特許第6238797号(P6238797)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238797
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】流動焼却装置
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/30 20060101AFI20171120BHJP
   F23C 10/22 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   F23G5/30 CZAB
   F23C10/22
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-45944(P2014-45944)
(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公開番号】特開2015-169406(P2015-169406A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100178951
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和家
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】山賀 徹志
(72)【発明者】
【氏名】池ヶ谷 昌利
(72)【発明者】
【氏名】良知 寿人
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−090125(JP,U)
【文献】 実開昭52−114574(JP,U)
【文献】 実開平05−030018(JP,U)
【文献】 実開昭61−198813(JP,U)
【文献】 実開昭53−025172(JP,U)
【文献】 実開平01−129512(JP,U)
【文献】 特開平09−329315(JP,A)
【文献】 特開2001−263626(JP,A)
【文献】 特開2008−32289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/30
F23C 10/22
F23B 40/02
F23K 3/02
F23K 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動媒体を流動させながら被焼却物を焼却する流動焼却装置において、
被焼却物が投入される投入口を有し流動媒体が充填される炉と、
前記投入口に接続され、該投入口から投入される被焼却物が通過する投入路と、
前記投入路を通過する被焼却物に気体を吐出する吐出手段とを備え、
前記吐出手段は、圧縮気体を噴射することで、該圧縮気体および該圧縮気体によって誘引された気体を、前記投入路側から前記炉内に向けて吐出するものであることを特徴とする流動焼却装置。
【請求項2】
前記吐出手段は、水平方向または水平よりも上方に向けて気体を吐出するものであることを特徴とする請求項1記載の流動焼却装置。
【請求項3】
前記吐出手段は、被焼却物を焼却することによって生じた排ガス、または該排ガスと熱交換させることによって温度上昇した昇温気体を含む気体を吐出するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の流動焼却装置。
【請求項4】
前記投入路は、被焼却物を前記投入口に向けて搬送するスクリューが設けられたものであり、
前記スクリューは、前記投入口側の先端が該投入口よりも前記投入路の奥側に設けられたものであり、
前記吐出手段は、前記先端と前記投入口との間に向けて気体を吐出するものであることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の流動焼却装置。
【請求項5】
前記吐出手段は、圧縮気体を時間間隔をあけて噴射することができるものであることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載の流動焼却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
流動媒体を流動させながら被焼却物を焼却する流動焼却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
珈琲粕、みかん粕、ビール粕、茶粕といった植物性廃棄物や汚泥などの被焼却物を焼却する焼却装置として、例えば硅砂等の砂を流動させながら被焼却物を焼却する流動焼却装置が採用されている。流動焼却装置では、炉内に砂を一定量充填することで砂層が形成され、この砂層の下層部から、所定温度に加熱された気体が送り込まれる。これによって、砂層の砂粒子が激しく流動する流動層部が形成され、この流動層部に被焼却物が投入される。流動層部に投入された被焼却物は、砂粒子の激しい流動化運動によって分散されて細かくなり、水分が蒸発して乾燥する。次いで、被焼却物の温度がさらに上昇して被焼却物が燃焼して燃焼灰になるとともに排ガスが生じる。燃焼灰は、排ガスとともに炉から排出され、集塵機で回収されるか、あるいは砂とともに炉から排出される。
【0003】
ところで、被焼却物が水分を多く含むものや粒径が大きいものであると乾燥しにくく燃焼するまでに時間がかかり、流動層部では被焼却物が十分に燃焼しない場合がある。流動層部で被焼却物が十分に燃焼しない場合には、流動層部の温度が上がらず、被焼却物の燃焼が立ち消えになってしまう場合がある。このため、流動層部に補助燃料を供給して燃焼させることで、流動層部を、例えば500℃〜700℃程度の温度に保持し、被焼却物の燃焼が立ち消えにならないようにしている。なお、乾燥装置を設け、この乾燥装置によって被焼却物を予備乾燥した後に炉内に投入することで、流動層部における被焼却物の燃焼を促進する態様も考えられるが、乾燥装置の設置スペースが必要になる上、乾燥装置の費用がかかりコストがアップしてしまう。
【0004】
一方、流動層部で燃焼しない被焼却物、あるいは被焼却物から発生する可燃性の物質が、炉内を上昇あるいは飛散して炉の上部で燃焼すると、被焼却物の燃焼によって生じた排ガスや炉の上部が過熱されてしまう。排ガスが過熱されて高温になりすぎると、排ガスに含まれる低融点の無機物、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属、シリカ、あるいはケイ素といった無機物が溶けて炉壁に付着し、流動焼却装置の運転を妨げる原因となる場合がある。例えば、炉壁に付着したこれらの無機物が炉内に落下し砂に付着して塊が生成されてしまう場合や、溶けた無機物が砂と反応して高融点の塊(クリンカ)が生成されてしまう場合もある。これらの塊は、流動層部における砂の流動の妨げになってしまう。さらに、炉の上部が過熱されると、炉の上部を傷めてしまう場合もある。これらのため、炉の上部に冷却水を噴霧することによって、排ガスや炉の上部の過熱を抑制することが行われている。
【0005】
ここで、流動層部における被焼却物の燃焼を促進することができる流動焼却装置が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1記載の流動焼却装置は、投入口から被焼却物を炉内に投入する投入機を有し、この投入機における投入口側の部分に配管が接続されている。この配管の上流側には、ブロワ等の送風機が接続されており、ブロワから供給された気体が投入機における投入口側の部分に吹き込まれ、被焼却物は、ブロワによって供給された気体とともに炉内に投入される。また、投入口の下部には、被焼却物を炉内にはじき飛ばす回転翼が備えられている。これらの構成によって、特許文献1記載の流動焼却装置は、被焼却物を分散させて炉内に投入することを試みたものである。被焼却物が分散して細かくなれば、単位体積当たりの表面積(受熱面積)が増加することで乾燥しやすくなり、流動層部における被焼却物の燃焼が促進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2527065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された流動焼却装置では、ブロワを設けるスペースが必要になる。また、特に、粒径が大きい被焼却物や水分を多く含んでいる被焼却物を分散させるためには、比較的大風量の気体を吐出できる高性能のブロワが必要になり、流動焼却装置の大幅なコストアップが避けられない。さらに、投入機における投入口側の部分に気体を吹き込むだけでは、被焼却物の分散が不十分な場合がある。また、被焼却物の分散を促進するための回転翼等の回転機構は、焼却装置のような厳しい使用条件下では高い頻度でのメンテナンスを必要とする。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、設置スペースの増加やコストの上昇を可能な限り抑えつつ、構造が簡易でメンテナンスをあまり要せず、炉に投入する被焼却物を効率的に分散させることができる流動焼却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決する本発明の流動焼却装置は、流動媒体を流動させながら被焼却物を焼却する流動焼却装置において、
被焼却物が投入される投入口を有し流動媒体が充填される炉と、
前記投入口に接続され、該投入口から投入される被焼却物が通過する投入路と、
前記投入路を通過する被焼却物に気体を吐出する吐出手段とを備え、
前記吐出手段は、圧縮気体を噴射することで、該圧縮気体および該圧縮気体によって誘引された気体を、前記投入路側から前記炉内に向けて吐出するものであることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記吐出手段は、エゼクタを有するものであってもよい。また、前記投入口は、前記炉の側壁に設けられたものであってもよいし、該炉の天井に設けられたものであってもよい。
【0011】
本発明の流動焼却装置によれば、前記圧縮気体によって誘引された気体が該圧縮気体に合流した比較的大風量の気体を被焼却物に吐出することができる。また、この比較的大風量の気体を、前記投入路側から前記炉内に向けて吐出することで、被焼却物を該投入口から該炉内に吹き飛ばすことができる。これらによって、炉に投入する被焼却物を効率的に分散させることができる。また、前記吐出手段は、前記圧縮気体を噴射することで、該圧縮気体および該圧縮気体によって誘引された気体を前記炉内に向けて吐出するものであるため、例えばエゼクタ等の安価な部品を用いて簡易に構成することができる。このため、羽根を回転させることで所定の風量の気体を吐出するブロワを用いる構成に比べて、設置スペースの増加やコストの上昇を抑えることができる。さらに、被焼却物の分散を促進するための回転翼等の回転機構を備えていないため、メンテナンスの頻度が増加してしまうこともない。
【0012】
また、本発明の流動焼却装置において、前記吐出手段は、水平方向または水平よりも上方に向けて気体を吐出するものであることが好ましい。
【0013】
こうすることで、前記吐出手段から吐出された気体によって分散された被焼却物が流動層部に落下するまでの時間を確保することができ、この間に流動層部から上昇する高温のガスに曝されて、被焼却物が流動層部に落下するまでにさらに乾燥しやすくなり、あるいは分散が促進され、流動層部における被焼却物の燃焼が促進する。
【0014】
さらに、本発明の流動焼却装置において、前記吐出手段は、被焼却物を焼却することによって生じた排ガス、または該排ガスと熱交換させることによって温度上昇した昇温気体を含む気体を吐出するものであってもよい。
【0015】
前記排ガスや前記昇温気体を含む気体を吐出することで、炉内の温度低下を抑えることができる。
【0016】
また、本発明の流動焼却装置において、前記投入路は、被焼却物を前記投入口に向けて搬送するスクリューが設けられたものであり、
前記スクリューは、前記投入口側の先端が該投入口よりも前記投入路の奥側に設けられたものであり、
前記吐出手段は、前記先端と前記投入口との間に向けて気体を吐出するものであってもよい。
【0017】
こうすることで、前記吐出手段から吐出された気体が前記スクリューに遮られることがなくなり、被焼却物をより分散させやすくなる。
【0018】
さらに、本発明の流動焼却装置において、前記吐出手段は、圧縮気体を時間間隔をあけて噴射することができるものであってもよい。
【0019】
本発明における前記吐出手段は、圧縮気体を時間間隔をあけずに連続して噴射するものであってもよいが、例えば、スクリューが設けられた投入路やシュートからなる投入路によって被焼却物が前記投入口から断続的に前記炉に投入される場合には、被焼却物が該炉に投入される時点に合わせて圧縮気体を噴射する態様を採用することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、設置スペースの増加やコストの上昇を可能な限り抑えつつ、構造が簡易でメンテナンスをあまり要せず、炉に投入する被焼却物を効率的に分散させることができる流動焼却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態である流動焼却装置を備えた第1の焼却システムを示す系統図である。
図2図1のA部を拡大して示す拡大図である。
図3】本発明の一実施形態である流動焼却装置を備えた第2の焼却システムを示す系統図である。
図4図3のB部を拡大して示す拡大図である。
図5】本発明の流動焼却装置の変形例について、図2(a)に対応した態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態である流動焼却装置は、珈琲粕、みかん粕、ビール粕、茶粕といった植物性廃棄物や汚泥などの被焼却物を焼却するものである。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態である流動焼却装置を備えた第1の焼却システムを示す系統図である。
【0024】
図1に示すように、第1の焼却システム10は、流動焼却装置2と、抜出コンベア3と、集塵機4と、熱交換器5を備えている。流動焼却装置2は、炉21と、投入機22と、吐出装置23と、始動バーナ24と、補助バーナ25と、散気部材26と、冷却ノズル27を備えたものである。炉21は、中空塔状のものであって、耐火断熱材によって構成されている。炉21には、流動媒体が充填されている。本実施形態では、流動媒体として、硅砂等の砂を用いており、炉21に充填された砂によって砂層が形成されている。図1では、気体を砂層に噴出させることによって、砂層の砂粒子が激しく流動する流動層部Sが形成された状態を示している。以下、砂層に噴出する気体を流動化気体と称することがある。なお、流動層部Sの高さ(流動層高)は、流動していない状態の砂層の高さ(静止層高)の2倍〜3倍程度になる。また、炉21は、上端側部分に横方向に開口した排気口21aを有し、下端部分に下方に開口した排出口21bを有している。さらに、炉21の側壁における、流動層部Sよりもやや上方部分には、炉21内に被焼却物を投入するための投入口21cが設けられている。本実施形態では、被焼却物として珈琲粕を用いている。なお、投入口21cは、炉21の側壁における上部側に設けてもよいが、被焼却物を投入口21cまで持ち上げる必要があり、また、流動焼却装置2が設置される建屋等の建築物による制約もあるため、投入口21cをあまり高い位置に設けることは通常は行われない。
【0025】
投入口21cには、スクリュー221を備えた投入機22が接続されている。投入機22は、搬送コンベア等によって搬送されてきた被焼却物を受け入れ、受け入れた被焼却物をスクリュー221によって投入口21cに向けて搬送し投入口21cから被焼却物を炉21に投入するものである。すなわち、投入機22は、投入口21cに接続され、この投入口21cから投入される被焼却物が通過するものであり、本発明における投入路の一例に相当する。以下、投入機22によって被焼却物が搬送される方向を搬送方向と称することがある。投入機22における搬送方向下流側部分には吐出装置23が設けられている。吐出装置23は、投入口21cよりも搬送方向上流、すなわち投入機22側から炉21内に向けて気体を吐出するものである。吐出装置23の詳しい説明は後述する。
【0026】
炉21には、始動バーナ24が設けられている。始動バーナ24は、流動焼却装置2における燃焼を開始する際に用いるものであり、流動層部Sに向けて設けられている。また、炉21には、流動層部S内に挿入された補助バーナ25が設けられている。補助バーナ25は、被焼却物だけでは十分に燃焼しない場合に、重油等の燃料を噴出させ被焼却物の燃焼を補助するものである。
【0027】
散気部材26は、連結管261と、この連結管261に接続した複数の散気管262を有するものである。連結管261は、図1における紙面と直交する方向に延在したものであり、複数の散気管262それぞれは、下方に開口した不図示の噴出口を複数有し、連結管261の延在方向と直交する方向に延在したものである。これら複数の散気管262は、連結管261の延在方向に所定の間隔をあけ、流動層部Sの底側に配置されている。連結管261は、供給路61によって熱交換器5と接続され、熱交換器5から連結管261に気体が供給される。連結管261に供給された気体は、流動化気体として複数の散気管262それぞれの噴出口から砂層に噴出する。これによって、炉21に充填された砂粒子は激しく流動し、流動層部Sが形成される。また、炉21の上端側部分には、炉内に向けて冷却ノズル27が設けられている。冷却ノズル27は、炉内に冷却水を噴霧することによって、炉21の上部や排ガスの過熱を抑制するものである。
【0028】
炉21の排出口21bの下方には、抜出コンベア3が設けられている。炉21内で被焼却物が燃焼して生じた燃焼灰のうち、砂層に残留した燃焼灰は、排出口21bを開放することで、砂とともに抜出コンベア3に受け入れられ、受け入れられた燃焼灰と砂は抜出コンベア3によって不図示の篩装置等に搬送される。篩装置では、燃焼灰と砂が分けられ、燃焼灰は不図示のホッパ等に搬送されたのち処分場等に送られる。また、砂は、例えば、クリンカ等を除去したのち、炉21に戻される。
【0029】
流動焼却装置2の排気口21aは、第1排気路62によって集塵機4に接続しており、集塵機4には、熱交換器5が設けられている。また、熱交換器5には、外気を供給するファンFが接続されている。燃焼灰のうち微細化したものなどは、例えば800℃程度の排ガスとともに排気口21aから第1排気路62を流れて集塵機4に送られ、集塵機4によって、排ガスから燃焼灰が除去される。排ガスから除去された燃焼灰は、不図示のホッパ等に搬送される。また、ファンFから熱交換器5に供給された外気は、熱交換器5において排ガスと熱交換されることによって、例えば200℃程度に温度上昇する。この温度上昇した気体は、供給路61を流れて連結管261に供給される。この熱交換器5において温度上昇した気体は、本発明における昇温気体に相当し、以下、昇温気体と称することがある。排ガスは、集塵機4によって燃焼灰が除去されるとともに、熱交換器5において外気と熱交換されることによって例えば700℃程度に温度低下し、第2排気路63を流れて不図示の廃熱回収ボイラ等を経由したのち、不図示の排気筒等から排出される。
【0030】
吐出装置23には、供給路61から分岐した分岐路64が接続されている。図2を用いて、投入機22の投入口21c側部分と吐出装置23を詳述する。
【0031】
図2は、図1のA部を拡大して示す拡大図である。図2では、吐出装置23を模式的に示している。また、図2では、左から右に向かう方向が搬送方向になり、同図(a)は、搬送されてきた被焼却物Bに吐出装置23から吐出された気体が当たる前の様子を示し、同図(b)は、吐出装置23から吐出された気体によって被焼却物Bが炉21内に吹き飛ばされた様子を示している。以下、吐出装置23から吐出された気体を吐出気体と称することがある。
【0032】
図2(a)に示すように、投入機22のスクリュー221は、投入口21c側の先端が投入口21cよりも投入機22の奥側に設けられたものである。これにより、スクリュー221の先端と投入口21cとの間には所定の空間が形成されている。吐出装置23は、エゼクタ231と、ノズル232と、弁233と、エアタンク234と、コンプレッサ235を有している。エゼクタ231は、導入管2311と、この導入管2311よりも小径かつ短小の吐出管2312と、缶体部236を備えている。導入管2311は、炉21の側壁を貫通した状態で配置され、投入機22の搬送方向下流側の端部に開口した吐出口231aを有している。また、吐出口231aは、投入口21cよりも搬送方向上流側に開口している。導入管2311は、その延在方向が、搬送方向に向かうに従い上方に傾斜する姿勢で配置され、本実施形態では、導入管2311の水平方向に対する傾斜角度は、45度程度に設定されている。また、導入管2311は、吐出口231aとは反対側の端部がラッパ状に拡がった形状に形成されている。吐出管2312は、導入管2311の内側に、導入管2311と所定の間隔をあけた状態で配置されている。また、吐出管2312は、導入管2311に対応して、吐出口231aとは反対側の端部がラッパ状に拡がった形状に形成されている。缶体部236は、導入管2311のラッパ状の部分と吐出管のラッパ状の部分を囲むものである。
【0033】
ノズル232は、缶体部236内に入り込みその先端が吐出管2312内に位置する状態で配置され、ノズル232には弁233が設けられている。また、ノズル232は、後端がエアタンク234に接続し、エアタンク234にはコンプレッサ235が接続している。ここでは、このコンプレッサ235は、大気を吸引し圧縮空気とする場合として以下に説明する。
【0034】
図1を用いて上述したように分岐路64は、供給路61から分岐したものであり、缶体部236に接続されている。供給路61を流れる例えば200℃程度の昇温気体の一部が、分岐路64を流れて缶体部236に流入するように構成されている。コンプレッサ235が吸引する大気は、コンプレッサ235によって圧縮され、この圧縮された圧縮気体がエアタンク234に供給される。エアタンク234に供給された圧縮気体は、弁233が開くことによってノズル232の先端から吐出管2312内に噴射される。吐出管2312内に噴射された圧縮気体は、吐出管2312の先端から導入管2311内に噴射される。導入管2311内に圧縮気体が噴射されると、いわゆるベンチェリー効果によって、導入管2311と吐出管2312の間から周囲の気体、すなわち缶体部236内の昇温気体が誘引され、圧縮気体によって誘引された昇温気体が圧縮気体に合流した比較的大風量の吐出気体となって吐出口231aから吐出される。この吐出される気体は、コンプレッサ235により圧縮された大気と、熱交換器5により例えば200℃程度に温度上昇した昇温気体との混合気体であるため、炉21内に吐出されたとしても、炉内の温度低下を抑えることができる。この吐出気体は、投入機22側から炉内に向けて吐出されるものであり、吐出装置23は、本発明における吐出手段の一例に相当する。また、本実施形態では、スクリュー221の先端と投入口21cとの間に向けて吐出口231aから吐出気体が吐出される。このように、吐出装置23は、安価なエゼクタ231を用いて簡易に構成されている。このため、羽根を回転させることで所定の風量の気体を吐出するブロワを用いる構成に比べて、設置スペースの増加やコストの上昇を抑えることができる。
【0035】
スクリュー221によって被焼却物Bが吐出口231aまで搬送されると、図2(b)に示すように、投入機22側から炉内に向けて吐出された比較的大風量の吐出気体によって被焼却物Bが炉内に吹き飛ばされる。これによって、炉内に投入される被焼却物Bを効率的に分散させることができる。この結果、投入口21cから投入される前の被焼却物Bが粒径が大きいものや水分を多く含んでいるものであっても、流動層部Sにおける被焼却物Bの燃焼を促進することができる。また、図2に示すように、被焼却物Bが、スクリュー221によって断続的に搬送されてくる場合には、弁233を開く時点を制御することによってノズル232から圧縮気体を時間間隔をあけて噴射させ、被焼却物Bが吐出口231aに達する時点で吐出気体を吐出してもよい。こうすることで、例えば、被焼却物Bの焼却を開始したばかりで吐出気体の温度が低いような場合には、不要な吐出気体が炉内に吐出されることがなくなり炉内の温度低下を抑えることができる。なお、ブロワは、時間間隔をあけてパルス的に駆動させることが実用上難しい。このため、背景技術で説明した、気体をブロワによって被焼却物Bに吐出させる構成では、被焼却物Bが吐出口231aに達する時点で吐出気体を吐出させることは難しい。
【0036】
さらに、本実施形態では、導入管2311が、水平方向に対して45度程度傾斜した姿勢で配置されているため、吐出口231aから斜め上方に向けて吐出気体が吐出される。このため、被焼却物Bも斜め上方に吹き飛ばされ、図1に示す流動層部Sに落下するまでの時間を確保することができる。これによって、流動層部Sに落下するまでに被焼却物Bの乾燥あるいは分散が進み、流動層部Sにおける燃焼がさらに促進される。なお、吐出気体の吐出方向は特に限定されるものではないが、被焼却物Bが流動層部Sに落下するまでの時間を確保するためには、吐出口231aから水平方向または水平方向よりも上方に向けて吐出気体を吐出することが好ましい。
【0037】
また、本実施形態では、スクリュー221の先端と投入口21cとの間に向けて吐出気体が吐出されるため、吐出気体がスクリュー221によって遮られることがなくなり、炉内に被焼却物Bを吹き飛ばしやすくなる。なお、スクリュー221におけるスクリュー羽根とスクリュー羽根の間に向けて吐出気体を吐出させる態様を採用してもよい。この態様を採用する場合には、スクリュー221のスクリュー羽根の向き等に応じて、スクリュー221によって搬送されてくる被焼却物Bに吐出気体が当たる位置に、吐出口231aを配置する。
【0038】
また、図1の二点鎖線で示すように、第2排気路63から分岐する分岐路64を設け、例えば700℃程度の排ガスを吐出装置23の缶体部236に接続する態様にしてもよい。この態様によれば、吐出気体の温度がさらに高くなるため、炉内の温度低下をより抑えることができる。なお、背景技術で説明した、気体をブロワによって被焼却物Bに吐出させる構成において、高温の気体をブロワから吐出させるためには、高温用(耐熱用)のブロワが必要になってよりコストがアップしてしまう。
【0039】
次いで、第1の焼却システム10の作動状態の一例について説明する。まず、散気管262から流動化気体を砂層に噴出させる。これによって、炉21に充填された砂粒子は激しく流動し、流動層部Sが形成される。流動層部Sが形成された状態で、始動バーナ24を着火させ、流動層部Sの砂を加熱する。流動層部Sの砂が所定温度まで温度上昇したら、投入機22を駆動させスクリュー221によって被焼却物Bを投入口21cに向けて搬送する。また、吐出装置23を駆動させ吐出口231aから吐出気体を吐出させる。投入口21cに向けて搬送されてきた被焼却物Bが吐出口231aに達すると、吐出口231aに達した被焼却物Bは、図2(b)に示すように、吐出気体によって投入口21cから斜め上方に吹き飛ばされ、分散した状態で炉21に投入される。炉21に投入された被焼却物Bは、乾燥しながら流動層部Sに落下し、砂粒子の激しい流動化運動によってさらに分散されて細かくなるとともに、乾燥がすすむ。次いで、温度がさらに上昇して被焼却物Bが燃焼して燃焼灰になるとともに排ガスが生じる。炉21には被焼却物Bが分散された状態で投入されるため、投入口21cから投入される前の被焼却物Bが、水分を多く含むものや粒径が大きいものであっても、流動層部Sにおける被焼却物Bの燃焼が促進する。流動層部Sを、例えば500℃〜700℃程度の温度に保持し被焼却物Bの燃焼が立ち消えにならないようにするために、補助バーナ25から重油等の燃料を噴出させるが、流動層部Sにおける被焼却物Bの燃焼が促進する分、補助バーナ25から噴出させる燃料の使用量を抑えることができる。また、流動層部Sにおける被焼却物Bの燃焼が促進することによって、流動層部Sで燃焼せず炉21の上部で燃焼する被焼却物Bが減少し、これによって炉21の上部や排ガスの過熱が抑制される。この結果、冷却ノズル27から噴霧する冷却水の量を減少させることができる。
【0040】
被焼却物Bの燃焼が完結した燃焼灰は、流動層部Sに残留し、第1の焼却システム10の運転終了後、排出口21bから砂とともに排出される。また、燃焼灰のうち微細化されたものなどは排ガスと一緒に排気口21aから排出され、集塵機4に流れる。集塵機4では、排ガスから燃焼灰が除去されるとともに、熱交換器5において、外気が排ガスと熱交換されることによって温度上昇する。この温度上昇した昇温気体が流動化気体として散気管262から流動層部S内に噴出されるとともに、分岐路64を流れて缶体部236に供給され、ノズル232から噴射された圧縮気体とともに吐出口231aから吐出される。
【0041】
次に、本発明の一実施形態である流動焼却装置を備えた第2の焼却システムについて説明する。以下の説明では、図1および図2に示す、第1の焼却システムとの相違点を中心に説明し、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0042】
図3は、本発明の流動焼却装置を備えた第2の焼却システムを示す系統図であり、図4は、図3のB部を拡大して示す拡大図である。第2の焼却システム11は、主として、集塵機4と熱交換器5の配置、および吐出装置23に気体を供給する分岐路64の分岐位置と接続態様が、図1に示す第1の焼却システム10と相違する。なお、第2の焼却システム11では、被焼却物として汚泥を用いている。
【0043】
図3に示すように、第2の焼却システム11では、第1排気路62が排気口21aから熱交換器5に接続し、第2排気路63が熱交換器5から集塵機4に接続している。排気口21aから排出された排ガスは、第1排気路62を流れて熱交換器5に送られ、熱交換器5において外気と熱交換された後、第2排気路63を流れて集塵機4に送られる。集塵機4に送られた排ガスは、燃焼灰が除去された後、第3排気路65を流れて、不図示の排気筒等に向けて送られる。第2の焼却システム11では、分岐路64は、第3排気路65から分岐しており、第3排気路65を流れる例えば700℃程度の排ガスの一部が、分岐路64を流れて吐出装置23に供給される。
【0044】
図4に示すように、第2の焼却システム11における吐出装置23は、コンプレッサ235に接続した気体冷却装置237を備えている。この気体冷却装置237は特に限定されるものではないが、例えば、冷水を流して排ガスを間接的に冷却する熱交換器を例示することができる。第3排気路65から分岐した分岐路64は、缶体部236に接続され、さらに気体冷却装置237にも接続されている。分岐路64を流れてきた排ガスは、缶体部236に供給されるとともに、一部が気体冷却装置237にも供給される。気体冷却装置237に供給された排ガスは、気体冷却装置237により冷却され、この冷却された気体は、コンプレッサ235に供給されて圧縮され、第1の焼却システム10においてした説明と同様に、ノズル232から噴射される。
【0045】
これらの構成によれば、吐出口231aから吐出される吐出気体は全て燃焼後の排ガスにより賄われることになる。大気に比べて排ガスの酸素濃度は低いため、炉21内の酸素濃度を低く抑制したい場合において本構成は好ましい。なお、炉21内の酸素濃度にあまり配慮を要さない場合は、大気をコンプレッサ235により圧縮して吐出管2312に噴出させ、導入管2311にも大気が供されるように構成することができ、これは第1の焼却システム10も同様な構成の適用が可能である。なお、第2の焼却システム11においても、図1に示す第1の焼却システム10と同様に、分岐路64が供給路61から分岐する構成を採用してもよい。
【0046】
図5は、本発明の流動焼却装置の変形例について、図2(a)に対応した態様を示す図である。
【0047】
以上においては本発明における投入路として、スクリュー221が設けられた投入機22を用いた態様を説明したが、図5に示すように、ロータリーバルブ28から落下する被焼却物Bを炉21内に導くシュート29を投入路としてもよい。本変形例においてもまた同様に、吐出口231aは、シュート29側から炉21内に向けて吐出気体を吐出するように構成されるものである。また、被焼却物Bは、ロータリーバルブ28から断続的にシュート29に落下するので、落下した被焼却物Bが吐出口231a上に到達する時点に合わせ、時間間隔をあけて吐出口231aから吐出気体を吐出させることができる。なお、ロータリーバルブ28を設けることによって、炉21内に吸い込まれる外気の量を抑えることができる。また、図5では、ロータリーバルブ28の上の装置を省略しているが、例えば、ホッパ等を配置してもよい。
【0048】
以上説明した流動焼却装置2によれば、設置スペースの増加やコストの上昇を可能な限り抑えつつ、炉に投入する被焼却物を効率的に分散させることができる。また、被焼却物の分散を促進するための回転機構等を備えていないため、メンテナンスの頻度が増加してしまうこともない。
【0049】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、上述の流動焼却装置2では、投入口21cを炉21の側壁に設けているが、流動焼却装置2の天井部分に、投入機22および吐出装置23を配置するスペースがある場合などには、炉21の天井に投入口21cを設けてもよい。なお、以上説明した実施形態や変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の、実施形態や変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10,11 焼却システム
2 流動焼却装置
21 炉
21c 投入口
22 投入機
221 スクリュー
23 吐出装置
231 エゼクタ
29 シュート
4 集塵機
5 熱交換器
B 被焼却物
S 流動層部
図1
図2
図3
図4
図5