特許第6238788号(P6238788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6238788-エレクトレットコンデンサヘッドホン 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238788
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】エレクトレットコンデンサヘッドホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/06 20060101AFI20171120BHJP
   H04R 19/01 20060101ALI20171120BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H04R3/06
   H04R19/01
   H04R1/10 101B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-34791(P2014-34791)
(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-162695(P2015-162695A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭47−027927(JP,U)
【文献】 特開昭54−021324(JP,A)
【文献】 実開昭52−126824(JP,U)
【文献】 実開平06−021173(JP,U)
【文献】 特開昭50−074748(JP,A)
【文献】 特開昭61−110985(JP,A)
【文献】 特開2005−237157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/06
H04R 1/10
H04R 19/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇圧トランスによって昇圧して得た音声信号電圧を受けるコネクタ部と、当該コネクタ部に接続されて音声信号電圧を伝送する信号線を備えたコードと、前記コードを介して音声信号電圧を受けると共に、音声信号電圧に基づいて音声波を再生するヘッドホンユニットとが備えられ、前記ヘッドホンユニットは、振動板の両面に対向するように、それぞれにエレクトレット誘電膜を備えた一対の固定電極が、前記振動板に対して所定の間隔をもって配置されたエレクトレットコンデンサヘッドホンであって、
前記昇圧トランスの二次側巻線と、前記コードの信号線の一端部との間に接続された前記コネクタ部には、前記音声信号電圧を両端子に受けるスパークギャップ素子が配置され、前記コードを介した信号線の他端部に接続された前記ヘッドホンユニットには、前記音声信号電圧を両端子に受けるバリスタが、前記一対の固定電極間に接続されていることを特徴とするエレクトレットコンデンサヘッドホン。
【請求項2】
記音声信号電圧は、パワーアンプによって電力増幅した出力を、前記昇圧トランスによって昇圧して得たものであることを特徴とする請求項1に記載されたエレクトレットコンデンサヘッドホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過電圧に対する保護対策を施したエレクトレットコンデンサヘッドホンに関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトレットコンデンサヘッドホンを構成するヘッドホンユニットは、振動板の両側にそれぞれにエレクトレット誘電体膜を備えた一対の固定電極が、前記振動板に対して定められた間隔をもって配置される。
そして、一対の固定電極間に音声信号電圧を印加することにより、前記振動板が駆動され音声波が再生される。振動板の駆動により再生される音声波は、前記固定電極に穿設された複数の孔を介して放射される。
【0003】
この種のコンデンサヘッドホンにおいては、一般に音声信号電圧が100Vrmsである時に、放射される音圧は100dB程度となる。そして、前記音声信号電圧を得る手段としては、専用増幅器を用いる場合と、昇圧比が例えば、1:80程度の昇圧トランスを用いる場合がある。
【0004】
前者の専用増幅器を用いる例においては、専用増幅器には例えば±350V程度の電源電圧が用意されており、ヘッドホンユニットの一対の固定電極間に加わる最大信号電圧は、前記電源電圧で制限を受ける。このために、過電圧による火花放電などの発生により振動板を損傷させるという事態は一応、避けることができる。
【0005】
これに対して、後者の昇圧トランスを利用する例においては、昇圧トランスの一次側にパワーアンプの出力端子が接続され、二次側の昇圧された音声信号電圧が、ヘッドホンユニットの一対の固定極間に加えられる。
この場合、パワーアンプはユーザが用意したものが用いられるため、パワーアンプのボリューム設定を不用意に上げた場合、前記トランスで昇圧された高圧の音声信号電圧が、ヘッドホンユニットに印加されることになる。
【0006】
これにより、ヘッドホンユニットの一対の固定電極間に火花放電が生ずるという問題が発生し、固定電極間に配置された振動板を焼損させる事態が発生する。
また、前記した火花放電が発生すると、この火花放電により両極性(正および負)のイオンが発生するために、その近傍におけるエレクトレット誘電体膜が中和されて、電荷が損失するという現象も招来される。
【0007】
ところで、従来におけるエレクトレット誘電体膜が備えられた例えばコンデンサマイクロホンにおいては、FETなどを用いたインピーダンス変換器の回路内部に、バリスタやツェナーダイオードなどを搭載した構成が開示されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0008】
しかしながら、前記した特許文献1および2に示された例は、例えば携帯電話機に搭載されて高周波ノイズを除去するために、もしくは静電結合に起因する雑音の発生を防止するためにバリスタやツェナーダイオード等が用いられている。
これによると、後述する本願の発明に係るエレクトレットコンデンサヘッドホンを対象として、性質の異なる二つの過電圧保護素子を備えたものとは、その作用効果が異なるものであると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2003−230195号公報
【特許文献2】特開平2006−287326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、前記したとおりエレクトレットコンデンサヘッドホンを対象とし、特にパワーアンプに接続された昇圧トランスを利用する構成において、ヘッドホンユニットに加わる過電圧に対し、確実な保護作用を得ることを課題とするものである。
加えてこの発明は、ヘッドホンユニットに配置されたエレクトレット誘電体膜の電荷の保護対策も備えたエレクトレットコンデンサヘッドホンを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係るエレクトレットコンデンサヘッドホンは、昇圧トランスによって昇圧して得た音声信号電圧を受けるコネクタ部と、当該コネクタ部に接続されて音声信号電圧を伝送する信号線を備えたコードと、前記コードを介して音声信号電圧を受けると共に、音声信号電圧に基づいて音声波を再生するヘッドホンユニットとが備えられ、前記ヘッドホンユニットは、振動板の両面に対向するように、それぞれにエレクトレット誘電膜を備えた一対の固定電極が、前記振動板に対して所定の間隔をもって配置されたエレクトレットコンデンサヘッドホンであって、前記昇圧トランスの二次側巻線と、前記コードの信号線の一端部との間に接続された前記コネクタ部には、前記音声信号電圧を両端子に受けるスパークギャップ素子が配置され、前記コードを介した信号線の他端部に接続された前記ヘッドホンユニットには、前記音声信号電圧を両端子に受けるバリスタが、前記一対の固定電極間に接続されていることを特徴とする。
【0012】
この場合、前記コネクタ部において受ける音声信号電圧は、パワーアンプによって電力増幅された出力を、前記昇圧トランスによって昇圧して得たものとなる。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係るエレクトレットコンデンサヘッドホンによると、コネクタ部にスパークギャップ素子が配置され、ヘッドホンユニット側にバリスタが配置されて、過電圧に対する保護素子が二段構成で配置される。
この構成によると、コネクタ部に配置したスパークギャップ素子は、過電圧に対する応答速度が早いために、瞬間的に高いピークを有する過電圧に対して十分な保護作用を得ることができる。このため、インパルス幅の狭いサージ電圧に対しても十分な保護作用を得ることができる。
【0014】
一方、前記バリスタは、前記したスパークギャップ素子により除くことのできない過電圧から、ヘッドホンユニットを保護する機能を果たす。
特にバリスタは、加えられる電圧に応じて抵抗値が非線形に変化する特性を有しており、所定の電圧値の範囲においては比較的高い抵抗値を示し、その電圧値を超える場合には、急激に抵抗値が下がり大電流をバイパスさせることができる。
【0015】
加えて、ヘッドホンユニットに配置されるエレクトレット誘電膜は、対向する一対の固定電極の内側に、振動板の両面に対向するように配置さており、一対の固定電極間に前記バリスタが接続されることにより、バリスタが等価的に固定電極間を高抵抗で接続した状態になされる。したがって前記バリスタの存在によって、それぞれのエレクトレット誘電膜は一対の固定電極によってあたかも静電シールドされた状態に置かれる。このためにエレクトレット誘電膜は外部からの電界の影響を受けて電荷が消滅(劣化)するのを効果的に阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明に係るエレクトレットコンデンサヘッドホンについて、音声信号電圧の供給経路も含めて示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係るエレクトレットコンデンサヘッドホンについて、図1に示す実施の形態に基づいて説明する。
図1には、エレクトレットコンデンサヘッドホンと、このヘッドホンに対して音声信号電圧を供給する信号源も含めてブロック図で示しており、図1は昇圧トランスを利用してエレクトレットコンデンサヘッドホンに供給する音声信号電圧を得る例を示している。
【0018】
符号1は、プリメインアンプであり、信号の入力端子Inを備えるプリアンプA1の出力側には、出力調整用のポテンションメータ(ボリューム)VRが接続されており、このポテンションメータVRを介した音声信号が、メインアンプ(パワーアンプ)A2に供給されるように構成されている。
【0019】
前記メインアンプA2の出力端子Outには、昇圧トランス2の一次側巻線2aが接続されており、メインアンプA2によって電力増幅された音声信号は、昇圧トランス2の二次側巻線2bにおいて昇圧されて、エレクトレットコンデンサヘッドホン側に音声信号電圧として供給される。
【0020】
エレクトレットコンデンサヘッドホンには、昇圧トランス2からの音声信号電圧を受けるコネクタ部3と、当該コネクタ部に接続されて音声信号電圧を伝送する信号線13a,13bを備えたコード4と、前記コード4を介して音声信号電圧を受けると共に、音声信号電圧に基づいて音声波を再生するヘッドホンユニット5とが備えられている。
【0021】
前記コネクタ部3には、昇圧トランス2の二次側出力である音声信号電圧を受ける一対のコネクタピン11a,11bが具備され、この一対のコネクタピン11a,11bの間には、スパークギャップ素子12が接続され、音声信号電圧をスパークギャップ素子12の両端子に受けるように構成されている。
そして、前記コネクタ部3には、前記したとおり音声信号電圧を伝送する信号線13a,13bを備えたコード4が接続され、このコード4を介してヘッドホンユニット5に対して、音声信号電圧が供給されるように構成されている。
【0022】
前記ヘッドホンユニット5には、支持リング14よって所定の張力が与えられた例えば、合成樹脂フィルムによる振動板15と、この振動板15の両側に、振動板15に向かって、それぞれにエレクトレット誘電体膜16a,16bが配置された一対の固定電極17a,17bが具備されている。
加えて、ヘッドホンユニット5内において、前記一対の固定電極17a,17bの間にバリスタ18が接続され、これにより音声信号電圧をバリスタ18の両端子に受けるように構成されている。
このように、ヘッドホンユニット5は、エレクトレットコンデンサヘッドホンユニットを構成している。
【0023】
以上説明したエレクトレットコンデンサヘッドホンによると、信号源からの音声信号電圧を受けるコネクタ部3には、過電圧の保護素子としてスパークギャップ素子12が配置される。またコード4を介したヘッドホンユニット5側には、過電圧の保護素子としてバリスタ18が配置され、過電圧に対する保護素子が少なくとも二段構成で具備される。
そして、エレクトレットコンデンサヘッドホンの入口側のコネクタ部3に配置されたスパークギャップ素子は、特に過電圧に対する応答速度が早いために、瞬間的に高いピーク値を有するインパルス電圧に対して、ヘッドホンの入口部分で確実な保護機能を果たすことができる。つまり、瞬間的に高いピーク値を有するインパルス幅の狭いサージが生じると、信号線13a,13b間の線間容量によりサージ電圧が遅延されて伝送する。このため、ヘッドホンユニット5に至るまでの経路で絶縁破壊することがある。そこで、応答速度の速いスパークギャップ素子12をコネクタ部3に配置することにより、サージに対する保護を行うことができる。
【0024】
また、ヘッドホンユニット5側に配置されるバリスタ18は、前記スパークギャップ素子12により除くことのできない過電圧から、ヘッドホンユニット5を保護する機能を果たす。加えてバリスタ18は、両端電圧が低い範囲においては比較的高い抵抗値を示すので、バリスタ18が等価的に固定電極間を高抵抗で接続してエレクトレット誘電膜16a,16bを静電シールドするものとなる。
したがってヘッドホンユニット5側にバリスタ18を配置することにより、過電圧保護と共に、エレクトレット誘電膜16a,16bの外部電界からの保護も果たすことができるなど、前記した発明の効果の欄に記載したとおりの作用効果を得ることができる。
【0025】
なお、実施形態では昇圧トランスによって昇圧した音声信号電圧をエレクトレットコンデンサヘッドホンに供給した例を示したが、これに限ることはなく、例えば専用増幅器を用いたものに適用することもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 プリメインアンプ
2 昇圧トランス
3 コネクタ部
4 コード
5 ヘッドホンユニット
11a,11b コネクタピン
12 スパークギャップ素子
13a,13b 信号線
14 支持リング
15 振動板
16a,16b エレクトレット誘電体膜
17a,17b 固定電極
18 バリスタ
図1