(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を使用する船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス浄化装置において、エンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる放電電極、及び帯電された前記粒状物質を捕集する集塵電極を構成する所定長さの管状捕集部を有し、かつ前記放電電極は前記管状捕集部内に管軸方向に配設された主電極と該主電極に間隔配設された放射状に突出する複数の電極とによって構成された電気集塵手段並びに低濃度排ガス導出管及び高濃度排ガス導出管よりなる電気集塵部と、前記管状捕集部から剥離した粒状物質を集塵用サイクロンにて分別して捕集する集塵手段を有する分別捕集部と、前記低濃度排ガス導出管に設けたガスと粒子の拡散速度の相違を利用して排気ガスに含まれるSOxは除去するがPMを除去しないPMフリースクラバーを備え、さらに前記分別捕集部によって集塵したPMを貯蔵するストッカーを備えると共に該ストッカーに貯蔵されたPMを焼却する焼却装置を有し、かつ前記焼却装置で生じるPM燃焼排ガスを前記電気集塵部もしくは該電気集塵部上流の排気管に還流するPM燃焼排ガス還流配管を前記焼却装置と前記管状捕集部上流もしくは前記電気集塵部上流の排気管の間に配設した構成となしたことを特徴とする、高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を使用する船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置。
【背景技術】
【0002】
各種船舶や発電機並びに大型建機、さらには各種自動車等の動力源としてディーゼルエンジンが広範囲に採用されているが、このディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれるカーボンを主体とする粒状物質(Particulate Matter:以下「PM」と称する。)や硫黄酸化物(以下「SOx」と称する。)、窒素酸化物(以下「NOx」と称する。)は、周知の通り大気汚染をきたすのみならず、人体に極めて有害な物質であるため、その排気ガスの浄化は極めて重要である。このため、ディーゼルエンジンの燃焼方式の改善や各種排気ガスフィルタの採用、排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation:以下「EGR」と称する。)法、選択式還元触媒脱硝法(Selective Catalytic Reduction:以下「SCR」と称する。)、そしてコロナ放電を利用して電気的に処理する方法等、既に数多くの提案がなされ、その一部は実用に供されている。
【0003】
ここで、ディーゼルエンジンの排気ガス中のPM(粒状物質)の成分は、有機溶剤可溶分(SOF:Soluble Organic Fractions、以下「SOF」と称す。)と有機溶剤不溶分(ISF:Insoluble Organic Fractions、以下「ISF」と称す。)の2つに分けられるが、そのうちSOF分は、燃料や潤滑油の未燃分が主な成分で、発ガン作用のある多環芳香族等の有害物質が含まれる。一方、ISF分は、電気抵抗率の低いカーボン(すす)とサルフェート(Sulfate:硫酸塩)成分を主成分とするもので、このSOF分およびISF分は、その人体、環境に与える影響から、極力少ない排気ガスが望まれている。特に、生体におけるPMの悪影響の度合いは、その粒子径がnmサイズになる場合に特に問題であるとも言われている。
【0004】
コロナ放電を利用して電気的に処理する方法としては、例えば以下に記載する方法及び装置(特許文献1〜3)が提案されている。
即ち、本願出願人は特許文献1において、
図7にその概略を示すように、排気ガス通路121にコロナ放電部122−1と帯電部122−2とからなる放電帯電部122を設けて、コロナ放電された電子129を排気ガスG1中のカーボンを主体とするPM128に帯電させ、同排気ガス通路121に配置した捕集板123で前記帯電したPM128を捕集する方式であって、放電帯電部122における電極針124は排気ガス流の流れ方向長さが短く、かつ捕集板123は排気ガス流の流れ方向に対し直角方向に配設された構成となしたディーゼルエンジンの排気ガス用電気式処理装置を先に提案している。なお図中、125はシールガス管、126は高圧電源装置、127は排気ガス誘導管である。
【0005】
又、本願出願人は特許文献2において、
図8(A)にその概略を示すように、サイクロン捕集手段132−1を2台の接線式サイクロン132−1aで構成したディーゼルエンジンの排気ガス用電気式処理装置を先に提案している。この装置は、捕集管131−1の高濃度排ガス導出部131−1bに連通管135−1、135−2を介して2台の接線式サイクロン132−1aを並列的に接続してサイクロン捕集手段132−1を構成するとともに、各接線式サイクロン132−1a通過後の浄化ガスをそれぞれ低濃度排ガス導出管133内を流れる低濃度排ガスに合流させるための排出管136−1、136−2を配設している。より詳しく説明すると、この排気ガス用電気式処理装置は、大きく分けて電気集塵手段を構成する管状捕集部131と分別捕集手段を構成する分別捕集132とからなり、PM粒子を捕集するために設ける管状捕集部131は、集塵電極を構成する所定長さの、捕集壁面131−1Kを有する捕集管131−1と排ガス中に含まれるPMに帯電させる放電電極131−2とを備えている。集塵電極を構成する捕集管131−1には、上流側(ディーゼルエンジン側)の端部に排ガス導入口131−1aを有し、下流側の軸芯付近にPMの低濃度排ガス導出管133を、下流側の端部の内周面付近にPMの高濃度排ガス導出部131−1bをそれぞれ連設している。放電電極131−2は、集塵電極を構成する捕集管131−1のほぼ全長にわたって延びる主電極131−2aと、該主電極に間隔配設された放射状に突出する電極針131−2bの群とによって構成されている。このように構成された放電電極131−2は、捕集管131−1の排ガス導入口131−1a側に設けたシールエアー導入管部131−1cと、低濃度排ガス導出管133の入口部位に設けたシールエアー導入管部133−1に垂設した支持体134を介して主電極131−2aの両端部が支持されている。137は流量制御ダンパである。
【0006】
さらに、本願出願人は特許文献3において、
図9にその概略を示すように、サイクロンを使用した還流方式のディーゼルエンジン排ガス処理装置を先に提案している。この装置は、重油より低質な燃料を使用する船舶用ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる放電電極141−2、及び帯電された前記粒状物質を捕集する集塵電極を構成する管状捕集部141−1を有し、管状捕集部141−1から剥離した粒状物質を分別して捕集するサイクロン方式の分別捕集手段を備えた船舶用ディーゼルエンジン排ガス処理装置の、前記管状捕集部141−1の下流側の内周面付近に設けた粒状物質の高濃度排ガス導出部141−1bからの配管に接線式サイクロン142−1aで構成したサイクロン捕集手段142−1を設け、高濃度排ガス導出部141−1bより排出される高濃度排ガス流を接線式サイクロン142−1aに導入して大径粒子を捕集・処理するとともに、同サイクロンで除去できなかった細径粒子を含有する排ガス流に対してブロアー147にて運動エネルギーを付与して昇圧・増速し還流配管142−2を経由して導入管(排気管)141−1aに圧送・還流させる方式となしたものである。図中、141−1aは排ガス導入口、141−1c、143−1はシールエアー導入管部、141−2aは主電極、141−2bは電極針、143は低濃度排ガス導出管、144は主電極の支持体、148は流量制御ダンパである。
【0007】
一方、非特許文献1の第3章「すべての船舶の機関区域要件」におけるPartC「油の排出規制」の第15規則「油の排出規制」においては、A.「特別海域外での排出」条項の2「総トン数400トン以上の船舶からの油又は油性混合物の海洋への排出は禁止する。ただし、次のすべての条件を満たす場合は除く。」との規定の.3には「希釈をしない場合の油性混合物の油分濃度が100万分の15以下であること。」と規定され、B.「特別海域での排出」条項の3「総トン数400トン以上の船舶からの油又は油性混合物の海洋への排出は禁止する。ただし、次のすべての条件を満たす場合は除く。」との規定の.3には「希釈をしない場合の油性混合物の油分濃度が100万分の15以下であること。」と規定されている。
なお、ここで「油」とは、原油、重油及び潤滑油を言い、「油性」とは、この意味に従って解釈するものとし、「油性混合物」とは、油を含有する混合物をいう。
【0008】
又、非特許文献2には、排気ガスから分流したEGRガスを吸気に還流することによって、排気ガスからNOxの80%低減とEGRガスからの100%近いSOx除去が可能な舶用ディーゼルエンジンが開示されている。
【0009】
さらに、非特許文献3には、アルファ・ラバル社がデンマークのフィカリア・シーウェイズ号搭載の出力21,000kW、MANBW製2ストロークエンジンを使用してのSOx対応技術の例として、硫黄含有率2.2パーセントの重油を使用しながら排気ガスを海水と清水の双方を状況に応じて使い分けるスクラバーにて処理することにより、IMO(国際海事期間)の2015年施行予定要求レベルである排出ガス中の硫黄含有率0.1パーセントの重油使用時と同等のレベルまで洗浄除去する技術が紹介されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記した従来のディーゼルエンジン排ガス浄化装置には、以下に記載する課題や問題点がある。
【0013】
前記特許文献1に記載されたコロナ放電等を利用して電気的に排気ガス中のPMを処理するディーゼルエンジンの排気ガス処理技術(例えば
図9に示すディーゼルエンジンの排気ガス用電気式処理装置)においては、以下に記載する課題が生じている。
即ち、船舶用ディーゼルエンジンにあっては、硫黄成分の含有量の少ない軽油を使用する自動車用ディーゼルエンジンと比較して格段に大きな排気量を有しかつ高濃度に硫黄成分を含有する重油[重油は軽油に対し500〜3500倍程度の硫黄分を含有:JIS K2204:2007「軽油」;0.0010質量%以下、K2205−1990「重油」;0.5〜3.5質量%以下、による]等の低質燃料を使用する大排気量船舶用ディーゼルエンジンに、例えば先の特許文献1に記載の排気ガス浄化装置を用いた場合には、高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料中の硫黄成分が排気ガスやEGRガス中にSOFとして含まれるだけでなくサルフェートとなりエンジン構成部品、特に排気関係部品を腐食するという課題を克服する必要があると共に、硫黄成分に基づくSOxが全く捕集できず、さらに連続してエンジン及び排気ガス用電気式処理装置を運転することにより予想される捕集した大量のPMの処理部は開示されていない。
【0014】
さらに、特許文献2に記載の
図8に示すガス処理装置は、分別捕集部132として
図8(A)に示す接線式サイクロン132−1a、あるいは処理能力の異なる複数の接線式サイクロン、例えば
図8(B)に示す小処理能力接線式サイクロン132−1b、中処理能力接線式サイクロン132−1c、大処理能力接線式サイクロン132−1dの3種類のサイクロンで構成するという複雑な装置を使用している。図中、138−1、138−2、138−3は連通管、139−1、139−2、139−3は流量制御ダンパをそれぞれ示す。又、各サイクロンへ流入する排気ガス流速が最適となるよう制御しながらPM粒子を各サイクロンで確実に捕集するとともに、各サイクロンから排出されるガスのPM
の濃度が確実に低下し希薄化した排気ガスを排ガス排出管136−1、136−2より低濃度排ガス導出管133に合流させる必要があると共に、さらに前記特許文献1と同様に連続してエンジン及び排気ガス処理装置を運転することにより予想される捕集した大量のPMの処理部は開示されていない。
【0015】
又、特許文献3に記載の
図9に示す還流方式のディーゼルエンジン排ガス処理装置の場合も前記特許文献1、2と同様に連続してエンジン及び排気ガス処理装置を運転することにより予想される捕集した大量のPMの処理部は開示されておらず、船が港湾設備としてPM処理施設のある港に着くまでサイクロンなどで捕集した大量のPMを船内に貯蔵する必要があるため、その大量のPMを船内に貯蔵するためのスペースを必要とし、船室の減少に伴う積み荷の減少及び諸経費の増大等を招くという問題がある。
【0016】
一方、非特許文献1においては、前記した通り特別海域外での排出規制、即ち、油又は油性混合物の海洋への排出の禁止等が定められ、又、希釈をしない場合の油性混合物の油分濃度等が規定されているが、PMを含有しても同様である。
【0017】
又、非特許文献2に記載の舶用ディーゼルエンジンにおいては、排気ガスから分流したEGRガスを吸気に還流することによって、排気ガスからNOxの80%低減とEGRガスからの100%近いSOx除去が可能であるが、スクラバーを通過する煤塵、PMになお含まれる硫黄分のディーゼル機関本体やシステムへの影響については、長期の実船試験が必要であるのみならず、スクラバーから船外排出される洗浄水については環境や生態系に影響を与えないようにする必要があり、特にこのスクラバーの洗浄水においてはPMの溶解・浮遊、SO
2の溶解等に伴うこれら環境汚染成分もしくは生態系影響成分の除去やpH調整等、廃水処理が大きな問題となることが予想される。すなわち、EGRガスからはPMは除去されても排気ガスからはPMは除去されず、したがって捕集したPMを処理する技術思想は全くない。
【0018】
非特許文献3に記載の「クリーン ソリューションの波」においては、「海運業界の環境影響の削減や、海洋汚染に対するより厳格な法律への適合に、クリーンな新技術が貢献する」として、以下のように記載されている。
要約(I)技術的背景:
(I)IMOは船舶による汚染に対する規制を強化します
(ア)硫黄酸化物(SOx)(新造船及び既存船両方に適用)
燃料油の硫黄濃度の上限を定める世界的な規制が適用されます。厳格化された規制が排出規制海域に適用されます。上限値は2012年から段階的に変更されます。この規制値に適合するためには、低硫黄燃料の使用や排ガス浄化装置が必要です。
(イ)窒素酸化物(NOx)(新造船のみに適用)
既存の規制要求事項は、出力130KW以上の舶用ディーゼル機関に適用されます。船舶の建造日に応じて異なる規制値が適用されます。排出規制海域を航行する新造船に対して、2016年より厳格化された規制(Tier III)が適用されます。
(ウ)ビルジ水(新造船及び既存船両方に適用)
船外に排出するビルジ水の規制値は15ppmです。
要約(II)水処理技術:
(II)アルファ・ラバルの水処理技術:
(ア)船舶のビルジタンクの油性廃水のみを処理するPureBilgeソリューションは、一段階の高速遠心分離システムによって、化学物質や吸着フィルタ、膜を使用せずに大量の水を浄化し、水中油分は5ppm未満となります。
(イ)IMOが船舶に要求するNOx排出の80パーセント削減を可能にするために、アルファ・ラバルはMANディーゼル社と協力して大型2ストロークディーゼルエンジン用の排気再循環(EGR)システムを開発しました。
(ウ)SOx排出については、アルファ・ラバルが完全な排ガス浄化プロセスを開発しました。現在船上での試験が行われているこのシステムでもアルファ・ラバル分離機を使用して、スクラバーからの汚水を海への排水前に浄化しています。
要約(III)SOx対応技術:
(III)アルファ・ラバルのSOx対応技術:
(フィカリア・シーウェイズ号(デンマーク)=出力21,000kW,MAN B&W2ストロークエンジン)に搭載
(ア)燃料は硫黄含有率2.2パーセントの重油で、排出ガスは、2015年に施行されるIMO(国際海事機関)の要求レベルである硫黄含有率0.1パーセントと同等のレベルまで洗浄除去されています。
(イ)アルファ・ラバルのPureSOxは、海水と清水の双方を状況に応じて使い分ける。
「海水あるいは淡水を苛性ソーダと水溶液を使って主機の排ガスを洗浄します」
●第一段階では、ガス導入部分で水を噴射する事によって排ガスを冷却し、そして排ガス中の煤塵の大半もここで除去されます。
●第二段階では、スクラバタワー内で排ガス中の硫黄酸化物等をさらに洗浄します。排ガス中の水滴の持ち去りや腐食を防止する為に、煙突から排出される前にガス中の水滴はデミスターで除去されます。
●第三段階では、排ガスに残留している硫黄酸化物をさらに浄化します。船舶の煙突から排出する前に、凝縮や腐食を防ぐために、排ガスから小さな水滴が除去されます(排ガスの硫黄分を98%以上除去)。
【0019】
この非特許文献3の12ページ第2欄16行〜第3欄1行「スクラバーは、船のファンネルに据え付けられた大きなシャワー室だと言う事ができます」との記載及び14ページ掲載の写真中の注記「船の煙突に設置されたスクラバーは、大きなシャワー室に例えることができます。」の記載と、ハイブリッドシステム図(図示せず)のスクラバー上部から水・海水が供給され最下部から共に排水され、排気ガスがバイパスダンパーからスクラバー下部に供給され最上部に直結された煙突に排出されていることから、ジェットスクラバータイプのものであることが解る。即ち、スクラバー処理水の表面に対し排気ガスが激しく衝突するタイプであって、排気ガス中の粒子状成分もガス状成分と共に除去可能な機能を有することがわかる。従ってスク
ラバー水の後処理にはハイブリッドシステム図(図示せず)記載の各構成装置を揃えると共にそれらを高度に操作し操業する必要がある。また、非特許文献3においては、海水モードではPMは全く捕捉されていない(12ページ第4欄16行〜第5欄1行の記載参照、)。
【0020】
又、公知のNOx低減技術として触媒反応を利用したSCR方式が一般に知られている。このSCR方式は、エンジンの排気ガスの温度が十分に高い状態で触媒が活性化されて、かつ触媒表面が煤等に覆われず確実に露出しておれば触媒が正常に機能して高いNOx低減が達成できる。しかし、一般の舶用エンジンにあっては燃料消費率の向上を確保するため、自動車用エンジン等と比べるとロングストロークの低速エンジンが主流であり、シリンダー内で燃焼ガスのエネルギーを、ゆっくり時間をかけて確実に動力として取り出すことと、長時間にわたる燃焼ガスのシリンダー壁面等への接触に伴う放熱により排気ガスの温度は低温となることが多く、エンジン始動直後の暖気中のみならず定常運転中であっても触媒温度が300度を下回るとその機能を十分に発揮せず、NOx低減率が不十分なことが多い。又、高濃度に硫黄成分を含有する重油以下の低質燃料を使用するディーゼルエンジンのSCR方式の排気浄化システムにあっては、排気ガス中に含有されるPMにより触媒が被覆されると共に、燃料に多量に含有される硫黄により触媒が被毒してそのNOx浄化機能が長期にわたり安定して機能しないという問題が指摘され、その改善策として高濃度に硫黄成分を含有する重油以下の低質燃料から硫黄分を脱硫することが望まれているが、製油装置への大規模な脱硫装置の設置に伴う膨大な設備投資に伴う燃料の高騰が予想されて未だ実現されておらず、一方SCR方式では排気ガス中のPM削減には寄与しない。
【0021】
本発明は、上記した従来技術の問題に鑑みなされたもので、特に高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を使用する大排気量で高速及び/又は大流量の排気ガスが排出される舶用ディーゼルエンジンの排気ガス中のPMを
電気集塵部と分別捕集部よりなるESP/C/PDFにて捕集し、
分別捕集部で捕集したPMを
PM焼却装置のストッカーに貯蔵し船内で焼却処理する技術を提案しようとするもので、捕集
し貯蔵したPMを船内で燃焼させることにより、船が港湾設備としてPM処理施設のある港に着くまでサイクロンで捕集したPMの全てを船内に貯蔵しておく必要がなく、よって船内に貯蔵のための大きなスペースを必要としないこと、船室が減少することなく、積み荷を減少させることもないので経費の増大を抑制できること、又、好ましくは、焼却時に発生する
PM燃焼排気ガスを
電気集塵部上流の排気管に還流して再度帯電・付着・凝集・濃縮により確実に捕集すると、低濃度排出ガスを
ガスと粒子の拡散速度の相違を利用して排気ガスに含まれるSOxは除去するがPMをほとんど除去しないPMフリースクラバーにてスクラバー処理すること、もしくは焼却時に発生する
PM燃焼排気ガスをガスと粒子の拡散速度の相違を利用して排気ガスに含まれるSOxは除去するがPMをほとんど除去しないPMフリースクラバーにてスクラバー処理することなどにより大気排出ガスからPMを確実に捕集・除去すると共に、SOxを確実に除去して環境保全可能なガスとして排出することが可能な、高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を使用する船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を使用する船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置は、高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を使用する船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置において、エンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる放電電極、及び帯電された前記粒状物質を捕集する集塵電極を構成する所定長さの管状捕集部を有し、かつ前記放電電極は前記管状捕集部内に管軸方向に配設された主電極と該主電極に間隔配設された放射状に突出する複数の電極とによって構成された電気集塵手段
並びに低濃度排ガス導出管及び高濃度排ガス導出管
よりなる電気集塵部と、前記管状捕集部から剥離した粒状物質を
前記分別捕集部の集塵用サイクロンにて分別して捕集する集塵手段を
有する分別捕集部と、前記低濃度排ガス導出管に設けたガスと粒子の拡散速度の相違を利用して排気ガスに含まれるSOxは除去するがPMを除去しないPMフリースクラバーを備え、さらに
前記分別捕集部によって集塵したPMを
貯蔵するストッカーを備えると共にPM焼却装置の前記ストッカーに貯蔵したPMを船内で焼却する
PM焼却装置を有し、かつ前記焼却装置で生じる
PM燃焼排ガスを
前記電気集塵部もしくは
電気集塵部上流の排気管に還流する
PM燃焼排ガス還流配管を前記焼却装置と
前記管状捕集部上流もしくは
前記電気集塵部上流の排気管の間に配設した構成となしたことを特徴とするものである。
【0023】
又、本発明
に係る高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を使用する船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置は、
高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を使用する船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置において、エンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる放電電極、及び帯電された前記粒状物質を捕集する集塵電極を構成する所定長さの管状捕集部を有し、かつ前記放電電極は前記管状捕集部内に管軸方向に配設された主電極と該主電極に間隔配設された放射状に突出する複数の電極とによって構成された電気集塵手段並びに低濃度排ガス導出管及び高濃度排ガス導出管よりなる電気集塵部と、前記管状捕集部から剥離した粒状物質を集塵用サイクロンにて分別して捕集する集塵手段を有する分別捕集部と、前記低濃度排ガス導出管に設けたガスと粒子の拡散速度の相違を利用して排気ガスに含まれるSOxは除去するがPMを除去しないPMフリースクラバーと、
前記管状捕集部から剥離した粒状物質を集塵用サイクロンにて分別して捕集する集塵手段よりなる分別捕集部を備え、さらに前記分別捕集部によって集塵したPMをPM焼却装置のストッカーに貯蔵し、捕集し貯蔵したPMを貯蔵するストッカーを備えると共に該ストッカーに貯蔵されたPMを焼却する焼却装置を有し、かつ前記焼却装置で生じるPM燃焼排ガスを、低濃度排ガス導出管に設けたPMフリースクラバーの上流に還流するよう
PM燃焼排ガス排出管を配設すること、集塵用サイクロンからの
サイクロン排ガス還流配管と
PMを焼却して発生するPM燃焼排ガス還流配管を結合させること、集塵用サイクロン下部をPM
集塵・堆積用ホッパーとし、
該ホッパーの下部にシャッターを介してPM焼却装置
のPM貯蔵用ストッカーを一体化させることを好ましい態様とするものである。
【0024】
さらに、前記ストッカーは複数で
大気放出排出ガス及びスクラバー処理水の排出可能海域まで船が進んでからPMを焼却開始できるよう制御すること、
集塵用サイクロン下部に選択シャッターを付設し、該シャッターを開閉制御して時間差をもって
貯蔵したPMを順次焼却できるようにすること、を好ましい態様とするものである。
なお、
前記PM焼却装置は内蔵された加熱用ヒーター(電気ヒーター等)もしくはバーナーがコントローラにより昇温・加熱制御されてPMが焼却される機能を有するものを用いるのが好ましい。
また、前記ストッカーは電気ヒーターを内蔵する態様であっても良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を使用する船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置は、以下に記載する効果を奏する。
即ち、特に高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を使用する大排気量で高速及び/又は大流量の排気ガスが排出される舶用ディーゼルエンジンの排気ガス中のPMを
電気集塵部と分別捕集部よりなるESP/C/PDFにて捕集し、
分別捕集部で捕集したPMをPM焼却装置のストッカーに貯蔵し、捕集し貯蔵したPMを船内で焼却処理することにより、船が港湾設備としてPM処理施設のある港に着くまでサイクロンで捕集したPMの全てを船内に貯蔵しておく必要がなく、よって船内に貯蔵のための大きなスペースを必要としないこと、船室が減少することなく、積み荷を減少させることもないので経費の増大を抑制できること、又、好ましくは、焼却時に発生するPM燃焼排気ガスを
電気集塵部上流の排気管に還流して再度帯電・付着・凝集・濃縮により確実に捕集すると共に、低濃度排出ガスを
ガスと粒子の拡散速度の相違を利用して排気ガスに含まれるSOxは除去するがPMをほとんど除去しないPMフリースクラバーにてスクラバー処理することにより大気排出ガスからSOxを確実に除去して環境保全可能なガスとして排出することができること、さらに
ガスと粒子の拡散速度の相違を利用して排気ガスに含まれるSOxは除去するがPMをほとんど除去しないPMフリースクラバーの処理水は、硫黄成分は高濃度に含有しているが有機溶剤可溶成分をほとんど含有していないので海洋排出が可能であること、等の作用効果を奏する。なお付随的な効果としては、PMを焼却した
PM燃焼排ガスより熱エネルギーを回収することにより船全体としてのエネルギー効率の向上にも寄与し得る技術である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1(A)(B)に本発明の第1実施例装置として示す船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置は、大きく分けて電気集塵部1、分別捕集部2、PM
焼却装置3とからなり、PM粒子を捕集するために設ける電気集塵部1は、集塵電極を構成する所定長さの捕集管1−1と排ガス中に含まれるPMに帯電させる放電電極1−2とを備えている。集塵電極を構成する捕集管1−1には、上流側(ディーゼルエンジン側)の端部に排ガス導入管1−1aを有し、下流側の端部の軸心付近にPMの低濃度排ガス導出管4を、下流側の端部の内周面付近にPM
が高濃度に濃縮された排気ガスを導出する高濃度排ガス導出部1−1bを連設して設けている。放電電極1−2は、集塵電極を構成する捕集管1−1の軸心付近をほぼ全長にわたって延びる主電極1−2aと、該主電極1−2aの長手方向に所定の間隔で配設された放射状に突出する電極針1−2bの群とによって構成されている。このように構成された放電電極1−2は、捕集管1−1の排ガス導入管1−1a側に設けたシールエアー導入管部1−1cと、低濃度排ガス導出管4の入口部位に設けたシールエアー導入管部4−1に
絶縁されて垂設した支持体5を介して主電極1−2aの両端部が支持されている。さらにPM10の低濃度排ガス導出管4には、ガスと粒子の拡散速度の相違を利用して排気ガスに含まれるSOxは除去するがPMをほとんど除去しないPMフリースクラバー11を設置して大気放出排気ガスからSOxを除去させている。
なお、スクラバー処理水は、排気ガスからSOxは除去するがPMをほとんど除去しないのでSOxは含有するがPMをほとんど含有せずスクラバー処理水の廃棄処理水としての後処理は容易である。又、放電電極1−2は必要に応じ捕集管1−1の内部より絶縁されたステ―(図示せず)により所望間隔を有して支持されている。さらに、この放電電極1−2は外部に設置された高圧電源装置(図示せず)に配線されて制御された高圧電源の供給を受けている。
【0028】
前記排ガスの流れ方向における電気集塵部1の下流側に設けられた分別捕集部2は、分別手段としてのサイクロン捕集手段2−1により構成されている。このサイクロン捕集手段2−1は、捕集管1−1の高濃度排ガス導出部1−1bに連通管5−1を介して接続された1台の接線式サイクロン2−1aで構成され、さらに該接線式サイクロン2−1aと前記低濃度排ガス導出管4との間に、接線式サイクロン2−1a通過後の浄化ガスを低濃度排ガス導出管4内を流れる低濃度排ガスに合流させるための
高濃度に濃縮された排気ガスを導出するサイクロン排ガス排出管6−1を配設している。又、前記低濃度排ガス導出管4には、接線式サイクロン2−1aへの高濃度排ガス流入量及び流入速度と低濃度排ガス放出量の流量調整を行うための流量制御ダンパ7を設けている。
なお、接線式サイクロン2−1aにて集塵されるPM10は前記接線式サイクロン2−1a下部のコーン状部分直下に設けられた着脱可能なホッパー2−1b内に堆積してゆき、ホッパー容量限界に達した場合は新たなホッパーに順次交換し保管する。図中、8はPM10を貯蔵する
PM焼却装置のストッカーである。
【0029】
前記ストッカー8に貯蔵されているPM10を焼却するために設けるPM
焼却装置3は、コントローラ3−2によって焼却温度や排出ガスの流量等が制御され、電気ヒーター3−1aを内蔵したPM焼却炉3−1よりなり、さらに該PM焼却炉3−1からの
PM燃焼排ガスを前記電気集塵部1の前記排ガス導入管1−1aに還流するための
PM燃焼排ガス還流配管12を設けることにより、例え前記PM焼却炉3−1内で燃焼中のPM10が一時的に舞い上がるなどして
万一PM燃焼排ガス中に混入しても、電気集塵部1及び分別捕集部2を再度経由することにより確実に除去され大気排出ガスの環境保全がはかられる。図中、12aは、
PM燃焼排ガス還流配管12内を流れる
PM燃焼排ガス流に対して運動エネルギーを付与するブロアーである。又、
PM燃焼排ガス還流配管12の先端部はエジェクター効果を考慮して排ガス導入管1−1a内に突出させ、かつ先端開口部を排気ガス流出方向を指向するように屈曲させる。なお、前記PM焼却炉3−1は、電気ヒーター3−1aに代えて、バーナ(図示せず)を用いた焼却炉でもよいことはいうまでもない。
【0030】
上記のように、
図1(A)に示す構成の排気ガス処理装置の場合は、
高濃度排ガス導出部1−1bに導出されたPM10が、高濃度に濃縮された排気ガスを、分別捕集部2に導入し、分別捕集部2の接線式サイクロン2−1aでほとんどのPM10が捕集されホッパー2−1bに一時的に貯蔵された後、該ホッパー2−1b内のPM10は、船がPMの焼却が可能な状態になるまで
PM焼却装置のストッカー8に貯蔵される。ストッカー8に貯蔵されたPM10は、その後PM
焼却装置3のPM焼却炉3−1に供給され、
該焼却炉の電気ヒーター3−1aをコントローラ3−2で制御して昇温し、PM10を焼却する。
貯蔵されていたPM10の焼却により発生する硫黄成分を高濃度に含有するPM燃焼排ガスは、
PM燃焼排ガス還流配管12を介して捕集管1−1へ還流させて排気ガスに混流させると共に
、このPMの高濃度化した混流ガスを
ほとんどのPM10を捕集する接線式サイクロン2−1a
からも導出させ、硫黄成分を高濃度に含有しているがPM10の濃度を低濃度にした大気排出ガスをPMフリースクラバー11に供給する。このPMフリースクラバー11により、大気排出ガスにはPMは残留しているが硫黄分が除去されたガスとなり大気環境が保全される。なお、PMフリースクラバー11の処理水は、硫黄成分は高濃度に含有しているがPMをほとんど含有していないのでスクラバースルーなどの海洋排出が可能であったり、少ない工数及び小型で制御が簡易な処理装置で処理ができる。
【0031】
又、上記
図1(A)に示す第1実施例装置において、
図1(B)に示すように排ガス導入管1−1aに排気ガス冷却器20を設置し、PM燃焼排ガスを前記排気ガス冷却器20の下流に還流させるようにしてもよい。排ガス導入管1−1aに排気ガス冷却器20を設けて排気ガスの予冷をする場合、PM燃焼排ガスを排ガス導入管1−1aの排気ガス冷却器20の下流に還流させると、腐食性物質(サルフェートの燃焼排ガス)を含有するPM燃焼排ガスが排気ガス冷却器20に流入することがないので、排気ガス冷却器20を構成する部材に高耐食性部材を使用する必要がなく、安価かつ耐久性を確保し易い。なお、PM燃焼排ガスを排気ガス冷却器20の上流に還流させると、捕集管1−1に流入するガス全量を予冷することができるので電気集塵部1、分別捕集部2での高い捕集率を確保ができる。
【0032】
図2に本発明の第2実施例装置として示す船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置は、
図1に示す第1実施例装置のサイクロンを使用した還流方式のディーゼルエンジン排ガス処理装置とPM焼却装置を組合せたもので、
図1に示す第1実施例装置の、高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を燃料として使用する船舶用ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる放電電極1−2、及び帯電された前記粒状物質を捕集する集塵電極を構成する管状捕集管1−1を有し、管状捕集管1−1から剥離した粒状物質を分別して捕集するサイクロン方式の分別捕集手段2−1を備え、さらにPM10の低濃度排ガス導出管4にガスと粒子の拡散速度の相違を利用して排気ガスに含まれるSOxは除去するがPMをほとんど除去しないPMフリースクラバー11を設置して大気放出排気ガスからSOxを除去させるごとく構成された船舶用ディーゼルエンジン排ガス処理装置の、前記管状捕集管1−1の下流側の内周面付近に設けたPM
が高濃度に濃縮された排気ガスを導出する高濃度排ガス導出部1−1bからの高濃度排ガス
導出管5−2に、前記と同様の接線式サイクロン2−1aで構成したサイクロン捕集手段を設け、高濃度排ガス導出部1−1bより排出される高濃度排ガス流を接線式サイクロン2−1aに導入して大径粒子を捕集・処理するとともに、同サイクロンで除去できなかった細径粒子を含有する
サイクロン排ガス流を、
サイクロン排ガス還流配管14−1を経由して排ガス導入管1−1aに圧送・還流させる方式となしている。
【0033】
一方、PM焼却装置
3は、
分別捕集部の接線式サイクロン2−1a下部のコーン状部分の直下にホッパー2−1bが設けられ、該ホッパー直下にはホッパー内に集塵・堆積したPM
10を保持しかつ落下させるシャッター2−1cを介してPM焼却炉を兼ねた前記ホッパー2−1bより内容積の大きい
PM焼却装置のストッカー3´−1が設けられている。このPM焼却炉を兼ねたストッカー3´−1は、内部に電気ヒーター3´−1aを内蔵し、コントローラ3−2によって焼却温度や
PM燃焼排ガスの流量等が制御される仕組みとなっている。なお、このPM焼却炉を兼ねたストッカー3´−1の場合は、PMがホッパー2−1b内に集塵・堆積しホッパー容量限界に達した場合にシャッター2−1cを開いてホッパー直下のストッカー3´−1内にPM
10を落下させ、その後シャッター2−1cを閉じてストックする。
PM焼却装置のストッカー3´−1に貯蔵されたPM10が燃焼されてPM焼却炉を兼ねたストッカー3´−1からの
PM燃焼排ガスは、
PM燃焼排ガス還流配管14−2を介して前記電気集塵部1の前記排ガス導入管1−1aへ還流されるように構成されている。又、
サイクロン排ガス還流配管14−1、
PM燃焼排ガス還流配管14−2
が配管される連通管5−3の先端部は、前記と同様にエジェクター効果を考慮して排ガス導入管1−1a内に突出させ、かつ先端開口部は排気ガス流出方向を指向するように屈曲させる。14−1a、14−2aは、それぞれ
サイクロン排ガス還流配管14−1、
PM燃焼排ガス還流配管14−2を流れる排ガス流に対して運動エネルギーを付与するブロアーである。なお、前記電気ヒーター3´−1aに代えて、バーナ(図示せず)を用いてもよいことはいうまでもない。
【0034】
上記
図2に示す構成の排気ガス処理装置の場合、捕集管1−1の下流において、捕集管内壁の近傍を流れてきたPMの高濃度排ガス流は、該捕集管1−1の高濃度排ガス導出部1−1bより連通管5−1及び高濃度排ガス
導出管5−2を介して接線式サイクロン2−1aに導入されて大径のPM粒子が遠心分離され、下部のコーン状部分直下のホッパー2−1bに捕集・堆積する。この接線式サイクロン2−1aで大径のPM粒子を捕集・堆積後、同接線式サイクロン2−1aで除去されなかった細径のPM粒子を含有する概ね浄化された
サイクロン排ガス流は、
サイクロン排ガス還流配管14−1内を流れて
捕集管1−1の上流側の連通管5−3を介して排ガス導入管1−1a内を流れる排ガス流に合流するが、この時、細径のPM粒子を含有する浄化された排ガス流に対してブロアー14−1aにより運動エネルギーが付与されて昇圧・増速され、
サイクロン排ガス還流配管14−1により排ガス導入管1−1aに圧送・還流される。一方、捕集管1−1の下流において、該捕集管1−1のほぼ軸心部付近を流れた低濃度排ガス流は、PMフリースクラバー11を経由しSOxを除去してから大気放出させている。他方、PM
焼却装置の接線式サイクロン2−1a下部のコーン状部分の直下に設けられたホッパー2−1b内にはPMが集塵・堆積し、ホッパー容量限界に達し場合はシャッター2−1cを開けてPMを落下させてPM焼却炉を兼ねるストッカー3´−1内に落下
させ貯蔵する。その後シャッター2−1cを閉じ、ストッカー3´−1に
貯蔵された
PM10を、PM焼却炉の電気ヒーター3´−1aをコントローラ3−2によって焼却温度や吸引空気量、
PM燃
焼排ガスの流量等を制御しながら
、PM焼却炉にて燃焼・焼却させ、さらに該PM焼却炉からの
PM燃焼排ガスは、
サイクロン排ガス還流配管14−
1を経由して前記電気集塵部1の前記排ガス導入管1−1aに還流されるので、例え前記PM焼却炉を兼ねたストッカー3´−1内で燃焼中のPMが一時的に舞い上がるなどして万一
PM燃焼排ガス中に混入しても、電気集塵部1及び分別捕集部2を再度経由することにより確実に除去され大気排出ガスの環境保全がはかられる。
【0035】
上記
図2に示す構成の排気ガス処理装置によれば、以下に記載する作用効果を奏する。
(イ).サイクロン2−1aを通過した細径粒子を含む
サイクロン排ガス流(還流ガス)をエンジンからの排気ガス流へ還流・圧送・混合させて捕集管1−1で再度、放電→粒子の帯電→捕集管内壁面への付着→剥離の繰返しにより大径粒子化させ、高濃度排ガス流として分離しサイクロン2−1aで確実に除去することができる。
(ロ).サイクロン2−1a後の
サイクロン排ガス流を還流させることにより、排出されるガスのPMなどの捕集率を維持もしくは向上、即ち、低濃度排出ガスの清浄度を維持もしくは向上させながら、舶用エンジンにおける主機及び補機の並列運転や単独運転に伴う運転状況の変化やエンジンの負荷率に応じて変化する排気ガス流量に対応して処理能力の異なる各接線式サイクロンを複数台設置することもなく装置全体を小型・コンパクトにできると共に装置の制御もシンプルとなり制御ソフト・装置も単純となり安価で信頼性の高いものとなる。
(ハ).ブロアー14−1aの設置により、例え接線式サイクロン2−1aの
サイクロン排気ガス流の流過抵抗が多少大きくても細径のPM粒子を含有する浄化された排ガス流をスムーズに排ガス導入管1−1aに還流できるのみならず、接線式サイクロン2−1aへの流入接線速度を適正に制御でき同サイクロンでの捕集効率も上昇する。なお、ブロアー14−1aの設置位置は、サイクロン前後の何れの位置でもよく、ブロアー設置位置がサイクロン上流側の場合はサイクロンへの流入接線速度を高く維持して高い捕集率を得易く、他方、サイクロン下流側の場合はブロアー14−1aの吸引抵抗が大きくサージングが多少危惧されるもののファンブレード表面へのPM粒子などの付着が少なくかつガスの温度が低下しているのでブロアー14−1aは耐久性を確保し易い。
(ニ).
サイクロン排ガス還流配管14−1、
PM燃焼排ガス還流配管14−2
が配管される連通管5−3の先端部を排ガス導入管1−1a内に突出させ、かつその先端開口部は排気ガス流出方向を指向するように屈曲させて、ブロアー14−1aにて運動エネルギーを付与され昇圧・増速した還流を噴出させることによりエジェクター効果を発揮させ、排ガス導入管1−1aを流れて来る排気ガス流を吸引させることにより排気抵抗を減少させてエンジン効率の上昇をはかることができる。
(ホ).船内で
電気集塵部と分別捕集部で捕集したPMを
PM焼却装置のストッカーに一旦貯蔵しその後焼却することにより長期にわたる連続航海ができ
、更に船内に貯蔵のための大きなスペースを必要としないこと、船室が減少することなく、積み荷を減少させることもないので経費の増大を抑制できる。
(へ).
焼却炉からのPM燃焼排ガスを捕集管上流に還流することにより焼却炉排ガス内のPM
などを確実に除去できる。
(ト).PMフリースクラバー11を設けたことにより排出ガスからSOxを除去できる。なお、PMフリースクラバー11の処理水は、硫黄成分は高濃度に含有しているがPMをほとんど含有していないのでスクラバースルーなどの海洋排出が可能であったり、少ない工数及び小型で制御が簡易な処理装置で処理ができる。
【0036】
なお、本実施例装置においても、前記
図1(B)に示すように排ガス導入管1−1aに排気ガス冷却器20を設置し、
PMを焼却して発生するPM燃焼排ガスを前記排気ガス冷却器20の下流に還流させるようにしてもよいことはいうまでもない。
【0037】
図3に本発明の第3実施例装置として示す船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置は、前記
図2に示す第2実施例装置の、PM焼却
装置3からの
PM燃焼排ガスを電気集塵部1の前記排ガス導入管1−1aに還流させる
PM燃焼排ガス還流配管14−2に、前記低濃度排ガス導出管4に設置したPMフリースクラバー11と同じPMフリースクラバー11を設置した構成となしたものである。
即ち、その構成は、
図2に示す第2実施例装置と同様に、高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を燃料として使用する船舶用ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる放電電極1−2、及び帯電された前記粒状物質を捕集する集塵電極を構成する管状捕集管1−1を有し、管状捕集管1−1から剥離した粒状物質を分別して捕集するサイクロン方式の分別捕集手段2−1を備え、さらにPM10の低濃度排ガス導出管4にガスと粒子の拡散速度の相違を利用して排気ガスに含まれるSOxは除去するがPMをほとんど除去しないPMフリースクラバー11を設置して大気放出排気ガスからSOxを除去させる構成となし、前記管状捕集管1−1の下流側の内周面付近に設けたPMの高濃度排ガス導出部1−1bからの高濃度排ガス
出管5−2に、前記と同様の接線式サイクロン2−1aで構成したサイクロン捕集手段を設け、高濃度排ガス導出部1−1bより排出される高濃度排ガス流を接線式サイクロン2−1aに導入して大径粒子を捕集・処理するとともに、同サイクロンで除去できなかった細径粒子を含有する
サイクロン排ガス流を
サイクロン排ガス還流配管14−1を経由して排ガス導入管1−1aに圧送・還流させる方式となしている。
【0038】
一方、PM焼却
装置3は、
分別捕集部2の接線式サイクロン2−1a下部のコーン状部分の直下にホッパー2−1bが設けられ、該ホッパー直下にはホッパー内に集塵・堆積したPMを保持しかつ落下させるシャッター2−1cを介してPM焼却炉を兼ねた前記ホッパー2−1bより内容積の大きいストッカー3´−1が設けられている。このPM焼却炉を兼ねたストッカー3´−1は、内部に電気ヒーター3´−1aを内蔵し、コントローラ3−2によって焼却温度や吸引空気量、
PM燃焼
排ガスの流量等が制御される仕組みとなっている。なお、このPM焼却炉を兼ねたストッカー3´−1の場合は、PMがホッパー2−1b内に集塵・堆積しホッパー容量限界に達した場合にシャッター2−1cを開いてホッパー直下のストッカー3´−1内にPMを落下させ、その後シャッター2−1cを閉じてストックする。
ストッカー3´−1に貯蔵されたPM10が燃焼されてPM焼却炉を兼ねたストッカー3´−1からの
PM燃焼排ガスは、
PM燃焼排ガス還流配管14−2を介して前記電気集塵部1の前記排ガス導入管1−1aへ還流されるように構成されている。本実施例装置は、前記
PM燃焼排ガス還流配管14−2に前記低濃度排ガス導出管4に設置したPMフリースクラバー11と同じPMフリースクラバー11を設置した構成となしたものである。14−1a、14−2aは、それぞれ
サイクロン排ガス還流配管14−1、
PM燃焼排ガス還流配管14−2を流れる排ガス流に対して運動エネルギーを付与するブロアーである。
なお、本実施例装置も前記
図2に示す第2実施例装置と同様に、
サイクロン排ガス還流配管14−1、
PM燃焼排ガス還流配管14−2
が配管される連通管5−3の先端部はエジェクター効果を考慮して排ガス導入管1−1a内に突出させ、かつ先端開口部は排気ガス流出方向を指向するように屈曲させる。又、前記PM焼却炉を兼ねたストッカー3´−1は、電気ヒーター3´−1aに代えて、バーナ(図示せず)を用いた焼却炉でもよいことはいうまでもない。
【0039】
上記
図3に示す構成の排気ガス処理装置の場合は、前記
図2に示す第2実施例装置と同じ(イ)〜(ト)の作用効果に加え、PM焼却炉を兼ねた
PMを貯蔵するストッカー3´−1からの
PM燃焼排ガスを排ガス導入管1−1aへ還流させる
PM燃焼排ガス還流配管14−2に設けたPMフリースクラバー11により
PM燃焼排ガス中の硫黄成分を予め除去できるので、
電気集塵部1の本体及び
分別捕集部2のサイクロンへの腐食性がマイルドになる
等の効果が得られる。
【0040】
図4に本発明の第4実施例装置として示す船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置は、PM燃焼排ガスと低濃度ガスとの混合流をPMフリースクラバーへ供給する方式となしたもので、その構成は、
図1に示す第1実施例装置のPM焼却
装置3のPM焼却炉3−1からの燃
PM焼排ガ
ス還流配管12
に相当するPM燃焼排ガス排出管15をPM10の低濃度排ガス導出管4のPMフリースクラバー11の上流側管内に突出させて構成したものである。
即ち、その構成は、
図1に示す第1実施例装置と同様に、高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を燃料として使用する船舶用ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる放電電極1−2、及び帯電された前記粒状物質を捕集する集塵電極を構成する管状捕集管1−1を有し、管状捕集管1−1から剥離した粒状物質を分別して捕集するサイクロン方式の分別捕集手段2−1を備え、さらにPM10の低濃度排ガス導出管4にガスと粒子の拡散速度の相違を利用して排気ガスに含まれるSOxは除去するがPMをほとんど除去しないPMフリースクラバー11を設置して大気放出排気ガスからSOxを除去させる構成となし、前記排ガスの流れ方向における電気集塵部1の下流側に設けられた分別捕集部2は、分別手段としてのサイクロン捕集手段2−1により構成されている。このサイクロン捕集手段2−1は、捕集管1−1の高濃度排ガス導出部1−1bに連通管5−1を介して接続された1台の接線式サイクロン2−1aで構成され、さらに該接線式サイクロン2−1aと前記低濃度排ガス導出管4との間に、接線式サイクロン2−1a通過後の浄化ガスを低濃度排ガス導出管4内を流れる低濃度排ガスに合流させるための
サイクロン排ガス排出管6−1を配設し、前記低濃度排ガス導出管4には、接線式サイクロン2−1aへの高濃度排ガス流入量及び流入速度と低濃度排ガス放出量の流量調整を行うための流量制御ダンパ7を設けている。
【0041】
PMを焼却するために設けるPM焼却
装置3は、前記
図1に示すものと同様に、コントローラ3−2によって焼却温度や吸引空気量、
PM燃焼
排ガスの流量等が制御され、電気ヒーター3−1aを内蔵したPM焼却炉3−1よりなる。本実施例装置では、前記PM焼却炉3−1からの
PM燃焼排ガスをPM10の低濃度排ガス導出管4のPMフリースクラバー11の上流側に還流するための
PM燃焼排ガス排出管15を設けている。この
PM燃焼排ガス排出管15も前記と同様に、その先端部を低濃度排ガス導出管4内に突出させている。15aは前記と同様の、
PM燃焼排ガス排出管15内を流れる
PM燃焼排ガス流に対して運動エネルギーを付与するブロアーである。
【0042】
上記
図4に示す構成の排気ガス処理装置の場合は、前記
図1に示す第1実施例装置と同様に、
分別捕集部2の接線式サイクロン2−1aでほとんどのPM10が捕集されホッパー2−1bに一時的に貯蔵された後、該ホッパー2−1b内のPM10は、船がPMの焼却が可能な状態になるまで
PM焼却装置のストッカー8に貯蔵され、その後PM焼却
装置3のPM焼却炉3−1に供給され、該焼却炉の電気ヒーター3−1aをコントローラ3−2で制御して昇温し、
貯蔵されていたPM10を焼却する。PM10の焼却により発生する硫黄成分を高濃度に含有するPM燃焼排ガスは、
PM燃焼排ガス排出管15を介して低濃度排ガス導出管4のPMフリースクラバー11の上流側に還流し、PM低濃度排ガスと混流してPMフリースクラバー11に供給される。このPMフリースクラバー11により、大気排出ガスは、PMは残留しているが硫黄分が除去されたガスとなり大気環境が保全される。なお、PMフリースクラバー11の処理水は、硫黄成分は高濃度に含有しているがPMをほとんど含有していないのでスクラバースルーなどの海洋排出が可能であったり、少ない工数及び小型で制御が簡易な処理装置で処理ができる。又、PM
を焼却して発生するPM燃焼排ガス
排出管15を低濃度排ガス導出管4に接続させることにより、腐食性のあるPM燃焼排ガスは電気集塵部1、分別捕集部2に流入することがないので、これらを構成する部材(捕集管、電極等)は高耐食性材料を使用する必要がなく、安価でかつ耐久性が確保し易い。
【0043】
図5に本発明の第5実施例装置として示す船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置は、PM燃焼排ガスをPMフリースクラバー11に直接供給する方式となしたもので、その構成は、高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を燃料として使用する船舶用ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる放電電極1−2、及び帯電された前記粒状物質を捕集する集塵電極を構成する管状捕集管1−1を有し、管状捕集管1−1から剥離した粒状物質を分別して捕集するサイクロン方式の分別捕集手段2−1を備え、さらにPM10の低濃度排ガス導出管4にガスと粒子の拡散速度の相違を利用して排気ガスに含まれるSOxは除去するがPMをほとんど除去しないPMフリースクラバー11を設置して大気放出排気ガスからSOxを除去させる構成となし、又、前記排ガスの流れ方向における電気集塵部1の下流側に設けられた分別捕集部2は、分別手段としてのサイクロン捕集手段2−1により構成されている。このサイクロン捕集手段2−1は、捕集管1−1の高濃度排ガス導出部1−1bに連通管5−1および高濃度排ガス配
出管5−2を介して接続された1台の接線式サイクロン2−1aで構成され、高濃度排ガス導出部1−1bより排出される高濃度排ガス流を接線式サイクロン2−1aに導入して大径粒子を捕集・処理するとともに、同サイクロンで除去できなかった細径粒子を含有する
サイクロン排ガス流を
サイクロン排ガス還流配管16を経由して排ガス導入管1−1aに圧送・還流させる方式となしている。16aは
サイクロン排ガス還流配管16内を流れる
サイクロン排ガス流に対して運動エネルギーを付与するブロアーである。又、PMを焼却する
ために設けるPM焼却部
装置も前記のものと同様に、コントローラ3−2によって焼却温度や吸引空気量、
PM燃焼
排ガスの流量等が制御され、電気ヒーター3−1aを内蔵したPM焼却炉3−1よりなる。本実施例装置では、前記PM焼却炉3−1からの
PM燃焼排ガスをPM10の低濃度排ガス導出管4に設置したPMフリースクラバー11に直接供給するための
PM燃焼排ガス排出管17を設ける点に主たる特徴がある。17aは前記と同様の、
PM燃焼排ガス排出管17内を流れる
PM燃焼排ガス流に運動エネルギーを付与するブロアーである。
【0044】
上記
図5に示す構成の排気ガス処理装置の場合は、
分別捕集部2の接線式サイクロン2−1aでほとんどのPM10が捕集されホッパー2−1bに一時的に貯蔵された後、該ホッパー2−1b内のPM10は、船がPMの焼却が可能な状態になるまで
PM焼却装置のストッカー8に貯蔵され、その後PM焼却
装置3のPM焼却炉3−1に供給され、該焼却炉の電気ヒーター3−1aをコントローラ3−2で制御して昇温し、
ストッカー8に貯蔵されていたPM10を焼却する。PM10の焼却により発生する硫黄成分を高濃度に含有するPM燃焼排ガスは、
PM燃焼排ガス排出管17を介して直接PMフリースクラバー11に供給される。PMフリースクラバー11に供給されPM低濃度排ガスと
PMを焼却して発生したPM燃焼排ガスは、PMは残留しているが硫黄分が除去されたガスとなり大気環境が保全される。なお、PMフリースクラバー11の処理水は、硫黄成分は高濃度に含有しているがPMをほとんど含有していないのでスクラバースルーなどの海洋排出が可能であったり、少ない工数及び小型で制御が簡易な処理装置で処理ができる。又、本実施例装置においても、腐食性のあるPM燃焼排ガスは電気集塵部1、分別捕集部2に流入することがないので、これらを構成する部材(捕集管、電極等)は高耐食性材料を使用する必要がなく、安価でかつ耐久性が確保し易い。
【0045】
図6に本発明の第6実施例装置として示す船舶用ディーゼルエンジンの排気ガス処理装置は、前記
図2に示す第2実施例装置におけるPM焼却炉を兼ねたストッカーを複数設置し、PMの交互捕集と交互燃焼を行えるように構成したものである。
即ち、その構成は、
図2に示す第2実施例装置と同様に、高濃度に硫黄成分を含有する重油等の低質燃料を燃料として使用する船舶用ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる粒状物質に帯電させる放電電極1−2、及び帯電された前記粒状物質を捕集する集塵電極を構成する管状捕集管1−1を有し、管状捕集管1−1から剥離した粒状物質を分別して捕集するサイクロン方式の分別捕集手段2−1を備え、さらにPM10の低濃度排ガス導出管4にガスと粒子の拡散速度の相違を利用して排気ガスに含まれるSOxは除去するがPMをほとんど除去しないPMフリースクラバー11を設置して大気放出排気ガスからSOxを除去させる構成となし、前記管状捕集管1−1の下流側の内周面付近に設けたPMの高濃度排ガス導出部1−1bからの高濃度排ガス
出管5−2に、前記と同様の接線式サイクロン2−1aで構成したサイクロン捕集手段を設け、高濃度排ガス導出部1−1bより排出される高濃度排ガス流を接線式サイクロン2−1aに導入して大径粒子を捕集・処理するとともに、同サイクロンで除去できなかった細径粒子を含有する
サイクロン排ガス流を、
サイクロン排ガス還流配管14−1を経由して導入管1−1aに圧送・還流させる方式となしている。
【0046】
一方、PM焼却
装置3は、
分別捕集部2の接線式サイクロン2−1a下部のコーン状部分の直下のホッパー2−1bに、切換え弁2−1d内蔵の二股などの多数分岐管2−1eを設け、該多数分岐管2−1eのそれぞれの下端に、ホッパー2−1b内に集塵・堆積したPMを保持しかつ落下させるシャッター2−1cを介してPM焼却炉を兼ねた前記ホッパー2−1bより内容積の大きいストッカー3´−1が
設けられ各々にPM10が貯蔵されている。このPM焼却炉を兼ねたストッカー3´−1は、内部に電気ヒーター3´−1aを内蔵し、コントローラ3−2によって焼却温度や吸引空気量、
PM燃焼
排ガスの流量等が制御される仕組みとなっている。なお、このPM焼却炉を兼ねたストッカー3´−1の場合
はPMがホッパー2−1b内に集塵・堆積しホッパー容量限界に達した場合にシャッター2−1cを開いてホッパー直下のストッカー3´−1内にPMを落下させ、その後シャッター2−1cを閉じてストックする。PM焼却
装置3のトッカー
3´−1に貯蔵されたPM10が燃焼されてPM焼却炉を兼ねたストッカー3−1からの
PM燃焼排ガスは、
PM燃焼排ガス還流配管14−2を介して前記電気集塵部1の前記排ガス導入管1−1aへ還流されるように構成されている。
なお、本実施例装置も前記
図2に示す第2実施例装置と同様に、
サイクロン排ガス還流配管14−1
、PM燃焼排ガス還流配管14−2が配管される連通管5−3の先端部はエジェクター効果を考慮して排ガス導入管1−1a内に突出させ、かつ先端開口部は排気ガス流出方向を指向するように屈曲させる。又、前記PM焼却炉を兼ねたストッカー3´−1は、電気ヒーター3´−1aに代えて、バーナ(図示せず)を用いた焼却炉でもよいことはいうまでもない。
【0047】
上記
図6に示す構成の排気ガス処理装置の場合は、前記
図2に示す第2実施例装置と同じ(イ)〜(ト)の作用効果に加え、PM焼却炉を兼ねた
PMを貯蔵するストッカーを複数設置し、切換え弁2−1dによりPMの交互捕集と交互燃焼を行えるように構成したことにより、PMを効率よく
貯蔵・燃焼できるのみならず、1機の
シャッター2−1cやストッカー3´−1に故障等が生じて稼働できない場合でも運転を停止することなく連続的に操業を行うことができるという効果を奏する。