(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板と光熱交換膜と被剥離層とがこの順に形成されてなる多層体において、光源から照射される光を用いて該基板と該被剥離層とを剥離する剥離方法であって、該光熱交換膜が、光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基並びにシラノール基及び/又はアルコキシシラン基を持つ化合物に由来して作製され、該光源からの出射光を、該基板を透過して該光熱交換膜に照射することにより、該基板と上該被剥離層とを剥離することを特徴とする前記剥離方法。
前記光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基並びにシラノール基及び/又はアルコキシシラン基を持つ化合物の、光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基が有機基である、請求項1に記載の剥離方法。
前記光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基並びにシラノール基及び/又はアルコキシシラン基を持つ化合物の、光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基が芳香族炭化水素基を含む、請求項1又は2に記載の剥離方法。
前記光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基並びにシラノール基及び/又はアルコキシシラン基を持つ化合物を有機溶媒に0.1重量%〜80重量%の範囲の濃度に溶かした溶液を基板上に噴霧又は塗布後、溶媒を乾燥することで、前記光熱交換膜を作製する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の剥離方法。
【背景技術】
【0002】
表示部分が柔軟に変形可能な、いわゆるフレキシブルディスプレイは、薄く・軽く・割れないディスプレイとして注目を集めている。液晶表示方式のフレキシブルディスプレイは、通常、液晶層又は発光材料を、ポリイミド樹脂等の有機透明樹脂材料で挟んだ構造を有する。また、有機ELディスプレイの場合は、ポリイミド樹脂等の有機樹脂材料を有している。
フレキシブルディスプレイとしての液晶パネルの製造工程においては、ガラス等の支持基板上に上記透明樹脂材料を成膜し、その上にTFT基板、液晶層、CF基板等を形成する。そして、最終的に、上記透明樹脂材料と上記支持基板とを剥離する工程(剥離工程)が必要となる。
【0003】
従来の上記液晶ディスプレイの製造工程では、上記剥離工程において、エキシマレーザー等のレーザー光が用いられている。
例えば、以下の特許文献1には、基板上にTi等の材料からなる第1の層を形成し、その上に酸化シリコン等の材料からなる第2の層を形成し、さらにその上に被剥離層(樹脂材料)を形成し、これに基板側からレーザー光を照射することによって被剥離層と基板とを剥離する方法が記載されている。この方法によれば、レーザー光を照射することにより、第1の層には引張応力が生じる一方、第2の層には圧縮応力が生じるため、被剥離層と基板とを剥離することができる。
【0004】
また、以下の特許文献2、3に記載された技術は、例えば、非晶質シリコン(又はポリシリコン)からなる分離層を設け、基板を通過させてレーザー光を照射して、非晶質シリコンに含まれる水素を放出させることにより、空隙を生じさせて基板を分離させるというものである。加えて、この技術を用いて以下の特許文献4には、被剥離層(同書では被転写層と呼ばれる。)をプラスチックフィルムに貼りつけて液晶表示装置を完成させるという記載もある。
【0005】
更に、以下の特許文献5には、基材であるガラスと被剥離層である透明ポリイミドの間にモリブデンからなる光熱変換層を設け、キセノンフラッシュランプを用いて、モリブデンを加熱することにより、被剥離層と基板とを剥離することができるとの記載がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術の方法を利用して基板を剥離する方法には、以下の問題がある。
第一に、上記ポリシリコンを利用した方法では、基板を通過させ、さらに非晶質シリコンに含まれる水素を放出させるに十分なエネルギーを与えるため、比較的大きなレーザー光の照射が必要とされ、被剥離層に損傷を与えてしまう。また、上記方法では、分離層上に素子を作製した場合、素子作製プロセスで高温の熱処理等を行えば、分離層に含まれる水素が拡散して低減してしまい、レーザー光を分離層に照射しても剥離が十分に行われない恐れがある。従って、分離層に含まれる水素量を維持するため、分離層形成後のプロセスが制限されてしまう。また、光熱変換層にモリブデンのような金属薄膜層を設けると、金属自体は分解ガス化しないため、モリブデン層が光により加熱されポリイミド膜とガラスとモリブデンの熱膨張係数の差を利用して、剥離エネルギーにするためには、多くの光エネルギーが必要で、場合によっては、この加熱により被剥離層の透明ポリイミドが着色するという恐れがある。
【0008】
第二に、レーザーは照射領域が狭いため、剥離工程に時間を要し、製造効率が悪い。例えば、一般のエキシマレーザーでは、0.6mm×300mmのライン状に照射するため、剥離面が広範に及ぶ場合には、剥離工程に多くの時間を要してしまう。
【0009】
第三に、例えば、希ガスやハロゲンなどの混合ガスを用いてレーザー光を発生させるエキシマレーザーはガス交換型であるため、ランニングコストも大きいため、剥離時のスループットを向上しないと、コストが高くなる。
【0010】
上記問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、低コストで生産性が高く、プロセス適合性の高い基板の剥離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、以下の解決手段により課題が解決しうることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
【0012】
[1]基板と光熱交換膜と被剥離層とがこの順に形成されてなる多層体において、光源から照射される光を用いて該基板と該被剥離層とを剥離する剥離方法であって、該光熱交換膜が、光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基並びにシラノール基及び/又はアルコキシシラン基を持つ化合物に由来して作製され、該光源からの出射光を、該基板を透過して該光熱交換膜に照射することにより、該基板と上該被剥離層とを剥離することを特徴とする前記剥離方法。
【0013】
[2]前記光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基並びにシラノール基及び/又はアルコキシシラン基を持つ化合物の、光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基が有機基である、前記[1]に記載の剥離方法。
【0014】
[3]前記光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基並びにシラノール基及び/又はアルコキシシラン基を持つ化合物の、光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基が芳香族炭化水素基を含む、前記[1]又は[2]に記載の剥離方法。
【0015】
[4]前記光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基並びにシラノール基及び/又はアルコキシシラン基を持つ化合物が、下記一般式(1):
【化1】
{式中、R
1は、水素原子又は炭素数1〜6の一価の脂肪族炭化水素基であり、R
2は、水素原子又は炭素数1〜6の一価の有機基であり、R
3は、単結合又は炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基であり、R
4は、光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基を有する炭素数6〜60の芳香族炭化水素基であり、そしてnは、1〜3の整数である。}で表される化合物である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の剥離方法。
【0016】
[5]前記一般式(1)におけるR
4が、下記化合物群:
【化2】
から選ばれる分子基を構造中に一つ以上含む、前記[4]に記載の剥離方法。
【0017】
[6]前記光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基並びにシラノール基及び/又はアルコキシシラン基を持つ化合物を有機溶媒に0.1重量%〜80重量%の範囲の濃度に溶かした溶液を基板上に噴霧又は塗布後、溶媒を乾燥することで、前記光熱交換膜を作製する、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の剥離方法。
【0018】
[7]前記光源がレーザー光である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の剥離方法。
【0019】
[8]前記光源がフラッシュランプである、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の剥離方法。
【0020】
[9]前記基板がガラス基板である、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の剥離方法。
【0021】
[10]前記被剥離層が、ポリイミド樹脂上に形成したTFT素子を含む、前記[1]〜[9]のいずれかに記載の剥離方法。
【0022】
[11]前記[1]〜[10]のいずれかに記載の剥離方法を工程の一部に含む、フレキシブル性を有する液晶ディスプレイの製造方法。
【0023】
[12]前記[1]〜[10]のいずれかに記載の剥離方法を工程の一部に含む、フレキシブル性を有する有機ELディスプレイの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る剥離方法によれば、光熱交換膜において、基板を透過した光を該基板と光熱交換膜界面で効率的に吸収して、光を熱に変換し、自身が熱分解をすることでガス化することができるため、剥離に必要なエネルギーを効率的に界面に集中して得ることができる。このため、光照射剥離工程の大幅なスループットの向上が可能であり、比較的出力が小さく、ランニングコストが安価な固体レーザーを使用しても剥離を実現することができる。すなわち、低コストで生産性の高い、基板の剥離方法を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。
〔実施の形態1〕
図1は、実施の形態1に係る液晶ディスプレイ10の製造方法を説明するための図である。
図1において、11はガラス基板、12は光熱交換膜、13は透明樹脂層、14はベースコート、15は液晶構造部、16はベースコート、17透明樹脂層、18は光熱交換膜、19はガラス基板を示している。
ガラス基板11・19は、透光性及び耐熱性を有するガラス基板である。ガラス基板11には、一般的な表示パネルに用いられるマザーガラスを利用することができる。
【0027】
光熱交換膜は、具体的には、以下のようにして作製する。光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基並びにシラノール基及び/又はアルコキシシラン基を同時に持つ化合物(以下、光吸収基を持つシリコンカプラーとも言う。)を有機溶媒等に0.1重量%〜80重量%の濃度で溶解し、それをガラス基板上に噴霧、又はスピンコート法やダイコート法などの各種コート法を利用して、ガラス基板上に展開した後、自然乾燥、又は200℃以下のオーブン内で乾燥する。この操作により、ガラス基板表面のシラノール基と光吸収基を持つシリコンカプラーに含まれるシラノール基及び/又はアルコキシシラン基とが重縮合反応を起こすことで、ガラスと強固に共有結合をした光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基を持つ超薄膜層を形成することができる。
【0028】
この工程で使用される有機溶媒としては、具体的には、光吸収基を持つシリコンカプラーを溶解する溶媒であれば、特に限定されないが、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、ラクトン系溶媒が好ましい。アルコール溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどが挙げられ、ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ブタノンなどが挙げられ、エステル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチルなどが挙げられ、エーテル系溶媒としてはセロソルブ系、プロピレングリコール系があり、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0029】
これらの溶媒の中でも、室温での揮発性が高い溶媒が、乾燥の容易さの観点から好ましく、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エチルがコーティング膜の平坦性の観点から好ましく、メタノール、エタノールが光吸収基を持つシリコンカプラーの室温保存安定性の観点で最も好ましい。また、溶媒に対して、0.5重量%〜10重量%の範囲で水を添加すると、光吸収基を持つシリコンカプラーのシラノールが事前に加水分解及び重縮合を起こすことで、オリゴマー化し、ガラス基板との接着性が向上する観点から好ましい。
【0030】
上記溶媒に対する光吸収基を持つシリコンカプラーの濃度は、0.1%〜80重量%の範囲が好ましい。この範囲を外れると、乾燥後の光熱交換膜の面内均一性が下がるリスクがある。より好ましくは0.5重量%〜30重量%が溶液の保存安定性と塗膜の均一性の観点が好ましく。1重量%〜10重量%の範囲が最も好ましい。
ガラス基板への塗布方法としては、上記溶液を用いて、スプレーコート法や噴霧法、スピンコート法、バーコート法、ダイスロットコート法など各種方法で塗布される。
【0031】
乾燥方法としては、室温で放置することで自然乾燥をしてもよいが、90℃〜200℃のオーブンに投入することで、ガラス上のシラノール基と光吸収基を持つシリコンカプラーのシラノール基が重縮合を起こし、強固な共有結合を短時間で形成することができるので、好ましい。200℃以上で加熱する場合には、空気中の酸素の影響で光熱交換膜が酸化されるため、窒素ガス中など不活性ガス中にて加熱することが好ましい。
光吸収基を持つシリコンカプラーが、ガラスと強固な共有結合を有することで、引き続き行われる被剥離層の透明ポリイミド樹脂作成過程において、光熱交換膜がポリイミド層へ分散することを防止することができ、かつ、光吸収層起因の透明ポリイミド膜への色移りや着色を防止することができる。また、本シリコンカプラーは、透明ポリイミドのガラスとの接着性向上の機能を有していても構わないが、本シリコンカプラーの本質的な機能は、光による剥離工程における光熱交換膜の役割にある。
【0032】
光吸収基を持つシリコンカプラーとしては、具体的には、光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基が有機基であることが、金属薄膜やポリシリコンなどの無機化合物と比較して、剥離性が優れる観点から好ましい。更に、この有機基が芳香族炭化水素基を含むことが、光吸収性に優れ、結果として光照射後の剥離性に優れる観点から好ましい。更には、下記一般式(1):
【化3】
{式中、R
1は、水素原子又は炭素数1〜6の一価の脂肪族炭化水素基であり、R
2は、水素原子又は炭素数1〜6の一価の有機基であり、R
3は、単結合又は炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基であり、R
4は、光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基を有する炭素数6〜60の芳香族炭化水素基であり、そしてnは、1〜3の整数である。}で表される構造を有することが好ましい。
【0033】
一般式(1)におけるR
4は、光源から照射される波長に光吸収を持つ分子基であり、かつ蛍光量子効率が低い分子基であることが剥離性の観点から好ましい。また、同時に、引き続き行われるポリイミド膜の形成工程や、TFT素子の作製過程でのプロセス温度に耐熱性を有する分子基であることが剥離性及び被剥離層の着色防止の観点から好ましい。
一般式(1)におけるR
4は、下記化合物群:
【化4】
から選ばれる分子基を構造中に一つ以上含んでいることが好ましい。
【0034】
光吸収基を持つシリコンカプラーとしては、下記化合物:
【化5】
が剥離性の観点から更に好ましい。
【0035】
透明樹脂層13・17(被剥離層)は、ポリイミド(PI)等の耐熱性を有する有機透明樹脂材料からなる。
ベースコート14・16としては、例えば、SiNやSiO
2を用いることができ、これらを交互に積み重ねてもよい。
液晶構造部15は、一般的な液晶ディスプレイを構成する部材と同一の構成部材からなり、薄膜トランジスタ(TFT)、各種信号線(走査信号線、データ信号線等)、画素電極、液晶層、共通電極(対向電極)、カラーフィルタ(CF)、絶縁層等を含んでいる。液晶構造部15には、周知の構成及び製造方法を適用することができる。
【0036】
(液晶ディスプレイの製造方法)
実施の形態1に係る液晶ディスプレイ10は、表示部分が柔軟に変形可能な(フレキシブル性を有する)、いわゆるフレキシブルディスプレイである。この液晶ディスプレイ10の製造工程には、TFT基板(アクティブマトリクス基板)製造工程、CF基板(カラーフィルタ基板)製造工程、両基板を貼り合わせて液晶を充填する組み立て工程、及び、ガラス基板11・19を剥離する剥離工程が含まれる。
以下、液晶ディスプレイ10の製造方法について説明する。尚、TFT基板製造工程、CF基板製造工程及び組み立て工程には、周知の製造工程を適用することができる。以下にその一例を挙げるが、これに限定されるものではない。
【0037】
(TFT基板製造工程)
まず、ガラス基板11(マザーガラス)上に、光熱交換膜12を作製する。具体的には、例えば、下記化合物(1):
【化6】
、すなわち、光吸収基を持つシリコンカプラー(ゲレスト社製 SIT8186.2 7−トリエトキシシリルプロポキシ―5−ヒドロキシ―フラボン)をメタノールに1重量%溶解し、引き続き、水2重量%を添加した溶液を一晩室温にて撹拌した後、マザーガラス上にスピンコート法にて塗布し、130℃のオーブンに20分投入することで、ガラス基板上に光熱交換膜を得た。尚、化合物(1)は、本発明の実施の形態の一例を示すものであり、これに限られるものではない。
【0038】
次に、光熱交換膜12が形成されたガラス基板11上に透明樹脂材料(ここではポリイミド(PI)前駆体であるポリアミド酸を例に挙げる。)をスピンコート法又はバーコート法にて塗布し、ベークを行った後、350℃のオーブンに投入してポリアミド酸を脱水環化することで、有機溶媒に不溶で耐熱性が高いポリイミド膜を得る。これにより、3μm〜20μmの膜厚のPI層13を形成する。
次に、SiN等のベースコート14をCVD(Chemical Vapor Deposition)法又はスパッタリング法により成膜する。この時、SiO
2とSiNを交互に多数層を形成してもよい。これにより、水分及び有機成分に対するバリア膜が形成される。
次に、ベースコート14上に、チタンなどの金属膜をスパッタリング法により成膜し、その後、フォトリソグラフィ法によりパターニングを行い、走査信号線を形成する。
【0039】
次に、走査信号線が形成されたガラス基板11全体に、CVD法により窒化シリコンなどの無機絶縁膜を成膜し、フォトレジストの除去を行い、ゲート絶縁膜を形成する。
次に、ゲート絶縁膜上(ガラス基板11全体)に、データ信号線、トランジスタのソース電極・ドレイン電極を形成する(メタル層の形成)。
次に、データ信号線などが形成されたガラス基板11全体に、層間絶縁膜(無機層間絶縁膜、有機層間絶縁膜)を形成する。
その後、層間絶縁膜にコンタクトホールを形成し、コンタクトホールが形成された層間絶縁膜上のガラス基板11全体に、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium ZincOxide)、酸化亜鉛、酸化スズなどからなる透明導電膜をスパッタリング法により成膜し、各画素電極を形成する。
最後に、画素電極上のガラス基板11全体に、配向膜を形成する。以上のようにして、TFT基板を作製することができる。
【0040】
(CF基板製造工程)
次に、CF基板製造工程について説明する。
まず、TFT基板と同様、ガラス基板19(マザーガラス)上に、光熱交換膜18を、光吸収基を持つシリコンカプラーを塗布することにより成膜する。その際、パネル面取りに合わせて、不要箇所をマスク成膜してもよい。その後、貼り合せのためのマーカーを形成する。その際、パネル面取りに合わせてエッチングしてもよい。
次に、光熱交換膜18が形成されたガラス基板19上に透明樹脂材料(PI)を塗布し、ベークを行う。これにより、3μm〜20μmの膜厚のPI層17を形成する。
次に、SiN等のベースコート16をCVD法又はスパッタリング法により成膜する。これにより、水分及び有機成分に対するバリア膜が形成される。
【0041】
次に、ベースコート16上に、クロム薄膜又は黒色顔料を含有する樹脂を成膜した後、フォトリソグラフィ法によりパターニングを行い、ブラックマトリクスを形成する。次いで、ブラックマトリクスの間隙に、顔料分散法などを用いて、赤、緑及び青のカラーフィルタ層をパターン形成する。
次に、カラーフィルタ層上のガラス基板19全体に、ITO、IZO、酸化亜鉛、酸化スズなどからなる透明導電膜を成膜し、共通電極(対向電極)を形成する。
最後に、共通電極上のガラス基板19全体に、配向膜を形成する。以上のようにして、CF基板を作製することができる。
【0042】
(組み立て工程)
次に、組み立て工程について説明する。
まず、TFT基板およびCF基板の一方に、スクリーン印刷により、熱硬化性エポキシ樹脂などからなるシール材料を液晶注入口の部分を欠いた枠状パターンに塗布し、他方の基板に液晶層の厚さに相当する直径を持ち、プラスチックまたはシリカからなる球状のスペーサーを散布する。
次いで、TFT基板とCF基板とを貼り合わせ、シール材料を硬化させる。
最後に、TFT基板及びCF基板並びにシール材料で囲まれる空間に、減圧法により液晶材料を注入した後、液晶注入口に熱硬化樹脂を塗布し、加熱によって液晶材料を封止することで液晶層を形成する。
図1の(a)は、組み立て工程が終了した時点の様子を示している。
尚、液晶ディスプレイの製造工程は、ディスペンサーでシール材を描画し、セルギャップをTFT基板製造工程またはCF基板製造工程で樹脂スペーサー(樹脂で柱状のギャップを維持するもの)を用いて製造してもよい。
【0043】
(剥離工程)
次に、剥離工程について説明する。
TFT基板とCF基板とを貼り合わせた後、TFT基板側から光を照射してガラス基板11(マザーガラス)を剥離し、CF基板側から光を照射してガラス基板19(マザーガラス)を剥離する。TFT基板側の剥離工程とCF基板側の剥離工程は同一の内容であるため、以下ではCF基板側の剥離工程について説明する。
【0044】
液晶ディスプレイ10の製造工程において剥離工程に用いられる光は、ある特定の波長域を有するレーザー光であってもよいし、紫外域から可視光域、近赤外域まで、連続的な広波長域を有するフラッシュランプ光であってもよい。レーザー光としては、ガラス基板を透過する波長のレーザー光が好ましく、295nm〜400nmの光が望ましい。具体的には、固体レーザーのNd:YAGレーザーの第3高長波(355nm)やチタンサファイヤレーザーの第2高長波や第3高長波、エキシマ―レーザーのXeClレーザー(308nm)やXeFレーザー(351nm)などが望ましい。メンテナンス性、低ランニングコストの観点から固体レーザーが好ましく、高スループットの観点からエキシマ―レーザーが好ましい。フラッシュランプとしてはキセノンフラッシュランプが望ましい。
【0045】
実施の形態1に係るレーザー光による剥離では、レーザー光のビームスポットはガラス基板と比較して、数mmΦオーダーのショットエリアと小さいため、ガラス基板をスキャンすることで、剥離を行う。この際、レーザー光により光熱交換膜の光吸収基が励起され、十分に分解され、結果として被剥離層がガラス基板から剥離できるように、スキャンスピードをコントロールする必要がある。つまり、ゆっくりとスキャンすることで、単位面積当たりに照射される露光量は増え、素早くスキャンすることで、単位面積当たりに照射される露光量は小さくなる。
【0046】
レーザー光の露光量にはレーザー光の波長と、使用する光熱交換膜の種類に応じて、適切な範囲がある。露光量が不十分であると、十分に光熱交換膜が分解されず、剥離が不十分であり、露光量が多すぎると、光熱交換膜の分解が終了した後もレーザーが照射され続けるため、透明樹脂膜にダメージを与え、着色の原因となったりもする。
レーザー剥離工程のスループットを向上するために、レーザー光線の本数を1本から多数へ増やしてもよい。
【0047】
このように、ガラス基板19及びPI層17の間に光熱交換膜層18を形成することにより、ガラス基板19を透過した光をガラス基板と透明樹脂との界面に集中して吸収を起こさせることで、熱に変換し、熱交換膜層自体が有機基であることで分解、ガス化することで剥離に必要なエネルギーを得ることができる。これにより、光照射のエネルギーを利用して、ガラス基板19をPI層17から剥離することができる。
【0048】
光熱交換膜層を積極的に設けることで、剥離効率が向上し、照射時間を短くすることができるため、剥離工程(タクトタイム)の短縮化および液晶ディスプレイの生産性の向上を図ることができる。
また、剥離工程に、高価なレーザーを長時間占有しないため、製造コストを低減することができ、また、出力は低いがエキシマ―レーザーと比較して、ランニングコストが低い、固体レーザーを用いても、剥離が可能となることで、コストの低い液晶ディスプレイの生産が可能となる。さらに、上記製造工程によれば、剥離工程以外は、既存の製造工程を適用することができるため、既存の液晶ディスプレイの製造装置および製造工程をそのまま流用することができる。
【0049】
上記の剥離工程において、ガラス基板19から被剥離層を剥離した後、PI層17上に支持体4を接着する。これは、PI層17が3〜20μmと薄いため、自律性が低く破断する恐れがあるためである。支持体4の材料としては、薄い有機フィルムを用いることが好ましい。例えば、各フィルムメーカーが量産化しているガスバリア性の高いフィルムやヘイズ値を抑えた光学的機能性を備えたフィルムやPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)、アクリル等を用いることができる。尚、液晶ディスプレイ10では、偏光板を支持体4と兼用してもよい。また、商品の傷防止や保護目的のために設けられるガラスやアクリル等を支持体4と兼用してもよい。
【0050】
上記剥離工程は、他方の面(
図1の(c)のガラス基板11側)も同様に行われ、同様に支持体5が形成される。最後に、所定の位置で切断することにより、個々のフレキシブルな液晶ディスプレイ10が完成する。
尚、実施の形態1に係る液晶ディスプレイ10は、2D表示、3D表示、デュアルビュー表示、ベイルビュー表示、トリプルビュー表示を行う機能を備えていてもよい。すなわち、実施の形態1に係る剥離方法は、各種の液晶ディスプレイの製造方法に適用することができる。
【0051】
〔実施の形態2〕
図2は、実施の形態2に係る有機ELディスプレイ20の製造方法を説明するための図である。
図2において、21はガラス基板、22は光熱交換膜、23は透明樹脂層、24はベースコート、25は有機EL構造部、26はベースコート、27は透明樹脂層、28は光熱交換膜、29はガラス基板を示している。
ガラス基板21、光熱交換膜22、透明樹脂層23、ベースコート24、ベースコート26、透明樹脂層27、光熱交換膜28、ガラス基板29は、実施の形態1に係る液晶ディスプレイ10を構成するガラス基板11、光熱交換膜12、透明樹脂層13、ベースコート14、ベースコート16、透明樹脂層17、光熱交換膜18、ガラス基板19と同一の構成である。
【0052】
図3は、有機EL構造部25の構成の一部を示す図である。有機EL構造部25は、ガラス基板21、光熱交換膜22、透明樹脂層23及びベースコート24からなる下部基板2a上に形成され、一般的な有機ELディスプレイを構成する部材と同一の構成部材からなり、例えば、赤色光を発光する有機EL素子250a、緑色光を発光する有機EL素子250b及び青色光を発光する有機EL素子250cが1単位として、マトリクス状に配列されており、隔壁(バンク)251により、各有機EL素子の発光領域が画定されている。各有機EL素子は、下部電極(陽極)252、正孔輸送層253、発光層254、上部電極(陰極)255から構成されている。また、下部基板2a上には、有機EL素子を駆動するためのTFT256(a−Si、p−Si、酸化物半導体)が複数設けられている。
【0053】
(有機ELディスプレイの製造方法)
実施の形態2に係る有機ELディスプレイ20は、表示部分が柔軟に変形可能な(フレキシブル性を有する)、いわゆるフレキシブルディスプレイである。この有機ELディスプレイ20の製造工程には、有機EL基板製造工程、封止基板製造工程、両基板を貼り合わせる組み立て工程、及び、ガラス基板21・29を剥離する剥離工程が含まれる。
有機EL基板製造工程、封止基板製造工程、及び組み立て工程は、周知の製造工程を適用することができる。以下ではその一例を挙げるが、これに限定されるものではない。また、剥離工程は、実施の形態1に示した液晶ディスプレイ10の剥離工程と同一である。
【0054】
まず、ガラス基板21(マザーガラス)上に、光熱交換膜22を作製する。具体的には、下記化合物(2):
【化7】
、すなわち、光吸収基を持つシリコンカプラー(自社でベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物とアミノプロピルトリエトキシシランを反応させて合成)に1重量%溶解し、引き続き、水2重量%を添加した溶液を一晩室温にて撹拌した後、マザーガラス上にスピンコート法にて塗布し、130℃のオーブンに20分投入することで、ガラス基板上に光熱交換膜を得た。
【0055】
次に、光熱交換膜22が形成されたガラス基板21上に透明樹脂材料(ここではポリイミド(PI)前駆体であるポリアミド酸を例に挙げる)をスピンコート法又はバーコート法にて塗布し、ベークを行った後、350℃のオーブンに投入してポリアミド酸を脱水環化することで、有機溶媒に不溶で耐熱性が高いポリイミド膜を得る。これにより、3μm〜20μmの膜厚のPI層23を形成する。
次に、SiN等のベースコート24をCVD(Chemical Vapor Deposition)法またはスパッタリング法により成膜する。この時、SiO
2とSiNを交互に多数層を形成してもよい。これにより、水分及び有機成分に対するバリア膜が形成される。
次に、ガラス基板21、光熱交換膜22、透明樹脂層23及びベースコート24からなる下部基板2a上に、各有機EL素子を駆動するための複数のTFT256を所定の間隔で形成する。その後、下部基板2aの全面に、スピンコート法にて感光性のアクリル樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ法により露光、現像を行い、複数のコンタクトホール257を備えた層間絶縁膜258を形成する。このコンタクトホール257により、各TFT256の一部が露出される。
【0056】
次に、層間絶縁膜258が形成された下部基板2aの全面に、スパッタ法にてITO膜を成膜し、フォトリソグラフィ法により露光、現像を行い、エッチング法によりパターニングを行い、各TFT256と対をなすように下部電極259を形成する。尚、各コンタクトホール257において、層間絶縁膜258を貫通する下部電極252とTFT256とが電気的に接続される。
次に、隔壁251を形成した後、隔壁251で区画された各空間内に、正孔輸送層253、発光層254を形成する。また、発光層254及び隔壁251を覆うように上部電極255を形成する。上記工程により、有機EL基板が作製される。
【0057】
次に、ガラス基板29と光熱交換膜層28と透明樹脂層27とベースコート26とがこの順に形成された封止基板2bの周辺に、紫外線硬化樹脂又は熱硬化樹脂等を塗布し、不活性ガス雰囲気中で、封止基板2bと有機EL基板とを接着させることにより、有機EL素子を封入する。これにより、各有機EL素子と封止基板2bとの間には中空部261が形成される。
図2の(a)は、組み立て工程が終了した時点の様子を示している。
【0058】
その後、Nd:YAGレーザーの第3高町波(355nm)により、下部基板2a側から光を照射してガラス基板21(マザーガラス)を剥離し、封止基板2b側から光を照射してガラス基板29(マザーガラス)を剥離する。そして、剥離後のPI層23・27上に支持体6・7を形成する。この剥離工程は、実施の形態1に示した剥離工程と同一であるため、説明は省略する。これにより、フレキシブルな有機ELディスプレイ20が完成する。
尚、実施の形態2に係る有機ELディスプレイ20は、2D表示、3D表示、デュアルビュー表示、ベイルビュー表示、トリプルビュー表示を行う機能を備えていてもよい。すなわち、実施の形態2に係る剥離方法は、各種の有機ELディスプレイの製造方法に適用することができる。