(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリカプロラクトンポリオールの量が、前記水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、35質量部以上60質量部以下である請求項1から4のいずれか1項に記載のインキ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の、インキおよびそのインキ層を有する樹脂フィルムを詳細に説明する。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、組成物中の各成分の量は、特に断らない限り、各成分に複数の種類の物質が含まれる場合に複数の種類の物質を合計した量で表す。
本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルの一方または両方を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの一方または両方を意味する。
本明細書において、インキの伸び特性が優れるとは、インキ層を有する樹脂フィルムを伸張した際に、インキ層が樹脂フィルムとともに伸張し、インキ層に破断やクラック等が起きないことを意味する。
また、本明細書において、インキの耐摩耗性が優れるとは、インキ層を有する樹脂フィルムを後述する耐摩耗性試験で外観異常がないことを意味する。
【0020】
[インキ]
本発明のインキは、水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂と、分子量が600以上2000以下であるポリカプロラクトンポリオールと、架橋剤とを含む。
【0021】
本発明のインキは、水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂と、前記重合体とポリカプロラクトンポリオールとが架橋剤を介して架橋反応するため、インキが硬化する。したがって、本発明のインキは、優れた耐摩耗性と伸び特性とを示す。
【0022】
本発明のインキは、(メタ)アクリル樹脂を含むため、インキの耐摩耗性および耐侯性が共に良好となる。
【0023】
本発明のインキは、透明であってもよい。
【0024】
[水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂]
本発明のインキは、水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂を含む。前記水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂は、その分子中に水酸基を有する(メタ)アクリル単量体に由来の構造単位を含む重合体である。
前記水酸基を有する(メタ)アクリル単量体は、たとえば、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの水酸基を有する(メタ)アクリル単量体は、単独で、また2種類以上を用いることができる。
【0025】
本発明のインキが含むことができる水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂は、その分子中に、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。本発明のインキが含む水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂が含むことができる単量体は、たとえば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メトキシ(メタ)アクリレート、2−エトキシ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロルプロパントリ(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸である。
【0026】
本発明のインキが含むことができる水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度は、20℃以上60℃以下であることが好ましい。前記ガラス転移温度が20℃以上であれば、本発明のインキは、インキの耐摩耗性がより優れるとともにインキが硬化した後のインキ表面のべとつきがない。また、前記ガラス転移温度が60℃以下であれば、本発明のインキは、インキの伸び特性がより優れるため、複雑な形状を有する車体表面に樹脂フィルムを貼りつけた際も十分に追随する。
本発明のインキが含むことができる水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂のガラス転移温度は、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体と、それ以外の単量体との種類および組成比を適切に選ぶことで、調整することができる。
【0027】
本発明のインキが含むことができる水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量は、7000以上12000以下、より好ましくは8000以上10000以下であることが好ましい。前記重量平均分子量が7000以上であれば、本発明のインキは、より耐摩耗性が優れる。また、前記重量平均分子量が12000以下であれば、本発明のインキは、伸び特性がより優れるとともに、インキの粘度が高くなりすぎず、インキの希釈溶剤の量を抑えることができ、たとえばスクリーン印刷時の印刷作業性を改善できるため好ましい。
【0028】
なお、前記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて標準ポリスチレン換算法により求めることができる。より詳しくは、GPC分析システム装置として東ソー(株)製HLC−8220を用い、カラムとして東ソー(株)製TSKgel SuperMultiporeHZ−Hを直列に2本接続し、検出器として東ソー(株)製HLC−8220装置に組込まれた示差屈折率計(RI)を用い、移動相にテトラヒドロフランを用い、流速0.35mL/分、カラム温度40℃の条件で重量平均分子量を求めることができる。
【0029】
本発明のインキが含むことができる水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂の水酸基価は、25mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。前記水酸基価が25mgKOH/g以上であれば耐摩耗性が優れ、100mgKOH/g以下であれば伸び特性が優れる。
なお、前記水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂の水酸基価は、JIS K0070に記載されている方法により求めることができる。
【0030】
本発明に用いることができる水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂は、水酸基を有する(メタ)アクリル単量体単独、または水酸基を有する(メタ)アクリル単量体とそれ以外の単量体とを、溶液重合、バルク重合、エマルション重合等することで得ることができる。
【0031】
なお、本発明に用いることができる水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂が、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を含む(メタ)アクリル単量体に由来の構造単位を含めば、前記インキの凝集力が向上し、かつ樹脂フィルムなどの基材との密着性が向上するために好ましい。
【0032】
[ポリカプロラクトンポリオール]
本発明のインキは、分子量が600以上2000以下であるポリカプロラクトンポリオールを含む。より好ましくは、分子量が800以上1000以下であるポリカプロラクトンポリオールを含む。
本発明のインキは、ポリカプロラクトンポリオールを含むため、優れた伸び特性を有する。
前記ポリカプロラクトンポリオール1分子が有する水酸基の数は2個以上である。より好ましくは、3個以上5個以下である。
前記ポリカプロラクトンポリオール1分子が有する水酸基の数が2個以上であるため、前記水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂との架橋反応が十分進行する。
さらに、前記ポリカプロラクトンポリオール1分子が有する水酸基の数が3個以上であれば、ポリカプロラクトンポリオールの結晶性が小さいことでインキとの相溶性がより優れることからインキ中により均一に分散することで前記インキを含む樹脂フィルムの外観不良が起こらないため好ましい。
前記ポリカプロラクトンポリオールの1分子が有する水酸基の数が5個以下であれば、架橋密度が適切な範囲となりインキの伸び特性が十分保たれるため好ましい。
前記ポリカプロラクトンポリオールの分子量が600以上であるため、前記ポリカプロラクトンポリオールが架橋する際に架橋点の間隔が十分保たれるために、耐摩耗性とともに伸び特性も優れる。
また、前記分子量が2000以下であるため、前記ポリカプロラクトンポリオールがインキに十分相溶し、前記ポリカプロラクトンポリオールがインキ中に均一に分散することで透明性の低下等の外観不良が起こらない。
さらに、前記ポリカプロラクトンポリオールの分子量が600以上2000以下であるため、粘度が大きくなることによる印刷作業性の低下や、粘度が小さくなることにより起こるインキ層の厚みの低下に起因する耐摩耗性の低下を抑制することができる。
【0033】
前記ポリカプロラクトンポリオールは市販のものを使用することができる。分子量が600以上2000以下であるポリカプロラクトンポリオールは、たとえば、
(株)ダイセル製 プラクセル208(分子量830、水酸基の数 2個)、プラクセル210(分子量1000、水酸基の数 2個)、プラクセル212(分子量1250、水酸基の数 2個)、プラクセル220(分子量2000、水酸基の数 2個)、プラクセル308(分子量850、水酸基の数 3個)、プラクセル309(分子量900、水酸基の数 3個)、プラクセル312(分子量1250、水酸基の数 3個)、プラクセル320(分子量2000、水酸基の数 3個)、プラクセル410(分子量1000、水酸基の数 4個)、
パーストープジャパン社製 CAPA2085(分子量830、水酸基の数 2個)、CAPA2100(分子量1000、水酸基の数 2個)、CAPA2121(分子量1250、水酸基の数 2個)、CAPA2125(分子量1250、水酸基の数 2個)、CAPA2200(分子量2000、水酸基の数 2個)、CAPA2201(分子量2000、水酸基の数 2個)、CAPA2205(分子量2000、水酸基の数 2個)、CAPA2209(分子量2000、水酸基の数 2個)、CAPA3091(分子量900、水酸基の数 3個)、CAPA3121J(分子量1200、水酸基の数 3個)、CAPA3201(分子量2000、水酸基の数 3個)およびCAPA4101(分子量1000、水酸基の数 4個)が挙げられる。
なお、本発明のインキが含むポリカプロラクトンポリオールは、単独で、また2種類以上を混合して用いることができる。
【0034】
本発明のインキが含むことができるポリカプロラクトンポリオールの量は、前記水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、35質量部以上60質量部以下の範囲であることが好ましく、40質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。前記水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂100質量部に対して、前記ポリカプロラクトンポリオールが35質量部以上であれば、伸び特性がより優れ、また、60質量部以下であれば、耐摩耗性がより優れるとともに、インキを備えた樹脂フィルムのブロッキングを抑制される。
【0035】
前記ポリカプロラクトンポリオールは、たとえば同じくインキに物性調整のために広く用いられるポリエステルポリオールと比較して、前記水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂との相溶性が優れ、インキ中に均一に分散する。そのため、本発明のインキを含む層を有する樹脂フィルムは、透明性(光透過性)の低下等の外観不良や、意匠性の低下が抑制される。
さらに、ポリカプロラクトンポリオールは、ポリエステルポリオールと比較して耐加水分解性が優れるため、本発明のインキを含む層を有する樹脂フィルムの耐侯性が良好となる。
【0036】
本発明のインキは、インキが含む成分が相溶し、光を透過するため、各種基材を保護するいわゆるクリアインキとして好適に用いることができる。
【0037】
前記ポリカプロラクトンポリオールは、分子中に複数の水酸基を有する化合物にカプロラクトンを反応させることにより得ることができる。
【0038】
[架橋剤]
本発明のインキは、架橋剤を含む。本発明のインキが含むことができる架橋剤は、前述した水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂とポリカプロラクトンポリオールとが共に有する水酸基と架橋反応することで、本発明のインクを硬化させる作用を示す。
【0039】
本発明のインキが含むことができる架橋剤は、たとえば1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。このような化合物は、たとえば、
トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびこれらの水添物が挙げられる。
これらの架橋剤は、単独で、また2種類以上を混合して用いることができる。
【0040】
本発明のインキが含むことができる架橋剤がHMDIであれば、前記インキの伸び特性がより優れるため好ましい。特に前記架橋剤がイソシアヌレート型のHMDIであれば、硬化後のインキの耐溶剤性が改善できるため好ましい。
さらに、本発明のインキが含むことができる架橋剤がHMDIであれば、その分子中に芳香環を有しないため、たとえば紫外線が照射によるインキの黄変が抑えられるため好ましい。
【0041】
[その他の添加剤]
本発明のインキは、粘度を調整するために有機溶剤を含んでもよい。
本発明のインキが含むことができる有機溶剤は、たとえば、
シクロヘキサノン、イソホロン、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、
酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテートなどのエステル系溶剤、
ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ミネラルスピリット、ケロシンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、
トルエン、キシレン、1,2,4-トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤、
塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶剤、
が挙げられる。
これらの溶剤は、単独で、また2種類以上を混合して用いることができる。
【0042】
なお、本発明のインキをスクリーン印刷に用いる際には、蒸発速度比が0.3以下の溶剤を用いることが好ましい。ここで蒸発速度比とは、酢酸ブチルの蒸発速度を1とした際の各溶剤の相対的な速度の値である。溶剤の蒸発速度比の数値が小さいほど、蒸発速度は遅い。
本発明のインキが蒸発速度比で0.3以下の溶剤を含む場合、スクリーン印刷時の版乾きを抑制し、作業性が向上することができる。
蒸発速度比が0.3以下の溶剤は、たとえば、シクロヘキサノン(蒸発速度比0.23)および沸点が150℃〜170℃の範囲である芳香族炭化水素系溶剤の混合物(同0.3)などである。
【0043】
本発明のインキは、レベリング剤を含んでもよい。本発明のインキがレベリング剤を含む場合、レベリング剤がインキの乾燥時に塗膜表面に配向して、塗膜の表面張力を均一化することで、浮きまだらやハジキなどの外観不良を防止するとともに樹脂フィルムなどの基材との濡れが改善できるため好ましい。
本発明のインキに好適に用いることができるレベリング剤は、たとえば、フッ素系レベリング剤、ケイ素系レベリング剤、およびアクリル系レベリング剤が挙げられる。
【0044】
本発明のインキは、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤、着色剤、光輝剤およびフィラーを含んでもよい。
【0045】
[塗工]
本発明のインキは、各種の塗工に用いることができる。
また、本発明のインキは、スクリーン印刷、グラビア印刷、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、スプレー塗装、静電塗装、浸漬塗装などに好適に用いることができる。
【0046】
本発明のインキは、ポリカプロラクトンポリオールの分子量が600以上2000以下であるため、インキの粘度が適切となり、特にスクリーン印刷に好適に用いることができる。
【0047】
[樹脂フィルム]
本発明の別の態様は、前記インキを含む層を有する樹脂フィルムである。
【0048】
本発明の樹脂フィルムが含むことができる樹脂は、たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(エチレン-テトラフルオロエチレン)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスチレンおよびポリウレタン等の各種の樹脂を挙げることができる。
これらの樹脂は、単独で、また2種類以上を混合して用いることができる。また、異なる種類の樹脂を積層して用いることができる。
【0049】
本発明の樹脂フィルムが含むことができる樹脂がポリ塩化ビニルであれば、可塑剤等を添加することで樹脂フィルムの伸び特性を容易に調整することができ、その場合複雑な車体形状に貼着する際に樹脂フィルムが十分追随することができるため好ましい。また、前記インキと、前記樹脂フィルムが含む塩化ビニル樹脂との密着性が優れるため、樹脂フィルムの使用時にインキ層の剥離が抑えられ、耐候性がより優れるため好ましい。
【0050】
本発明の樹脂フィルムが有するインキ層の厚みは、1μm〜100μmの範囲であることが好ましく、3μm〜20μmの範囲であることがより好ましい。
特に本発明のインキをスクリーン印刷に用いる場合には、インキ層の厚みが3μm〜20μmの範囲であることがより好ましい。
【0051】
本発明の樹脂フィルムは、本発明のインキ以外の印刷層を有してもよい。前記樹脂フィルムは、本発明のインキ以外の印刷層を有する場合、たとえば車両の装飾や識別を行うことができる。さらに、前記印刷層の上に、本発明のインキを含む層を前記樹脂フィルムの最外層に設けることで、前記樹脂フィルムの意匠性を保護することができる。つまり、本発明のインキは、いわゆるクリアインキとして好適に用いることができる。
本発明の樹脂フィルムが有することができる前記印刷層は、特に制限はないが、たとえば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタンなどの各種の樹脂と各種の着色剤とを含むインキを印刷することにより設けられる。
なお、これらの樹脂は、単独で、また2種類以上を混合して用いることができる。
【0052】
本発明の樹脂フィルムは、たとえば車体などの被着体に貼着するために、各種粘着剤層または接着剤層を有することが好ましい。
【0053】
本発明の樹脂フィルムの厚さは、20μm〜500μmの範囲であることが好ましく、30μm〜100μmの範囲であることがより好ましい。
【0054】
[特性の評価]
本発明のインキおよびそのインキ層を有する樹脂フィルムの伸び特性は、JIS Z0237に準拠し、引張試験機を用いて最大破断伸度を求めることで評価することができる。
たとえば、インキ層を有しないフィルム単体の最大破断伸度が150%のフィルムを用いて伸び特性を評価する場合、本発明のインキを含む層を有する樹脂フィルムを40%以上伸ばしても、複雑な車体形状に貼着する際に樹脂フィルムが十分追随でき、クラック、破断、外観異常などが起きず、意匠性が損なわれない。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0056】
[インキの調製]
(実施例1)
水酸基を有する(メタ)アクリル樹脂を固形分で50質量%含む樹脂組成物(日本カーバイド工業(株)製、商品名ニッセツSY2485;ガラス転移温度が51℃、重量平均分子量が9000、樹脂の水酸基価が50mgKOH/g)100質量部と、分子量が850であり1分子中に3個の水酸基を有するポリカプロラクトンポリオール((株)ダイセル製、商品名プラクセル308)20質量部と、ケイ素系レベリング剤(東レダウコーニングシリコン社製、商品名SC−5570)0.01質量部とを撹拌混合した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネートを含む架橋剤(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名コロネートHX)30質量部と、シクロヘキサノン7.5質量部および沸点が150℃〜170℃の範囲である芳香族炭化水素系溶剤の混合物(東燃ゼネラル石油(株)製、商品名ソルベッソ100)7.5質量部とを加えて攪拌混合することで、実施例1のインキを得た。
【0057】
(実施例2)
ポリカプロラクトンポリオールを、分子量が1000であり1分子中に2個の水酸基を有するポリカプロラクトンポリオール((株)ダイセル製、商品名プラクセル210)に代え、ヘキサメチレンジイソシアネートを含む架橋剤の量を20質量部にした以外は、実施例1と同様の手順で実施例2のインキを得た。
【0058】
(比較例1)
ポリカプロラクトンポリオールを加えない以外は、実施例1と同様の手順で比較例1のインキを得た。
【0059】
(比較例2)
ポリカプロラクトンポリオールを、分子量が550であり1分子中に3個の水酸基を有するポリカプロラクトンポリオール(パーストープジャパン社製、商品名CAPA3050)に代え、ヘキサメチレンジイソシアネートを含む架橋剤の量を40質量部にした以外は、実施例1と同様の手順で比較例2のインキを得た。
【0060】
(比較例3)
ポリカプロラクトンポリオールを、分子量が3000であり1分子中に2個の水酸基を有するポリカプロラクトンポリオール((株)ダイセル製、商品名プラクセル230)に代え、ヘキサメチレンジイソシアネートを含む架橋剤の量を18質量部にした以外は、実施例1と同様の手順で比較例3のインキを得た。
【0061】
[インキの評価]
インキの評価は以下の手順で試験片を作製し、各項目を測定することでおこなった。
【0062】
[伸び特性]
伸び特性は、試験片の引張破断伸度を測定することで評価した。
JIS Z0237に準拠し、引張試験機(東洋ボールドウィン社製、機器名 テンシロンTM−100)を用いて、試験片幅を25mm、つかみ間隔を100mm、引張速度を300mm/分の条件で、試験片が破断する最大伸度を測定した。各試験片についてそれぞれ5個を用意して測定を行い、その平均値を各試験片の引張破断伸度の代表値とした。
伸び特性は、試験片が破断するまでの伸度が40%以上であれば優、40%未満であれば不可とそれぞれ評価した。
【0063】
[耐摩耗性]
テーバー磨耗試験機((株)東洋精機製作所製、MODEL5130)に摩耗輪CS10を取り付け、加重500gの条件で回転させることで、各試験片の各実施例および比較例のインキ層表面の耐摩耗性を評価した。摩耗輪を100回回転させるごとに試験片表面を観察し、傷付きなどの外観異常が認められるまでの回数により耐摩耗性を目視で評価した。耐摩耗性の評価は最大1000回転までとした。
耐摩耗性は、摩耗輪を1000回転させた後の試験片に外観異常が認められない場合を優、摩耗試験前後でやや外観変化が見られるものの外観が良好であるものを可、外観変化が著しいものを不可とそれぞれ判定した。
【0064】
[試験片の調製]
ポリ塩化ビニルを含むフィルム(日本カーバイド工業(株)製、商品名Hi−S Cal0010H、最大破断伸度 150%)上に、180メッシュのスクリーンを用いてスクリーンインキ(日本カーバイド工業(株)製、商品名Hi−S SP INK)を印刷した。次いで印刷したフィルムを、熱風乾燥器を用いて60℃の環境で60分間加熱乾燥した後、25℃の環境で24時間静置した。次に、この印刷したフィルムに、180メッシュのスクリーンを用いて各実施例および比較例のインキを印刷し、熱風乾燥器を用いて60℃の環境で60分間加熱乾燥した後、25℃の環境で24時間静置することで各試験片を得た。
【0065】
実施例および比較例のインキを含む試験片のそれぞれの評価結果を表1にまとめた。
試験片Aは、実施例1のインキを、試験片Bは実施例2のインキを、それぞれ1回印刷したものである。
また、試験片Cは、比較例1のインキを1回印刷したものである。
試験片Dは、比較例1のインキを1回印刷した後に加熱乾燥を行い、改めて比較例1のインキを印刷した、つまり2回印刷をおこなったものである。
さらに、試験片Eは、比較例2のインキを、試験片Fは、比較例3のインキを1回印刷したものである。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例1のインキを含む樹脂フィルムである試験片Aは、伸び特性評価において110%の伸度を示し、耐摩耗性評価において摩耗輪を1000回回転させた後に外観を確認したところ異常が認められず評価が優であった。したがって、実施例1のインキを含む樹脂フィルムは、優れた伸び特性と耐摩耗性とを共に有している。
また、実施例2のインキを含む樹脂フィルムである試験片Bは、伸び特性評価において90%の伸度を示し、また、耐摩耗性評価において外観変化がややあるものの評価は良であった。したがって、実施例2のインキを含む樹脂フィルムは優れた伸び特性と耐摩耗性とを共に有している。
【0068】
一方、比較例1のインキを含む樹脂フィルムである試験片Cは、伸び特性評価において評価が優であったが、耐摩耗性評価において500回の回転後に外観の異常が認められた。また、比較例1のインキを含む樹脂フィルムである試験片Dは、耐摩耗性評価において1000回の回転後に外観の異常が認められなかったが、伸び特性評価において25%の伸度と極めて劣る結果となった。したがって、比較例1のインキを含む樹脂フィルムは伸び特性および耐摩耗性のいずれかが劣る結果となった。
また、比較例2のインキを含む樹脂フィルムである試験片Eは、伸び特性評価において評価が優であったが、耐摩耗性評価において600回の回転後に外観の異常が認められた。したがって比較例2のインキを含む樹脂フィルムは耐摩耗性評価が劣る結果となった。
さらに、比較例3のインキは、その粘度が他の実施例および比較例と比較し大きく、スクリーン印刷時の作業性が極めて劣った。溶剤であるソルベッソ100を加えて粘度を調整したが、インキが不均一となった。このインキを用いて試験片Fを調製したが、得られた試験片の印刷状態が悪く、伸び特性および耐摩耗性の評価をおこなわなかった。