【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る燃料電池システムの制御方法は、水素含有ガス供給手段により供給される水素含有ガスと酸素含有ガス供給手段により供給される酸素含有ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、
運転を制御する制御手段とが設けられ、
前記制御手段が、通常停止指令に基づいて、所定の停止用手順に基づいて前記水素含有ガス供給手段及び前記酸素含有ガス供給手段を停止する通常停止処理を実行し、緊急停止指令に基づいて、前記停止用手順を経ることなく前記水素含有ガス供給手段及び前記酸素含有ガス供給手段を停止する緊急停止処理を実行するように構成された燃料電池システムの制御方法であって、
その特徴構成は、前記通常停止処理が実行された回数を累積通常停止回数として計数し、前記緊急停止処理が実行された回数を累積緊急停止回数として計数し、
前記累積通常停止回数が増加するほど、許容可能な前記緊急停止処理の累積実行回数の上限値である許容緊急停止回数が少なくなる形態で、前記累積通常停止回数と前記許容緊急停止回数との関係として設定された許容緊急停止回数設定情報に基づいて、現時点の累積通常停止回数に対応する現時点の許容緊急停止回数を求め、
現時点の累積緊急停止回数が現時点の許容緊急停止回数以上になると、警報手段を作動させる警報処理を実行する点にある。
【0011】
即ち、本発明の発明者らは、使用可能期間が耐用年数よりも短くなるのを的確に回避可能にすべく、通常停止処理により燃料電池システムを劣化させる作用と、緊急停止処理により燃料電池システムを劣化させる作用とが、どのように相乗的に作用するかを鋭意検討し、通常停止処理の累積実行回数である累積通常停止回数が増加するほど、許容可能な緊急停止処理の累積実行回数の上限値が徐々に少なくなることを見出した。
【0012】
本特徴構成は、このような知見に基づいてなされたものである。
つまり、本特徴構成によれば、通常停止処理が実行される度に、累積通常停止回数を計数し、緊急停止処理が実行される度に、累積緊急停止回数を計数する。
又、累積通常停止回数が増加するほど許容緊急停止回数が少なくなる形態で、累積通常停止回数と許容緊急停止回数との関係として設定された許容緊急停止回数設定情報に基づいて、現時点の累積通常停止回数に対応する現時点の許容緊急停止回数を求める。
そして、現時点の累積緊急停止回数が現時点の許容緊急停止回数以上になると、警報手段を作動させる警報処理を実行する。
【0013】
つまり、許容緊急停止回数設定情報に基づいて、現時点の累積通常停止回数に対応する現時点の許容緊急停止回数を求めることにより、現時点の許容緊急停止回数を、通常停止処理による劣化作用が反映された状態で適切に求めることができるので、許容停止回数を、燃料電池システムの実際の劣化状態に対応した値よりも多目に求めたり、少な目に求めたりするといった不都合を確実に回避することができる。
そのことにより、遅すぎることのない適切なタイミングで、警報処理を実行することができるので、使用者に対して、頻繁な起動・停止を控えるのを意識づけるための注意喚起、及び、メンテナンスの推奨を適切に行うことができる。
従って、使用可能期間が耐用年数よりも短くなるのを的確に回避可能に使用し得る燃料電池システムの制御方法を提供することができる。
ここで、「累積通常停止回数が増加するほど許容緊急停止回数が少なくなる形態で」には、後に示すように、初期の一定期間においては、許容緊急停止回数が予め定められた一定の値とされており、その一定期間を過ぎた後、漸次少なくなる形態を含み、累積通常停止回数が増加するほど許容緊急停止回数が順に少なくなる形態を含む。さらに、漸次少なくなるには、例えば、
図3に示すように、複数の減少傾向(
図3で破線で示す場合は初期には減少させない)で段階的に少なくなるほか、連続的に減少傾向が大きくなる形態で少なくなる場合を含む。
【0014】
本発明に係る燃料電池システムの制御方法の更なる特徴構成は、
前記累積通常停止回数が所定の下位境界値に達するまでは、現時点の許容緊急停止回数を、前記累積通常停止回数が前記下位境界値のときに前記許容緊急停止回数設定情報に基づいて求められる前記許容緊急停止回数以上に設定された所定の前期基準許容回数とし、
前記累積通常停止回数が前記下位境界値を超えた後は、現時点の許容緊急停止回数を、現時点の累積通常停止回数に応じて、前記許容緊急停止回数設定情報に基づいて求める点にある。
【0015】
即ち、本発明の発明者らは、累積通常停止回数と許容緊急停止回数との関係は、全般的には、累積通常停止回数が増加するほど許容緊急停止回数が漸次少なくなる関係であるが、累積通常停止回数が増加するほど許容緊急停止回数が少なくなる度合いは、累積通常停止回数の範囲により異なることを見出した。
つまり、累積通常停止回数が増加するほど許容緊急停止回数が少なくなる度合いは、累積通常停止回数が所定の下位境界値までの範囲では、比較的小さく、累積通常停止回数が下位境界値位境界値を超えると、下位境界値までの範囲における度合いよりも大きくなることを見出した。
【0016】
上記特徴構成は、このような知見に基づくものであり、累積通常停止回数が所定の下位境界値に達するまでは、現時点の許容緊急停止回数を一律に前期基準許容回数とし、累積通常停止回数が下位境界値を超えた後は、現時点の許容緊急停止回数を、現時点の累積通常停止回数に応じて、許容緊急停止回数設定情報に基づいて求める。前期基準許容回数は、累積通常停止回数が下位境界値のときに、許容緊急停止回数設定情報に基づいて求められる許容緊急停止回数以上に設定する。
従って、広範囲の累積通常停止回数にわたって、現時点の許容緊急停止回数を、現時点の累積通常停止回数に応じて適正に求めることができるので、広範囲の累積通常停止回数にわたって、一層適切なタイミングで、警報処理を実行することができる。
【0017】
本発明に係る燃料電池システムの制御方法の更なる特徴構成は、
前記累積通常停止回数が前記下位境界値を超えた後、上位境界値に達するまでは、現時点の許容緊急停止回数を、現時点の累積通常停止回数に応じて、前記許容緊急停止回数設定情報に基づいて求め、
前記累積通常停止回数が前記上位境界値を超えた後は、現時点の許容緊急停止回数を、前記累積通常停止回数が前記上位境界値のときに前記許容緊急停止回数設定情報に基づいて求められる前記許容緊急停止回数以下に設定された所定の後期基準許容回数とする点にある。
【0018】
即ち、本発明の発明者らは、累積通常停止回数と許容緊急停止回数との関係は、全般的には、累積通常停止回数が増加するほど許容緊急停止回数が漸次少なくなる関係であるにしても、累積通常停止回数が増加するほど許容緊急停止回数が少なくなる度合いは、累積通常停止回数が下位境界値よりも多い所定の上位境界値を超えると、累積通常停止回数が下位境界値から上位境界値までの範囲までの値よりも大きくなることを見出した。
【0019】
上記特徴構成は、このような知見に基づくものであり、累積通常停止回数が下位境界値を超えた後、上位境界値に達するまでは、現時点の許容緊急停止回数を、現時点の累積通常停止回数に応じて許容緊急停止回数設定情報に基づいて求め、累積通常停止回数が上位境界値を超えた後は、現時点の許容緊急停止回数を一律に所定の後期基準許容回数とする。後期基準許容回数は、累積通常停止回数が上位境界値のときに、許容緊急停止回数設定情報に基づいて求められる許容緊急停止回数以下に設定する。
そして、例えば、後期基準許容回数を少なめに設定して、早めに警報処理を実行するようにする。すると、累積通常停止回数がかなり多くなって、燃料電池システムの劣化が比較的進行している状態では、早めに頻繁な起動・停止を控えるようにすることができるので、使用可能期間を一層長期化することができる。
【0020】
本発明に係る燃料電池システムの制御方法の更なる特徴構成は、
前記燃料電池が、固体酸化物を電解質として用いた固体酸化物型である点にある。
【0021】
即ち、固体酸化物型の燃料電池は、特に動作温度が高いので、頻繁な起動・停止に伴い、燃料電池地ステムの劣化が進行し易い。
そこで、本発明を固体酸化物型の燃料電池を備えた燃料電池システムに適用することにより、本発明の作用を効果的に発揮させて、固体酸化物型の燃料電池を備えた燃料電池システムを、使用可能期間が耐用年数よりも短くなるのを的確に回避可能に使用することができる。
【0022】
本発明に係る燃料電池システムは、水素含有ガス供給手段により供給される水素含有ガスと酸素含有ガス供給手段により供給される酸素含有ガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、
運転を制御する制御手段とが設けられ、
前記制御手段が、通常停止指令に基づいて、所定の停止用手順に基づいて前記水素含有ガス供給手段及び前記酸素含有ガス供給手段を停止する通常停止処理を実行し、緊急停止指令に基づいて、前記停止用手順を経ることなく前記水素含有ガス供給手段及び前記酸素含有ガス供給手段を停止する緊急停止処理を実行するように構成された燃料電池システムであって、
その特徴構成は、前記通常停止処理が実行された回数を累積通常停止回数として計数し、前記緊急停止処理が実行された回数を累積緊急停止回数として計数する停止回数計数手段と、
前記累積通常停止回数が増加するほど、許容可能な前記緊急停止処理の累積実行回数の上限値である許容緊急停止回数が少なくなる形態で、前記累積通常停止回数と前記許容緊急停止回数との関係として設定された許容緊急停止回数設定情報に基づいて、現時点の累積通常停止回数に対応する現時点の許容緊急停止回数を求める許容緊急停止回数導出手段と、
前記停止回数計数手段により計数された現時点の累積緊急停止回数が、前記許容緊急停止回数導出手段により求められた現時点の許容緊急停止回数以上になると、警報手段を作動させる警報処理を実行する警報発報手段とが設けられている点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、停止回数計数手段により、通常停止処理が実行される度に、累積通常停止回数が計数され、緊急停止処理が実行される度に、累積緊急停止回数が実行される。
又、許容緊急停止回数導出手段により、累積通常停止回数が増加するほど許容緊急停止回数が少なくなる形態で、累積通常停止回数と許容緊急停止回数との関係として設定された許容緊急停止回数設定情報に基づいて、現時点の累積通常停止回数に対応する現時点の許容緊急停止回数が求められる。
そして、停止回数計数手段により計数された現時点の累積緊急停止回数が、許容緊急停止回数導出手段により求められた現時点の許容緊急停止回数以上になると、警報発報手段により、警報手段を作動させる警報処理が実行される。
【0024】
つまり、本特徴構成は、先の燃料電池システムの制御方法の特徴構成において説明したのと同様の知見に基づいてなされたものであり、先の説明と同様に、現時点の許容緊急停止回数を、通常停止処理による劣化作用が反映された状態で適切に求めることができる。
そのことにより、遅すぎることのない適切なタイミングで、警報処理が実行されるので、使用者に対して、頻繁な起動・停止を控えるのを意識づけるための注意喚起、及び、メンテナンスの推奨を適切に行うことができる。
従って、使用可能期間が耐用年数よりも短くなるのを的確に回避可能に使用し得る燃料電池システムを提供することができる。