特許第6238740号(P6238740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238740
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】関節用装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20171120BHJP
   A41D 13/06 20060101ALI20171120BHJP
   A61F 13/06 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   A61F5/02 N
   A41D13/06 105
   A61F13/06 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-270837(P2013-270837)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-123273(P2015-123273A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】506345823
【氏名又は名称】株式会社ホワシ
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(74)【代理人】
【識別番号】100136928
【弁理士】
【氏名又は名称】高宮 章
(72)【発明者】
【氏名】帆鷲 輝誌男
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 英夫
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0004135(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0123308(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01−5/02
A41D 13/06
A61F 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の関節の周囲に装着される装具本体と、
装具本体の内面に取り付けられ、袋内部の空気圧を調整可能であり、装着部位において所定の方向に圧迫力を作用させるような1点と、該1点を挟むように離隔し該1点とは逆向きに圧迫力を作用させるような2点と、の3点を圧迫する3個の空気袋と、を備え
空気袋を装具本体の内面に位置変更自在に取り付ける位置変更手段が設けられたことを特徴とする関節用装具。
【請求項2】
位置変更手段は、空気袋と装具本体とにそれぞれ設けられて互いに脱着自在に係合する面ファスナからなることを特徴とする請求項記載の関節用装具。
【請求項3】
装着者の関節の周囲に装着される装具本体と、
装具本体の内面に取り付けられ、袋内部の空気圧を調整可能であり、装着部位において所定の方向に圧迫力を作用させるような1点と、該1点を挟むように離隔し該1点とは逆向きに圧迫力を作用させるような2点と、の3点を圧迫する3個の空気袋と、を備え、
3個の空気袋が互いに袋内部を連通して接続され、いずれか1つの空気袋に空気出入口部が設けられたことを特徴とする関節用装具。
【請求項4】
装着者の関節の周囲に装着される装具本体と、
装具本体の内面に取り付けられ、袋内部の空気圧を調整可能であり、装着部位において所定の方向に圧迫力を作用させるような1点と、該1点を挟むように離隔し該1点とは逆向きに圧迫力を作用させるような2点と、の3点を圧迫する3個の空気袋と、を備え、
装具本体は、膝又は肘に装着されるものであり、
1つの空気袋は、膝頭又は肘頭に対応する位置に配置され、透孔が設けられていることを特徴とする関節用装具。
【請求項5】
装具本体は、関節の周囲に巻き付け状に装着される可撓性の帯状体又はシート状体を含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の関節用装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝、肘、手首等の関節に装着して患部の保持や矯正、身体機能の補助等を行う関節用装具に関する。
【背景技術】
【0002】
関節の変形や靭帯損傷等その他病気、怪我の患者や高齢者等に対して身体の一部を外部から支えて、関節の動きを制限したり保護したりしながら、変形の矯正、身体機能の補助、痛みの軽減等を図るために、装具やサポータが利用される。従来の装具では、患者の体格や症状に応じて製作され、装具を密着状に装着して矯正や補助等が行われる。しかしながら、患者が適切に装具を装着できない場合も多く、装具がずれやすかったり、確実な矯正力を作用させたりすることができず、装具機能を十分に発揮できない問題があった。また、装具を最初に製作する際の矯正力や補助力の微調整や病状の経過に応じて矯正力等を変更したい場合には、装具等を作り直したり煩雑な調整が必要である等の問題があった。
【0003】
特許文献1には、膝の周囲にあてがったエアーバッグに空気を入れて膨張することにより膝の変形を矯正しようとする膝関節サポータが提案されている。特許文献1の膝関節サポータは、膝関節付近に巻き付けるように装着可能な帯状部材と、該帯状部材の片面に着脱自在に取り付けられるエアーバッグと、前記帯状部材と前記エアーバッグとの間に介在されるように、該エアーバッグに一体に設けられ、該エアーバッグの膨張力を受けても局部変形しない可撓性の抵抗板と、を備えたものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−161330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、装具では、変形した関節の矯正等を行うためには、関節に対応した1点位置と、その位置を挟む上下位置でかつ反対側の離隔した2点位置、との3点を保持すること(いわゆる3点固定(3点支持))が重要である。しかしながら、特許文献1の膝関節サポータでは、膝関節に巻き付ける帯状部材の略全面にエアーバッグが取り付けられる構造であるので、内反膝、外反膝等変形方向が異なるような各症状に対応して、適切な方向に力を作用させて矯正や身体機能の補助等を行うことが困難であったり、矯正機能等が低いおそれがあったり、比較的軽度の患者の利用に限られてしまい実用性に劣る等の問題があった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、装着感が良く、ずれにくい上、身体の当該部位を3点固定して装具としての機能を良好に作用させうる実用性が高い関節用装具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、装着者の関節の周囲に装着される装具本体12と、装具本体12の内面に取り付けられ、袋内部の空気圧を調整可能であり、装着部位において所定の方向に圧迫力を作用させるような1点と、該1点を挟むように離隔し該1点とは逆向きに圧迫力を作用させるような2点と、の3点を圧迫する3個の空気袋14、16、18と、を備え空気袋14、16、18を装具本体12の内面に位置変更自在に取り付ける位置変更手段38が設けられた関節用装具10から構成される。
【0008】
また、位置変更手段38は、空気袋14、16、18と装具本体12とにそれぞれ設けられて互いに脱着自在に係合する面ファスナ40a、36bからなることとしてもよい。
【0009】
さらに本発明は、装着者の関節の周囲に装着される装具本体12と、装具本体12の内面に取り付けられ、袋内部の空気圧を調整可能であり、装着部位において所定の方向に圧迫力を作用させるような1点と、該1点を挟むように離隔し該1点とは逆向きに圧迫力を作用させるような2点と、の3点を圧迫する3個の空気袋14、16、18と、を備え、3個の空気袋14、16、18が互いに袋内部を連通して接続され、いずれか1つの空気袋に空気出入口部28が設けられた関節用装具10から構成される
【0010】
さらに本発明は、装着者の関節の周囲に装着される装具本体12と、装具本体12の内面に取り付けられ、袋内部の空気圧を調整可能であり、装着部位において所定の方向に圧迫力を作用させるような1点と、該1点を挟むように離隔し該1点とは逆向きに圧迫力を作用させるような2点と、の3点を圧迫する3個の空気袋14、16、18と、を備え、装具本体12は、膝NE又は肘に装着されるものであり、1つの空気袋14は、膝頭又は肘頭に対応する位置に配置され、透孔42が設けられている関節用装具10から構成される
【0011】
また、装具本体12は、関節の周囲に巻き付け状に装着される可撓性の帯状体又はシート状体を含むこととしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の関節用装具によれば、装着者の関節の周囲に装着される装具本体と、装具本体の内面に取り付けられ、袋内部の空気圧を調整可能であり、装着部位において所定の方向に圧迫力を作用させるような1点と、該1点を挟むように離隔し該1点とは逆向きに圧迫力を作用させるような2点と、の3点を圧迫する3個の空気袋と、を備えているから、3点固定の原理で身体の当該部位を確実に保持でき、変形の矯正や身体機能の補助、痛みの緩和等を図る装具としての機能を良好に発揮することができ、実用性が高い。また、装具を装着した状態でずれにくく、空気圧による圧迫であるので装着感がよい。さらに、例えば、空気圧を調整することで病状の経過に応じて圧迫力を簡単に変更することができる。
【0013】
また、空気袋を装具本体の内面に位置変更自在に取り付ける位置変更手段が設けられた構成とすることにより、装着者の体格や種々の症状等に応じて3点固定する位置を適宜変更して良好に変形の矯正や身体機能の補助等を行うことができる。
【0014】
また、位置変更手段は、空気袋と装具本体とにそれぞれ設けられて互いに脱着自在に係合する面ファスナからなる構成とすることにより、位置変更手段を簡単な構成で具体的に実現でき低コストで製造できるとともに、脱着位置変更操作も簡単かつ短時間に行える。
【0015】
また、3個の空気袋が互いに袋内部を連通して接続され、いずれか1つの空気袋に空気出入口部が設けられた構成とすることにより、3個の空気袋の空気圧調整を簡単かつ短時間で行え、使い勝手がよい。
【0016】
また、装具本体は、膝又は肘に装着されるものであり、1つの空気袋は、膝頭又は肘頭に対応する位置に配置され、透孔が設けられている構成とすることにより、例えば、空気袋を膝や肘等の関節にあてがって矯正する際に動きが妨げられにくかったり、違和感を生じにくく、良好に矯正することができる。
【0017】
また、装具本体は、関節の周囲に巻き付け状に装着される可撓性の帯状体又はシート状体を含む構成とすることにより、製作しやすいとともに、装具を簡単に装着、離脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る関節用装具を展開して内部を見せた状態の斜視図である。
図2図1の関節用装具の装着する態様での斜視図である。
図3】(a)図1の関節用装具の装着状態の正面図、(b)同装着状態の側面図である。
図4図1の関節用装具の分解斜視図である。
図5図1の関節用装具を展開して外面側を見せた状態の説明図である。
図6】(a)図1の関節用装具を展開して内部を見せた状態の説明図、(b)空気袋の位置を変更した状態の説明図、(c)空気袋の位置を変更した状態の他の説明図である。
図7図1の関節用装具の空気袋の取り付け位置を変更して種々の症状に適用した例の作用説明図である。
図8図1の関節用装具の空気袋の他の実施形態の説明図である。
図9図1の関節用装具の空気袋の他の実施形態の説明図である。
図10】他の実施形態の関節用装具の装着状態の側面図である。
図11図10の関節用装具の装具本体を展開して外面を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下添付図面を参照しつつ本発明の関節用装具の実施形態について説明する。本発明に係る関節用装具は、怪我や病気等の患者や高齢者の関節の周囲に装着されて、動きの制限や保護、変形の矯正、身体機能の補助、痛みの緩和等を図ることができる身体用装具装置である。図1ないし図6は、本発明の関節用装具の第1の実施形態を示している。図1図2に示すように、本実施形態において、関節用装具10は、装具本体12と、3個の空気袋14、16、18と、を備えている。本実施形態では、関節用装具10は、例えば、膝の部分に装着される膝用装具の例で説明する。
【0020】
装具本体12は、装着者の関節の周囲に装着される基部部分であり、身体に当てられる3個の空気袋14、16、18を保持するための取付手段ともいえる。図1図2図3に示すように、装具本体12は、本実施形態では、例えば、可撓性の布地素材で形成され膝NEの周囲に巻き付け状に装着されるシート状体20と、シート状体20を環状に膝に巻き付けた状態で両端部どうしを着脱自在に接続する接続部22と、を含む。
【0021】
シート状体20は、例えば、膝とその上下の大腿部の下部側及び下部の上部側を覆うような広さで設けられている。シート状体20は、装着者の膝NEの裏側からあてられて膝の周囲の形状に沿うように撓みながら巻き付けられ、膝の上下の前方側で重ね合わせられる両端部どうしを接続部22を介して着脱自在に接続される。シート状体20は、身体へ装着した状態では膝の曲げ伸ばしに対応して撓み変形するようになっている。シート状体20の両端部には、内側に凹設された凹部24が設けられており、装着してそれらの両端部を接続した状態で膝NEの前面(膝頭)部分に対応する部分に透孔26を形成する。シート状体20の一方の端部であって端部どうしを重ね合わせて環状に接続した際に前面側となる端部は、凹部24を挟んだそれぞれの端部片がさらに2分割されており、計4つの端部片構成となっている。なお、装具本体12は、シート状体よりも幅の狭い帯状体で関節の周囲に装着する構成でもよい。また、装具本体12は、可撓性の素材で形成した軟性装具の態様に限らず、症状等に応じてプラスチック等の硬質素材で形成された硬性装具で構成してもよい。
【0022】
図1図5に示すように、接続部22は、例えば、シート状体20の端部にそれぞれ取り付けられ、互いに着脱自在に係合する面ファスナ23a、23bからなる。シート状体20の一方の端部の内面側に面ファスナ23aが設けられ、他方の端部の外面側に面ファスナ23bが設けられており、シート状体20を環状にして端部を重ね合わせた状態で互いに係着される。接続部22を面ファスナで構成しているので、着脱が簡単に行なえ、体格等に応じてある程度巻き付け力を調整できる。なお、装具本体12は、シート状体や帯状体の端部を脱着自在に接続させる構成に限らず、伸縮性のある素材で環状に形成し筋肉等を圧迫しながら装着する構成でもよい。
【0023】
さらに、図2図3図5に示すように、装具本体12には、シート状体20を膝NEの周囲に巻き付けた状態で、膝の内外側方に沿って配置される支柱部材30が取り付けられている。支柱部材30は、膝の曲げ伸ばしに対応して曲げ伸ばしできるように上下に2分割されて回動部32で回動自在に連結されている。支柱部材30は、例えば、回動部32が膝の横位置に対応した状態でシート状体20の外面側に沿って縦長に配置され、該支柱部材30の外側から覆うカバーをシート状体20に縫製等により固定して、シート状体に取り付けられている。なお、装具本体12は、支柱部材30を設けず、シート状体や帯状体のみで構成してもよい。
【0024】
図1図4図6に示すように、空気袋14、16、18は、装具本体12の内面に取り付けられ、袋内部に空気を気密状に保持するエアーバッグであり、空気圧を利用して身体の部位を3点固定(3点支持)する圧迫支持手段である。空気袋14、16、18は、装着部位において所定の方向に圧迫力を作用させるような1点と、該1点を挟むように離隔し該1点とは逆向きに圧迫力を作用させるような2点と、の3点を圧迫することにより、身体の当該部位の3点固定を構成している。例えば、図3の例では、内反膝(O脚)を矯正するのに利用した態様であり、第1空気袋14は、膝NEに外側から内側に向けて矯正力を作用させるように膝NEの外側の側方に配置される。そして、第2、第3空気袋16、18は、膝NEを挟んで上下に離隔するとともに脚の内側から外側に向けて矯正力を作用させるように大腿部と下腿部の内側にそれぞれ配置される。
【0025】
本実施形態では、空気袋14、16、18は、例えば、外形形状が略楕円状又は略隅丸四角形で偏平状に形成されており、一方の面がシート状体20に取り付けられ、他方の面が装着者の身体にあてがわれる。3個の空気袋14、16、18は、連通部28を介して互いに袋内部を連通するように接続されている。3個の空気袋14、16、18は、装具本体12を展開した状態では、三角形の略頂点位置に配置され、2つの連通部28により第1空気袋14が第2、第3空気袋16、18とそれぞれ接続されており、略V字状に空気袋ユニット34を形成している。連通部28は、例えば、可撓性素材で形成されており、シート状体20を身体に装着する際に該シート状体20の撓みに伴って撓むようになっている。また、連通部28に接続された3個の空気袋14、16、18の相対的な位置をある程度変更できるようになっている。空気袋14、16、18は、袋内部に空気を入れたり、空気を抜いたりすることで空気圧を調整することができる。よって、装着した状態で空気圧を調整して装具のずれを防止したり、病状の経過等によって身体への圧迫力を変更できる。図1に示すように、第2の空気袋16に空気出入口部36が設けられており、常時は弁で閉鎖され、図示しない手動ポンプ又は電動ポンプ等を介して空気を入れると、連通部28を介して3個全ての空気袋14、16、18を同時に調整することができる。なお、空気出入口部36は、身体に接する面側に設けられた例で示しているが、装具を装着した状態でポンプ等に接続した際に身体に当たらないような位置に設けることとしてもよい。空気袋のシート状体との取り付け面側に空気出入口部36を設け、シート状体20の空気出入口部36に対応する位置にポンプの先端を接続する孔を穿孔することとしてもよい。
【0026】
さらに、図4図6に示すように、3個の空気袋14、16、18は、位置変更手段38を介してシート状体20の内面側に脱着自在に装着される。位置変更手段38は、空気袋14、16、18を装具本体12のシート状体20の内面に位置変更自在に取り付ける。位置変更手段38は、例えば、各空気袋14、16、18と、シート状体20の内面と、にそれぞれ設けられて互いに脱着自在に係合する面ファスナ40a、40bからなる。各空気袋14、16、18の一方の面に雄型面ファスナ40aが設けられるとともに、シート状体20の接続部22を除く内面全体に雌型面ファスナ40bが設けられている。位置変更手段により、空気袋14、16、18をシート状体20の内面の任意の位置に脱着自在に取り付けることができる。例えば、図6には空気袋14、16、18の位置変更の例を示しており、右脚の膝の周囲に装着する場合には、図6(a)は、第1空気袋14が膝の外側の側方、第2、第3空気袋16、18が大腿部と下腿部の内側の側方に配置されて3点固定し、図6(b)は、第1空気袋14が膝の内側の側方、第2、第3空気袋16、18が大腿部と下腿部の外側の側方に配置されて3点固定し、図6(c)は、第1空気袋14が膝の裏側、第2、第3空気袋16、18が大腿部と下腿部の前面側に配置されて3点固定するような配置構成と自由に変更できる。3個の空気袋14、16、18の位置を自由に変更させることができるので、図4及び図7(a)〜(e)に示すように、内反膝(図4)、外反膝(図7(a))、反張膝(図7(b))、膝折れ(図7(c))、前十字靭帯損傷(図7(d))、後十字靭帯損傷(図(e))等、その他種々の症状に応じて3点固定する位置を変更して、身体の矯正や補助、保存治療等をすることが可能であり、1つの装具だけでバリエーションに富んだ利用が可能となる。
【0027】
次に、本実施形態に係る関節用装具10の作用について説明する。例えば、関節用装具10を内反膝(O脚)の患者に利用する場合には、図1図6(a)のように3個の空気袋14、16、18を装具本体12に取り付けて、図3に示すように、シート状体20の端部の凹部24が膝頭の位置にくるように膝NEの周囲に巻き付け、接続部22で両端を接続して装着する。装着状態では、第1空気袋14が膝の外側の側方にあてがわれて配置され、第2、第3空気袋16、18は、第1空気袋14とは反対側で該第1空気袋を挟むように膝の上下に離隔して大腿部と下腿部の内側の側方にあてがわれて配置される。必要に応じて、空気袋14、16、18に図示しないポンプ等で空気を入れて圧迫力を調整する。これにより、3個の空気袋14、16、18により3点固定(3点支持)の原理で変形した膝関節を適切に矯正することができる。同時に、空気袋による圧迫であるので装着感が良く、装着時にずれたりしにくく、適切な力での矯正や補助等、装具としての機能を良好に発揮することができる。また、病状の経過に応じて空気袋14、16、18の空気圧を次第に弱めたりして調整することもできる。
【0028】
さらに、本実施形態に係る関節用装具10は、位置変更手段38により装具本体12に対して3個の空気袋14、16、18の位置を自由に変更して取り付けることができ、例えば、図7(a)〜(e)に示すように、種々の病状に対応して矯正や補助等を図るように適用できる。なお、図7(a)では、装着状態の正面図を示しており、図7(b)〜(e)では、装着状態の側面図を示している。具体的には、図7(a)に示すように、外反膝(X脚)を矯正する態様では、第1空気袋14が膝NEの内側の側方にあてがわれるような位置に設置され、第2、第3空気袋16、18は、第1空気袋14とは反対側で該第1空気袋を挟むように膝NEの上下に離隔して大腿部と下腿部の外側の側方にあてがわれるような位置に設置され、3点を圧迫支持する。図7(b)に示すように、反張膝を矯正する態様では、第1空気袋14が膝NEの裏面側にあてがわれるような位置に設置され、第2、第3空気袋16、18は、第1空気袋14とは反対側で該第1空気袋を挟むように膝NEの上下に離隔して大腿部と下腿部の前面にあてがわれるような位置に設置され、3点を圧迫支持する。図7(c)に示すように、膝折れを矯正する態様では、第1空気袋14が膝頭にあてがわれるような位置に設置され、第2、第3空気袋16、18は、第1空気袋14とは反対側で該第1空気袋を挟むように膝NEの上下に離隔して大腿部と下腿部の裏面にあてがわれるような位置に設置され、3点を圧迫支持する。図7(d)に示すように、前十字靭帯損傷を保護する態様では、第1空気袋14が膝NEのやや下方の前面にあてがわれるような位置に設置され、第2、第3空気袋16、18は、第1空気袋14とは反対側で該第1空気袋を挟むように膝NEの上下に離隔して大腿部と下腿部の裏面にあてがわれるような位置に設置され、3点を圧迫支持する。図7(e)に示すように、後十字靭帯損傷を保護する態様では、第1空気袋14が膝裏のやや下方にあてがわれるような位置に設置され、第2、第3空気袋16、18は、第1空気袋14とは反対側で該第1空気袋を挟むように膝NEの上下に離隔して大腿部と下腿部の前面にあてがわれるような位置に設置され、3点を圧迫支持する。なお、上記した例の他に、例えば、内側側副靭帯損傷、外側側副靭帯損傷等の靭帯損傷や変形性関節症等、その他の任意の症状にあわせて適宜空気袋の位置を変更して使用することができる。このように空気袋14、16、18の設置位置を変更することで様々な症状等に応じた位置で3点固定を行うことで、確実な矯正や補助等の装具として広く実用できる。
【0029】
なお、装具本体12や空気袋14、16、18の構成は、上記した構成に限らない。例えば、3個の空気袋14、16、18は、上記のように連通部28で接続されていなくてもよく、それぞれが独立した構成でもよい。また、3個の空気袋14、16、18と連通部28とを着脱自在に接続できる構成としてもよい。また、3個の空気袋14、16、18は、装具本体12に一体的に固定されていても良い。また、3点固定する空気袋14、16、18の他に、補助的に保持するための他の空気袋を取り付けることとしてもよい。すなわち、空気袋は、3点固定のために3個を取り付けた構成でよいが、必要に応じて3個以上取り付けることとしてもよい。
【0030】
また、空気袋14、16、18の形状や大きさは任意でよく、身体にあてがわれる位置や症状等に応じて変更するようにしてもよい。例えば、図8に示すように、第1空気袋14には、略円形状で中央に膝に対応する透孔42が設けられている。例えば、図7(c)のように、関節用装具10が膝折れ矯正用として利用される場合に、第1空気袋14が膝頭に対応する位置にあてがわれて配置される際に有利であり、膝頭を適切に圧迫させることができる。なお、関節用装具10が肘の周囲に装着される態様の場合には、肘頭に対応する位置にあてがわれて配置される際に有利である。また、例えば、図9に示すように、3個の空気袋14、16、18は四角形状に形成してもよい。この場合、例えば、図7(d)(e)のように、関節用装具10が反張膝用や後十字靭帯損傷用として利用される場合などに好適である。
【0031】
また、図10図11に示すように、装具本体12は、身体に装着した状態で外面から補助的に締め付けるベルト44と、ベルト44をシート状体20に連係して締着する連結用リング46や締着用金具48等を有する構成としても良い。ベルト44に連係される連結用リング46や締着用金具48は、例えば、金属製又はプラスチック製の角環や丸環、あるいは特許第4239035号のような締着用金具を利用しても良い。図10図11では、連結用リング46や締着用金具48は、例えば、装具本体12を膝の周囲に装着した際に脚の内外側方に沿って縦方向に所定間隔で複数個配列して取り付けられており、症状等に応じてベルト44の締め付け位置や方向を任意に変更できる。装具本体12を膝の周囲に装着した状態でさらに外面側からベルト44で締め付けることで、空気袋の身体への密着度を増して矯正力を補助し、より強い圧迫力で矯正等を行うことができる。
【0032】
なお、関節用装具10は、上記した実施形態では、膝に適用するもので説明したが、膝用のものに限らず、例えば、肘や手首、足首等その他関節に装着して矯正や身体機能の補助等を行う構成でもよい。
【0033】
以上説明した本発明の関節用装具は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の関節用装具は、膝、肘、手首等の関節の変形の矯正や関節機能の補助、痛みの緩和、保存的治療等で医療やリハビリテーション等に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0035】
10 関節用装具
12 装具本体
14、16、18 空気袋
20 シート状部材
28 連通部
36 空気出入口
38 位置変更手段
40 a 雄型面ファスナ、b 雌型面ファスナ
42 透孔
図1
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図9
図10
図11