特許第6238834号(P6238834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6238834
(24)【登録日】2017年11月10日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】作業工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20171120BHJP
   B25D 16/00 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   B25F5/00 C
   B25D16/00
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-102815(P2014-102815)
(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-217474(P2015-217474A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100105120
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 哲幸
(74)【代理人】
【識別番号】100106725
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】藤波 克人
(72)【発明者】
【氏名】小野田 真司
(72)【発明者】
【氏名】古澤 正規
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−079137(JP,A)
【文献】 特開2002−036136(JP,A)
【文献】 特開2011−194483(JP,A)
【文献】 特開2010−167505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B25D 11/00 − 17/32
B23B 45/00
B25B 21/00 − 23/18
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端工具によって所定の加工作業を遂行する手持式の作業工具であって、
工具本体と、
前記先端工具を駆動する駆動機構と、
前記工具本体に作用する重力に基づいて設定される所定の基準線につき、当該基準線に対する前記工具本体の傾斜状態に応じて、先端工具出力を変更可能な出力変更装置と、を有し、
前記駆動機構は、モータ軸を備えた駆動モータを有し、
前記先端工具出力は、所定の出力値で規定される第1先端工具出力と、前記第1先端工具出力よりも小さな出力値で規定される第2先端工具出力との間で変更可能とされ、
前記第1先端工具出力は、所定の回転数により前記モータ軸が回転されることにより得られ、
前記第2先端工具出力は、前記所定の回転数よりも小さい値にて前記モータ軸が回転されることにより得られ、
前記出力変更装置は、前記先端工具の長軸方向が鉛直方向と平行である場合には第1先端工具出力により前記先端工具を駆動し、前記先端工具の長軸方向が鉛直方向と直交する場合には第2先端工具出力により前記先端工具を駆動するよう構成されていることを特徴とする作業工具。
【請求項2】
請求項1に記載された作業工具であって、
前記出力変更装置は、前記基準線に対する前記工具本体の傾斜状態を検出する加速度センサを有することを特徴とする作業工具。
【請求項3】
請求項1または2に記載された作業工具であって、
前記出力変更装置は、前記基準線に対する前記工具本体の傾斜状態の指標である傾斜値を検出するとともに、
当該傾斜値を所定の閾値と対比することにより、前記第1先端工具出力および前記第2先端工具出力のいずれかが選択されることを特徴とする作業工具。
【請求項4】
請求項3に記載された作業工具であって、
前記閾値は、使用者によって設定変更が可能に構成されていることを特徴とする作業工具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された作業工具であって、
前記第1先端工具出力と前記第2先端工具出力の各出力値の間の値として規定される第3先端工具出力が更に設定されており、
前記出力変更装置は、前記基準線に対する前記工具本体の傾斜状態に基づいて、前記第1先端工具出力から第3先端工具出力のいずれかを選択することを特徴とする作業工具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載された作業工具であって、
前記出力変更装置は、
前記基準線に対する前記工具本体の傾斜状態に応じて、前記先端工具出力を変更可能とするオン状態、もしくは前記基準線に対する前記工具本体の傾斜状態に応じて、前記先端工具出力の変更を許容しないオフ状態の一方を選択するスイッチ部を有することを特徴とする作業工具。
【請求項7】
請求項6に記載された作業工具であって、
前記先端工具を、当該先端工具の長軸方向に直線状に打撃駆動する打撃機構と、
前記先端工具を、前記長軸方向周りに回転駆動する回転機構と、
前記打撃機構のみを動作させる打撃モード、もしくは少なくとも前記回転機構を動作させる回転モードのいずれかを選択するモード設定部と、を有し、
使用者が、前記回転モードを選択した場合には、前記回転モードの選択動作に連動して前記スイッチ部が前記オン状態に置かれ、
使用者が、前記打撃モードを選択した場合には、前記打撃モードの選択動作に連動して前記スイッチ部が前記オフ状態に置かれることを特徴とする作業工具。
【請求項8】
請求項6または7に記載された作業工具であって、
前記スイッチ部が前記オン状態と前記オフ状態のいずれに置かれているかを示すスイッチ表示部を有することを特徴とする作業工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が把持して作業を行う手持式の作業工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012−11543号は、手持式の作業工具の一例として釘打ち機に関する姿勢検出技術を開示している。具体的には、当該文献は、作業空間において作業者に保持された釘打ち機の位置の変化を加速度センサにより検出する技術を開示している。この技術によれば、釘打ち機が正しい位置にある場合は、釘の打込み動作が許容され、釘打ち機が正しい位置にない場合に釘の打込み動作が禁止される。
手持式の作業工具に関しては、このように、把持された作業工具の位置に応じて作業の可否を決める技術が有効であるが、さらに把持態様に起因する作業者の疲労を極力軽減することにより、高い作業効率維持に資する技術が要請される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−11543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、手持ち式の作業工具につき、当該作業工具を保持する作業者の疲労を軽減することに有効な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業工具は、先端工具によって所定の加工作業を遂行する手持式の作業工具であって、工具本体と、先端工具を駆動する駆動機構と、工具本体に作用する重力に基づいて設定される所定の基準線につき、当該基準線に対する前記工具本体の傾斜状態に応じて、先端工具出力を変更可能な出力変更装置と、を有する。
工具本体は、駆動機構を収容する領域と、使用者に把持されるハンドグリップを有する。出力変更装置は、工具本体における任意の位置に配置される。
先端工具出力は、先端工具が回転駆動される場合に先端工具出力は、単位時間あたりの先端工具の回転数として示すことができ、具体的には、1分間あたりの先端工具の回転数として、(回転/分)の値が示される。また、先端工具が打撃駆動される場合の先端工具出力は、単位時間あたりの先端工具の打撃数として示すことができ、具体的には、1分間あたりの先端工具の打撃数として、(打撃回数/分)の値が示される。
【0006】
ここで、手持ち式の作業工具を使用した場合における、使用者の疲労の要因につき説明する。先端工具を回転させて加工対象を穿孔する作業においては、先端工具が穿孔した孔内にて先端工具が固定され、作業工具が振り回されてしまう、いわゆるブロッキング状態に陥る恐れがある。ブロッキング状態を防ぐために、使用者は、「先端工具が孔内に固定されないようにする力」を加える必要がある。また、先端工具を打撃駆動させて加工対象を穿孔する作業においては、使用者は、「先端工具が加工対象を打撃する力に抗する力」を、更に加える必要がある。
本発明においては、基準線に対する工具本体の傾斜状態に応じて、先端工具出力を変更することにより、「先端工具が孔内に固定されないようにする力」もしくは「先端工具が加工対象を打撃する力に抗する力」を軽減させることが可能となる。この結果、使用者の疲労を軽減させる手持ち式の作業工具を提供することが可能となる。
【0007】
また本発明にあっては、駆動機構は、モータ軸を備えた駆動モータを有する。先端工具出力は、所定の出力値で規定される第1先端工具出力と、第1先端工具出力よりも小さな出力値で規定される第2先端工具出力との間で変更可能とされる。第1先端工具出力は、所定の回転数により前記モータ軸が回転されることにより得られ、第2先端工具出力は、当該所定の回転数よりも小さい値にて前記モータ軸が回転されることにより得られる。出力変更装置は、先端工具の長軸方向が鉛直方向と平行である場合には第1先端工具出力により先端工具を駆動し、先端工具の長軸方向が鉛直方向と直交する場合には第2先端工具出力により前記先端工具を駆動するよう構成されている。
【0008】
当該構成によって、基準線に対する工具本体の傾斜状態に基づき、第1先端工具出力と第2先端工具出力とを切り替えることにより、適切な先端工具の駆動出力を得ることが可能となる。
【0009】
また本発明に係る作業工具における解決手段の一態様として、出力変更装置は、基準線に対する工具本体の傾斜状態を検出する加速度センサを有することができる。
【0010】
この態様に係る作業工具によれば、基準線に対する工具本体の傾斜状態を、具体的な数値を伴う角度として検出することが可能である。よって、基準線に対する工具本体の傾斜状態の検出にあたり、精度を向上させることができる。
【0011】
また本発明に係る作業工具における解決手段の一態様として、出力変更装置は、基準線に対する工具本体の傾斜状態の指標である傾斜値を検出することができる。そして、当該傾斜値を所定の閾値と対比することにより、第1先端工具出力および第2先端工具出力のいずれかを選択することができる。
【0012】
この態様に係る作業工具によれば、作業者が作業工具の傾斜状態を変化させた結果、閾値を超えた場合に、異なる大きさを有する先端工具出力を得ることができる。
なお、傾斜値としては、具体的には、基準線と本体部の傾斜状態を示す角度があげられる。この場合、閾値も角度を示す数値となる。
【0013】
また本発明に係る作業工具における解決手段の一態様として、閾値は、使用者によって設定変更が可能に構成されている。
【0014】
この態様に係る作業工具によれば、使用者が所望の閾値を手動にて設定することが可能となる。閾値の設定としては、例えばダイヤル式の摘み部を有する閾値設定部を構成することができる。この場合、使用者は、摘み部を回動することにより、所望の閾値を得ることが可能となる。
また、閾値を表示する表示部を設けることも可能である。この閾値の表示部を設けた構成においては、基準角度を目視により確認することができる。
【0015】
また本発明に係る作業工具における解決手段の一態様として、第1先端工具出力と第2先端工具出力の各出力値の間の値として規定される第3先端工具出力を更に設定することが可能である。この場合、出力変更装置は、基準線に対する工具本体の傾斜状態に基づいて、第1先端工具出力から第3先端工具出力のいずれかを選択することができる。
【0016】
この態様に係る作業工具によれば、先端工具出力の出力値を、本体部の傾斜状態の変更に伴い段階的に変化させることが可能となる。よって、使用者は、先端工具出力の出力値が突然大きく変更されることに伴う違和感を覚えることなく、加工作業を行うことが可能となる。
【0017】
また本発明に係る作業工具における解決手段の一態様として、出力変更装置は、基準線に対する工具本体の傾斜状態に応じて、前記先端工具出力を変更可能とするオン状態、もしくは基準線に対する工具本体の傾斜状態に応じて、先端工具出力の変更を許容しないオフ状態の一方を選択するスイッチ部を有することができる。
この態様に係る作業工具は、例えば、基準線に対する工具本体の傾斜状態を検出する装置を有することができる。このような構成において、スイッチ部がオフ状態である場合は、基準線に対する工具本体の傾斜状態を検出しないように制御することができる。また、基準線に対する工具本体の傾斜状態を検出しても、検出信号を次の制御を行う装置に供給しないことができる。
【0018】
この態様に係る作業工具によれば、使用者は、加工作業を行う対象の状況や、加工作業を行う先端工具により、本発明に係る機能のオン状態もしくはオフ状態を選択することができる。すなわち、使用者は、必要に応じて最適な先端工具出力を得ることができる。
【0019】
また本発明に係る作業工具における解決手段の一態様として、先端工具を、当該先端工具の長軸方向に直線状に打撃駆動する打撃機構と、先端工具を、長軸方向周りに回転駆動する回転機構とを有することができる。さらに、打撃機構のみを動作させる打撃モード、もしくは少なくとも回転機構を動作させる回転モードのいずれかを選択するモード設定部と、を有することができる。この場合、使用者が、回転モードを選択した場合には、回転モードの選択動作に連動してスイッチ部をオン状態に置き、使用者が、打撃モードを選択した場合には、打撃モードの選択動作に連動してスイッチ部をオフ状態に置くことができる。
【0020】
この態様に係る作業工具によれば、使用者の疲労軽減と、作業効率のバランス化を図ることが可能となる。特に、回転モードにおいては、上述の通りブロッキング現象が生ずる恐れがある。一方、打撃モードにおいては、使用者は「先端工具が加工対象を打撃する力に抗する力」を加える必要があるが、ブロッキング現象が生ずる恐れは回転モードと比して少ない。
すなわち、本態様に係る作業工具によれば、使用者は、回転モードにおいては使用者の肉体的負担の少ない状態で加工作業を行い、打撃モードにおいては作業効率を優先することが可能となる。
【0021】
また本発明に係る作業工具における解決手段の一態様として、スイッチ部がオン状態とオフ状態のいずれに置かれているかを示すスイッチ表示部を有することができる。
【0022】
本態様に係る作業工具によれば、スイッチ部の選択状態を、使用者が目視により容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、手持ち式の作業工具において、当該作業工具を保持する作業者の疲労を軽減することに有効な技術が提供されることとなった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るハンマドリルの全体構成を示す正面図である(部分的に断面が示される)。
図2】当該ハンマドリルにおける駆動機構の詳細を示す拡大断面図である。
図3】当該ハンマドリルにおけるコントローラの構成を示す模式的ブロック図である。
図4】当該ハンマドリルにおける傾斜検出部の構成を示す模式図である。
図5】当該ハンマドリルにおける操作部の構成を示す模式図である。
図6】ハンマドリルモードにおける動作態様を示す模式図である。
図7】ハンマドリルモードにおける動作態様を示す模式図である。
図8】ハンマモードにおける動作態様を示す模式図である。
図9】ハンマモードにおける動作態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態につき、図1図9に基づき詳細に説明する。第1実施形態では、本発明に係る作業工具の一例として電動式のハンマドリル100が用いられている。当該ハンマドリル100は、作業者が両手(あるいは片手)にて把持した状態で加工作業を遂行可能である。
【0026】
(ハンマドリル100の基本構成)
図1および図2に基づき、ハンマドリル100の基本的な構成を説明する。図1にはハンマドリル100の全体構成が示され、図2には当該ハンマドリル100の駆動機構の詳細を拡大断面図として示される。なお本明細書においては、図1および図2における、左側、右側、上側および下側を、それぞれハンマドリル100における前側、後側、上側および下側と称呼する。ハンマドリル100は、ビット119が着脱自在な本体部101を有する。ビット119の本体部101に対する着脱は、使用者により行われる。ビット119は本発明に係る「先端工具」の一例であり、本体部101は本発明に係る「工具本体」の一例である。ビット119は、本体部101の前側領域に着脱可能である。ビット119は、その長軸がハンマドリル100の前後方向に延在した状態で本体部101に配される。ビット119の延在方向(すなわちビット119の長軸延在方向)は、符号119yで示される。
【0027】
図1に示す通り、ハンマドリル100の本体部101は、モータハウジング103と、ギアハウジング105と、ハンドグリップ107を主体に構成される。モータハウジング103は駆動モータ110を収容する。当該駆動モータ110は、本発明に係る「駆動モータ」に対応する一例である。
駆動モータ110にはモータ軸111が設けられている。当該モータ軸111が、本発明に係る「モータ軸」の一例である。本実施形態においけるモータ軸111の回転軸線は、延在方向119yと概ね直交する。なお、ハンマドリル100の変更形態として、モータ軸の回転軸線と延在方向119yが、90度以外の角度で交差する態様も採用可能である。
【0028】
ハンドグリップ107は使用者に把持される領域として、本体部101の後側領域に配置される。ハンドグリップ107には、使用者に引き操作されるトリガ107aが配置される。使用者がトリガ107aを操作することにより、駆動モータ110が通電駆動されることとなる。なお、トリガ107a、後述するモード設定部650とはトリガ規制機構(図示せず)を有する。トリガ規制機構は、使用者が、モード設定部650における摘み部651に対し所定の動作を行った場合、トリガ107aを後側に移動させてハンドグリップ107の内部に収納される。この際、トリガ107aの一部(または全部)が、ハンドグリップ107の内部に収納される。さらに、トリガ規制機構は、ハンドグリップ107に収納されたトリガ107aを固定し、使用者の引き操作を不能とさせる。
トリガ107aの前側には、連続打撃スイッチ107bが配置される。連続打撃スイッチ107bは、トリガ規制機構によりトリガ107aの操作が不能とされた場合に、後側へ突出されるとともに操作が可能となるように構成される。連続打撃スイッチ107bは、ビット119に対し連続した打撃駆動を行わせる動作と、当該連続した打撃駆動を停止する動作とを選択することができる。
【0029】
図2に示す通り、ギアハウジング105は、クランク機構120、打撃機構140、およびツールホルダ回転機構150を収容する。この打撃機構140が、本発明に係る「打撃機構」の一例であり、ツールホルダ回転機構150が、本発明に係る「回転機構」の一例である。
図2に示すように、クランク機構120は、駆動モータ110のモータ軸111に形成された第1駆動ギア121により、被動ギア123を介して回転駆動されるクランク軸125と、当該クランク軸125に連接された偏心軸127と、当該偏心軸127に連接された連接ロッド129と、を主体として構成される。クランク軸125は、特に符号を付さない上下の軸受を介してギアハウジング105に対して回転自在に支持される。本実施の形態におけるモータ軸111とクランク軸125は、互いに平行に配置されている。偏心軸127は、クランク軸125に一体状に設けられるとともに、クランク軸125の軸線からオフセットした軸線を有する。連接ロッド129は、ピストン131と偏心軸127とを連接する。
【0030】
図2に示す通り、打撃機構140は、ピストン131、シリンダ141、ストライカ143、およびインパクトボルト145を主体として構成される。
ピストン131は、延在方向119yに延在状に設けられたシリンダ141の内部において摺動可能に配置される。駆動モータ110とシリンダ141は、互いの長軸線が直交するように配置される。シリンダ141は、ツールホルダ159の後側に配置され、ピストン131及びストライカ143によって仕切られる空気室141aを有する。
ストライカ143は、シリンダ141内に摺動自在に配置され、インパクトボルト145に対する打撃子として機能する。
インパクトボルト145は、ストライカ143の運動エネルギを、ビット119に伝達する中間子として機能する。
ストライカ143は、ピストン131の摺動に伴う空気室141aの圧力変動(いわゆる空気バネの作用)を介して駆動される。そして、ストライカ143は、インパクトボルト145に衝突し、当該インパクトボルト145を介してビット119に打撃力を伝達する。
打撃機構140により打撃動作を行った場合のビット119の出力、すなわち先端工具出力は、単位時間あたりのビット119の打撃数によって定義される。この場合の具体的な先端工具出力としては、1分間あたりの先端工具の打撃回数として、(打撃回数/分)の値を示すことができる。ここで当該ビット119の打撃数は、上述した打撃機構140との関連において、ピストン131の駆動回数に基づいて規定される。ピストン131の駆動回数は、モータ軸111の回転数に比例して規定される。すなわち、ハンマモードにおけるビット119の出力である先端工具出力(打撃数/分)は、モータ軸111の回転数に比例して規定されることとなる。
【0031】
図2に示す通り、ツールホルダ回転機構150は、第2駆動ギア151と、駆動側部材168と、中間軸153と、機械式トルクリミッター167と、小ベベルギア155と、大ベベルギア157と、ツールホルダ159を主体として構成される。ツールホルダ回転機構150は、モータ軸111の回転トルクをビット119に伝達する。
ツールホルダ回転機構150により回転動作を行った場合のビット119の出力、すなわち先端工具出力は、単位時間あたりの先端工具の回転数として定義される。この場合の具体的な先端工具出力としては、1分間あたりの先端工具の回転数として、(回転/分)の値を示すことができる。換言すれば、後述するドリルモードにおける先端工具出力(回転/分)は、モータ軸111の回転数に比例して規定されることとなる。
【0032】
図1および図2に示す通り、ツールホルダ159は、ビット119を着脱自在に保持する部材であり、略円筒状に形成されるとともに、ギアハウジング105に対して回転自在に配設される。また図2に示す通り、第2駆動ギア151は、第1駆動ギア121の下方に配置され、第1駆動ギア121と一体的に回転される。
【0033】
図2に示す通り、駆動側部材168は、中間ギア168aを有する。中間ギア168aは、第2駆動ギア151と噛み合う。駆動側部材168は、第2駆動ギア151の回転に伴い回転される。駆動側部材168は、第2駆動ギア151に対して減速されるように、第2駆動ギア151に対する減速比が設定されている。
中間軸153は、駆動側部材168に形成される。中間軸153は、モータ軸111に対して平行かつ横並びに配置される。中間軸153は、上下の軸受を介して、軸方向の端部がギアハウジング105に回転自在に支持されている。
【0034】
図2に示す通り、機械式トルクリミッター167は、中間軸153に同軸状に設けられる。機械式トルクリミッター167は、ビット119に設計値(以下、最大伝達トルク値ともいう)を超える過大なトルクが作用したとき、ビット119へのトルク伝達を遮断する。すなわち、機械式トルクリミッター167は、ビット119の過負荷に対する安全装置として備えられる。
機械式トルクリミッター167は、小べベルギア155と駆動側部材168の間に設けられている。機械式トルクリミッター167は、駆動側部材168に係合して一体回転する被動側部材169と、駆動側部材168と被動側部材169の間に設けられたスプリング167aを主体として構成される。
中間軸153に作用するトルク値が、スプリング167aの付勢力によって予め定まる最大伝達トルク値以下であれば、駆動側部材168と被動側部材169との間で、トルクを伝達する。これにより、小べベルギア155が回転する。一方、中間軸153に作用するトルク値が、最大伝達トルク値を超えたときには、駆動側部材168と被動側部材169と間でのトルク伝達が遮断される。これにより、小べベルギア155が回転不能となる。
【0035】
図2に示す通り、小ベベルギア155へ伝達された回転トルクは、小ベベルギア155に噛み合い係合する大ベベルギア157に伝達される。そして、大ベベルギア157に伝達された回転トルクは、大ベベルギア157に結合された最終出力軸としてのツールホルダ159を介してビット119へと伝達される。
【0036】
本実施の形態におけるハンマドリル100は、ビット119を駆動する形態として、ハンマドリルモードおよびハンマモードを有する。ハンマドリルモードにおいては、ビット119は、図1に示す延在方向119yを中心に回転駆動されるドリル動作と、延在方向119yに直線状に移動する打撃動作の双方の作業を同時に遂行可能とされる。
ハンマドリルモードの場合における先端工具出力は、単位時間あたりのビット119の回転数と、単位時間あたりのビット119の打撃回数の双方により定義される。
前述した通り、ハンマドリルモードにおけるビット119の回転数は、図1に示す駆動モータ110におけるモータ軸111の回転数に比例する。すなわち、ハンマドリルモードの先端工具出力の大きさは、モータ軸111の回転数に比例する。
【0037】
ハンマモードにおいては、ツールホルダ回転機構150による駆動モータ110の回転力伝達動作が解除され、ビット119は、クランク機構120および打撃機構140を介した打撃動作のみを行う。ハンマモードは、打撃モードとも称される。
ハンマモードの場合における先端工具出力は、単位時間あたりのビット119の打撃数として示すことができる。具体的には、1分間あたりのビット119の打撃数として、(打撃回数/分)が示される。
前述した通り、ハンマモードにおけるビット119の打撃数は、図1に示す駆動モータ110におけるモータ軸111の回転数に比例する。すなわち、ハンマドリルモードの先端工具出力の大きさは、モータ軸111の回転数に比例する。
【0038】
なお本実施の形態におけるハンマモードおよびハンマドリルモードとは別に、打撃駆動を解除することにより、ビット119が回転駆動のみを行うドリルモードを設定することも可能である。例えば、ハンマモード、ハンマドリルモードおよびドリルモードのうちから駆動モードを選択する形態、ハンマモードおよびドリルモードのうちから駆動モードを選択する形態、ハンマドリルモードおよびドリルモードのうちから駆動モードを選択する形態のいずれも好適に設定可能である。なお、いずれの形態を採用する場合であっても、回転動作に関する先端工具出力は、上述の理由により、モータ軸111の回転数に比例して規定されることとなる。すなわち、ドリルモード、ハンマドリルモードのいずれが用いられる場合であっても、先端工具出力は、駆動モータ110(モータ軸111)の回転数を変更することにより変更可能とされる。
【0039】
(出力変更機構の構成)
次に、図3図5に基づき、出力変更機構400の構成を説明する。出力変更機構400は、本発明における「出力変更装置」に対応する一例である。この出力変更機構400は、図1に示すように、本体部101のうち、モータハウジング103内において駆動モータ110に近接して配置されるとともに、図3に示すように、傾斜検出部500と、コントローラ600とを有する。コントローラ600は、記憶部610と、演算部611と、駆動信号生成部612とを有する。なお本実施の形態では、出力変更機構400をモータハウジング103に配置しているが、本体部101における他の領域、例えばギアハウジング105やハンドグリップ107に適宜に配置することも可能である。
【0040】
なお、第1の実施形態において、本体部101は、モータハウジング103やギアハウジング105が収容される領域と、ハンドグリップ107とが一体形成されている。一方、本体部101の構成としては、モータハウジング103やギアハウジング105が収容される第1本体部と、ハンドグリップ107が形成される第2本体部とを有するものがある。このような構成の本体部101において、出力変更機構400は、第1本体部と第2本体部のいずれかに配置することができる。また、傾斜検出部500や、コントローラ600の各構成要素を、第1本体部と第2本体部にそれぞれ分けて配置することも可能である。
【0041】
傾斜検出部500は、本体部101の傾斜状態を検出する。傾斜検出部400は、加速度センサにより構成される。図4に基づき、加速度センサによる本体部101の傾斜状態の検出につき説明する。傾斜検出部500は、本体部101(傾斜検出部500)に作用する重力に基づき、鉛直方向(図4における上下方向)に沿った鉛直直線200を規定するとともに、当該鉛直直線200に対して所定の角度をなす基準線210を規定する。
本実施形態では、基準線210は、鉛直直線200と90度の交差角をなすように(すなわち直交するように)定められている。もちろん90度以外の交差角をなすように設定することも可能である。この基準線210が、本発明に係る「基準線」の一例である。
【0042】
なお、本実施形態において、基準線210とビット119の延在方向119yとが平行となるように、傾斜検出部500は本体部101に配置される。このように、基準線210を本体部101と関連付けることにより、使用者は本体部101の傾斜状態に応じて先端工具出力が変更されることを、より明確に認識できる。もちろん、基準線210と本体部101とを関連付ける構成に関しては、これとは別の構成を選択することができる。例えば、本体部101の外面に直線を示した図柄を施し、当該図柄と基準線210とを関連付けることができる。
【0043】
図4に破線で示すように、傾斜検出部500が、基準線210に対し傾斜される。本明細書においては、この状態を、傾斜検出部500(本体部101)の「傾斜状態」と称する。この傾斜状態においては、傾斜検出部500に対し、重力加速度の分解成分g・sinΘがかかる。したがって、傾斜検出部500の出力として、g・sinΘに相当する値が電圧としてコントローラ600に出力される。コントローラ600の演算部611は、この傾斜検出部500からの電圧値を角度値に変換する。演算部611で変換された傾斜検出部500の傾斜角度は、検出角度310とされる。この検出角度310が、本発明に係る「傾斜値」の一例である。なお、基準線210と共に検出角度310を形成する直線は、検出直線300とされる。
【0044】
記憶部610は、基準角度220を記憶保持する。基準角度220は、検出角度310に対する閾値とされる。この基準角度220が、本発明に係る「閾値」の一例である。本実施形態に係るハンマドリル100において、基準角度220は、基準線210と鉛直直線200とが形成する角度よりも、小さい角度とされる。この構成により、基準線210に対する本体部101の傾斜状態において、ビット119の延在方向100Yが鉛直方向200と平行になった場合は、検出角度310が閾値を超えることとなる。
【0045】
演算部611は、検出角度310を求めるとともに、検出角度310と基準角度220とを比較する。なお、先端工具出力は、所定の大きさを有する第1先端工具出力と、第1先端工具出力とは異なる大きさを有する第2先端工具出力とを有する。具体的には、第2先端工具出力は、第1先端工具出力よりも小さい値とされる。
演算部611は、検出角度310と基準角度220とを比較し、その結果を駆動信号生成部612に伝達する。つまり、演算部611は、先端工具出力を、第1先端工具出力と、第2先端工具出力の間で変更するよう、駆動信号生成部612に信号を送出する。演算部611は、検出角度310が基準角度220を超えていない場合は、ビット119が第2先端工具出力を出力するよう、駆動信号生成部612に信号を送出する。演算部611は、検出角度310が基準角度220を超えている場合は、ビット119が第1先端工具出力を出力するよう、駆動信号生成部612に信号を送出する。
【0046】
駆動回路620は、駆動信号生成部612からの信号に対応した駆動電流を駆動モータ110に与え、これにより駆動モータ110が回転駆動されることとなる。
上述の通り、先端工具出力は、モータ軸111の回転数に比例して定められる。すなわち駆動信号生成部612は、モータ軸111を所定の回転数とするための信号を、駆動回路620に出力する。この場合、第1駆動出力に対応する第1モータ回転数、および第2駆動出力に対応する第2モータ回転数がそれぞれ規定されるが、上記比例関係に従い、第1モータ回転数よりも第2モータ回転数の方が小さい値とされることになる。以上の構成により、基準線210に対する本体部101の傾斜状態に応じて、第1先端工具出力と第2先端工具出力との間で出力が適宜に変更可能とされる。
【0047】
なお、傾斜検出部500およびコントローラ600の構成は、上述のものに限られない。たとえば、傾斜検出部500(加速度センサ)から出力される「傾斜に応じた電圧値自体」に基づき、傾斜角度を演算することなく「傾斜の大きさ」を検出することが可能である。この場合、傾斜に応じた電圧と、実際の傾斜角度とは正比例をしておらず、サインカーブを描く。よって、傾斜検出部500から出力される、傾斜に応じた電圧により制御を行う場合は、当該サインカーブに対するさらなる制御が行われる。
また、傾斜検出部500として、傾斜角度をそのまま電圧値として出力する、いわゆる傾斜センサを使用することができる。
また、傾斜検出部500として、閾値を記憶し、傾斜角度と閾値の比較を行うように構成することができる。この場合、上述したコントローラ600における記憶部610と演算部611に係る構成および機能を、傾斜検出部500が有することとなる。
【0048】
図3に示す通り、ハンマドリル100は、出力表示部630と、スイッチ部640と、モード設定部650を有する。当該スイッチ部640は本発明に係る「スイッチ部」に対応し、モード設定部650が本発明に係る「モード設定部」に対応する。
コントローラ600は、出力表示部630を動作させる。また、コントローラ600は、スイッチ部640からの信号およびモード設定部650からの信号に基づき、駆動回路620の制御を行う。
出力表示部630と、スイッチ部640と、モード設定部650の具体的な構成を、図5に示す。図5は、図1に示した本体部101を上側から見た状態を示す。図5において斜線を施している部分は、発光ダイオードが点灯している状態を示す。図5に示すように、本実施の形態では、出力表示部630と、スイッチ部640と、モード設定部650が枠部710内に配置されている。当該枠部710内の領域については、操作部700と称呼される。枠部710は溝や凸状の適宜の部材により形成される。
【0049】
出力表示部630は、複数の発光ダイオード631を並べて配置ことにより形成され、先端工具出力の大きさを視覚的に表示する。図5においては、発光ダイオード631が5個並べられており、その内の4個が点灯している。このように、複数の発光ダイオード631の一部または全てを点灯させることにより、使用者は、先端工具出力の大きさを目視にて把握し、使用中における先端工具出力の大きさを随時に確認しながら作業を行うことが可能となる。
なお出力表示部630としては、種々の構成を適宜選択することが可能である。例えば、発光ダイオード631に代えて、有機エレクトロルミネッセンス、電球等の発光体を使用することが可能である。また、先端工具出力の状態を、具体的な数値情報として表示することも可能である。この場合、最大の先端工具出力を100パーセントとし、先端工具が停止している状態を0パーセントとすることが好ましい。このようにパーセント標記と先端工具出力とを関連付けることにより、数値を液晶表示板にて表示することができる。
【0050】
スイッチ部640は、検出角度310の大きさに基づき、ビット119の先端工具出力の大きさを変更するオン状態と、先端工具出力の大きさを変更しないオフ状態のいずれか一方を選択する。すなわち、スイッチ部640は、出力変更機構400が機能する状態と、出力変更機構400が機能しない状態とを選択する。具体的には、スイッチ部640は、傾斜検出部500の動作もしくは非動作を切り替える。このスイッチ部640により、使用者は、自己の判断により出力変更機構400が機能する状態と、機能しない状態とを選択することができる。よって、使用者は、作業現場の状況などに応じ、適した先端駆動出力を選択することが可能となる。
なお、スイッチ部640は、出力変更機構400が機能しない状態を他の構成により達成することもできる。例えば、検出角度310が基準角度220を超えていることを傾斜検出部500が検出した場合を想定する。この場合であっても、駆動信号生成部612が、駆動出力を変更すべき旨の信号を駆動回路620へ送出しない構成とすることができる。
【0051】
なお、スイッチ部640は、出力変更機構400を機能させるスイッチ641と、出力変更機構400を機能させないスイッチ642とをそれぞれ独立して有することができる。図5において、上側に図示されたスイッチ642が出力変更機構400を機能させないスイッチである。このスイッチは、機能オフスイッチ642と称せられる。一方、図5において、下側に図示されたスイッチ641が出力変更機構400を機能させるスイッチである。このスイッチは、機能オンスイッチ641と称せられる。機能オンスイッチ641と、機能オフスイッチ642は、一方が操作された場合に、他方が解除されるように構成される。
【0052】
また、これらのスイッチ641、642には発光ダイオードが内蔵されている。そして、スイッチ641、642が操作された場合に発光するように構成される。図5においては、機能オンスイッチ641が発光している。よって、使用者は、ハンマドリル100が出力変更機能を発現していることを、目視により確認することができる。すなわち、スイッチ部640に発光ダイオードを設けることにより、機能オンスイッチ641と機能オフスイッチ642の切り替え状態を示す、スイッチ表示部643が形成される。このスイッチ表示部643が、本発明に係る「スイッチ表示部」の一例である。
なお、スイッチ部640の構成は、図5に示される構成に限られない。例えば、発光ダイオードに代えて、有機エレクトロルミネッセンス、電球等の発光可能な部品を使用することが可能である。また、スイッチ641、642が発光素子を内蔵する構成ではなく、発光素子をスイッチ641、642に隣接して配置する構成とすることもできる。また、スイッチ部640として、スイッチ641、642をそれぞれ独立して設けるのではなく、単一のスイッチにより構成することもできる。この場合、単一のスイッチ部640を押圧することにより、出力変更機能のオン状態とオフ状態とを選択することができる。
【0053】
モード設定部650は、ハンマドリル100における駆動モードの選択を行う。駆動モードの選択の結果として、ハンマモードにおいては、ビット119が打撃駆動され、ハンマドリルモードにおいては、ビット119の回転駆動と打撃駆動の双方を行う。第1実施形態に係るハンマドリル100においては、モード設定部650は、ドリルモードとハンマドリルモードのいずれか一方を選択することができる。
【0054】
モード設定部650の具体的な構成を、図5に基づき説明する。モード設定部650は、摘み部651を有する。摘み部651は、位置651a〜651cをそれぞれ選択するために、回動可能に構成される。摘み部651が位置651aおよび位置651cを選択する場合、ハンマドリル100はハンマモードに切り替えられる。摘み部651が位置651bを選択する場合、ハンマドリル100はハンマドリルモードに切り替えられる。図5において、ハンマドリル100は、ハンマドリルモードに切り替えられている。
なお、使用者が、摘み部651を位置651aに設定した場合には、使用者がトリガ107aを引くことにより、モータ軸111が回転され、ビット119が打撃駆動を行う。
一方、使用者が、摘み部651を位置651cに設定した場合は、トリガ規制機構により、トリガ107aの全部または一部がハンドグリップ107に収納されるとともに、トリガ107aの引き操作が不能とされる。この場合、さらに、連続打撃スイッチ107bの操作が可能となる。この状態において、使用者は、連続打撃スイッチ107bを操作することにより、ビット119に連続した打撃駆動を行わせることが可能となる。
【0055】
(動作態様の説明)
第1実施形態に係るハンマドリル100の動作態様を、図6図9に基づき説明する。図6および図7は、ハンマドリル100がハンマドリルモードとされた場合の動作態様を示す。また図8および図9は、ハンマドリル100がハンマモードとされた場合の動作態様を示す。
図6図9においては、機能オンスイッチ641がオン状態とされる。基準角度220は、45度とされる。モータ軸111の回転数が最大である場合の先端工具出力を、第1先端工具出力とする。第1先端工具出力を100パーセントとする場合において、80パーセントに相当する先端工具出力を第2先端工具出力とする。
【0056】
図6および図7に示すハンマドリルモードの場合、ビット119としてドリルビット119aが選択される。
図6は、使用者がハンマドリル100を手で把持しつつ、床面に対し、加工作業を行っている状態を示すが、便宜上、床面および使用者に関する図示は省略されている。この際、ドリルビット119aの延在方向119yが、鉛直直線200と平行な状態とされている。この場合、検出角度310として90度が検出される。すなわち、検出角度310の数値が、基準角度220の数値を超えている状態となる。この結果、先端工具出力は、第1先端工具出力とされる。
この状態においては、ハンマドリル100の自重が、ドリルビット119aを加工対象に押し付ける力として働く。このため、使用者は、「ブロッキング現象を起こさないようにハンマドリル100を保持する力」を、主にハンマドリル100に加えることで足りる。よって、使用者は、肉体的に大きな負担を生ずることなく、安全かつ迅速な作業を行うことが可能となる。
【0057】
図7は、使用者がハンマドリル100を手で把持しつつ、鉛直方向に延在する壁面に対し、ドリルビット119aを略水平にして加工作業を行っている状態を示す。図7において、便宜上、壁面および使用者に関する図示は省略されている。この際、ドリルビット119aの延在方向119yが、鉛直直線200と略直交する状態とされている。この場合、検出角度310として略0度が検出される。すなわち、検出角度310の数値が、基準角度220の数値を超えていない状態となる。この結果、先端工具出力は、第2先端工具出力とされる。
この状態においては、使用者は、ハンマドリル100の自重を手で受ける必要がある。さらに、このハンマドリル100の自重を支える力に加えて、使用者は、ドリルビット119aを壁面に押し付けるとともに、「ブロッキング現象を起こさないようにハンマドリル100を保持する力」を、ハンマドリル100に加える必要がある。しかし、先端工具出力が第2先端工具出力であるため、第1先端工具出力と比して「ブロッキング現象を起こさないようにハンマドリル100を保持する力」を減少することが可能となる。よって、使用者は、作業に際して過大な力を発揮する必要がなくなり、肉体的な負担を軽減した上で、安全かつ迅速な作業を行うことが可能となる。
【0058】
図8および図9に示すハンマモードの場合、ビット119としてハンマビット119bが選択される。
図8は、使用者がハンマドリル100を手で保持しつつ、床面に対し、加工作業を行っている状態を示す。図8において、便宜上、床面および使用者に関する図示は省略されている。この際、ハンマビット119bの延在方向119yが、鉛直直線200と平行な状態とされている。この場合、検出角度310として90度が検出される。すなわち、検出角度310の数値が、基準角度220の数値を超えている状態となる。この結果、先端工具出力は、第1先端工具出力とされる。
この状態においては、ハンマドリル100の自重が、ハンマビット119bを加工対象に押し付ける力として働く。なお、ハンマドリル100の自重は、「ハンマーが壁面を打撃する力に抗する力」としても働く。このため、使用者は、ハンマドリル100に対し、ハンマドリル100が倒れないように支持する力を主に加えることで足りる。よって、使用者は、肉体的に大きな負担を生ずることなく、安全かつ迅速な作業を行うことが可能となる。
【0059】
図9は、使用者がハンマドリル100を手で把持しつつ、鉛直方向に延在する壁面に対し、ハンマビット119bを略水平にして加工作業を行っている状態を示す。図9において、便宜上、璧面および使用者に関する図示は省略されている。この際、ハンマビット119bの延在方向119yが、鉛直直線200と略直交する状態とされている。この場合、検出角度310として略0度が検出される。すなわち、検出角度310の数値が、基準角度220の数値を超えていない状態となる。この結果、先端工具出力は、第2先端工具出力とされる。
この状態においては、使用者は、ハンマドリル100の自重を手で受ける必要がある。さらに、使用者は、ハンマビット119bを壁面に押し付けるとともに、「ハンマビット119bが壁面を打撃する力に抗する力」を加える必要がある。しかし、先端工具出力が第2先端工具出力であるため、第1先端工具出力と比して「ハンマビット119bが壁面を打撃する力に抗する力」を減少することが可能となる。よって、使用者は、肉体的な負担を軽減した上で、安全かつ迅速な作業を行うことが可能となる。
このように、本実施形態に係るハンマドリル100においては、作業者の疲労を軽減することが可能となる。
【0060】
以下、本発明に係る他の実施形態として、第2実施形態〜第5実施形態につき説明を行うが、図1図9に係る部品と同一の構成を有する部品については、第1実施形態と同一の名称および符号を付して説明する。また、第1実施形態と同一の定義を有する用語については、第1実施形態にて説明した用語を使用して説明する。
【0061】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るハンマドリル100は、第1実施形態に係るハンマドリル100と比して、コントローラ600の構成が異なる。すなわち、コントローラ600に係る、検出角度310と先端工具出力との関連付けに関する構成が異なる。
第2実施形態に係る駆動信号生成部612は、例えば、検出角度310が90度である場合(本体部101の傾斜状態が図6もしくは図8に示す状態)の先端工具出力を、第1先端工具出力とする。そして、駆動信号生成部612は、検出角度310が0度である場合(本体部101の傾斜状態が図7もしくは図9に示す状態)の先端工具出力を、第2先端工具出力とする。第1先端工具出力の大きさを100パーセントの大きさとした場合、第2先端工具出力の大きさは略80パーセントの大きさとされる。
第2実施形態に係る駆動信号生成部612は、さらに、第1先端工具出力と第2先端工具出力の各出力値の間の値として規定される第3先端工具出力を設定する。例えば、第3先端工具出力を、第1先端工具出力の90パーセントの大きさとする。駆動信号生成部612は、第3先端工具出力を、検出角度310が45度である場合の先端工具出力とする。
このような構成により、ハンマドリル100は、検出角度310が90度である場合は第1先端工具出力とされ、検出角度310が45度である場合は第3先端工具出力とされ、検出角度310が0度である場合は第2先端工具出力とされる。
【0062】
なお、第3先端工具出力として、第1先端工具出力と第2先端工具出力の各出力値の間の値を複数設定することができる。複数の異なる出力値を有する第3先端工具出力は、それぞれ異なる値を有する検出角度310と関連付けることができる。この場合、検出角度310が小さい場合の第3先端工具出力の出力値を、検出角度310が大きい場合の第3先端工具出力の出力値よりも小さく設定することができる。この場合、検出角度310が小さくなるにつれ、先端工具出力の出力値が小さくなる。換言すれば。検出角度310が大きくなるにつれ、先端工具出力の出力値が大きくなる。すなわち、検出角度310が段階的に変更されることに伴い、先端工具出力の出力値が段階的に変更される。すなわち、第2実施形態に係るハンマドリル100は、本体部101における傾斜状態の段階的な変更に伴い、先端工具出力の出力値を段階的に変更することが可能となる。これにより、使用者は、先端工具出力が突然大きく変更される違和感を覚えることなく、疲労を軽減した加工作業を行うことが可能となる。
なお、第2実施形態に係るハンマドリル100においては、第3先端工具出力を設定することにより、閾値である基準角度220を設定する必要が無い。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るハンマドリル100は、第1実施形態に係るハンマドリル100と比して、コントローラ600の構成が異なる。すなわち、コントローラ600に係る、基準角度220の制御に関する構成が異なる。
第3実施形態に係るハンマドリル100は、基準角度220が使用者によって設定変更が可能である。これにより、使用者は、基準線210に対する本体部101の傾斜状態が任意の位置となった場合に、先端工具出力を変更することが可能となる。
なお、基準角度220を変更する具体的な構成としては、例えば回転ツマミによる基準角度変更スイッチを設けることができる。
【0064】
さらに、第3実施形態に係るハンマドリル100においては、基準角度220を表示する基準角度表示部を設けることができる。使用者は、基準角度表示部に表示された数値を目視することにより、任意の基準角度220を容易に設定することができる。基準角度表示部の具体的な構成としては、例えば液晶表示板により基準角度の数値を表示することが可能である。
【0065】
(第4実施形態)
第4実施形態に係るハンマドリル100は、第1実施形態に係るハンマドリル100と比して、コントローラ600の構成が異なる。すなわち、コントローラ600に係る、スイッチ部640と、モード設定部650の構成が異なる。
第4実施形態に係るハンマドリル100は、モード設定部650とスイッチ部640とが連動するように構成されている。例えば、使用者が、モード設定部650によりハンマドリルモードを選択した場合には、ドリルモードの選択動作に連動して機能オンスイッチ641がオンとなるように構成される。また、使用者が、モード設定部650によりハンマモードを選択した場合には、ハンマモードの選択動作と連動して機能オフスイッチ642がオンとなるように構成される。
すなわち、第4実施形態に係るハンマドリル100は、モード設定部650の選択に応じてスイッチ部640を自動的に操作することが可能となる。よって、使用者は、モード設定部650を選択するのみで、最適な姿勢検出機能を自動的に得ることができる。
【0066】
(第5実施形態)
第5実施形態に係るハンマドリル100は、第1実施形態に係るハンマドリル100と比して、傾斜検出部500の構成が異なる。すなわち、第5実施形態に係るハンマドリル100は、加速度センサに代えて傾斜検出スイッチが使用される。
具体的な傾斜検出スイッチの一例として、通路と、当該通路に配置されるとともに通路内を回転移動することが可能な球状部材と、通路の端部に設けられた端部スイッチとを有する構成が挙げられる。通路は、必ずしも直線状ではなく、湾曲形状を有する場合がある。
【0067】
ビット119の延在方向119yが、鉛直直線200と直交する状態を、第5実施形態に係るハンマドリル100の「基本姿勢」とする。ハンマドリル100の基本姿勢において、通路の延在方向がビット119の延在方向119yと平行になるように、傾斜検出スイッチをハンマドリル100に配置する。
使用者が、ビット119を基準線210に対して傾ける。この傾斜状態が、所定の角度を超えた場合、球状部材が通路内にて回転し、移動する。そして、球状部材が端部スイッチに当接することにより、端部スイッチがオン状態とされる。コントローラ600は、端部スイッチのオン状態を認識し、駆動信号生成部612へと駆動出力を変更させる信号を送出する。この場合、コントローラ600は、端部スイッチがオフ状態である場合を、第2先端工具出力と設定し、端部スイッチがオン状態である場合を第1先端工具出力と設定するのが好ましい。
この構成により、使用者は、基準線210に対する本体部101の傾斜状態に応じて、先端工具出力を変更することが可能となる。
【0068】
以上においては、作業工具の一例として電動式のハンマドリルの場合で説明した。一方、ハンマドリル以外の作業工具、例えば、電動ディスクグラインダやネジ締め機等にも本発明を適用することは可能である。
さらに、本発明に係る作業工具にあっては、上述した実施形態に記載した構成に限定されるものではない。すなわち、さらに他の構成の変形例とすることが可能である。また、上述した実施形態を適宜組み合わせることが可能である。
【0069】
(本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応)
上述した実施形態における各構成要素と、本発明における各構成要素の対応関係を次の通り示す。
ハンマドリル100は、本発明に係る「作業工具」の一例である。ビット119は、本発明に係る「先端工具」の一例である。本体部101は、本発明に係る「工具本体」の一例である。駆動モータ110は、本発明に係る「駆動モータ」の一例である。当該モータ軸111は、本発明に係る「モータ軸」の一例である。打撃機構140は、本発明に係る「打撃機構」の一例である。ツールホルダ回転機構150は、本発明に係る「回転機構」の一例である。出力変更機構400は、本発明における「出力変更装置」の一例である。基準線210は、本発明に係る「基準線」の一例である。検出角度310は、本発明に係る「傾斜値」の一例である。基準角度220は、本発明に係る「閾値」の一例である。スイッチ部640は、本発明に係る「スイッチ部」に対応する。モード設定部650は、本発明に係る「モード設定部」の一例である。スイッチ表示部643は、本発明に係る「スイッチ表示部」の一例である。
【0070】
以上の発明の趣旨に鑑み、本発明に係る作業工具は、下記の態様が構成可能である。
(態様1)
本発明およびその各変更形態の構成において、
「前記第2先端工具出力は、前記第1先端工具出力の略80%の値に設定されていることを特徴とする。」
(態様2)
本発明およびその各変更形態の構成において、
「前記所定の閾値を、作業における基準角度として表示する基準角度表示部を有することを特徴とする。」
(態様3)
本発明およびその各変更形態の構成において、
「前記出力変更装置は、前記工具本体の傾斜状態を検出する傾斜検出スイッチを有する。」
(態様4)
本発明およびその各変更形態の構成において、
「ハンマドリルとして構成されることを特徴とする工具。」
【符号の説明】
【0071】
100 ハンマドリル(作業工具)
101 本体部(工具本体)
103 モータハウジング
105 ギアハウジング
107 ハンドグリップ
107a トリガ
107b 連続打撃スイッチ
110 駆動モータ
111 モータ軸
119 ビット(先端工具)
119a ドリルビット
119b ハンマビット
119y 延在方向
120 クランク機構
121 第1駆動ギア
123 被動ギア
125 クランク軸
127 偏心軸
129 連接ロッド
131 ピストン
140 打撃機構
141 シリンダ
141a 空気室
143 ストライカ
145 インパクトボルト
150 ツールホルダ回転機構(回転機構)
151 第2駆動ギア
153 中間軸
155 小ベベルギア
157 大ベベルギア
159 ツールホルダ
167 機械式トルクリミッター
167a スプリング
168 駆動側部材
168a 中間ギア
169 被動側部材
200 鉛直直線
210 基準線
220 基準角度(閾値)
300 検出直線
310 検出角度(傾斜値)
400 出力変更機構(出力変更装置)
500 傾斜検出部
600 コントローラ
610 記憶部
611 演算部
612 駆動信号生成部
620 駆動回路
630 出力表示部
631 発光ダイオード
640 スイッチ部
641 機能オンスイッチ
642 機能オフスイッチ
643 スイッチ表示部
650 モード設定部
651 摘み部
651a 第1位置
651b 第2位置
651c 第3位置
700 操作部
710 枠部
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図9