(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238811
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジンの燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 59/10 20060101AFI20171120BHJP
F02M 59/20 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
F02M59/10 C
F02M59/10 E
F02M59/20 J
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-66711(P2014-66711)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-190345(P2015-190345A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 諭
(72)【発明者】
【氏名】内藤 慶太
(72)【発明者】
【氏名】宮田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山本 信裕
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆志
【審査官】
中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−133581(JP,A)
【文献】
実開平03−027876(JP,U)
【文献】
特開昭60−011672(JP,A)
【文献】
特開2000−179430(JP,A)
【文献】
実開昭48−016236(JP,U)
【文献】
特開平03−164563(JP,A)
【文献】
特開平08−028399(JP,A)
【文献】
特開2001−165015(JP,A)
【文献】
特開2006−017047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00−41/40
F02F 1/00−1/42
F02F 7/00
F02M 39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射ポンプ(1)と燃料噴射カム(2)を備え、燃料噴射カム(2)に燃料噴射用カム面(2a)と燃料吸い込み用カム面(2b)とが設けられ、エンジン正回転(3)時には、燃料噴射用カム面(2a)で燃料噴射ポンプ(1)のプランジャ(4)が上死点側に押し込まれて、プランジャ室(5)からインジェクタ(6)を介して燃焼室(7)に燃料(8)が噴射され、燃料吸い込み用カム面(2b)の案内で下死点側に戻されるプランジャ(4)で、プランジャ室(5)に燃料(8)が吸い込まれるように構成された、ディーゼルエンジンの燃料噴射装置において、
燃料噴射カム(2)に逆回転始動防止用カム(20)が用いられ、この逆回転始動防止用カム(20)は、燃料吸い込み用カム面(2b)が、エンジン正回転(3)時の吸気行程(10)の終期(10c)にプランジャ(4)のタペット(4a)と当接する位置まで形成され、
エンジン逆回転(11)時には、燃料吸い込み用カム面(2b)で、プランジャ(4)が上死点側に押し込まれて、プランジャ室(5)からインジェクタ(6)を介して燃焼室(7)に燃料(8)が噴射されるとともに、この燃料(8)が噴射されるエンジン逆回転(11)時の燃料噴射期間(12)が、エンジン逆回転(11)時の排気行程(13)中に開始(12a)され、この排気行程(13)中に、噴射された燃料(8)の一部または全部が燃焼室(7)から吸気弁口(14)を経て排出されるように構成され、
燃料噴射カム(2)が複数の気筒(♯1)(♯2)(♯3)(♯4)に対応して複数設けられ、複数の気筒(♯1)(♯2)(♯3)(♯4)のうち、定められた爆発順序に従って、一つ置きに爆発する半数の気筒(♯1)(♯4)に燃料(8)を噴射する全ての燃料噴射カム(2)(2)に、逆回転始動防止用カム(20)が用いられている、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたディーゼルエンジンの燃料噴射装置において、
燃料噴射ポンプ(1)が燃料溜め室(15)と燃料吸込口(16)とを備え、燃料溜め室(15)は、プランジャ室(5)の周囲に設けられ、燃料溜め室(15)には、燃料フィードポンプ(17)から燃料(8)が圧送され、燃料吸込口(16)は、プランジャ室(5)の周壁(5a)に設けられ、燃料溜め室(15)に臨み、
燃料吸い込み用カム面(2b)が、エンジン正回転(3)時の爆発行程(21)から吸気行程(10)の終期(10c)に亘ってプランジャ(4)のタペット(4a)と当接する位置に形成されることにより、プランジャ室(5)への燃料吸込み時に、プランジャ室(5)が正圧となるように構成されている、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
【請求項3】
燃料噴射ポンプ(1)と燃料噴射カム(2)を備え、燃料噴射カム(2)に燃料噴射用カム面(2a)と燃料吸い込み用カム面(2b)とが設けられ、エンジン正回転(3)時には、燃料噴射用カム面(2a)で燃料噴射ポンプ(1)のプランジャ(4)が上死点側に押し込まれて、プランジャ室(5)からインジェクタ(6)を介して燃焼室(7)に燃料(8)が噴射され、燃料吸い込み用カム面(2b)の案内で下死点側に戻されるプランジャ(4)で、プランジャ室(5)に燃料(8)が吸い込まれるように構成された、ディーゼルエンジンの燃料噴射装置において、
燃料噴射カム(2)に逆回転始動防止用カム(20)が用いられ、この逆回転始動防止用カム(20)は、燃料吸い込み用カム面(2b)が、エンジン正回転(3)時の吸気行程(10)の始期(10a)以降にプランジャ(4)のタペット(4a)と当接する位置から形成が開始(2c)され、
エンジン逆回転(11)時には、燃料吸い込み用カム面(2b)で、プランジャ(4)が上死点側に押し込まれて、プランジャ室(5)からインジェクタ(6)を介して燃焼室(7)に燃料(8)が噴射されるとともに、この燃料(8)が噴射されるエンジン逆回転(11)時の燃料噴射期間(12)が、エンジン逆回転(11)時の排気行程(13)中に完了(12b)され、この排気行程(13)中に、噴射された燃料(8)の一部または全部が燃焼室(7)から吸気弁口(14)を経て排出されるように構成され、
燃料噴射カム(2)が複数の気筒(♯1)(♯2)(♯3)(♯4)に対応して複数設けられ、複数の気筒(♯1)(♯2)(♯3)(♯4)のうち、定められた爆発順序に従って、一つ置きに爆発する半数の気筒(♯1)(♯4)に燃料(8)を噴射する全ての燃料噴射カム(2)(2)に、逆回転始動防止用カム(20)が用いられている、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの燃料噴射装置に関し、詳しくは、エンジンの逆回転始動を防止することができるディーゼルエンジンの燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの燃料噴射装置として、次のものがある。
図5(A)に示すように、燃料噴射ポンプ(1)と燃料噴射カム(2)を備え、燃料噴射カム(2)に燃料噴射用カム面(2a)と燃料吸い込み用カム面(2b)とが設けられ、エンジン正回転(3)時には、燃料噴射用カム面(2a)で燃料噴射ポンプ(1)のプランジャ(4)が上死点側に押し込まれて、プランジャ室(5)からインジェクタ(6)を介して燃焼室(7)に燃料(8)が噴射され、燃料吸い込み用カム面
(2b)の案内で下死点側に戻されるプランジャ(4)で、プランジャ室(5)に燃料(8)が吸い込まれるように構成された、ディーゼルエンジンの燃料噴射装置(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の装置によれば、燃料噴射ポンプ(1)と燃料噴射カム(2)により、簡易な構成で燃焼室(7)に燃料(8)を供給することができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−17047号公報(
図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
《問題点》 エンジンが逆回転状態で始動することがある。
この種の装置では、エンジン搭載機械で登坂中、エンジンが停止し、機械が坂の下り方向に逆行すると、エンジンが逆回転状態で始動することがある。
【0006】
本発明の課題は、エンジンの逆回転始動を防止することができるディーゼルエンジンの燃料供給装置を提供することにある。
【0007】
本発明の発明者らは、研究の結果、
図5(A)に示す従来の燃料吸い込み用カム面(2b)が、エンジン正回転(3)時の吸気行程(10)の中期(10b)にプランジャ(4)のタペット(4a)と当接する位置までしか形成されていないため、
エンジン逆回転(11)時には、燃料吸い込み用カム面(2b)で、プランジャ(4)が上死点側に押し込まれて、プランジャ室(5)からインジェクタ(6)を介して燃焼室(7)に燃料(8)が噴射されるとともに、
図5(B)に示すように、この燃料(8)が噴射されるエンジン逆回転(11)時の燃料噴射期間(12)が、エンジン逆回転(11)時の吸気行程(18)中に開始(12a)され、噴射された燃料(8)の全てが後の爆発行程(19)で燃焼して、大きな出力が発生し、エンジンが逆回転状態で始動する不具合が生じることを発見した。
本発明の発明者らは、更に研究を重ねた結果、カムプロフィールの改良により、エンジン逆回転(11)時、噴射された燃料(8)の一部または全部が燃焼室(7)から排出されるように構成することにより、エンジンが逆回転状態で始動する不具合を防止できることを発見し、この発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1と請求項3に係る発明に共通する発明特定事項)
請求項1と請求項3に係る発明に共通する発明特定事項は、次の通りである。
図1(A)または
図4(A)に例示するように、燃料噴射ポンプ(1)と燃料噴射カム(2)を備え、燃料噴射カム(2)に燃料噴射用カム面(2a)と燃料吸い込み用カム面(2b)とが設けられ、エンジン正回転(3)時には、燃料噴射用カム面(2a)で燃料噴射ポンプ(1)のプランジャ(4)が上死点側に押し込まれて、プランジャ室(5)からインジェクタ(6)を介して燃焼室(7)に燃料(8)が噴射され、燃料吸い込み用カム面
(2b)の案内で下死点側に戻されるプランジャ(4)で、プランジャ室(5)に燃料(8)が吸い込まれるように構成された、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
【0009】
(請求項1に固有の発明特定事項)
請求項1に係る発明
に固有の発明特定事項は、次の通りである。
図1(A)に例示するように、燃料噴射カム(2)に逆回転始動防止用カム(20)が用いられ、この逆回転始動防止用カム(20)は、燃料吸い込み用カム面(2b)が、エンジン正回転(3)時の吸気行程(10)の終期
(10c)にプランジャ(4)のタペット(4a)と当接する位置まで形成され、
エンジン逆回転(11)時には、燃料吸い込み用カム面(2b)で、プランジャ(4)が上死点側に押し込まれて、プランジャ室(5)からインジェクタ(6)を介して燃焼室(7)に燃料(8)が噴射されるとともに、
図1(B)に例示するように、この燃料(8)が噴射されるエンジン逆回転(11)時の燃料噴射期間(12)が、エンジン逆回転(11)時の排気行程(13)中に開始(12a)され、この排気行程(13)中に、噴射された燃料(8)の一部または全部が燃焼室(7)から吸気弁口(14)を経て排出されるように
構成され、
図2に例示するように、燃料噴射カム(2)が複数の気筒(♯1)(♯2)(♯3)(♯4)に対応して複数設けられ、複数の気筒(♯1)(♯2)(♯3)(♯4)のうち、定められた爆発順序に従って、一つ置きに爆発する半数の気筒(♯1)(♯4)に燃料(8)を噴射する全ての燃料噴射カム(2)(2)に、逆回転始動防止用カム(20)が用いられている、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射装置。
【0010】
(請求項3に固有の発明特定事項)
請求項3に係る発明に固有の発明特定事項は、次の通りである。
図4(A)に例示するように、燃料噴射カム(2)に逆回転始動防止用カム(20)が用いられ、この逆回転始動防止用カム(20)は、燃料吸い込み用カム面(2b)が、エンジン正回転(3)時の吸気行程(10)の始期(10a)以降にプランジャ(4)のタペット(4a)と当接する位置から形成が開始(2c)され、
エンジン逆回転(11)時には、燃料吸い込み用カム面(2b)で、プランジャ(4)が上死点側に押し込まれて、プランジャ室(5)からインジェクタ(6)を介して燃焼室(7)に燃料(8)が噴射されるとともに、
図4(B)に例示するように、この燃料(8)が噴射されるエンジン逆回転(11)時の燃料噴射期間(12)が、エンジン逆回転(11)時の排気行程(13)中に完了(12b)され、この排気行程(13)中に、噴射された燃料(8)の一部または全部が燃焼室(7)から吸気弁口(14)を経て排出されるように
構成され、
図2に例示するように、燃料噴射カム(2)が複数の気筒(♯1)(♯2)(♯3)(♯4)に対応して複数設けられ、複数の気筒(♯1)(♯2)(♯3)(♯4)のうち、定められた爆発順序に従って、一つ置きに爆発する半数の気筒(♯1)(♯4)に燃料(8)を噴射する全ての燃料噴射カム(2)(2)に、逆回転始動防止用カム(20)が用いられている、ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃
料噴射装置。
【発明の効果】
【0011】
(請求項1,3に係る発明)
請求項1,3に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 エンジンの逆回転始動を防止することができる。
図1(B)、
図4(B)に例示するように、エンジン逆回転(11)時には、排気行程(13)中に、噴射された燃料(8)の一部または全部が燃焼室(7)から吸気弁口(14)を経て排出されるように構成されているので、その後の爆発行程(19)では燃料不足により、十分な出力が得られず、エンジンの逆回転始動を防止することができる。
《効果》 エンジンの逆回転始動を防止することができる。
図2に例示するように、燃料噴射カム(2)が複数の気筒(♯1)(♯2)(♯3)(♯4)に対応して複数設けられ、複数の気筒(♯1)(♯2)(♯3)(♯4)のうち、定められた爆発順序に従って、一つ置きに爆発する半数の気筒(♯1)(♯4)に燃料(8)を噴射する全ての燃料噴射カム(2)(2)に、逆回転始動防止用カム(20)が用いられているので、エンジン逆回転(11)時には、一つ置きの気筒(♯1)(♯4)に出力不足が生じ、エンジンの逆回転始動を防止することができる。
【0012】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 インジェクタでのカーボンの詰まりが防止される。
図1(B)に例示するように、燃料吸い込み用カム面(2b)が、エンジン正回転(3)時の爆発行程
(21)から吸気行程(10)の終期
(10c)に亘ってプランジャ(4)のタペット(4a)と当接する位置まで形成されることにより、プランジャ室(5)への燃料吸込み時に、プランジャ室(5)が正圧となるように構成されているので、プランジャ室(5)へのエンジンオイルの吸込みが抑制され、これに起因するインジェクタ(6)でのカーボンの詰まりが防止される。
プランジャ室(5)への燃料吸込み時に、プランジャ室(5)を正圧にすることができるのは、燃料吸い込み用カム面(2b)が長い範囲に亘って形成されるため、その傾斜を緩やか
にして、プランジャ(4)の下死点側への速度を低下させることができるためである。
【0013】
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンの燃料噴射装置を説明する図で、
図1(A)は模式図、
図1(B)はタイムチャートである。
【
図2】
図1の装置で用いる噴射ポンプと燃料噴射カムの説明図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るエンジンの燃料噴射装置を説明する図で、
図4(A)は模式図、
図4(B)はタイムチャートである。
【
図5】従来技術に係るエンジンの燃料噴射装置を説明する図で、
図5(A)は模式図、
図5(B)はタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図3は本発明の第1実施形態に係るエンジンの燃料噴射装置を説明する図、
図4は本発明の第2実施形態に係るエンジンの燃料噴射装置を説明する図であり、各実施形態では、立形直列4気筒ディーゼルエンジンの燃料噴射装置について説明する。
【0016】
このエンジンの概要は、次の通りである。
図3に示すように、このエンジンは立形直列4気筒ディーゼルエンジンで、シリンダブロック(22)の上部にシリンダヘッド(23)が組み付けられ、シリンダボア(24)内にピストン(25)が昇降自在に内嵌され、シリンダヘッド(23)にインジェクタ(6)が取り付けられ、シリンダヘッド(23)の吸気ポート(26)の吸気弁口(14)に吸気弁(27)が配置されている。
図1(B)に示すように、シリンダヘッド(23)には排気ポート(図外)や排気弁(28)(
図1(A)参照)も形成されている。
図3に示すように、ピストン(25)の頂部には下向きに窪んだキャビティ(29)が設けられ、キャビティ(29)の内部が燃焼室(7)となる。インジェクタ(6)には燃料噴射ポンプ(1)から燃料(8)が圧送される。燃料噴射ポンプ(1)は、シリンダブロック(22)に形成されたポンプ収容室(30)に収容され、燃料噴射ポンプ(1)の下方には燃料噴射カム軸(31)が架設されている。燃料噴射ポンプ(1)はボッシュ式の列形燃料噴射ポンプであり、4本の気筒に対応する4本のプランジャ(4)とそのプランジャ室(5)を備えている。
【0017】
図1(A)に示すように、このエンジンは、燃料噴射ポンプ(1)と燃料噴射カム(2)を備え、燃料噴射カム(2)に燃料噴射用カム面(2a)と燃料吸い込み用カム面(2b)とが設けられ、エンジン正回転(3)時には、燃料噴射用カム面(2a)で燃料噴射ポンプ(1)のプランジャ(4)が上死点側に押し込まれて、プランジャ室(5)からインジェクタ(6)を介して燃焼室(7)に燃料(8)が噴射され、燃料吸い込み用カム面
(2b)の案内で下死点側に戻されるプランジャ(4)で、プランジャ室(5)に燃料(8)が吸い込まれるように構成されている。プランジャ(4)の下死点側への戻りは戻しばね(4b)で行われる。
【0018】
図1(A)に示すように、燃料噴射カム(2)に逆回転始動防止用カム(20)が用いられ、
この逆回転始動防止用カム(20)は、燃料吸い込み用カム面(2b)が、エンジン正回転(3)時の吸気行程(10)の終期(10c)にプランジャ(4)のタペット(4a)と当接する位置まで形成されている。
エンジン逆回転(11)時には、燃料吸い込み用カム面(2b)で、プランジャ(4)が上死点側に押し込まれて、プランジャ室(5)からインジェクタ(6)を介して燃焼室(7)に燃料(8)が噴射されるとともに、
図1(B)に示すように、この燃料(8)が噴射されるエンジン逆回転(11)時の燃料噴射期間(12)が、エンジン逆回転(11)時の排気行程(13)中に開始(12a)され、この排気行程(13)中に、噴射された燃料(8)の一部または全部が燃焼室(7)から吸気弁口(14)を経て排出されるように構成されている。
図中、符号(10a)はエンジン正回転(3)時の吸気行程(10)の始期、(10b)は同中期、(25a)はピストン昇降サイクル曲線、(27a)は吸気カムのカムリフト曲線、(28a)は排気カムのカムリフト曲線、(32)はエンジン正回転(3)時の燃料噴射期間を示している。
【0019】
図3に示すように、燃料噴射ポンプ(1)が燃料溜め室(15)と燃料吸込口(16)とを備え、燃料溜め室(15)は、プランジャ室(5)の周囲に設けられ、燃料溜め室(15)には、燃料フィードポンプ(17)から燃料(8)が圧送され、燃料吸込口(16)は、プランジャ室(5)の周壁(5a)に設けられ、燃料溜め室(15)に臨んでいる。
図1(B)に示すように、燃料吸い込み用カム面(2b)が、エンジン正回転(3)時の
爆発行程(21)から吸気行程(10)の終期(10c)に亘ってプランジャ(4)のタペット(4a)と当接する位置に形成されることにより、プランジャ室(5)への燃料吸込み時に、プランジャ室(5)が正圧となるように構成されている。
燃料溜め室(15)には、燃料タンク(33)内の燃料(8)が供給され、燃料噴射に用いられなかった燃料(8)は、燃料溜め室(15)から燃料タンク(33)に戻る。
【0020】
図2に示すように、燃料噴射カム(2)が4本の気筒(♯1)(♯2)(♯3)(♯4)に対応して4個設けられ、4本の気筒(♯1)(♯2)(♯3)(♯4)のうち、定められた爆発順序に従って、一つ置きに爆発する半数の気筒(♯1)(♯4)に燃料(8)を噴射する全ての燃料噴射カム(2)(2)に、逆回転始動防止用カム(20)が用いられている。具体的には、第1気筒(♯1)と第4気筒(♯4)に燃料を噴射する全ての燃料噴射カム(2)(2)に、逆回転始動防止用カム(20)が用いられている。第2気筒(♯2)と第3気筒(♯3)に燃料を噴射する燃料噴射カム(2)(2)には、
図5(A)に示す従来の燃料噴射カム(2)(2)が用いられている。
【0021】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
この第2実施形態は、次の点で
第1実施形態と異なる。
図4(A)に示すように、燃料噴射カム(2)に逆回転始動防止用カム(20)が用いられ、
この逆回転始動防止用カム(20)は、燃料吸い込み用カム面(2b)が、エンジン正回転(3)時の吸気行程(10)の始期(10a)以降にプランジャ(4)のタペット(4a)と当接する位置から形成(2c)が開始されるように構成されている。
エンジン逆回転(11)時には、燃料吸い込み用カム面(2b)で、プランジャ(4)が上死点側に押し込まれて、プランジャ室(5)からインジェクタ(6)を介して燃焼室(7)に燃料(8)が噴射されるとともに、
図4(B)に示すように、この燃料(8)が噴射されるエンジン逆回転(11)時の燃料噴射期間(12)が、エンジン逆回転(11)時の排気行程(13)中に完了(12b)され、この排気行程(13)中に、噴射された燃料(8)の一部または全部が燃焼室(7)から吸気弁口(14)を経て排出されるように構成されている。
他の構成は、第1実施形態と同一の構成とされ、
図4(A)(B)中、第1実施形態と同一の要素には同一の符号や名称を記載しておく。
【符号の説明】
【0022】
(1) 燃料噴射ポンプ
(2) 燃料噴射カム
(2a) 燃料噴射用カム面
(2b) 燃料吸い込み用カム面
(2c) 形成が開始
(3) エンジン正回転
(4) プランジャ
(4a) タペット
(5) プランジャ室
(6) インジェクタ
(7) 燃焼室
(8) 燃料
(10) 正回転時の吸気行程
(10a) 始期
(10c) 終期
(11) エンジン逆回転
(12) 燃料噴射期間
(13) 逆回転時の排気行程
(14) 吸気弁口
(15) 燃料溜め室
(16) 燃料吸込口
(17) 燃料フィードポンプ
(18) 逆回転時の吸気行程