a)に対して機体外側に高く突出するように形成されてなる、
ことを特徴とする。
【0007】
例えば図1及び図7を参照して、前記ボンネットフード(10)の後方に配置された運転操作部(7)を備え、
前記排気管(15)は、前記排気方向(C)が前記サイドカバー(11L)に垂直な方向に対して機体前方側に傾斜した方向となるように配置され、
前記鍔部(17b)は、少なくとも前記排気管(15)の前記先端(15a)に対して前方に位置する部分(19)及び下方に位置する部分(22)が、前記排気管(15)の前記先端(15a)に対して後方に位置する部分(21)に比べて、前記排気孔(16)の前記周縁部(11a)に対して機体外側に高く突出するように形成されてなる。
【0009】
例えば図4及び図7を参照して、前記煤付着防止部材(17)は、前記鍔部(17b)から機体内側に突出し、前記鍔部(17b)との間に前記周縁部(11a)に係合するU字溝(17a)を形成する突出部を有する可撓性の部材からなり、
前記突出部は、前記排気管(15)の前記先端(15a)に対する前記排気方向(C)の反対側を切欠かれた形状からなる。
【0011】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明は、煤付着防止部材がサイドカバーに対して機体外側に突出する鍔部を有するので、排気管から排出される煤を含む排気ガスは、まず鍔部に当たって、サイドカバーが排気ガスの煤で汚れることを防止することができる。また、煤付着防止部材は黒色からなるので、鍔部が排気ガスの煤で汚れたとしても目立たず意匠性が良い。
【0013】
請求項2に係る本発明は、鍔部の少なくとも前記排気管の排気方向側及び下部側が、排気方向の反対方向側に対して高く突出するので、例えば排気管から霧状の煤を含んだ排気ガスが排出される場合、又はより水分を多く含み煤が液だれとなって下方に排出される場合に、より確実にサイドカバーへの煤汚れを防止することができる。
【0014】
また、請求項に係る本発明は、排気管の先端が排気孔と略面一となるように配置されるので、確実に機体外方に排気ガスを排出し、ボンネット内の部品に温度上昇や汚れ等により不具合が発生することを防止することができる。
【0015】
請求項に係る本発明は、煤付着防止部材がU字溝を有するので、サイドカバーの排気孔の周縁部にU字溝を係合させて、工具や他の部品を用いることなく煤付着防止部材をサイドカバーに取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係るトラクタを示す全体斜視図。
図2】本実施の形態に係るトラクタを示す全体側面図。
図3】トラクタのサイドカバーを示す斜視図。
図4図2のA−A断面図。
図5図2のB−B断面図。
図6】煤付着防止部材のサイドカバーへの取付けを示す斜視図。
図7】煤付着防止部材を示し、(a)は機体外側から視た側面図、(b)は機体内側から視た側面図、(c)は平面図、(d)は底面図、(e)は正面図、(f)は背面図。
図8】煤付着防止部材を示し、(a)は機体正面側から視た斜視図、(b)は機体背面側から視た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態のトラクタ1(作業車輌)は、図1及び図2に示すように、前輪及び後輪(不図示)により支持される走行機体2と、該走行機体2の後部に昇降自在に連結されたロータリ耕耘装置等の作業機(不図示)と、を備え、上記走行機体2を前進走行させながら、作業機によって耕耘作業等の各種作業を行なう。
【0019】
上記走行機体2は、前後方向に延びる金属製の車台3を備えており、該車台3の前部に取付けられて、ディーゼルエンジンからなる不図示のエンジンを覆うボンネット6と、該ボンネット6の後方に配置される運転操作部7と、を有している。上記ボンネット6と上記運転操作部7との間には、上記車台3から立接される機枠9が配置されている。
【0020】
上記ボンネット6は、エンジンの上方側を覆うボンネットフード10と、左右のサイドカバー11L,11Rと、前方を覆うフロントグリル12と、からなり、上記ボンネットフード10は、その後側において上記機枠9に枢支されて開閉自在に、かつ閉じた状態で固定自在となっている。
【0021】
機体進行方向左側の上記サイドカバー11Lには、図3に示すように、冷却ファン(不図示)によって吸気されたエンジンの冷却風を排出する排気口13が形成されていると共に、該排気口13の前下方に、エンジンの排気管15からの排気ガスを排出する楕円形状の排気孔16が形成されている。上記サイドカバー11Lの上記排気孔16の周囲には、機体外方へやや湾曲して盛り上がる盛り上がり部14が形成されている。上記排気管15の先端面15a(先端)は、図4及び図5に示すように、上記排気孔16に対向配置されると共に、上記排気孔16に略面一となるように形成されており、機体外方に排気ガスを排出するようになっている。これにより、ボンネット6内に排気ガスが排出されて、ボンネット内の部品に温度上昇や煤の汚れ等により不具合が発生することが防止できる。
【0022】
上記サイドカバー11Lの、上記排気孔16の周縁部11aには、上記排気管15と所定空隙を有するように、上記排気孔16の楕円形状に対応した略楕円形状の煤付着防止部材17が取付けられている。該煤付着防止部材17は、黒色かつ耐熱性及び可撓性を有するシリコンゴムからなると共に、上記周縁部11aに係合するU字溝17aを有している。すなわち、上記煤付着防止部材17は、グロメット状となっており、上記U字溝17aを上記周縁部11aに係合することで、他に工具や部材を用いることなくサイドカバー11Lに取付けることができ、組み付け性が良い。
【0023】
上記煤付着防止部材17は、図6ないし図8に示すように、上記サイドカバー11Lに対して機体外側に所定の厚みdを有して形成されており、該厚みdに加えて、更に上記サイドカバー11Lに対して機体外側に突出する鍔部17bを有している。ところで、上記排気管15は、上記排気孔16に向けて、機体進行方向に対して約30度左側に傾いて延びており、すなわち上記排気管15の排気方向Cは、機体前方側となっている(図7参照)。これは、ボンネット6に対して機体後方側に着座する作業者へ直接熱風となる排気ガスが当たることを防止するためである。
【0024】
上記鍔部17bは、上記煤付着防止部材17の円周全体に形成されているが、便宜的に鍔部が形成される方向に基づいて、前側鍔部19,上側鍔部20,後側鍔部21,下側鍔部22と分けて呼称することとする。上記前側鍔部19,上側鍔部20及び下側鍔部22は、略同じ高さから形成されているが、上側鍔部20又は下側鍔部22から機体後方側、すなわち上記排気方向Cの反対方向Dに向かうにしたがってその高さが低くなるように形成されている。つまり、上記排気方向Cに形成された前側鍔部19の高さe(又は上側鍔部20,下側鍔部22の高さ)は、上記反対方向Dに形成された後側鍔部21の高さfよりも高く突出して形成されている。また、上記U字溝17aは、図7(b)及び図8に示すように、上記反対方向D側のみ切欠かれており、上記鍔部17bが上記反対方向D側は低く形成されることと相俟って、材料費を抑えてコストダウンすることができる。
【0025】
本実施の形態は、以上のような構成からなるので、作業者は、トラクタ1のエンジンを始動して、耕耘等の作業を開始する。エンジンを点火すると、燃料の燃焼に伴って、排気管15から排気ガスが排出される。該排気ガス中には、煤や、燃料中の水素成分と空気中の酸素が反応して生成される水分(水蒸気)が含有している。そして、水分と煤が結びついて黒色の霧状となって排気される場合があるが、排気管15から排出された該黒色の霧は、高さの高い排気方向C側に形成された前側鍔部19に付着する。
【0026】
これにより、前側鍔部19には、黒色の煤汚れが付着するが、サイドカバー11Lが煤で汚れることを防止することができる。また、前側鍔部19は黒色からなるので、たとえ該前側鍔部19や煤付着防止部材17の他の部分が煤で汚れたとしても、汚れが目立たず意匠性が良い。
【0027】
また、特にエンジン始動時には、排気管15に水分が結露し、該水分が煤を含有して黒色の液だれとなって、排気管15から下方に垂れてしまうことがある。この場合、該黒色の液だれは、排気管15から高さの高い下側鍔部22に付着する。下側鍔部22に付着した黒色の液だれは、多くの場合、排気ガスの熱で水分が蒸発し、煤だけが残って、機外に霧散するか、該下側鍔部22に固着する。これにより、サイドカバー11Lが煤で汚れることを防止することができる。
【0028】
なお、本実施の形態では、前側鍔部19,上側鍔部20及び下側鍔部22を、後側鍔部21に対して高く突出して形成したが、排気方向に排出される黒色の霧及び下方に排出される黒色の液だれがサイドカバー11Lに付着しないように、該排気方向及び下部側の鍔部を高く形成すれば、他の方向の鍔部の高さについては限定しない。また、排気方向及び下部側のみ鍔部を形成するようにしてもよい。
【0029】
また、下側鍔部22に付着した黒色の液だれが、該下側鍔部22から漏下しないように、該下側鍔部22に窪部や傾きを設けて形成してもよい。
【0030】
また、本実施の形態でいう排気方向は、黒色の霧が排出される範囲全てを含み、また下側鍔部22の範囲は、黒色の液だれを受ける全ての範囲を含む。
【0031】
また、本発明はトラクタに限らず、田植機等の他の作業車輌に対しても適応可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 トラクタ(作業車輌)
10 ボンネットフード
11a 周縁部
11L,11R サイドカバー
12 フロントグリル
15 排気管
15a 先端面(先端)
16 排気孔
17 煤付着防止部材
17a U字溝
17b 鍔部
C 排気方向
D 反対方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8