特許第6238822号(P6238822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6238822UV乾燥装置または電子線乾燥装置に沿って枚葉紙を搬送する胴
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238822
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】UV乾燥装置または電子線乾燥装置に沿って枚葉紙を搬送する胴
(51)【国際特許分類】
   B41F 23/04 20060101AFI20171120BHJP
   B41F 21/06 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B41F23/04 B
   B41F23/04 Z
   B41F21/06
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-78697(P2014-78697)
(22)【出願日】2014年4月7日
(65)【公開番号】特開2014-201069(P2014-201069A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年11月1日
(31)【優先権主張番号】10 2013 005 913.5
(32)【優先日】2013年4月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アルベアト マウル
(72)【発明者】
【氏名】イェンス フリードリヒス
【審査官】 村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−145400(JP,A)
【文献】 特開平11−240133(JP,A)
【文献】 米国特許第03123700(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 21/00−30/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
UV乾燥装置または電子放射乾燥装置(4)に沿って枚葉紙(11)を搬送する胴であって、該胴(2)は、複数の不活性ガス開口を有し、該不活性ガス開口に、運転中に少なくとも一時的に不活性ガスが供給されており、
前記不活性ガス開口が、前記胴(2)の周方向の周面溝(10)として延びており、および/または、前記不活性ガス開口が、前記胴(2)の周方向の孔列として延びており、および/または、前記不活性ガス開口は、前記胴(2)に対して軸平行に延びる不活性ガスノズル(8)の列を形成している、
ことを特徴とする、UV乾燥装置または電子放射乾燥装置(4)に沿って枚葉紙(11)を搬送する胴。
【請求項2】
前記胴(2)は、複数のサクション開口を有している、請求項1記載の胴。
【請求項3】
前記サクション開口は、前記胴(2)の周方向の周面溝(10)として、または孔列として延びている、請求項記載の胴。
【請求項4】
前記複数のサクション開口の一部分を、サクション空気供給部から不活性ガス供給部へと切り換える切換え装置が設けられており、前記不活性ガス開口は、不活性ガス供給部に切り換えられたサクション開口により与えられている、請求項2または3記載の胴。
【請求項5】
前記不活性ガスノズル(8)は、前記胴(2)の、該胴(2)に対して軸平行に延びる胴溝(3)内に、または該胴溝(3)の周面カバー(5)内に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の胴。
【請求項6】
前記不活性ガスノズル(8)は、前記胴(2)に設けられた複数の枚葉紙グリッパ(7)間に位置している、請求項1から5までのいずれか1項記載の胴。
【請求項7】
枚葉紙送りタイミングで行われる不活性ガス開口への不活性ガスの供給のために制御装置が設けられている、請求項1から6までのいずれか1項記載の胴。
【請求項8】
前記制御装置が、弁装置であり、タイミング弁(14)とセレクト弁(15)とを有している、請求項記載の胴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UV乾燥装置または電子線乾燥装置に沿って枚葉紙を搬送する胴に関する。
【背景技術】
【0002】
被印刷物にはインキまたはラッカが印刷される。これらのインキまたはラッカは紫外線照射によって、または電子線で硬化される。
【0003】
独国実用新案第29819345号明細書には、不活性化装置が記載されている。この不活性化装置では、胴に対して調節可能なカバー(遮蔽板)が設けられている。さらに、胴に対して端面側で突出部を備えるカバー装置が設けられている。
【0004】
独国実用新案第29707190号明細書には、不活性化装置が記載されている。この不活性化装置では、シール条片が胴に対して調節可能である。胴は、周面側のカバーを備えた胴溝を有していて、不活性化室は複数の壁により分割されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国実用新案第29819345号明細書
【特許文献2】独国実用新案第29707190号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根底を成す課題は、UV乾燥装置または電子線乾燥装置に沿って枚葉紙を搬送する別の胴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は本発明の請求項1に記載の特徴を有する胴により解決される。本発明に係る、UV乾燥装置または電子線乾燥装置に沿って枚葉紙を搬送する胴は、複数の不活性ガス開口を有し、該不活性ガス開口には運転中に少なくとも一時的に不活性ガスが供給されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る胴により、乾燥装置の不活性化室内の残留酸素含有量を極めて少なく維持することができるので、これによってインキまたはラッカの硬化はほとんど妨げられることがない。
【0009】
従属請求項には本発明に係る胴の種々の態様が記載されている。
【0010】
本発明の別の態様では、不活性ガス開口が、胴の周方向の周面溝として、またはノズル列もしくは孔列として延びている。
【0011】
本発明の別の態様では、胴が複数のサクション開口を有している。
【0012】
本発明の別の態様では、サクション開口が、胴の周方向の周面溝として、またはノズル列もしくは孔列として延びている。
【0013】
本発明の態様では、複数のサクション開口の部分量つまり一部分を、サクション空気供給部から不活性ガス供給部へと切り換える切換え装置が設けられている。この場合、不活性ガス開口は、不活性ガス供給部に切り換えられたサクション開口によって与えられている。
【0014】
本発明の別の態様では、不活性ガス開口は、不活性ガスノズルの、胴に対して軸線平行に延びる列を形成している。
【0015】
本発明の別の態様では、不活性ガスノズルは、胴の、該胴に対して軸線平行に延びる胴溝内に、または胴溝の周面カバー内に配置されている。
【0016】
本発明の別の態様では、不活性ガスノズルは、胴に設けられた複数の枚葉紙グリッパ間に位置している。
【0017】
本発明の別の態様では、枚葉紙送りタイミングで行われる不活性ガス開口への不活性ガスの供給のために、制御装置が設けられている。
【0018】
本発明の別の態様では、制御装置は弁装置であり、制御装置は、タイミング弁と切換え弁とを有している。
【0019】
構造的かつ機能的に有利な別の態様は、実施の形態に関する以下の説明および関連する図面から判明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】対応配置された乾燥装置を備える枚葉紙搬送胴を示す図である。
図2】胴の拡大された詳細図である。
図3】保持された被印刷枚葉紙を有する胴を示す図である。
図4】胴への真空または不活性ガス供給を制御する制御装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、枚葉紙11(図3を参照)にオフセット印刷する印刷機1を部分的に示している。この部分図には、枚葉紙11を搬送する胴2と、該胴2で搬送される枚葉紙11を乾燥させる乾燥装置4とが図示されている。乾燥装置4は、UV乾燥装置または電子線乾燥装置である。印刷機1により、インキまたはラッカ層が枚葉紙11に印刷される。これらのインキまたはラッカ層は、乾燥装置4のUV放射線または電子放射線により硬化される。
【0022】
乾燥装置4は、UV放射線または電子放射線を生ぜしめる放射器と、乾燥装置4と胴2との間の中間室内に不活性ガスを供給する供給装置と、中間室からの不活性ガスの漏出および周辺から中間室内への空気の流入を阻止するシールとから成っている。複数の放射器が、枚葉紙11の搬送方向で見て複数の供給装置の間に配置されていて、複数の供給装置は複数のシールの間に配置されている。放射器、供給装置およびシールは、図面を簡単にするために図示されていない。供給された不活性ガスは、窒素である。
【0023】
胴2は、胴溝3を有している。この胴溝3内には、枚葉紙11を固定する枚葉紙グリッパ7(図2を参照)が装着されている。胴溝3は、周面カバー5により十分に閉じられている。
【0024】
図2は、枚葉紙グリッパ7が一列に配置されていて、周面カバー5に設けられた切欠きを通じて胴溝3から突出していることを示している。前記列内において、枚葉紙グリッパ7と交互に、複数の不活性ガスノズル8が配置されている。周面カバー5の他に、胴溝3のための側方カバー6が胴の両端部のそれぞれに設けられている。
【0025】
図2には、胴2により搬送される枚葉紙11は図示されていない。したがって、周面溝9,10の列が見えている。周面溝9,10は、サクション溝であり、枚葉紙11を真空により保持するために働く。周面溝9,10はそれぞれ胴2の周方向に延びていて、周面溝9,10の列は、枚葉紙グリッパ7の列と同様に延びている。枚葉紙グリッパ7の列に組み込まれた不活性ガスノズル8の列は、胴2の軸方向に沿って印刷判の幅にわたって延びている。
【0026】
図3は、胴2を該胴2に保持された枚葉紙11と共に示している。枚葉紙11は、その前縁部において枚葉紙グリッパ7によって挟まれており、挟んで固定するために必要となる前縁を除いてその全枚葉紙長さにわたって、枚葉紙11の下に位置する周面溝9により吸引される。
【0027】
存在する周面溝9,10の全てが枚葉紙11の下に位置し、この枚葉紙11によって覆われるわけではないことが判る。枚葉紙11の各判型に応じて、多少の個数の周面溝10が枚葉紙11の外側で該枚葉紙の側方の両縁部の隣に位置している。覆われていない周面溝10の一方の半分は、一方の胴端部の近傍に位置していて、他方の半分は他方の胴端部の近傍に位置している。図示の実施の形態では、枚葉紙11は、覆われていない2つの周面溝10の間に位置している。この2つの周面溝10のうち、一方の周面溝は一方の胴端部に位置し、他方の周面溝は他方の胴端部に位置している。
【0028】
覆われた周面溝9にサクション空気もしくは真空が供給されているのに対して、覆われていない周面溝10には不活性ガス、本態様では窒素が供給されている。不活性ガスノズル8(図2を参照)と同様に、覆われていない周面溝10には不活性ガスが胴2の内部から供給される。覆われていない周面溝10に不活性ガスを充満させることにより、周面溝10を介して空気もしくは空気に含まれる酸素が乾燥装置4と胴2との間の上述の中間室に該胴2の回転によって持ち込まれることが阻止される。
【0029】
中間室は、不活性化室を形成する。不活性化室内では、枚葉紙11上の放射線硬化可能な層が照射および硬化中に保護ガスによって、硬化プロセスの酸素による妨害から保護される。
【0030】
同様に、周面カバー5の、枚葉紙グリッパ7のための切欠きに、不活性ガスを充満させることによって、この切欠きによって周辺空気が中間室内に持ち込まれることが阻止される。
【0031】
図4は、覆われた周面溝9(図3を参照)にサクション空気もしくは真空を供給し、かつ覆われていない周面溝10(図3を参照)ならびに不活性ガスノズル8に不活性ガスを供給する供給システムを示している。この供給システムは、不活性ガス源12と、真空発生器13とを有している。不活性ガス源12は、不活性ガスをタイミング弁14に供給する。このタイミング弁14には、一方では不活性ガスノズル8が接続され、他方ではセレクト弁15が接続されている。セレクト弁15には、複数の周面溝9,10が接続されている。セレクト弁15によって、どの周面溝9,10に真空発生器13からの真空が供給され、どの周面溝9,10にタイミング弁14からの不活性ガスが供給されるかが調節可能である、つまり枚葉紙により覆われている周面溝9に真空発生器13からの真空が供給され、各枚葉紙判の外側に位置している周面溝10にタイミング弁14からの不活性ガスが供給されるように調節を行うことができる。
【0032】
タイミング弁14は、枚葉紙11の搬送タイミングで不活性ガスをタイミング制御する。つまり、直径上で反対に位置する2つの枚葉紙グリッパシステムを備える胴2では、胴の回転毎に2回の不活性ガスタイミングで不活性ガスをタイミング制御する。タイミング弁14による不活性ガス供給部の周期的な開放および遮断によって、不活性ガスノズル8および周面溝10からの不活性ガスの噴出は、不活性ガスノズル8および周面溝10がそれぞれ乾燥装置4との対向位置(図1参照)の外側に位置している胴回転段階の間は阻止される。これによって不活性ガスを節約することができる。しかし、胴2の不活性ガス開口、つまり覆われていない周面溝10および不活性ガスノズル8に、該周面溝10および不活性ガスノズル8が胴の回転において乾燥装置4と胴2との間の乾燥室もしくは中間室内に走入する直前に既に不活性ガスを供給するように、タイミング弁14が作動することも可能である。
【0033】
図4に示された供給装置は、回転弁またはロータリ伝達部を介して胴2に接続されていてよい。ロータリ伝達部は、不活性ガス流を胴の外部の定置の供給装置から回転している胴2に移送し、かつサクション空気流を回転している胴2から胴の外部の、胴2と一緒には回転しない供給装置に移送させる。
【0034】
図示されていない変化形では、周面溝9,10がそれぞれ1列のノズルまたは開口により置き換えられている。ノズル列は、それぞれ周面溝9,10と同様に、胴2の周方向に延びており、同一の機能を満たす。すなわち、枚葉紙により覆われたノズルにより枚葉紙を吸引し、枚葉紙により覆われていないノズルにより不活性ガスを噴出させる。ノズルには、図4に図示された供給装置を介して相応してサクション空気、つまり負圧と不活性ガスとが供給される。
【符号の説明】
【0035】
1 印刷機
2 胴
3 胴溝
4 乾燥装置
5 周面カバー
6 側方カバー
7 枚葉紙グリッパ
8 不活性ガスノズル
9 周面溝
10 周面溝
11 枚葉紙
12 不活性ガス源
13 真空発生器
14 タイミング弁
15 セレクト弁
図1
図2
図3
図4