(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内部昇降操作具の操作変位から前記作業装置の高さに対応する動作目標値を算定する目標値算定部が備えられ、前記上昇時PTO自動制御部は前記動作目標値に基づいて前記上昇時PTO制御を実行する請求項1又は2に記載の作業車。
前記内部昇降操作具は昇降位置調整用操作体と強制昇降操作体とからなり、前記昇降位置調整用操作体の操作変位に対応する高さ位置に前記作業装置が位置決めされ、前記強制昇降操作体は、前記作業装置を前設定された上昇位置に上昇させる上昇操作信号と前記上方位置から元の位置に下降させる下降操作信号を作り出す請求項1から6のいずれか1項に記載の作業車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業装置の連結具合や昇降状態をチェックするために、機体外部に出た運転者が機体外部に設けられた操作具を用いて作業装置の昇降を行うことができる作業車が登場している。このような機体外部から操作される昇降操作具を備えた作業車においても、特許文献1で示されたような牽制機能が適切に組み込まれることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による作業車は、機体と、前記機体に作業装置を昇降可能に連結するリンク機構と、前記リンク機構を昇降させる昇降アクチュエータと、運転席から人為操作される内部昇降操作具と、機体外部から人為操作される外部昇降操作具と、作業装置に動力を伝達するPTO機構と、前記PTO機構に設けられたPTOクラッチと、前記PTOクラッチの入り切りのために人為操作されるPTOクラッチ操作具と、前記内部昇降操作具の操作に応答して前記作業装置を昇降させる昇降動作指令を出力するとともに、前記外部昇降操作具の操作に応答して前記作業装置を昇降させる昇降動作指令を出力する昇降動作機器制御部と、前記PTOクラッチ操作具の操作に応答して前記PTOクラッチに対する入り切り動作指令を出力するPTO制御部と、前記外部昇降操作具の操作に応答して前記PTO制御部に前記PTOクラッチに対する切り動作指令の出力を指令するPTO強制停止制御部と
、前記内部昇降操作具による前記作業装置の所定高さ以上の上昇に応答して前記PTOクラッチへの切り動作指令を出力するとともに、所定高さ以下の下降に応答して前記PTOクラッチへの入り動作指令を出力する上昇時PTO制御を有する上昇時PTO自動制御部と、を備え、前記上昇時PTO自動制御部は、前記外部昇降操作具の操作に応答して前記PTOクラッチ操作具が人為操作されるまで前記上昇時PTO制御を停止する。
【0006】
この構成によれば、作業装置に対する昇降操作が、運転席に着座した運転者により内部昇降操作具を用いて操作されるだけでなく、機体外部に出た運転者または作業者により外部昇降操作具を用いても操作可能となる。しかも、外部昇降操作具を操作した場合には、強制的にPTOクラッチが切り動作される牽制機能が働くので、機体外部で外部昇降操作具を操作している者が動力駆動しながら昇降する作業装置によって不都合な影響を受けることはない。
さらに、この構成では、作業装置が上昇するとPTOクラッチが遮断されるとともに再び作業装置が下降するとPTOクラッチが接続されるように、作業装置への動力伝達が自動制御される。これにより、作業装置が耕耘装置などでは、上昇時に回転ロータリによって土などが撒き散らされる不都合やロータリを停止させた状態で地面に突入させるような不都合が回避される。そのような自動制御下においても、外部昇降操作具の操作によって作業装置を所定高さ以下に下降させてもPTOクラッチは接続されないので、外部昇降操作具の操作を伴う作業装置の点検時において不測に作業装置が駆動するような不都合も回避される。この場合においても、外部昇降操作具を一旦操作すると、運転席に戻ってPTOクラッチ操作具を人為操作しない限り、PTOクラッチの接続、つまり作業装置の駆動は禁止される。
【0007】
本発明では、外部昇降操作具の操作によってPTOクラッチが強制的に遮断されるが、その復帰(PTOクラッチの接続)は、慎重に行わなければならない。つまり、PTOクラッチの再接続には、再度PTOクラッチを接続するという作業者の意思の裏付けが必要である。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記PTO強制停止制御部は、前記PTOクラッチ操作具が人為操作されると、前記PTOクラッチに対する切り動作指令を解除する。この構成では、外部小操作具の操作によって一旦PTOクラッチが遮断されると、PTOクラッチを再接続するためには、運転席に戻ってPTOクラッチ操作具を人為操作する必要があり、これにより作業者のPTOクラッチを再接続しようとする意思が確認される。
【0009】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記内部昇降操作具の操作変位から前記作業装置の高さに対応する動作目標値を算定する目標値算定部が備えられ、前記上昇時PTO自動制御部は前記動作目標値に基づいて前記上昇時PTO制御を実行する。この構成では、作業装置の高さを実測して、その実測値に基づいて上昇時PTO制御を実行するのではなくて、内部昇降操作具の操作変位から算定される作業装置の高さ、つまり制御装置にとっての動作目標値に基づいて作業装置が所定高さ以上に上昇するのか、あるいは作業装置が所定高さ以下に下降するのかを判定するので、より迅速な制御が可能となる。
【0010】
外部昇降操作具は、作業装置の状態を機体外部から見ながらその昇降を操作するための操作具であるので、機体の外装部材に設けられていると好都合である。さらに、作業者が作業装置の周辺を動き回るようなケースを考慮すると、外部昇降操作具を作業装置の周辺に持ち運び可能なリモコン操作体として構成するとなお好都合である。このようなリモコン操作体として、WIFIなどの無線通信機能を有するスマートフォンなどの携帯電話を流用するとコスト的にも有利となる。その際には、リモコン操作機能は携帯電話にインストールされたアプリケーションプログラムによって構築される。
【0011】
耕耘装置などの作業装置では、耕耘装置を任意の高さに人為的に位置決めしたいという要望があると同時に、機体旋回時などでは、前もって設定した上昇位置への上昇、及び前もって設定した下降位置への下降をワンタッチで行いたいという要望がある。この要望を満たすため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記内部昇降操作具は昇降位置調整用操作体と強制昇降操作体とからなり、前記昇降位置調整用操作体の操作変位に対応する高さ位置に前記作業装置が位置決めされ、前記強制昇降操作体は、前記作業装置を前設定された上昇位置に上昇させる上昇操作信号と前記上方位置から元の位置に下降させる下降操作信号を作り出す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による作業車の具体的な実施形態を説明する前に、
図1を用いて本発明を特徴付けている、作業装置に対する昇降制御とPTO制御の基本原理を説明する。作業装置3に対する昇降制御とPTO制御とにおける中核制御要素はECUとも呼ばれるコンピュータをベースとする制御装置5である。この作業装置3は、作業車の機体にリンク機構6を介して昇降可能に連結されている。昇降アクチュエータ60によってリンク機構6は昇降動作する。作業装置3には、機体側からPTO(Power Take Off)機構4を介して動力伝達される。PTO機構4には作業装置3への動力を遮断するPTOクラッチ41が介装されている。
【0014】
作業車の運転席周辺に、運転席に座った運転者によって人為操作される1つまたは複数の内部昇降操作具2とPTOクラッチ操作具40とが配置されている。内部昇降操作具2は、作業装置3を昇降させるために用いられる。PTOクラッチ操作具40は、PTOクラッチ41を入り切り動作(動力の伝達と遮断)させるために用いられる。さらに、機体の外部から作業装置3を昇降させるために人為操作される外部昇降操作具30が機外にいる作業者(運転者)によって操作可能な位置に設けられている。内部昇降操作具2と外部昇降操作具30とPTOクラッチ操作具40とによる操作入力はセンサや電気スイッチを介して電気信号化され、操作入力信号として制御装置5に送られる。
【0015】
制御装置5には、動作指令生成部51、昇降動作機器制御部52、上昇時PTO自動制御部53、PTO強制停止制御部54、PTO制御部55が、ソフトウエアまたはハードウエアあるいはその両方で構築されている。動作指令生成部51は、内部昇降操作具2または外部昇降操作具30の操作に基づいて送られてくる操作入力信号に基づいて、昇降動作指令を生成する。昇降動作機器制御部52は、動作指令生成部51から受け取った昇降動作指令に応答して作業装置を昇降させる昇降動作制御信号を出力する。つまり、昇降動作機器制御部52は、内部昇降操作具2の操作に応答して作業装置3を昇降させる昇降動作制御信号を出力して昇降アクチュエータ60を上昇動作させるとともに、外部昇降操作具30の操作に応答して作業装置3を昇降させる昇降動作制御信号を出力して昇降アクチュエータ60を下降動作させる。PTO制御部55は、PTOクラッチ操作具40の操作に基づいて送られてくる操作入力信号を入り切り動作指令としてPTOクラッチ41に対する入り切り動作制御信号を出力する。
【0016】
PTO強制停止制御部54は、外部昇降操作具30の操作に基づいて送られてくる操作入力信号に応答してPTO制御部55にPTOクラッチ41に対する切り動作指令を送る。これにより、PTO制御部55は、PTOクラッチ41に対して切り動作制御信号を出力する。つまり、外部昇降操作具30が操作されると、作業装置3への動力が強制的に遮断される。この強制的なPTO動力の遮断は、PTOクラッチ操作具40が人為操作されるまで保持される。つまり、PTO強制停止制御部54は、PTOクラッチ操作具40が人為操作されると、PTO制御部55に送っていたPTOクラッチに対する切り動作指令を解除する。
【0017】
上昇時PTO自動制御部53は、作業装置3の所定高さ以上に上昇させるべく内部昇降操作具2を人為操作されたことに応答してPTOクラッチ41を切り動作させるべくPTO制御部55に切り動作指令を出力する。また、上昇時PTO自動制御部53は、一旦所定高さ以上に上昇した作業装置3が所定高さ以下に下降させるべく内部昇降操作具2を人為操作されたことに応答してPTOクラッチ41を入り動作させるべくPTO制御部55に入り動作指令を出力する。しかしながら、上昇時PTO自動制御部53は、外部昇降操作具30が操作されると、この操作に応答して、PTOクラッチ操作具40が人為操作されるまで作業装置3の昇降位置に応じたPTOクラッチ41の入り切り制御である上昇時PTO制御を停止する。
【0018】
次に、図面を用いて、本発明による作業車の具体的な実施形態の1つであるトラクタを説明する。
図2は、作業装置としてロータリ耕耘装置を装備したトラクタの側面図であり、
図3はロータリ耕耘装置の斜視図である。
【0019】
図2に示すように、前輪1aと後輪1bとによって支持されているトラクタの機体1の前部にエンジン11が搭載され、後部にトランスミッションケース12が搭載されている。機体1の後方にはロータリ耕耘装置3がリンク機構6を介して昇降自在に装備されている。このトラクタは四輪駆動型であり、エンジン11の動力は、トランスミッションケース12に内装された走行用の変速装置(図示せず)を介して前輪1a及び後輪1bに伝達される。またエンジン11の動力は、トランスミッションケース12に内装されたPTOクラッチ41を介してPTO軸42に伝達され、伝動軸43を介してロータリ耕耘装置3にも伝達される。ここでは、PTO機構4は、PTOクラッチ41とPTO軸42と伝動軸43とを含んでいる。
【0020】
リンク機構6は、
図1及び
図2に示すように、トップリンク61と、左右一対のロアリンク62と、左右一対のリフトアーム63、リフトロッド64とを備えている。さらにリンク機構6に連結されたロータリ耕耘装置3を昇降させる昇降アクチュエータとしての昇降油圧シリンダ60と、ロータリ耕耘装置3のローリング姿勢を調整するローリングアクチェータとしてのローリング油圧シリンダ65もリンク機構6内に組み込まれている。
【0021】
トップリンク61と右及び左のロアリンク62とは、トランスミッションケース12に上下に揺動自在に支持されている。昇降油圧シリンダ60は単動型であり、レバー機構を介してトップリンク61と連動連結している。右及び左のリフトアーム63と右及び左のロアリンク62とが、リフトロッド64及び複動型のローリング油圧シリンダ65を介して連結されている。
【0022】
エンジン11の後方には運転部14が形成されている。運転部14の前部には、前輪1aの操向操作を行う操縦ハンドル15と、各種報知を運転者に与える報知デバイスの1つであるメータパネル16が配置されている。運転部14の後部で、左右一対の後輪フェンダ18の間には、運転席17が配置されている。左右一対の後輪フェンダ18の間で運転席17の後には、ロプス(ROPS:Roll Over Protection Structure)フレーム19が配置されている。後輪フェンダ18の後部にはブレーキランプ83が設けられている。ロプスフレーム19の上部の右及び左側部の外側(又は内側)に、右及び左の方向指示器81が備えられ、方向指示器81の下側に報知デバイスの1つである報知ランプ82が備えられている。
【0023】
この実施形態では、昇降油圧シリンダ60を動作させるために運転席17から人為操作される内部昇降操作具2として、昇降位置調整用操作体21と強制昇降操作体22とが備えられている。昇降位置調整用操作体21は運転席17の側方に配置されたレバーとして形成されているので、以下昇降調整レバー21と称する。強制昇降操作体22は操縦ハンドル15の右下側に配置されたレバーとして形成されているので、以下強制昇降レバーと称する。昇降油圧シリンダ60を動作させるために機体外部から人為操作される外部昇降操作具30が備えられている。この外部昇降操作具30は、この実施形態では、後輪フェンダ18の後部側端領域に配置されており、上昇位置と中立位置と下降位置とを有するスイッチとして形成されているので、以下外部昇降操作具30は外部昇降スイッチと称する。PTOクラッチ41の入り切りのために人為操作されるダイアルタイプのPTOクラッチ操作具40は、運転席17の側方に配置されている。
【0024】
次に
図4を用いて、リンク機構6を用いた昇降制御、ローリング制御、及びPTOクラッチ41を用いたPTO制御の構成を説明する。
昇降油圧シリンダ60を駆動させる3位置切換式の昇降制御弁91は制御装置5からの動作制御信号により制御される。昇降油圧シリンダ60が伸縮作動によりによりリフトアーム63、トップリンク61及びロアリンク62が動き(
図3参照)、結果的にロータリ耕耘装置3が昇降する。ローリング油圧シリンダ65を駆動させる3位置切換式のローリング制御弁92も制御装置5からの動作制御信号による制御される。ローリング油圧シリンダ65の伸縮作動によりロータリ耕耘装置3が、ローリング油圧シリンダ65とは反対側のロアリンク62との連結点周りにローリング調整される。
【0025】
PTOクラッチ41は摩擦多板型式の油圧クラッチであり、遮断状態に付勢されて、作動油が供給されることにより伝動状態に操作されるように構成される。PTOクラッチ41は、制御装置5による駆動信号に基づいて作動油の給排操作を行うPTO制御弁93によって動力伝達状態と動力遮断状態が選択的に作り出される。
【0026】
ロータリ耕耘装置3に上下揺動自在に後部カバー31が備えられ、バネ33により後部カバー31が下方側に付勢されて、ロータリ耕耘装置3に対する後部カバー31の上下角度を検出する耕深センサ32が備えられており、耕深センサ32の検出値が制御装置5に入力されている。ダイヤル操作式で人為的に操作される耕深設定器34が、運転部14に備えられて、耕深設定器34の設定耕耘深さの操作信号が制御装置5に入力されている。
【0027】
耕深センサ32の検出値が耕深設定器34の設定耕耘深さとなるように昇降制御弁91が制御されると、昇降油圧シリンダ60によりリフトアーム63、トップリンク61及びロアリンク62が昇降駆動し、結果的にロータリ耕耘装置3が昇降する。耕深センサ32は地面Gからロータリ耕耘装置3までの高さを検出するものであり、ロータリ耕耘装置3の耕耘深さH1を検出する。したがって、ロータリ耕耘装置3が地面Gから設定高さに位置するように、ロータリ耕耘装置3の耕耘深さH1が耕深設定器34の設定耕耘深さとなるように、昇降油圧シリンダ60によりリフトアーム63、トップリンク61及びロアリンク62が昇降する。
【0028】
リフトアーム63の機体に対する上下角度を検出する角度センサ66がリフトアーム63の基部に備えられており、角度センサ66の検出値が制御装置5に入力されている。機体の運転部14に昇降調整レバー21が備えられ、昇降調整レバー21の操作位置を検出する昇降レバーセンサ35の検出値が制御装置5に入力されている。昇降調整レバー21は人為的に操作自在であり、昇降調整レバー21から手を離しても摩擦保持機構(図示せず)により、昇降調整レバー21はその操作位置に保持される。
【0029】
これにより、昇降レバーセンサ35の検出値に基づいて、昇降調整レバー21の操作位置に対応する上下角度に、リフトアーム63が機体に対して位置するように、昇降油圧シリンダ60によりリフトアーム63、トップリンク61及びロアリンク62が連動し、結果的に目標位置にロータリ耕耘装置3が昇降する。
【0030】
次に、強制昇降及びローリング制御について説明する。
強制昇降レバー22の操作位置が強制昇降レバーセンサ36を介して制御装置5に入力される。強制昇降レバー22は中立位置、上昇位置及び下降位置に操作自在に構成されて、中立位置に付勢されている。
【0031】
強制昇降レバー22を上昇位置に操作すると(上昇位置に操作して中立位置に操作すると)、昇降油圧シリンダ60によりリフトアーム63、トップリンク61及びロアリンク62が連動し、結果的にロータリ耕耘装置3が予め設定された上限位置まで上昇する。強制昇降レバー22を下降位置に操作すると(下降位置に操作して中立位置に操作すると)、ローリング油圧シリンダ65によりリフトアーム63、トップリンク61及びロアリンク62が連動し、結果的にロータリ耕耘装置3が、上昇される前の位置に下降する。
【0032】
なお、昇降調整レバー21や強制昇降レバー22を用いてロータリ耕耘装置3を所定の高さ以上上昇させると、PTOクラッチ41が遮断状態に操作される。また、後述するローリング制御も解除され、ローリング油圧シリンダ65がリフトロッド64と同じ長さになるように伸縮作動して、機体に対してロータリ耕耘装置3が機体左右方向で平行に保持される。その際、強制昇降レバー22を用いてロータリ耕耘装置3を所定の高さを下回る位置まで下降させるとPTOクラッチ41が伝動状態に操作される。同時にローリング制御も復活する。
【0033】
図3及び
図4に示すように、ローリング油圧シリンダ65の作動位置を検出するストロークセンサ67、機体の水平面に対する機体左右方向の角度を検出する重錘式の傾斜センサ68が備えられており、ストロークセンサ67の検出値及び傾斜センサ68の検出値が制御装置5に入力されている。ストロークセンサ67によりローリング油圧シリンダ65の作動位置を検出することによって、ロータリ耕耘装置3の機体に対する機体左右方向の角度を検出することができるので、傾斜センサ68により機体の水平面に対する機体左右方向の角度を検出することにより、ロータリ耕耘装置3の水平面に対する機体左右方向の角度を検出することができる。
【0034】
制御装置5に入力されている傾斜設定器37の設定角度は、ロータリ耕耘装置3の水平面に対して維持されるべき機体左右方向の角度を意味しており、傾斜設定器37の設定角度を水平位置から右下り側及び左下り側に任意に設定及び変更することができる。これにより、ロータリ耕耘装置3の水平面に対する機体左右方向の角度を、傾斜設定器37の設定角度に維持するように、ローリング油圧シリンダ65によりトップリンク61及びロアリンク62が、結果的にロータリ耕耘装置3がローリング制御される。
【0035】
外部昇降スイッチ30は、この実施形態では、中立位置、上昇位置及び下降位置を有するシーソ形スイッチであり、中立付勢されており、その位置状態は制御装置5に入力される。外部昇降スイッチ30が上昇位置に操作されると、昇降油圧シリンダ60によりリフトアーム63、トップリンク61及びロアリンク62が上昇方向に動き始め、ロータリ耕耘装置3は上昇する。外部昇降スイッチ30が下降位置に操作されると、昇降油圧シリンダ60によりリフトアーム63、トップリンク61及びロアリンク62が下降方向に動き始め、ロータリ耕耘装置3は下降する。なお、外部昇降スイッチ30が中立位置から上昇位置または下降位置に操作されると、強制的にPTOクラッチ41は遮断状態に操作される。この強制的なPTOクラッチ41の遮断状態は、ロータリ耕耘装置3の昇降位置には関係なく保持される。この遮断状態を解除するためには、以下に説明するPTOクラッチ操作具40を操作する必要がある。
【0036】
次に、PTOクラッチ操作具40について説明する。
図4に示すように、PTOクラッチ操作具40は中央に遮断位置が設定されて、遮断位置の右側に伝動位置が設定され、遮断位置の左側に自動位置が設定されており、PTOクラッチ操作具40の操作位置が制御装置5に入力される。もちろん、遮断位置の左側に伝動位置を設定し、遮断位置の右側の自動位置を設定するほか、種々の形態を採用してもよい。
【0037】
この実施形態では、PTOクラッチ操作具40は押し操作自在、且つ右及び左の回転操作自在に構成されており、PTOクラッチ操作具40を遮断位置に操作している状態において、PTOクラッチ操作具40を押し操作しながら右に回転操作することにより、PTOクラッチ操作具40を伝動位置に操作することができる。PTOクラッチ操作具40を遮断位置に操作している状態において、PTOクラッチ操作具40を押し操作しながら左に回転操作することにより、PTOクラッチ操作具40を自動位置に操作することができる。PTOクラッチ操作具40を伝動及び自動位置に操作している状態において、PTOクラッチ操作具40を押し操作すると、PTOクラッチ操作具40が自動的に遮断位置に戻し操作される。
【0038】
PTOクラッチ操作具40を伝動位置に操作すると、制御装置5からの動力伝達制御信号に基づいてPTO制御弁93が動作し、PTOクラッチ41が伝動状態に操作される。PTOクラッチ操作具40を遮断位置に操作すると、制御装置5からの動力遮断制御信号に基づいてPTO制御弁93が動作し、PTOクラッチ41が遮断状態に操作される。
【0039】
PTOクラッチ操作具40を自動位置に操作すると、上述したように、ロータリ耕耘装置3が予め設定されたしきい値以上の高さに上昇するとPTOクラッチ41が遮断状態に操作され、ロータリ耕耘装置3が予め設定されたしきい値を下回る高さに上昇するとPTOクラッチ41が伝動状態に操作される。PTOクラッチ41を遮断状態に操作するしきい値とPTOクラッチ41を伝動状態に操作するしきい値は同値であってもよいし、それぞれ違った値(ヒステリシス)としてもよい。
【0040】
次に、
図5を用いて、制御装置5に構築されている、本発明に特に関係する機能部を説明する。なお、この制御装置5の入力インタフェースとして機能する入力評価部58には、
図4で示された種々のセンサやスイッチなどからの信号が入力される。制御装置5の出力インタフェースとして機能するソレノイド駆動部9には、昇降制御弁91やローリング制御弁92やPTO制御弁93が接続されている。
【0041】
この制御装置5は、
図1を用いて説明した基本的な機能部、つまり、動作指令生成部51、昇降動作機器制御部52、上昇時PTO自動制御部53、PTO強制停止制御部54、PTO制御部55を全て含んでいる。それ以外に、
図5で示されている機能部は、目標値算定部50としきい値設定部56と上限設定部57である。目標値算定部50は、入力評価部58を介して受け取った昇降調整レバー21、強制昇降レバー22、外部昇降スイッチ30からの操作信号に基づいてリフトアーム63の目標揺動角度、つまりロータリ耕耘装置3の目標高さに対応する目標値を算定する。なお、設定される目標値の上限が上限設定部57によって設定されている。ロータリ耕耘装置3が上限値を超える高さに上昇することが禁止されている。この上限値は、図示されていない上限設定器によって人為入力され、その入力値が上限値として上限設定部57に格納される。
【0042】
しきい値設定部56は、ロータリ耕耘装置3が上昇に伴ってPTOクラッチ41が遮断される際のしきい値(ロータリ耕耘装置3の所定高さに対応する)を設定するものであり、図示されていない上限設定器によって人為入力される。
【0043】
上述したように構成された制御装置5による、内部昇降操作具の1つである昇降調整レバー21と外部昇降操作具である外部昇降スイッチ30とを用いたロータリ耕耘装置3の昇降制御とPTOクラッチ41の入り切り制御の一例を
図6のチャート図を用いて説明する。
まず、ロータリ耕耘装置3を下降させての耕耘作業中に、時点t1において、昇降調整レバー21を上昇側に操作変位させてロータリ耕耘装置3の上昇を行う。これによりロータリ耕耘装置3は上昇するが、その高さ(目標高さ)がしきい値設定部56で設定されたしきい値に達すると(時点t2)、上昇時PTO自動制御部53の働きでPTO機構4によるロータリ耕耘装置3への動力伝達を遮断する指令がPTO制御部55に与えられる。これによりソレノイド駆動部9を通じて切り動作制御信号が出力され、PTOクラッチ41は切り操作される。昇降調整レバー21の操作変位を止めると、その変位位置に対応する高さにロータリ耕耘装置3は維持される。
【0044】
逆に、強制昇降レバー2を下降側に操作変位させるとロータリ耕耘装置3の下降が行われるが(時点t3)、その高さ(目標高さ)がしきい値設定部56で設定されたしきい値を下回ると(時点t4)、上昇時PTO自動制御部53の働きで、遮断されているロータリ耕耘装置3へ動力伝達が解除され、動力伝達を許可する指令がPTO制御部55に与えられる。これによりソレノイド駆動部9を通じて入り動作制御信号が出力され、PTOクラッチ41は再び入り操作される。
【0045】
図6の例では作業途中において、ロータリ耕耘装置3の状態チェックのため、昇降調整レバー21を上限まで操作変位させることで、強制昇降レバー22が上昇位置に切り換え、ロータリ耕耘装置3は上限高さに上昇している。その際、ロータリ耕耘装置3はしきい値を超えているので、PTOクラッチ41は切り状態となる。この状況において、機外に出た運転者が、ロータリ耕耘装置3を少し下げるために、外部昇降スイッチ30を中立位置から下降位置に操作する(時点t11)。これにより、動作指令生成部51が下降動作指令を昇降動作機器制御部52に与えることで、ロータリ耕耘装置3は下降し始める。なお、外部昇降スイッチ30が中立位置から下降位置または上昇位置に操作された際に(時点t11)、PTO強制停止制御部54が、PTO動力の強制的な動力遮断状態、つまりPTOクラッチ41の切り状態の保持をもたらすPTO牽制フラグをONとする。したがって、このロータリ耕耘装置3の下降においてロータリ耕耘装置3の高さがしきい値を下回っても(時点t12)、PTO牽制フラグがONであるので、PTOクラッチ41は入り操作されずに切り状態を保持する。外部昇降スイッチ30が下降位置から中立位置に戻されると、ロータリ耕耘装置3の上昇が終了する(時点t13)。以後、時点t14まで外部昇降スイッチ30の操作に基づくロータリ耕耘装置3の昇降をともなって、ロータリ耕耘装置3の状態チェックを行い、この状態チェックが終了すると、通常の耕耘作業に戻ることになる。そのためには、PTO牽制フラグをOFFにする必要がある。このPTO牽制フラグのOFFは、運転者が運転席17に戻って、PTOクラッチ操作具40を操作することで実現する。つまり、PTOクラッチ操作具40に対して自動位置から遮断位置、伝動位置から自動位置のように何らかの操作(PTO操作イベント)がなされると、PTO強制停止制御部54がPTO牽制フラグをONからOFFとする(時点t15)。したがってこれ以後は、再び、ロータリ耕耘装置3の高さがしきい値以上となればPTOクラッチ41が切り操作され、ロータリ耕耘装置3の高さがしきい値を下回ればPTOクラッチ41が入り操作される、PTO自動制御が実行される。
図6で例示された制御チャートでは、内部昇降操作具によるロータリ耕耘装置3の昇降に昇降調整レバー21が用いられていたが、強制昇降レバー22を用いてもよい。強制昇降レバー22は中立位置をホームポジションとして上昇位置と下降位置に切り換えられるレバーであり、上昇位置に操作されることにより、ロータリ耕耘装置3は前もって設定された位置まで上昇し、下降位置に操作されることにより、ロータリ耕耘装置3は前もって設定された位置まで下降する。したがって、強制昇降レバー22が上昇位置に切り換えられた時点で、PTOクラッチ41は切り状態にされ、強制昇降レバー22が下降位置に切り換えられた時点で、PTOクラッチ41は切り状態にされる。もちろん、強制昇降レバー22によるロータリ耕耘装置3の昇降操作においても、昇降調整レバー21による昇降操作と同様に、その高さ(目標値)がしきい値を超えた時点でPTOクラッチ41を切り状態とし、その高さ(目標値)がしきい値を下回った時点でPTOクラッチ41を入り状態とする制御を採用してもよい。
【0046】
外部昇降スイッチ30が操作された時点でPTOを強制的に停止するPTO牽制フラグを用いた、上述したようなPTO牽制制御は、昇降調整レバー21による昇降操作時にその高さ(目標値)がしきい値を超えた時点でPTOクラッチ41を切り状態とし、その高さ(目標値)がしきい値を下回った時点でPTOクラッチ41を入り状態とする自動PTO制御(アップオフ制御とも呼ばれる)が実行されている時に特に有用である。したがって、この自動PTO制御(アップオフ制御)の実行時にのみ上記PTO牽制制御が実行されると好都合であ
る。
【0047】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、外部昇降操作具としての外部昇降スイッチ30は、機体1の外装部材である後輪フェンダ18に取り付けられていたが、これに代えて外部昇降操作具をリモコン操作体として運転者や作業者が持ち運びできるようにしてもよい。
図7に示す機能ブロック図では、外部昇降操作具としてリモコン機能を有する携帯電話8が用いられている。スマートフォンなどの携帯電話8が有する無線通信機能(WiFi、ブルーツゥース(登録商標)、赤外線など)を用いて制御装置5との間でデータ通信を行う。このため制御装置5には無線通信部59が備えられ、携帯電話8には無線通信部59との交信を通じて、ロータリ耕耘装置3に対する上昇動作指令及び下降動作指令を与える外部昇降操作機能部80がアプリケーションプログラム(アプリ)によって構築されている。
(2)上述した実施形態では、内部昇降操作具2として、昇降調整レバー21と強制昇降レバー22が備えられていたが、その操作形態はレバー式以外の操作形式、ボタンやダイヤルなどを採用してもよい。また、内部昇降操作具2や外部昇降操作具30の装備個数は本発明では限定されていない。
(3)上述した実施形態では、昇降アクチュエータ60として油圧シリンダが用いられたが、その他のアクチュエータ例えば電動シリンダなどを用いてもよい。
(4)上述した実施形態において制御装置5に構築された各機能部の区分けは、一例であり、同様の機能を実現する限り、各機能部は自由に統合または分割可能である。
(5)上述した実施形態では、作業車としてロータリ耕耘装置3を装備したトラクタを取り上げたが、ロータリ耕耘装置3以外の作業装置でも本発明は有効である。またトラクタ以外の作業車であって、昇降制御される作業装置を装備するものに対しても本発明は有効である。