(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係合部(75)を、対向する両板片部(751)が振動溶着の振動方向に離間状態で突出して前記凸部(21)の両側外壁面(21a,21a)を挟着できる把持部(75a)とし、且つ前記両板片部(751)に係る内板面(752)の縦断面形状を先端に向け側面視逆ハの字状に広がるようにした請求項1記載のスポイラーの製造方法。
前記第二部材(2)に、錐台状の櫓体(25)をその周りの裏面(2b)よりも隆起させて一体成形し、且つ該櫓体(25)の天面(252)に透孔(252c)を貫通形成する一方、前記第一部材(1)には、天板(155)に通孔(152c)が形成された覆体(15)を一体成形して、該第二部材(2)との位置合わせ,セットで、該覆体(15)が前記櫓体(25)を覆い、且つ前記透孔(252c)に該通孔(152c)が向き合い、該通孔(152c)及び前記透孔(252c)への締結部材(SW)の挿入により第一部材(1)と第二部材(2)とを締結できるようにし、さらに該櫓体(25)に係る錐面の対面両壁部(251a,251a)に対応する覆体(15)の両側板(151,151)部位に切欠開口(151c)を設け、該切欠開口(151c)を前記開口窓(10)にして、該櫓体(25)が前記凸部(21)にもなるようにした請求項1又は2に記載のスポイラーの製造方法。
前記凸部(21)の両側外壁面(21a,21a)が、該凸部(21)の前記第二部材裏面(2b)側から凸部先端(211)へ向けて間隔が狭まる側面視ハの字状に傾く斜面(212)を形成する請求項4記載のスポイラー。
前記第二部材(2)に、錐台状の櫓体(25)がその周りの裏面(2b)よりも隆起して一体成形され、且つ該櫓体(25)の天面(252)に透孔(252c)が貫通形成される一方、前記第一部材(1)には、前記櫓体(25)を覆う覆体(15)が一体成形され、且つ前記透孔(252c)と向き合う位置に通孔(152c)が形成されて、該通孔(152c)及び前記透孔(252c)への締結部材(SW)の挿入により第一部材(1)と第二部材(2)とを締結し、さらに該櫓体(25)に係る錐面の対面両壁部(251a,251a)に対応する覆体(15)の両側板(151,151)部位に切欠開口(151c)が設けられて、該切欠開口(151c)を前記開口窓(10)にして、該櫓体(25)を前記凸部(21)とした請求項4又は5に記載のスポイラー。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るスポイラー及びその製造方法について詳述する。
(1)実施形態1
図1〜
図11は本発明に係るスポイラー及びその製造方法の一形態で、
図1は(イ)が下面側から見たスポイラーの概略斜視図、(ロ)が(イ)の要部斜視図、
図2は
図1の分解斜視図、
図3は
図1(ロ)に代わる他態様図、
図4は下治具に第一部材をセットした車両前後方向での説明断面図、
図5は
図4の第一部材に第二部材を載置した説明断面図、
図6は
図5に対応する車幅方向での説明断面図、
図7は
図6の凸部に係合部を係合させた説明断面図、
図8は
図7の後、上下治具を閉じた説明断面図、
図9は
図8の凸部への係合部を解除した説明断面図、
図10は
図9の後に、振動溶着で第一部材に第二部材が一体化された説明断面図、
図11は
図6,
図7に代わる凸部,係合部周りの他態様図である。尚、第一部材,第二部材は簡略図示し、溶着用の疣状突起kを強調して大きく描く。また図面を判り易くするため、
図3を除き、断面を示すハッチングの図示を省く。
【0010】
(1a)スポイラー
スポイラーPは、合成樹脂製の板状第一部材1と合成樹脂製の板状第二部材2とを具備し、双方が振動溶着で一体化されたものである。自動車のルーフエンド近くのバックドアに、車幅方向に延びる翼状の本スポイラーPが取付けられる。
第一部材1と第二部材2には、アッパー部材2とロア部材1の組合せやアウター部材とインナー部材との組合せがあるが、ここでは第一部材1をロア部材とし、第二部材2をアッパー部材とする。ロア部材1とアッパー部材2とが振動溶着で一体化されるスポイラーPになっている。
【0011】
アッパー部材2は、熱可塑性樹脂製で、
図1,2のごとく車両前後方向に対し紙面水平横方向の車幅方向の方が長いスポイラーPの上半部を形成する板状の射出成形品である。アッパー部材2は車両取付け状態で、上面が意匠面2aとなるほぼ平坦な主部2Aと、該主部2Aの両端から側面視L字状に屈曲して下方に延設されるサイド部2Bと、を備える。
アッパー部材2における振動溶着の箇所は、裏面2b側であり、振動溶着時にロア部材1の溶着用の疣状突起kと対向,当接する。本実施形態の振動溶着の振動方向(以下、単に「振動方向」ともいう。)は車幅方向とする。振動溶着で、振動方向の振動に伴う製品の寸法バラツキをなくすべく、アッパー部材2の裏面2bには位置決め専用の凸部21が設けられる。凸部21は、車両後方側の車幅中央に位置するハイマウントストップランプ収容部13内に配しており、スポイラー外観に問題が生じることはない。尚、符号131はハイマウントストップランプ収容部13の第一底板部分、符号132は第二底板部分、符号135は縦壁部分、符号136は端面部分を示す。
【0012】
前記凸部21は、アッパー部材2の成形時に一体成形される駒状体である。凸部21は円柱体や球状体でもよいが、角柱体や錐体等とし、凸部21の外壁面21aと溶着設備5の位置決め装置7に設けられた係合部75との面接触によって、係合を確実にするのがより好ましい。本実施形態は、
図1,
図2ごとくの一側壁面を開放口210にしたほぼ中空四角錐台のような凸部21とする。詳しくは、
図3のような振動方向に面する両側外壁面21a,21aと、これに連接する主外壁面21b,21bと、で四角錐台の錐面を形成する。そして、両側外壁面21a,21aのうちの一つに前記開放口210が設けられる。符号21cは中空四角錐台の天面を示す。
アッパー部材2がロア部材1との振動溶着で一体化されたスポイラーPになると、凸部21のうち、少なくとも振動方向と向かい合う側の両側外壁面21a,21aが、ロア部材1の開口窓10を介してロア部材下面1a側に露出するように配される。
【0013】
ロア部材1は、熱可塑性樹脂製で、
図1,
図2のごとく紙面水平横方向の車幅方向が長いスポイラーPの下半部を形成する板状の射出成形品である。ロア部材1はアッパー部材2に係る主部2Aの裏面2b側に溶着一体化し、板状上面側が溶着面1bとなる。ロア部材1の成形時に、溶着面1b上に振動溶着用の疣状突起k(溶着用のリブを含む。)を一緒に隆起成形する。疣状突起kは
図4〜
図10のごとく分散させて複数設ける。
図10の符号k1は溶着代を示す。車両にスポイラーPを取付けたとき、ロア部材1の下面1aが文字通りスポイラー下面になる。符号12は下面1a側に膨らむ隆起部を示す。
そして、ロア部材1には、アッパー部材2との組付け,セットで、前記凸部21に対向する部位に開口窓10が設けられる。スポイラーPが出来上がると、前記凸部21の両側外壁面21a,21aが、この開口窓10を介してロア部材1の下面1a側に露出する(
図1,
図3)。
ここでは、四角錐台状錐面に係る両側外壁面21a,21aが、凸部21のアッパー部材裏面2b側から凸部先端211へ向けて間隔が狭くなり、振動方向に対する側面視で、
図11のようなハの字状に傾く両斜面212,212を形成する。次に述べるスポイラーの製造方法において、振動溶着の振動方向で、把持部75aを用いてロア部材1に対するアッパー部材2の位置決めの精度をより高められるからである(詳細後述)。
【0014】
(1b)スポイラーの製造方法
(1a)で述べたスポイラーPは、例えば次のような工程を経て製造される。
製造に先立ち、裏面2bに凸部21を設けたアッパー部材2と、該凸部21に対向する板状部位に開口窓10を設けたロア部材1とを準備する。尚、アッパー部材2,ロア部材1は、
図2のごとく、
図4,
図5の車両前後方向長さに比べて
図6〜
図10の車幅方向の方が長いが、
図6〜
図10は、アッパー部材2,ロア部材1の要部を大きく描いて判り易くするため、車幅方向長さを実際よりも縮めて図示する。
また、ロア部材1の下面1aを反転した支持面61を有し、該支持面61にロア部材1をセットした際、開口窓10に位置決め装置7が臨む下治具6と、アッパー部材2の意匠面2aを反転した受面81を有する上治具8と、を具備する溶着設備5を用意する。下治具6は、開口窓10に対向する下方部位に位置決め装置7を備える。前記支持面61の上方で受面81が対向するように下治具6の上方に上治具8が配設される。下治具6を上昇させ (又は上治具8を下降させ)、ロア部材1,アッパー部材2を介在させて、上下治具6,8を閉じることができる。下治具6にロア部材1をセットし、該ロア部材1上にアッパー部材2を載置した状況下(
図5,
図6)、位置決め装置7は、ロッド72の上昇によりその先端に設けた係合部75を、開口窓10に臨む凸部21に係合させ、アッパー部材2の振動方向の位置決めができる。
【0015】
スポイラーの製造は、第一工程として、まず下治具6の支持面61に溶着面1b側を上向きにしたロア部材1をセットする(
図4)。下治具6の支持面61に、ロア部材1が車両前後方向,車幅方向で位置決めセットされる。ハイマウントストップランプ収容部13内は図示のごとく支持面61から離れ、このとき、開口窓10の真下に、位置決め装置7の係合部75が位置する。尚、
図4のロア部材1,アッパー部材2は、
図2のIV-IV線矢視図の断面図を示す。
【0016】
続く第二工程で、ロア部材1上の溶着面1bに裏面2bが対向するようにアッパー部材2を載置する(
図5,
図6)。
アッパー部材2の車両前後方向に関しては、
図5のごとくロア部材1の車両前後方向の端縁141にアッパー部材外周縁24の隆起部分241が近接又は当接することにより、位置決めがなされる。尚、ロア部材1へのアッパー部材2の車両前後方向の位置決めは、例えば特開2014-12471号公報のごとく、ロア部材(同公報ではアウター部材)に形成した位置決めリブによってアッパー部材(同公報ではインナー部材)の車両前後方向の移動を規制して、位置決めするなどしてもよい。
ロア部材1上にアッパー部材2が載置されると、溶着用疣状突起k上にアッパー部材2が載る
図5,
図6の姿態となるが、ロア部材1には四角錐台状凸部21に対向する部位に開口窓10が設けられていることから、凸部21が開口窓10を介してロア部材1の下面1a側に露出する。ロア部材1の開口窓10に下治具6の位置決め装置7が臨んでおり、凸部先端の天面21cが、位置決め装置7のロッド先端に設けた係合部75たる把持部75aと対向する。
【0017】
次いで、第三工程として、位置決め装置7のロッド72を上動させ、開口窓10に臨む凸部21に係合部75を係合させて、アッパー部材2の振動方向の位置決めをする(
図7)。ロア部材1に載置されたアッパー部材2が振動溶着の振動方向に多少ズレていても(
図6の鎖線)、係合部75を凸部21に係合させることにより、下治具6,ロア部材1に対しアッパー部材2を車幅方向に簡単且つ精度良く位置決めできる。振動溶着では、振動させる治具(ここでは上治具8)のスタート時点と終了時点での振動方向位置を同じ地点にできるので、スタート時点で、ロア部材1へのアッパー部材2の位置決めを精度良く決定すれば、終了時点でもスタート時点の位置決め精度がそのまま保たれる。振動溶着で振幅分振れても、その振幅が製品寸法に影響を及ぼさなくなる。凸部21,開口窓10を設け、下治具6に位置決め装置7が備わることで、アッパー部材2が振動方向にズレることがあっても、下治具6,ロア部材1に対し、アッパー部材2の直接的な振動方向の位置決めが可能になる。
【0018】
本実施形態は、係合部75を、対向する両板片部751が振動溶着の振動方向に離間状態で突出して凸部21の両側外壁面21a,21aを挟着できる把持部75aとする(
図7)。振動溶着に先立ち、アッパー部材2の振動方向のセット位置に狂いがあるかどうかを問わず、両板片部751が凸部21の両側外壁面21a,21aを挟み込んで、アッパー部材2の振動方向の確実な位置決めをなす。
【0019】
ここで、
図11のごとく両板片部751に係る内板面752の縦断面形状を先端に向け側面視逆ハの字状に徐々に広がるようにした把持部75aとすると、より好ましくなる。
図11(イ)のようにアッパー部材2が、ロア部材1に対して振動方向(車幅方向)でズレていても、同図(ロ)のごとくロッド72の上動で、両板片部751が凸部21に当接し、該凸部21を紙面左方向へ移動させて、アッパー部材2を正規位置へ確実に移動修正できるからである(
図11のハ)。さらに、凸部21の両側外壁面21a,21aに前記斜面212を形成すると、一層好ましくなる。
図11(ロ)のごとくロッド72が上昇すると(白抜き矢印)、凸部斜面212が振動方向に対し側面視逆ハの字状の内板面752上を滑動して、黒矢印方向へより円滑に移動修正されるからである。アッパー部材2が正規位置に到達すると、凸部21の両側外壁面21a,21aに把持部75aの両板片部751が当接,嵌合して、位置決め装置7でアッパー部材2を位置決め保持できる効果もある。アッパー部材2に外力が不用意に加わっても、アッパー部材2の位置決めが保持され、位置ズレしない。
【0020】
その後、第四工程として、下治具6を上昇させて(又は上治具8を下降させて)、上下治具6,8を閉じ、第一部材1と第二部材2とを圧接状態にする(
図8)。下治具6の上動で、下治具6にセットされたロア部材1上のアッパー部材2が上治具8に当たる。上下治具6,8が両部材1,2を圧接状態で挟んで閉じる。下治具6上に位置決めセットされたロア部材1に、アッパー部材2が振動方向にも位置決めセットされた状態で閉じる。ロア部材1とアッパー部材2との振動方向の位置が精確に合わさって保持される。
【0021】
続く第五工程で、ロッド72を下降させ、凸部21への係合部75の係合を解除する(
図9)。しかる後、第六工程で、アッパー部材2と圧接状態で一体となった上治具8を、
図10の振動溶着の振動方向に振動させる。
図10で、ロア部材1の両端でアッパー部材2との隙間ε1,ε2が、振幅分に余裕分を加えた数値で確保されており、溶着振動方向には上治具8を規制して動きを止めるものはない。上治具8とアッパー部材2が圧接状態下にあって、互いにずれることなく溶着振動が行われる。アッパー部材2と一体となった上治具8側が振動して、ロア部材1に対しアッパー部材2が車幅方向(振動方向)に所定の振幅で相対振動する。と同時に、下治具6側が加圧し続けており、アッパー部材2,ロア部材1間で摩擦熱を発生させ、両部材1,2の圧接部分を溶かす。ロア部材1の疣状突起kの先端部分の溶着代k1を溶かして(
図10)、アッパー部材2とロア部材1とを溶着結合する。振動溶着を終えると、上治具8が振動溶着のスタート地点に戻って止まる。振動溶着スタート時のロア部材1へのアッパー部材2の振動方向における
図7の位置決めセット状態がそのまま保持された形で、両部材1,2が一体化した所望のスポイラーPが出来上がる。
【0022】
(2)実施形態2
図12,
図13は別形態のスポイラーPで、
図12は
図1,
図2に対応するスポイラーの全体斜視図と分解斜視図、
図13は
図12の要部拡大図である。尚、櫓体25,覆体15は図面を判り易くするため大きく描く。
【0023】
(2a)スポイラー
本実施形態は、第一部材1と第二部材2との振動溶着に加えて、螺子部材やリベット等の機械締結用締結部材SWで第一部材1と第二部材2とを補助締結できるようにしたスポイラーPである。アッパー部材2とロア部材1とを、溶着結合と共に機械締結する大型スポイラーになっている。実施形態1と同様、ここでも第一部材1をロア部材1、第二部材2をアッパー部材2とする。補助締結用の櫓体25がアッパー部材2に設けられ、該櫓体25を覆う補助締結用の覆体15がロア部材1に設けられる。
【0024】
詳しくは、アッパー部材2に、錐台状の櫓体25がその周りのアッパー部材裏面2bよりも隆起して
図12のごとく一体成形され、且つ該櫓体25の天面252に透孔252cが貫通形成される。一方、ロア部材1には、櫓体25を覆う覆体15が一体成形され、且つ透孔252cと向き合う位置に通孔152cが形成される。そして、通孔152c及び透孔252cへ螺子部材やリベット等の締結部材SWを挿入することによって、ロア部材1とアッパー部材2とを機械締結できるようにしている。
【0025】
また、櫓体25の錐面のうち、振動方向と向かい合う対面両壁部251a,251aに対応する覆体15の両側板151,151部位に切欠開口151cを設ける。該切欠開口151cを開口窓10にして、櫓体25が凸部21にもなるようにしたスポイラーPとする。
櫓体25が凸部21になるよう、振動方向と向かい合う側の覆体15に係る両側板151に切欠開口151cが一対設けられる。切欠開口151cは、
図13のごとく両側板151の大半を切欠き、さらに天板155の一部にまでその切欠が及ぶ。切欠開口151cの形成によって、櫓体25の対面両壁部251a,251aが凸部21の両側外壁面21a,21aにもなり、該切欠開口151cを介してロア部材1の下面1a側に両側外壁面21a,21aが露出する(
図13)。櫓体25,覆体15を補助締結用にするにとどまらず、アッパー部材2の位置決め用としても利用したスポイラーPになっている。本実施形態は、さらにロア部材1に覆体15の側板151から天板155に及ぶ切欠開口151cを設けるに終わらず、覆体15に係る側板151の基端周囲のロア部材域1fをも切り欠く開口窓10とする。位置決め装置7の把持部75aで、櫓体25の対面両壁部251aを挟着し易くするためである。
他の構成は実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0026】
(2b)スポイラーの製造方法
(2a)で述べたスポイラーPは例えば次のようにして造ることができる。
製造に先立ち、
図12のアッパー部材2とロア部材1とを準備する。アッパー部材2は、錐台状の櫓体25をその周りのアッパー部材裏面2bよりも隆起させて一体成形し、且つ該櫓体25の天面252に透孔252cを貫通形成する。ロア部材1は、天面152に通孔152cが形成された覆体15を一体成形して、アッパー部材2との位置合わせ,セットで、覆体15が櫓体25を覆い、且つ透孔252cに通孔152cが向き合うようにする。そして、通孔152c及び透孔252cへ締結部材SWを挿着してロア部材1とアッパー部材2とを機械締結できるようする。さらに櫓体25に係る錐面のうち、振動方向と向かい合う側の対面両壁部251a,251aに対応する覆体15の両側板151,151部位に切欠開口151cを設ける。該切欠開口151cを開口窓10にして、櫓体25が凸部21にもなるようにする。
また、実施形態1で述べたような溶着設備5を用意する。
【0027】
スポイラーの製造方法は、アッパー部材2とロア部材1の形状が実施形態1のものと若干異なるだけで、実施形態1と基本的に同じである。
スポイラーの製造は、まず下治具6の支持面61に溶着面1b側を上向きにしたロア部材1をセットし(第一工程)、ロア部材1上の溶着面1bに裏面2bが対向するようにアッパー部材2を載置する(第二工程)。
【0028】
次いで、位置決め装置7のロッド72を上動させ、開口窓10を通って、係合部75を凸部21に係合させて、アッパー部材2の振動方向の位置決めをする(第三工程)。係合部75を凸部21に係合させることによって、下治具6を基準にしてアッパー部材2が振動方向に対し位置決めされる。この位置決めをした後、下治具6を上昇させて上下治具6,8を閉じ、ロア部材1とアッパー部材2とを圧接状態にする(第四工程)。続く第五工程で、ロッド72を下動させ、凸部21への係合部75の係合を解除する。
【0029】
しかる後、圧接状態によりアッパー部材2と一体となった上治具8を、
図10の車幅方向に振動させ、ロア部材1に設けた疣状突起kの先端部分にあたる溶着代k1を溶かして、アッパー部材2とロア部材1とを振動溶着する(第六工程)。振動溶着を終えると、上治具8が振動溶着のスタート地点に戻って止まる。したがって、振動方向に関しては、振動溶着スタート時に位置決めセットした状態がそのまま維持される。この後、下治具6を下降させて、一体化したアッパー部材2とロア部材1を取り出し、通孔152c,透孔252cへ締結部材SWを挿着し、ロア部材1とアッパー部材2とを締結する。かくして、アッパー部材2とロア部材1とが溶着接合し、さらに締結部材SWで機械的に補助締結して、両部材1,2がより強固に一体化した所望のスポイラーPが出来上がる。
他の構成は実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0030】
(3)効果
このように構成したスポイラー及びその製造方法によれば、下治具6上にセットされたロア部材1の開口窓10を介して、該ロア部材1上に載置したアッパー部材2の凸部21へ下治具6の位置決め装置7に係る係合部75を係合できるので、下治具6,ロア部材1に対し、アッパー部材2の振動方向の位置決めが精度良くできる。そして、この状態を保ったまま振動溶着し、且つ溶着振動機に取付けられた上治具8は振動溶着のスタート時と終了時の地点を同じにできるので、アッパー部材2とロア部材1との振動方向の位置ズレを少なくした製品を造ることができる。下治具6からアッパー部材裏面2bに設けた凸部21を係合部75で掴まえる機構で、且つ振動溶着の振動直前まで、凸部21を掴まえておくことで、ロア部材1,アッパー部材2の振動方向の位置ズレを最小限に抑えることができる。溶着一体化されたロア部材1とアッパー部材2との振動方向のバラツキをなくし、品質向上,歩留まり向上につながるスポイラーPを生産できる。
【0031】
振動溶着の振動方向において、振幅分に余裕分を加えた隙間(
図7のε1,ε2)は振動させるうえで必要不可欠であり、従来、振動させる側の部材(ここではアッパー部材2)の固定側部材(ここではロア部材1)への位置決めが困難であった。特許文献1では、第1治具にセットしたアウター部材へインナー部材を重ねて、インナー部材を車両前後方向に位置決めをする一方、車幅方向(振動方向)に関しては第2治具の位置決め凸部64に頼っているため、アウター部材に対してインナー部材が振動方向に位置ずれしたまま、第1治具と第2治具とを閉じてしまい、振動方向における製品バラツキを生む虞があった。
一方、本発明は、車幅方向(振動方向)に対するロア部材1,アッパー部材2の位置決めを、凸部21と開口窓10を設けて下治具6だけで完結できるので、振動方向のバラツキをなくした品質的に優れるスポイラーPを提供できる。下治具6に位置決めセットされたロア部材1にアッパー部材2を載せ、凸部21に係合部75を係合させて、下治具6,ロア部材1に対しアッパー部材2の直接的な位置決めが可能であり、スポイラーPの品質向上に貢献できる。下治具6上で、ロア部材1,アッパー部材2が車両前後方向のみならず振動方向の車幅方向にも位置決めセットされる。このロア部材1,アッパー部材2を、該下治具6と上治具8とで圧接状態で閉じ、次に、上治具8と一緒にアッパー部材2を振動させるのであるが、両部材1,2の溶着を終えた後、振動前のスタート時の地点に戻れるので、振動方向のロア部材1,アッパー部材2の位置関係において、両部材1,2が位置決めセットされた初期状態で溶着一体化される。溶着に伴う振動方向の振幅に影響されず、歩留まり向上が期待できる良好なスポイラーPを生産できる。
【0032】
また、係合部75を、対向する両板片部751が振動溶着の振動方向に離間状態で突出して凸部21の両側外壁面21a,21aを挟着できる把持部75aとすると、該把持部75aで凸部21を挟んでアッパー部材2の振動方向の位置決めができるので、精度の高い位置決めが行い易くなる。把持部75aの両板片部751に係る内板面752の縦断面形状を、先端に向け側面視逆ハの字状に徐々に広がるようにすると、ロッド72を上動させ、内板面752を使って、凸部21をその正規位置へ移動修正し易くなる。さらに、凸部21の両側外壁面21a,21aが、該凸部21周りの裏面2b側から凸部先端211へ向けて間隔が狭くなる側面視ハの字状に傾く斜面212を形成すると、ロッド72の上動に伴い、
図11(ロ)のごとくアッパー部材2の凸部斜面212が内板面752を滑りながらその正規位置へ円滑移動できる。
【0033】
加えて、実施形態2のごとく、アッパー部材2に透孔252cのある櫓体25を設け、且つロア部材1に櫓体25を覆う通孔152cのある覆体15を設け、通孔152c,透孔252cに締結部材SWを挿着してアッパー部材2,ロア部材1を締結できるようにし、さらに櫓体25の対面両壁部251a,251aに対応する覆体15の両側板151,151に切欠開口151cを設けると、該切欠開口151cを開口窓10にして、櫓体25を凸部21にもできる。アッパー部材2とロア部材1の振動溶着に、補助締結用の櫓体25,覆体15を設けることがあるが、覆体15に切欠開口151cを形成することによって、櫓体25にアッパー部材2の振動方向の位置決め用凸部21を担わせることができ、位置決め専用の凸部21を新たに要しない。櫓体25と覆体15が補助締結用と位置決め用の二役を果たし、極めて優れもののスポイラーPになる。
【0034】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。第一部材1,第二部材2,溶着設備5,螺子部材,スポイラーP等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、位置決め装置7のロッド72を上動させ、開口窓10を通ってロッド先端721に設けた係合部75を凸部21に係合させて、第二部材2の振動方向位置を位置決めするのに、
図14のような構成を採ることもできる。第二部材裏面2bに二つの凸部21を離間して設け、両凸部21間にそれぞれの位置決め装置7を配設し、各ロッド72を上動させた後、外方へ移動させて、二つの凸部21に係合部75を内側から係合させて、第二部材2の振動方向の位置決めをすることもできる。