特許第6238766号(P6238766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238766
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/21 20140101AFI20171120BHJP
   B23K 20/10 20060101ALI20171120BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20171120BHJP
   B23K 26/346 20140101ALI20171120BHJP
   H01M 2/26 20060101ALN20171120BHJP
【FI】
   B23K26/21 W
   B23K20/10
   B23K26/082
   B23K26/346
   !H01M2/26 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-10970(P2014-10970)
(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公開番号】特開2015-136731(P2015-136731A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227836
【氏名又は名称】日本アビオニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 厚
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−140890(JP,A)
【文献】 特開2010−184260(JP,A)
【文献】 特開2003−059487(JP,A)
【文献】 特開2004−154836(JP,A)
【文献】 特開2001−308136(JP,A)
【文献】 特開2002−252036(JP,A)
【文献】 特開平07−009169(JP,A)
【文献】 特開2009−087611(JP,A)
【文献】 特開平11−048968(JP,A)
【文献】 特開2009−190090(JP,A)
【文献】 中国特許第103042313(CN,B)
【文献】 韓国公開特許第2003−0052576(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/21
B23K 20/10
B23K 26/082
B23K 26/346
H01M 2/26
B23K 28/02
B29C 65/08
H01L 21/607
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合物に超音波振動を印加して前記被接合物を超音波溶接で仮止めする超音波溶接機と、
前記被接合物の仮止め箇所にレーザ光を照射してレーザ溶接するレーザ溶接機と
前記被接合物を水平方向に動かすことが可能なXYステージと、
前記超音波溶接機と前記レーザ溶接機と前記XYステージとを制御し、前記超音波溶接の実行後に前記被接合物を前記レーザ溶接機のレーザ照射部の下に移動させて前記レーザ溶接を実行する制御部とを備え、
前記超音波溶接機は、前記被接合物の複数箇所に超音波振動を同時に印加する超音波発振ホーンを備え、
前記制御部は、前記レーザ照射部から前記被接合物の複数の仮止め箇所にレーザ光を順次照射させることを特徴とする溶接装置。
【請求項2】
請求項記載の溶接装置において、
前記レーザ照射部は、前記被接合物の複数の仮止め箇所にレーザ光を照射するためのガルバノスキャナを備えることを特徴とする溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接装置に係り、特に複数枚の金属板の積層体からなる被接合物の接合に適した溶接装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の平板状の正極電極および負極電極をセパレータを介して積層した積層型リチウムイオン電池が使用されるようになってきている。図5(A)は積層型リチウムイオン電池の積層後の状態を示す斜視図、図5(B)は電極のタブとリード端子とを接続した状態を示す斜視図である。
【0003】
積層型リチウムイオン電池においては、図5(A)に示すようにアルミニウム(Al)等の金属箔からなる正極電極100と銅(Cu)等の金属箔からなる負極電極101とがセパレータ(不図示)を介して交互に積層されている。各正極電極100には、リード接合用のタブ102が設けられており、これらのタブ102は、図5(B)に示すように積層され、接合部106において外部接続用のリード端子104と接合される。同様に、各負極電極101には、リード接合用のタブ103が設けられ、これらのタブ103は、積層され、接合部107において外部接続用のリード端子105と接合される。
【0004】
従来、タブ102とリード端子104との接合およびタブ103とリード端子105との接合には、超音波溶接が用いられている。超音波溶接は、被接合物に垂直方向の圧力を加えながら、接合面に平行な超音波振動を印加して接合する方法である。しかし、超音波溶接には、溶接時の超音波振動によって電池から微小な金属粉が脱落するという問題点があった。また、電池の容量増加に伴う電極の枚数増加によりタブの枚数が増加すると、必要な溶接エネルギーが増加するので、超音波の出力を上げる必要があり、タブが破れたり切れたりする可能性があった。また、溶接エネルギーの増加により超音波機器の寿命が短くなるという問題点があった。
【0005】
そこで、被接合物の破損や金属粉が生じない範囲で超音波溶接により被接合物を仮止めし、抵抗溶接により本溶接を行う方法が提案されている(特許文献1参照)。
抵抗溶接は、被接合物を上下から一対の電極で挟み込み押圧しながら、電極間に電流を流して、発生するジュール熱で被接合物を溶融させて接合を行う方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5091171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された方法によれば、超音波溶接で問題となる被接合物の破損や金属粉の発生、超音波機器の短寿命化を抑制することができる。
しかしながら、上記のようにAlからなる複数枚の板(Al箔)を抵抗溶接する場合、Alの電気抵抗が低く、発熱し難いため、大きな面積を抵抗溶接しようとすると、大容量の溶接機が必要になるという問題点があった。また、電極に大電流を流す必要があり、高温となる電極の消耗が激しいという問題点があった。特に、一般的に用いられているCu合金の電極を利用して複数枚のAl箔を接合しようとすると、電極の主成分であるCuとAlとが合金化反応しCu−Al合金が生成されることで電極先端が著しく消耗するため、頻繁に電極の研磨をしなければならない。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複数枚の板の積層体を溶接する場合でも、適切な溶接を実現することができる溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の溶接装置は、被接合物に超音波振動を印加して前記被接合物を超音波溶接で仮止めする超音波溶接機と、前記被接合物の仮止め箇所にレーザ光を照射してレーザ溶接するレーザ溶接機と、前記被接合物を水平方向に動かすことが可能なXYステージと、前記超音波溶接機と前記レーザ溶接機と前記XYステージとを制御し、前記超音波溶接の実行後に前記被接合物を前記レーザ溶接機のレーザ照射部の下に移動させて前記レーザ溶接を実行する制御部とを備え、前記超音波溶接機は、前記被接合物の複数箇所に超音波振動を同時に印加する超音波発振ホーンを備え、前記制御部は、前記レーザ照射部から前記被接合物の複数の仮止め箇所にレーザ光を順次照射させることを特徴とするものである。
また、本発明の溶接装置の1構成例において、前記レーザ照射部は、前記被接合物の複数の仮止め箇所にレーザ光を照射するためのガルバノスキャナを備えることを特徴とするものである
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、超音波溶接で被接合物の仮止めを行い、レーザ溶接で被接合物の本溶接を行うことにより、従来の超音波溶接で問題となる被接合物の破損や金属粉の発生、超音波溶接機の短寿命化を抑制することができ、また従来の抵抗溶接のような大容量の溶接機を用いる必要がなくなるので、複数枚の金属板の積層体からなる被接合物の適切な溶接を実現することができる。
【0011】
また、本発明では、レーザ溶接を用いることにより、複数の仮止め箇所を1点ずつ順番に溶接することが可能になるので、被接合物の広い面積を溶接することができる。
【0012】
また、本発明では、ガルバノスキャナを用いることで、複数の仮止め箇所へのレーザ光の照射を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る溶接装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態における超音波溶接の動作を説明する図である。
図3】超音波溶接後の被接合物の平面図および断面図である。
図4】本発明の実施の形態におけるレーザ溶接の動作を説明する図である。
図5】積層型リチウムイオン電池の積層後の状態および電極のタブとリード端子とを接続した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る溶接装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態の溶接装置は、被接合物10に超音波振動を印加する超音波発振ホーン1と、超音波発振ホーン1を上下方向に移動させることが可能で、被接合物10を超音波発振ホーン1で押圧することが可能な上下機構2と、超音波発振ホーン1に電力を供給する電源3と、被接合物10を水平方向に動かすことが可能なXYステージ4と、レーザ溶接機5と、レーザ溶接機5から光ファイバ6で伝送されたレーザ光を被接合物10に照射するガルバノスキャナ7(レーザ照射部)と、溶接装置全体を制御する制御部8とを備えている。超音波発振ホーン1と上下機構2と電源3とは、超音波溶接機を構成している。
【0015】
次に、本実施の形態の被接合物10について説明する。被接合物10は、Al若しくはAl合金からなる板状部材11(図5(A)、図5(B)のリード端子104,105)と、板状部材11の上に配置されるAl若しくはAl合金からなる複数枚の板の積層体12(図5(A)、図5(B)のタブ102,103)と、積層体12の上に配置されるAl若しくはAl合金からなる保護用の板状部材13とから構成される。板状部材11の厚さは例えば1mm程度である。積層体12を構成する複数枚の板(Al箔)の1枚あたりの厚さは例えば10μm〜150μm程度である。板状部材13は、積層体12の破損を防止する目的で設けられる。板状部材13は、積層体12と同材質であることが好ましい。板状部材13の厚さは例えば100μm程度である。
【0016】
以下、溶接装置の動作を説明する。最初に、制御部8は、XYステージ4を水平方向((積層体の積層方向と垂直な方向)に移動させて被接合物10を超音波発振ホーン1の真下の位置に移動させ、上下機構2により超音波発振ホーン1を下降させて、図2に示すように被接合物10を上方向から加圧する。このような状態で、制御部8は、電源3から超音波発振ホーン1に電力を供給させる。これにより、超音波発振ホーン1は、超音波振動を発生する。
【0017】
超音波発振ホーン1から被接合物10に超音波振動が印加されると、被接合物10の接合面(板同士の接合面)に発生する摩擦熱により被接合物10が溶融する。ただし、本実施の形態では、通常の超音波溶接と比較して超音波振動のエネルギーを低くする。つまり、超音波溶接のみで被接合物10を溶接するのに必要な超音波振動のエネルギーの累積値よりも、本実施の形態の超音波振動のエネルギーの累積値の方が低くなるように、電源3からの供給電力および電力供給時間(溶接時間)を予め設定しておく。こうして、超音波振動のエネルギーを低くすることで、被接合物10の板同士が密着する程度の仮止めを行う。溶接装置のユーザは、予め対象となる被接合物10を用いて溶接条件設定のための溶接試験を行い、被接合物10の破損や金属粉が生じない範囲で、被接合物10の板同士が密着したときの供給電力値および溶接時間を記憶部18に予め設定しておけばよい。
【0018】
なお、超音波発振ホーン1の被接合物10と対向する先端面には、複数のリブ(突起)9が2次元的に配置されており、リブ9と被接合物10との接触部分に振動エネルギーを集中させるようになっている。したがって、超音波溶接後の被接合物10には、図3(A)の平面図で示すように複数の仮止め箇所20が形成されることになる。また、図3(B)の断面図で示すように、超音波溶接中の加圧と溶融により、仮止め箇所20には窪みが生じる。
【0019】
超音波溶接の終了後、制御部8は、XYステージ4を移動させて被接合物10をガルバノスキャナ7の真下の位置に移動させる。ガルバノスキャナ7は、レーザ溶接機5から光ファイバ6で伝送されたレーザ光を反射させるミラーと、このミラーを動かすモータとを備え、レーザ溶接機5からのレーザ光を所望の位置に照射できるようになっている。
制御部8は、レーザ溶接機5とガルバノスキャナ7とを制御して、図4に示すようにレーザ光を被接合物10の複数の仮止め箇所20に順次照射する。
【0020】
レーザ光を照射することにより、仮止め箇所20の被接合物10が発熱して溶融し接合が得られる。被接合物10を超音波発振ホーン1の真下の所定の位置に移動させるようにすれば、被接合物10上での仮止め箇所20は、超音波発振ホーン1のリブ9の配置によって決まるので、既知の位置となる。そして、被接合物10をガルバノスキャナ7の真下の所定の位置に移動させるようにすれば、レーザ光を既知の仮止め箇所20の位置に照射すればよく、仮止め箇所20とレーザ光の照射位置との位置決めは、容易に実現可能である。制御部8は、レーザ溶接機5を制御して溶接条件を設定すると共に、ガルバノスキャナ7を動かしてレーザ光の照射位置を制御する。
【0021】
被接合物10の1箇所あたりのレーザ出力値およびレーザ照射時間(溶接時間)は記憶部15に予め設定されている。溶接装置のユーザは、予め対象となる被接合物10を用いて溶接条件設定のための溶接試験を行い、適切な溶接が得られたときのレーザ出力値および溶接時間を記憶部15に予め設定しておけばよい。
【0022】
こうして、本実施の形態では、超音波溶接で被接合物10の仮止めを行い、レーザ溶接で被接合物10の本溶接を行う。本実施の形態では、超音波振動のエネルギーを低くすることにより、超音波溶接で問題となる被接合物10の破損や金属粉の発生、超音波発振ホーン1の短寿命化を抑制することができる。また、レーザ溶接を用いることにより、複数の仮止め箇所20を1点ずつ順番に溶接することが可能になるので、被接合物10の広い面積を溶接することができ、抵抗溶接の場合のような大容量の溶接機が不要となる。また、本実施の形態では、ガルバノスキャナ7を用いることで、複数の仮止め箇所20へのレーザ光の照射を短時間で行うことができる。
【0023】
本実施の形態の制御部8は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、複数枚の金属板の積層体を接合する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1…超音波発振ホーン、2…上下機構、3…電源、4…XYステージ、5…レーザ溶接機、6…光ファイバ、7…ガルバノスキャナ、8…制御部、9…リブ、10…被接合物、11,13…板状部材、12…積層体、15…記憶部、20…仮止め箇所。
図1
図2
図3
図4
図5