特許第6238747号(P6238747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センブラント リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6238747-クリープ腐食を減少させる方法 図000004
  • 特許6238747-クリープ腐食を減少させる方法 図000005
  • 特許6238747-クリープ腐食を減少させる方法 図000006
  • 特許6238747-クリープ腐食を減少させる方法 図000007
  • 特許6238747-クリープ腐食を減少させる方法 図000008
  • 特許6238747-クリープ腐食を減少させる方法 図000009
  • 特許6238747-クリープ腐食を減少させる方法 図000010
  • 特許6238747-クリープ腐食を減少させる方法 図000011
  • 特許6238747-クリープ腐食を減少させる方法 図000012
  • 特許6238747-クリープ腐食を減少させる方法 図000013
  • 特許6238747-クリープ腐食を減少させる方法 図000014
  • 特許6238747-クリープ腐食を減少させる方法 図000015
  • 特許6238747-クリープ腐食を減少させる方法 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238747
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】クリープ腐食を減少させる方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20171120BHJP
   C23C 18/31 20060101ALI20171120BHJP
   H05K 3/24 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H05K3/28 C
   C23C18/31 Z
   H05K3/24 D
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-538259(P2013-538259)
(86)(22)【出願日】2011年11月9日
(65)【公表番号】特表2014-501039(P2014-501039A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】GB2011001579
(87)【国際公開番号】WO2012066273
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年8月29日
【審判番号】不服2016-15880(P2016-15880/J1)
【審判請求日】2016年10月25日
(31)【優先権主張番号】1019302.7
(32)【優先日】2010年11月15日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513113585
【氏名又は名称】センブラント リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100153903
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明
(72)【発明者】
【氏名】ヴォン ウェルネ,ティモシー
【合議体】
【審判長】 冨岡 和人
【審判官】 中川 隆司
【審判官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−519728(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/039324(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/110258(WO,A1)
【文献】 特開2009−155668(JP,A)
【文献】 特開2007−335541(JP,A)
【文献】 特開平9−40890(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/064329(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K3/28,C23C18/31,H05K3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路基板上のクリープ腐食を減少させる方法であって、
前記プリント回路基板は、基板、前記基板の少なくとも1面に配置された複数の導体トラック、前記複数の導体トラックの少なくとも第1領域を被覆するはんだマスク、および前記複数の導体トラックの少なくとも第2領域を被覆する表面仕上げを備え、
前記表面仕上げは、無電解銀(ImAg)、無電解ニッケル/無電解金(ENIG)、無電解ニッケル/無電解パラジウム/無電解金(ENEPIG)、または無電解すず(ImSn)であり、
前記方法は、プラズマ重合によってフッ化炭化水素を前記はんだマスクの少なくとも一部および前記表面仕上げの少なくとも一部へ積層するステップを有する、
方法。
【請求項2】
前記表面仕上げは無電解銀(ImAg)である、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記はんだマスクはさらに、前記基板の領域を覆う、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、
前記プラズマ重合フッ化炭化水素を積層した後に、少なくとも1つの電気部品を少なくとも1つの前記導体トラックに接続するステップを有する、
請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、
前記少なくとも1つの電気部品を少なくとも1つの前記導体トラックに接続した後、プラズマ重合によってフッ化炭化水素を追加積層するステップを有する、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記追加積層したプラズマ重合フッ化炭化水素のコートは、前記プリント回路基板および前記少なくとも1つの電気部品を形状適合的にコートする、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、
プラズマ重合によってフッ化炭化水素を、前記はんだマスクまたは前記表面仕上げで覆われていない前記複数の導体トラックの第3領域上に少なくとも積層するステップを有する、
請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記複数の導体トラックは銅を含む、請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
基板、
前記基板の少なくとも1面に配置され複数の導体トラック、
前記複数の導体トラックの少なくとも第1領域を被覆するはんだマスク、
前記複数の導体トラックの少なくとも第2領域を被覆し、無電解銀(ImAg)、無電解ニッケル/無電解金(ENIG)、無電解ニッケル/無電解パラジウム/無電解金(ENEPIG)、または無電解すず(ImSn)である、表面仕上げ、
前記はんだマスクの少なくとも一部および前記表面仕上げの少なくとも一部の上に形成されたプラズマ重合フッ化炭化水素コート、
を備える被覆プリント回路基板。
【請求項10】
前記表面仕上げは無電解銀(ImAg)である、
請求項9記載の被覆プリント回路基板。
【請求項11】
前記はんだマスクはさらに、前記基板の領域を覆う、
請求項9または10記載の被覆プリント回路基板。
【請求項12】
前記プラズマ重合フッ化炭化水素コートを介して少なくとも1つの前記導体トラックに接続された少なくとも1つの電気部品を備える、
請求項9から11のいずれか1項記載の被覆プリント回路基板。
【請求項13】
前記プリント回路基板および前記少なくとも1つの電気部品を形状適合的にコートするプラズマ重合フッ化炭化水素追加コートを備える、
請求項12記載の被覆プリント回路基板。
【請求項14】
前記はんだマスクまたは前記表面仕上げによってコートされていない前記複数の導体トラックの少なくとも第3領域上にプラズマ重合フッ化炭化水素コートを備える、
請求項9から13のいずれか1項記載の被覆プリント回路基板。
【請求項15】
前記複数の導体トラックは銅を含む、
請求項9から14のいずれか1項記載の被覆プリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板上のクリープ腐食を減少させる方法、被覆プリント回路基板、および特定のポリマーを用いてクリープ腐食を減少させることに関する。
【背景技術】
【0002】
クリープ腐食は、エレクトロニクス産業における主な課題である。エレクトロニクス産業におけるクリープ腐食の影響が増大していることは、様々な要因の結果であると考えられている。例えば鉛フリーはんだの使用が増えていること、部品の小型化、電子部品がより厳しい環境に曝されるようになっていること、などである。
【0003】
クリープ腐食は、固体腐食生成物(典型的には金属硫化物)が表面へ移動する質量移転プロセスである。これは特にプリント回路基板にとって問題となる。この場合、腐食生成物はプリント回路基板上のはんだマスク面上に移動する。これにより、プリント回路基板上の隣接する導体トラック間で回路ショートが生じ、製品の欠陥となる。
【0004】
クリープ腐食のメカニズムはよく分かっていないが、硫黄濃度が高い環境において特に問題となることが知られている。この場合、プリント回路基板は6週間以内で故障する可能性がある。水蒸気も要因の1つであると考えられている。
【0005】
クリープ腐食を減少させる様々な試みがなされている。この試みには以下のようなものがある:形状適応コートを適用する;組立前のプリント回路基板を洗浄する;プリント回路基板の表面仕上げを入念に選択する;プリント回路基板上のはんだ付けしていない導体トラックに全て蓋をする。
【0006】
これら各提案手法は、少なくともいくつかの場合において上手くいっておらず、実際には状況をさらに悪くする場合もある。したがってエレクトロニクス産業において、より信頼性高く効果的にクリープ腐食を減少させる方法に対する要求がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者等は、プラズマ重合フッ化炭化水素を用いてクリープ腐食を減少させることができることを発見した。
【0008】
したがって本発明は、プリント回路基板上のクリープ腐食を減少させる方法を提供する。このプリント回路基板は、基板、前記基板の少なくとも1面に配置された複数の導体トラック、前記複数の導体トラックの少なくとも第1領域を被覆するはんだマスク、および前記複数の導体トラックの少なくとも第2領域を被覆する表面仕上げを備える。前記方法は、プラズマ重合によってフッ化炭化水素を前記はんだマスクの少なくとも一部および前記表面仕上げの少なくとも一部へ積層するステップを有する。
【0009】
本発明はさらに、前記本発明に係る方法によって得られる被覆プリント回路基板を提供する。
【0010】
本発明はさらに、基板、前記基板の少なくとも1面に配置された複数の導体トラック、前記複数の導体トラックの少なくとも第1領域を被覆するはんだマスク、前記複数の導体トラックの少なくとも第2領域を被覆する表面仕上げ、および前記はんだマスクの少なくとも一部と前記表面仕上げの少なくとも一部を被覆するプラズマ重合フッ化炭化水素を備える被覆プリント回路基板を提供する。
【0011】
本発明はさらに、プラズマを用いてプリント回路基板のクリープ腐食を減少させる方法を提供する。前記プリント回路基板は、基板、前記基板の少なくとも1面に配置された複数の導体トラック、前記複数の導体トラックの少なくとも第1領域を被覆するはんだマスク、および前記複数の導体トラックの少なくとも第2領域を被覆する表面仕上げを備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】硫黄土テストから7日後における例1のプリント回路基板の一部を示す。視認できるクリープ腐食は非常に僅かである。
図2】硫黄土テストから7日後における例2のプリント回路基板の一部を示す。視認できるクリープ腐食は非常に僅かである。
図3】硫黄土テストから7日後における例3のプリント回路基板の一部を示す。視認できるクリープ腐食は非常に僅かである。
図4】硫黄土テストから7日後における例4のプリント回路基板の一部を示す。視認できるクリープ腐食は非常に僅かである。
図5】硫黄土テストから7日後における例5のプリント回路基板の一部を示す。視認できるクリープ腐食は非常に僅かである。
図6】硫黄土テストから7日後における例6のプリント回路基板の一部を示す。クリープ腐食は視認できない。
図7】硫黄土テストから7日後における例7のプリント回路基板の一部を示す。視認できるクリープ腐食は非常に僅かである。
図8】硫黄土テストから7日後における比較例1のプリント回路基板の一部を示す。大きなクリープ腐食を視認できる。
図9】硫黄土テストから7日後における比較例2のプリント回路基板の一部を示す。大きなクリープ腐食を視認できる。
図10】硫黄土テストから7日後における比較例3のプリント回路基板の一部を示す。大きなクリープ腐食を視認できる。
図11】硫黄土テストから7日後における比較例4のプリント回路基板の一部を示す。大きなクリープ腐食を視認できる。
図12】本発明に係る方法によってコートする前のプリント回路基板例の断面を示す。
図13】被覆プリント回路基板例の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る方法は、プラズマ重合によってプラズマ重合フッ化炭化水素をプリント回路基板上に積層するステップを含む。プリント回路基板は、基板、前記基板の少なくとも1面に配置された複数の導体トラック、前記複数の導体トラックの少なくとも第1領域を被覆するはんだマスク、前記複数の導体トラックの少なくとも第2領域を被覆する表面仕上げを備える。
【0014】
特に本方法は、前記プラズマ重合フッ化炭化水素を、前記はんだマスクの少なくとも一部の上、前記表面仕上げの少なくとも一部の上、および前記はんだマスクまたは前記表面仕上げによって被覆されていない前記導体トラックの第3領域上へ少なくとも積層するステップを含むことができる。
【0015】
プラズマ重合フッ化炭化水素は通常、前記はんだマスクの表面領域上の75%以上、望ましくは90%以上へ積層される。プラズマ重合フッ化炭化水素は、前記はんだマスクの表面領域上の実質的にすべてに対して積層することができる。
【0016】
プラズマ重合フッ化炭化水素は通常、前記表面仕上げの表面領域上の75%以上、望ましくは90%以上へ積層される。プラズマ重合フッ化炭化水素は、前記表面仕上げの表面領域上の実質的にすべてに対して積層することができる。
【0017】
前記複数の導体トラックは、前記はんだマスクまたは表面仕上げでコートされない第3領域を備えることができる。このはんだマスクまたは表面仕上げでコートされない領域は、一般に前記表面仕上げまたははんだマスク内の欠陥である。はんだマスクまたは表面仕上げでコートされていない導体トラックの領域が存在しないことが望ましい。はんだマスクまたは表面仕上げでコートされていない複数の導体トラックの第3領域が存在する場合、プラズマ重合フッ化炭化水素が第3領域の少なくとも一部の上に積層される。プラズマ重合フッ化炭化水素は、はんだマスクもしくは表面仕上げでコートされておらず、または基板に取り付けられた前記導体トラックの表面領域上の75%以上に積層することが望ましく、より望ましくは90%以上に積層される。プラズマ重合フッ化炭化水素は、はんだマスクもしくは表面仕上げでコートされておらず、または基板に取り付けられた前記複数の導体トラックの実質的に全表面上に積層することができる。
【0018】
一般にプラズマ重合フッ化炭化水素は、導体トラックで覆われていない基板の少なくとも一部の上に積層される。プラズマ重合フッ化炭化水素は通常、導体トラックによって覆われていない基板の表面上の75%以上、望ましくは90%以上に積層される。
【0019】
プラズマ重合ポリマーは、従来の重合手法によっては作成することができない、ポリマーのユニークな種類の1つである。プラズマ重合ポリマーは、非常に不規則な構造を有し、高度に交差結合しており、ランダム分岐し、反応場を保持する。したがってプラズマ重合ポリマーは、当業者が知っている従来の重合手法によって作成されたポリマーとは化学的に異なる。これら化学的および物理的違いは、例えば” Plasma Polymer Films, Hynek Biederman,Imperial College Press 2004”に記載されている。
【0020】
プラズマ重合フッ化炭化水素は通常、直線および/または分岐ポリマーであり、予備的に環状部分を含む。この環状部分は、脂環式環または芳香環であることが望ましく、芳香環であることがより望ましい。プラズマ重合フッ化炭化水素は、環状部分を含まないことが望ましい。プラズマ重合フッ化炭化水素は、分岐ポリマーであることが望ましい。
【0021】
プラズマ重合フッ化炭化水素は、N、O、Si、Pから選択されたヘテロ原子を予備的に含む。ただしプラズマ重合フッ化炭化水素は、N、O、Si、Pのヘテロ原子を含まないことが望ましい。
【0022】
酸素含有プラズマ重合フッ化炭化水素は、カルボニル部分を含むことが望ましく、エステルおよび/またはアミド部分を含むことがより望ましい。酸素含有プラズマ重合フッ化炭化水素ポリマーの望ましい種類は、プラズマ重合フルオロアクリル酸ポリマーである。
【0023】
窒素含有プラズマ重合フッ化炭化水素は、ニトロ、アミン、アミド、イミダゾール、トリアゾール、および/またはテトラゾール部分を含むことが望ましい。
【0024】
プラズマ重合フッ化炭化水素は、分岐してヘテロ原子を含まないことが望ましい。
【0025】
本発明において用いるプラズマ重合フッ化炭化水素は、プラズマ重合技術によって得ることができる。プラズマ重合は一般に、薄膜コートを積層する有効な技術である。プラズマ重合は一般に、優れた品質のコートを提供する。重合反応はその場所で起こるからである。その結果、プラズマ重合ポリマーは一般に、僅かな陥没で、構成要素下に、特定環境下においては通常の液体コート技術が達し得ない方向へ積層する。
【0026】
プラズマ積層は、イオン化ガスイオン、電子、原子、および/または中性種を含むガスプラズマを生成する反応器内で実施することができる。反応器は、反応室、真空システム、および1以上のエネルギー源を備える。ただし、ガスプラズマを生成するように構成された任意の適当なタイプの反応器を使用することができる。エネルギー源は、1以上の材料をガスプラズマへ変換するように構成された任意のデバイスを含む。エネルギー源は、ヒータ、高周波生成器、および/またはマイクロ波生成器を備えることが望ましい。
【0027】
本発明に係る方法において、プリント回路基板は、反応器の反応室内に配置することができる。真空システムを用いて、反応室を10−3〜10mbarの範囲に減圧することができる。1以上の材料は反応室内に注入され、エネルギー源は安定したガスプラズマを生成する。1以上の前駆体化合物を、ガスおよび/または液体として反応室内のガスプラズマへ導入する。ガスプラズマへ導入されると、前駆体化合物はイオン化され、および/または分解して、複数の活性種をプラズマ内で生成する。これが重合してポリマーコートを生成する。パルスプラズマシステムを用いることもできる。
【0028】
プラズマ重合フッ化炭化水素は、フッ素原子を含む炭化水素材料である1以上の前駆体化合物のプラズマ重合によって得ることが望ましい。フッ素原子を含む望ましい炭化水素材料は、パーフルオロアルカン、パーフルオロアルケン、ペルフルオロアルキン、フルオロアルカン、フルオロアルケン、フルオロアルキンである。例えばCF、C、C、C、C、Cである。
【0029】
プラズマ重合フッ化炭化水素の性質と組成は通常、以下の1以上の条件に依拠する。(i)選択したプラズマガス;(ii)使用する特定の前駆体化合物;(iii)前駆体化合物の量(前駆体化合物の圧力および流量の組み合わせによって決定することができる);(iv)前駆体化合物の比;(v)前駆体化合物の順序;(vi)プラズマ圧力;(vii)プラズマ駆動周波数;(viii)パルス幅タイミング;(ix)コート時間;(x)プラズマパワー(ピークおよび/または平均プラズマパワーを含む);(xi)反応室電極配置;および/または(xii)到着する部品の準備。
【0030】
プラズマ駆動周波数は通常、1kHz〜1GHzである。プラズマパワーは通常、500〜10000Wである。流量は通常、5〜2000sccmである。動作圧力は通常、10〜500mTorrである。コート時間は通常、10秒〜20分である。
【0031】
当業者は、望ましい条件がプラズマ反応室のサイズと形状に依拠することを理解するであろう。したがって、使用する特定のプラズマ反応室によっては、当業者が動作条件を変更することが望ましい場合もある。
【0032】
本発明において用いるプラズマ重合フッ化炭化水素コートは通常、平均厚さ1nm〜10μmを有し、望ましくは1nm〜5μmであり、より望ましくは5nm〜500nmであり、より望ましくは10nm〜100nmであり、さらに望ましくは25nm〜75nm、例えば約50nmである。コートの厚さは、実質的に均一であってもよいし、場所によって異なっていてもよい。
【0033】
本発明に係る方法によってコートされるプリント回路基板は、基板、前記基板の少なくとも1面に配置された複数の導体トラック、前記複数の導体トラックの少なくとも第1領域を被覆するはんだマスク、および前記複数の導体トラックの少なくとも第2領域を被覆する表面仕上げを備える。プリント回路基板は一般に、最初は電気部品を有していない。
【0034】
当業者は、プリント回路基板の目的に応じて、複数の導体トラックの適切な形状と構成を選択することができる。導体トラックは通常、全長に沿って基板表面に取り付けられる。これに代えて、2点以上において導体トラックを基板に取り付けることもできる。例えば導体トラックは、全長に沿ってはいないが2点以上において基板に取り付けられた銅ワイヤであってもよい。
【0035】
導体トラックは通常、当業者が知っている任意の適当な方法を用いて基板上に形成される。望ましい方法において、導体トラックは「減算的(サブトラクティブ」」技術を用いて基板上に形成される。この方法においては通常、導体材料層が基板表面にボンドされ、導体材料の不要部分が除去され、所望する導体トラックを残す。導体材料の不要部分は通常、化学エッチング、フォトエッチング、および/またはミリングによって基板から除去される。他の手法においては、導体トラックは「加算的」技術を用いて基板上に形成される。例えば、電気めっき、反転マスクを用いた積層、および/または任意の形状制御積層プロセスである。
【0036】
導体トラックは通常、金、タングステン、銅、銀、および/またはアルミニウムであり、望ましくは金、タングステン、銅、銀、および/またはアルミニウムであり、より望ましくは銅である。導体トラックは銅で構成されるか、または原則として銅で構成される。
【0037】
プリント回路基板は一般に、絶縁材料を備える。基板は通常、基板がプリント回路基板の回路とショートすることを防ぐ、任意の適当な絶縁材料を備える。
【0038】
基板は、エポキシ積層材料、合成樹脂ボンド紙、エポキシ樹脂ボンドガラス織物(ERBGH)、複合エポキシ材料(CEM)、PTFE(テフロン)、またはその他のポリマー材料、フェノールコットン紙、シリコン、ガラス、セラミック、紙、ボール紙、天然および/または合成木材ベース材料、および/またはその他の適当な布地を含むことが望ましい。基板はさらに予備的に、難燃性材料を含む。例えばFlame Retardant 2(FR−2)および/またはFlame Retardant 4(FR−4)である。基板は、絶縁材料の単一層または同一もしくは異なる絶縁材料の複数層を含んでいてもよい。
【0039】
はんだマスクは、少なくとも導体トラックの第1領域をコートすることができる。はんだマスクは一般に、はんだが導体トラックを架橋しないようにし、これにより回路ショートを防ぐことを意図している。はんだマスクは通常、エポキシはんだマスク、液体感光性はんだマスク(LPSM)インク、またはドライフィルム感光性はんだマスク(DFSM)である。これらはんだマスクは、当業者が知っている技術により、プリント回路基板に対して容易に塗布することができる。
【0040】
導体トラックの少なくとも第1領域をコートするはんだマスクは、さらに基板領域をコートする。この場合はんだマスクは、導体トラックの少なくとも一部のエッジを覆い、基板の隣接領域を覆う。クリープ腐食は一般に、この状況において特に激しい。プラズマ重合フッ化炭化水素は、基板領域を覆うかまたは導体トラックの少なくとも一部のエッジを覆い基板の隣接領域を覆うはんだマスクの一部の上に積層することが望ましい。
【0041】
表面仕上がりは、導体トラックの少なくとも第2領域をコートすることができる。表面仕上がりは通常、無電解銀(ImAg)、無電解ニッケル/無電解金(ENIG)、プリフラックス(OSP)、無電解ニッケル/無電解パラジウム/無電解金(ENEPIG)、または無電解すず(ImSn)である。表面仕上げは、無電解銀(ImAG)またはプリフラックス(OSP)であることが望ましく、無電解銀(ImAg)であることがより望ましい。
【0042】
予備的に、本発明に係る方法は、プラズマ重合フッ化炭化水素を積層した後に、少なくとも1つの電気部品を少なくとも1つの導体トラックに接続するステップを含む。上記少なくとも1つの電気部品は、上記少なくとも1つの導体トラックと、プラズマ重合フッ化炭化水素を介して接続することができる。
【0043】
電気部品は、はんだ接合、溶接、またはワイヤ接続を介して、少なくとも1つの導体トラックと接続することが望ましい。電気部品がプラズマ重合フッ化炭化水素を介して接続する場合、はんだ接合、溶接、またはワイヤ接続は、プラズマ重合フッ化炭化水素に隣接することが望ましい。WO2008/102113(その内容は参照により本願に組み込まれる)に記載されているように、プラズマ重合フッ化炭化水素を介して、はんだ付け、溶接、またはワイヤ接続することができる。
【0044】
電気部品は、プリント回路基板の任意の適当な回路素子であってもよい。電気部品は、抵抗器、キャパシタ、トランジスタ、ダイオード、増幅器、アンテナ、または発振器であることが望ましい。任意の適当な数の電気部品および/またはその組み合わせを最終電気製品に接続することができる。
【0045】
コートしたプリント回路基板を組み立てた後、すなわち全ての必要な電気部品を接続した後、プラズマ重合によってさらにプラズマ重合フッ化炭化水素コートを積層することが望まれる場合がある。このコートは、形状適合コートである。これにより、環境的保護および物理的保護を提供することができる。
【0046】
本発明はまた、被覆プリント回路基板に関する。被覆プリント回路基板の実施例は、上述の方法によって構成することができる。この被覆プリント回路基板は、基板、前記基板の少なくとも1面に配置された複数の導体トラック、前記複数の導体トラックの少なくとも第1領域を被覆するはんだマスク、前記複数の導体トラックの少なくとも第2領域を被覆する表面仕上げ、および前記はんだマスクの少なくとも一部と前記表面仕上げの少なくとも一部と前記はんだマスクおよび表面仕上げによって覆われていない前記複数の導体トラックの第3領域を被覆するプラズマ重合フッ化炭化水素備えることができる。基板、導体トラック、はんだマスク、表面仕上げ、およびプラズマ重合フッ化炭化水素は、上述のように構成することができる。
【0047】
被覆プリント回路基板の実施例はさらに、プラズマ重合フッ化炭化水素コートを介して少なくとも1つの導体トラックに接続された電気部品を備えることができる。電気部品と導体トラックへの接続は、上述のように構成することができる。
【0048】
本発明はまた、プラズマ重合フッ化炭化水素を用いてプリント回路基板のクリープ腐食を減少させることに関する。これは上述のように構成することができる。
【0049】
本発明の側面を、図12と13に示す実施形態を参照して説明する。同様の参照符号は同じまたは同様の構成要素を示す。
【0050】
図12は、コートする前のプリント回路基板の例を示す。同プリント回路基板は、基板1、少なくとも基板の一方の表面3上に配置された複数の導体トラック2、複数の導体トラックの第1領域5をコートするはんだマスク4、および複数の導体トラックの第2領域7をコートする表面仕上げ6を備える。はんだマスクは予備的に、基板の領域8をコートする。
【0051】
図13は、被覆プリント回路基板の例を示す。同プリント回路基板は、基板1、少なくとも基板の一方の表面3上に配置された複数の導体トラック2、複数の導体トラックの第1領域5をコートするはんだマスク4、複数の導体トラックの第2領域7をコートする表面仕上げ6、およびはんだマスクの少なくとも一部10と表面仕上げの少なくとも一部11と予備的にはんだマスクまたは表面仕上げで覆われていない導体トラックの第3領域12を少なくとも覆うプラズマ重合フッ化炭化水素コート9を備える。プラズマ重合フッ化炭化水素はさらに予備的に、基板の少なくとも一部13を覆う。
【0052】
本発明の側面を、以下の実施例を参照して説明する。
【実施例】
【0053】
硫黄土テスト法
硫黄土テスト法は、例えばクリープ腐食が非常に激しい粘土細工スタジオなどの状況をシミュレートする技術である。この方法は、当該分野においてよく知られた、クリープ腐食の影響を評価する技術である。本方法は、硫黄化合物源として硫黄含有土を用いる(例えば、Creep corrosion on lead−free printed circuit boards in high sulfur environments,Randy Schueller,Published in SMTA Int’l Proceedings,Orlando,FL,Oct 2007を参照されたい)。
【0054】
plasteline硫黄含有モデリング粘土(Chavantが販売)を水で濡らし、容器内を加熱した。テスト用プリント回路基板を、熱した土とともに即座に容器内に配置した。土からの硫黄化合物がプリント回路基板の表面上に凝縮し、クリープ腐食に適した状態を作り出した。
【0055】
コートA
プリント回路基板をプラズマ反応室内に導入した。反応室を、50mTorrの動作圧力まで減圧し、Cガスを1000sccmの流量で導入した。ガスを30秒間反応室内に流し、13.56MHz周波数および2.4kWパワーでプラズマ生成器をONにした。プリント回路基板を活性プラズマに7分間晒し、その後にプラズマ生成器をOFFにして反応室を大気圧に戻し、コートされたプリント回路基板を反応室から取り出した。
【0056】
コートB
プリント回路基板をプラズマ反応室内に導入した。反応室を、70mTorrの動作圧力まで減圧し、Cガスを750sccmの流量で導入した。ガスを30秒間反応室内に流し、40MHz周波数および7kWパワーでプラズマ生成器をONにした。プリント回路基板を活性プラズマに10分間晒し、その後にプラズマ生成器をOFFにして反応室を大気圧に戻し、コートされたプリント回路基板を反応室から取り出した。
【0057】
コートC
プリント回路基板をプラズマ反応室内に導入した。反応室を、60mTorrの動作圧力まで減圧し、Cガスを750sccmの流量で導入した。第2流量コントローラを介して、第2ガスであるヘリウムを100sccmの流量で反応室に追加した。混合ガスを30秒間反応室内に流し、40MHz周波数および7kWパワーでプラズマ生成器をONにした。プリント回路基板を活性プラズマに10分間晒し、その後にプラズマ生成器をOFFにして反応室を大気圧に戻し、コートされたプリント回路基板を反応室から取り出した。
【0058】
Cテスト用プリント回路基板の評価
銅トラックとはんだマスクを有する標準の空プリント回路基板から開始して、一連のテスト用プリント回路基板を構成した。これらは以下の表1および2に示す特徴を有する。
【0059】
特に、無電解銀(ImAg)またはプリフラックス(OSP)の表面仕上げを、予備的に各プリント回路基板へ適用した。コートAを予備的にプリント回路基板上に積層した。次に電気部品を予備的にプリント回路基板へ接続した。最後にコートA、コートB、またはコートCの被覆を予備的にプリント回路基板と電気部品の上へ適用した。
【表1】
【表2】
【0060】
例1〜7と比較例1〜4のプリント回路基板を、硫黄土テストに7日間供した。7日後、プリント回路基板を除去し、クリープ腐食の有無を検査した。
【0061】
図1〜11は、例1〜7および比較例1〜4のプリント回路基板の同じ部分を示す。表1と2に示すように、プリント回路基板は以下のように分類される:
クリープ腐食なし(++)
低レベルのクリープ腐食(+)
高レベルのクリープ腐食(−−)
【0062】
結論
電気部品を実装する前にプラズマ重合フッ化炭化水素をプリント回路基板へ適用することにより、クリープ腐食を効果的に抑制することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13